JP3614680B2 - レーザ加工方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、XYガルバノミラーを用いてレーザ光線を走査してレーザ加工するレーザ加工方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、被加工物の穴あけ、切断、溶接などにレーザ加工技術が採用されており、特にレーザ穴加工技術は、ドリル工法に比較して高速、高精度、高密度加工が可能であることから、高密度配線回路基板にスルーホール等の穴を加工するのに好適に採用されている。
【0003】
XYガルバノミラーを用いたレーザ加工機では、照射位置決めを行うガルバノミラー制御装置に照射位置を表す数値データを入力して加工している。また、レーザ光線をその照射平面上で走査したときに生じる幾何学的な走査歪みを補正して高精度の加工を担保するために、平面上へのレーザ光線照射位置を測定し、その測定結果に基づいてガルバノミラー制御装置に入力する数値データを補正している。この方法の詳細は、特開平8−174256号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガルバノミラーを用いたレーザ走査系では、その多くがガルバノ位置検出センサに静電容量センサを用いており、その特性上、温度や湿度や経時変化によるゲイン変動で位置決め誤差を生じさせることになる。その中で、温度や湿度は空調により一定に管理することができ、誤差を無くすことができるが、経時変化については管理することができず、それによる誤差を無くすことはできないという問題があった。
【0005】
しかるに、近年は加工平面上でミクロン単位の正確なレーザ照射位置決めが必要とされており、この経時変化による誤差が問題となってきている。
【0006】
このため、従来は上記特開平8−174256号公報に開示された方法による補正を定期的に繰り返していたが、その補正毎にレーザ光線を平面上に走査したときに生じる幾何学的な走査歪みを含めた位置誤差の測定を行うため、測定作業及び補正データを作成するデータ処理に多くの時間がかかってしまい、生産性の低下を来すという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、ガルバノミラー制御装置に入力する数値データを短時間で効率的に補正し、高精度の加工を生産性良く行うことができるレーザ加工方法及び装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のレーザ加工方法は、XYガルバノミラーを用いてレーザ光線を平面上で走査させて所望の加工位置をレーザ加工するレーザ加工方法において、先に設定された幾何学的な走査歪みの補正を含む加工位置の補正データと、現時点においてレーザ照射位置測定結果により算出したガルバノ位置検出センサの経時変化データの2つのデータを合わせて加工位置を補正して加工するものであり、現時点の補正時にレーザ照射位置測定によってガルバノ位置検出センサの経時変化データを算出するだけでよいので、短時間で簡単にデータ補正ができ、補正作業を定期的にかつ頻度良く行っても生産性が低下せず、高精度のレーザ加工を生産性良く行うことができる。
【0009】
また、経時変化データは、原点位置と加工位置の間の距離の拡大縮小データとして検出すると、経時変化データの検出と加工データの補正をさらに短時間に効率的に行うことができる。
【0010】
また、基準マトリックス加工を行い、その加工位置を測定して経時変化データを求める工程と、求めた経時変化データが所定の精度管理範囲外の場合に先に設定された補正データを合わせて加工位置の補正データを演算する工程とを有すると、自動的に精度管理範囲内のレーザ加工を確保することができる。
【0011】
また、本発明のレーザ加工装置は、XYガルバノミラーを用いてレーザ光線を平面上で走査させて所望の加工位置をレーザ加工するレーザ加工装置であって、XYガルバノミラーを制御するガルバノミラー制御装置を、先に設定された幾何学的な走査歪みの補正を含む加工位置の補正データと、現時点においてレーザ照射位置測定結果により算出したガルバノ位置検出センサの経時変化データの2つのデータを合わせて加工位置を補正するように構成したものであり、上記のように高精度のレーザ加工を生産性良く行うことができる。
【0012】
また、XYガルバノミラーと、レーザ光線が照射される加工対象物を搭載して移動させるXYステージと、XYステージ上に配設され、レーザ加工位置の測定を行う認識カメラと、ガルバノミラーの位置を検出する静電容量センサとを有すると、XYステージの移動により任意の加工位置を認識して簡単に精度良くレーザ照射位置を測定することができ、かつ静電容量センサにてガルバノミラーの位置を検出することで、経時変化データが原点位置と加工位置の間の距離の拡大縮小データとして検出され、経時変化データの検出と加工データの補正をさらに短時間に効率的に行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態のレーザ加工装置におけるデータ補正方法について、図1〜図5を参照して説明する。
【0014】
まず、従来と共通の幾何学的なレーザ走査歪みの補正方法について、図1を参照して説明する。図1(a)に示すように、加工対象物である基板1上に設定された一辺の長さL(例えば、50mm)の正方形の領域内に等間隔マトリックス状に座標点2を配列し、その座標点2の座標値に基づいた数値データをレーザ加工機のガルバノミラー制御装置7(図2参照)に入力し、基板1上にレーザ光線を照射し、穴あけを行う。穴あけを行った結果を図1(b)に示す。そして、加工したそれぞれの加工穴3の位置を穴位置測定機によって測定し、加工穴3の位置の測定結果と座標点2の座標値を比較処理することにより、歪んだ形状と元の正方形との差分を求め、幾何学的なレーザ走査歪みを補正している。
【0015】
図2において、ガルバノミラー4は、広い駆動角20°とμラジアンオーダーの位置決め精度と、高速位置決めを必要とされるため、ガルバノ位置検出センサとして、ガルバノミラーシャフトに回転角を検知する静電容量センサ5が取付けられ、その検出信号をガルバノミラー4に流す電流を制御するドライバ6にフィードバックするように構成されている。また、ドライバ6に対してはガルバノミラー制御装置7から目標の回転角度を指令するように構成され、静電容量センサ5の検出信号はガルバノミラー制御装置7にはフィードバックされず、指令後の時間経過で位置決め完了とみなしている。
【0016】
特開平8−174256号公報に開示されている補正方法においては、前回の位置決めデータを使って上記のように補正をかけており、その補正データの中にガルバノミラー4の位置決め再現性の影響が含まれている。ガルバノミラー4に搭載された静電容量センサ5は、温度変化、湿度変化、経時変化で再現性が崩れてしまうため、測定結果から得られる補正データを定期的に更新して精度を保つ必要があるが、このとき補正データの更新されるべき部分は、ガルバノミラー4の位置決め再現性のずれ量であり、幾何学的走査歪みの補正については定期的に行う必要がない。従来の補正方法では、定期的補正に冗長が発生していることになり、定期的補正作業が生産性に影響を与えていることになる。
【0017】
本実施形態では静電容量センサ5の経時変化によるガルバノミラー4の位置決め再現性の影響のみを簡単に測定して補正をかけるようにしている。すなわち、幾何学的走査歪みの補正を含む補正を行った直後の図3(a)に示すような加工位置測定結果と、数日〜1ケ月後の図3(b)に示すような加工位置測定結果を比較すると、等間隔にマトリックス状に配列された加工穴3がX軸方向に拡大された位置精度変動を起こしている。勿論、縮小の場合もあり、Y軸方向も同様である。これは、ガルバノの経時変化及びカルバノの動作頻度による自己発熱量差が原因と考えられ、原点を中心としてXY方向に縮小、拡大の変動を起こすことになる。そこで、拡大縮小の位置ずれに対して、拡大縮小率を参照点の平均により算出し、前回測定した幾何学的な走査歪み補正のための位置測定結果に、この拡大縮小率を加算することにより、現時点の補正データを作成し、ガルバノミラー制御装置7に入力する照射位置を表す数値データを補正する。
【0018】
次に、具体構成例について図4、図5を参照して説明する。図4は、COレーザ穴あけ加工機を示す。COレーザ8の出射口9から出射されたレーザ光は、適宜に配設されたベンドミラーやハーフミラーを介して光路10を通って左右一対配設されたXYガルバノミラー11に入射される。このXYガルバノミラー11にてXY方向にレーザ光が走査され、XYステージ12上に保持された被加工物である基板1上にレーザ光を照射して穴あけ加工が行われる。14はXYステージ12上で、供給された基板1を平面状に規制して吸着保持する基板保持ユニットである。
【0019】
この加工機は、500mm×350mm寸法の基板1がマトリックス状に配列された50mm×50mmの矩形の領域に区分され、XYガルバノミラー11に搭載された2枚のガルバノミラーの角度を変化させることにより、各矩形領域内の任意の穴位置にレーザ光を照射させ、またそれぞれの矩形領域の移動はXYステージ12により行い、基板1上の任意の位置にレーザ照射できるように構成されている。また、対物レンズを組み合わせたCCDカメラ13がXYステージ12の上部に配設されており、XYステージ12の移動により任意の加工穴3の画像を認識装置(図示せず)に取り込んで、加工穴3の位置精度を確認できるように構成されている。
【0020】
次に、以上の構成によるガルバノ経時変化に対する補正方法を、図5のフローチャートを参照して説明する。補正作業は、定期的又は周期的に行う。まず、補正をかけた基準マトリックスの加工を行い、CCDカメラからなる認識カメラ13と認識装置でその穴位置の測定を行い、図3(b)の拡大縮小の度合いを確認する。予め決めておいた精度管理範囲ならば、OKと見なして生産を続行する。範囲外であれば、作業者が選択するための選択項目15を適宜表示部に表示する。1つ目の選択項目は再測定モード、2つ目は補正データを更新するゲイン補正モード、3つ目は強制終了モードである。
【0021】
再測定モードでは、穴位置測定が再度起動し、精度管理範囲の判断がなされ、再度作業者の確認ができる。
【0022】
ゲイン補正モードでは、穴位置測定での結果により、X軸、Y軸方向に拡大、縮小された位置の変動分を算出し、この変動分のデータと、現存する幾何学的な走査歪みを補正する位置測定結果に基づいた補正データを合わせて補正データを更新し、再度基準マトリックス加工、穴位置測定を行う。ガルバノゲイン変動要因で発生した精度管理範囲外の精度劣化はこのモードを実行することにより精度管理範囲内に納めることができ、生産開始できる。
【0023】
強制終了モードは、ゲイン補正モードを幾度となく繰り返しても精度がでない場合、また明らかに光軸がずれた等のガルバノゲインの要因でない精度不良が補正作業中に判明した場合に選択する。このときは、装置トラブルとして、他の精度管理範囲に入らない原因を突き止める必要がある場合であり、メンテナンスを行う。
【0024】
【発明の効果】
本発明のレーザ加工方法及び装置によれば、以上のように先に設定された幾何学的な走査歪みの補正を含む補正データと、現時点においてレーザ照射位置測定結果により算出したガルバノ位置検出センサの経時変化データの2つのデータを合わせて照射位置を補正するので、現時点の補正時にはレーザ照射位置測定によってガルバノ位置検出センサの経時変化データを算出するだけでよく、従って短時間で簡単にデータ補正ができ、補正作業を定期的にかつ頻度良く行っても生産性が低下せず、高精度のレーザ加工を生産性良く行うことができる。
【0025】
また、経時変化データは、原点位置と加工位置の間の距離の拡大縮小データとして検出すると、経時変化データの検出と加工データの補正をさらに短時間に効率的に行うことができる。
【0026】
また、基準マトリックス加工を行い、その加工位置を測定して経時変化データを求める工程と、求めた経時変化データが所定の精度管理範囲外の場合に先に設定された補正データを合わせて加工位置の補正データを演算する工程とを有すると、自動的に精度管理範囲内のレーザ加工を確保することができる。
【0027】
また、XYガルバノミラーと、レーザ光線が照射される加工対象物を搭載して移動させるXYステージと、XYステージ上に配設され、レーザ加工位置の測定を行う認識カメラと、ガルバノミラーの位置を検出する静電容量センサとを有すると、XYステージの移動により任意の加工位置を認識して簡単に精度良くレーザ照射位置を測定することができ、かつ静電容量センサにてガルバノミラーの位置を検出することで、経時変化データが原点位置と加工位置の間の距離の拡大縮小データとして検出され、経時変化データの検出と加工データの補正をさらに短時間に効率的に行うことができ、さらに生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における幾何学的なレーザ走査歪みの補正方法の説明図であって、(a)は加工位置の座標点を示す平面図、(b)は穴あけ加工を行った結果の平面図である。
【図2】同実施形態におけるレーザ加工装置のガルバノ制御系のブロック図である。
【図3】同実施形態におけるガルバノ位置検出センサの経時変化に対する補正方法の説明図であって、(a)は従来の補正を行った直後の加工位置を示す平面図、(b)はガルバノゲイン変動の影響が現れた状態の位置測定結果を示す平面図である。
【図4】同実施形態を適用したレーザ穴あけ加工機の概略構成を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】同実施形態における補正作業のフローチャートである。
【符号の説明】
4 ガルバノミラー
5 静電容量センサ(ガルバノ位置検出センサ)
11 XYガルバノミラー
12 XYステージ
13 認識カメラ

Claims (5)

  1. XYガルバノミラーを用いてレーザ光線を平面上で走査させて所望の加工位置をレーザ加工するレーザ加工方法において、先に設定された幾何学的な走査歪みの補正を含む加工位置の補正データと、現時点においてレーザ照射位置測定結果により算出したガルバノ位置検出センサの経時変化データの2つのデータを合わせて加工位置を補正して加工することを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 経時変化データは、原点位置と加工位置の間の距離の拡大縮小データとして検出することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。
  3. 基準マトリックス加工を行い、その加工位置を測定して経時変化データを求める工程と、求めた経時変化データが所定の精度管理範囲外の場合に先に設定された補正データを合わせて加工位置の補正データを演算する工程とを有することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
  4. XYガルバノミラーを用いてレーザ光線を平面上で走査させて所望の加工位置をレーザ加工するレーザ加工装置であって、XYガルバノミラーを制御するガルバノミラー制御装置を、先に設定された幾何学的な走査歪みの補正を含む加工位置の補正データと、現時点においてレーザ照射位置測定結果により算出したガルバノ位置検出センサの経時変化データの2つのデータを合わせて加工位置を補正するように構成したことを特徴とするレーザ加工装置
  5. XYガルバノミラーと、レーザ光線が照射される加工対象物を搭載して移動させるXYステージと、XYステージ上に配設され、レーザ加工位置の測定を行う認識カメラと、ガルバノミラーの位置を検出する静電容量センサとを有することを特徴とする請求項記載のレーザ加工装置
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