JP5247095B2 - レーザ加工におけるレーザ照射位置の補正方法 - Google Patents

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本発明はレーザ加工におけるレーザ照射位置の補正方法、特にレーザ走査光学系に用いられるガルバノピンクッションエラーとfθレンズ歪曲収差とに起因する加工歪を補正するのに適した方法に関するものである。
従来、基板に多数の孔を加工したり、文字をマーキングする際等にレーザ加工機が使用される。レーザ加工機は、図1に示すように、レーザ発振器1から照射されたレーザビームLBを、ガルバノミラー2,3とfθレンズ6とを用いて被加工物7に照射するものであり、ガルバノミラー2,3を駆動装置4,5で駆動することによって、被加工物7の加工領域全域にレーザビームLBを照射できる。しかし、ガルバノミラー2,3にはピンクッションエラーによる糸巻き型歪み8があり、fθレンズ6にはその歪曲収差による樽型歪み9があるため、被加工物7に照射されるレーザビームLBには糸巻き型歪み8と樽型歪み9との合成歪み10によるずれが必然的に発生する。
特許文献1には、ティーチング方式による位置補正方法が開示されている。この方法は、一旦実際にあける孔数を全数あけて、理想状態から1個1個の孔がどれだけずれているかを確認し、確認した結果に基づいて全ての孔に対してずれの補正を直接行う方法である。この方法は、加工位置の1点1点を計測して補正入力しなければならず、実際にあける孔数が多くなればなる程、ずれ量の確認に多大な時間を要するという問題がある。
特許文献2には、加工前に実加工時よりも少ない孔数でテスト加工を行い、このテスト加工の孔の位置が目標位置からどれだけずれたかを確認し、テスト加工であけた孔のずれ量とその傾向とから、非線形回帰分析により加工領域全域のずれを表現できる2次回帰式を求め、孔をあけなかった領域についてのずれ量を予測し、ずれの補正を行う補正方法が提案されている。この方法は、ティーチング方式に比べて短時間で作業ができるという利点があるが、実加工時にあける孔数よりテスト加工であける孔数が少なくなるほど精度が落ちるという問題がある。テスト加工であける孔数を増やせば精度は上がるが、その分だけ各孔のずれ量の確認に時間がかかるので、結果的に補正に時間を必要とする。
特許文献2に開示された回帰式は2次の回帰式であるが、精度が出ないという欠点がある。その理由は、実際に起きる歪みは2次ではなく、3次や場合によっては多次の式になるからであると考えられる。しかし、回帰式を3次以上の多次式にすると、計算が複雑になり、高速で計算できる演算装置が必要になるため、レーザ加工機が大型化し、高価になるという問題がある。また、レーザ加工機には自ずから機差があるのが現実であり、何次の回帰式となるかはレーザ加工機によって様々であり、予想するのは困難である。そのため、複雑な回帰式を用いて補正し、ある加工機で適合しても別の加工機では適合せず、逆に誤差を助長してしまうことになる。そのため、レーザ加工機毎に計算式を個別に設定しなければならないという問題が生じる。
特開平8−174256号公報 特開2002−316288号公報
本発明の目的は、手間のかかる作業や複雑な計算を行わず、比較的簡便な方法で位置精度を向上させることができるレーザ加工におけるレーザ照射位置の補正方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、レーザビームをガルバノミラーとfθレンズとを用いて被加工物に照射する、レーザ加工におけるレーザ照射位置の補正方法であって、被加工物に実加工時より少ない数の孔をテスト加工し、それらの孔の位置と目標位置との間の第1のずれ量を測定するステップと、上記第1のずれ量の反対方向に同じ量だけずらしたデータである逆特性フィルタを作成するステップと、上記逆特性フィルタを通した座標データを用いて2回目の孔をテスト加工し、それらの孔の位置と目標位置との間の第2のずれ量を測定するステップと、上記第2のずれ量から非線形回帰分析により実加工時における加工領域全域のずれを表現する回帰式を作成するステップと、上記回帰式に目標位置を代入し、予測ずれ量を算出するステップと、上記逆特性フィルタを通した座標データから予測ずれ量を減算し、加工位置を求めるステップと、を含む補正方法を提供する。
本発明の補正方法では、図2に示すように、まず第1回目のテスト加工で被加工物に孔をあけ(ステップS1)、それらの孔の位置と目標位置との間の第1のずれ量を測定する(ステップS2)。テスト加工での孔数は実加工時より少なくてよいので、ずれ量の測定も短時間で済む。その測定結果から、加工エリア内全域のずれを大まかに修正できる2次元伝達関数(ガルバノ・fθレンズの合成伝達関数)の逆特性フィルタを作成する(ステップS3)。逆特性フィルタとは、第1のずれ量の反対方向に同じ量だけずらしたデータのことである。つまり、加工したい位置に対するずれ量の反転値をX軸,Y軸に対しそれぞれプロットしたものである。次に、逆特性フィルタを通した座標データを用い、2回目のテスト加工を実施し(ステップS4)。それらの孔の位置と目標位置との間の第2のずれ量を測定する(ステップS5)。この加工結果を用い、非線型回帰分析により、加工領域全域のずれを表現できる回帰式を求める(ステップS6)。この回帰式に目標位置を代入し、予測ずれ量を算出する(ステップS7)。さらに、逆特性フィルタを通した座標データから予測ずれ量を減算した位置が、最終的な加工位置となる(ステップS8)。
以上のように、本発明によれば、前半ステップで逆特性フィルタによる大まかな補正を行うことで、誤差要因(ガルバノピンクッションエラーとfθレンズ歪曲収差)の影響度を少なくし、後半ステップで非線形回帰分析を行うことにより、非線形回帰分析時に比較的少ない点数で、高精度にずれ量を予測することができる。また、回帰式を3次又はそれ以上の多次式とする必要がないので、計算が簡単になり、比較的安価な演算装置でも短時間で演算できるとともに、レーザ加工機毎に回帰式を設定する必要がない。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
この実施例では、加工対象としてアクリル基板(厚さ3mm)を使用し、次のようにしてテスト加工と実加工とを実施した。
テスト加工:アクリル基板の加工エリア50mm×50mmに6.25mmピッチで81点の孔加工を行った。
実加工:アクリル基板の加工エリア50mm×50mmに5mmピッチで121点の孔加工を行った。
使用するレーザー加工機は図1と同様であり、レーザ加工条件は以下の通りである。
使用レーザ:CO2 レーザ、波長9.4μm
孔加工スピード:26.2秒/12750孔(テーブル移動含む)
孔位置計測器:Nikon製NEXIV
以下に、レーザ照射位置の補正方法の具体例を説明する。まず50mm角加工エリアにおいて、6.25mmピッチで81点の正方形のテスト加工(1回目)を行なう。孔位置測定データより目標位置からのずれ量(ΔXi,ΔYj)(i=1〜81、j=1〜81)を算出する。テスト加工以外の点に対するずれ量(ΔX,ΔY)は、図3に示すように、隣接する4点の値(ΔX1,ΔY1)〜(ΔX4,ΔY4)を用いて、次の直線補間式(1)により求める。ここで、(r,p)はずれ量を算出したい任意点の隣接する4点のうち左上点(ΔX1,ΔY1)からの距離を表し、その値はテスト加工ピッチ(この例では6.25mm)との比で表される。これにより、5mmピッチ加工に対応した121点分のずれ量が算出される。
(ΔX,ΔY)=(ΔX1,ΔY1)(1−r)(1−p)
+(ΔX3,ΔY3)r(1−p)
+(ΔX2,ΔY2)(1−r)p
+(ΔX4,ΔY4)rp ・・・(1)
求めたずれ量(ΔX,ΔY)を反転し、加工領域全域のずれをおおまかに修正できる2次元伝達関数(ガルバノ・fθレンズの合成伝達関数)の逆特性フィルタを作成する。逆特性フィルタは加工したい位置に対するずれ量の反転値をX軸,Y軸に対しそれぞれプロットしたものである。この逆特性フィルタは、実加工の前に一度だけ作成すればよい。
図4,図5は逆特性フィルタの一例を示す。図4はX座標に対する逆特性フィルタであり、(a)は目標加工位置の81点のマトリクス表を作成し、目標加工位置に対するテスト加工時のX座標誤差の符号を反転し、補正量としてマトリクス内に配置したものであり、(b)は(a)をグラフ化したものである。同様に、図5はY座標に対する逆特性フィルタの表とグラフである。
次に、この逆特性フィルタを通した座標データ(U,V)(ここで、U=X−ΔX,V=Y−ΔY)を用いて、50mm角加工エリアにおいて6.25mmピッチで正方形のテスト加工(2回目)を実施する。
2回目のテスト加工の加工結果を非線形回帰分析し、次の式(2)の係数(a1 〜a4 、b1 〜b4)を求め、回帰式を作成する。今回、回帰式には以下の多項近似式(2)を用いた。
X’=a1 +a2 X+a3 Y+a4 XY2
Y’=b1 +b2 X+b3 Y+b4 YX2 ・・・(2)
表1はX座標回帰分析結果を示し、表2はY軸回帰分析結果を示す。
Figure 0005247095
Figure 0005247095
上記回帰分析により、式(2)の係数は、a1 =−0.00053、a2 =0.999007、a3 =−0.00017、a4 =1.3×10-6、b1 =0.000364、b2 =0.000143、b3 =1.000019、b4 =−2.9×10-6となる。よって、回帰式は以下の多項式となる。
X’=−0.00053+0.999007X−0.00017Y+1.3×10-6XY2
Y’=0.000364+0.000143X+1.000019Y−2.9×10-6YX2 ・・・(2’)
この回帰式に目標位置(X,Y)を代入し、予測加工位置(X’,Y’)を求める。逆特性フィルタを通した座標データ(U,V)から予想されるずれ量(X’−X,Y’−Y)を減算した座標で加工を行う。これにより、目標位置と実加工位置が一致するようになる。
図6は、1回目のテスト加工で50mm角加工エリアに6.25mmピッチで81点の孔加工を行った時の各孔の目標加工位置と実際の加工位置と目標に対する誤差とを示す。図示するように、大きな誤差が生じていることが分かる。
図7は、本発明による補正方法(逆特性フィルタと回帰式)を用いて、6.25mmピッチで81点の孔加工を行った時の各孔の目標加工位置と補正前後の位置と目標加工位置との誤差とを示す。図示するように、精度のよい孔加工が行えたことがわかる。図7より、6.25mmピッチで正方形の孔加工を実施した場合の加工位置精度は、X軸0.006/−0.013mm(MAX/MIN)、Y軸0.006/−0.011mm(MAX/MIN)であった。
図8は本発明を用いずに50mm角加工エリアに5mmピッチで121点の孔加工を行った時の基板の様子を示し、図9は6.25mmピッチでのテスト加工結果から得られた逆特性フィルタと回帰式とを用いて、5mmピッチで121点の孔加工を行った時の基板の様子を示す。図8では、ガルバノピンクッションエラーによる糸巻き型歪みとfθレンズ歪曲収差による樽型歪みとの合成歪みにより、大きな誤差が生じているのに対し、図9では合成歪みがほぼ解消され、精度のよい孔加工が行えたことがわかる。
図10は、図9における加工位置精度結果を示す。図10より、5mmピッチで正方形の加工を実施した場合の加工位置精度は、X軸0.012/−0.009mm(MAX/MIN)、Y軸0.009/−0.013mm(MAX/MIN)であった。このように、加工ピッチが6.25mmから5mmへ変更されても(加工点数が81点から121点に増加しても)、高精度を維持していることがわかる。
特許文献2のような非線形回帰分析により2次回帰式を求め、ずれの補正を行う補正方法の場合、同様な実験を行うと、補正後の加工位置精度は±50μm程度しか得られないのに対し、逆特性フィルタと回帰式とを用いた本発明による補正方法では、上述のように±15μmまでの加工位置精度を得ることができ、本発明の有効性が実証された。
一般的なレーザ加工機の概略図である。 本発明に係る補正方法のステップを示すフローチャート図である。 テスト加工以外の点に対するずれ量を求める方法を示す図である。 X軸逆特性フィルタの表とグラフである。 Y軸逆特性フィルタの表とグラフである。 1回目のテスト加工において、6.25mmピッチで孔加工を実施した場合の加工位置精度を示す図である。 本発明による補正方法を用いて、6.25mmピッチで孔加工を実施した場合の加工位置精度を示す図である。 本発明を用いずに5mmピッチで121点の孔加工を実施した基板の様子を示す図である。 本発明の補正方法を用いて5mmピッチで121点の孔加工を実施した基板の様子を示す図である。 図9の孔加工を実施した場合の加工位置精度の前半を示す図である。 図9の孔加工を実施した場合の加工位置精度の後半を示す図である。
符号の説明
1 レーザ発振器
2,3 ガルバノミラー
6 fθレンズ
7 被加工物
8 糸巻き型歪み
9 樽型歪み
10 合成歪み

Claims (2)

  1. レーザビームをガルバノミラーとfθレンズとを用いて被加工物に照射する、レーザ加工におけるレーザ照射位置の補正方法であって、
    被加工物に実加工時より少ない数の孔をテスト加工し、それらの孔の位置と目標位置との間の第1のずれ量を測定するステップと、
    上記第1のずれ量の反対方向に同じ量だけずらしたデータである逆特性フィルタを作成するステップと、
    上記逆特性フィルタを通した座標データ(U,V)を用いて2回目の孔をテスト加工し、それらの孔の位置と目標位置との間の第2のずれ量を測定するステップと、
    上記第2のずれ量から非線形回帰分析により実加工時における加工領域全域のずれを表現する回帰式を作成するステップと、
    上記回帰式に目標位置(X,Y)を代入し、予測ずれ量(X’−X,Y’−Y)を算出するステップと、
    上記逆特性フィルタを通した座標データ(U,V)から予測ずれ量を減算し、加工位置(U−(X’−X),V−(Y’−Y))を求めるステップと、を含む補正方法。
  2. 上記回帰式として次式を用い、
    X’=a1 +a2 X+a3 Y+a4 XY2
    Y’=b1 +b2 X+b3 Y+b4 YX2
    上記第2のずれ量から上記回帰式の係数(a1 〜a4 、b1 〜b4 )を求めることを特徴とする請求項1に記載の補正方法。
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