JP5250215B2 - 偏差補償プログラム - Google Patents

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Description

この発明は、比例・積分・微分機能の各要素を有するPID制御機能を備えたPIDフィードバック制御システムに関する。
従来のPIDフィードバック制御システムは、図1に示すように、比例・積分・微分(以下PIDと記す)制御機能110、減算機能112、及び目標値設定機能114を備えた基本構成を有している。この構成では、目標設定機能114で設定した目標値141と制御対象116の制御量150との差分659(以下偏差量と記す)を減算機能112で演算し、この偏差量659をPID制御機能110へ入力し、PID制御機能110により制御対象116の操作量を生成する。
以下の記載において、図1に示す制御システムを、従来基本PIDフィードバック制御システムと記す。
この従来基本PIDフィードバック制御システムにおいて、目標値に対する制御量の応答性の向上と、制御対象の特性が変化しても良い応答性を維持するロバスト性の向上とを実現するための方法が各種提案されている。
代表的な方法として、無駄時間が大きい制御対象に対して応答性の向上に有効なスミス法の無駄時間補償法や図2に示す構成例のような応答性の向上に有効な2自由度PIDフィードバック制御システムがある。
更に、現代制御理論などの方法による応答性、ロバスト性の向上の方法が提案されている。例えば、特許文献1〜5に示すような規範モデル、PID制御パラメータ検出器、プロセス情報オブザーバ等による調整機能を有するシステムも種々提案されている。
特開2005−339004号公報 特開2003−307273号公報 特開2003−195905号公報 特開2000−514217号公報 特開平9−85407号公報 特開平5−340443号公報 「プロセス制御システム実用化と応用事例」,計測と制御,2004年3月,第43巻,第3号 「PI調整器学習用応用パターン」,石川島播磨技報,1997年、第37巻
図1に示すような従来基本PIDフィードバック制御システムは、システム設計にあたって高度な知識が必要なく、また、調整が比較的簡単で経済的にも有利であるという長所があるので実用的であり、家電製品、産業設備などの小規模から大規模の制御システムにおいて、あらゆる方面で採用されている。反面、外乱に対応する定制御と目標値に対応する追値制御の双方の応答性を良くすることは出来ない。また、制御対象の特性変化に対してロバスト性が悪いという短所がある。
従来基本PIDフィードバック制御システムのこれらの短所を改善する方法として各種方法が提案されている。
これらの主な方法として、
第1の方法:目標値の調整をする、
第2の方法:偏差量の調整をする、
第3の方法:PID制御機能の比例、積分、微分のゲインの調整をする、
第4の方法:PID制御機能の出力(制御対象の入力)の調整をする、
がある。
第2の方法による代表的な方法として無駄時間補償法としてスミス法がある。この方法は、制御対象の近似モデルが必要なので制御対象の特性が変化しない場合は、応答性は向上するが、制御対象の特性が変化すると応答性は低下するロバスト性が悪い短所を持っており、実用面で使い難いので特殊な制御対象を除き使われていない。
第1の方法と第2の方法による代表的な方法として、図2に示す2自由度PIDフィードバック制御システムがある。
この2自由度PIDフィードバック制御システムは、従来基本PIDフィードバック制御システムに、定制御に対して応答性の向上効果がある先行微分機能221を備えて、追値制御に対して応答性の向上効果がある微分要素を備えた目標値フィルタ220を備えている。定制御、追値制御とも従来基本PIDフィードバック制御システムより応答性は向上するが、従来基本PIDフィードバック制御システムの比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインの再調整が必要な上、先行微分機能221と目標値フィルタ220の調整要素も多く、調整に複雑な面を持っているので、制御対象の特性により、再調整も必要になるなどロバスト性が悪く、実用面で使い難い。
一方、特許文献1〜6に例示される現代制御理論などによる方法は、第1、2、3、4の方法に関連する種々の方法である。これらは、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムに比べて、定制御と追値制御の応答性、ロバスト性が改善されるという長所がある反面、システム設計にあたって数理計画、ニューラルネットワーク、ファジー、遺伝的アルゴリズム、カオスなど複雑な専門知識が必要であり、取り扱いが難しく、また高価であるという短所があるため実用面で使い難いので特殊な制御対象を除き使われていない。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、外乱に対応する定制御と目標値に対応する追値制御の双方の応答性を向上することを第1の目的とし、
制御対象の特性が変化しても良好な応答性が維持できるロバスト性の向上を第2の目的とし、
現在、多く使用されている図1の従来基本PIDフィードバック制御システムを再調整すること無しに、容易に第1の目的と第2の目的を達成できるPIDフィードバック制御システムを提供することを第3の目的とする。
以上の課題を解決するために、発明は、目標値と制御量の差分に応じて出力する減算機能と、比例・積分・微分機能の各要素を少なくとも有するPID制御機能を備えるコンピュータにより構成されたPIDフィードバック制御システムにおける前記減算機能の出力の偏差量を補償して、該補償した偏差量を前記PID制御機能に入力するための偏差補償プログラムであって、前記コンピュータに、
前記目標値と前記制御量を取得して、前記制御量をランプ状に変化する前記目標値に追従させる追値制御中であるか否かを示す信号を出力する追値制御補償機能と、
前記目標値と前記制御量と前記追値制御補償機能により出力される信号に応じた信号を、 前記偏差量を補償すべき信号として出力する第1の信号変換機能と、を実現させることを特徴とする
また、本発明において、
前記信号変換機能は、
前記目標値と前記制御量と前記追値制御補償機能により出力される信号を入力として
前記目標値と前記制御量の差分に応じて出力する第4の減算機能と、
前記第4の減算機能の出力の変化に応じて出力する第1の信号変換機能と、
前記制御量の微分した出力をする微分機能と、
前記微分機能の出力の変化に応じて出力する第2の信号変換機能と、
前記第4の減算機能の出力の変化と前記第1の信号変換機能の出力の変化と前記第2の信号変換機能の出力の変化と前記追値制御補償プログラムの出力の変化に応じた信号を前記偏差量に加えるべき信号として出力する第3の信号変換機能と、を有することとしてもよい
また、発明の制御プログラムは、上記偏差補償プログラムと
前記コンピュータに、
前記目標値と前記制御量との差分に応じて出力する前記減算機能の出力を絶対値に変換する第3の絶対値変換機能と、
前記目標値と前記制御量との差分に応じて出力する前記減算機能の出力を前記偏差補償プログラムの出力で補正する補正機能の出力を絶対値に変換する第4の絶対値変換機能と、
前記第3の絶対値変換機能の出力と前記第4の絶対値変換機能の出力との差分に応じて出力する第5の減算機能と、
前記第5の減算機能の出力を絶対値に変換して積分する積分機能および外部からの入力信号で積分値をリセットする機能を備えたリセット付積算機能と、
前記リセット付積算機能の出力を表示する表示機能と、を実現させる制御改善プログラムと、を含むことを特徴とする。
また、第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明において、
前記コンピュータに、
前記目標値と前記制御量を取得して、
前記目標値の変化および前記制御対象の特性の変化により、前記目標値と前記制御量との差分が大きくなり制御が不安定な現象を検出する制御不安定検出機能と、
前記目標値と前記制御量の差の信号と前記制御不安定検出機能と外部からの入力信号により出力される信号に応じた信号を、前記偏差量に加えるべき信号として出力する信号変換機能と、を有する制御安定機能を更に実現させることを特徴とする。
本発明によれば、家電製品、産業設備などの小規模から大規模の制御システムにおいて、あらゆる方面で採用されている従来基本PIDフィードバック制御システムのPIDゲインを再調整すること無しに、容易な方法で応答性の向上及びロバスト性の向上したPIDフィードバック制御システムを提供できる。
本発明は、上記した従来基本PIDフィードバック制御システムの短所を改善する前記第2の方法であり、図3は、本発明の1実施形態である構成を示す。これらの図に示すように、本実施形態のPIDフィードバック制御システム(以下提案PIDフィードバック制御システムと記す)は、図1に示す従来基本PIDフィードバック制御システムの構成要素であるPID制御機能310、減算機能312、及び目標値設定機能314に、目標値141と制御量350を入力とする偏差補償プログラム400を付加して、減算機能312の出力657と偏差補償プログラム400の出力656を加算する加算機能311の出力658をPID制御機能310の入力とする。
なお、偏差補償プログラム400は、図4に示すように追値制御補償プログラム500と信号変換プログラム600とで構成している。
図3Aは、図3の提案PIDフィードバック制御システムに制御改善検出プログラム360を追加した実施例である。
図3Bは、制御改善検出プログラム360の1実施形態である構成を示す。
図に示すように、減算機能312の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能362と、加算機能311の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能361と、絶対値変換機能361の出力と絶対値変換機能362の出力の差分に応じて出力する減算機能363と、減算機能363の出力を積算する積算機能と外部からの入力信号で積分値をリセットする機能を備えるリセット付積算機能の出力364と、リセット付積算機能の出力364の出力を表示する表示機能365で構成する。
図4は、偏差補償プログラム400の1実施形態である構成を示す。同図に示すように、偏差補償プログラム400は、追値制御補償プログラム500と、信号変換プログラム600で構成される。
図5は、追値制御補償プログラム500の1実施形態である構成を示す。同図に示すように、追値制御補償プログラム500は、目標値と制御量の差分に応じて出力する減算機能510と、減算機能510の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能520と、制御量の変化応じた無駄時間要素及び遅れ時間要素を含んだ変換の出力をする無駄時間・遅れ時間変換機能530と、目標値と無駄時間・遅れ時間変換機能530の出力の差分に応じて出力する減算機能540と、減算機能540の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能550と、絶対値変換機能520の出力と絶対値変換機能550の出力の差分に応じて出力する減算機能570と、目標値の変化に応じて微分要素及び絶対値変換機能を含んだ変換の出力をする微分・絶対値変換機能560と、減算機能570の出力の変化と微分・絶対値変換機能560の出力の変化に応じて出力する信号変換機能580で構成される。
図6は、図5の微分・絶対値変換機能560の1実施形態である構成を示す。同図に示すように、微分・絶対値変換機能560は、目標値を増幅する増幅機能561と、増幅機能561の出力を微分する微分機能562と、微分機能562の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能563と、絶対値変換機能563の出力を制限する信号制限機能564で構成する。
なお、増幅機能561、微分機能562、絶対値変換機能563の計算順序は、それぞれ入れ換わっても良い。
図7は、図5の信号変換機能580の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、減算機能570の出力と微分・絶対値変換機能560の出力を乗算する乗算機能590と、乗算機能590の出力を制限する信号制限機能592と、任意の設定または外部からの入力信号に応じて出力する追値制御ゲイン設定機能583と、信号制限機能582の出力と追値制御ゲイン設定機能583の出力を乗算する乗算機能584で構成する。
図7Aは、図5の無駄時間・遅れ時間変換機能530の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、制御量に無駄時間を与える無駄時間機能531と、無駄時間機能531の出力に遅れ時間を与える遅れ時間機能532で構成する。
図8は、信号変換プログラム600の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、目標値と制御量の差分に応じて出力する減算機能610と、減算機能610の出力の変化に応じて出力する信号変換機能620と、制御量の微分した出力をする微分機能630と、微分機能630の出力の変化に応じて出力する信号変換機能640と、減算機能610の出力の変化と信号変換機能620の出力の変化と信号変換機能640の出力の変化と追値制御補償プログラム500の出力の変化に応じて出力する信号変換機能650で構成する。
図9は、図8の信号変換機能620の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、任意の設定または外部からの入力信号に応じて出力する偏差量ゲイン設定器機能621と、減算機能610の出力と偏差量ゲイン設定器機能621の出力乗算する乗算機能623で構成する。
図10は、図8の信号変換機能640の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、任意の設定または外部からの入力信号に応じて出力する先行微分ゲイン設定器機能644と、微分機能630の出力と先行微分ゲイン設定器機能641の出力の乗算する乗算機能643で構成する。
図11は、図8の信号変換機能650の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、図3の偏差量補償プログラム400の出力656と減算器312の出力657の比率を変える設定機能を備える偏差量分配設定機能710と、信号変換機能620の出力から信号変換機能640の出力と追値制御補償プログラム500の出力を減算する加減算機能651と、偏差量分配設定機能710の出力と加減算機能651の出力670を乗算する乗算機能711と、偏差量分配設定機能710の出力と減算機能610の出力611を乗算する乗算機能712と、乗算機能711の出力と乗算機能712の出力の差分に応じて出力する減算機能713で構成する。
図12は、偏差量分配機能を偏差補償プログラム400の外部に出した変形偏差補償プログラム900(変形偏差補償プログラム900は、偏差補償プログラム400の実施例の図11の加減算機能651を出力とする構成とする)を備えた提案PIDフィードバック制御システムの1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、偏差分配設定機能880は、第1の出力u(uは0〜1の値とする)と第2の出力1−uの出力を出す機能を備えて、変形偏差補償プログラム900の出力にuを乗算機能811で乗算して、減算機能815の出力に1−uを乗算機能812で乗算して、乗算機能811の出力と乗算機能812の出力を加算機能813で加算した出力をPID制御機能810の入力とする構成としている。この実施形態例でも図3の提案PIDフィードバック制御システムと全く同じ機能となる。
また、乗算機能811の出力を第1のPID制御機能に入力し、乗算機能812の出力を第1のPID制御機能の機能と同一の機能を持つ第2のPID制御機能に入力して、第1のPID制御機能の出力と第2のPID制御機能の出力を加算して制御対象の入力としても図3の提案PIDフィードバック制御システムと全く同じ機能となる。
た、図3において、減算機能312に加算機能を付加して、偏差補償プログラム400の出力656を減算機能312に入力して、加算しても図3の提案PIDフィードバック制御システムと全く同じ機能となる。
また、図5の追値制御補償プログラム500の1実施形態の減算機能510を追値制御補償プログラム500の外に出し、図8の信号変換プログラム600の1実施形態の減算機能610を信号変換プログラム600の外に出して一つの減算機能のまとめて備え、この変更に応じて追値制御補償プログラム500と信号変換プログラム600を構成しても図3の提案PIDフィードバック制御システムと全く同じ機能となる。
また、図5の追値制御補償プログラム500の1実施形態の減算機能510と図8の信号変換プログラム600の1実施形態の減算機能610を省略して、図3の提案PIDフィードバック制御システムの減算機能312の出力657を偏差補償プログラム400に入力して減算機能510と減算機能610の機能に換えても図3の提案PIDフィードバック制御システムと全く同じ機能となる。
図4Aは、図3の提案PIDフィードバック制御システムの偏差補償プログラム400に制御安定化プログラム1100を追加した1実施形態である構成を示す。
制御安定化プログラム1100は、図4−2に示すように制御不安定検出プログラム1200と信号変換プログラム1300で構成している。
図4Cは、制御不安定検出プログラム1200の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、目標値と制御量の差分に応じて出力する減算機能1201と、減算機能1201の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能1202と、制御量の変化に応じた無駄時間要素及び遅れ時間要素を含んだ変換の出力をする無駄時間・遅れ時間変換機能1203と、目標値と無駄時間・遅れ時間変換機能1203の出力の差分に応じて出力する減算機能1204と、減算機能1204の出力を絶対値に変換する絶対値変換機能1205と、絶対値変換機能1202と絶対値変換機能1205の差分に応じて出力する減算機能1206と、減算機能1206の出力の変化に応じて出力する信号変換機能1207で構成する。
図4Dは、信号変換プログラム1300の1実施形態である構成を示す。
同図に示すように、制御不安定検出プログラム1200の出力1210が規定値の範囲に入れば、信号を出力して、この信号を一定値に保持する信号セット機能および外部からの入力信号1104により、制御不安定検出プログラム1200の出力1210が規定値の範囲から外れていれば、一定値に保持された信号を開放する信号リセット機能を備えたセット・リセット機能1301と、制御不安定プログラム1200の出力1211の出力の変化に応じて出力する信号変換機能1303と、任意の信号を設定できる信号設定機能1304と、セット・リセット機能1301の出力により、信号変換機能1303の出力1107と信号設定機能1304の出力1105を切換えて出力する信号切換機能1302で構成する。
信号変換プログラムの出力1106は、図8の信号変換プログラム600に入力して、図11の加減算機能651の出力670を減算する。
本発明の動作を、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムと図3の提案PIDフィードバック制御システムで説明する。図13〜図30に示す本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号の符号と名称の関係は下記のとおりである。
141 図1の従来基本PIDフィードバック制御システム及び図3の提案PIDフィードバック制御システムの目標値
150 図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの制御量
350 図3の提案PIDフィードバック制御システムの制御量
581 図3の提案PIDフィードバック制御システムの追値制御補償プログラムの出力
622 図3の提案PIDフィードバック制御システムの図の信号変換機能620の出力
642 図3の提案PIDフィードバック制御システムの図10の信号変換機能640の出力
656 図3の提案PIDフィードバック制御システムの偏差補償プログラム400の出力
670 図3の提案PIDフィードバック制御システムの図11の減算機能651の出力
657 図3の提案PIDフィードバック制御システムの減算機能312の出力
658 図3の提案PIDフィードバック制御システムの加算機能311の出力
659 図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの減算機能112の出力
1000 図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの偏差659と図3の提案PIDフィードバック制御システムの補正後の偏差658の絶対値の差分の積算値を100秒毎にリセットした値
2000 図3の提案PIDフィードバック制御システムの偏差657と補正後の偏差658の絶対値の差分の積算値を100秒毎にリセットした値
図1および図3のPID機能と制御対象の特性は、下記とする。
図1の記号を用いて、伝達関数の形で、
PID機能は、
u(s)=e(s)(P+I/s+D*s)
ただし、Pは、比例ゲイン定数、Iは、積分ゲイン定数、Dは、微分ゲイン定数である。
制御対象の特性は、
G*e−LS/(1+T1s)(1+T2s)
ただし、Gは、制御対象のゲイン定数、Lは、無駄時間、T1,T2は、1次遅れ時間である。
図3の偏差補償プログラム400の追値制御補償プログラム500の構成は、図5、図6、図7、7Aの構成例とし、また、信号変換プログラム600構成は、図8、図9、図10、図11の構成例とする。
制御対象は、制御対象のゲイン定数G=1,無駄時間L=1秒、一次遅れ時間はT1=10秒、T2=0秒、PID制御機能の比例ゲイン定数P=2.7、積分ゲイン定数I=0.7、微分ゲイン定数D=0は、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムと図3の提案PIDフィードバック制御システムは同じ値とする。
図11の偏差量分配設定機能710の出力u=0.5として、図9の偏差量ゲイン設定機能621の出力GをG=2、図10の先行微分ゲイン設定機能644の出力SをS=0に設定して偏差量を先行微分量より相対的に大きくすると制御は早く応答するが、図13に示すように目標値に対する応答は、過剰制御になりオ-バーシュートするが、外乱に対する応答は、改善される。一方、偏差量ゲイン設定機能621の出力G=0、先行微分ゲイン設定機能644の出力S=2に設定して先行微分量を偏差量より相対的に大きくすると、図14に示すように制御不足(過剰制御の防止の効果がある)となる。G=2おびS=2とすると、図15に示すように外乱に対応する定値制御および目標値のステップ応答に対して早い応答制御と過剰制御の防止の双方の目的は達せられるが、目標値に対するランプ応答の追値制御の制御不足を生じる。この理由は、定値制御および目標値のステップ応答に比較して、相対的に追値制御中の偏差が適正な値より小さくなり不足制御になるためである。
この不足制御を改善するために、追値制御補償プログラム500は、追値制御中に信号を出力して、追値制御中以外は、追値制御中に信号を出力する信号とは差異のある信号を出力する機能により、追値制御補償プログラム500の出力を図8の信号変換機能650に入力し、追値制御中の偏差量を調整する。
図16は、目標値141がランプ状に変化するに応じて制御量350がランプ状の応答する追値制御中は、追値制御補償プログラムの出力581の信号は、−0.05の負の出力信号とし、追値制御中以外は追値制御補償プログラムの出力581の信号は、零の出力信号を示している例である。
追値制御補償プログラムの出力581の信号で、追値制御中の偏差量が大きくなるように調整すると、追値制御中の制御不足を改善出来る。図17は、本発明の第1の課題である外乱に対応する定制御と目標値に対応する追値制御の双方の応答性が向上していることを示している。
図17Aは、ゲイン±0.1程度のランダムの外乱信号を制御対象に与えた場合であり、同様に良好な応答を示している。
図18、図19,図20は、図17に示す制御応答の場合の信号変換プログラム600の主要機能の偏差量調整の動作を示している。
図18は、図11の偏差量を調整する加減算機能651の入力622と入力642と入力581を示している。
図19は、図11の偏差量を調整する加減算機能651の出力670と減算機能713の出力656を示している。
図20は、図3の偏差補償プログラム400の出力656と減算機能312の出力657と加算機能311の出力658を示している。
図21は、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムとの偏差659と図3の提案PIDフィードバック制御システムの偏差658を示している。提案PIDフィードバック制御システムの偏差658の動作は、従来基本PIDフィードバック制御システムとの偏差659の動作に比べて位相が進んだ、変化率が大きい動きをしている。
この偏差量の動作の違いが、本発明の第1の課題である外乱に対応する定制御と目標値に対応する追値制御の双方の応答性の向上と第2の課題である制御対象の特性が変化しても良好な応答性が維持できるロバスト性の向上をさせる。
図22,図23,図24は、第2の課題である制御対象の特性が変化しても良好な応答性が維持できるロバスト性の向上の制御応答を示す。
図22は、制御対象のゲイン定数G=1,無駄時間L=0秒、一次遅れ時間はT1=5秒、T2=0秒の動作を示す。
図23は、制御対象のゲイン定数G=1、無駄時間L=2秒、一次遅れ時間はT1=15秒、T2=0秒の動作を示す。
図24は、制御対象のゲイン定数G=1、無駄時間L=1秒、一次遅れ時間はT1=7秒、T2=1秒の動作を示す。
図25は、制御対象のゲイン定数G=1、無駄時間L=4秒、一次遅れ時間はT1=10秒、T2=0秒の動作を示す。
図22,図23,図24は,いずれの場合でも図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの応答より図3の提案PIDフィードバック制御システムの方が、応答性が良いこと示しておりロバスト性が向上していることを示している。
また、図25は、制御対象の特性が大きく変化した場合は、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの応答は、不安定となり制御は発散している。この場合は、実用システムでは、制御対象の機器は緊急停止させる。一方図3の提案PIDフィードバック制御システムは、偏差補償プログラム内の不安定防止機能が動作して制御を安定させていることを示している。この場合は、実用システムでは、制御対象の機器の運転は継続出来るので機器の損傷防止や機器緊急停止に伴う損失防止などが出来るので大きな経済効果がある。この機能もロバスト性の向上と言える。
次に前記の説明例と同一条件における制御対象の特性変えて、制御対象の特性に適正な比例ゲイン定数P=0.7、積分ゲイン定数I=0.24、微分ゲイン定数D=0を与えた場合のケースの応答性の向上とロバスト性の向上の例を説明する。
図26は、制御対象の特性が、制御対象のゲイン定数G=1,無駄時間L=1秒、一次遅れ時間、T1=5秒、T2=1秒、の場合の応答例を示す。
図27は、制御対象の特性が、制御対象のゲイン定数G=1,無駄時間L=1秒、一次遅れ時間、T1=5秒、T2=1秒、の場合でゲイン±0.1程度のランダムの外乱信号を制御対象に与えた場合の応答を示す。
図28は、制御対象のゲイン定数G=1,無駄時間L=1.5秒、一次遅れ時間、T1=6秒、T2=2秒、の場合の応答を示す。
図26,図27,図28は,いずれの場合でも図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの応答より図3の提案PIDフィードバック制御システムの方が、応答性の向上とロバスト性向上していることを示している。
以上の説明ように、本発明は、広範囲な制御対象に応答性の向上とロバスト性の向上したPIDフィードバック制御システムが提供出来る。
第3の課題は、現在、多く使用されている図1の従来基本PIDフィードバック制御システムを再調整すること無しに、容易に第1の課題と第2の課題を解決できるPIDフィードバック制御システムを提供することである。
この第3の課題について説明する。
第1の特徴は、偏差補償プログラム400は、従来基本PIDフィードバック制御システムと同じ目標値と制御量の2入力であり、出力は、1出力と単純であり、従来基本PIDフィードバック制御システムを図3の提案PIDフィードバック制御システムの実施形態に変更するには、偏差657と偏差補償プログラム400の出力656を加算する加算機能311の追加であり、容易である。
第2の特徴は、従来基本PIDフィードバック制御システムの比例・積分・微分のゲイン定数(以下PIDゲイン定数と記す)は変更しなくて良い、また、偏差量補償プログラム400の調整要素である図11の偏差量分配設定機能710の出力u=0.5、図9の偏差量ゲイン設定機能621の出力G=2、図10の先行微分ゲイン設定機能644の出力S=2、追値制御補償プログラムの出力581の信号−0.05は、制御対象が大幅に変わる以外は、ほとんど変更する必要は無いので調整は容易である。
既に稼動中の多数の従来基本PIDフィードバック制御システムで構成されている発電プラント、石油プラントなど大規模制御システムの変更は、容易ではない。特にPIDゲイン定数の再調整は、難しい。
また、新設のPID制御システムのPIDゲイン定数は、経験則で得たPIDゲイン定数を初期設定することが多く、この点でも従来基本PIDシステムのPIDゲイン定数を、変更する必要がないことは有利である。このため、従来基本PIDフィードバック制御システムのPIDゲイン定数を変更する必要がないことは、新しい機能を追加する上で非常に重要な課題である。
第3の特徴は、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムと図3の提案PIDフィードバック制御システムの実施形態は、目標値機能、偏差量演算機能、PID制御機能とで構成されており、機能構成が同じであることから、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムで採用されているカスケード制御、フィードフォワード制御などは、全く同じ構成で使用出来る。
第5の特徴は、応答性とロバスト性の確認機能を備えており、効率的な作業が出来る。
図11の偏差量分配設定機能710を備えており、この出力u=0とすれば、偏差補償プログラム400の出力656は、0となり、従来基本PIDフィードバック制御システムと全く同じ応答をする。u=1とすれば、従来基本PIDフィードバック制御システムの偏差657は0となり、偏差補償プログラム400の出力656での制御応答となる。
このことは、uの値を初期値として0にしておき、図23の構成例の制御改善検出プログラム360の表示機能365で制御性の改善の確認しながらuを増加させることが出来る。
図9の偏差量ゲイン設定機能621の出力Gおよび図10の先行微分ゲイン設定機能644の出力Sの設定値とG対Sの比は、応答性とロバスト性のどちらを重視するかで決めるが、GとSの設定値は、2.0付近の値、G対Sの比は1.0付近が応答性とロバスト性とも同等な重視となる。
G,Sの設定およびG対Sの比についても図23に示すように、図3Bの構成例の制御改善検出プログラム360の表示機能365で制御性の違いが確認できる。
図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの偏差659と図3の提案PIDフィードバック制御システムの補正後の偏差658の絶対値の差分を積算値1000が正確な制御の改善の効果を表す。積算値1000と図3の提案PIDフィードバック制御システムの偏差657と補正後の偏差658の絶対値の差分の積算値2000は、良く近似しており、積算値2000で応答性の効果を把握することが出来る。積算値2000が正の方向であれば、応答性の改善がされており、負の方向であれば、応答性は、悪くなっていることを表す。
図29は、図17の場合の応答の向上の表示機能365をリセット付積算機能で100秒毎にリセットした場合の表示例である。図30は、図14の場合で、図1の従来基本PIDフィードバック制御システムの応答より図3の提案PIDフィードバック制御システムの方が、応答性が悪いことを示している。
以上記したように、現在、家電製品、産業設備などの小規模から大規模の制御システムにおいて、あらゆる方面で採用されている従来基本PIDフィードバック制御システムを、本発明のように応答性の向上とロバスト性が向上し、さらに制御不安定防止機能での機器停止の防止が可能な、PID制御システムに、安価で容易に改善出来ることは、生産効率向上、品質向上、省エネルギー、環境保全、などに多大な貢献をする。
公知のPIDフィードバック制御システムを示す図である。 公知の2自由度PIDフィードバック制御システムを示す図である。 本実施形態に係わるPIDフィードバック制御システムを示す図である。 本実施形態に係わるPIDフィードバック制御システムを示す図である。 本実施形態に係わる制御改善検出プログラムの構成を示す図である。 本実施形態に係わる偏差補償プログラムの構成を示す図である。 本実施形態に係わる偏差補償プログラムに制御安定化プログラムを追加した構成を示す図である。 本実施形態に係わる制御安定化プログラムの構成を示す図である。 本実施形態に係わる制御不安定検出プログラムの構成を示す図である。 本実施形態に係わる制御安定化プログラム内の信号変換プログラムの構成を示す図である。 本実施形態に係わる追値制御補償プログラムの構成を示す図である。 本実施形態に係わる追値制御補償プログラム内の微分・絶対値変換機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わる追値制御補償プログラム内の無駄時間・遅れ時間変換機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わる追値制御補償プログラム内の信号変換機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わる偏差補償プログラム内の信号変換機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わる偏差補償プログラム内の信号変換機能の中の偏差量ゲイン設定機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わる偏差補償プログラム内の信号変換機能の中の先行微分ゲイン設定機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わる偏差補償プログラム内の信号変換機能の中の信号変換機能の構成を示す図である。 本実施形態に係わるPIDフィードバック制御システムを示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。 本実施形態に係わる制御システムにおける応答信号を示す図である。
符号の説明
110、210、310、810 PID制御機能
112、212、213、312、363 減算機能
510、540、570、610、651 減算機能
713、815、1201、1204、1206 減算機能
114、214、314、814 目標値設定機能
116、216、316、816 制御対象
220 目標値フィルタ機能
221 先行微分機能
311、813 加算機能
360 制御改善検出プログラム
361、362、520、550、563、1202、1205 絶対値変換機能
364 リセット付積算機能
365 表示機能
400 偏差補償プログラム
500 追値制御補償プログラム
530 無駄時間・遅れ時間変換機能
531 無駄時間機能
532 遅れ時間機能
560 微分・絶対値変換機能
561 増幅機能
562、630 微分機能
564、582 信号制限機能
580、620、640、650、1207、1303 信号変換機能
583 追値制御ゲイン設定機能
581、584、623、643、711、712、811、812 乗算機能
600、1300 信号変換プログラム
621 偏差量ゲイン設定機能
644 先行微分ゲイン設定機能
710、880 偏差量分配設定機能
900 変形偏差補償プログラム
1200 制御不安定検出プログラム
1203 無駄時間・遅れ時間機能
1301 セット・リセット機能
1302 信号切換機能
1304 信号設定機能

Claims (5)

  1. 目標値と制御量の差分に応じて出力する減算機能と、比例・積分・微分機能の各要素を少なくとも有するPID制御機能を備えるコンピュータにより構成されたPIDフィードバック制御システムにおける前記減算機能の出力の偏差量を補償して、該補償した偏差量を前記PID制御機能に入力するための偏差補償プログラムであって、前記コンピュータに、
    前記目標値と前記制御量を取得して、前記制御量をランプ状に変化する前記目標値に追従させる追値制御中であるか否かを示す信号を出力する追値制御補償機能と、
    前記目標値と前記制御量と前記追値制御補償機能により出力される信号に応じた信号を、 前記偏差量を補償すべき信号として出力する第1の信号変換機能と、を実現させることを特徴とする偏差補償プログラム。
  2. 請求項の第1項に記載の偏差補償プログラムであって、
    前記減算機能が加算機能を備え、前記偏差量を補償すべき信号は、前記加算機能により前記差分に加算される信号であることを特徴とする偏差補償プログラム。
  3. 請求項の第1項又は第2項に記載の偏差補償プログラムであって、
    前記追値制御補償機能は、
    前記目標値と前記制御量の差分に応じて出力する第1の減算機能と、
    前記第1の減算機能の出力を絶対値に変換する第1の絶対値変換機能と、
    前記制御量の変化に応じた無駄時間要素及び遅れ時間要素を含んだ変換の出力をする無駄時間・遅れ時間変換機能と、
    前記目標値と前記無駄時間・遅れ時間変換機能の出力の差分に応じて出力する第2の減算機能と、
    前記第2の減算機能の出力を絶対値に変換する第2の絶対値変換機能と、
    前記第1の絶対値変換機能の出力と前記第2の絶対値変換機能の出力の差分に応じて出力する第3の減算機能と、
    前記目標値の変化に応じた微分要素及び絶対値変換機能を含んだ変換の出力をする微分・絶対値変換機能と、
    前記第3の減算機能の出力の変化と前記微分・絶対値変換機能の出力の変化に応じて出力する第2の信号変換機能と、を有することを特徴とする偏差補償プログラム。
  4. 請求項の第1項〜第3項の何れかに記載の偏差補償プログラムであって、
    前記第1の信号変換機能は、
    前記目標値と前記制御量と前記追値制御補償機能により出力される信号を入力として
    前記目標値と前記制御量の差分に応じて出力する第4の減算機能と、
    前記第4の減算機能の出力の変化に応じて出力する減算機能出力信号変換機能と、
    前記制御量の微分した出力をする微分機能と、
    前記微分機能の出力の変化に応じて出力する微分機能出力信号変換機能と、
    前記第4の減算機能の出力の変化と前記減算機能出力信号変換機能の出力の変化と前記前記微分機能出力信号変換機能の出力の変化と前記追値制御補償機能の出力の変化に応じた信号を前記偏差量に加えるべき信号として出力する偏差補償信号変換機能と、を有することを特徴とする偏差補償プログラム。
  5. 請求項の第1〜4項のうち何れかに記載の偏差補償プログラムであって、前記コンピュータに、
    前記目標値の変化および制御対象の特性の変化により、前記目標値と前記制御量との差分が大きくなり制御が不安定となった制御振動現象を検出する制御不安定検出機能と、
    前記目標値と前記制御量の差の信号と、前記制御不安定検出機能と、外部からの入力信号とに応じた信号を、前記偏差量を補償すべき信号として出力する信号変換機能と、を有する制御安定機能を更に実現させることを特徴とする偏差補償プログラム。
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