JP5248406B2 - 遮熱・断熱瓦の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、住宅等の建築物の屋根を構成する屋根瓦に関して、日射等による熱を屋根から屋内に入るのを遮るために、瓦裏面に断熱材で被覆し、瓦表面を水性塗料、遮熱塗料で塗布する遮熱・断熱瓦の製造方法に関するものである。
近年、住宅等の建築物においては、屋内の暖房や冷房等の空調の効率向上のため、屋根材においても断熱化が進んでおり、屋根瓦においても様々な断熱瓦が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、スレート板、セメント板等の各種無機質系基材は、美観をもたせ、また耐薬品性等を付与するために、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等の有機系合成樹脂を結合剤とする塗料(例えば、特許文献2参照)や、水溶性珪酸塩を結合剤とする塗料が従来から主として利用されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2007−9655号公報 特開昭63−162770号公報 特開平5−96233号公報
しかしながら、無機質系基材に用いられる塗料を屋根瓦に適用しようとすると、有機系合成樹脂を結合剤とする塗料は、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性等が劣るという課題があった。一方、水溶性珪酸塩を結合剤とする塗料は、有機系合成樹脂を結合剤とする塗料と比較して、前記特性において優れているものの、無機質基材への浸透ムラが生じ易く、均一な仕上りが困難であり、更に硬化乾燥時、特に焼付乾燥させた場合、塗膜にクラックが生じ易く、その結果、水溶性珪酸塩を結合剤とする塗料の耐薬品性、耐摩耗性等の本来の優れた特性を生かすことが出来ず、クラックが生じた場合、耐薬品性、耐摩耗性、耐候性、密着性等が劣るという課題があった。
従って、無機質基材表面に予めシーラーやサーフェーサーを塗布する方法も考えられているが、無機質基材と水溶性珪酸塩を結合剤とする塗膜の両者に対して密着性が優れているものは、未だ開発されるに到ってない。このような課題があるため、水溶性珪酸塩を結合剤とする塗料の優れた前記特性は認めつつも、前記課題の早期改良が要望されていた。
本発明の目的は、密着性、耐クラック性、耐候性、塗膜外観が良好で、かつ遮熱性、断熱性に優れた遮熱・断熱瓦の製造方法を提供することである。
本発明者等は、以上の如き現状に鑑み、前記課題を解消すべく鋭意検討した結果、屋根瓦に耐熱性、耐候性、耐クラック性に優れた塗膜を形成でき、更にその上塗りとして遮熱塗料を塗装し、瓦裏面を断熱材で被覆することで、優れた遮熱・断熱性を有する屋根用瓦の製造方法を提供するに到ったものである。
本発明に従って、瓦(屋根材)裏面を断熱材で被覆した断熱施工瓦の表面に、下塗りの固形分として、
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合エマルジョン樹脂(アルキル基は炭素数1〜8)30〜50質量%
(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂 1〜7質量%
(c)平均粒径30〜300μmの中空状無機物粉末 5〜30質量%
(d)セメント及び顔料 20〜60質量%
(e)前記(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂のエポキシ基の0.8〜1.2当量のポリアミド樹脂硬化剤又は脂肪族多価アミン硬化剤を含有し、かつ
前記成分〔(a)+(b)+(e)〕/〔(c)+(d)〕の質量比が、0.5〜1.5の範囲である水性塗料組成物を塗布し、硬化・乾燥せしめる工程、
次いで上塗りとして
(f)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合エマルジョン樹脂(アルキル基は炭素数1〜8)及び
(g)鉄酸化物からなる顔料
を含む遮熱塗料を塗布し、硬化・乾燥せしめる工程、
を有することを特徴とする遮熱・断熱瓦の製造方法が提供される。
本発明の方法により、密着性、耐クラック性、耐候性、塗膜外観が良好で、かつ遮熱性、断熱性に優れる屋根瓦の製造が可能になった。
本発明の遮熱・断熱瓦の施工例と塗膜断面を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、屋根瓦に塗布される塗料組成物について、説明する。
断熱施工瓦の表面に、下塗りとしての水性塗料に用いられる(a)(メタ)アクリル酸エステルの共重合エマルジョン樹脂を構成する成分であるアクリル酸の炭素数1〜8のアルキルエステルモノマー、メタクリル酸の炭素数1〜8のアルキルエステルモノマーのアルキルエステルとしてはメチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、2−エチルヘキシル、ベンジル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル等が代表的なものとして用いられる。炭素数9以上のアルキルエステルモノマーは乳化重合時にゲル化物が発生したり、エマルジョン粒子の疎水性が高くなり、セメント混和用エマルジョン樹脂の合成には不適である。
また、必要ならば共重合可能なモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の官能基モノマーあるいはスチレン等のその他モノマーを十数質量%まで共重合することも可能である。これらアクリルエマルジョン樹脂の分子量は10万〜100万が好ましく、より好ましくは50万〜100万のものが基材との密着性、耐候性の観点から有利である。また、その成膜温度は−30℃〜10℃であるのが好ましい。これらの樹脂は下塗塗膜形成成分中において、固形分量で30〜50質量%の割合で配合される。樹脂が30質量%未満であると塗料組成物中における濃度が低過ぎて充填剤、セメント及び着色顔料との比重差により浮上してくる共重合エマルジョン樹脂により形成される塗膜表面がポーラスな状態となり、緻密性に欠け、更に共重合エマルジョン樹脂成分が少ないため可撓性に欠け長期間経過後に塗膜にクラックが生じる。一方、共重合エマルジョン樹脂が50質量%を超えると塗膜が軟化して、十分な塗膜強度が得られず、塗膜の耐水性が低下する。
水性塗料に用いられる(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから得られる芳香族ジグリシジルエーテル類で、平均分子量350〜1000の樹脂を乳化剤を用いて、水分散型にしたものであり、樹脂固形分として、下塗塗膜形成成分中に固形分量で1〜7質量%の割合で配合される。樹脂が1質量%未満であると、基材との密着性が低下し、7質量%を超えると、後述する上塗塗料塗膜との密着性が低下する。更に好ましい樹脂の配合割合は2〜6質量%である。
本発明において用いられる(c)中空状無機物粉末は、内部が完全に中空でその中空部が殻で完全に閉ざされている粉末、あるいは軽石の如く内部に融壁のある独立もしくは連続気泡状の粉末であり、その平均粒径が30〜300μmのものである。なお、平均粒径が30μm未満であるとワレが生じ、塗膜強度が低下し、平均粒径が300μmを超えると塗装時にタレ易くなり、また、塗膜の平滑性を欠き、美観が低下する。
中空状無機物粉末としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、アルミノシリケートバルーン、シリカバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、カーボンバルーン等が代表的なものとして例示出来る。特に塗膜強度の点から50%破壊静水圧が9.8×10Pa(10Kg/cm)以上のものが望ましく、具体例として、ガラスバルーン、アルミノシリケートバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーンが挙げられる。この中空状無機物粉末は厚膜塗膜においてもタレ、ワレのない塗膜を得ることができ、また、塗膜のもろさの改良、増量のため配合されるものであり、更に被覆組成物の比重を小さくし、塗装作業性を向上する効果をも有する。また、塗膜に中空状無機物粉末による空洞が生じるため、塗膜の断熱効果に優れた効果を発揮し、被塗物への熱伝導を抑制し被塗物の温度上昇を防止する。中空状無機物粉末は、下塗塗膜形成成分中において、固形分量で5〜30質量%の割合で配合され、この範囲において前記効果が得られる。
水性塗料に用いられる(d)セメント及び顔料としては、セメントはポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、アルミナセメント等が例示できるが、その粒度は20μmのフルイ残渣が10%以下の微粒子セメントを用いるのが好ましい。顔料は、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の体質顔料や酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、有機顔料等の通常使用される着色顔料が例示できる。
セメント及び顔料は下塗塗膜形成成分中において、固形分量で20〜60質量%の割合で配合される。セメント及び顔料の配合量が20質量%未満であると、塗膜硬度の向上が十分でなく、また、基材及び上塗塗料塗膜との密着性が低下する。一方、セメント及び顔料の配合量が60質量%を超えると、緻密で硬い塗膜が得られず、エフロレッセンスが生じ易くもろくなる。
水性塗料に用いられる(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂用の(e)硬化剤としては、ジアミン又はジアミン誘導体等と二塩基酸又は二塩基酸誘導体等の重縮合によって得られるポリアミド樹脂硬化剤、あるいはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族多価アミン、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂等で変性した脂肪族多価アミン硬化剤が適当である。その硬化剤の使用量は、(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂のエポキシ基の0.8〜1.2当量である。その量が0.8当量未満あるいは1.2当量を超えると本来のエポキシ樹脂の特性、例えば密着性、可撓性が著しく低下し、その他耐久性等の性能も低下する傾向にある。
水性塗料に用いられる添加剤としては、例えば顔料分散性、塗装作業性及び保存性等を良好なものとするための分散剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、塗膜の成膜性を向上させるための成膜助剤等が例示できる。
本発明で使用される水性塗料は、以上説明した(a)〜(e)からなる成分により下塗塗膜形成成分を構成するものであるが、(a)アクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステル共重合エマルジョン樹脂の固形分と(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂の固形分、(e)ポリアミド樹脂硬化剤又は脂肪族多価アミン硬化剤との和と、(c)平均粒径30〜300μmの中空状無機物粉末と(d)セメント及び顔料との和の質量比は、〔(a)+(b)+(e)〕/〔(c)+(d)〕=0.5〜1.5の範囲であり、より好ましくは、0.7〜1.2である。この比率が0.5より小さい場合には、塗膜の耐候性、耐薬品性、密着性が悪くなりエフロレッセンスが発生し、一方、この比率が1.5より大きい場合には、塗膜の密着性が悪く、塗膜硬度も不足する。
本発明で使用される水性塗料は、セメントの硬化や塗装作業性の向上のため、塗料粘度が粘度50〜500センチポイズ(20℃)になるように、水を用いて希釈する。好ましくは、前記下塗塗膜形成成分100質量部に対し、水を10〜100質量部配合する。
次に、本発明で用いられる上塗りとしての遮熱塗料について説明する。
遮熱塗料は、(f)アクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルの共重合エマルジョン樹脂(アルキル基は炭素数1〜8)及び(g)鉄酸化物からなる顔料を含む。
遮熱塗料の結合剤である(f)アクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルの共重合エマルジョン樹脂(アルキル基は炭素数1〜8)については、上記で説明した(a)と同様なものを用いることができるが、成膜温度は30℃〜70℃であることが塗膜の耐久性から好ましい。(f)成分は、上塗塗膜形成成分中に固形分量で70〜98質量%の割合で配合することが塗膜物性の点から好ましい。
遮熱塗料に含まれる(g)鉄酸化物からなる顔料は、FeやFeO等の鉄酸化物を主成分とする遮熱効果のある顔料が用いられる。遮熱顔料としては、鉄酸化物と共にCoやCr、Ni、Mn、Cu等の金属酸化物を焼成した複合酸化物を含むことが好ましく、中でもFeとCrとの複合酸化物が遮熱性、入手容易性、低コストから好ましい。遮熱顔料である鉄酸化物顔料は、上塗塗膜形成成分中に固形分量で2〜30質量%の割合で配合することが遮熱性、コストの点から好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。2質量%未満では遮熱性に劣るものとなり、30質量%を超えて含有させても遮熱性はそれほど向上せずコストの面から費用対効果の低いものとなってしまう。
また、上塗塗料には、その他に着色顔料や添加剤等を含有してもかまわない。
着色顔料としては、一般の無機質顔料が代表的であるが、色によっては、耐アルカリ性を有する有機顔料でもよい。例えば、黒色に着色する場合には、カーボンブラック、酸化鉄等、赤色の場合には弁柄等、緑色の場合には酸化クロム等、青色の場合にはシアニンブルー等、白色の場合には二酸化チタン等が例示できる。但し、カーボンブラック等の遮熱性を阻害する顔料は、使用量を控えるのが好ましい。
更に、遮熱塗料には、結合材として(h)オルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。オルガノポリシロキサンを配合すると、上塗塗膜の耐候性や耐汚染性、塗膜の硬度等の塗膜性能が向上する。
オルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。
Si(OR4−n (1)
式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選ばれた有機基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1又は2である。
ここで、Rのアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及びドデシル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が1〜4個のものである。シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子や、臭素原子、フッ素原子等)や、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等が挙げられる。
としての炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基及びペンチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が1〜2個のものである。
式(1)で示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン及びジメチルジプロポキシシラン等が挙げられるが、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びジメチルジメトキシシランである。
オルガノポリシロキサンは、上塗塗膜形成成分中において固形分量で1〜50質量%の割合で配合することが好ましい。
次に、本発明にかかる被塗物について説明する。
被塗物は、屋根瓦裏面を断熱材で被覆した断熱施工瓦であり、図1に示すように瓦表面に上記の下塗り(水性塗料)と上塗り(遮熱塗料)の各塗料が塗布される。
屋根瓦は、スレート瓦やセメント瓦等の一般的なものが用いられる。
その裏面に被覆又は固定される断熱材としては、合成樹脂やゴム、無機素材等が用いられるが、ポリエチレンやポリスチレン、ポリウレタン等の発泡性合成樹脂等が、断熱性や防水性等の点から好ましい。
屋根瓦への塗料の塗装方法は、スプレーやローラー等の塗装手段により、乾燥膜厚10μm〜500μmになるよう塗布し、自然乾燥又は加熱乾燥させる。また、基材(瓦)を予熱した後、塗装しそのまま乾燥させても良い。
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、実施例において「部」、「%」は質量基準で示す。
<下塗り・上塗り塗料の調製>
下塗り塗料は、表1に示す成分をそれぞれ混合し、水性塗料組成物を調製した。また、上塗り塗料は、表1に示す成分をそれぞれ混合し、遮熱塗料組成物を調製した。
屋根用セメント瓦の表面に、表1の水性塗料組成物(下塗り)を乾燥膜厚100μmになるようスプレー塗装し、加熱乾燥し、さらに遮熱塗料(上塗り)を乾燥膜厚50μmになるようにスプレー塗装し、加熱乾燥し、評価試験用瓦を得た。
※1)アクリルエマルジョン樹脂(モノマー組成:メタクリル酸メチル30質量%,アクリル酸ブチル30質量%,アクリル酸2−エチルヘキシル30質量%,スチレン10質量%、MFT:0℃)
※2)エポキシエマルジョン樹脂(ビスフェノール型エポキシ、平均分子量=600、エポキシ当量100)
※3)アルミノシリケートバルーンA(平均粒径:100μm)
※4)アルミノシリケートバルーンB(平均粒径:300μm)
※5)ガラスバルーンC(平均粒径:100μm)
※6)ガラスバルーンD(平均粒径:30μm)
※7)ポリアミド樹脂硬化剤(商品名「トーマイド#410」、活性水素当量150)
※8)脂肪族多価アミン硬化剤(商品名「サンマイド」、活性水素当量120)
※9)アクリルエマルジョン樹脂(モノマー組成:メタクリル酸メチル60質量%,アクリル酸ブチル30質量%,スチレン10質量%、MFT:50℃)
※10)鉄酸化物顔料A(遮熱顔料、Fe・Cr複合酸化物)
※11)鉄酸化物顔料B(遮熱顔料、Fe・CoO複合酸化物)
※12)オルガノポリシロキサン(メチルトリメトキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,フェニルトリプロポキシシラン部分加水分解縮合物をアルミキレート触媒で反応させた縮合物)
<塗膜の性能評価>
上記のように得られたスレート瓦の塗膜について、密着性、凍結融解サイクル、促進耐候性、塗膜外観、塗膜硬度、遮熱性の各試験を下記のように行い、評価を行なった。評価結果を表2に示す。
(1)密着性(層間剥離、基材への密着性)
試験方法:2mm間隔のゴバン目カットを行い、セロテープ(登録商標)の剥離試験により、剥離しなかった目の数により、下記のように評価した。
評価:◎…50/50 ○…49/50〜45/50
△…44/50〜30/50 ×…29/50以下
(2)凍結融解サイクル試験
試験方法:(−20℃×16時間凍結→室温×8時間)を40サイクル繰り返す。
評価:◎…異常なし ○…微小のクラックあり
△…一部に異常あり ×…全面に異常あり(剥離、ワレ等)
(3)促進耐候性試験
試験方法:サンシャインウェザーメーターで、カーボン500時間を照射した。
評価:◎…異常なし ○…僅かに色の変化あり
△…明らかな色の変化あり ×…全面的に白化
(4)塗膜外観
試験方法:塗膜表面を目視判定した。
評価:◎…異常なし ○…僅かに異常あり
△…一部に異常あり ×…全面に異常あり(タレ、ワレ等)
(5)遮熱性
試験方法:瓦表面より50cmの距離より赤外線ランプを照射し、10分後の瓦裏面の温度を測定し、上昇した温度差で下記のように評価した。
評価:◎…10℃未満 ○…10℃以上15℃未満
△…15℃以上20℃未満 ×…20℃超過
表2より明らかな如く、本発明の方法により得られた塗膜は、優れた塗膜性能を有していた。一方、比較例1〜5はいずれも塗膜性能が劣っていた。水性塗料組成物(下塗り)としてエポキシエマルジョン樹脂を含まない比較例1やアクリルエマルジョン樹脂の少ない比較例2は密着性や凍結融解サイクル試験が劣っていた。アクリルエマルジョン樹脂が過剰である比較例3や、中空状無機物粉末が過剰である比較例4、セメント及び顔料が過剰である比較例5は、いずれも塗膜外観に劣り、上塗りで有機顔料を使用した比較例3は特に耐候性に劣り、鉄酸化物顔料を使用しない比較例1〜4は遮熱性に劣る結果が得られた。
<断熱施工瓦の遮熱・断熱評価>
上記で使用した屋根用セメント瓦の裏面に厚さ15mmのポリスチレン製断熱材を貼り付け、その瓦表面に実施例1〜6及び比較例1〜5の塗料・塗装を施し、図1のように瓦を設置し、夏の炎天下時に各部の温度を測定した。測定部位は、瓦表面(塗膜表面温度)、瓦裏面(瓦裏面又は断熱材側温度)、野地板表面及びその時の外気温。温度測定は、熱電対温度計を用いて行った。
(結果)
断熱施工瓦の遮熱・断熱評価の結果を、表3に示す。温度は、その部位の最高到達温度を示す。
表3より明らかなように、実施例1〜6の塗料を塗装し、裏に断熱材を貼り付けた瓦の場合は、瓦の裏面温度及び野地板表面の温度が低く抑えられた。裏に断熱材を使用しない瓦では、直接熱が伝わり瓦の裏面温度及び野地板表面の温度が高くなる。一方、比較例1〜4の塗料を塗装した場合には、裏に断熱材を貼り付けた瓦でも野地板表面で実施例より5℃以上高い温度を示し、遮熱・断熱効果に大きな差が現れた。

Claims (3)

  1. 瓦(屋根材)裏面を断熱材で被覆した断熱施工瓦の表面に、下塗りの固形分として、
    (a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合エマルジョン樹脂(アルキル基は炭素数1〜8) 30〜50質量%
    (b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂 1〜7質量%
    (c)平均粒径30〜300μmの中空状無機物粉末 5〜30質量%
    (d)セメント及び顔料 20〜60質量%
    (e)前記(b)ビスフェノール型エポキシエマルジョン樹脂のエポキシ基の0.8〜1.2当量のポリアミド樹脂硬化剤又は脂肪族多価アミン硬化剤を含有し、かつ
    前記成分〔(a)+(b)+(e)〕/〔(c)+(d)〕の質量比が0.5〜1.5の範囲である水性塗料組成物を塗布し、硬化・乾燥せしめる工程、
    次いで上塗りとして
    (f)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合エマルジョン樹脂(アルキル基は炭素数1〜8)及び
    (g)鉄酸化物からなる顔料
    を含む遮熱塗料を塗布し、硬化・乾燥せしめる工程、
    を有することを特徴とする遮熱・断熱瓦の製造方法。
  2. 前記遮熱塗料中に、更に結合材として(h)オルガノポリシロキサンを含む請求項1に記載の遮熱・断熱瓦の製造方法。
  3. 前記鉄酸化物が、FeとCrとの複合酸化物である請求項1又は2に記載の遮熱・断熱瓦の製造方法。
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