≪電気泳動表示装置用シートの検査方法≫
本発明による電気泳動表示装置用シートの検査方法(以下「本発明の検査方法」ということがある。)は、電極フィルムの導電層上に電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を有する電気泳動表示装置用シートを検査する方法であって、該電気泳動表示装置用シートの全光線透過率を測定することを特徴とする。
以下、本発明の検査方法について詳しく説明するが、本発明の検査方法は下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
本発明の検査方法は、特許文献5〜9に記載された検査方法のように、電気泳動表示装置用シート(以下「表示シート」ということがある。)に、導電層を有する剥離シートを貼り合わせるか、あるいは、電極または駆動素子からなる検査用治具を圧着しながら、あるいは、検査用電極上を走行させながら、電圧を印加することにより、表示シートの表示特性を画像処理するのではなく、単に表示シートの全光線透過率を測定するだけである。それゆえ、本発明の検査方法は、検査用の副資材や画像処理用の大がかりな装置を必要とせず、表示シートを簡便に検査することができるという利点を有する。
また、本発明の検査方法は、特許文献4に記載された検査方法のように、表示シートを用いて製造した電気泳動表示装置を検査するのではなく、表示シートの段階で検査する。それゆえ、本発明の検査方法は、検査前の表示シートに別の電極フィルムを貼り合わせる工程を必要とせず、電極フィルムを無駄に消費することがないという利点を有する。
一般に、電極フィルムの導電層上に電気泳動表示装置用マイクロカプセル(以下「マイクロカプセル」ということがある。)とバインダー樹脂とを含むデータ表示層を有する表示シートは、マイクロカプセルが電極フィルムの導電層上に積層せずに離散的に配列した状態では、マイクロカプセルの隙間が大きいので、全光線透過率が大きくなる。逆に、マイクロカプセルが電極フィルムの導電層上に積層して稠密的に配列した状態では、マクロカプセルの隙間が小さいので、全光線透過率が小さくなる。
これに対し、マイクロカプセルが電極フィルムの導電層上に略単層かつ略最密充填で配列した状態では、全光線透過率が最適な値を示す。例えば、表示シートを用いて製造した電気泳動表示装置が、白表示の反射率40.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.0以上という目標値を全て満足する優れた表示特性を示すには、表示シートの全光線透過率が好ましくは3.0%以上、13.0%以下であることが必要である。また、表示シートを用いて製造した電気泳動表示装置が、白表示の反射率44.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.8以上という格別に高い目標値を全て満足する非常に優れた表示特性を示すには、表示シートの全光線透過率がより好ましくは5.0%以上、11.0%以下であることが必要である。
それゆえ、本発明の検査方法においては、全光線透過率が好ましくは3.0%以上、13.0%以下、より好ましくは5.0%以上、11.0%以下である表示シートを合格とし、それ以外の表示シートを不良品とする。
なお、白表示および黒表示の反射率、ならびに、コントラストは、下記の実施例に説明する方法で測定し、得られた数値を単純に四捨五入して、小数点以下1桁まで表示するものとする。また、表示シートの全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定し、得られた数値を単純に四捨五入して、小数点以下1桁まで表示するものとする。
また、本発明の検査方法において、表示シートの全光線透過率を測定する際には、表示シートのデータ表示層側から光を入射させると、データ表示層の平滑でない表面で光が乱反射するので、全光線透過率を正確に測定することができないことがある。それゆえ、表示シートの全光線透過率を測定する際には、表示シートの電極フィルム側から光を入射させ、表示シートを透過して表示シートのデータ表示層側から出射した光の全光量を測定することが好ましい。
さらに、本発明の検査方法において、表示シートの全光線透過率を測定する際には、例えば、市販の全光線透過率計を用いれば簡便である。なお、全光線透過率計とは、全光線透過率を測定項目として含む測定器を意味し、具体的には、例えば、へーズメーター、濁度計、濁度・色度計、曇り度計、色彩・濁度同時測定器などが挙げられる。
≪電気泳動表示装置用シート≫
本発明の検査方法で検査される表示シートは、電極フィルムの導電層上に電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を有する電気泳動表示装置用シートである。
以下、電気泳動表示装置用シートについて詳しく説明するが、電気泳動表示装置用シートは下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
<マイクロカプセル>
電気泳動表示装置用シートにおいて、マイクロカプセルは、電気泳動粒子と溶媒とを含む電気泳動表示装置用分散液(以下「分散液」ということがある。)が殻体に内包されている。
(電気泳動粒子)
一般に、電気泳動表示には、分散液中の溶媒の色と電気泳動粒子の色とのコントラストで表示する方法と、分散液中の少なくとも2種類の電気泳動粒子の互いの色のコントラストで表示する方法とがある。
分散液に用いる電気泳動粒子は、電気泳動性を有する固体粒子、すなわち分散液中で正または負の極性を示す着色粒子であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、顔料粒子が用いられる。あるいは、染料で着色したポリマー粒子や顔料を含有させたポリマー粒子を用いてもよい。これらの固体粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの固体粒子のうち、顔料粒子が好適である。なお、電気泳動粒子として、分散液中で電気泳動性を有しない固体粒子を用いる場合には、従来公知の方法で電気泳動性を付与すればよい。あるいは、分散液中で電気泳動性を有する固体粒子と電気泳動性を有しない固体粒子とを併用してもよい。
電気泳動粒子に用いる顔料粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、白色系では、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などの無機顔料;黄色系では、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、クロムイエローなどの無機顔料や、ファーストイエローなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルイエローなどの縮合アゾ化合物類、ベンズイミダゾロンアゾイエローなどのアゾ錯塩類、フラバンスイエローなどの縮合多環類、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、ニトロ化合物、ピグメントイエローなどの有機顔料;橙色系では、モリブデートオレンジなどの無機顔料や、ベンズイミダゾロンアゾオレンジなどのアゾ錯塩類、ベリノンオレンジなどの縮合多環類などの有機顔料;赤色系では、ベンガラ、カドミウムレッドなどの無機顔料や、マダレーキなどの染色レーキ類、レーキレッドなどの溶解性アゾ化合物類、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ化合物類、クロモフタルスカーレッドなどの縮合アゾ化合物類、チオインジゴボルドーなどの縮合多環類、シンカシヤレッドY、ホスタパームレッドなどのキナクリドン顔料、パーマネントレッド、ファーストスローレッドなどのアゾ系顔料などの有機顔料;紫色系では、マンガンバイオレットなどの無機顔料や、ローダミンレーキなどの染色レーキ類、ジオキサジンバイオレットなどの縮合多環類などの有機顔料;青色系では、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの無機顔料や、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン類、インダンスレンブルーなどのインダンスレン類、アルカリブルーなどの有機顔料;緑色系では、エメラルドグリーン、クロームグリーン、酸化クロム、ビリジアンなどの無機顔料や、ニッケルアゾイエローなどのアゾ錯塩類、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのニトロソ化合物類、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン類などの有機顔料;黒色系では、カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒などの無機顔料や、アニリンブラックなどの有機顔料;などが挙げられる。これらの顔料粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの顔料粒子のうち、酸化チタンなどの白色系の顔料粒子や、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色系の顔料粒子が好適である。
なお、酸化チタンの微粒子を用いる場合、その種類は、特に限定されるものではなく、一般に白色系の顔料として用いられるものであれば、例えば、ルチル型またはアナターゼ型のいずれでもよい。酸化チタンの光触媒活性による着色剤の退色などを考慮すれば、光触媒活性の低いルチル型の酸化チタンが好適であり、さらに、光触媒活性を低減させるために、SiO2処理、Al2O3処理、SiO2−Al2O3処理、ZnO−Al2O3処理などを施した酸化チタンがより好適である。
電気泳動粒子にポリマー粒子を用いる場合、その構成ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、ポリハロゲン化オレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、メラミン系ポリマー、尿素系ポリマーなどが挙げられる。ここで、「ポリマー」とは、ホモポリマーだけでなく、少量の共重合可能な他のモノマーを共重合させたコポリマーを含むものとする。これらのポリマーから構成されるポリマー粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのポリマー粒子を着色する染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶媒を着色する染料として列挙した下記のような染料が挙げられる。また、これらのポリマー粒子に含有させる顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、電気泳動粒子に用いる顔料として列挙した上記のような顔料が挙げられる。
分散液中における電気泳動粒子の濃度(すなわち、分散液の質量に対する電気泳動粒子の質量の比を百分率で表した値)は、その下限が好ましくは5質量%、より好ましくは7質量%、さらに好ましくは10質量%であり、また、その上限が好ましくは60質量%、より好ましくは55質量%、さらに好ましくは50質量%である。電気泳動粒子の濃度が低すぎると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の濃度が高すぎると、分散液の粘度が高くなり、分散処理が困難になることや、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の凝集が生じて、コントラストの低下や電気泳動粒子の応答速度(すなわち、表示応答性)が低下することがある。
電気泳動粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは0.1μmであり、また、その上限が好ましくは5μm、より好ましくは4μm、さらに好ましくは3μmである。電気泳動粒子の粒子径が小さすぎると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子の粒子径が大きすぎると、粒子自体の着色度を必要以上に高くする必要があり、顔料などの使用量が増大することや、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度(すなわち、表示応答性)が低下することがある。なお、電気泳動粒子の粒子径とは、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名「LB−500」)で測定した体積平均粒子径を意味する。
電気泳動粒子は、溶媒に、そのまま分散させてもよいが、その表面にカップリング剤を反応させたり、その表面をポリマーグラフト処理したり、その表面をポリマーで被覆したりして、表面処理を行ってから分散させてもよい。表面処理を行う場合には、電気泳動粒子は、カップリング剤またはポリマーで表面処理された顔料粒子であることが好ましい。なお、本発明では、このように表面処理された電気泳動粒子を単に電気泳動粒子と呼ぶことがある。
(溶媒)
分散液に用いる溶媒としては、従来から一般的に電気泳動表示装置用分散液に用いられている溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、より詳しくは、実質的に水に不溶性(疎水性)であり、マイクロカプセルの殻体とその機能を阻害する程度に相互作用しないものであればよく、例えば、高絶縁性の有機溶媒が好適である。
高絶縁性の有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;ヘキサン、デカンなどの飽和炭化水素、アイソパー(登録商標)シリーズ(エクソン・モービル・ケミカル製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、沸点および引火点が高く、毒性もほとんどないことから、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼンなどの長鎖アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタン、アイソパー(登録商標)シリーズ(エクソン・モービル・ケミカル製)、ジメチルシリコーンオイルなどが好適である。
溶媒を着色する場合には、電気泳動粒子の色(例えば、酸化チタンの微粒子であれば白色)に対して、充分なコントラストが得られる程度に着色することが好ましい。
溶媒を着色する場合、着色に用いる染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、油溶性染料が好適であり、使いやすさの観点から、アゾ染料およびアントラキノン染料が特に好適である。具体的には、黄色系染料として、オイルイエロー3G(オリエント化学工業株式会社製)などのアゾ化合物類;橙色系染料として、ファーストオレンジG(BASF AG製)などのアゾ化合物類;青色系染料として、マクロレックスブルーRR(BAYER AG製)などのアントラキノン類;緑色系染料として、スミプラストグリーンG(住友化学株式会社製)などのアントラキノン類;茶色系染料として、オイルブラウンGR(オリエント化学工業株式会社製)などのアゾ化合物類;赤色系染料として、オイルレッド5303(有本化学工業株式会社製)およびオイルレッド5B(オリエント化学工業株式会社製)などのアゾ化合物類;紫色系染料として、オイルバイオレット#730(オリエント化学工業株式会社製)などのアントラキノン類;黒色系染料として、スーダンブラックX60(BASF AG製)などのアゾ化合物や、アントラキノン系のマクロレックスブルーFR(BAYER AG製)とアゾ系のオイルレッドXO(関東化学株式会社製)との混合物が挙げられる。これらの染料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
分散液には、電気泳動粒子および溶媒以外に、必要に応じて、例えば、染料、分散剤、電荷制御剤、粘度調整剤、無機微粒子、有機微粒子などを配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、マイクロカプセルに内包された分散液中における電気泳動粒子の電気泳動性を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、これらの添加剤が各々の機能を充分に発揮するように適宜調整すればよい。
(殻体)
マイクロカプセルの殻体を構成する材料としては、内容物に含まれる溶媒が滲出しない限り、特に限定されるものではないが、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、ゼラチンなどの有機系材料;タルク、クレー、ステアリン酸カルシウム、水和酸化鉄、炭酸コバルト、炭酸カルシウム、アルカリ土類金属ケイ酸塩、シリカなどの無機系材料;が挙げられる。これらの材料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの材料のうち、バインダー樹脂と混合する場合や、例えば、表示シートと別の電極フィルムとをラミネートする場合に、内容物に含まれる溶媒が滲出しにくい点で、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリカが好適であり、これらの2種以上を併用した二層構造の殻体が特に好適である。
このような二層構造の殻体を有するマイクロカプセルとしては、例えば、殻体がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する二層マイクロカプセルが挙げられる。この二層マイクロカプセルは、内殻を構成するアミノ樹脂が高い不浸透性を有し、外殻を構成するエポキシ樹脂が耐熱性や機械的性質に優れており、内殻を構成するアミノ樹脂と外殻を構成するエポキシ樹脂とがメルカプト基を介して互いに強固に結合しているので、カプセル強度が向上しており、内容物に含まれる溶媒の滲出を起こすことがない。
この二層マイクロカプセルにおいて、内殻は、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を水系媒体中に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより形成することができる。なお、内殻を構成するアミノ樹脂がメルカプト基を有することは、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により分析することができる。
また、外殻は、内殻に分散液が内包されたマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより形成することができる。なお、外殻を形成する際に、エポキシ基を有する化合物に架橋剤を反応させるか、および/または、エポキシ基を有する化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加すれば、外殻の強度や不浸透性が向上し、マイクロカプセルがより高い性能を有するようになるので、好ましい。
マイクロカプセルの殻体の厚さ(二層マイクロカプセルの場合は、内殻と外殻との合計厚さ)は、特に限定されるものではないが、湿潤状態で、例えば、その下限が好ましくは0.1μmであり、また、その上限が好ましくは5μm、より好ましくは4μm、さらに好ましくは3μmである。殻体の厚さが小さすぎると、充分なカプセル強度が得られないことがある。逆に、殻体の厚さが大きすぎると、透明性が低下するので、コントラスト低下の原因となることや、マイクロカプセルの柔軟性が低下するので、電極フィルムなどへの密着性が不充分になることがある。
また、マイクロカプセルを製造する方法としては、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させた分散液を用いて、例えば、相分離法、液中乾燥法、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被覆法、スプレードライング法、表面沈積法などの従来公知のマイクロカプセル化手法により殻体を形成する方法を用いることができる。
芯物質を分散させる水系媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、または、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。水と親水性有機溶媒とを併用する場合、水の配合量は、その下限が好ましくは70質量%、より好ましくは75質量%、さらに好ましくは80質量%であり、また、その上限が好ましくは95質量%である。
親水性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
水系媒体は、水や親水性有機溶媒以外に、さらに他の溶媒を併用してもよい。他の溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミニルスクアレン、石油エーテル、テルペン、ヒマシ油、大豆油、パラフィン、ケロシンなどが挙げられる。他の溶媒を併用する場合、その使用量は、水と親水性有機溶媒とを含む水系媒体に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
芯物質を水系媒体に分散させる量としては、特に限定されるものではないが、例えば、水系媒体100質量部に対して、その下限が好ましくは5質量部、より好ましくは8質量部、さらに好ましくは10質量部であり、また、その上限が好ましくは70質量部、より好ましくは65質量部、さらに好ましくは60質量部である。分散量が少なすぎると、芯物質の濃度が低いので、カプセル殻体の形成に長時間を必要とし、目的のマイクロカプセルが調製できないことや、粒度分布が広いマイクロカプセルとなり、生産効率が低下することがある。逆に、分散量が多すぎると、芯物質が凝集することや、芯物質中に水系媒体が懸濁してしまい、マイクロカプセルが製造できなくなることがある。
芯物質を水系媒体中に分散させる際には、必要に応じて、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、アラビアゴム)、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤)、無機微粒子(例えば、タルク、ベントナイト、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム)などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの分散剤の添加量は、殻体の形成を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、これらの分散剤が各々の機能を充分に発揮するように適宜調整すればよい。
マイクロカプセルは、ある程度の柔軟性を有しており、その形状は、外部圧力により変化するので、特に限定されるものではないが、外部圧力がない場合には、真球状などの粒子状であることが好ましい。
マイクロカプセルの粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは5μm、より好ましくは10μm、さらに好ましくは15μmであり、また、その上限が好ましくは300μm、より好ましくは200μm、さらに好ましくは150μmである。マイクロカプセルの粒子径が小さすぎると、表示部分で充分な表示濃度が得られず、その他の非表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、マイクロカプセルの粒子径が大きすぎると、マイクロカプセルの強度が低下することや、マイクロカプセルに内包された分散液中の電気泳動粒子が充分な電気泳動性を発揮できず、コントラストなどの表示特性が低下したり、表示用の駆動電圧が高くなったりすることがある。なお、マイクロカプセルの粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名「LA−910」)で測定した体積平均粒子径を意味する。
マイクロカプセルの粒子径の変動係数(すなわち、粒度分布の狭さ)は、特に限定されるものではないが、例えば、その上限が好ましくは30%、より好ましくは25%、さらに好ましくは20%である。マイクロカプセルの粒子径の変動係数の下限は、特に限定されるものではないが、最も好ましくは0%である。マイクロカプセルの粒子径の変動係数が大きすぎると、有効な粒子径を有するマイクロカプセルが少なく、マイクロカプセルを多量に用いる必要が生じることがある。
なお、マイクロカプセルの粒子径やその変動係数は、マイクロカプセルを製造する際に水系媒体中に分散させた分散液の粒子径や粒度分布に大きく依存する。それゆえ、分散液の分散条件を適宜調整することにより、所望の粒子径やその変動係数を有するマイクロカプセルを得ることができる。さらに、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品の品質を向上させるために、洗浄することが好ましい。
マイクロカプセルの分級は、水系媒体中にマイクロカプセルを含む分散液に対して、そのままで、あるいは、任意の水系媒体などで希釈した後、従来公知の方式、例えば、ふるい式、フィルター式、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いて、マイクロカプセルが所望の粒子径や粒度分布を有するように行えばよい。なお、粒子径が比較的大きいマイクロカプセルを分級する場合には、ふるい式が有効である。
マイクロカプセルの洗浄は、水系媒体中にマイクロカプセルを含む分散液に対して、そのままで、あるいは、任意の水系媒体などで希釈した後、従来公知の方式、例えば、遠心沈降式、自然沈降式などの方式を用いて、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄して沈降物を回収し、任意の水系媒体などに再分散するという操作を繰り返せばよい。なお、粒子径が比較的大きいマイクロカプセルを洗浄する場合には、マイクロカプセルの破壊や損傷を防止するために、自然沈降式を採用することが好ましい。
上記のようなメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する二重構造の殻体に電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液が内包されているマイクロカプセルを製造する方法は、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより、該芯物質の表面にメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻を形成し、次いで、該芯物質が該内殻に内包されているマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより、該内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻を形成することを包含する。以下、本製造方法を各工程に従って詳しく説明する。
(芯物質の分散)
まず、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液を芯物質とし、該芯物質を水系媒体中に分散させる。芯物質を水系媒体に分散させる方法としては、上記の方法と同様に行えばよいので、ここでは説明を省略する。
(初期縮合物の調製)
次いで、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下「アミノ化合物」ということがある。)とホルムアルデヒドとを反応させて初期縮合物を用意する。
アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物は、いわゆるアミノ樹脂(すなわち、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂)の前駆体となる化合物である。特定の初期縮合物を用いることにより、アミノ樹脂で構成される内殻を形成できるが、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物を存在させることにより、初期縮合物から得られるアミノ樹脂にメルカプト基を導入することができる。
初期縮合物については、(1)尿素およびチオ尿素(以下「尿素化合物」ということがある。)のうち少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、尿素樹脂を与える初期縮合物となり、(2)メラミンとホルムアルデヒドとを反応させる場合は、メラミン樹脂を与える初期縮合物となり、(3)ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミン(以下「グアナミン化合物」ということがある。)のうち少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、グアナミン樹脂を与える初期縮合物となる。また、(4)尿素化合物、メラミンおよびグアナミン化合物のうち少なくとも2種とホルムアルデヒドとを反応させる場合は、尿素樹脂、メラミン樹脂およびグアナミン樹脂のうち少なくとも2種が混在する樹脂を与える初期縮合物となる。これらの初期縮合物(1)〜(4)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応は、一般に、溶媒として水が用いられる。それゆえ、反応形態としては、例えば、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドに水を添加してホルムアルデヒド水溶液を調製し、得られたホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法などが挙げられる。ホルムアルデヒド水溶液を調製する必要がないこと、ホルムアルデヒド水溶液の入手が容易であることなど、経済性の観点から、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合して反応させる方法が好ましい。また、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を混合する場合、ホルムアルデヒド水溶液にアミノ化合物を添加しても、アミノ化合物にホルムアルデヒド水溶液を添加してもよい。なお、縮合反応は、例えば、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
アミノ化合物としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンが好適であり、メラミン、メラミンと尿素との組合せ、メラミンとベンゾグアナミンとの組合せがより好適である。
アミノ化合物としては、上記のようなアミノ化合物以外に、さらに他のアミノ化合物を用いてもよい。他のアミノ化合物としては、例えば、カプリグアナミン、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素、アセチレン尿素などが挙げられる。これらの他のアミノ化合物を用いる場合は、これらの他のアミノ化合物を含めて、初期縮合物の原料となるアミノ化合物として扱うものとする。
初期縮合物を得る反応において、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比で、その下限が好ましくは1/10、より好ましくは1/8、さらに好ましくは1/6であり、また、その上限が好ましくは1/0.5、より好ましくは1/1である。アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比が小さすぎると、未反応のホルムアルデヒドが多くなり、反応効率が低下することがある。逆に、アミノ化合物/ホルムアルデヒドのモル比が大きすぎると、未反応のアミノ化合物が多くなり、反応効率が低下することがある。なお、水を溶媒として反応を行う場合、溶媒に対するアミノ化合物およびホルムアルデヒドの添加量、すなわち仕込み時点におけるアミノ化合物およびホルムアルデヒドの濃度は、反応に特に支障がない限り、より高濃度であることが望ましい。
初期縮合物を得るための反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは65℃であり、また、その上限が好ましくは85℃、より好ましくは80℃、さらに好ましくは75℃である。反応終点が認められた時点で、反応液を室温(例えば、25℃以上、30℃以下)に冷却するなどの操作により、反応を終了させればよい。これにより、初期縮合物を含む反応液が得られる。なお、反応時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
(内殻の形成)
次いで、芯物質を分散させた水系媒体中で、初期縮合物を用いて、メルカプト基(−SH)とカルボキシ基(−COOH)またはスルホ基(−SO3H)とを有する化合物(以下「チオール化合物」ということがある。)の存在下で縮合反応を行うことにより、該芯物質の表面にメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻を形成する。この操作により、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻に内包されたマイクロカプセルが得られる。
初期縮合物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質1質量部に対して、その下限が好ましくは0.5質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは3質量部である。初期縮合物の添加量を調整することにより、内殻の厚さを容易に制御することができる。初期縮合物の添加量が少なすぎると、充分な量の内殻が形成できず、内殻の厚さが小さくなるので、殻体の強度や不浸透性が低下することがある。逆に、初期縮合物の添加量が多すぎると、内殻の厚さが大きくなるので、殻体の柔軟性や透明性が低下することがある。
初期縮合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではなく、一括添加または逐次添加(例えば、連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。なお、初期縮合物の添加は、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
縮合反応の際に用いるチオール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、システイン(2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらのチオール化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのチオール化合物のうち、入手が容易であること、効果の観点から、システインが好適であり、L−システイン、DL−システインが特に好適である。
チオール化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、初期縮合物100質量部に対して、その下限が好ましくは1質量部であり、また、その上限が好ましくは20質量部、より好ましくは10質量部、さらに好ましくは5質量部である。チオール化合物の添加量が少なすぎると、アミノ樹脂に導入されるメルカプト基が少なすぎるので、外殻を構成するエポキシ樹脂と強固な結合を形成できないことがある。逆に、チオール化合物の添加量が多すぎると、内殻の強度や不浸透性が低下することがある。
チオール化合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質を分散させた水系媒体に初期縮合物を添加した後、充分に攪拌してから、チオール化合物を水溶液の形態で滴下することが好ましい。なお、縮合反応は、従来公知の攪拌装置を用いて、攪拌しながら行うことが好ましい。
本製造方法においては、芯物質を分散させた水系媒体中、チオール化合物の存在下で、初期縮合物を縮合反応させることにより、芯物質の表面に内殻を形成させるようにする。具体的には、初期縮合物のアミノ基とチオール化合物のカルボキシ基またはスルホ基とを反応させながら、初期縮合物の縮合反応を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂を芯物質の表面に沈積させて内殻とする。
縮合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは25℃、より好ましくは30℃、さらに好ましくは35℃であり、また、その上限が好ましくは80℃、より好ましくは70℃、さらに好ましくは60℃である。反応時間は、特に限定されるものではなく、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
縮合反応を行った後、熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、縮合反応を行う際の反応温度と同一または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは0.5時間、より好ましくは1時間であり、また、その上限が好ましくは5時間、より好ましくは3時間である。
内殻を形成した後、得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、従来公知の方法、例えば、吸引濾過や自然濾過などの方法により、水系媒体から分離してもよい。しかし、内殻を構成するアミノ樹脂は、非常に脆く、弱い衝撃や圧力によっても、破壊されたり、損傷を受けたりすることがあるので、内殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、水系媒体から分離することなく、次の工程に付すことが好ましい。
内殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品の品質を向上するために、洗浄することが好ましい。内殻を形成する工程で得られたマクロカプセルの分級および/または洗浄は、上記したマイクロカプセルの場合と同様に行えばよいので、ここでは説明を省略する。
(外殻の形成)
次いで、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物(以下「エポキシ化合物」ということがある。)を添加することにより、該内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻を形成する。この操作により、電気泳動粒子と溶媒とを含む分散液がメルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻とエポキシ樹脂で構成される外殻とを有する殻体に内包されたマイクロカプセルが得られる。
芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させる水系媒体としては、例えば、内殻を形成する際に芯物質を分散させる水系媒体として列挙した上記のような水系媒体が挙げられる。なお、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルは、水系媒体中における分散液の形態で得られるので、マイクロカプセルを水系媒体から分離し、改めて水系媒体に再分散するのではなく、水系媒体中における分散液を、そのまま、あるいは、濃縮または希釈した後、外殻を形成する工程に付してもよい。
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する水溶性のエポキシ化合物が好適であり、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ化合物の重量平均分子量は、その下限が好ましくは300であり、また、その上限が好ましくは100,000、より好ましくは75,000、さらに好ましくは50,000である。エポキシ化合物の重量平均分子量が小さすぎると、充分な強度を有する外殻が得られないことがある。逆に、エポキシ化合物の重量平均分子量が大きすぎると、反応系の粘度が高くなり、攪拌が困難となることがある。
エポキシ化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセル1質量部に対して、その下限が好ましくは0.5質量部であり、また、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは3質量部である。エポキシ化合物の添加量を調整することにより、外殻の厚さを容易に制御することができる。エポキシ化合物の添加量が少なすぎると、充分な量の外殻が形成できず、外殻の厚さが小さくなるので、殻体の強度が低下することがある。逆に、エポキシ化合物の添加量が多すぎると、外殻の厚さが大きくなるので、殻体の柔軟性や透明性が低下することがある。
エポキシ化合物の水系媒体への添加方法は、特に限定されるものではなく、一括添加または逐次添加(例えば、連続的添加および/または間欠的添加)のいずれでもよい。例えば、水系媒体に芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた後、攪拌しながら、エポキシ化合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。
エポキシ樹脂で構成される外殻を形成する際には、エポキシ化合物に架橋剤を反応させることができる。架橋剤を反応させることにより、外殻の強度、ひいては殻体の強度が向上するので、その後にマイクロカプセルを分離したり洗浄したりする際に殻体が破壊または損傷することを効果的に抑制することができる。
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(その水和物を含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(その水和物を含む)、ジチオシュウ酸、ジチオ炭酸などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
架橋剤の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ化合物100質量部に対して、その下限が好ましくは1質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは10質量部であり、また、その上限が好ましくは100質量部、より好ましくは90質量部、さらに好ましくは80質量部である。架橋剤の添加量が少なすぎると、外殻の強度を充分に高められないことがある。逆に、架橋剤の添加量が多すぎると、架橋剤がエポキシ化合物のエポキシ基と過剰に反応するので、外殻の柔軟性が低下することがある。
架橋剤の水系媒体への添加方法は、エポキシ化合物と共に添加しても、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた水系媒体にエポキシ化合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、攪拌しながら、架橋剤を水溶液の形態で滴下することが好ましい。
エポキシ樹脂で構成される外殻を形成する際には、エポキシ化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加することができる。エポキシ・メラミン縮合物を添加することにより、外殻の不浸透性、ひいては殻体の不浸透性が向上するので、マイクロカプセルがより高い性能を有するようになる。
エポキシ・メラミン縮合物は、エポキシ化合物とメラミンとホルムアルデヒドとから、従来公知の方法により製造された初期縮合物であればよく、特に限定されるものではないが、さらに、尿素、チオ尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種を反応させることができる。エポキシ・メラミン縮合物の好ましい具体例としては、例えば、エポキシ化合物と尿素とを反応させて得られた化合物を、さらにメラミン、尿素およびホルムアルデヒドを反応させて得られた初期縮合物と反応させることにより製造された縮合物である。
エポキシ・メラミン縮合物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ化合物1質量部に対して、その上限が好ましくは10質量部、より好ましくは8質量部、さらに好ましくは5質量部である。エポキシ・メラミン縮合物の添加量が多すぎると、外殻が脆くなり、強度が低下することがある。
エポキシ・メラミン縮合物の水系媒体への添加方法は、エポキシ化合物と同時に添加しても、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、芯物質が内殻に内包されたマイクロカプセルを分散させた水系媒体にエポキシ化合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、エポキシ・メラミン縮合物を水溶液の形態で添加することが好ましい。架橋剤を反応させる場合、架橋剤は、エポキシ・メラミン縮合物を水溶液の形態で添加した後、少し時間をおいてから、水溶液の形態で滴下することが好ましい。
外殻を形成させる際の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは25℃、より好ましくは30℃、さらに好ましくは35℃であり、また、その上限が好ましくは80℃、より好ましくは70℃、さらに好ましくは60℃である。外殻を形成させる際の時間は、特に限定されるものではなく、例えば、仕込み量に応じて、適宜設定することができる。
外殻を形成した後、熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば、外殻を形成させる際の温度と同一温度または少し高い温度であることが好ましい。熟成時間は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは0.5時間、より好ましくは1時間であり、また、その上限が好ましくは5時間、より好ましくは3時間である。
外殻を形成した後、得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、従来公知の方法、例えば、吸引濾過や自然濾過などの方法により、水系媒体から分離してもよい。しかし、マイクロカプセルを乾燥状態にすると、芯物質のうち溶媒が滲出して蒸発することにより、マイクロカプセルが変形することがあるので、外殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、水系媒体から分離することなく、次の工程に付すことが好ましい。
外殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルは、粒度分布が狭いマイクロカプセルを得るために、分級することが好ましく、および/または、不純物を除去して製品の品質を向上させるために、洗浄することが好ましい。外殻を形成する工程で得られたマイクロカプセルの分級および/または洗浄は、上記したマイクロカプセルの場合と同様に行えばよいので、ここでは説明を省略する。
<バインダー樹脂>
電気泳動表示装置用シートにおいて、バインダー樹脂は、電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルを略単層かつ略最密充填で配列した状態で、その配列を維持し得るように固定する役割を果たしている。
バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、(メタ)アクリルシリコーン樹脂、アルキルポリシロキサン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂などの合成樹脂バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタンジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴムまたは天然ゴムバインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性高分子バインダー;などが挙げられる。なお、合成樹脂バインダーは、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの硬化性樹脂でもよい。これらのバインダー樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのバインダー樹脂のうち、マイクロカプセルの分散性が比較的良好であり、さらに、電極フィルムとデータ表示層との密着性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が好適であり、(メタ)アクリル樹脂が特に好適である。
バインダー樹脂が(メタ)アクリル樹脂である場合、共重合可能な不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシ基含有不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名「プラクセル(登録商標)Fシリーズ」)、カプロラクトン変性ヒドロキシメタクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名「プラクセル(登録商標)FMシリーズ」)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、メチシル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの窒素含有不飽和単量体;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチルメタクリレートなどのケイ素含有不飽和単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2個の重合性二重結合を有する不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタドデカフルオロデシルアクリレート、ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレートなどのハロゲン含有不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族不飽和単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロルエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和シアン化合物;などが挙げられる。これらの不飽和単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記の不飽和単量体からなる単量体組成物を共重合させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合などの重合方法により、重合条件を適宜設定して行えばよい。また、重合開始剤、重合禁止剤、還元剤などの添加剤、溶媒の有無や使用量なども適宜設定して行えばよい。
バインダー樹脂がポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂は、主として、多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得ることができる。
ポリエステル樹脂に用いる多価カルボン酸類としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸;マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、メチルメジック酸などの脂環式ジカルボン酸;これらカルボン酸の無水物や低級アルキルエステル;などが挙げられる。これらの多価カルボン酸類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂に用いる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのアルキレンエーテルグリコール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂肪族多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;ビスフェノール類のアルキレンオキシド;などが挙げられる。これらの多価アルコール類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、分子量の調整や反応の制御を目的として、モノカルボン酸類やモノアルコール類を、必要に応じて、用いてもよい。モノカルボン酸類としては、例えば、安息香酸、パラオキシ安息香酸、トルエンカルボン酸、サリチル酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸などが挙げられる。モノアルコール類としては、例えば、ベンジルアルコール、トルエン−4−メタノール、シクロヘキサンメタノールなどが挙げられる。これらのモノカルボン酸類やモノアルコール類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂は、これらの原料を用いて、通常の方法で製造される。例えば、アルコール成分と酸成分とを所定の割合で反応器に仕込み、窒素などの不活性ガスを吹き込みながら、触媒の存在下、150℃以上、190℃以下の温度で反応を開始する。副生する低分子量化合物は、連続的に反応系外へ除去される。その後、さらに反応温度を210℃以上、250℃以下の温度に上げて反応を促進することにより、目的とするポリエステル樹脂を得る。反応は、常圧、減圧、加圧のいずれの条件下でも行うことができる。
上記の触媒としては、例えば、スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウムなどの金属およびその化合物などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いも2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂がウレタン樹脂である場合、ウレタン樹脂は、主として、多価アルコール類とジイソシアネート類との反応により得ることできる。
ウレタン樹脂に用いる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのアルキレンエーテルグリコール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂肪族多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;ビスフェノール類のアルキレンオキシド;トリメチロールプロパンなどの低分子ポリオールに、プロピレンオキシドを付加重合させて得られるか、あるいは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させて得られる、通常「PPG」と略称されるもの;ポリオキシテトラメチレングリコール;ポリカプロラクトンポリオール;ポリエステルポリオール;などが挙げられる。これらの多価アルコール類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ウレタン樹脂に用いるジイソシアネート類としては、例えば、各種異性体や混合物を含む、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジイソシアネート類;などが挙げられる。これらのジイソシアネート類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ウレタン樹脂は、これらの原料を用いて、通常の方法で製造される。例えば、アルコール成分とイソシアネート成分とを所定の割合で反応器に仕込み、窒素などの不活性ガスを吹き込みながら、触媒の存在下、室温以上、150℃以下の温度で反応させる。
上記の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンなどのアミン類;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのモルホリン化合物類;ジブチルスズジラウレート、オクチル酸鉛、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどの有機金属化合物類;などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いも2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂の形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、水溶性型、溶剤可溶型、エマルション型および分散型(水や有機溶剤などの任意の分散媒を用いることができる。)などが挙げられる。バインダー樹脂を溶解または分散させる場合に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;などの有機溶媒や水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの溶媒のうち、マイクロカプセルの内容物に含まれる溶媒が滲出しにくい点で、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低分子量アルコール系溶媒および水が好適である。なお、バインダー樹脂に用いる溶媒がバインダー樹脂を合成する際に用いた溶媒と異なる場合には、例えば、蒸留法を用いる方法や、不溶性溶媒によるバインダー樹脂の析出および所定の溶媒への再溶解を行う方法など、従来公知の方法により溶媒置換を行えばよい。
また、バインダー樹脂を上記の溶媒に分散させる方法としては、例えば、自己分散法、強制分散法などの従来公知の方法を用いることができる。強制分散法に用いる界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
さらに、バインダー樹脂には、用いた単量体成分ができる限り残存していないことが好ましい。バインダー樹脂に単量体成分が残存していると、電極フィルムとデータ表示層との密着性が低下したり、マイクロカプセル中へ単量体成分が滲入して、マイクロカプセルに内包された分散液中における電気泳動粒子の電気泳動性が低下したりすることがある。バインダー樹脂に含まれる残存単量体濃度としては、その上限が好ましくは5,000ppm、より好ましくは2,000ppm、さらに好ましくは500ppmである。なお、残存単量体濃度の下限は0ppmである。ここで、残存単量体濃度は、バインダー樹脂の固形分中に残存する全種類の単量体の合計濃度(質量基準)を意味し、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどの従来公知の方法で測定することができる。
<データ表示層>
電気泳動表示装置用シートにおいて、データ表示層は、マイクロカプセルとバインダー樹脂とから構成されている。そして、データ表示層において、マイクロカプセルは、電極フィルムの導電層上に略単層かつ略最密充填で配列した状態で、その配列を維持し得るようにバインダー樹脂で固定されている。
データ表示層の厚さは、マイクロカプセルの粒子径に応じて変化するので、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは10μm、より好ましくは15μm、さらに好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは200μm、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μmである。データ表示層の厚さが小さすぎると、表示部分で充分な表示濃度が得られず、その他の非表示部分との明確な区別ができないことがある。逆に、データ表示層の厚さが大きすぎると、マイクロカプセルに内包された分散液中の電気泳動粒子が充分な電気泳動性を発揮できず、コントラストなどの表示特性が低下したり、表示用の駆動電圧が高くなったりすることがある。
データ表示層において、マイクロカプセルは、データ表示層を形成するための電気泳動表示装置用塗工液中における形状と同じ形状を有する場合もあるし、電極フィルムの導電層上に電気泳動表示装置用塗工液を塗工した後の乾燥工程を経て、変形している場合もある。また、データ表示層上に別の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートする際に、変形している場合もある。いずれにしても、マイクロカプセルは、球状である場合もあれば、球が変形した形状である場合もある。隣接するマイクロカプセル同士の接触部分や、マイクロカプセルと電極フィルムとの接触部分などにおいて、マイクロカプセルが押し潰されて変形し、面で接触していてもよい。また、マイクロカプセルは、略単層かつ略最密充填で配列している場合のほか、目的とする機能に支障がなければ、マイクロカプセルが部分的に重なっていても構わない。
<電極フィルム>
電気泳動表示装置用シートにおいて、電極フィルムは、マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を担持する機能を果たす。
表示シートに用いる電極フィルムは、非透明の電極フィルムであっても、透明の電極フィルムであってもよく、特に限定されるものではないが、電気泳動表示装置においては、データ表示層が2枚の対向する電極フィルムで挟持されているので、表示データを目視するためには、少なくとも一方の電極フィルムが透明であることが必要である。
電極フィルムは、基材フィルムの片面に導電層が形成されている。基材フィルムの材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、ポリエステル樹脂が好適であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好適である。導電層の材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、金属微粒子、金属箔などの無機導電性物質;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンなどの有機導電性物質;などが挙げられる。基材フィルム上に導電層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリングなどのドライコーティング法、導電性物質の分散液や溶液を塗布するウェットコーティング法などが挙げられる。なお、電極フィルムは、自ら調製してもよいが、各種の市販品を利用することもできる。
電極フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは200μmである。電極フィルムの厚さが小さすぎると、シワが発生しやすくなることがある。逆に、電極フィルムの厚さが大きすぎると、ロール状に巻回したときなどに巻き径が大きくなって取り扱いが困難になることや、使用後の廃棄物量が増加することがある。
≪電気泳動表示装置用シートの製造方法≫
本発明による電気泳動表示装置用シートの製造方法(以下「本発明の製造方法」ということがある。)は、電極フィルムの導電層上に電気泳動表示装置用マイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を形成した後、得られた電気泳動表示装置用シートを上記のような検査方法で検査することを特徴とする。
以下、本発明の製造方法について詳しく説明するが、本発明の製造方法は下記の説明に拘束されることはなく、下記に例示した事項以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
<電気泳動表示装置用塗工液>
上記のような表示シートを製造する際には、まず、電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を形成する。データ表示層を形成するには、好ましくは、電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む電気泳動表示装置用塗工液(以下「塗工液」ということがある。)を塗工し、得られた塗工膜を乾燥させればよい。マイクロカプセルおよびバインダー樹脂については、上記したとおりであるので、ここでは説明を省略する。なお、以下では、電極フィルムの導電層上に塗工液を塗工することを「電極フィルム上に塗工液を塗工する」あるいは「塗工液を電極フィルム上に塗工する」ということがある。
塗工液中におけるマイクロカプセルとバインダー樹脂との配合比は、データ表示層を形成することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、マイクロカプセル/バインダー樹脂固形分の質量比で、その下限が好ましくは10/10、より好ましくは10/7であり、また、その上限が好ましくは10/0.5、より好ましくは10/1である。マイクロカプセル/バインダー樹脂固形分の質量比が小さすぎると、マイクロカプセルに比べてバインダー樹脂の割合が多くなり、マイクロカプセルに内包された分散液中における電気泳動粒子の電気泳動性が低下することにより、コントラストなどの表示特性が低下することがある。逆に、マイクロカプセル/バインダー樹脂固形分の質量比が大きすぎると、マイクロカプセルに比べてバインダー樹脂の割合が少なくなり、電極フィルムとデータ表示層との密着性が低下したり、マイクロカプセル間に空気が混入したりすることにより、コントラストなどの表示特性が低下することがある。
塗工液には、マイクロカプセルおよびバインダー樹脂以外に、必要に応じて、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、溶剤、分散剤、粘度調整剤、保存剤、消泡剤などが挙げられる。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;などの有機溶媒や水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩;スチレン−マレイン酸共重合体塩;ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物;長鎖アルキル有機スルホン酸塩;ポリリン酸塩;長鎖アルキルアミン塩;ポリアルキレンオキシド;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ペルフルオロアルキル基含有塩、ペルフルオロアルキル基含有エステル、ペルフルオロアルキル基含有オリゴマーなどのフッ素系界面活性剤;アセチレンジオール系やアセチレングリコール系の非イオン性界面活性剤;などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
粘度調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系粘度調整剤;ポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ可溶性エマルション、会合型アルカリ可溶性エマルションなどのポリカルボン酸系粘度調整剤;ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、会合型ポリエチレングリコール誘導体などのポリエチレングリコール系粘度調整剤;ポリビニルアルコールなどのその他の水溶性高分子系粘度調整剤;モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトなどのスメクタイト系の粘度調整剤;などが挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
保存剤としては、例えば、有機窒素硫黄化合物、有機窒素ハロゲン化合物、クロルヘキシジン塩、クレゾール系化合物、ブロム系化合物、アルデヒド系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、ハロゲン化環状硫黄化合物、有機ヒ素化合物、有機銅化合物、塩化イソチアゾロン、イソチアゾロンなどが挙げられる。これらの保存剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、プロルニック型消泡剤、鉱物油系消泡剤、ポリエステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤などが挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
塗工液にその他の成分を配合する場合、その配合量は、電極フィルムへの塗工を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、その他の成分が各々の機能を充分に発揮するように適宜調整すればよい。
塗工液の粘度は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは50mPa・s、より好ましくは100mPa・sであり、また、その上限が好ましくは5,000mPa・s、より好ましくは4,000mPa・s、さらに好ましくは3,000mPa・sである。塗工液の粘度がこの範囲内であれば、電極フィルム上に塗工した塗工液を、マイクロカプセルが略単層かつ略最密充填で配列した状態の塗工膜に仕上げることができる。
<データ表示層の形成>
上記したように、データ表示層を形成するには、好ましくは、電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含む塗工液を塗工し、得られた塗工膜を乾燥させればよい。
電極フィルム上に塗工液を塗工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、スリットコート法、グラビアコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法などが挙げられる。これらの塗工方法のうち、マイクロカプセルを含む塗工液を電極フィルム上に塗工する際に比較的容易に均一な塗工膜が得られる点で、ダイコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、スリットコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法が好適である。また、これらの塗工方法は、枚葉式で行ってもよいし、roll−to−rollによる連続塗工方式で行ってもよい。これらの塗工方式は、必要に応じて、適宜選択することができる。
電極フィルム上に塗工した塗工液、すなわち塗工膜を乾燥させることにより、電極フィルムの導電層上にデータ表示層が形成される。塗工液にバインダー樹脂が配合されているので、バインダー樹脂がマイクロカプセルを電極フィルムに接合する機能を果たす。
塗工膜の乾燥方法としては、従来公知の乾燥方法を用いればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥または強制乾燥が挙げられる。強制乾燥の手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱風や遠赤外線などの従来公知の乾燥手段を用いることができる。乾燥条件は、塗工液の粘度や塗工膜の面積などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。乾燥条件のうち、乾燥温度は、例えば、その下限が好ましくは15℃、より好ましくは20℃であり、また、その上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃である。乾燥時間は、例えば、その下限が好ましくは5秒間、より好ましくは10秒間であり、また、その上限が好ましくは60分間、より好ましくは45分間である。これらの乾燥温度および乾燥時間は、乾燥工程において、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。
電極フィルム上に塗工した塗工液の乾燥後の厚さ(すなわち、乾燥後の塗工膜厚)は、マイクロカプセルの粒子径などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは10μm、より好ましくは15μmであり、さらに好ましくは20μmであり、また、その上限が好ましくは200μm、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μmである。湿潤状態の厚さは、塗工液の不揮発分によって、適宜調整すればよい。
さらに、塗工液を乾燥させた塗工膜の表面(すなわち、対向電極となる電極フィルムをラミネートする面)に、バインダー樹脂からなる接着層を一層設けてもよい。塗工液を乾燥させた塗工膜の表面には、マイクロカプセルによる凹凸が生じている場合があるので、さらに接着層を一層設けることにより、この凹凸をなくし、データ表示層とラミネートした電極フィルムとの間に空気が入らなくすることができる。接着層の厚さは、生じた凹凸の深さやマイクロカプセルの柔軟性などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、その上限が好ましくは10μm、より好ましくは5μm、さらに好ましくは3μmである。接着層の厚さが大きすぎると、マイクロカプセルに内包された分散液中における電気泳動粒子の電気泳動性が低下することにより、コントラストなどの表示特性が低下することがある。なお、接着層の厚さは、その下限が約0.5μm程度である。
<電気泳動表示装置用シートの検査>
電極フィルムの導電層上にマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含むデータ表示層を形成した後、得られた表示シートは、上記のような検査方法で検査される。表示シートの検査方法については、上記したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
本発明の製造方法においては、全光線透過率が好ましくは3.0%以上、13.0%以下、より好ましくは5.0%以上、11.0%以下である表示シートを合格とし、それ以外の表示シートを不良品とする。
≪電気泳動表示装置用シートの使用≫
本発明の検査方法で検査して合格した表示シートは、電気泳動表示装置を製造するために用いられる。電気泳動表示装置の製造は、表示シートの製造を含めて、オンラインで連続的に行うこともできるし、オフラインで非連続的に行うこともできる。それゆえ、電気泳動表示装置をオンラインで製造する途中の段階で、あるいは、電気泳動表示装置をオフラインで製造する途中の段階で、表示シートを作製した後、得られた表示シートを本発明の検査方法で検査すればよい。そして、合格した表示シートに別の電極フィルムをラミネートすることにより、電気泳動表示装置を製造すればよい。
電気泳動表示装置を製造するには、より詳しくは、表示シートのデータ表示層上に別の電極フィルムの導電層を重ね合わせてラミネートする。ラミネートの方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、表示シートに電極フィルムを重ね合わせたものを一対のラミネートロールに通過させることにより加圧する方法など、従来公知のラミネート技術を採用することができる。また、必要に応じて、ラミネートロールを適当な温度に調節することにより、加熱下でラミネートしてもよい。
優れた表示特性を示す電気泳動表示装置を得るためには、一般的には、マイクロカプセルを2枚の対向する電極フィルムに対して充分に密着させる(すなわち、接触面積が大きい)ことが好ましい。マイクロカプセルと2枚の対向する電極フィルムとの密着性が低いと、電気泳動粒子の応答性が低下したり、コントラストなどの表示特性が低下したりすることがある。この密着性を高めるためには、例えば、ラミネート圧力や温度を高くするようにすることなどが考えられる。また、マイクロカプセルに関しては、殻体を構成する成分の含有割合を適宜設定し、柔軟性や接着性を高めることなどにより、電極フィルムへの密着のしやすさをより一層高めることができ、その場合は、ラミネート時の温度や圧力などの諸条件をある程度緩やかにした状態でも、充分な密着性を得ることができる。
ラミネート圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは0.1MPa、より好ましくは0.15MPa、さらに好ましくは0.2MPaであり、また、その上限が好ましくは4MPa、より好ましくは3.5MPa、さらに好ましくは3MPaである。ラミネート圧力が低すぎると、マイクロカプセルと電極フィルムとの密着性が低くなったり、マイクロカプセルがデータ表示層中を移動しにくく、略単層かつ略最密充填で配列することが困難になったりするので、コントラストなどの表示特性が低下することがある。逆に、ラミネート圧力が高すぎると、マイクロカプセルが著しく変形したり、場合によっては、マイクロカプセルが破壊されたりして、実用的な電気泳動表示装置が得られないことがある。
ラミネート温度は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは室温(25℃〜30℃)、より好ましくは35℃、さらに好ましくは40℃であり、また、その上限が好ましくは120℃、より好ましくは110℃、さらに好ましくは100℃である。ラミネート温度が低すぎると、マイクロカプセルと電極フィルムとの密着性が低くなったり、マイクロカプセルがデータ表示層中を移動しにくく、略単層かつ略最密充填で配列することが困難になったりするので、コントラストなどの表示特性が低下することがある。逆に、ラミネート温度が高すぎると、マイクロカプセルに内包された分散液に含まれる溶媒が膨張して、マイクロカプセルから滲出したり、場合によっては、マイクロカプセルが破壊されたりして、実用的な電気泳動表示装置が得られないことがある。
かくして得られた電気泳動表示装置は、表面に別のフィルム材料またはシート材料、例えば、反射防止フィルム、防眩フィルム、ハードコートフィルム、衝撃吸収シート、電極フィルム、表面保護シート、着色シートなどを貼着したり、表面に別の塗工材料を塗工したりすることができる。また、電気泳動表示装置を、別の材料、例えば、シート状や板状の材料に張り付けて用いることができる。さらに、電気泳動表示装置を所望の大きさや形状に加工して用いることもできる。
本発明の検査方法で検査して合格した表示シートを用いれば、得られた電気泳動表示装置は、白表示の反射率が高く、黒表示の反射率が低く、ひいてはコントラストが高いという優れた表示特性を示す。例えば、本発明の製造方法で得られた表示シートを用いた電気泳動表示装置は、好ましくは、白表示の反射率40.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.0以上という目標値を全て満足し、より好ましくは、白表示の反射率44.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.8以上という格別に高い目標値を全て満足する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
まず、電気泳動表示装置用分散液および電気泳動表示装置用マイクロカプセルペーストの調製例について説明する。
≪調製例1≫
電気泳動表示装置用分散液(D−1)の調製
攪拌羽根、温度計、冷却管を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル(組成比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(重量平均分子量3,300)2g、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA−100R」)20g、アイソパー(登録商標)M(エクソン・モービル・ケミカル製)78gを仕込み、さらに直径1mmのジルコニアビーズ800gを仕込んだ後、回転数300min−1で攪拌しながら、160℃で2時間反応させてポリマーグラフト処理を行った。処理後、さらにアイソパー(登録商標)M(エクソン・モービル・ケミカル製)100gを添加し、充分に混合した。その後、ジルコニアビーズを分離して、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラック(ここでは、カーボンブラックの表面に存在するカルボキシ基にアクリル系ポリマーのエポキシ基を反応させた。)を含む不揮発分11%の分散液150gを得た。
この分散液に含まれる電気泳動粒子の粒子径を、動的光散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名「LB−500」)を用いて測定したところ、その体積平均粒子径は0.2μmであった。
一方、攪拌羽根を備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名「タイペーク(登録商標)CR90」)50g、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(組成モル比80:15:5)からなるアクリル系ポリマー(重量平均分子量6,800)5g、ヘキサン100gを仕込み、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行った。このセパラブルフラスコを90℃の恒温槽に移し、溶剤を留去し、粉体状となった酸化チタンをフラスコから取り出し、バットに移した後、乾燥機中、150℃で熱処理を5時間行った。熱処理された酸化チタンをヘキサン100gに分散させ、遠心沈降器で遠心分離し、酸化チタンを洗浄する操作を3回行った後、100℃で乾燥させた。
容量300mLのセパラブルフラスコに、洗浄処理された酸化チタン50g、アイソパー(登録商標)M(エクソン・モービル・ケミカル製)50gを仕込み、55℃の超音波浴槽(ヤマト科学株式会社製、商品名「BRANSON(登録商標)5210」)に入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を2時間行って、ポリマーグラフト処理された酸化チタン(ここでは、酸化チタンの表面に存在するシラノール基にアクリル系ポリマーのアルコキシシリル基を反応させた。)を含む不揮発分50%の分散液100gを得た。
この分散液に含まれる電気泳動粒子の粒子径を、動的光散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名「LB−500」)を用いて測定したところ、その体積平均粒子径は0.5μmであった。
容量200mLのマヨネーズ瓶に、ポリマーグラフト処理されたカーボンブラックの分散液6.0g、ポリマーグラフト処理された酸化チタンの分散液75g、アイソパー(登録商標)M(エクソン・モービル・ケミカル製)19gを仕込み、充分に混合して、電気泳動粒子の濃度がカーボンブラック0.66%および酸化チタン37.5%である電気泳動表示装置用分散液(D−1)を得た。
≪調製例2≫
電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)の調製
容量100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン8g、尿素7g、37%ホルムアルデヒド水溶液30g、25%アンモニア水3gを仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温した。同温度で2時間保持した後、25℃まで冷却し、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物を含む不揮発分54.6%の水溶液(A−1)を得た。
次に、容量500mLの平底セパラブルフラスコに、アラビアゴム20gを溶解した水溶液120gを仕込み、ディスパー(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ロボミックス(登録商標)」)を用いて、600min−1で攪拌しながら、電気泳動表示装置用分散液(D−1)100gを添加し、その後、攪拌速度を1,600min−1に変更して2分間攪拌した後、攪拌速度を1,000min−1に変更し、水100gを添加して懸濁液を得た。
この懸濁液を、温度計、冷却管を備えた容量300mLの四ツ口セパラブルフラスコに入れ、40℃に保持し、パドル翼で攪拌しながら、メラミン・尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物の水溶液(A−1)48gを添加した。15分後に、L−システイン2gを溶解した水溶液100gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま、反応を4時間行った後、50℃に昇温し、熟成を2時間行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られたマイクロカプセルの分散液を25℃まで冷却し、目開き75μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
次いで、このマイクロカプセルに水を添加して200gの分散液とし、これを前記の平底セパラブルフラスコに移し、攪拌しながら、40℃に加温した。
このマイクロカプセル分散液に、エポキシ化合物であるポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール(登録商標)EX−521」(重量平均分子量732、水に対する溶解率100%))15gを溶解した水溶液100gを添加した。30分後に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gを溶解した水溶液50gを滴下ロートで5分間かけて滴下した。40℃を保持したまま3時間反応を行い、次いで、50℃に昇温して1時間熟成を行って、メルカプト基を有するアミノ樹脂で構成される内殻の外表面にエポキシ樹脂で構成される外殻が形成された殻体に電気泳動表示装置用分散液が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。
得られた分散液を25℃まで冷却し、目開き53μmの標準ふるいで粗大カプセルを除去した。次いで、マイクロカプセル分散液を容量2Lのビーカーに入れ、水を添加して、全体量を1,000mLとした。そのまま静置して、マイクロカプセルを沈降させ、上澄み液を廃棄した。この操作を3回繰り返して、マイクロカプセルを洗浄した。
このようにして得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルの粒子径を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名「LA−910」)を用いて測定したところ、その体積平均粒子径は40.7μmであった。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセルを吸引ろ過し、不揮発分65%の電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)を得た。
次に、バインダー樹脂の合成例について説明する。
≪合成例1≫
バインダー樹脂(P−1)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた容量500mLの四ツ口フラスコに、酢酸エチル115gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を78℃まで加熱した。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル60g、アクリル酸n−ブチル140g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)4gを混合した溶液を滴下口より120分間かけて滴下した。滴下後も同温度で30分間攪拌を続けた後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを30分おきに3回添加し、さらに150分間加熱して共重合を行った。
次いで、得られた共重合体の酢酸エチル溶液100gを、n−ヘキサン300gに添加していき、共重合体を析出させた。析出したポリマー分を取り出し、6.7kPaの圧力下、40℃で、わずかに残存している溶剤を除去し、溶媒を実質的に含まないバインダー樹脂(P−1)を得た。
さらに、得られたバインダー樹脂(P−1)100gをエタノール67gに溶解し、バインダー樹脂(P−1)のエタノール溶液を得た。なお、得られたバインダー樹脂(P−1)のエタノール溶液の不揮発分は60.4%であった。
(不揮発分の測定)
バインダー樹脂(P−1)のエタノール溶液の不揮発分は、JIS K6833に準拠して、下記の方法により測定した。バインダー樹脂(P−1)のエタノール溶液(試料)1.0gをアルミニウム箔の皿に精秤し、熱風循環式恒温槽を用いて、105℃で60〜180分間乾燥させた後、デシケーター中で放冷した。乾燥後の試料の質量を精秤し、次式により、不揮発分を計算した。
不揮発分(%)=[(Wd)/(Ws)]×100
ただし、Wdは乾燥後の試料の質量(g)、Wsは乾燥前の試料の質量(g)である。
次に、電気泳動表示装置用シートおよび電気泳動表示装置の製造例、ならびに、電気泳動表示装置用シートの検査方法の実施例について説明する。
≪実施例1≫
調製例1で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセルペースト(C−1)30gに合成例1で得られたバインダー樹脂(P−1)のエタノール溶液5gを添加し、自転公転ミキサー(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)AR−100」)で10分間混合して塗工液を得た。
この塗工液を基材厚125μmのITO電極付きPETフィルム(東レ株式会社製、商品名「ハイビーム(登録商標)CF98」)に、乾燥後の塗工膜厚が77μmになるように、少なくとも一辺に未塗工部分(導電性部分)を残して、スロットダイで塗工した後、90℃で10分間乾燥させて、電気泳動表示装置用シート(F−1)を製造した。
さらに、この電気泳動表示装置用シート(F−1)から、一辺に未塗工部分を残した状態で、塗工部分が縦×横=3cm×3cmとなるように切出し、対向電極として縦×横=3cm×4cm、基材厚75μmのITO電極付きPETフィルム(東レ株式会社製、商品名「ハイビーム(登録商標)CF98」)を貼り合わせ(このとき、任意の2箇所をセロテープ(登録商標)で止めた)、厚さ2mmのガラス板上にラミネート面が上方ロール側になるように置き、上方ロールの表面温度(すなわち、ラミネート温度)を60℃、上方ロールを下方ロールへ圧着する圧力(すなわち、ラミネート圧力)を1MPaとした2本のロール間を通過させてラミネートすることにより、電気泳動表示装置(S−1)を製造した。
得られた電気泳動表示装置用シート(F−1)の全光線透過率、ならびに、得られた電気泳動表示装置(S−1)の反射率およびコントラストを測定した。結果を表1に示す。
なお、乾燥後の塗工膜厚、電気泳動表示装置用シートの全光線透過率、ならびに、電気泳動表示装置の反射率およびコントラストは、下記のようにして測定した。
<乾燥後の塗工膜厚>
乾燥後の塗工膜厚は、電気泳動表示装置用シートの厚さと、未塗工の電極フィルムの厚さとを、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、商品名「MDC−SB」)で測定し、次式により算出した。
乾燥後の塗工膜厚=電気泳動表示装置用シートの厚さ−未塗工の電極フィルムの厚さ
ただし、電気泳動表示装置用シートや未塗工の電極フィルムの厚さは、任意の3箇所で測定し、得られた数値の平均値を用いて、乾燥後の塗工膜厚を算出した。
<全光線透過率>
電気泳動表示装置用シートの全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名「NDH 5000」)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定した。
なお、全光線透過率の測定は、電気泳動表示装置用シートの電極フィルム側から光を入射させ、電気泳動表示装置用シートを透過して電気泳動表示装置用シートのデータ表示層側から出射した光の全光量を測定するように設定した。
<反射率およびコントラスト>
電気泳動表示装置(表示部分は縦×横=3cm×3cm)の両電極間に15Vの直流電圧を0.4秒間印加して、白表示または黒表示をさせ、各表示の反射率をマクベス分光光度計(グレターク・マクベス・アクチエンゲゼルシャフト製、商品名「SpectroEye(登録商標)」)で測定し、コントラスト(反射率比)を次式により算出した。
コントラスト=(白表示の反射率)/(黒表示の反射率)
なお、白表示および黒表示の反射率は、電気泳動表示装置に極性を切り替えて電圧を印加することにより別々に測定し、また、各反射率は電気泳動表示装置の片面全体について測定した平均値とする。
≪実施例2〜10≫
実施例1において、乾燥後の塗工膜厚を表1に示した値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(F−2)〜(F−10)および電気泳動表示装置(S−2)〜(S−10)を製造した。
得られた電気泳動表示装置用シート(F−2)〜(F−10)の全光線透過率、ならびに、得られた電気泳動表示装置(S−2)〜(S−10)の反射率およびコントラストを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
≪比較例1〜4≫
実施例1において、乾燥後の塗工膜厚を表1に示した値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電気泳動表示装置用シート(CF−1)〜(CF−4)および電気泳動表示装置(CS−1)〜(CS−4)を作製した。
得られた電気泳動表示装置用シート(CF−1)〜(CF−4)の全光線透過率、ならびに、得られた電気泳動表示装置(CS−1)〜(CS−4)の反射率およびコントラストを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、全光線透過率が3.0%以上、13.0%以下である実施例1〜10の電気泳動表示装置用シートは、いずれも、それらを用いて製造した電気泳動表示装置が白表示の反射率40.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.0以上という目標値を全て満足する優れた表示特性を示したので、判定は合格「○」または「◎」であった。特に、実施例3〜8の電気泳動表示装置用シートは、いずれも、それらを用いて製造した電気泳動表示装置が白表示の反射率44.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.8以上という格別に高い目標値を全て満足する非常に優れた表示特性を示したので、判定は合格「◎」であった。
これに対し、全光線透過率が3.0%未満である比較例1〜2の電気泳動表示装置用シートは、いずれも、それらを用いて製造した電気泳動表示装置が白表示の反射率40.0%以上、黒表示の反射率5.0%以下、ならびに、コントラスト8.0以上という目標値を全て満足しない非常に劣った表示特性を示したので、判定は不合格「×」であった。また、全光線透過率が13.0%を超える比較例3〜4の電気泳動表示装置用シートは、いずれも、それらを用いて製造した電気泳動表示装置が黒表示の反射率5.0%以下という目標値を満足するが、白表示の反射率40.0%、ならびに、コントラスト8.0以上いう目標値を満足しない劣った表示特性を示したので、判定は不合格「×」であった。
かくして、電気泳動表示装置用シートの全光線透過率を測定することにより、検査用の副資材や画像処理用の大がかりな装置を必要とせず、電気泳動表示装置用シートを簡便に検査することができ、白表示の反射率が高く、黒表示の反射率が低く、ひいてはコントラストが高いという優れた表示特性を示す電気泳動表示装置を作製可能な電気泳動表示装置用シートを容易に選別できることがわかる。また、電気泳動表示装置用シートの段階で、優れた表示特性を示す電気泳動表示装置を作製可能な電気泳動表示装置用シートを容易に選別できるので、検査前の電気泳動表示装置用シートに別の電極フィルムを貼り合わせる工程を必要とせず、電極フィルムを無駄に消費しないことは明らかである。さらに、電気泳動表示装置用シートを製造するにあたり、得られた電気泳動表示装置用シートの全光線透過率を測定するだけという簡便な検査方法で不良品を排除することができ、白表示の反射率が高く、黒表示の反射率が低く、ひいてはコントラストが高いという優れた表示特性を示す電気泳動表示装置を作製可能な電気泳動表示装置用シートを低い製造コストで効率よく製造できることも明らかである。