JP5250216B2 - ペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法 - Google Patents

ペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法に関し、詳しくは、高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるペレタイザ及びこれを用いた安定的効率的なペレットの製造方法に関する。
樹脂製ペレットを製造するペレタイザは、押出機の先端部に設けられた複数個のノズルを有するダイスに対面して、複数のカッター刃を先端に備えたカッターユニットを設けている。カッター刃はダイス面に接触した状態で回転し、ダイスから押し出される樹脂成形物を切断することによって、ペレットを生産している(例えば、特許文献1〜3)。
図1は一従来例によるペレタイザ装置の概要を示す。該装置は、押出機の押出スクリュー1を内蔵する押出筒2の先端側に、ブレーカプレート3を介して押出ヘッド4が取付けられ、この押出ヘッド4の先端には、多数のノズル孔5を備えたダイス6およびカッターボックス(胴部)7が装着されている。このカッターボックス7にはカッター軸8が押出スクリュー1と同心上に軸支され、このカッター軸8には、ダイス6の先端表面に近接して配設されたカッター刃9がカッターホルダ(取付体)10を介して取付けられている。
カッターボックス7の内周面に冷却水槽11が形成されるとともに、カッター軸8はモータによって高速で回転駆動され、ノズル孔5から押し出された溶融樹脂はカッター刃9によってペレット状に切断されるとともに、カッター刃9の遠心力によって放射方向に飛散し、冷却水槽11で冷却固化され、冷却水とともに排出口12から排出される。
近年、成形性や成形サイクル短縮の観点から、製造される樹脂の高流動化傾向が強まっている。樹脂の高流動化については、重合時に高流動樹脂を製造する方法もあるが、押出機内に過酸化物などを添加し変成させることによって、流動性を高めるという製法もよく知られている。さらに、上記変成過程を経ると、樹脂の分子量分布が狭くなるという特徴が見られることが一般的である。このような高流動あるいは/かつ分子量分布の狭い樹脂は、カッティングがむずかしいことが知られており、カッティング不良によって、数珠つなぎになったペレットやペレットにならなかった大きな樹脂が発生したり、さらにはカッター刃が折れてしまったりといったようなトラブルが多発している。
従来、上記のような問題を解決するためにいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献4には、高流動性溶融樹脂のペレット化を安定的に行うペレタイザを実現するためにカッターの形状を限定した造粒装置が提案されている。しかしながら、これらの装置や方法によっても前記の問題の完全な解決には至っておらず、ましてや、樹脂の高流動化傾向が強まっている状況下では不十分なものであった。
実開平1−101809号公報 実開平6−24913号公報 特開2003−211442号公報 特開平10−305425号公報
本発明の目的は、上記のような現状を鑑み、高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法を提供することを発明の課題とする。
本発明者等は、かかる課題を解決すべく種々検討を行った結果、複数のノズルを有するダイス面に対して複数のカッター刃を先端に備えたペレタイザにおいて、任意のカッター刃が高流動性溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)と、該カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さ(Lx)とが、一定の関係式を満たすと、カッティングの安定性が顕著に改善されることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより押出される溶融樹脂を、ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、
任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たし、ノズルの直径が2mm〜4mm、ノズルの穴面積/ダイス面積が2.5〜12%、ノズルの穴数が300個以上、カッターの刃数が10〜50個であることを特徴とするペレタイザが提供される。
ΣmaxWn/Lx≦0.2
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記関係式が、ΣmaxWn/Lx≦0.17であることを特徴とするペレタイザが提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1または2の発明のペレタイザを用いて高流動性溶融樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、高流動性溶融樹脂がエチレン系重合体又はプロピレン系重合体であることを特徴とするペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより押出される溶融樹脂を、ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザの改善方法であって、
任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たし、ノズルの直径が2mm〜4mm、ノズルの穴面積/ダイス面積が2.5〜12%、ノズルの穴数が300個以上、カッターの刃数が10〜50個となるように変更することを特徴とするペレタイザの改善方法が提供される。
ΣmaxWn/Lx≦0.2
本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法によれば、カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、特定の関係式を満たすように制御されてなることにより、高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるという効果がある。
特に、本発明は、具体的にはMFRが30g/10min以上である樹脂のカッティングを安定的効率的に行うことができるため、カッティングされるポリマーのMFRが高いとき、具体的には30g/10min以上のときに、その効果がより顕著に発揮される。こういった高いMFRを持つ樹脂の代表的なものであるポリプロピレン系樹脂は、近年射出成形工程の生産性を向上させるために望まれているものであることから、これらの効率的な造粒に好適に用いることができる。また、本発明のペレタイザは同時に流動性が比較的低い溶融樹脂のカッティングにも適用できることから、一台で低流動性溶融樹脂から高流動性溶融樹脂までの広い流動性の範囲のさまざまな樹脂の造粒工程に対応することができ、これらに好適に用いることができるという効果がある。
さらに、本発明のペレタイザによれば、カッティング不良がなく、安定にペレットが製造できることから、カッターの破損等がほとんどなく、低コスト、効率的にペレットを製造できるという効果がある。
また、本発明により、カッティング不良を生じないで安定に製造されたペレットは、切断後のペレットの形状欠陥が減少し、外観不良によって商品価値が低下することなく、また、押出あるいは射出成形時のホッパー部での引っかかり等を起こさないという効果がある。
さらに、本発明のペレタイザは、既存の各ペレタイザの小規模な改善を実施することによって、ほとんどの既存ペレタイザで実現できるため、設備を新規に導入したり、大規模な改善を行う必要がなく、容易にかつ低コストで高流動性溶融樹脂のペレットを安定に製造できるという効果がある。
以下に本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法について、図面に基いて説明する。
1.ペレタイザ
図2は、本発明のペレタイザにおける、ダイス面のノズル開口部分の配置の代表的な例である。また、図3は、本発明のペレタイザにおける、ダイス面にカッター軸およびカッター刃等からなるカッターヘッドを被せた代表的な例である。さらに、図4および図5は、図3の(a)および(b)部分の拡大図である。
図2のダイス面は、図1のノズル開口部分5を備えたダイス6部分を軸方向(以下「X軸」ともいう。)から見たものであり、図3のカッター軸およびカッター刃は、図1のカッター軸8及びカッター刃9部分を同じくX軸方向から見たものにあたる。
本発明のペレタイザの基本的構成は従来公知のものと同様であり、主に、シリンダー、押出スクリュー、ダイス、カッターヘッド、冷却水槽より主として構成される。具体的には、一例として、図1に示すように、カッターヘッドは、カッター軸8と直交するように放射状に配置された複数のカッター刃9、カッター刃9をカッター軸8に取り付けるためのカッターホルダ10より構成され、カッター刃9はカッターホルダ10に固定され、カッターホルダ10はカッター軸8に固定される。このようにカッターヘッドは、カッター軸8のX軸まわりの回転駆動力とX軸方向の加圧力をカッター刃9に伝達する。
また、冷却水槽11にはペレットの冷却と輸送を担う温水循環装置が接続されており、ダイス6の面の多数のノズル開口部分5は、円盤状のダイス6の面の表面(カッティング面)に配置される。ダイス6の内部には、ダイスを加熱するための熱媒通路(図示せず)が設けられており、ダイスは必要に応じて適温に加熱される。
上記のようなペレタイザを用いるペレット製造工程において、スクリュー押出機(単軸押出機、二軸混錬機等)、ギヤーポンプ等の供給装置より、ダイス6の面に加圧された溶融樹脂が供給され、多数のノズル開口部分5から、連続的にストランド状で冷却水槽11に押し出される。連続的に冷却水槽11に押し出されるストランドは、カッティングを容易にするためにノズル開口部分5の出口で水に触れて冷却され、回転する複数枚のカッター刃がカッティング面全幅に接触し、連続的にノズル開口部分5より吐出されるストランドを切断する。
切断の際に、カッター刃9を保持するカッターヘッドは加圧駆動源によりX軸方向の押し付け力を調整し、カッター軸8を介して軸方向に前後に移動され、カッター刃9をカッティング面に隙間無く押し付けることも可能である。
カッティング面とカッター刃の隙間の有無は、取り扱う樹脂によって適宜選定される。カッティングが難しいとされる樹脂の場合は、カッティング面とカッター刃の平行度5/100mm以下の精度を要求されるので、隙間無しの接触カットを採用することが好ましい。
カッター刃をダイス面の切断面に摺動させて樹脂をカットする場合には、それらの摩耗を極力防止してメンテナンスコストを低減するのが肝要であるため、ダイス面については、超硬チップ、チタンカーバイド(TiC)、タングステンカーバイド(WC)等よりなる硬質プレートを貼り付けて切断面を構成したり、その硬質金属を溶射肉盛りまたはHIPによる加圧焼結によって接合したりして、ダイプレートの切断面の耐摩耗性を向上させる方法が公知であり、これらを用いることができる。
また、ナイフについては、ナイフ自体の素材としてチタンカーバイドや工具鋼等の硬質金属を使用したり、ステンレス鋼等の一般鋼よりなる母材にチタンカーバイドよりなる刃先を接合したものや、その母材表面に高硬度のコーティング層を形成することによって、ナイフの耐摩耗性を向上させる方法が公知であり、これらを用いることができる。
本発明のペレタイザは、切断の際に、カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たすことを特徴とする。ここで、ΣmaxWnは、ノズルの開口部分とカッター刃が接する線分の和において、カッター刃がダイス面を1周した時の最大値を意味する。
ΣmaxWn/Lx≦0.2
上記カッター刃が接するノズルの開口部分とは、それぞれ図4においてはW1〜W3で、図5においてはW1〜W8で表される部分を示す。ノズルの開口部分からは溶融樹脂が押出され、押出された樹脂はカッター刃により切断される。
また、カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)とは、それぞれ図4においてはW1+W2+W3により、図5においてはW1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8により求められる、長さの和を示す。
さらに、カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とは、カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さのことであり、図4においてLxで示される長さを示す。
本発明のペレタイザは、任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とは、ΣmaxWn/Lx≦0.2の関係式を満たすことが必要である。
すなわち、任意のカッター刃が溶融樹脂を切断する任意時点における、該カッター刃が接するノズル開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)のうち、該カッター刃がダイス面を1周する履歴中での最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、上記関係式を満たすものである。
さらに具体的に言えば、本発明においては、上記WnとLxとは、カッター刃が何れの位置にあってもΣWn/Lx≦0.2の関係式を満たすことが必要であり、即ち、ΣmaxWn/Lx≦0.2の関係式を満たすことが必要である。好ましくは、ΣmaxWn/Lx≦0.17の関係式を満たす。
ΣWn/Lx>0.2であると、カッティング不良が顕著に発生するため好ましくない。更に好ましくはΣmaxWn/Lx≦0.14である。また、ΣWnの最小値は0であり、これは、カッター刃がノズルの開口部分を横切らないことを意味する。また、ΣmaxWnの下限も理論的には0であるが、0は即ちノズルが全く開口していないことを意味しており、0に近いほど生産性が低下する傾向にあるので、好ましくは0.03≦ΣmaxWn/Lxである。
一般に、ノズルの配置を効率的に行うと、1枚のカッター刃がある瞬間に横切るノズルの数は、角度によってまちまちであり、例えば図4のように3個のケースもあれば、図5のように8個となるケースもあり得る。
具体的に示すと、本発明では、カッター刃の部分の全長(図4のLx)に対して、ある瞬間に横切るノズルの開口部分の長さの和(図4であれば(W1+W2+W3)、図5であれば(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8))の割合が、カッター刃が1周した場合にダイス面の何れの場所においても0.2以下、好ましくは0.17以下、さらに好ましくは0.14以下となるようにすることで、カッター刃にかかる負荷を軽減させ、カッティング不良をなくすことができ、安定な運転を実施することが可能となる。
一般的に、高流動性溶融樹脂である、MFR(メルトフローレート)が10g/10minを超えるような低粘度高MFR材料の場合に、切断後のペレット形状に曲がり、変形、潰れ、ヒゲ付き等の欠陥が生じる等の問題が顕著に発生するが、本発明のペレタイザによれば、MFR(メルトフローレート)が10g/10minを超えるような低粘度の高MFR材料の場合はもちろんのこと、MFRが30g/10minを超えるような低粘度の高MFR材料の場合であっても、カッティング不良をなくし、効率的に運転を実施することが可能となる。
本発明の好ましい態様においては、ダイスの外径は200mm以上であることが好ましい。また外径が大きいほうが生産性は高まるが、装置があまりにも大きすぎると保守が困難となるので、外径は1000mm以下が好ましい。ダイスの面積は20000〜200000mmであることが好ましい。
また、ノズルの直径は、溶融樹脂や製造されるペレットサイズにもよるが、2.0mm〜4.0mm、より好ましくは2.2〜3.0mmである。ノズルの個数は300個以上が好ましく、また5000個以下が好ましい。開口部分の面積は600〜20000mmであることが好ましい。
「開口部分の面積/ダイス面積」で求められるノズル開口率は、2.5〜12%、好ましくは3.0〜10%である。ノズル開口率が2.5%より狭すぎると、押し出し量が減ってしまい生産効率が悪化するおそれがある。12%より広すぎるとダイス温度のコントロール性が低下するおそれがあるため、好ましくない。
ノズル開口部分は、溶融樹脂の押出を調節するため、テーパー孔とすることもできる。
(一般に、ノズル開口部分同士の距離は通常1.0〜3.5mmであり、ノズル開口部分の中心間距離は通常4.5〜7.0mmである。)
ダイスの大きさにもよるが、カッター刃の数は、10〜50個である。
また、カッターの材質は、SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス、チタンカーバイド(TiC)等が好適に用いられる。
本発明のペレタイザは、新規に設備を導入することで実現できることはもちろんのこと、既存の各ペレタイザの小規模な改善を実施することによって、ほとんどの既存ペレタイザで実現できる点が特徴の1つである。既存のペレタイザの場合は、本発明の要件を満たすものとすることができる方法ならば、適宜選択して実施することができるが、具体的には、例えば、既存のペレタイザのノズル開口部分をピンで埋めることによって実現することができる。また、新規な設備の場合は、上記方法以外に、前記要件を満たすように予めノズルを開孔しておくことも可能である。
本発明のペレタイザを、既存のペレタイザのノズル開口部分をピンで埋めることによって実現した一例を図面に基いて説明する。図4において、例えば、カッター刃が接するノズルの開口部分Wnが2.4mmであり、ノズル開口部分は4個であるので、Wnの長さの和ΣWnである9.6mmと、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さLxが85mmである場合は、ΣWn/Lxは0.11であるので、「ΣWn/Lx≦0.2」の関係式を満たし、本発明のペレタイザの要件を満たす。したがって、この部分に特に変更の必要はない。
しかし、図5において、図4と同様に、カッター刃が接するノズルの開口部分Wnが2.4mmであり、ノズル開口部分は8個であるので、Wnの長さの和ΣWnである19.2mmと、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さLxが85mmである場合は、ΣWn/Lxは0.23であるので、上記の関係式を満たさない。そのため、図5においては、本発明のペレタイザの要件を満たすようにノズル孔(ノズル開口部分)の配置を考慮するか、あるいはすでに存在するものについては条件に適合するようにノズル孔をいくつか塞ぐ変更を実施すればよい。ここでは、ノズル孔を7個にすればよいため、ノズル孔を1つ塞ぐ変更を実施すればよい。どのノズル孔を塞ぐかは、適宜に決めることができる。ノズル孔を塞いだ例を図6に示す。
したがって、本発明のペレタイザは、これを実現するために設備を新規に導入したり大規模な改善を行う必要がなく、容易にかつ低コストで高流動性溶融樹脂のペレットを安定に製造できるという効果をも奏するものである。
2.ペレットの製造方法
本発明は、上記のペレタイザを用いて高流動性溶融樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法である。本発明のペレットの製造方法によれば、上述したように、高流動かつ分子量分布の狭い、従来カッティングがむずかしいとされていた樹脂、具体的には、具体的にはMFRが30g/10min以上である樹脂を用いてペレットを製造することができる。
本発明の製造方法に用いる樹脂は熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルウレタン、ポリプロピレン、ABS又はポリウレタン等のポリオレフィン、またはこれらの共重合体を材料とすることができる。特に、従来安定的効率的にペレット化することが難しかった高流動性のエチレン系重合体、プロピレン系重合体又は自動車部品等の射出成型等に用いられているポリプロピレン系ブロック共重合体のペレットを安定的効率的に製造することができる。
したがって、本発明のペレットの製造方法は、MFRが10g/10min以上、更には30g/10min以上のエチレン系重合体又はプロピレン系重合体を材料とすることが好ましい。本発明の製造方法は、カッティングされるポリマーのMFRが高いとき、具体的には10g/10min以上のときに、その効果がより顕著に発揮されるからである。
前記の原料を用いて、本発明のペレタイザを使用することにより、安定的効率的に原料樹脂のペレットを製造することができる。
切断された樹脂(ペレット)は、一般的に、顆粒状の樹脂である。顆粒状の樹脂の寸法は、好ましくは、径を0.1mm〜10mm(中でも、0.5mm〜8mm、さらには1mm〜5mm)にし、長さ(押出方向の長さ)を0.5mm〜5mm(中でも1mm〜3mm)の大きさとされ、冷却水槽に放出される。
こうして得られたペレットは均一形状であるため、その後の射出成形等にもトラブルを起こさない等の効果も生ずる。
製造されたペレットは温水循環装置で輸送並びに冷却され、最終的に温水と分離乾燥されて袋詰めして製品となる。
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれら実施例によって制約を受けるものではない。なお、物性値の測定方法および装置は以下のとおりである。
1.物性値の測定方法
(1)MFR測定
ポリプロピレン系重合体はJIS−K−6758により測定したメルトインデックス値を示す。
(2)Mw/Mn(分子量分布の指標)の測定方法
分子量分布の指標であるMw/Mnを算出するための、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法の測定方法は以下のとおりである。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、
A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器
(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0L/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図7のように行う。
2.使用したペレタイザ
以下のサイズをもつペレタイザを使用した。
ダイスの外径:500mm
ダイスの内径:370mm
カッター刃全長 L:129mm
カッター部分長さ Lx:72mm
ダイスノズル径 Wn:2.4mm
これは、カッター刃が、一度に最高で9穴のノズル開口部分を一気に横切るような箇所が存在しているものであった。この場合、カッター部分長さLxに対するノズル開口部合計ΣWnの割合は以下の式より、0.300であった。この改善前ダイスを、比較例に用いた。
2.4×9÷72=0.300
この改善前ダイスのノズル開口部分の一部を、直径2.4mmのアルミピンで埋めることにより開口部分を塞ぎ、ノズル開口部分の数を変える改善を施したダイスを、実施例に用いた。
なお、本実施例で用いるカッター部分長さLxが72mmであり、ダイスノズル系Wnが2.4mmである場合のΣmaxWn/Lxの値は、Wnの数により、表1のとおりとなる。
3.使用した樹脂
以下の表2に示すようなMFR及び分子量分布(Mw/Mn)を有するポリプロピレン単独重合体を使用した。
樹脂A:
Zn系触媒によりスラリー法を用いて製造したものである。
樹脂B:
Zn系触媒によりスラリー法を用いて製造したものである。
樹脂C:
樹脂Aを押出機内に過酸化物を添加することにより変成したものである。
樹脂D,E,F
樹脂Bを押出機内に過酸化物を添加することにより変成したものであり、添加する過酸化物の量によって、変成度合いを変化させたものである。
(比較例1)
上記ペレタイザにおいて、改善前のダイスを用いた。これは、一度に最高で9穴のノズル開口部分を一気に横切るような箇所が存在しているものであった。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.300であった。
このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、樹脂C〜Fのカッティングにおいて、ペレタイザ運転開始直後にカッティング不良によるトラブル停止が生じた。カッティング不良の内容を見ると、カッター刃にカッティングできなかった樹脂塊の巻き付きが多数発見され、カッター刃の折損が、全カッター刃数18本のうち、半数以上に見られた。樹脂A、Bのカッティングにおいては、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。
(比較例2)
上記ペレタイザにおいて、カッター刃が一度に横切るノズル穴数を最高8穴になるようノズルを塞いだ。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.233であった。
このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、樹脂C、E、Fのカッティングにおいて、ペレタイザ運転開始直後にカッティング不良によるトラブル停止が生じた。カッティング不良の内容を見ると、カッター刃にカッティングできなかった樹脂塊の巻き付きが多数発見され、カッター刃の折損が、全カッター刃数18本のうち、半数以上に見られた。樹脂A、B、Dのカッティングにおいては、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。
(実施例1)
上記ペレタイザにおいて、カッター刃が一度に横切るノズル穴数を最高6穴になるようノズルを塞いだ。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.200であった。
このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、全ての樹脂において、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。
(実施例2)
上記ペレタイザにおいて、カッター刃が一度に横切るノズル穴数を最高4穴になるようノズルを塞いだ。この場合のカッター部分長さに対するノズル開口部合計の割合は、0.133であった。
このペレタイザを用いて、前述の各樹脂をそれぞれ溶融樹脂として使用し、ペレット製造を行ったところ、全ての樹脂において、カッティング不良やトラブルが全くなく、ペレットを製造することができた。
(評価)
実施例及び比較例の結果から、実施例1又は2と比較例1又は2とを対比すると、本発明の特定事項である、「カッター刃が接するノズルの開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃とダイス面とが重なる部分の長さ(Lx)とが、の最大値(ΣmaxWn)/Lx≦0.2の関係式を満たす」との要件を満たさない比較例1又は2は、MFRが30g/10min以上である樹脂のカッティングを安定的効率的に行うことができなかった。
これらに比べて、実施例によるものは、MFRが30g/10min以上はもちろん、MFRが75g/10min以上のものであってもカッティングを安定的効率的に行うことができた。
したがって、本発明によれば、このような高流動性溶融樹脂を用いて安定的効率的にペレットを製造できることがわかった。
本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法は、従来カッティングがむずかしいとされていた高流動かつ分子量分布の狭い樹脂についても、カッティング不良がなく、安定にペレットを製造することができるという効果があるため、自動車部品向けなど成型サイクルを短縮化するため等に用いられる粘度の低いグレードの樹脂、具体的には従来は安定的にカッティングができなかった、MFRが30g/10min以上である樹脂のカッティングを安定的に効率的に行うことができる。
また、カッティング不良を生じないで安定に製造されたペレットは、切断後のペレットの形状欠陥が減少し、外観不良によって商品価値が低下することなく、また、押出あるいは射出成形時のホッパー部での引っかかり等を起こさないという効果があるため、射出成型における工業的価値が高いペレットを製造することができる。
さらに、本発明のペレタイザは、既存の各ペレタイザの小規模な改善を実施することによって、ほとんどの既存ペレタイザで実現できるため、設備を新規に導入したり、大規模な改善を行う必要がなく、容易にかつ低コストで高流動性溶融樹脂のペレットを安定に製造できる。これらのような点から、本発明のペレタイザ及びこれを用いたペレットの製造方法は、工業的価値が極めて高いものである。
図1は、一従来例によるペレタイザ装置の概要を示す側面断面図である。 図2は、本発明のペレタイザにおける、ダイス面のノズル開口部分の配置の代表的な一例の模式図である。図1のノズル開口部分5を備えたダイス6部分を軸方向(以下「X軸」ともいう。)から見たものにあたる。 図3は、本発明のペレタイザにおける、ダイス面にカッター軸およびカッター刃等からなるカッターヘッドを被せた代表的な一例の模式図である。図1のカッター軸8及びカッター刃9部分を同じくX軸方向から見たものにあたる。 図4は、図3の(a)部分の拡大図である。 図5は、図3の(b)部分の拡大図である。 図6は、図3の(b)部分に対して改善策を施したものの拡大図である。 図7は、Mw/Mn(分子量分布の指標)の測定方法に用いるクロマトグラムのベースラインと区間の一例を示すグラフである。
符号の説明
1 押出スクリュー
2 押出筒
3 ブレーカプレート
4 押出ヘッド
5 ノズル開口部分
6 ダイス
7 カッターボックス(胴部)
8 カッター軸
9 カッター刃
10 カッターホルダ(取付体)
11 冷却水槽
12 排出口



Claims (5)

  1. 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより押出される溶融樹脂を、ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザにおいて、
    任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たし、ノズルの直径が2mm〜4mm、ノズルの穴面積/ダイス面積が2.5〜12%、ノズルの穴数が300個以上、カッターの刃数が10〜50個であることを特徴とするペレタイザ。
    ΣmaxWn/Lx≦0.2
  2. 前記関係式が、ΣmaxWn/Lx≦0.17であることを特徴とする請求項1に記載のペレタイザ。
  3. 請求項1または2に記載のペレタイザを用いて高流動性溶融樹脂からペレットを製造することを特徴とするペレットの製造方法。
  4. 高流動性溶融樹脂がエチレン系重合体又はプロピレン系重合体であることを特徴とする請求項3に記載のペレットの製造方法。
  5. 押出筒の先端に装着されたダイス面中のノズルより押出される溶融樹脂を、ダイス面の先端表面に近接して配設された回転カッター刃によりペレット状に切断した後、水冷固化するようになっているペレタイザの改善方法であって、
    任意のカッター刃が溶融樹脂を切断するとき、該カッター刃がダイス面を一周する履歴中で接するノズル開口部分の長さ(Wn)の和(ΣWn)の最大値(ΣmaxWn)と、該カッター刃と開口部を含むダイス面とが実際に重なっている部分の長さ(Lx)とが、下記の関係式を満たし、ノズルの直径が2mm〜4mm、ノズルの穴面積/ダイス面積が2.5〜12%、ノズルの穴数が300個以上、カッターの刃数が10〜50個となるように変更することを特徴とするペレタイザの改善方法。
    ΣmaxWn/Lx≦0.2
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