特許文献1の燃料電池システムを、例えば家庭用の燃料電池システムとして使用する場合を想定すると、時々刻々に変化しながら燃料電池に対し要求された発電量又は発熱量に応じて、燃料電池に併設された改質器により生成される水素ガス量を可変させつつ改質器の動作が制御される。
ところが、改質器による水素ガス生成のための改質反応(吸熱反応)は通常、700℃程度の高温状態で実行される。このため、水素ガス量を頻繁に見直すことによる改質器の作動条件(温度等)の変更は、少なからず熱損失を生じせしめ、その結果、改質器の水素ガス生成効率を低下させる。例えば、改質器の温度が一旦、室温まで下げられた後に、改めてこの改質器を700℃まで昇温すれば、この昇温動作に伴う起動エネルギーロスおよび時間ロスを無視することはできない。
即ち、家庭用の燃料電池システムのように、それに要求される発電量が時々刻々と変化するものに対して、特許文献1の燃料電池システムを適用することは、燃料電池に併設された改質器のエネルギー利用効率向上の困難性に起因して好ましくない。
特許文献1の燃料電池システムに比較して、特許文献2の水素ガス貯蔵および供給システムでは、水素ガスに分離および生成容易な原料ガスを用いることにより水素ガス分離後の原料ガスを回収および再生する手間は存在するも、この水素ガス貯蔵および供給システムは、家庭内の電力負荷変動に対応可能である。
また、特許文献3の水素ガス供給システムでは、改質器、多数の水素ガス使用機器(例えば、燃料電池)および水素ガス貯蔵手段の各々が、水素ガスを通流可能に連結してネットワーク化され、これにより、各水素ガス使用機器に対応する水素ガスの需要ばらつきを互いに相殺させることが期待でき、システム全体として水素ガス需要の平準化が図られ、その結果、ガス供給量も平準化される。このため、特許文献3の水素ガス供給システムは、改質器の作動条件を一定に保つことを可能にして、特許文献1による水素ガス生成効率の低下の要因を解消できると期待されている。
ところで、燃料電池の燃料ガス供給口からアノードに供給された水素ガスの一部は、アノードにおいて消費されることなく、水蒸気や二酸化炭素ガスと共に燃料ガス排出口から外部にオフガスとして排出される。排出されたオフガスは、所定の熱エネルギーを有して資源として有用であって、こうしたオフガスの効率的な利用方法の確立が、燃料電池システム全体のエネルギー効率を向上させる観点から望まれている。
しかし、特許文献3の水素ガス供給システムには、燃料電池のアノードから排出されるオフガスの有効利用が記載されてなく、その回収法も開示されていない。
また、特許文献2の燃料電池システムには、水素吸収合金によってオフガスを回収することを示唆するに過ぎず、特許文献3の水素ガス供給システムと同様、この特許文献2の燃料電池システムもオフガスの有効利用に言及されていない。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の燃料電池の燃料ガス排出口から排出された未消費の水素ガスを含むオフガスを回収してこのオフガスを有効に利用する水素ガスステーションおよび燃料電池システムを提供することにある。
また、本発明の目的は、複数の燃料電池の燃料ガス排出口から排出されたオフガスの価値を見積もった適正な水素ガス料金課金の実行を可能にした水素ガス料金課金装置を提供することにある。
本発明に係る燃料電池システムは、有機系化合物の改質反応によって水素リッチな改質ガスを生成する水素ガスステーションと、前記水素ガスステーションから供給された改質ガスを用いて発電すると共に、前記発電により消費されなかった改質ガスであるオフガスを外部に排出する複数の燃料電池と、前記水素ガスステーションから前記燃料電池に前記改質ガスを導くためのガス供給配管と、前記燃料電池から前記水素ガスステーションに、前記オフガスを導くためのガス回収配管と、を備え、筒状の内配管およびこの内配管の周囲に配置された筒状の外配管からなる2重配管が用いられ、前記内配管および前記外配管の一方が前記ガス供給配管を構成し、その他方が前記ガス回収配管を構成し、前記ガス回収配管は、前記燃料電池の各々と個別に接続する複数のガス回収サブ配管と、前記ガス回収サブ配管を集合させて前記水素ガスステーションに接続するガス回収メイン配管と、により構成され、前記ガス回収サブ配管の途中に、前記オフガスのガス圧を測定する第1の圧力計が配置され、前記ガス回収サブ配管の途中に、前記オフガスのガス圧を調整する第1の昇圧装置が配置され、前記第1の圧力計から得られる圧力値が、前記第1の昇圧装置により予め設定された値に調整され、前記第1の昇圧装置で昇圧された前記オフガスが前記水素ガスステーションに供給されるものである。
こうした構成により、各燃料電池のアノードから排出された未消費の水素ガスを含むオフガスを回収してこのオフガスを有効に利用することが可能になる。
こうすると、各ガス供給先に供給用と回収用の2種類の配管が共存してことによる配管施工の悪影響が解消される。
また、前記内配管が前記ガス回収配管を構成し、前記外配管が前記ガス供給配管を構成する配管であっても良い。
これにより、内配管と外配管との間の筒状空間を介して燃料電池の燃料ガス供給口に送られる改質ガスを、内配管の内部空間を介して燃料電池の燃料ガス排出口から流出するオフガスとの熱交換により加熱させることができると共に、オフガスの放熱は、その周囲を流れる改質ガスの存在により抑えることができる。
また、前記ガス供給配管の途中に配置され、前記水素ガスステーションから供給された前記改質ガスを貯蔵する改質ガス貯蔵部を備えても良く、前記ガス回収配管の途中に配置され、前記燃料電池から排出された前記オフガスを貯蔵するオフガス貯蔵部を備えても良い。
これにより、燃料電池の各々の発電量に対応した改質ガスの安定供給およびオフガスの安定回収が可能になって、分散型の燃料電池システムの利便性が改善すると共に、その運転効率が向上する。
前記水素ガスステーションは、前記改質反応に必要な熱を供給する第1の燃焼器を備え、前記第1の燃焼器は、前記オフガスを燃焼することにより前記熱を生成するものであっても良く、前記燃料電池の各々に前記オフガスを燃焼する第2の燃焼器が接続されるものであっても良い。
こうすると、オフガスを第1の燃焼器で燃焼させることにより、このオフガスを改質器の改質触媒体に供給する熱源として利用でき、燃料資源としてのオフガスを有効に利用できる。また、オフガスを第2の燃焼器で燃焼させることにより、例えば、このオフガスを燃料電池に併設される貯湯槽のお湯を加熱する熱源として利用でき、燃料資源としてのオフガスを有効に利用できる。
また、前記ガス回収配管の途中に配置され、前記オフガスのガス圧を調整する第1の昇圧装置を備えても良く、前記ガス供給配管の途中に配置され、前記オフガスのガス圧を調整する第2の昇圧装置を備えても良い。
こうして例えば、オフガスを流す配管の経路が長くても、そのオフガスの圧損に応じてオフガスのガス圧が、第1または第2の昇圧装置によって適切に昇圧される。
更に、前記燃料電池のオフガスの排出口下流側に配置され、前記オフガス中に含有する水蒸気を凝縮する凝縮装置を備えても良い。
これにより、水蒸気から結露した水によってガス回収配管を塞ぐことが解消される。
ここで、前記ガス回収配管の一例は、前記燃料電池の各々と個別に接続する複数のガス回収サブ配管と、前記ガス回収サブ配管を集合させて前記水素ガスステーションに接続するガス回収メイン配管と、により構成されるものである。
こうした構成により、ガス回収メイン配管に接続する燃料電池の数が増しても、その回収配管系を複雑にすることが無く好適である。
そして、前記ガス回収サブ配管の途中および/または前記ガス回収メイン配管の途中に、前記オフガスの逆流を防止する逆流防止機構を配置させても良い。なお前記逆流防止機構の一例は、逆止弁である。
この逆流防止機構により、オフガスの燃料電池への逆流が防止される。
また、前記ガス回収サブ配管の途中に、前記オフガスのガス圧を測定する第1の圧力計を配置させても良い。
この第1の圧力計により、オフガスのガス圧が適切に監視される。
そして、前記ガス回収サブ配管の途中に配置され、前記オフガスのガス圧を調整する第1の昇圧装置を備え、前記第1の圧力計から得られる圧力値を、前記第1の昇圧装置により予め設定された値に調整させても良い。
これにより、オフガスのガス圧が適切な設定値になるように監視され、例えばその逆流が確実に防止される。
また、前記ガス回収メイン配管の途中に配置された前記オフガスのガス圧を測定する第2の圧力計を備え、前記第1の圧力計から得られる圧力値と前記第2の圧力計から得られる圧力値との差圧を、前記第1の昇圧装置により予め設定された値に調整させても良い。
これにより、オフガスのガス圧が、上記差圧に基づき適切な設定値になるように監視され、例えばその逆流が確実に防止される。
更に、前記ガス回収サブ配管の途中に配置され、前記ガス回収サブ配管を開閉するガス開閉手段を備え、前記第1の圧力計から得られた圧力値が予め設定された値以下であれば、前記ガス開閉手段を閉しめても良い。
オフガスのガス圧不足という不測の事態に対応してガス開閉手段を閉めることにより、例えば、オフガスの燃料電池への逆流をより確実に防止できる。
また、前記燃料電池の各々に前記オフガスを燃焼する第2の燃焼器が接続され、前記ガス開閉手段の閉栓時に 前記オフガスを前記第2の燃焼器により燃焼させても良い。
こうすると、仮に前記ガス開閉手段を閉めても、オフガスを第2の燃焼器により処理できるため、水素ガスステーションから改質ガスを燃料電池に向けて供給し続けることが可能になる。
また、前記ガス回収サブ配管の途中に、前記オフガス中の酸素ガス濃度を測定する酸素ガス検出計を配置させても良い。
これにより、仮に酸素ガスがオフガス中に混入しても、混入した酸素ガスを迅速かつ確実に検出できる。
そして、前記ガス回収サブ配管の途中に配置され、前記ガス回収サブ配管を開閉するガス開閉手段を備え、前記酸素ガス検出計により所定濃度以上の酸素ガスが検出された際には、前記ガス開閉手段を閉しめるように構成しても良い。また、前記酸素ガス検出計により所定濃度以上の酸素ガスが検知された際には、前記燃料電池の作動を停止させても良い。
これにより、オフガス(水素ガス)と酸素ガスとの混合によってガス回収サブ配管に異常燃焼が発生することを未然に防止できる。
ここで、前記ガス供給配管の途中に配置され、前記ガス供給配管を流れる改質ガスの流量を測定する第1の流量測定手段と、前記ガス回収配管の途中に配置され、前記ガス回収配管を流れるオフガスの流量を測定する第2の流量測定手段と、演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記第1の流量測定手段により測定された改質ガス流量および前記第2の流量測定手段により測定されたオフガス流量に基づき前記燃料電池の
水素ガス利用量を算出するものであっても良い。
また、前記ガス供給配管の途中に配置され、前記ガス供給配管を流れる改質ガスの流量を測定する第1の流量測定手段と、演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記第1の流量測定手段により測定された改質ガス流量および前記燃料電池の発電条件に基づき前記燃料電池の水素ガス利用量を算出するものであっても良い。
こうして、前記演算装置は、前記水素ガス利用量に基づき水素ガス料金課金を実行可能になる。
このような構成を採用すると、燃料資源としてのオフガスの価値が適正に見積もられることにより、正確な水素ガス利用量が算出される。
本発明に係る水素ガス料金課金装置は、水素ガスステーションにより生成され、複数の燃料電池に供給される水素リッチな改質ガスの流量を、前記燃料電池毎に測定する第1の流量測定手段と、前記燃料電池により消費されなかった水素ガスを含むオフガスの流量を、前記燃料電池毎に測定する第2の流量測定手段と、演算装置と、を備え、前記演算装置が、前記第1の流量測定手段により測定された改質ガス流量および前記第2の流量測定手段により測定されたオフガス流量に基づき水素ガス利用量を前記燃料電池毎に算出すると共に、前記水素ガス利用量に基づき水素ガス料金課金を実行するものである。
また、本発明に係る水素ガス料金課金装置は、水素ガスステーションにより生成され、複数の燃料電池に供給される水素リッチな改質ガスの流量を、前記燃料電池毎に測定する第1の流量測定手段と、演算装置と、を備え、前記演算装置が、前記第1の流量測定手段により測定された改質ガス流量および前記燃料電池の発電条件に基づき水素ガス利用量を前記燃料電池毎に算出すると共に、前記水素ガス利用量に基づき水素ガス料金課金を実行するものである。
こうしてガス供給業者は、この水素ガス料金課金装置により改質ガスおよびオフガスに対して水素ガス利用価値に対応した重み付けを行った上で、個々の家庭における正確な水素ガス利用量を算出できて、この水素ガス利用量に対応した適切な料金課金を個々の家庭に対して実行できる。
本発明によれば、複数の燃料電池の燃料ガス排出口から排出された未消費の水素ガスを含むオフガスを回収してこのオフガスを有効に利用する水素ガスステーションおよび燃料電池システムが得られる。
また、本発明によれば、複数の燃料電池の燃料ガス排出口から排出されたオフガスの価値を見積もった適正な水素ガス料金課金の実行を可能にした水素ガス料金課金装置が得られる。
以下、本発明の実施の形態1〜5について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1による分散型の燃料電池システムの構成を示した図である。
実施の形態1による分散型の燃料電池システム100(以下、単に燃料電池システム100という。)は主として、水素リッチな改質ガスを生成してガス供給元として機能する水素ガスステーション1と、この改質ガス(水素ガス)を消費することにより発電および発熱する、ガス供給先としての複数の燃料電池4と、によって構成されている。なお、水素ガスステーション1の内部構成は後ほど詳しく説明する。
そして、燃料電池システム100の水素ガス供給系統は、水素ガスステーション1から供給された改質ガスを供給用中継部3に導くため、水素ガスステーション1のガス供給ポート35と供給用中継部3とを連通させたガス供給メイン配管2(ガス供給配管)と、燃料電池4の各々の燃料ガス供給口(図示せず)に接続して燃料電池4のアノード(図示せず)の各々に、水素ガスステーション1から供給された改質ガスを適宜の量に分配して導くための複数のガス供給サブ配管30(ガス供給配管)と、これらのガス供給サブ配管30を一箇所に集合させ、ガス圧を変換させる機能を有する供給用中継部3と、によって構成されている。
こうして水素ガスステーション1から供給された改質ガスの燃料電池4への供給は、供給インフラとして予め設置されたガス供給メイン配管2を介して実行される。
ガス供給メイン配管2に接続される燃料電池4の数が増えると、改質ガスの供給配管系統が複雑になる。このため、図1に示すように、ガス供給メイン配管2から導かれた改質ガスが、ガス中継地として機能する供給用中継部3に一旦、供給された後、そこから各燃料電池4の燃料ガス供給口に分配する構成が採用されている。なお、燃料電池4の数やその容量に対応して、供給用中継部3の数や容量を調整してそこからの供給能力を適正化することが可能である。
燃料電池システム100の水素ガス回収系統は、燃料電池4の各々の燃料ガス排出口(図示せず)に接続して燃料電池4のアノードにおける発電反応に寄与することなくそこで消費されなかった水素ガスを含んだ回収ガス(以下、オフガスという。)を、燃料電池4の燃料ガス排出口から外部に導くための複数のガス回収サブ配管33(ガス回収配管)と、これらのガス回収サブ配管33を一箇所に集中させ、ガス圧を変換する機能を有する回収用中継部5と、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出して回収用中継部5に送られたオフガスを、水素ガスステーション1に戻すため、水素ガスステーション1のガス回収ポート36と回収用中継部5とを連通させたガス回収メイン配管6(ガス回収配管)と、よって構成されている。
こうして、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスの水素ガスステーション1への還流は、供給インフラとして予め設置されたガス回収メイン配管6を介して実行される。
ガス回収メイン配管6に接続される燃料電池4の数が増えると、オフガスの回収配管系統が複雑になる。このため、図1に示すように、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスが、ガス中継地として機能する回収用中継部5に一旦、供給され集められた後、そこからガス回収メイン配管6に送られる構成が採用されている。
なお、燃料電池4の数やその容量に対応して、回収用中継部5の数や容量を調整してそこからの回収能力を適正化することが可能である。
また、燃料電池4のアノードに供給される改質ガス流量を測定するための改質ガス流量測定手段31(例えば、ガスメーター)が、ガス供給サブ配管30の各々の途中に配置されている。同様に、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスの流量を測定するためのオフガス流量測定手段32(例えば、ガスメーター)が、ガス回収サブ配管33の各々の途中に配置されている。
そして演算装置7が、改質ガス流量測定手段31およびオフガス流量測定手段32から出力されたガス流量データを受け取るように構成され、これにより、燃料電池4毎にその発電動作時における水素ガス利用量を、両者のガス流量データに基づいて演算できる。なお、改質ガスとオフガスとの間では水素ガス含有濃度が異なっており水素ガス利用価値に開きがあるため、両者のガス流量データに対して水素ガス利用価値に対応する所定の重み付けを行ったうえで、上記の水素ガス利用量が算出される。こうして演算装置7は、この水素ガス利用量に対応した料金課金を実行することができる。
即ち、図1に示した水素ガス料金課金装置80は、改質ガス流量測定手段31と、オフガス流量測定手段32と、演算装置7と、によって構成され、水素ガス料金課金装置80により、燃料電池4毎に、適正な水素ガス利用量に基づく料金課金が実行される。
また、演算装置7は、発電量、発電電圧および電流値等の燃料電池4の運転状態を燃料電池4から受け取り、この運転状態から燃料電池4毎にその発電動作時に消費した水素ガス消費量を推定することも可能なように構成されている。これにより、演算装置7が改質ガス流量測定手段31から出力されたガス流量データとこの水素ガス消費量に基づいて上記の水素ガス利用量を演算することもできる。
勿論、こうした演算装置7の動作を、各燃料電池4の運転を適切に制御する制御装置(図示せず)に実行させることも可能であり、後ほど述べる水素ガスステーション1の内部機器の動作を制御する制御装置34(図2参照)に実行させることも可能である。
次に、水素ガスステーションの内部構成について図面を参照して説明する。
図2は、実施の形態1による水素ガスステーションの内部構成を示した図である。
水素ガスステーション1は主として、炭化水素成分(天然ガスやLPG等)またはアルコール(メタノール等)若しくはナフサ成分のような有機化合物を含む原料ガスと水蒸気の改質反応を進行させ、これにより水素ガスを主成分として含む改質ガスを生成する改質器11と、この改質器11から供給された改質ガス中の一酸化炭素ガス(以下、COガスという。)を、水蒸気を用いてシフト反応によって低減させる変成器15と、変成器15から供給された改質ガス中のCOガス濃度を最終的に100ppm(DRYガス体積基準)以下にまで低減させるため、この改質ガス中のCOガスを、酸素ガスを用いて選択的に除去する選択酸化器16と、これらの機器11、15、16の動作を適切に制御する制御装置34と、によって構成されている。
改質器11の内部にはルテニウム触媒をアルミナ担体に担持し調製して改質反応を促進する改質触媒体(図示せず)が充填され、この改質触媒体に対して改質反応に必要な熱を供給する改質加熱器18(燃焼器)が改質器11に併設されている。
なお、改質加熱器18は、原料ガスの一部またはオフガス若しくは原料ガスとオフガスからなる混合燃料を空気と共に燃焼して消費させるバーナー(図示せず)を有している。
また、変成器15の内部には、例えば銅-亜鉛系触媒からなる変成触媒体が充填され、選択酸化器16の内部には、例えば貴金属を含む触媒からなる選択酸化触媒体が充填されている。
次に、水素ガスステーション1のガス配管系統について図2を参照して説明する。
水素ガスステーション1のガス配管系統は、原料ガス供給手段(図示せず)から原料ガスを改質器11に導く原料ガス供給配管12と、水供給手段(図示せず)から改質反応に必要なイオン交換水を改質器11に導く水供給配管13と、原料ガス供給配管12の途中から分岐して延び、原料ガス供給手段から供給される原料ガスの一部を改質加熱器18に導く燃料供給配管14と、改質器11から供給された改質ガスを変成器15に導く第1の内部配管51と、変成器15から供給された改質ガスを選択酸化器16に導く第2の内部配管52と、選択酸化器16における改質ガスの選択酸化反応に使用する空気を、空気供給手段(図示せず)から選択酸化器16に導く空気供給配管17と、によって構成されている。
なおここで、水素ガスステーション1のガス配管系統における燃料供給配管14の途中には、ガス回収メイン配管6(図1参照)に接続するガス回収ポート36が配置され、これにより、ガス回収メイン配管6を流れるオフガスがガス回収ポート36を介して燃料供給配管14に導かれ、その後、このオフガスがガス回収ポート36の下流側の燃料供給配管14を通って改質加熱器18に送られる。
また、水素ガスステーション1の選択酸化器16には、ガス供給メイン配管2(図1参照)に接続するガス供給ポート35が配置され、これにより、選択酸化器16から供給された改質ガスがガス供給ポート35を介してガス供給メイン配管2に導かれる。
なお、原料ガスとして、例えば天然ガスを使用する際には、天然ガス中に含有された硫黄成分を適切に除去するためのゼオライト吸収剤を充填した脱硫装置(図示ぜす)が原料ガス供給配管12の途中に配置される。
次に、以上に説明した燃料電池システム100の動作を、図1および図2を参照して説明する。なおここでは、原料ガスインフラとして整備されて入手容易な天然ガスや都市ガスが、原料ガス例として想定されている。
水素ガスステーション1では、天然ガスや都市ガスよりも水素ガス成分を高濃度に含有する水素リッチな改質ガスが、天然ガスおよび水蒸気から改質反応により生成される。この改質ガスの生成は、図2に示した制御装置34により改質器11、変成器15および選択酸化器16を適切に動作させて実行され、これにより、燃料電池4のアノードの反応に適した改質ガス組成が得られる。なお、この改質ガス生成は、既存技術に基づくものであり、その詳細な説明は省略する。
そして、水素ガスステーション1から供給された改質ガスが、ガス供給メイン配管2および供給用中継部3並びにガス供給サブ配管30を介して、燃料電池4の各々のアノードに供給され、燃料電池4のアノードで改質ガス(水素ガス)が消費される。なお、図示は省略しているが、燃料電池4の各々のカソード(図示せず)には酸素ガスが供給され、燃料電池4の発電中にはカソードにおいて酸素ガスが消費されている。
また、燃料電池4の発電の際には、燃料電池4の各々の発電量を合算したトータル発電量を賄うように適量の改質ガスが水素ガスステーション1で生成される。即ち、水素ガスステーション1の制御装置34は、改質器11等を適切に動作させ、これにより、適量の改質ガスが燃料電池4の各々に向けて供給される。
また、改質ガスに含有する水素ガスを燃料電池4のアノードにおける発電動作により消費させることができずに、燃料電池4の燃料ガス排出口から未消費の水素ガスを含有するオフガスが外部に流出する。このため、この実施の形態1では、ガス回収サブ配管33および回収用中継部5並びにガス回収メイン配管6を介して、こうした燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されるオフガスが、水素ガスステーション1の改質加熱器18(図2参照)に戻されるようになっている。
そして水素ガスステーション1では、このオフガスを改質加熱器18で燃焼させることにより改質器11の改質触媒体に供給される熱源として利用でき、これにより、改質触媒体による改質ガス生成のための改質反応が適切に進行される。
このような燃料電池システム100によれば、以下のような効果を奏す。
実施の形態1による固体高分子型の燃料電池4において、天然ガス等の改質反応により得られた改質ガスを使用する場合に、燃料電池4の発電効率は40数%程度、その熱効率は40%程度(HHV基準)であった。
但し、改質ガス生成に所定エネルギーを要することに起因して、真の発電効率および熱効率は、上記の発電効率および熱効率の数値に改質ガス生成効率を乗じたものになる。このため、水素ガス生成過程における効率の向上は、エネルギートータル効率の向上の観点から重要な技術課題である。
勿論、燃料電池毎に個別に専用の改質器を有する既存の燃料電池システムにおいても、燃料電池から排出されたオフガスを改質器の改質加熱器に戻して、そこでオフガスを燃焼させることにより改質器の改質触媒体を昇温させることは可能である。
しかし、既存の燃料電池システムのように、燃料電池毎に個別に改質器によって改質ガスを生成する手法は、改質器(改質触媒体)への供給熱量と改質器から外部への放熱量との間を熱的にバランスさせる場合には、改質器の供給熱量に対する改質器から外部への放熱量の割合は大きくなり、これによる熱損失は無視できず、水素ガス生成効率の向上が困難である。しかも、燃料電池の水素ガスの需要量変化に対応して、改質器に還流するオフガスの戻り量を調整させる必要がある一方、既存の燃料電池システムでは、こうした水素ガスの需要量とオフガスの戻り量のバランスを取ることが難しく、これにより、水素ガス生成効率を劣化させる傾向にもある。
よって燃料電池毎に個別に改質器を有する既存の燃料電池システムでは、仮に燃料電池から排出されたオフガスを改質器の改質加熱部に戻しても、これの有効利用には一定の限界があると言える。
一方、複数の燃料電池4による多量の水素ガス需要を賄う水素ガスステーション1を有する、この実施の形態1による燃料電池システム100では、水素ガスステーション1の改質器11の大規模化に伴って、水素ガス生成に際して改質器11の供給熱量に対する改質器11から外部への放熱量の割合が、燃料電池4毎に設置した小規模な従来の改質器に比べて小さくでき、その結果として水素ガス生成効率を高めることができる。即ち、燃料電池システム100全体のエネルギー利用効率を向上させるには、水素ガスステーション1により改質ガスを一ヶ所で集中的に生成させたうえで、こうして生成した改質ガスを、多数の燃料電池4の各々に分配して供給するという集中生産型改質ガスの供給方式が理想的である。
同時に、このような集中生産型改質ガスの供給方式では、改質ガス供給先(燃料電池4)の増加に伴って、個々の燃料電池4における改質ガスの需要量のばらつきや個々の燃料電池4から排出されたオフガスの戻り量のばらつきを互いに相殺することが可能になって、改質ガスの供給量およびオフガスの戻り量が平準化して改質器11を安定して運転させることができ、このことからも水素ガス生成効率を向上させ得る。
ここで、通常の都市ガス供給インフラであれば、ガス供給業者は、ガス回収という考え方を念頭に置く必要性がなく、ガス供給先(例えば、家庭用燃料電池であれば個々の家庭)におけるガスの消費量を、ガス供給先のガスの供給量に等しいと看做して、ガスの消費量のみに対応した料金課金体系を構築できる。
しかし、この実施の形態1に示した燃料電池システム100では、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスが、水素ガスステーション1に戻されて、このオフガスは有用な燃料資源として水素ガスステーション1の改質器11において改質ガス生成に利用される。このため、既存の都市ガス供給インフラに倣った料金課金体系では、燃料資源としてのオフガスの価値が見積もられてなく望ましくない。
そこで既に説明したように、改質ガス流量とオフガス流量が何れも、ガスメーターのような改質ガスおよびオフガス流量測定手段31、32により検知されている。また、演算装置7が、発電量、発電電圧および電流値等という燃料電池4の運転状態からその燃料電池4の発電の際に消費した水素ガス量を演算して、これにより、オフガス中に含有する水素ガス量が算出される。
こうしてガス供給業者は、図1に示した水素ガス料金課金装置80により改質ガスおよびオフガスに対して水素ガス利用価値に対応した重み付けを行った上で、個々の家庭における正確な水素ガス利用量を算出できて、この水素ガス利用量に対応した適切な料金課金を個々の家庭に対して実行できる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、各燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスが、水素ガスステーション1に戻されたうえで、水素ガスステーション1の内部で改質ガス生成の利用に供される例を説明したが、オフガスの利用形態はこれに限られるものではない。
本発明の実施の形態2では、こうしたオフガスを燃料電池4で不足した熱エネルギーの熱源として利用する例を説明する。例えば燃料電池4の各々に、オフガスの一部または全量を燃焼処理可能なオフガス処理装置20(図5参照)を設置して、オフガスをオフガス処理装置20により燃焼させて得られた高温の燃焼ガスとの熱交換により、燃料電池4の発電動作に伴って生成されたお湯を再加熱させることも可能である。
図5は、オフガス処理装置と貯湯槽によるオフガス利用形態の一例を示した図である。なお、このオフガス利用形態以外の図5に示した構成および動作は、実施の形態1で説明したものと同じであり、両者に共通する構成および動作の説明は省略する。
図5によれば、所定量のお湯を貯める貯湯槽19が、燃料電池4の各々に併設して設置されている。そして、この貯湯槽19の各々には、オフガスを燃焼させる燃焼器(例えばバーナー)とオフガスの燃焼により生成した高温の燃焼ガスの熱で水を加熱してお湯としそれによって燃焼ガスの熱を回収する熱回収手段からなるオフガス処理装置20が配置されている。
また、燃料電池4の燃料ガス排出口とオフガス処理装置20との間を連通するオフガス配管53が配置され、これにより燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスをオフガス処理装置20に導くことができる。
また、ガス回収サブ配管33(図1参照)は、このオフガス配管53の途中から分岐して延びており、ガス回収サブ配管33とオフガス配管53との接続箇所には、制御装置(図示せず)により切り替え動作を制御された切り替え弁50が配置されている。そして切り替え弁50の切り替え動作により、オフガス利用形態に応じて、オフガスを、オフガス配管53を介してオフガス処理装置20に送ることも、ガス回収サブ配管33およびガス回収メイン配管6(図1参照)を介して水素ガスステーション1(図1参照)に戻すことも、可能である。
ここでは、オフガスを水素ガスステーション1に戻すことなく、これを貯湯槽19に配置されたオフガス処理装置20で燃焼させる動作例を説明する。
燃料電池4により1kWの発電が実行され、かつ燃料電池4の水素ガス利用率が75%であれば、毎分16Lに相当する改質ガス中の水素ガスを燃料電池4のアノードに供給すると、オフガス中の水素ガス量は毎分4Lになる。そして、このオフガスをオフガス処理装置20で燃焼させることにより、1時間当たり約2400kJの熱をお湯として回収できる。
なお、未燃オフガスの適切な排出処理およびオフガスエネルギーの有効利用の観点から燃料電池に同様のオフガス処理装置を配置した既存の燃料電池システムもある。
しかし、気温の高い季節にあっては貯湯槽19によるオフガス利用には限度があり、燃料電池4の燃料ガス排出口に接続したオフガス処理装置20によるオフガス処理のみでは、燃料資源としてのオフガスエネルギーを充分に有効活用することは難しい。
そこで、この実施の形態2に示した燃料電池システム100のように、貯湯槽19によるオフガス利用に加え、水素ガスステーション1の改質器11の熱源としてオフガスを利用する形態が併用されれば、容易にかつ幅広くオフガスの熱エネルギーを利用可能になる。
(実施の形態3)
実施の形態1では、ガス供給サブ配管30とガス回収サブ配管33とを、別体にして別々のインフラとして整備する例を説明した。同様に、ガス供給メイン配管2とガス回収メイン配管6とが、別体に分離され別々のインフラをして整備されている。
しかし例えば、ガス供給サブ配管30とガス回収サブ配管33を別体にして配管施工を行うと、各ガス供給先に供給用と回収用の2種類の配管が共存してことにより配管施工に悪影響を及ぼす。
このため、実施の形態3では、こうした配管施工の難点を根本的に解消するため、ガス供給サブ配管30およびガス回収サブ配管33の一体化を図った例を説明する。
図3は、ガス供給サブ配管30とガス回収サブ配管33とを一体に形成した配管例を示した図である。
図3から理解されるとおり、ガス供給サブ配管30とガス回収サブ配管33とを一体にした供給・回収一体配管60は、円筒状の内配管61とこの内配管61の径よりも大きい径を有する円筒状の外配管62からなる2重配管構造を有しており、より詳しくは、内配管61と外配管62とを同軸にかつ所定の筒状空間を形成するようにして内配管61の周囲に外配管62が配置されている。
なお図示は省略しているが、供給・回収一体配管60から送られた改質ガスを燃料電池4の燃料ガス供給口に導くため、また燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスを供給・回収一体配管60に戻すため、燃料ガス供給口と供給・回収一体配管とを繋ぐ適宜の配管および燃料ガス排出口と供給・回収一体配管60とを繋ぐ適宜の配管が配置されている。
ここで、内配管61および外配管62の一方がガス供給サブ配管30を構成し、その他方が前記ガス回収サブ配管33を構成する。
即ち、水素ガスステーション1から供給された改質ガスは、内配管61の内部空間および内配管61と外配管62との間の筒状空間のうちの何れか一方に導かれ、かつ燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスは、その他方に導かれる。
もっとも、図3に示すように、内配管61がガス回収サブ配管33を構成し、外配管62がガス供給サブ配管30を構成する方が好ましい。即ち、水素ガスステーション1から供給された改質ガスが内配管61と外配管62との間の筒状空間に導かれ、かつ燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスが内配管61の内部空間に導かれることが、これらのガスの熱効率向上の観点からは望ましい。
燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスの温度は、燃料電池4の動作温度にほぼ等しく、燃料電池4の燃料ガス供給口に供給される改質ガスの温度よりも高めである。このため、内配管61と外配管62との間の筒状空間を介して燃料電池4の燃料ガス供給口に送られる改質ガスを、内配管61の内部空間を介して燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスとの熱交換により加熱させることができると共に、オフガスの放熱が、その周囲を流れる改質ガスの存在により抑えることができる。こうして燃料電池4の燃料ガス排出口から排出された直後のオフガスに内在する熱エネルギーが有効に利用される。
(実施の形態4)
図1に示した複数の燃料電池4を有する分散型の燃料電池システム100においては、その実用化に向けた各種の技術的に解決すべき事項がある。より具体的には、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスについて以下に示す技術課題がある。
第1に、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスが水素ステーション1に戻される際に、このオフガスを水素ガスステーション1に導くための距離が長くなると、オフガスの圧損が高まってオフガスのガス圧不足に陥る可能性がある。
第2に、燃料電池4の燃料ガス排出口に接続するガス回収サブ配管33に内在するオフガスのガス圧が燃料電池4の各々で相違すると、高いガス圧状態にあるガス回収サブ配管33から低いガス圧状態にあるガス回収サブ配管33に向けてオフガスが、回収用中継部5を介して流れ込んで、最悪、低いガス圧状態にあるガス回収サブ配管に接続された燃料電池4のアノードにまでオフガスが逆流してしまう可能性もある。
第3に、停電やオフガス圧送系統の故障等の予期せぬ事態に陥って、ガス昇圧装置に不具合が生じると安定にオフガスのガス圧が得られずに、この場合にオフガスが逆流することも想定される。
第4に、燃料電池4のカソードに存在する空気(酸素ガス)が電解質膜を通過して燃料電池4のアノードに至ると、水素ガスを含むオフガスと酸素ガスとの混合により水素ガスの異常燃焼を誘発する可能性もある。
第5に、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスは多量の水蒸気を含み、その露点は燃料電池4の動作温度に近接しており、オフガスを一時期に大量にガス回収サブ配管33に排出された場合には、このガス回収サブ配管33の途中でオフガスの温度が下がって、そこに含有する水蒸気から結露した水が生成されることによりガス回収サブ配管33を結露で塞ぐ可能性がある。
そこで、上記の第1〜第4に記載の不具合に適切に対処するため、図6に示すように、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスを回収用中継部5に向けて流すガス回収サブ配管33の途中に各種センサおよび昇圧装置並びに各種弁が配置されている。
図6によれば、ガス回収サブ配管33を開閉するガス開閉手段として機能するガス封止弁25(例えば、電磁弁)と、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されるオフガスの逆流を防止する逆止弁21(逆流防止機構)と、ガス回収サブ配管33にあるオフガスのガス圧を昇圧させる第1の昇圧装置23a(例えば、ブースーター)と、ガス回収サブ配管33にあるオフガスのガス圧を測定する第1の圧力計22aと、オフガス中の酸素ガス濃度を測定する磁気力式の酸素ガス検出計24とが、切り替え弁50よりもオフガス流れの下流側、かつ回収用中継部5よりもオフガス流れの上流側に位置するガス回収サブ配管33の途中に、切り替え弁50からオフガス流れ方向に沿って順番に配置されている。
また、ガス回収メイン配管6にあるオフガスのガス圧を測定する第2の圧力計22bが、回収用中継部5に接続されたガス回収メイン配管6の途中に配置されている。
ここでは、第1の昇圧装置23aがガス回収サブ配管33の途中に配置されているが、これに替えて、図6に示しように、この第2の昇圧装置23bがガス供給サブ配管30(図1参照)の途中に配置される構成であっても良い。また、逆止弁21は、ガス回収サブ配管33の途中に配置されているが、同様の逆止弁(図示せず)を、ガス回収メイン配管6の途中に配置させることにより、ガス回収メイン配管6にあるオフガスの逆流を防止することができる。
なお、制御装置(図示せず)が、ガス封止弁25の開閉動作および第1の昇圧装置23aの昇圧動作並びに第2の昇圧装置23bの昇圧動作を、第1および第2の圧力計22a、22bおよび酸素ガス検出計24の検知信号に基づいて適正に制御している。
こうして、ガス供給サブ配管33の途中に、又はガス回収サブ配管33の途中に第1又は第2の昇圧装置23a、23bを設けることにより、オフガスのガス圧が、予め設定した値に維持されるように適切に確保される。具体的なオフガスのガス圧の設定値としては、ガス回収サブ配管33の内部をオフガスがスムーズに通気可能な圧力であり、燃料電池4毎に個別に設定されている。なおここでは、ガス回収サブ配管33にあるオフガスのガス圧は第1の圧力計22aにより逐次モニタされている。
なお、回収用中継部5の接続するガス回収メイン配管6に第2の圧力計22bを付加的に配置すると、第1および第2の圧力計22a、22bの差圧を測定できる。そして、この差圧を適正に制御することによりオフガスを確実かつ安定に水素ガスステーション1に戻すことが可能になる。更に、燃料電池4毎に配置した複数の圧力計を連動させ、これらの圧力計の差圧の測定およびその差圧の適正な制御によりオフガスをより安定して水素ガスステーション1に戻し得る。
また、第1の圧力計22aにより測定されるガス圧に下限値が設定され、第1の圧力計22aにより測定された圧力値が、その下限値未満になった場合には、ガス封止弁25が閉まるように作動させても良い。即ち、ガス封止弁25は、何らかの不測の事態によるガス圧低下に応答して緊急に、ガス回収サブ配管33を閉める役割を担っている。
そうすると、例えば燃料電池4に接続する第1の昇圧装置23aが予期せぬ事態により故障し、そこでの適正なオフガスのガス圧が得られなくなった場合に、ガス封止弁25が閉まり、これにより、上記の逆止弁21に加え、燃料電池4から排出されたオフガスの逆流がガス封止弁25によっても阻止できる。
ここで、ガス封止弁25を閉めて燃料電池4の燃料ガス排出口からオフガス送出を停止すると、オフガス送出の停止後には改質ガスの燃料電池4の燃料ガス供給口への供給継続が不可能になる。よって、第1の圧力計22aにより測定された圧力値が、その下限値未満の場合には、ガス封止弁25が閉まると共に燃料電池4の発電動作が停止する。
なお、こうした燃料電池4の発電動作が停止するという不都合を回避するため、図6に示すように、貯湯槽19にオフガスを処理するオフガス処理装置20を配置することにより、燃料電池4の燃料ガス排出口から排出されたオフガスを、既に説明した切り替え弁50の動作に基づきオフガス処理装置20に導くことができる。
更に、ガス回収サブ配管33の途中にオフガス中の酸素ガス濃度を測定する酸素ガス検出計24を設けることにより、オフガス中に酸素ガスが混入したか否かが確実に検出される。
また、予期せぬ事態によりガス回収サブ配管33にあるオフガスに酸素ガス混入が発生した場合に備え、オフガス中に含有可能な酸素ガス濃度の上限として、水素ガスの可燃範囲下限値に相当する酸素ガス濃度(1%)という基準を設定する。こうすると、その基準濃度以上の酸素ガスが、酸素ガス検出器24により検出された際には、制御装置は、ガス封止弁25を閉めるように作動させて、ガス回収サブ配管33へのオフガスの導入を自動的に停止させる。こうして、ガス回収サブ配管33における水素ガスと酸素ガスの混合による水素ガスの異常燃焼が未然に防止される。
また、上記の第5に記載の不具合に適切に対処するため、図7に示すように、燃料電池4の燃料ガス排出口に接続したガス回収サブ配管33の途中には、オフガス中に含有する水蒸気の凝縮を促進させる凝縮装置70が配置されている。こうして、オフガスに含有する水蒸気の凝縮を促進させることによりオフガスの露点温度を下げ、ガス回収サブ配管33をオフガスから結露した水で塞ぐという不具合を未然に防止している。
なお、この凝縮装置70は、オフガス中に含有する水蒸気から生成された凝縮水を溜める水溜部71と、この水溜部71と連通する水排出配管72と、この水排出配管72の途中に配置された水排出弁73と、によって構成され、所定量以上の凝縮水が水溜部71に溜まると、水排出弁73が開栓されて、水排出配管72を介して水溜部71に溜まった凝縮水が外部に排水される。
また同様に、回収用中継部5に集められたオフガスの温度が下がってそこに含有する水蒸気から結露した水が生成され、この結露により回収用中継部5の周辺の配管を塞ぐ可能性もある。よって、回収用中継部5の内部や回収用中継部5に連通するガス回収メイン配管6の途中にも、図7に示した凝縮装置70と同様の凝縮装置を配置しても良い。
勿論、このような凝集装置の配置場所は、ガス回収サブ配管33やガス回収メイン配管6に限定されるものではなく、要するに、少なくとも燃料電池4の燃料ガス排出口(オフガスの排出口)下流側の適所に上記の凝縮装置が配置されれば、その効果を奏する。もっとも、結露した水を発生し得る領域のうちの可能な限りオフガス流れの上流側に凝縮装置を配置して、水凝縮の影響を早期に回避するように処理する方が望ましいと言える。
(実施の形態5)
図4は、実施の形態5による分散型の燃料電池システムの構成を示した図である。
この実施の形態5においては、水素ガスステーション1から供給された改質ガスを、供給用中継部3に導く際に一時的に貯蔵するバッファーとして機能する改質ガス貯蔵部40が、ガス供給メイン配管2の途中に配置されると共に、各燃料電池4の燃料ガス排出口から排出され、回収用中継部5に集められたオフガスを水素ガスステーション1に戻す際に一時的に貯蔵するバッファーとして機能するオフガス貯蔵部41が、ガス回収メイン配管6の途中に配置されている。
なお、改質ガス貯蔵部40およびオフガス貯蔵部41の具体例としては、高圧タイプの貯蔵タンク、水素吸蔵合金を用いたタンクのようにガスを貯蔵かつ排気できる機能を備えるものである。なお、これらの改質ガス貯蔵部40とオフガス貯蔵部41以外の実施の形態5による燃料電池システム100の構成および動作は、実施の形態1で説明したものと同じであり、両者に共通する構成および動作の説明は省略する。
改質ガス貯蔵部40およびオフガス貯蔵部41を配置することにより、燃料電池4の各々の発電量に対応した改質ガスの安定供給およびオフガスの安定回収が可能になって、実施の形態5による分散型の燃料電池システム100の利便性が改善すると共に、その運転効率が向上する。