JP5253832B2 - 絶縁シート、固定子コイルおよび回転電機 - Google Patents

絶縁シート、固定子コイルおよび回転電機 Download PDF

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Description

本発明は、水車発電機やタービン発電機などの回転電機の固定子コイルの電気絶縁層を形成する絶縁シート、この絶縁シートが使用された固定子コイル、およびこの固定子コイルを備えた回転電機に関する。
電磁機器において、高効率化、小型化および低コスト化を図る一つの方法として、電磁コイルの冷却性能を向上させることが挙げられる。電磁コイルの冷却性能を向上させる方法として、電磁コイルの周辺に用いられている電気絶縁性の材料を高熱伝導化させることが挙げられる。従来、電気絶縁性の材料の高熱伝導化を図るために、無機粉末を含有する裏打ち材を備えた高熱伝導性のマイカ基材が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、鱗片状の高熱伝導材料を含有することにより、電気絶縁性の材料の高熱伝導化を図った技術も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2002−93257号公報 特開平11−323162号公報
しかしながら、従来の無機粉末を含有する裏打ち材を備えたマイカ基材では、裏打ち材に用いている高熱伝導性を示す材料が十分な熱伝導性を示さないため、電磁コイルを形成したときの電気絶縁層の熱伝導性は十分なものではなかった。また、従来の鱗片状の高熱伝導材料を含有して形成された電気絶縁層では、鱗片状の高熱伝導材料のアスペクト比が十分に大きくないとマイカペーパを作製することができない。そして、高熱伝導材料としてアスペクト比の大きい鱗片アルミナを用いているが、この材料は誘電率が大きいため、電気絶縁材料の用途としては好ましくない。すなわち、従来の電気絶縁材料では、高熱伝導性と電気絶縁性との両立を図ることは困難であった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、優れた電気絶縁特性を維持しつつ、熱伝導性を向上させることができる絶縁シートを提供すること目的とする。また、この絶縁シートを備えた固定子コイル、この固定子コイルを備えた回転電機を提供すること目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、コイル導体束に巻回されることで電気絶縁層を形成する絶縁シートであって、粘土鉱物を含有した樹脂からなる粘土鉱物層と、前記粘土鉱物層の一方の表面に積層され、熱伝導率が1W/(m・K)以上の充填材を含有した樹脂が含浸、または少なくとも一方の表面に塗布された補強基材からなる基材層と、前記粘土鉱物層の他方の表面に形成され、熱伝導率が1W/(m・K)以上の充填材を含有した樹脂からなる熱伝導層とを具備し、前記基材層および前記熱伝導層に含有される充填材の体積を前記粘土鉱物層に含有される粘土鉱物の体積で除した値が0.75以上であり、かつ前記熱伝導層に含有される充填材の体積を、前記熱伝導層および前記基材層に含有される充填材の体積で除した値が0.1〜0.9であることを特徴とする絶縁シートが提供される。
また、本発明の一態様によれば、コイル導体束と、前記コイル導体束に、上記した絶縁シートを巻回して形成された電気絶縁層とを具備することを特徴とする固定子コイルが提供される。
また、本発明の一態様によれば、上記した固定子コイルを備えることを特徴とする回転電機が提供される。
本発明の絶縁シートによれば、優れた電気絶縁特性を維持しつつ、熱伝導性を向上させることができる。
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施の形態の絶縁シート10の断面を模式的に示す図である。図1に示すように、絶縁シート10は、粘土鉱物層20と、この粘土鉱物層20の一方の表面に積層された基材層30と、粘土鉱物層20の他方の表面に形成された熱伝導層40とを備えている。
粘土鉱物層20は、粘土鉱物21を含有した樹脂22からなる層である。粘土鉱物21としては、耐コロナ性に優れているものが好ましく、具体的には、雲母群、マイカ群、スメクタイト群、バーミキュライト群からなる鉱物群から少なくとも一成分を選択したものであることが好ましい。雲母群に属する粘土鉱物としては、例えば、白雲母、黒雲母、パラゴナイト、レビトライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等が挙げられる。マイカ群に属する粘土鉱物としては、例えば、クロライト、フロゴパイト、レピドライト、マスコバイト、バイオタイト、パラゴナイト、マーガライト、テニオライト、テトラシリシックマイカ等が挙げられる。スメクタイト群に属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、ステブンサイト、ノントロナイト等が挙げられる。バーミキュライト群に属する粘土鉱物としては、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト等が挙げられる。なお、上記した粘土鉱物を単体あるいは少なくとも2種以上混合した混合物として使用してもよい。また、上記した粘土鉱物の中でも、低コストおよび高アスペクト比の観点から粘土鉱物21として好適な材料は、雲母(マイカ)である。
また、粘土鉱物21は、鱗片形状を有し、アスペクト比、すなわち縦と横の長さの比が1/100以上であることが好ましい。鱗片形状が好ましいのは、マイカテープ製造の際、マイカ紙を抄紙する工程で粘度鉱物が配向するからである。また、アスペクト比が1/100以上であることが好ましいのは、1/100よりも小さい場合には、十分な絶縁破壊強度を得ることができないからである。
また、粘土鉱物層20を構成する樹脂22としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂などの樹脂が用いられる。
熱硬化性樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが用いられる。これらの樹脂のうち、作業性、耐熱性の観点からはエポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂に含まれる硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤などが用いられる。酸無水物系硬化剤として、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ベンゾヘノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。これらのうち、熱硬化性樹脂の硬化反応の反応速度を速める硬化剤として、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどの金属キレート化合物が挙げられる。アミン系硬化剤として、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族アミンなどが挙げられる。熱硬化性樹脂に対する硬化剤の添加量は、必要に応じて適宜設定することができる。また、熱硬化性樹脂は、半硬化状態、すなわちプリプレグ状態で、粘土鉱物層20を構成していることが好ましい。
熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンなどが挙げられ、溶融点以上ではいわゆるプリプレグ状態と同様の効果を示す。
紫外線硬化樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が用いられる。光活性を持つ紫外線硬化剤としては、ブレンステッド酸のオニウム塩類や芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨウドニウム塩などが挙げられる。
基材層30は、熱伝導率が1W/(m・K)以上の充填材31を含有した樹脂32が、含浸、または少なくとも一方の表面に塗布された補強基材33から構成されている。補強基材33は、例えば、ガラスクロス、不織布などの繊維基材、ポリエチレンテレフタラートなどのフィルム基材などで構成される。ガラスクロスは、目的に応じてガラスクロスの糸の太さや縦糸の本数を調整することができる。また、不織布としては、例えば、ガラス繊維不織布、ポリエステル繊維不織布などが挙げられる。なお、補強基材33の一方の表面または双方の表面に樹脂32を塗布する際、ガラスクロス、不織布の織目における空隙にも樹脂32が充填されることが好ましい。
充填材31は、熱伝導率が1W/(m・K)以上の材料で形成され、具体的には、充填材31として、チッ化ホウ素、チッ化アルミニウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、ダイヤモンド状カーボン、カーボン状ダイヤモンド、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが用いられる。これらのなかでも、特に、テープ製造時に基材を傷めないという観点から、窒化ホウ素、水酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。また、充填材31として、これらの材料を組み合わせて使用することも可能である。ここで、充填材31として熱伝導率が1W/(m・K)以上の材料を用いることが好ましいのは、絶縁シート10全体として少なくとも熱伝導率を0.5W/(m・K)以上とするために、充填材31の熱伝導率が1W/(m・K)以上であることが必要となるからである。
また、充填材31の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、粒子状、鱗片状、繊維状などの形状が挙げられる。例えば、粒子状、鱗片状の場合、球体の場合には直径あるいは非球体の場合には最大長さによる平均粒径は、製造性の理由から0.001μm〜500μmであることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー散乱法等の方法によって測定される。また、繊維状の場合、充填材31の縦横比であるアスペクト比は、製造上の理由から1/10000以下であることが好ましい。
充填材31を含有する樹脂32としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂などの樹脂が用いられる。
熱硬化性樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが用いられる。これらの樹脂のうち、作業性、耐熱性の観点からはエポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂に含まれる硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤などが用いられる。酸無水物系硬化剤として、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ベンゾヘノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。これらのうち、熱硬化性樹脂の硬化反応の反応速度を速める硬化剤として、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどの金属キレート化合物が挙げられる。アミン系硬化剤として、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族アミンなどが挙げられる。熱硬化性樹脂に対する硬化剤の添加量は、必要に応じて適宜設定することができる。また、熱硬化性樹脂は、半硬化状態、すなわちプリプレグ状態で、粘土鉱物層20を構成していることが好ましい。
熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンなどが挙げられ、溶融点以上ではいわゆるプリプレグ状態と同様の効果を示す。
紫外線硬化樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が用いられる。光活性を持つ紫外線硬化剤としては、ブレンステッド酸のオニウム塩類や芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨウドニウム塩などが挙げられる。
熱伝導層40は、熱伝導率が1W/(m・K)以上の充填材41を含有した樹脂42から構成されている。ここで、充填材41、樹脂42を形成する材料は、上記した基材層30を構成する充填材31、樹脂32として用いられる材料として説明したものと同じである。
ここで、(1)上記した絶縁シート10において、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値が0.3以上であり、かつ熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値が0.3以上となるように、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の含有量を調整することが好ましい。基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値、かつ熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値を0.3以上とするのが好ましいのは、基材層30および熱伝導層40における熱伝導率が向上するからである。なお、基材層30において補強基材33に充填材31を含有した樹脂32を適正に含浸させるため、および粘土鉱物層20の他方の表面に熱伝導層40を適正に形成するために、これらの値は、0.9以下であることが好ましい。また、樹脂や充填材の体積は、重量を密度で除して算出することができる。また、密度が不明な材料の場合は、アルキメデス法等によって密度を測定する。また、以下に示す樹脂や充填材の体積も、これと同様の方法で算出される。なお、上記したように体積比で範囲を限定する理由として、高熱伝導性の充填剤と樹脂の複合体における熱伝導率は、高熱伝導性の充填剤の空間的に占める割合の影響を受けるからである。
また、(2)上記した絶縁シート10において、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積で除した値、すなわち熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、基材層30に含有される充填材31の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積を加算した体積で除した値が0.1〜0.9となるように、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の含有量を調整してもよい。熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積で除した値を0.1〜0.9とするのが好ましいのは、この値が0.1よりも小さい場合には、熱伝導層40における熱伝導率が低下するからであり、0.9よりも大きい場合には、基材層30を適正に形成することが困難となるからである。また、より好ましい範囲は、0.4〜0.9である。
また、(3)上記した絶縁シート10において、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値、すなわち基材層30に含有される充填材31の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積を加算した体積を、粘土鉱物21の体積で除した値が0.75以上となるように、各層に含有される粘土鉱物21や充填材31、41の含有量を調整してもよい。基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値を0.75以上とするのが好ましいのは、粘土鉱物層20における熱伝導率は小さいが、この値を0.75以上とすることで、絶縁シート10全体の熱伝導率を向上させることができるからである。なお、絶縁破壊強度を低下させないために、この値は、0.95以下であることが好ましい。
ここで、絶縁シート10は、上記した(1)〜(3)の要件の少なくとも1つを満たすように構成されている。なお、絶縁シート10は、上記した(1)〜(3)の要件のすべてを満たすように構成されることが好ましい。
次に、本発明に係る一実施の形態の絶縁シート10の製造方法について説明する。
まず、所定量の上記した粘土鉱物21を、例えば水などの分散媒中に分散させ、混合し、濾過することによって堆積したシート状の粘土鉱物21を形成する。ここで、シート状の粘土鉱物21の形成の際に、堆積したシート状の粘土鉱物21に圧力を負荷してもよい。
続いて、この堆積したシート状の粘土鉱物21に樹脂22を含浸させる。例えば、樹脂22として熱硬化性樹脂を使用した場合には、熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の粘土鉱物21を加熱硬化して熱硬化性樹脂を半硬化状態にする。具体的には、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を使用した場合には、例えば、130℃で30分間加熱硬化して半硬化状態にする。このようにして、粘土鉱物層20を作製する。
続いて、所定量の上記した充填材31に、所定量の上記した樹脂32を混合して混合物を形成する。そして、この混合物を補強基材33に含浸、または補強基材33の少なくとも一方の表面に塗布する。例えば、樹脂32として熱硬化性樹脂を使用した場合には、加熱硬化して熱硬化性樹脂を半硬化状態にする。具体的には、熱硬化性樹脂として、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の混合物を使用した場合には、例えば、130℃で10分間加熱硬化して半硬化状態にする。このようにして、作製された基材層30を粘土鉱物層20の一方の表面上に積層する。この際、粘土鉱物層20と基材層30とを接着性を有する樹脂で貼り合わせてもよい。なお、補強基材33の一方の表面に混合物を塗布する場合には、その塗布面が粘土鉱物層20側とならないように、外側に向けて粘土鉱物層20と基材層30とを積層する。
続いて、所定量の上記した充填材41に、所定量の上記した樹脂42を混合して混合物を形成する。そして、この混合物を粘土鉱物層20の他方の表面に塗布する。例えば、樹脂42として紫外線硬化型エポキシ樹脂を使用した場合には、紫外線を照射することで半硬化状態にする。また、例えば、樹脂として熱硬化性樹脂を使用した場合には、加熱硬化して熱硬化性樹脂を半硬化状態にする。このようにして、熱伝導層40を作製し、絶縁シート10を得る。
なお、例えば、熱硬化性樹脂を用いた場合における樹脂を硬化させるための加熱処理は、各層を形成し積層した後に同時に行ってもよい。また、樹脂を硬化させる条件は使用する樹脂の種類などに応じて適宜設定される。このようにして作製された絶縁シート10の厚さは、50〜500μm程度であり、幅は用途に応じて適宜設定できる。
また、このように作製された絶縁シート10を、素線束からなるコイル導体束に複数回巻回して絶縁層を形成し、固定子コイルを作製することができる。ここで、巻き付け時にマイカ層の剥れを防止する観点から、絶縁シート10をコイル導体束に巻回する際、絶縁シート10の熱伝導層40側がコイル導体束側となるように巻回することが好ましい。
また、作製された固定子コイルを、固定子鉄心の固定子スロット内に挿入して固定することで、回転電機を作製することができる。例えば、粘土鉱物層20、基材層30、熱伝導層40を構成する樹脂として熱硬化性樹脂を使用し、熱硬化性樹脂を半硬化状態として絶縁シート10を構成した場合には、まず、固定子コイルを固定子鉄心の固定子スロット内に収容し、固定子スロットの入り口付近に楔を打ち込む。続いて、固定子コイルを加熱して絶縁シート10の熱硬化性樹脂を硬化し、固定子コイルを固定子スロット内に固定する。なお、樹脂として熱硬化性樹脂を用いたときの回転電機の作製方法について例示したが、例えば、絶縁シート10において、樹脂として半硬化状態の樹脂を用いない場合には、巻回後に絶縁シート10間に空隙ができることがある。このような場合には、コイル導体束に絶縁シート10を巻回して作製された固定子コイルを、樹脂が収容されたタンク中に投入し、絶縁シート10内に樹脂を含浸させる含浸方式等を採用して固定子コイルを作製してもよい。
上記した本発明に係る一実施の形態の絶縁シート10によれば、粘土鉱物層20と、この粘土鉱物層20の一方の表面に積層された基材層30と、粘土鉱物層20の他方の表面に形成された熱伝導層40とを備えることで、優れた電気絶縁特性を維持しつつ、熱伝導性を向上させることができる。また、絶縁シート10は、従来の絶縁シートに比べて優れた絶縁破壊電界を有しているため、絶縁シート10によって形成される絶縁層を薄く構成することができる。これによって、固定子コイル全体の大きさを変えずに、コイル導体束の断面積を増やすことが可能となり、結果として多くの電流を流すことができ、容量を増大することができる。一方、コイル導体束の断面積を変えない場合には、高い絶縁破壊電界を有し、信頼性の高い固定子コイル、回転電機を提供することができる。
さらに、絶縁シート10は、従来の絶縁シートに比べて優れた熱伝導性を有しているため、コイル導体束の冷却効果を高め、コイル導体束の温度を低減させることができる。これによって、電流密度が上昇し、さらにコイル導体束の温度が上昇するによって生じる絶縁シートの劣化を防止することができ、信頼性の高い固定子コイル、回転電機を提供することができる。一方、コイル導体束の温度上昇を従来と同じ温度まで上昇可能とすれば、コイル導体束を流れる電流が多くなり、容量を増大することができる。また、コイル導体束における単位重量あたりの容量を大きくすることができるので、回転電機における発電効率が向上し、発電コストを低減することが可能となる。
なお、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
次に、本発明に係る一実施の形態の絶縁シート10が優れた電気絶縁特性および熱伝導性を有することを実施例および比較例に基づいて説明する。
(実施例1〜実施例3)
実施例1〜実施例3で使用した絶縁シートは、図1に示した絶縁シート10と同じ構成であるため図1を参照して説明する。
絶縁シート10を次のように作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の混合物に酸無水物硬化剤を添加した樹脂を焼成集成マイカを抄紙したマイカペーパに含浸させた。その後、80℃で10分間、さらに120℃で30分間乾燥してマイカペーパに含浸した樹脂を半硬化状態とし、粘土鉱物層20を得た。焼成集成マイカの貼りこみ量は80g/mであった。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の混合物に、平均粒径が16μmのチッ化ホウ素を所定量添加して混練した。この混合物をガラスクロスの織目を埋めるようにガラスクロスの両表面に塗布し、基材層30を得た。この基材層30を粘土鉱物層20の一方の表面に積層した。なお、基材層30と粘土鉱物層20は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の混合物によって貼り付いた状態であった。
さらに、上記混合物を粘土鉱物層20の他方の表面に塗布して熱伝導層40を形成し、基材層30および熱伝導層40の樹脂を100℃で30分間乾燥して半硬化状態にし、絶縁シート10を得た。得られた絶縁シート10の幅は32mmで、厚さは240μmであった。また、基材層30および熱伝導層40に含有されるチッ化ホウ素(充填材)の充填量は95g/mであり、基材層30および熱伝導層40に含有されるチッ化ホウ素(充填材)の体積比率は56.7%であった。ここで、充填材の体積比率とは、窒化ホウ素と樹脂の体積和に対する基材層30および熱伝導層40に含有されるチッ化ホウ素の体積の割合を意味する。
上記したように作製された絶縁シート10において、実施例1で使用した絶縁シート10では、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値が0.567であり、かつ熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値が0.567であった。また、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積で除した値が0.4であった。また、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積和を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値が1.19であった。
また、実施例2で使用した絶縁シート10では、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値が0.567であり、かつ熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値が0.567であった。また、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積で除した値が0.6であった。また、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積和を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値が1.19であった。
また、実施例3で使用した絶縁シート10では、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値が0.567であり、かつ熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値が0.567であった。また、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積で除した値が0.7であった。また、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積和を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値が1.19であった。
上記した絶縁シート10を、それぞれ断面が50mm×10mmで、長さが1000mmのアルミニウム製のコイル導体束に、熱伝導層40がコイル導体束側となるように11回巻回し、その外側に離型用のポリプロピレンからなるフィルムを巻回した。そのフィルムの外側に、成形用のステンレス鋼からなる厚さが3mmの板を当て、この板を固定するために、その周囲にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるフィルムを巻回した。このようにして得た固定子コイルをポリエチレンワックスを加熱媒体として満たしたタンク中に浸漬し、温度が150℃、圧力が7MPaの条件下に10時間放置し、絶縁シートを硬化して、試料1〜試料3を得た。
上記した方法で形成された試料1〜試料3について熱伝導率および絶縁破壊電界の測定を行った。熱伝導率の測定は、JIS−A1412に規定されている定常法を用いて測定し、具体的には、英弘精機製オートΛHC−110を用いて行った。絶縁破壊電界の測定は、試料1〜試料3の直線部300mmの範囲に錫箔を巻きつけ、交流50Hzにて、短時間昇圧法(昇圧速度2kV/秒)で行った。
表1は、各試料の構成条件、熱伝導率および絶縁破壊電界の測定結果を示している。なお、熱伝導率および絶縁破壊電界は、後述する比較例1で使用した試料4における熱伝導率および絶縁破壊電界の測定結果をそれぞれ1としたときの比率、すなわち熱伝導率比、絶縁破壊電界比で表示されている。
Figure 0005253832
測定の結果、表1に示すように、試料1における熱伝導率比は1.05であり、絶縁破壊電界比は1.2であった。試料2における熱伝導率比は1.15であり、絶縁破壊電界比は1.25であった。試料3における熱伝導率比は1.2であり、絶縁破壊電界比は1.3であった。
(比較例1)
比較例1で使用した絶縁シートは、実施例1〜実施例3で使用した絶縁シート10において、熱伝導層40を備えない以外の構成は、実施例1〜実施例3で使用した絶縁シートの構成と同じとした。すなわち、比較例1で使用した絶縁シートは、基材層と、この基材層の一方の表面に設けられた粘土鉱物層とから構成される。なお、基材層および粘土鉱物層の作製方法、これら両層から絶縁シートを作製する方法は、実施例1〜実施例3における絶縁シート10の作製方法と同じとした。得られた絶縁シートの厚さは280μmであった。
このようにして作製された絶縁シートでは、基材層に含有される充填材の体積を、基材層を構成する樹脂の体積と基材層に含有される充填材の体積とを加算した体積で除した値が0.567であった。また、基材層に含有される充填材の体積を、粘土鉱物層に含有される粘土鉱物の体積で除した値が1.19であった。また、この絶縁シートを用いて固定子コイルである試料4を作製する方法も、実施例1の作製方法と同じとした。
そして、得られた試料4を用いて、実施例1〜実施例3と同じ測定方法および測定条件で、熱伝導率および絶縁破壊電界の測定を行った。試料4の構成条件、熱伝導率および絶縁破壊電界の測定結果は表1に示されている。
なお、上記したように、表1では、本比較例で使用した試料4における熱伝導率および絶縁破壊電界の測定結果をそれぞれ1として表示している。また、比較例1で使用した絶縁シートは、熱伝導層を備えないため、熱伝導層に含有される充填材の体積Vと基材層30に含有される充填材31の体積Vの比は0:100である。すなわち、比較例1で使用した絶縁シートでは、基材層にすべての充填材が含有される。ここでは、充填材の体積比率とは、基材層を構成する樹脂の体積に対する基材層に含有されるチッ化ホウ素の体積の割合を意味する。
(実施例1〜実施例3および比較例1における結果の比較)
図2は、熱伝導層40に含有される充填材41の体積Vを、基材層30に含有される充填材31の体積Vと熱伝導層40に含有される充填材41の体積Vとを加算した体積(V+V)で除した値(V/(V+V))に対して熱伝導率比および絶縁破壊電界比を示した図である。なお、比較例1で使用した絶縁シートは、熱伝導層を備えないため、熱伝導層に含有される充填材41の体積Vを「0」として、上記の(V/(V+V))を示しているため、その値は「0」となる。
表1および図2に示すように、実施例1〜実施例3の試料1〜試料3の固定子コイルにおける熱伝導率および絶縁破壊電界は、比較例1の試料4の固定子コイルにおけるそれらよりも高い値を示した。以上のことから、充填材であるチッ化ホウ素を含有する熱伝導層40を備えた方が熱伝導率および絶縁破壊電界の向上を図ることができることがわかった。さらに、充填材であるチッ化ホウ素を含有する熱伝導層40を備えた場合において、(V/(V+V))の値が0.1以上で熱伝導率および絶縁破壊電界が向上し、0.4以上ではさらに熱伝導率および絶縁破壊電界が向上することがわかった。
(実施例4〜実施例6)
実施例4〜実施例6で使用した絶縁シートは、図1に示した絶縁シート10と同じ構成であるため図1を参照して説明する。
絶縁シート10を次のように作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の混合物に酸無水物硬化剤を添加した樹脂を焼成集成マイカを抄紙したマイカペーパに含浸させた。その後、80℃で10分間、さらに120℃で30分間乾燥してマイカペーパに含浸した樹脂を半硬化状態とし、粘土鉱物層20を得た。焼成集成マイカの貼りこみ量は80g/mであった。
高密度ポリエチレンに平均粒径が16μmのチッ化ホウ素を所定量添加して混練した。この混合物をガラスクロスの織目を埋めるようにガラスクロスの両表面に塗布し、基材層30を得た。この基材層30を粘土鉱物層20の一方の表面に積層した。なお、基材層30と粘土鉱物層20は、高密度ポリエチレンによって貼り付いた状態であった。
さらに、上記混合物を粘土鉱物層20の他方の表面に塗布して熱伝導層40を形成し、基材層30および熱伝導層40の樹脂を硬化させて、絶縁シート10を得た。得られた絶縁シート10の幅は30mmで、厚さは200μmであった。
上記したように作製された絶縁シート10において、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値と、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値とを同じ値に設定した。
実施例4における絶縁シート(試料5)では、この値を0.3とした。実施例5における絶縁シート(試料6)では、この値を0.39とした。実施例6における絶縁シート(試料7)では、この値を0.5とした。
そして、得られた各試料を用いて、熱伝導率の測定を行った。熱伝導率の測定は、JIS−A1412に規定されている定常法を用いて測定し、具体的には、英弘精機製オートΛHC−110を用いて行った。図3は、熱伝導率の測定結果を示す図である。図3の横軸は、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値が示されている。ここでは、これらの値を充填材の体積分率という。
(比較例2〜比較例4)
比較例2〜比較例4で使用した絶縁シートは、実施例4〜実施例6で使用した絶縁シート10において、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値、および熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値が異なる以外の構成は、実施例4〜実施例6で使用した絶縁シートの構成と同じとした。また、絶縁シートの作製方法は、実施例4〜実施例6における絶縁シートの作製方法と同じとした。なお、比較例2〜比較例4において使用した絶縁シート10は、実施例4〜実施例6で使用した絶縁シート10と同様に、基材層30に含有される充填材31の体積を、基材層30を構成する樹脂32の体積と基材層30に含有される充填材31の体積とを加算した体積で除した値と、熱伝導層40に含有される充填材41の体積を、熱伝導層40を構成する樹脂42の体積と熱伝導層40に含有される充填材41の体積とを加算した体積で除した値とを同じ値に設定した。
比較例2における絶縁シート(試料8)では、この値を0.01とした。比較例3における絶縁シート(試料9)では、この値を0.15とした。比較例4における絶縁シート(試料10)では、この値を0.22とした。
そして、得られた試料8〜試料10を用いて、実施例4〜実施例6と同じ測定方法および測定条件で、熱伝導率の測定を行った。図3は、熱伝導率の測定結果を示す図である。
(実施例4〜実施例6および比較例2〜比較例4における結果の比較)
図3に示すように、充填材の体積分率が0.3以上で熱伝導率は上昇することがわかった。この充填材の体積分率に対する熱伝導率の変化の傾向は、シュタウファーによって提案されたパーコレーション理論によっても裏付けられる。シュタウファーによれば、無秩序系のパーコレーション理論において、ある体積中に充填材を充填して行ったときに、空間中を通して充填材が連なる体積分率(パーコレーション閾値)は、3次元の場合には0.33程度であると理論的に示されている。これは本測定結果と比較的よい一致を示している。
また、基材層30において、ガラスクロスの熱伝導率は、充填材であるチッ化ホウ素の熱伝導率と比較して十分に小さいと考えられ、このような場合には、ガラスクロスを除く空間に対する充填材の配置を考えることが重要となる。そのため、充填材と樹脂の体積和に対する充填材の体積比率を考慮することで、熱伝導性を高めることができる体積比率を検討することが可能になる。このような3成分のパーコレーション理論については、例えば電気学会論文誌A Vol.126, No.10, pp.1004-1012, 2006に記述されている。本絶縁シート10においては、充填材であるチッ化ホウ素のパーコレーション閾値は、ガラスクロスが入ることによって大きくなることが考えられるが、少なくともチッ化ホウ素と樹脂のみから構成される熱伝導層40におけるチッ化ホウ素のパーコレーション閾値以上となる。そのため、充填材の体積分率を0.3以上にすることが必要となる。
(実施例7〜実施例12)
実施例7〜実施例12で使用した絶縁シートは、図1に示した絶縁シート10と同じ構成であるため図1を参照して説明する。
絶縁シート10を次のように作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の混合物に酸無水物硬化剤を添加した樹脂を焼成集成マイカを抄紙したマイカペーパに含浸させた。その後、80℃で10分間、さらに120℃で30分間乾燥してマイカペーパに含浸した樹脂を半硬化状態とし、粘土鉱物層20を得た。焼成集成マイカの貼りこみ量は80g/mであった。
高密度ポリエチレンに平均粒径が16μmのチッ化ホウ素を所定量添加して混練した。この混合物をガラスクロスの織目を埋めるようにガラスクロスの両表面に塗布し、基材層30を得た。この基材層30を粘土鉱物層20の一方の表面に積層した。なお、基材層30と粘土鉱物層20は、高密度ポリエチレンによって貼り付いた状態であった。
さらに、上記混合物を粘土鉱物層20の他方の表面に塗布して熱伝導層40を形成し、基材層30および熱伝導層40の樹脂を硬化させて、絶縁シート10を得た。得られた絶縁シート10の幅は32mmで、厚さは240μmであった。
上記したように作製された絶縁シート10において、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値を異ならせたものを作製した。
実施例7における絶縁シート(試料11)では、この値を0.75とした。実施例8における絶縁シート(試料12)では、この値を0.87とした。実施例9における絶縁シート(試料13)では、この値を0.95とした。実施例10における絶縁シート(試料14)では、この値を0.98とした。実施例11における絶縁シート(試料15)では、この値を1.63とした。実施例12における絶縁シート(試料16)では、この値を1.7とした。
そして、得られた各試料を用いて、熱伝導率の測定を行った。熱伝導率の測定は、JIS−A1412に規定されている定常法を用いて測定し、具体的には、英弘精機製オートΛHC−110を用いて行った。
図4は、熱伝導率の測定結果を示す図である。図4の横軸は、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値が示されている。なお、熱伝導率は、後述する比較例5で使用した試料17における熱伝導率の測定結果を1としたときの比率、すなわち熱伝導率比で表示されている。
(比較例5)
比較例5で使用した絶縁シートは、実施例7〜実施例12で使用した絶縁シート10において、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値が異なる以外の構成は、実施例7〜実施例12で使用した絶縁シートの構成と同じとした。また、絶縁シートの作製方法は、実施例7〜実施例12における絶縁シート10の作製方法と同じとした。
比較例における絶縁シート(試料17)では、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値を0とした。すなわち、基材層30および熱伝導層40に充填材を含有しない構成とした。
そして、得られた試料17を用いて、実施例7〜実施例12と同じ測定方法および測定条件で、熱伝導率の測定を行った。図4は、熱伝導率の測定結果を示す図である。なお、上記したように、図4では、本比較例で使用した試料17における熱伝導率の測定結果を1として表示している。
(実施例7〜実施例12および比較例5における結果の比較)
図4に示すように、基材層30および熱伝導層40に含有される充填材31、41の体積を、粘土鉱物層20に含有される粘土鉱物21の体積で除した値が0.75以上では、基材層30および熱伝導層40に充填材を含有しない絶縁シートにおける熱伝導率の1.7倍を超える熱伝導率となることがわかった。
本発明に係る一実施の形態の絶縁シートの断面を模式的に示す図である。 熱伝導率および絶縁破壊電界の測定結果を示す図。 熱伝導率の測定結果を示す図。 熱伝導率の測定結果を示す図。
符号の説明
10…絶縁シート、20…粘土鉱物層、21…粘土鉱物、22,32,42…樹脂、30…基材層、31,41…充填材、33…補強基材、40…熱伝導層。

Claims (5)

  1. コイル導体束に巻回されることで電気絶縁層を形成する絶縁シートであって、
    粘土鉱物を含有した樹脂からなる粘土鉱物層と、
    前記粘土鉱物層の一方の表面に積層され、熱伝導率が1W/(m・K)以上の充填材を含有した樹脂が含浸、または少なくとも一方の表面に塗布された補強基材からなる基材層と、
    前記粘土鉱物層の他方の表面に形成され、熱伝導率が1W/(m・K)以上の充填材を含有した樹脂からなる熱伝導層と
    を具備し、
    前記基材層および前記熱伝導層に含有される充填材の体積を前記粘土鉱物層に含有される粘土鉱物の体積で除した値が0.75以上であり、かつ前記熱伝導層に含有される充填材の体積を、前記熱伝導層および前記基材層に含有される充填材の体積で除した値が0.1〜0.9であることを特徴とする絶縁シート。
  2. 前記基材層に含有される充填材の体積を、前記基材層を構成する樹脂の体積と前記基材層に含有される充填材の体積とを加算した体積で除した値が0.3以上であり、かつ前記熱伝導層に含有される充填材の体積を、前記熱伝導層を構成する樹脂の体積と前記熱伝導層に含有される充填材の体積とを加算した体積で除した値が0.3以上であることを特徴とする請求項1記載の絶縁シート。
  3. 前記樹脂が半硬化状態であることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁シート。
  4. コイル導体束と、
    前記コイル導体束に、請求項1乃至3のいずれか1項記載の絶縁シートを巻回して形成された電気絶縁層と
    を具備することを特徴とする固定子コイル
  5. 請求項4記載の固定子コイルを備えることを特徴とする回転電機。
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