以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.GPSシステム
1−1.概要
図1は、GPSシステムの概要について説明するための図である。
GPS衛星10は、地球の上空の所定の軌道上を周回しており、1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。ここで、GPS衛星10は本発明における位置情報衛星の一例であり、航法メッセージが重畳された1.57542GHzの電波(以下、「衛星信号」という)は本発明における衛星信号の一例である。
現在、約30個のGPS衛星10が存在しており、衛星信号がどのGPS衛星10から送信されたかを識別するために、各GPS衛星10はC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンを衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。従って、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
GPS衛星10は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報(以下、「GPS時刻情報」という)が含まれている。また、地上のコントロールセグメントにより各GPS衛星10に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、衛星信号にはその時刻誤差を補正するための時刻補正パラメータも含まれている。そのため、GPS受信機1は、1つのGPS衛星10から送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と時刻補正パラメータを使用して内部時刻を正確な時刻に修正することができる。
衛星信号にはGPS衛星10の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。GPS受信機1は、GPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行うことができる。測位計算は、GPS受信機1の内部時刻にある程度の誤差が含まれていることを前提として行われる。すなわち、GPS受信機1の3次元の位置を特定するためのx,y,zパラメータに加えて時刻誤差も未知数になる。そのため、GPS受信機1は、一般的には4つ以上のGPS衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行う。
測位計算の精度は、GPS衛星10とGPS受信機1の幾何学的な配置によって異なる。そこで、DOP(Dilution Of Precision)と呼ばれる、GPS衛星10の配置に起因する測位計算の精度劣化の程度を表す指標が一般的に使用されている。すなわち、測位計算の精度は測距精度(GPS衛星10とGPS受信機1の間の距離の測定精度)にDOP値を乗じて評価され、DOP値が小さいほど測位計算の精度がよい。なお、DOPには、位置と時刻の決定精度の総合的な指標であるGDOP(Geometric DOP)、位置の決定精度の指標であるPDOP(Positional DOP)、水平方向の位置の決定精度の指標であるHDOP(Horizontal DOP)、垂直方向の位置の決定精度の指標であるVDOP(Vertical DOP)、時刻の決定精度の指標であるTDOP(Time DOP)等がある。
1−2.航法メッセージ
図2(A)〜図2(C)は、航法メッセージの構成について説明するための図である。
図2(A)に示すように、航法メッセージは、全ビット数1500ビットのメインフレームを1単位とするデータとして構成される。メインフレームは、それぞれ300ビットの5つのサブフレーム1〜5に分割されている。1つのサブフレームのデータは、各GPS衛星10から6秒で送信される。従って、1つのメインフレームのデータは、各GPS衛星10から30秒で送信される。
サブフレーム1には、週番号データ等の衛星補正データが含まれている。週番号データは、現在のGPS時刻情報が含まれる週を表す情報である。GPS時刻情報の起点は、UTC(協定世界時)における1980年1月6日00:00:00であり、この日に始まる週は週番号0となっている。週番号データは、1週間単位で更新される。
サブフレーム2、3には、エフェメリスパラメータ(各GPS衛星10の詳細な軌道情報)が含まれる。また、サブフレーム4、5には、アルマナックパラメータ(全GPS衛星10の概略軌道情報)が含まれている。
さらに、サブフレーム1〜5には、先頭から、30ビットのTLM(Telemetry word)データが格納されたTLM(Telemetry)ワードと30ビットのHOW(hand over word)データが格納されたHOWワードが含まれている。
従って、TLMワードやHOWワードは、GPS装置衛星10から6秒間隔で送信されるのに対し、週番号データ等の衛星補正データ、エフェメリスパラメータ、アルマナックパラメータは30秒間隔で送信される。
図2(B)に示すように、TLMワードには、プリアンブルデータ、TLMメッセージ、Reservedビット、パリティデータが含まれている。
図2(C)に示すように、HOWワードには、TOW(Time of Week、「Zカウント」ともいう)という時刻情報が含まれている。Zカウントデータは毎週日曜日の0時からの経過時間が秒で表示され、翌週の日曜日の0時に0に戻るようになっている。つまり、Zカウントデータは、週の初めから一週間毎に示される秒単位の情報であって、経過時間が1.5秒単位で表した数となっている。ここで、Zカウントデータは、次のサブフレームデータの先頭ビットが送信される時刻情報を示す。例えば、サブフレーム1のZカウントデータは、サブフレーム2の先頭ビットが送信される時刻情報を示す。また、HOWワードには、サブフレームのIDを示す3ビットのデータ(IDコード)も含まれている。すなわち、図2(A)に示すサブフレーム1〜5のHOWワードには、それぞれ「001」、「010」、「011」、「100」、「101」のIDコードが含まれている。
GPS受信機1は、サブフレーム1に含まれる週番号データとサブフレーム1〜5に含まれるHOWワード(Zカウントデータ)を取得することで、GPS時刻情報を取得することができる。ただし、GPS受信機1は、以前に週番号データを取得し、週番号データを取得した時期からの経過時間を内部でカウントしている場合は、週番号データを取得しなくてもGPS衛星の現在の週番号データを得ることができる。従って、GPS受信機1は、Zカウントデータを取得すれば、現在のGPS時刻情報が概算で分かるようになっている。このため、GPS受信機1は、通常、時刻情報としてZカウントデータのみを取得する。
なお、TLMワード、HOWワード(Zカウントデータ)、衛星補正データ、エフェメリスパラメータ、アルマナックパラメータ等は、本発明における衛星情報の一例である。
GPS受信機1として、例えば、GPS装置付き腕時計(以下、「GPS付き腕時計」という)を考えることができる。GPS付き腕時計は本発明に係る電子時計の一例であり、以下では本実施形態のGPS付き腕時計について説明する。
2.GPS付き腕時計
2−1.第1実施形態
[GPS付き腕時計の構造]
図3(A)及び図3(B)は、本実施の形態のGPS付き腕時計の構造について説明するための図である。図3(A)はGPS付き腕時計の概略平面図であり、図3(B)は図3(A)のGPS付き腕時計の概略断面図である。
図3(A)に示すように、GPS付き腕時計1は、文字板11及び指針12を備えている。文字板11の一部に形成された開口部にディスプレイ13が組み込まれている。ディスプレイ13は、LCD(Liquid Crystal Display)表示パネル等で構成され、現在の経度及び緯度、現在地の都市名等の情報や各種のメッセージ情報を表示する。指針12は、秒針、分針、時針等により構成されており、歯車を介してステップモータで駆動される。
文字板11および指針12は、本発明における時刻情報表示部として機能する。また、ディスプレイ13は、本発明における位置情報表示部として機能する。
GPS付き腕時計1は、リューズ14やボタン15、16を手動操作することにより、少なくとも1つのGPS衛星10からの衛星信号を受信して内部時刻情報の修正を行うモード(測時モード)と複数のGPS衛星10からの衛星信号を受信して測位計算を行い内部時刻情報の時差を修正するモード(測位モード)に設定できるように構成されている。また、GPS付き腕時計1は、測時モードや測位モードを定期的に(自動的に)実行することもできる。
図3(B)に示すように、GPS付き腕時計1は、ステンレス鋼(SUS)、チタン等の金属で構成された外装ケース17を備えている。
外装ケース17は、略円筒状に形成され、表面側の開口にはベゼル18を介して表面ガラス19が取り付けられている。また、外装ケース17の裏面側の開口には裏蓋26が取り付けられている。裏蓋26は、リング状に金属で形成され、その中央の開口には裏面ガラス23が取り付けられている。
外装ケース17の内部には、指針12を駆動するステップモータ、GPSアンテナ27、電池24等が配置されている。
ステップモータは、モータコイル20、ステータ、ロータ等で構成されており、歯車を介して指針12を駆動する。
GPSアンテナ27は、複数のGPS衛星10からの衛星信号を受信するアンテナであり、パッチアンテナ、ヘリカルアンテナ、チップアンテナ等により実現される。GPSアンテナ27は、文字板11の時刻表示面の反対側の面(裏面側)に配置され、表面ガラス19及び文字板11を通過した衛星信号を受信する。そのため、文字板11及び表面ガラス19は、1.5GHz帯の電波を通す材料、例えばプラスチックで構成されている。また、ベゼル18は、衛星信号の受信性能を向上させるためにセラミック等で構成される。
GPSアンテナ27の裏蓋側には回路基板25が配置され、回路基板25の裏蓋側には電池24が配置されている。
回路基板25には、GPSアンテナ27で受信した衛星信号を処理する受信回路を含む受信用IC30、ステップモータの駆動制御等を行う制御用IC40等が取り付けられている。受信用IC30や制御用IC40は、電池24から供給される電力で駆動される。
電池24はリチウムイオン電池等の充電可能な二次電池であり、電池24の下側(裏蓋側)には、磁性シート21が配置されている。磁性シート21を介して充電用コイル22が配置されており、電池24は外部充電器から電磁誘導で電力を充電できるようになっている。
また、磁性シート21は、磁界を迂回させることができるようになっている。そのため、磁性シート21は、電池24の影響を低減して、効率的にエネルギー伝送を行うことができるようになっている。裏蓋26の中央部には、電力転送のために裏面ガラス23が配置されている。
なお、本実施形態では、電池24として、リチウムイオン電池等の二次電池を用いているが、リチウム電池などの一次電池を用いてもよい。また、二次電池を設けた場合の充電方法は、本実施形態のような、充電用コイル22を設けて外部の充電器から電磁誘導方式で充電するものに限らず、例えばGPS付き腕時計1にソーラーセル等の発電機構を設けて充電してもよい。
[GPS付き腕時計の回路構成]
図4は、本実施の形態のGPS付き腕時計の回路構成について説明するための図である。
GPS付き腕時計1は、GPS装置70及び時刻表示装置80を含んで構成されている。GPS装置70は、本発明における受信部、測位計算部、時差判定部、記憶部を含み、衛星信号の受信、衛星情報の取得、測位計算、想定位置領域の算出及び時差境界の判定、時差情報の記憶等の処理を行う。時刻表示装置80は、本発明における時刻情報修正部及び時刻情報表示部を含み、内部時刻情報の修正及び内部時刻情報の表示等の処理を行う。
充電用コイル22は、充電制御回路28を通じて電池24に電力を充電する。電池24は、レギュレータ29を介して、GPS装置70及び時刻表示装置80等に駆動電力を供給する。
[GPS装置の構成]
GPS装置70は、GPSアンテナ27及びSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ31を含む。GPSアンテナ27は、図3(B)で説明したように、複数のGPS衛星10からの衛星信号を受信するアンテナである。ただし、GPSアンテナ27は衛星信号以外の信号も受信する。SAWフィルタ31は、GPSアンテナ27が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルタ31は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成される。
また、GPS装置70は、受信用IC(受信回路)30を含む。受信回路30は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部50とベースバンド部60を含んで構成されている。以下に説明するように、受信回路30は、SAWフィルタ31が抽出した1.5GHz帯の衛星信号から航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する処理を行う。
RF部50は、LNA(Low Noise Amplifier)51、ミキサ52、VCO(Voltage Controlled Oscillator)53、PLL(Phase Locked Loop)回路54、IFアンプ55、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)フィルタ56、ADC(A/D変換器)57等を含んで構成されている。
SAWフィルタ31が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅される。LNA51で増幅された衛星信号は、ミキサ52でVCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコンバートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信号と基準クロック信号を位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信号に同期させる。その結果、VCO53は基準クロック信号の周波数精度の安定したクロック信号を出力することができる。なお、中間周波数として、例えば、数MHzを選択することができる。
ミキサ52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅される。ここで、ミキサ52でのミキシングにより、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も生成される。そのため、IFアンプ55は、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も増幅する。IFフィルタ56は、中間周波数帯の信号を通過させるとともに、この数GHzの高周波信号を除去する(正確には、所定のレベル以下に減衰させる)。IFフィルタ56を通過した中間周波数帯の信号はADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。
ベースバンド部60は、DSP(Digital Signal Processor)61、CPU(Central Processing Unit)62、SRAM(Static Random Access Memory)63、RTC(リアルタイムクロック)64を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65やフラッシュメモリ66等が接続されている。
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。
フラッシュメモリ66には時差情報が記憶されている。時差情報は、地理情報が分割された複数の領域の各々の時差が定義された情報である。すなわち、フラッシュメモリ66は、本発明における記憶部として機能する。
ベースバンド部60は、測時モード又は測位モードに設定されると、RF部50のADC57が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調する処理を行う。
また、ベースバンド部60は、測時モード又は測位モードに設定されると、後述する衛星検索工程において、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。そして、ベースバンド部60は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星10に同期(すなわち、GPS衛星10を捕捉)したものと判断する。ここで、GPSシステムでは、すべてのGPS衛星10が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。従って、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星10を検索することができる。
また、ベースバンド部60は、測時モード又は測位モードにおいて、捕捉したGPS衛星10の衛星情報を取得するために、当該GPS衛星10のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングする処理を行う。ミキシングされた信号には、捕捉したGPS衛星10の衛星情報を含む航法メッセージが復調される。そして、ベースバンド部60は、測時モード又は測位モードにおいて、航法メッセージの各サブフレームのTLMワード(プリアンブルデータ)を検出し、各サブフレームに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する(例えばSRAM63に記憶する)処理を行う。
また、ベースバンド部60は、測位モードに設定されると、GPS時刻情報や軌道情報に基づいて測位計算を行い、位置情報(より具体的には、受信時にGPS付き腕時計1が位置する場所の緯度および経度)及び測位誤差(より具体的には、GPS付き腕時計1が実際に位置する場所と位置情報により特定される場所の最大距離)を取得する。すなわち、ベースバンド部60は、本発明における測位計算部として機能する。
さらに、ベースバンド部60は、測位モードに設定されると、測位計算により得られる位置情報及び測位誤差に基づいてGPS付き腕時計1が位置する可能性のある領域(想定位置領域)を算出する処理を行う。そして、ベースバンド部60は、フラッシュメモリ66に記憶されている時差情報を参照して想定位置領域が時差境界を含むか否かを判定する。そして、ベースバンド部60は、想定位置領域が時差境界を含まないと判定した場合には、フラッシュメモリ66に記憶されている時差情報から想定位置領域の時差データを取得する。すなわち、ベースバンド部60は、本発明における時差判定部として機能する。
なお、ベースバンド部60の動作は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65が出力する基準クロック信号に同期する。RTC64は、衛星信号を処理するためのタイミングを生成するものである。このRTC64は、TCXO65から出力される基準クロック信号でカウントアップされる。
なお、GPS装置70は、本発明における受信部として機能する。
[時刻表示装置の構成]
時刻表示装置80は、制御用IC(制御部)40、駆動回路44、LCD駆動回路45及び水晶振動子43を含んで構成されている。
制御部40は、記憶部41、発振回路42を備え、各種制御を行う。
制御部40は、GPS装置70を制御する。すなわち、制御部40は、制御信号を受信回路30に送り、GPS装置70の受信動作を制御する。
また、制御部40は、駆動回路44を介して指針12の駆動を制御する。さらに、制御部40は、LCD駆動回路45を介してディスプレイ13の駆動を制御する。例えば、制御部40は、測位モードにおいてディスプレイ13に現在位置の表示が行われるように制御してもよい。
記憶部41には内部時刻情報が記憶されている。内部時刻情報は、GPS付き腕時計1の内部で計時される時刻の情報である。内部時刻情報は、水晶振動子43および発振回路42によって生成される基準クロック信号によって更新される。従って、受信回路30への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針12の運針を継続することができるようになっている。
制御部40は、測時モードに設定されると、GPS装置70の動作を制御し、GPS時刻情報に基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部41に記憶する。より具体的には、内部時刻情報は、取得したGPS時刻情報にUTCオフセット(現在は+14秒)を加算することで求められるUTC(協定世界時)に修正される。
また、制御部40は、測位モードに設定されると、GPS装置70の動作を制御し、GPS時刻情報及び時差データに基づいて、内部時刻情報の時差を修正して記憶部41に記憶する。すなわち、制御部40は、本発明における時刻情報修正部として機能する。
以下、第1実施形態の時差修正処理(測位モード)の手順について説明する。制御部40及びベースバンド部60は、専用回路により実現してこれらの処理の各種制御を行うようにすることもできるが、GPS付き腕時計1に組み込まれたCPUが記憶部41及びSRAM63等にそれぞれ記憶された制御プログラムを実行することによりコンピュータとして機能し、これらの処理の各種制御を行うようにすることもできる。制御プログラムは、インターネット等の通信手段やCD−ROM、メモリカード等の記録媒体を介して、インストールすることができる。すなわち、図5に示すように、制御プログラムにより、制御部40は受信制御手段40−1、時刻情報修正手段40−2及び駆動制御手段40−3として機能し、ベースバンド部60は衛星検索手段60−1、衛星情報取得手段60−2、測位計算手段60−3及び時差判定手段60−4として機能することにより、時差修正処理が実行される。
[時差修正処理]
図6は、第1実施形態のGPS付き腕時計の時差修正処理手順の一例を示すフローチャートである。
GPS付き腕時計1は、測位モードに設定された場合、図6に示す時差修正処理を実行する。
時差修正処理が開始されると、GPS付き腕時計1は、まず、制御部40(受信制御手段40−1)によってGPS装置70を制御し、受信処理を行う。すなわち、制御部40(受信制御手段40−1)がGPS装置70を起動し、GPS装置70はGPS衛星10から送信される衛星信号の受信を開始する(ステップS10)。
次に、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は衛星検索工程(衛星サーチ工程)を開始する(ステップS12)。衛星検索工程において、GPS装置70は、捕捉可能なGPS衛星10を検索する処理を行う。
具体的には、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、例えば30個のGPS衛星10が存在する場合、まず、衛星番号SVを1から30まで順次変更しながら衛星番号SVのC/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生させる。次に、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードの相関値を計算する。ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードが同じコードであれば相関値は所定のタイミングでピークを持つが、異なるコードであれば相関値はピークをもたず常にほぼゼロとなる。
ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードの相関値が最大になるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が所定の閾値以上の場合には衛星番号SVのGPS衛星10を捕捉したものと判断する。そして、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、捕捉した各GPS衛星10の情報(例えば衛星番号)をSRAM63等の記憶部に記憶する。
なお、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、捕捉可能最大数(例えば12個)のGPS衛星10を捕捉するまで衛星検索工程を継続する。ここで、捕捉可能最大数は一度に捕捉できるGPS衛星10の最大数である。
ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)が少なくとも1つのGPS衛星10を捕捉する前にタイムアウト時間が経過した場合(ステップS14でYesの場合)、GPS装置70の受信動作が強制的に終了する(ステップS42)。GPS付き腕時計1が、受信できない環境である場合、例えば、屋内であるような場合には、すべてのGPS衛星10のサーチを行っても、捕捉できるGPS衛星10が存在しない。GPS付き腕時計1は、タイムアウト時間が経過しても捕捉可能なGPS衛星10を検出できない場合、GPS衛星10のサーチを強制的に終了することにより無駄に電力が消費されることを低減することができる。なお、タイムアウト時間は、GPS装置70が、受信動作を開始してから終了するまでの制限時間であり、受信開始前に設定される。
一方、タイムアウト時間が経過する前にGPS衛星10を捕捉することができた場合(ステップS16でYesの場合)、ベースバンド部60(衛星情報取得手段60−2)は捕捉したGPS衛星10の衛星情報(特にGPS時刻情報及び軌道情報)の取得を開始する(ステップS18)。具体的には、ベースバンド部60(衛星情報取得手段60−2)は、捕捉した各GPS衛星からの航法メッセージをそれぞれ復調してZカウントデータ及びエフェメリスパラメータを取得する処理を行う。そして、ベースバンド部60(衛星情報取得手段60−2)は、取得したGPS時刻情報及び軌道情報をSRAM63等に記憶する。なお、衛星情報の取得処理と並行して、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、捕捉可能最大数(例えば12個)のGPS衛星10を捕捉するまで前述の衛星検索工程を継続している。そして、ベースバンド部60(衛星情報取得手段60−2)は、新たに捕捉されたGPS衛星10の衛星情報の取得処理を順次行う。
ベースバンド部60(衛星情報取得手段60−2)がN個(例えば3個又は4個)以上のGPS衛星10の衛星情報を取得する前にタイムアウト時間が経過した場合(ステップS20でYesの場合)、GPS装置70の受信動作が強制的に終了する(ステップS42)。例えば、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)がN個(例えば3個又は4個)以上のGPS衛星10を捕捉することができない場合や捕捉したGPS衛星10からの衛星信号の受信レベルが小さい場合には、N個(例えば3個又は4個)以上のGPS衛星10の衛星情報を正しく復調することができないままタイムアウト時間が経過することが考えられる。
一方、タイムアウト時間が経過する前にN個(例えば3個又は4個)以上のGPS衛星10の衛星情報を取得することができた場合(ステップS22でYesの場合)、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、捕捉したGPS衛星10からN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10を選択する(ステップS24)。
ここで、GPS付き腕時計1の3次元の位置(x,y,z)を特定するためにはx,y,zが3つの未知数となる。そのため、GPS付き腕時計1の3次元の位置(x,y,z)を計算するためには、3個以上のGPS衛星10のGPS時刻情報及び軌道情報が必要である。さらに、測位精度を高めるためにGPS付き腕時計1の内部時刻情報とGPS時刻情報の時刻誤差も未知数と考えると、4個以上のGPS衛星10のGPS時刻情報及び軌道情報が必要である。
そして、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、選択したN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10の衛星情報(GPS時刻情報及び軌道情報)をSRAM36等から読み出して測位計算を行い、位置情報(GPS付き腕時計1が位置する場所の緯度及び経度)を生成する(ステップS26)。前述したように、GPS時刻情報はGPS衛星10が航法メッセージのサブフレームの先頭ビットを送信した時刻を表している。従って、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、サブフレームの先頭ビットを受信した時の内部時刻情報とGPS時刻情報の差及び時刻補正データに基づいて、N個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10とGPS付き腕時計1の擬似的な距離をそれぞれ計算することができる。また、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、軌道情報に基づいてN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10の位置をそれぞれ計算することができる。そして、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、N個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10とGPS付き腕時計1の擬似的な距離及びN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10の位置に基づいて、GPS付き腕時計1の位置情報を生成することができる。
また、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、測位誤差(GPS付き腕時計1が実際に位置する場所と位置情報により特定される場所の最大距離)を算出する。例えば、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、測距誤差(GPS衛星10とGPS受信機10の間の距離の測定誤差)にDOP値を乗じた値を測位誤差として算出する。DOP値としては、PDOP値やHDOP値等を使用することができる。
なお、測位計算手段60−3による測位計算と並行して、衛星検索手段60−1による衛星検索工程及び衛星情報取得手段60−2による衛星情報の取得処理が継続されている。すなわち、測位計算手段60−3による測位計算中も、衛星検索手段60−1は現在捕捉しているGPS衛星10の数が捕捉可能最大数に達するまでGPS衛星10を検索する処理を行い、衛星情報取得手段60−2は新たに捕捉されたGPS衛星10の衛星情報の取得処理を順次行う。従って、測位計算手段60−3は、新たに捕捉されたGPS衛星10を含むN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10を順次選択しながら、新たに捕捉されたGPS衛星10の衛星情報を用いて測位計算を継続することができる。
次に、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、位置情報及び測位誤差に基づいて想定位置領域(GPS付き腕時計1が位置する可能性のある領域)を算出する(ステップS28)。具体的には、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、位置情報により特定される位置を中心として測位誤差を半径とする円の内側の領域を想定位置領域として算出する。
次に、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、フラッシュメモリ66に記憶された時差情報を参照し、想定位置領域が時差境界を含むか否かを判定する(ステップS30)。
想定位置領域が時差境界を含む場合(ステップS32でYesの場合)、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)は、捕捉したGPS衛星10からN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10のすべての組み合わせを選択して測位計算を行ったか否かを判断する(ステップS34)。
N個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10のすべての組み合わせの一部についてまだ測位計算を行っていない場合(ステップS34でNoの場合)は、GPS付き腕時計1は、まだ測位計算を行っていない組み合わせのN個(例えば3個又は4個)のGPS装置10を選択し(ステップS24)、測位計算以降の処理(ステップS26〜S32の処理)を再度行う。このように、N個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10の他の組み合わせを選択して測位計算を行うことにより、想定位置領域が小さくなり時差境界を含まないようになる可能性がある。
N個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10のすべての組み合わせについて測位計算を行った場合(ステップS34でYesの場合)は、GPS付き腕時計1は、衛星検索工程以降の処理(ステップS12〜S32の処理)を再度行う。あるいは、GPS付き腕時計1は、衛星情報の取得以降の処理(ステップS18〜S32の処理)を再度行うようにすることもできる。
一方、想定位置領域が時差境界を含まない場合(ステップS32でNoの場合)、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、フラッシュメモリ66を参照して時差情報から想定位置領域の時差のデータを取得し、制御部40(時刻情報修正手段40−2)は、当該時差データを用いて記憶部41に記憶されている内部時刻情報を修正する(ステップS36)。
そして、GPS装置70の受信動作が終了する(ステップS38)。
最後に、制御部40(駆動制御手段40−3)は、修正した内部時刻情報に基づいて駆動回路44又はLCD駆動回路45を制御し、時刻表示(時差)が修正される(ステップS40)。
なお、GPS装置70の受信動作が強制的に終了された場合(ステップS42)、制御部40(駆動制御手段40−3)が駆動回路44又はLCD駆動回路45を制御し、受信失敗の表示がされる(ステップS44)。
図7は、図6の時差修正処理手順において、1回目に算出された想定位置領域が時差境界を含まないケースについて説明するための図である。
地理情報100は、タイムゾーン(時差領域)を有する地図情報であり、実線で示す境界線によって分割された複数の領域A、B、C等を含む。すなわち、隣り合う領域の時差が異なり、各領域の境界線が時差境界線になっている。例えば、領域A、B、Cは、それぞれUTCに対する時差が+7、+8、+9の時差領域である。本実施形態のGPS付き腕時計1のフラッシュメモリ66には、地理情報100に対応する時差情報として、各領域(A、B、C等)の境界線のデータと時差のデータが記憶されている。境界線データは、例えば、各境界線を多数の短い直線に分割し、各直線のベクトルデータ(各直線の両端の座標データ)として記憶される。
本実施形態のGPS付き腕時計1が図6の時差修正手順を開始し、ステップS28において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)が図7に示す想定位置領域P1を算出したとする。ステップS30において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、まず、想定位置領域P1の近傍の領域の境界線データをフラッシュメモリ66から読み出し、想定位置領域P1のすべての部分が領域Bに含まれていることを検出する。次に、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、領域Bの時差データをフラッシュメモリ66から読み出し、領域Bの時差がUTC+8のみであることから想定位置領域P1は時差境界を含まないと判定する。そして、ステップS36において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、想定位置領域P1の時差(UTC+8)を取得し、制御部40(時刻情報修正手段40−2)が内部時刻情報を修正する。そして、GPS装置70の受信が終了し(ステップS38)、表示部に表示された時刻が修正されて時差修正処理が終了する(ステップS40)。
図8(A)及び図8(B)は、図6の時差修正処理手順において、1回目に算出された想定位置領域が時差境界を含むケースについて説明するための図である。
地理情報100は図7の地理情報100と同じであるため同じ符号を付しており、その説明を省略する。
本実施形態のGPS付き腕時計1が図6の時差修正手順を開始し、ステップS28において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)が図8(A)に示す想定位置領域P1を算出したとする。ステップS30において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、まず、想定位置領域P1の近傍の領域の境界線データをフラッシュメモリ66から読み出し、想定位置領域P1の一部が領域A、B、Cに含まれていることを検出する。次に、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、領域A、B、Cの時差データをフラッシュメモリ66から読み出し、領域A、B、Cの時差が異なることから想定位置領域P1は時差境界を含むと判定する。
そのため、ステップS24において、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)がN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10の新たな組み合わせを選択して測位計算を再度行い、ステップS28において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)が新たな位置情報に基づいて図8(B)に示す想定位置領域P2を算出したとする。ステップS30において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、想定位置領域P2の近傍の領域の境界線データをフラッシュメモリ66から読み出し、想定位置領域P2のすべての部分が領域Bに含まれているため、想定位置領域P2は時差境界を含まないと判定する。そして、ステップS36において、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、想定位置領域P2の時差(UTC+8)を取得し、制御部40(時刻情報修正手段40−2)が内部時刻情報を修正する。そして、GPS装置70の受信が終了し(ステップS38)、表示部に表示された時刻が修正された時差修正処理が終了する(ステップS40)。
[第1実施形態の効果]
第1実施形態のGPS付き腕時計では、図6に示したように、捕捉したGPS衛星10からN個のGPS衛星10を選択して測位計算を行い、測位計算により得られる位置情報及び測位誤差に基づいて想定位置領域を算出する。そして、フラッシュメモリ66に記憶された時差情報を参照し、算出された想定位置領域が時差境界を含まない場合には受信動作が終了するとともに時刻表示が修正される。ここで、算出された想定位置領域が時差境界を含まなければ、必ず同一時差の領域内のいずれかの場所に位置することが保証できる。そのため、時刻修正(時差修正)の目的であれば、受信動作終了の判断基準を、測位計算の精度ではなく、想定位置領域が時差境界を含むか否かとすることができる。
例えば、図7のケースでは、想定位置領域P1はかなり広い領域(例えば、半径数百kmの円の内部)であるが、GPS付き腕時計1は必ずUTC+8の時差領域のいずれかに位置する。すなわち、測位精度がかなり低い場合でも時差修正を行うことができる。測位精度が低くなるケースとしては、例えば、GPS衛星10の時刻とGPS付き腕時計1の内部時刻がずれているために測距精度が低い場合や測位計算において選択されたGPS衛星10の配置状態が悪くDOP値がかなり大きくなる場合が考えられる。従来は、想定位置領域が時差境界を含まないような小さい領域になるまで測位計算を継続していたため時差修正に時間がかかったり時差修正を行うことができない場合もあった。
しかし、第1実施形態のGPS付き腕時計によれば、想定位置領域がかなり広くても1つの時差領域に含まれればよいので、測位計算の精度が低いために正確な位置を特定できない場合であっても、位置によっては測位計算を終了して時刻修正を行うことができる。
すなわち、第1実施形態のGPS付き腕時計によれば、算出された想定位置領域が時差境界を含まなければ、測位計算の精度が低くてもそれ以上の絞り込みを行わずに受信動作を終了するとともに時差修正処理を行うので、消費電力を低減することができる。
一方、図8(A)及び図8(B)のケースでは、1回目に算出された想定位置領域P1がかなり広い領域(例えば、半径数百kmの円の内部)であり、GPS付き腕時計1はUTC+7、UTC+8、UTC+9の時差領域に位置する可能性がある。従って、GPS付き腕時計1は、想定位置領域P1に基づいて時差修正を行うことはしない。このように、第1実施形態のGPS付き腕時計では、時差の候補が複数存在する場合には時差修正をしないことにより誤った時差修正をすることを防止している。
さらに、第1実施形態のGPS付き腕時計では、算出された想定位置領域が時差境界を含む場合は、制限時間内において想定位置領域が時差境界を含まなくなるまで新たな測位計算を繰り返し、想定位置領域が時差境界を含まなくなった時点ですぐに受信動作を終了するとともに時差修正処理を行うようにしている。すなわち、第1実施形態のGPS付き腕時計によれば、算出された想定位置領域が時差境界を含む場合でも制限時間内でできるだけ時差修正処理が行われるように配慮しながら、消費電力の大きい受信動作の時間を最適化して必要最低限の消費電力で時刻修正(時差修正)を終了することができる。
また、第1実施形態のGPS付き腕時計によれば、時刻修正処理において、制限時間が経過しても時差が特定できない場合は、受信動作を終了するので無駄に電力を消費することを防止することができる。
2−2.第2実施形態
図7及び図8に示すように、第1実施形態では、地理情報100を時差境界線で分割しているため、分割された各領域は複雑な形状をしている。そのため、第1実施形態では境界線データのデータ量が大きいので、記憶装置は大きいものが必要になり、腕時計のサイズが大きくなってしまう恐れがある。さらに、想定位置領域が時差境界を含むか否かの判定が複雑なため、判定に時間を要し消費電力が大きくなることも予想される。
そこで、第2実施形態のGPS付き腕時計では、時差情報(境界線データ)のデータ量を削減するために、地理情報100を、時差境界線で分割するのではなく、一定形状の複数の領域に分割し、各領域の座標データと時差データを時差情報としてフラッシュメモリ66に記憶する。なお、第2実施形態のGPS付き腕時計の基本的な構成は、第1実施形態のGPS付き腕時計の構成と同様であるため、その説明を省略する。
図9は、矩形形状の複数の領域に分割された地理情報の一例を示す図である。
地理情報100は、仮想領域101に含まれる16個の矩形領域、仮想領域102に含まれる16個の矩形領域、仮想領域103に含まれる16個の矩形領域、矩形領域104等に分割され、各領域にはそれぞれUTCに対する時差の値が定義されている。以下では、時差の値が定義されているこれらの領域を「時差定義領域」ということにする。例えば、時差定義領域104には「+8」の時差が定義されている。また、仮想領域102に含まれる時差定義領域102A及び102Eには「+7」の時差が定義され、時差定義領域102I、102J、102M、102N及び102Pには「+8」の時差が定義され、時差定義領域102B、102C、102D、102F、102G、102H、102K、102L及び102Oには「+9」の時差が定義されている。
このように、時差定義領域毎に1つの時差が定義される。そして、第2実施形態のGPS付き腕時計では、後述するように、時差定義領域を最小単位として想定位置領域が時差境界を含むか否かの判定が行われる。そのため、各時差定義領域ができるだけ現実の時差境界線を含まないようにすれば時差境界の判定精度を高くすることができるので、例えば、時差境界線付近の時差定義領域ほど小さくするようにしてもよい。しかし、時差定義領域の形状を矩形にする場合には、時差定義領域をいくら小さくしても現実の時差境界線を含む場合が想定される。実際には、小さい時差定義領域が増えれば時差情報のデータ量も増えるため記憶容量が大きい記憶装置が必要になるので、時差情報のデータ量と時差境界の判定精度のトレードオフを考慮して各時差定義領域のサイズが決定される。そのため、時差定義領域が現実の時差境界線を含む場合が想定される。
このように、時差定義領域が現実の時差境界線を含む場合には、例えば、1つの時差定義領域に含まれる各時差を有する地域の占有面積を比較し、専有面積の最も大きい地域の時差を当該時差定義領域の時差として定義するようにしてもよいし、1つの時差定義領域に大都市が含まれる場合にはその大都市の時差を当該時差定義領域の時差として定義するようにしてもよい。図9において、例えば、時差定義領域102EはUTC+7とUTC+8の時差境界を含む。すなわち、時差定義領域102EはUTC+7の時差の地域とUTC+8の時差の地域を含むが、UTC+7の地域の占有面積がUTC+8の地域の占有面積よりも大きいため時差定義領域102Eには「+7」の時差が定義されている。
なお、図9において、仮想領域101、102、103は、異なる時差が定義された複数の時差定義領域を含むため、UTCに対する時差の値が定義されていない。例えば、仮想領域102は、「+7」、「+8」、「+9」の時差定義領域を含むため、時差の値が定義されていない。
図10及び図11は、第2実施形態のGPS付き腕時計においてフラッシュメモリ66に記憶される時差情報の一例を示す図である。
図10に示す領域−時差対応表200は、図9に示した仮想領域101、102、103、時差定義領域104等の各々の領域の位置データ200−1及び時差データ200−2を含む。
図9に示した仮想領域101、102、103、時差定義領域104等は、例えば、東西および南北方向の各長さが1000〜2000km程度の矩形形状の領域である。そのため、仮想領域101、102、103、時差定義領域104等は、例えば、矩形領域の左上の座標(経度、緯度)と、領域の右下の座標(経度、緯度)とで位置を特定できる。そこで、フラッシュメモリ66には、領域−時差対応表200の位置データ200−1としてこれらの2点の座標データが記憶されている。
ここで、時差定義領域104は時差の値「+8」が定義されているため、フラッシュメモリ66には、時差定義領域104の時差データ200−2として「+8」が記憶されている。
一方、仮想領域101、102、103は時差の値が定義されていないため、フラッシュメモリ66には、仮想領域101、102、103の時差データ200−2として、他の領域−時差対応表への参照リンク「Link1」、「Link2」、「Link3」がそれぞれ記憶されている。
図11に示す領域−時差対応表202は、図9に示した仮想領域102に含まれる時差定義領域102A〜102Pの位置データ200−1及び時差データ200−2を含む。領域−時差対応表202は、図10の領域−時差対応表200において、仮想領域102の時差データである参照リンクLink2により参照することができる。
本実施形態では、図9に示したように、時差定義領域102A〜102Pは仮想領域102が16分割された領域であるので、時差定義領域102A〜102Pは、例えば、250〜500km四方のも矩形形状の領域である。そのため、例えば、領域の左上の座標(経度、緯度)と、領域の右下の座標(経度、緯度)とで位置を特定できる。そこで、フラッシュメモリ66には、領域−時差対応表202の位置データ202−1としてこれらの2点の座標データが記憶されている。
また、時差定義領域102A〜102Pはそれぞれ図9に示した時差の値が定義されているため、フラッシュメモリ66には、時差定義領域102A〜102Pの時差データ202−2として各時差の値が記憶されている。
なお、時差定義領域104は本発明における第1階層の領域に対応し、時差定義領域102A〜102Pは本発明における第2階層の領域に対応する。また、領域−時差対応表200は本発明における第1階層の時差情報に対応し、領域−時差対応表202は本発明における第2階層の時差情報に対応する。
以上のように、時差定義領域104を含む仮想領域は存在しないが、時差定義領域102A〜102Pは仮想領域102に含まれている。そのため、時差定義領域104のデータが領域−時差対応表200に含まれるのに対して、時差定義領域102A〜102Pの各データは、領域−時差対応表200から参照リンクLink2により参照される領域−時差対応表202に含まれている。従って、時差定義領域は仮想領域により階層化されていると考えることができる。すなわち、時差定義領域104は本発明における第1階層の領域に対応し、時差定義領域102A〜102Pは本発明における第2階層の領域に対応する。また、領域−時差対応表200は本発明における第1階層の時差情報に対応し、領域−時差対応表202は本発明における第2階層の時差情報に対応する。
なお、仮想領域がさらに仮想領域を含むようにしてもよい。例えば、時差定義領域102EA、102B、102E、102Fを含む仮想領域を定義すると、仮想領域102は当該仮想領域を含むことになる。その場合、時差定義領域102EA、102B、102E、102Fは本発明における第3階層の領域に対応し、時差定義領域102EA、102B、102E、102Fの位置データ及び時差データが含まれる領域−時差対応表は本発明における第3階層の時差情報に対応する。同様にして、時差定義領域を第1階層〜第N階層の領域に分類し、第1階層〜第N階層の領域−時差対応表を含む時差情報をフラッシュメモリ66に記憶するようにしてもよい。
図12は、第2実施形態のGPS付き腕時計おいて、想定位置領域が時差境界を含むか否かを判定する処理手順を示すフローチャートである。なお、図12の処理手順は、図6の時差修正処理手順におけるステップS30の具体的な処理手順の一例に相当する。
ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、まず、第1階層の時差情報(第1時差情報)から想定位置領域に含まれる仮想領域及び時差定義領域(第1領域)を検出する(ステップS30−1)。具体的には、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、第1時差情報の位置データ(座標データ)を参照して第1領域の位置を特定し、想定位置領域に対応する円の内側の領域に少なくとも一部が含まれる第1領域を検出する。
次に、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、検出したすべての第1領域の時差データ(時差の値及び参照リンク)を取得する(ステップS30−2)。
次に、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、今回又は以前に取得したすべての時差定義領域の時差の値が一致するか否かを判定する(ステップS30−3)。
今回又は以前に取得した時差の値の少なくとも一部が一致しない場合(ステップS30−4でNoの場合)、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、想定位置領域が時差境界を含むと判定する(ステップS30−9)。
一方、今回又は以前に取得したすべての時差定義領域の時差の値が一致する場合(ステップS30−4でYesの場合)、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、今回又は以前に取得したすべての仮想領域の参照リンクの処理が終了したか否かを判定する(ステップS30−5)。
未処理の参照リンクが存在する場合(ステップS30−6でYesの場合)、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、参照リンク先の時差情報(第k時差情報)から想定位置領域に含まれる第k領域を検出する(ステップS30−7)。そして、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、未処理の参照リンクが存在しなくなるか、あるいは、今回又は以前に取得したすべての時差値の少なくとも一部が一致しなくなるまで、ステップS30−2〜S30−7の処理を繰り返す。
未処理の参照リンクが存在しない場合(ステップS30−6でNoの場合)、ベースバンド部60(時差判定手段60−4)は、想定位置領域は時差境界を含まないと判定する(ステップS30−8)。
図13は、図12の処理手順において、算出された想定位置領域が時差境界を含まないケースについて説明するための図である。なお、図13のケースでは、フラッシュメモリ66には図10及び図11に示した領域−時差対応表の各データが記憶されており、図7のケースと同じ想定位置領域が算出されたものとする。
図13に示す想定位置領域P1は、図10に示した領域−時差対応表200の位置データに基づいて、第1領域として時差定義領域104のみを含むと判定される。そして、図10に示した領域−時差対応表200の時差定義領域104の時差データは「+8」である。従って、想定位置領域P1は時差境界を含まないと判定され、想定位置領域P1の時差として「+8」が取得される。
図14(A)及び図14(B)は、図12の処理手順において、算出された想定位置領域が時差境界を含むケースについて説明するための図である。なお、図14(A)及びず15(B)のケースでは、フラッシュメモリ66には図10及び図11に示した領域−時差対応表の各データが記憶されており、図8(A)及び図8(B)のケースと同じ想定位置領域が算出されたものとする。
図14(A)に示す想定位置領域P1は、図10に示した領域−時差対応表200の位置データに基づいて、第1領域として仮想領域101、102、103、時差定義領域104を含むと判定される。そして、領域−時差対応表200の仮想領域101、102、103の時差データは参照リンク「Link1」〜「Link3」であり、時差定義領域104の時差データは「+8」である。
さらに、Link2により参照される図11に示した領域−時差対応表202の位置データに基づいて、想定位置領域P1は、第2領域として時差定義領域102E、102F、102I、102J、102K、102M、102N及び102Oを含むと判定される。そして、領域−時差対応表202の時差定義領域102E、102F、102I、102J、102K、102M、102N及び102Oの時差データはそれぞれ時差値「+7」、「+9」、「+8」、「+8」、「+9」、「+8」、「+8」及び「+9」である。従って、想定位置領域P1は時差境界を含むと判定され、次に図14(B)に示す想定位置領域P2が算出されたとする。
図14(B)に示す想定位置領域P2は、図10に示した領域−時差対応表200の位置データに基づいて、第1領域として仮想領域102のみを含むと判定される。図10に示した領域−時差対応表200の仮想領域102の時差データは「Link2」である。
さらに、Link2により参照される図11に示した領域−時差対応表202の位置データに基づいて、想定位置領域P1は、第2領域として時差定義領域102I、102M及び102Nを含むと判定される。そして、領域−時差対応表202の時差定義領域102I、102M及び102Nの時差データはともに「+8」である。従って、想定位置領域P2は時差境界を含まないと判定され、想定位置領域P2の時差として「+8」が取得される。
[第2実施形態の効果]
第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、第1実施形態のGPS付き腕時計と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、算出された想定位置領域が仮想領域の一部又は全部を含むか否かが判定され、含む場合はその仮想領域の内部の時差定義領域の位置が参照されて時差境界の有無が判定される。従って、多数の小さい時差領域が密集したような地域を仮想領域としておけば、算出された想定位置領域が仮想領域を含まない場合は、想定位置領域がこれら多数の小さい時差領域の一部又は全部を含むか否かの判定を個別にする必要がない。従って、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、想定位置領域が時差境界を含むか否かの判定処理の時間を最適化することができる。
また、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、算出された想定位置領域が仮想領域を含む場合は、仮想領域に含まれる複数の時差定義領域の位置に基づいて想定位置領域が時差境界を含むか否かを判定するので、高い判定精度を保証することができる。
また、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、まず、第1階層の時差情報を参照して想定位置領域が第1階層の仮想領域の一部又は全部を含むか否かが判断される。想定位置領域が第1階層の仮想領域の一部又は全部を含む場合には、次に、第2階層の時差情報を参照して想定位置領域が第2階層の仮想領域の一部又は全部を含むか否かが判断される。同様に、想定位置領域が第k階層の仮想領域の一部又は全部を含む場合には、第k+1階層の時差情報を参照して想定位置領域が第k+1階層の仮想領域の一部又は全部を含むか否かが判断される。そして、想定位置領域が第k階層の仮想領域の一部又は全部を含まない場合には、第k階層の時差定義領域の位置に基づいて想定位置領域が時差境界を含むか否かが判定される。すなわち、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、時差が定義される領域の大小に応じて適切に階層化された時差情報を順次参照しながら判定処理を行うことができるので、判定処理の時間を最適化することができる。
また、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、時差定義領域及び仮想領域の形状が矩形形状であるので、領域の特定のために矩形の対角線の2点の座標データのみを記憶すればよい。このため、時差境界線を細かく分割した短い直線の各データを記憶する場合と比較して時差情報のデータ量を大幅に削減することができる。
また、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、各階層の時差情報に含まれる時差定義領域及び仮想領域の矩形形状のサイズが固定されている場合には、座標データは1点のみ記憶すればよいため時差情報のデータ量を更に削減できる。
さらに、第2実施形態のGPS付き腕時計によれば、時差定義領域及び仮想領域が矩形形状であるため、算出した想定位置領域が時差境界を含むか否かの判定処理を非常に簡単に行うことができる。
2−3.第3実施形態
図15は、第3実施形態のGPS付き腕時計の時差修正処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15に示す時差修正処理手順は、基本的には図6に示した時差修正処理手順と同じである。すなわち、図15に示す時差修正処理手順のステップS10〜S44の処理は、図6に示した時差修正処理手順のステップS10〜S44の処理と同じであるため、同じ記号を付しておりその説明を省略する。
図15に示す時差修正処理手順では、図6に示した時差修正処理手順に対して、想定位置領域を表示する処理(ステップS46の処理)が加わっている。なお、想定位置領域を表示する処理(ステップS46の処理)は、時刻表示を修正する処理(ステップS40の処理)の前に行ってもよい。
図16は、図15に示した時差修正処理手順のステップ46における想定位置領域の表示の一例について説明するための図であり、第3実施形態のGPS付き腕時計の表面外観を示す概略図である。なお、第3実施形態のGPS付き腕時計の基本的な構成は、第1実施形態のGPS付き腕時計の構成と同様であるので、同じ構成には同じ番号を付しており、その説明を省略する。
GPS付き腕時計3の表面には地図300が形成され、その上縁に沿って回動式の指針301、302が配置されている。地図300は世界地図とされ、世界中の任意の場所に移動した際には、その現在位置が指針301、302により表示される。世界地図としては、既存の図法によるものが適宜利用でき、日本を中心としたミラー図法に限らず、他の図法を用いてもよい。
地図300は、文字板11の表面に彫刻あるいは印刷などの手段により固定的に形成される。文字板11として透明な材料を用い、その裏面に地図300のパターンを裏向きに刻印または印刷してもよい。あるいは、地図300をフィルムに印刷しておき、このフィルムを透明な文字板11の裏面に貼る等してもよい。すなわち、表示板である文字板11は、その表面側から地図300が正規の状態で視認することができればよい。
指針301、302は、回転軸303、304を有し、これらを軸として文字板11の表面に沿って回動可能である。指針301、302の駆動は駆動回路44を介して制御部40(駆動制御手段40−3)により制御される。
回動に伴う指針301、302の移動軌跡305、306は、二点鎖線で示す通りである。地図300は、2本の指針301、302の移動軌跡305、306の重なり合う範囲内に収まるように形成されている。この範囲内では、2本の指針301、302が任意の位置で互いに交差可能である。従って、2本の指針301、302の交点により地図300上の特定位置を指示することが可能である。
回転軸303、304は、地図300の上縁部分を挟んで両側に配置されている。回転軸303、304の軸心を結ぶ線分は退避線307とされ、この退避線307は一点鎖線で示すとおり、地図300の上縁の外側に配置されている。なお、厳密には地図300の絵柄の一部が退避線307を超えているが、指針301、302による現在位置の指示に利用されない部分については退避線307を超えることも許容される。
指針301、302は、退避線307に沿って配置すること、つまり各々の先端を他方の回転軸303、304に向けることにより、地図300の実質的な外側に退避させることが可能である。
測位モードに設定された場合、時差修正処理が終了すると、制御部40(駆動制御手段40−3)の駆動制御により、位置情報に相当する地図300上の位置が指針301、302の交点により指示される。このように、GPS付き腕時計3は位置情報をデジタル表示するわけではなく指針301、302の交点により表示するので、高い精度の位置情報は要求されない。すなわち、本実施形態の時差修正処理により、比較的広い想定位置領域が算出された場合であっても、GPS付き腕時計3は概略の位置を示すことができる。なお、かなり広い想定位置領域(例えば、半径数百kmの領域)が算出された場合は、例えば、想定位置領域の広さを認識できるように想定位置領域の範囲で指針22、23を振動させるようにしてもよい。
[第3実施形態の効果]
第3実施形態のGPS付き腕時計によれば、第1実施形態のGPS付き腕時計と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
第3実施形態のGPS付き腕時計によれば、2本の指針301、302の交点を用いることで、地図300上の一点を明瞭に指示することができる。交差する指針301、302が周囲に延びることから、交点の位置を追跡することも容易であり、現在位置の感覚的な把握に好適である。
また、第3実施形態のGPS付き腕時計によれば、表示板である文字板2に地図21を形成することで液晶表示パネル等を用いる必要がなく、腕時計1としての良好な質感を維持することができる。
2−4.第4実施形態
図17は、第4実施形態のGPS付き腕時計の時差修正処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、第4実施形態のGPS付き腕時計の基本的な構成は、第1実施形態のGPS付き腕時計の構成と同様であるため、その説明を省略する。
図17に示す時差修正処理手順は、基本的には図6に示した時差修正処理手順と同じである。すなわち、図15に示す時差修正処理手順のステップS10〜S44の処理は、図6に示した時差修正処理手順のステップS10〜S44の処理と同じであるため、同じ記号を付しておりその説明を省略する。
図17に示す時差修正処理手順では、図6に示した時差修正処理手順と異なり、N個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10のすべての組み合わせについて測位計算を行った場合(ステップS34でYesの場合)、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、衛星検索工程を開始する前に、現在捕捉しているGPS衛星10の数が捕捉可能最大数(例えば12個)に達しているか否かを判断する(ステップS48)。
捕捉可能最大数(例えば12個)のGPS衛星10が捕捉されている場合(ステップS48でYesの場合)、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、測位精度を最も劣化させる要因となるM個(例えば、1個)のGPS衛星10の捕捉を停止し、次の衛星サーチの対象外に設定する(ステップS50)。ここで、ベースバンド部60(測位計算手段60−3)がN個(例えば3個又は4個)のGPS衛星10のすべての組み合わせに対して測位計算を行っているので、ベースバンド部60(衛星検索手段60−1)は、どのGPS衛星10を含む場合に測位精度が劣化するかがわかる。
そして、GPS付き腕時計1は、衛星検索工程以降の処理(ステップS12〜S34の処理)を再度行う。こうすることにより、測位精度を劣化させるGPS衛星10の代わりに新たに捕捉したGPS衛星10を選択して測位計算を行うことができるので、想定位置領域が小さくなり時差境界を含まないようになる可能性がある。
一方、捕捉可能最大数(例えば12個)のGPS衛星10が捕捉されていない場合(ステップS48でNoの場合)、GPS付き腕時計1は、衛星検索工程以降の処理(ステップS12〜S34の処理)を再度行う。
なお、図17の時差修正処理手順では、想定位置領域が時差境界を含む場合(ステップS32でYesの場合)において、捕捉したGPS10からN個のGPS衛星10のすべての組み合わせを選択して測位計算を行ってしまった場合(ステップS34でYesの場合)に衛星検索工程が再度行われるようになっている。
[第4実施形態の効果]
第4実施形態のGPS付き腕時計によれば、第1実施形態のGPS付き腕時計と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
第4実施形態のGPS付き腕時計では、算出された想定位置領域が時差境界を含む場合において、捕捉したGPS10からN個のGPS衛星10のすべての組み合わせを選択して測位計算を行ってしまった場合には、測位精度を最も劣化させる要因となるM個(例えば、1個)のGPS衛星10の代わりに新たに捕捉したGPS衛星10の衛星情報を用いて測位計算を行う。そのため、測位計算の精度を高めることができるので、時差境界を含まない小さい想定位置領域が算出されやすい。従って、第4実施形態のGPS付き腕時計によれば、時差境界に比較的近い場所にある場合でも測位計算がより収束しやすく、測位計算に必要な消費電力を最適化してなるべく小さい消費電力で時刻修正(時差修正)を終了することができる。
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1 GPS付き腕時計(GPS受信機)、3 GPS付き腕時計、10 GPS衛星、11 文字板、12 指針、13 ディスプレイ、14 リューズ、15 ボタン、16 ボタン、17 外装ケース、18 ベゼル、19 表面ガラス、20 モータコイル、21 磁性シート、22 充電用コイル、23 裏面ガラス、24 電池、25 回路基板、26 裏蓋、27 GPSアンテナ、28 充電制御回路、29 レギュレータ、30 受信用IC(受信回路)、31 SAWフィルタ、40 制御用IC(制御部)、41 記憶部、42 発振回路、43 水晶振動子、44 駆動回路、45 LCD駆動回路、50 RF部、51 LNA、52 ミキサ、53 VCO、54 PLL回路、55 IFアンプ、56 IFフィルタ、57 ADC(A/D変換器)、60 ベースバンド部、61 DSP、62 CPU、63 SRAM、64 RTC、65 温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)、66 フラッシュメモリ、70 GPS装置、80 時刻表示装置、100 地理情報、101〜103 仮想領域、104 時差定義領域、200 領域−時差対応表、202 領域−時差対応表、300 地図、301 指針、302 指針、303 回転軸、304 回転軸、305 移動軌跡、306 移動軌跡、307 退避線