JP5246828B2 - 無端ベルトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は無端ベルトの製造方法、詳しくは例えば画像形成装置中で使用中にトナー転写量の測定が正確で容易な無端ベルトの製造方法に関する。
レーザプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などには、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。通常の画像形成装置は、例えば感光ドラムに記憶された潜像に現像ローラからトナーを供給して現像し、このトナー像を感光ドラムに接する無端ベルトに転写し、さらに無端ベルトから印刷用紙などの記録体に転写し、記録体上に転写されたトナーを定着ローラによって圧着固定して完全な画像や文字として印刷する構造となっている。
ここで用いられる無端ベルトは、静電作用によりトナーを付着させたり脱着させたりするため、半導電性で図1に示すような環状となっており、駆動ローラ等により高速で無限走行して、静電力を利用して必要なトナーを連続的に感光ドラムから記録体に移動させる。そして、通常のレーザプリンタ等では10万枚近い印刷用紙等に印刷する期間中、弛みやずれがないように応力をかけたまま使用できなければならない。そのため、転写ベルトは引張り強度、ヤング率、可撓性、耐折強さ、導電特性などをバランスよく備えていないといけない。そこで、無端ベルトは材料や製造工程などに各種の検討がなされている。例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂組成物を成形して得た表面抵抗率、体積抵抗率の均一性に優れ、耐折性、ヤング率など総合的な物性バランスのよいシームレスベルトを、特許文献2では、導電性フィラーとポリイミド樹脂組成物を成形して得た可撓性と剛性のバランスのよいベルトを、特許文献3では、トナー転写濃度を正確に測定できる無端ベルトを、また特許文献4では、クラックやわれの発生し難いポリイミド製無端ベルトを提案している。
特開平10−6411号公報 特開2004−99709号公報 特開2005−10220号公報 特開2005−31301号公報
上述のように無端ベルトは、引張り強度やヤング率、耐折強さなどの機械的特性は当然重要であるが、トナーを感光ドラムから受け取り、記録体に必要量を過不足なく転写せねばならない。しかし、画像形成装置はその使用環境による温度、湿度の変化や長期間の使用等による感光ドラムや現像ローラ等の構成部品の劣化などにより、記録体に転写されるトナーの転写量、即ち印字濃度が変動し画質が低下してしまうことがある。また、記録体に転写し切れなかったトナーをクリーニングブレードにより無端ベルトの表面から除去する際、無端ベルトの表面にトナーが必要以上に付着していると、ブレードが充分機能できずにスリップスティックによるビビリ振動を生じたりして、除去されるべきトナーを充分除去し切れずに、無端ベルトの表面を清浄に出来ないことがある。
このような問題を回避するために、画像形成装置では、無端ベルトの表面上に転写されたトナー像を光学センサで測定し、その濃淡に応じて現像ローラ、感光ドラム、転写ローラなどの各部品に印加するバイアス電圧等を調整することにより、無端ベルトの表面上へのトナー付着量を制御している。しかし、無端ベルトの表面が白化したりして十分な光沢がなく、無端ベルトの表面上のトナーが付着した部分と付着していない部分との光の反射量の差が判別し難いと、トナー量の測定誤差が生じ易く、結果として記録体上の印字濃度を十分制御できなくなってしまう。
本発明は、光学センサにより無端ベルトの表面上へのトナーの転写量を常に正確に測定し、印字濃度の調節を可能とすることのできる無端ベルトの製造方法の提供を目的としている。
上述の課題を解決するため、本発明者らは無端ベルトの樹脂組成物中の残留触媒に着目し、この残留触媒が無端ベルト製造時に無端ベルトの表面に露出し、これが原因で穴を作り、無端ベルトの表面の白化現象を引き起こし、無端ベルトの表面に転写されたトナーの光学的測定の誤差要因になっていることを見出した。そして、無端ベルトの材料中の触媒量を制御することにより、無端ベルトの表面に穴が少なく光沢のある、光学的測定上の問題を引き起こさない無端ベルトの製造方法を見出した。この結果をもとに、以下に記す上記課題を解決するための手段を発明した。
(1反射型電子顕微鏡(SEM)で前記無端ベルトの表面に観察される有効直径0.1〜3μmの穴が400μm中に25個以下である画像形成装置用の無端ベルトを製造する方法であって、芳香族ポリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを、重合触媒として前記芳香族ポリカルボン酸無水物に対してフッ化カリウムを2mol%以下若しくはジブチル錫オキサイドを3mol%以下添加して、又は重合触媒を使用しないで、重合反応させた芳香族ポリアミドイミド樹脂を含む導電性付与剤含有樹脂組成物を成形し、110〜350℃の過熱水蒸気で10〜120分間処理する二次溶媒除去工程を経て製造される無端ベルトの製造方法。
)前記芳香族ポリカルボン酸無水物と前記ジイソシアネート化合物とは、当量が重合される()に記載の無端ベルトの製造方法
本発明の無端ベルトの製造方法によると、無端ベルトの表面が滑らかで、穴が少なく、白化現象が見られなく、十分な光沢を持っているため、画像形成装置の無端ベルトとして使用中、光学センサによる無端ベルトの表面上のトナー量の測定が容易に正確にでき、画像形成装置におけるトナー転写量、すなわち印刷物の印字濃度制御が容易である。また、本発明の無端ベルトの製造方法によると、無端ベルト上の印字濃度制御が容易で、トナー回収ブレードに過剰な負荷を掛けず、スリップスティックやビビリ振動などによるトナーの除去漏れによる印刷の汚れなどを防止することができる。そのため、本発明の無端ベルトの製造方法により製造した無端ベルトを使用した画像形成装置は、使用環境が変化したり、長期間使用しても印字濃度の変化や印刷むら、汚れといった無端ベルトに起因するトラブルが発生し難い。

通常、無端ベルトは図1に示すような形状をしており、重合触媒を使用しないか、重合触媒として原料である芳香族ポリカルボン酸無水物に対してフッ化カリウムを2mol%以下、またはジブチル錫オキサイドを3mol%以下添加して重合反応させた樹脂に導電性付与剤を加えた樹脂組成物から成形されている。本発明の無端ベルトは、画像形成装置の転写ベルトとして用いられ、好ましい態様としては、後述のように芳香族ポリカルボン酸無水物と芳香族ジイソシアネート化合物などを重合させて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂または芳香族ポリイミド樹脂にカーボンブラックのような導電性付与剤を加えた半導電性樹脂組成物の薄膜であり、通常は光沢のある黒色の表面をしている。以下には、特に好ましい樹脂である芳香族ポリアミドイミド樹脂を用いた本発明の無端ベルトの場合を例にして説明する。芳香族ポリアミドイミド樹脂は、一般には重合触媒としてフッ化カリウムを原料である芳香族ポリカルボン酸無水物に対し3mol%以上添加して合成される。これにより、適度な反応温度で、比較的短時間に重合させることができるとされていた。しかし、得られた芳香族ポリアミドイミド樹脂を精製、洗浄等を行わずそのまま溶媒中で導電性付与剤を加え、遠心成形などにより成形し、溶媒を蒸発除去して無端ベルトを製造すると、芳香族ポリアミドイミド樹脂合成時に使用したフッ化カリウムの一部が残り、これが無端ベルトの表面に露出してくる。そして、溶媒除去工程中などに無端ベルトの表面のフッ化カリウムは剥落して無端ベルトの表面には多数の穴が現れる。この穴により無端ベルトの表面の光沢がなくなり、肉眼では無端ベルトの表面が白化したように見える。これを白化現象と呼ぶ。白化現象が起きると光度が減少する。一方、画像形成装置は、無端ベルトの表面に付着しているトナーの量を光学センサによって無端ベルト上のトナー付着面と非付着面との対比によって測定している。このため、白化現象が激しくなると、無端ベルト上のトナー付着面と非付着面との光度差が小さくなり、トナー付着量を正確に測定出来なくなる。
そこで、本発明者は芳香族ポリアミドイミド樹脂の合成時に、無端ベルトとしての要求物性はほとんど変えずに、フッ化カリウムの触媒量を減少させ、または使用しない重合方法を見出し、画像形成装置の無端ベルトとして好適な芳香族ポリアミドイミド樹脂を見出した。すなわち、原料である芳香族ポリカルボン酸無水物に対しフッ化カリウムを2mol%以下、好ましくは1mol%添加して重合される芳香族ポリアミドイミド樹脂を用いればよい。このようにすれば、無端ベルトの表面の穴が減少する為、白化現象もなくなる。そのため、光学センサによる転写ベルト上の付着トナー量の測定が正確に行われ、画像形成装置としての印字濃度制御も適正に行われる。このため、この無端ベルトを使用した画像形成装置としては、無端ベルトに起因する印刷物の濃度異常や汚れといったトラブルがなくなる。
ところで、重合触媒であるフッ化カリウムを減少させると重合時間が長くなり生産性は悪くなる。また、重合触媒を使用しないと、反応温度を上げたりして重合分子が分岐しやすく柔軟性がなくなる傾向にある。そのため、反応条件や無端ベルトの厚さなどの選択、使用範囲などの選択に注意が必要である。これに対し、重合触媒としてジブチル錫オキサイドを、好ましくは原料である芳香族ポリカルボン酸無水物に対し3mol%以下、より好ましくは2mol%以下の量で、使用すれば好適な物性の無端ベルトが容易に生産性よく得られる。なお、ジブチル錫オキサイドは、単独でもフッ化カリウムなど他の触媒と併用してもよい。
本発明の好ましい態様として、上述した無端ベルトのうち反射型電子顕微鏡(SEM)で無端ベルトの表面に観察される有効直径0.1〜3μmの穴が400μm中に25個以下の無端ベルトがある。上述のように、無端ベルトの表面は白化現象が少なく光沢があるほうがよいが、定量的には光沢に大きく関係すると考えられる光の波長に近い有効直径0.1〜3μmの穴の密度が重要である。そして、この穴の密度として400μm中に25個以下、好ましくは15個以下であると優れた無端ベルトとなる。なお、有効直径とは、上記の穴を表面が円形の小穴とみなして、SEM写真上でその縦と横の長さの平均値で表わす。400μmを基準にしたのは、通常の製造方法により得られた無端ベルトはこの程度の面積で穴の密度を測定すれば、無端ベルトの全表面上の穴の平均密度とほとんど変わりないからである。また、SEM写真は1,000〜10,000倍、好ましくは2,500〜5,000倍程度で測定すればよい。
本発明の無端ベルトの材料である樹脂組成物について説明する。樹脂組成物は、強度があり繰返し変形に耐える可撓性に富んだものがよい。具体的な樹脂組成物用の樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられ、好ましくはポリアミドイミド樹脂、特に好ましくは芳香族ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。上記の1種類または2種類以上の樹脂に導電性付与剤を添加した樹脂組成物が、本発明の導電性付与剤含有樹脂組成物として好ましい。
芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐摩耗性、耐薬品性、機械的強度、高温クリープ特性、後述の遠心成形との適合性などから好ましい樹脂である。芳香族ポリアミドイミド樹脂の製造方法について説明する。芳香族ポリアミドイミド樹脂の製造方法は、芳香族トリカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸無水物に当量のジイソシアネート化合物を反応させるジイソシアネート法が、樹脂組成物の物性、原料の入手、反応性、副生成物の少なさ等の面から優れている。重合反応を好適に進められれば、ジイソシアネート化合物に代えてジアミン化合物を用いた芳香族ポリアミドイミド樹脂は、ヤング率が高く好適な無端ベルトの材料となる。また、トリカルボン酸無水物の一部をテトラカルボン酸二無水物に代えて、芳香族ポリアミドイミド樹脂のイミド結合を増加させ耐湿性を向上することもできる。これらの反応は、適当な溶媒中で、常圧、常温または加熱下で容易に進行する。この場合、無触媒でもよいが、触媒としてフッ化カリウムやジブチル錫オキサイドを利用すると、無端ベルトとしての物性の優れた樹脂が容易に製造できる。しかし、本発明においては、フッ化カリウム触媒の添加は原料である芳香族ポリカルボン酸無水物に対し2mol%以下、ジブチル錫オキサイド触媒の添加は原料である芳香族ポリカルボン酸無水物に対し3mol%以下とする。そうすれば、得られた芳香族ポリアミドイミド樹脂溶液に導電性付与剤等を添加して遠心成形しても、無端ベルトの表面の穴が減少し白化現象もなくなる。
原料である芳香族ポリカルボン酸無水物としては、芳香族トリカルボン酸無水物や芳香族テトラカルボン酸二無水物などがあり、芳香族トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物およびその誘導体、3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、2,3,5−ピリジントリカルボン酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物類などが挙げられる。これらの酸無水物は単独でも混合してでも用いることができる。
一方、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物が好ましく、脂肪族ジイソシアネート化合物や脂環式ジイソシアネート化合物を、またはこれらの誘導体であるアミン類を併用してもよい。芳香族ジイソシアネート化合物として、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、2,4−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらの化合物の誘導体であるジアミン類も原料として利用できる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式としては、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、無端ベルトの耐熱性、機械的特性、溶解性などを考慮すると、全ジイソシアネート成分中の60%以上、好ましくは70%以上が、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、イソホロンジイソシアネート、またはこれらのアミン誘導体とすることが好ましい。さらに、無端ベルトの寸法安定性を考慮するとジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート70%以上とすることが好ましい。
これらの重合反応の溶媒としては、溶解性の点からは極性溶媒が好ましく、さらに、重合反応性の点から非プロトン性極性溶媒が好ましい。具体的には、N,N−ジアルキルアミド類、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミドなどが挙げられる。また、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等も好ましい溶媒となる。これらの溶媒は単独でも混合しても使用できる。
無端ベルトにはある程度の導電性が要求され、無端ベルト用の樹脂組成物には導電性付与剤が含まれる。このような導電性付与剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、金属や合金からなる針状、球状、板状、不定形等の粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッキされた各種粒子等が挙げられる。この中でもカーボンブラックが、粒径、導電性、樹脂材料との親和性等のバランスが取れた材料であり使用し易い。また、カーボンブラックとしては樹脂との親和性を増すため、酸化処理してカルボキシル基、ヒドロキシル基などを付加した酸化処理カーボンブラックを用いることもできる。なお、市販のpH5以下の酸化処理カーボンブラックは好適な導電性付与剤である。この導電性付与剤の形状は球状あるいは不定形のものが、サイズは0.01〜10μm程度が好ましい。
導電性付与剤の添加量は、導電性付与剤の導電性や粒径、および無端ベルトの要求する導電性の程度により適宜調整すればよいが、一般には1〜25質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲が望ましい。添加量が上記範囲より少ない場合には、導電性物質同士の距離が離れすぎ導電性の発現が悪くなる。逆に、添加量が上記範囲より多い場合には、無端ベルトの機械的強度等が低下するおそれがある。
その他の樹脂組成物中の添加剤として、必要に応じ、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、補強性フィラー、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤が挙げられる。
導電性付与剤等の添加剤を芳香族ポリアミドイミド樹脂に分散させる方法としては、該樹脂の性状に適する公知の分散方法が用いられる。例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル、ピースミル等を用いればよい。無端ベルトの成形方法として好ましい遠心成形法と組合せる場合は、芳香族ポリアミドイミド樹脂が溶媒中に溶解している状態の芳香族ポリアミドイミド樹脂溶液に導電性付与剤等を添加してポットミル等で撹拌混合して分散してやればよい。
次に、本発明の無端ベルトの成形方法を説明する。無端ベルトの成形方法は特に限定されず、遠心成形、押出成形、射出成形等によればよい。また、熱硬化性樹脂を選択した場合、遠心成形やRIM成形等を採用してもよい。これらの方法の中でも、材料を問わずに適用可能であること、均一な無端ベルトが作り易く、厚さ精度に優れていること、そして電気抵抗値のばらつきが小さいこと等から遠心成形法が好適である。
遠心成形法は、例えば、円筒の金型に流動性の導電性付与剤含有芳香族ポリアミドイミド樹脂組成物溶液(導電性付与剤等の一部材料は分散状態であるが、便宜上材料溶液と呼ぶ。)を少量注入し、金型を回転させて遠心力でその内周面に材料溶液の層を均一に成形し、溶媒を乾燥除去してフィルム状の無端ベルトを形成する。金型は各種金属管を用いることができ、内周面は鏡面研磨し、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤により離型処理し、形成した無端ベルトが容易に脱型できるようにするとよい。材料溶液の量と無端ベルトの厚さには相関関係があるので、同じ金型であれば材料の量により無端ベルトの厚さを制御できる。
遠心成形で成形する際、準備する流動性の材料溶液は、成形時の粘度が50,000mPa・s以下となるように調整することが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルトが作り難くなる。粘度の下限については、特に限定されるものではないが、材料溶液の取り扱い上、10mPa・s以上が好ましい。材料溶液の粘度が上記範囲を外れる場合は、材料溶液に溶媒を加えて溶解、希釈して、粘度を調整して使用すればよい。溶媒としては、上述した芳香族ポリアミドイミド樹脂の重合溶媒がそのまま好適に用いられる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジンなどが挙げられる。
材料溶液には溶媒を含むので、金型上に成形された材料溶液のフィルムを乾燥あるいは加熱して溶媒を除去し円筒状の成形品を金型から脱型すればよい。本発明の無端ベルトはこの溶媒除去工程において、過熱水蒸気処理を行うことが好ましい。具体的には、まず、材料を挿入した金型を回転して遠心成形された材料溶液のフィルムに、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風をフィルムが変形しない程度に吹き付けながら溶媒を除去して樹脂組成物フィルムを得る(一次溶媒除去工程という)。この一次溶媒除去工程をあまり高温で長時間実施すると、材料溶液中の樹脂成分の酸化劣化等が起こり出来上がった無端ベルトの性状が劣化することがある。そこで、上記条件で一次溶媒除去工程が終了したら、樹脂組成物フィルムを金型ごと遠心成形機から取り出し、過熱水蒸気炉中、110〜350℃の過熱水蒸気で10〜120分間処理する。これを二次溶媒除去工程とする。この二次溶媒除去工程で樹脂成分の劣化を抑えながらさらに溶媒を除去する。その後、金型ごと樹脂組成物フィルムを取り出し放冷する。金型と樹脂組成物フィルムの熱膨張率の差により樹脂組成物フィルムが脱型できる。脱型した円筒状の樹脂組成物フィルムの両側端部を除去し、所定幅に裁断すれば本発明の無端ベルトが出来上がる。なお、本発明において、無端ベルト中の残留溶媒量は、該無端ベルトからエタノール等で残留溶媒を抽出し、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)により測定することができ、0.5%以下が好ましい。
無端ベルトの機械的強度と可撓性を考慮すると、その厚さは0.03〜1.0mm、好ましくは0.05〜0.2mm、さらに好ましくは0.07〜0.13mm程度が望ましい。薄すぎれば機械的強度が損なわれ、厚すぎれば可撓性が損なわれる。また、無端ベルトは単層構造に限らず、多層構造としても良い。
無端ベルトの端部には作動中の横ぶれ防止用のガイドとして紐状、或いは帯状の細長いビードを配置する場合もある。ビードの材料は、適度なゴム弾性と耐摩耗性を有する弾性材料、例えばウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系樹脂エラストマー、スチレン系エラストマー等があげられる。これらの中でも、耐磨耗性に優れるJIS K 6253−1997A硬度30Hs以上95Hs以下のウレタン系エラストマーが好適である。
本発明の無端ベルトの表面輝度は、CCDカメラで撮影した画像の明るさを0〜255の諧調とした時の数値(表面輝度値)で表した場合、表面輝度値を130以上とすることが好ましく、特に160以上とすることがより好ましい。表面輝度値が小さいと、画像形成装置に使用した際、光学式センサにより無端ベルトの表面に直接転写されたトナー像からの印字濃度の測定精度が上がらない。即ち、無端ベルトの表面上にトナーを転写した場合、トナー付着部とバックグラウンドとなるトナーのない無端ベルトの表面輝度値の階差が充分に見られず、光学的センサの測定精度が落ちてしまう。表面輝度値は約130以上、好ましくは160以上であれば、光学センサは正確に作動し、実機での印字濃度は十分に制御できると考えられる。このため、画像形成装置の印字濃度制御を正確且つ確実とすることができる。また、印字濃度が十分に制御されていれば、無端ベルト上の余剰な残留トナーも少なくなり、トナー回収ブレードのスリップスティックによるビビリ振動などが抑えられ、トナーのすり抜け等による印刷の汚れについても抑えられる。
上述の本発明の無端ベルトは、各種画像形成装置の感光体基体用、現像用、定着用等の用途でも使用可能であるが、転写ベルトとして利用すれば、画像形成装置の運転環境や状態が変わっても、常に転写ベルト用の光学センサ、転写トナー量制御機構が正常に作動し、トナー転写量を適正に制御でき、転写ベルトに起因する印字濃度むらや汚れなどの印刷不良のない画像形成装置とすることができる。
(実施例1)
N−メチル−2−ピロリドン溶媒の入った反応容器中に、トリメリット酸無水物と当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとからなる反応原料と、触媒としてフッ化カリウム2mol%とを加え、撹拌しながら30分間かけて室温から150℃に昇温後、150℃にて5時間反応を継続し、反応物濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これにN−メチル−2−ピロリドンを加え、反応物濃度15質量%のポリアミドイミド溶液を調製した。これに導電性付与剤として酸化処理カーボンブラック(プリンテックス150T,Degussa社製,pH5.8、揮発分10.0%)をポリアミドイミド樹脂100質量部に対して16質量部となるように配合し、ポットミルで24時間混合分散し樹脂組成物混合液を得た。この樹脂組成物混合液を1,000rpmで回転する円筒形金型内周に190g注入した。金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmとし、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。そして金型両端の開口部にはリング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して材料漏れを防止する。こうして金型に樹脂組成物溶液を注入したら、1,000rpmの回転速度のまま30分間レベリングして遠心成形し、樹脂組成物混合液をフィルム状にした。その後回転したまま80℃の熱風をフィルム表面が変形しない程度の強さで、30分間フィルムに吹き付け溶媒を除去した。溶媒除去が終了したら、樹脂フィルムを金型ごと遠心成形機から取り出し、290℃の過熱水蒸気炉で50分間過熱水蒸気処理したのち、室温で放冷した。金型と樹脂組成物の熱膨張率の差によりフィルムが剥離してくる。この樹脂組成物でできたフィルムをとりだし、その両端部をそれぞれカットして周長約710mm、幅240mm、厚さ100μmの無端ベルト1を作成した。
(実施例2)
実施例1において、芳香族ポリアミドイミド樹脂合成時に、触媒としてフッ化カリウム2mol%を加えた代わりに、フッ化カリウム1mol%を加え、重合時間を5時間から10時間に変えて反応させた以外は実施例1と同様にして無端ベルト2を作成した。
(実施例3)
実施例1において、芳香族ポリアミドイミド樹脂合成時に、触媒としてフッ化カリウム2mol%を加え、反応温度および反応時間を150℃、5時間にした代わりに、フッ化カリウム触媒を加えないで、反応温度および反応時間を180℃、10時間とした以外は実施例1と同様にして無端ベルト3を作成した。
(実施例4)
実施例1において、芳香族ポリアミドイミド樹脂合成時に、触媒としてフッ化カリウム2mol%を加えた代わりに、ジブチル錫オキサイドを3mol%加えた以外は実施例1と同様にして無端ベルト4を作成した。
(実施例5)
実施例1において、芳香族ポリアミドイミド樹脂合成時に、触媒としてフッ化カリウム2mol%を加えた代わりに、ジブチル錫オキサイドを1mol%加え、重合時間を5時間から10時間に変えて反応させた以外は実施例1と同様にして無端ベルト5を作成した。
(比較例1)
実施例1において、芳香族ポリアミドイミド樹脂合成時に、触媒としてフッ化カリウム2mol%を加えた代わりに、フッ化カリウム3mol%を加えた以外は実施例1と同様にして無端ベルト6を作成した。
(無端ベルトの穴数測定)
無端ベルトの一部を試料として取り反射型電子顕微鏡(SEM)により観察し、写真撮影して写真の中心付近の任意の400μm(20μm四方の正方形、または半径約11.3μmの円)の面積中の有効直径0.1〜3μmの穴を計数し、その数を穴数とする。
(無端ベルトの白化状態の評価)
無端ベルトの表面を蛍光灯の下で肉眼で観察し、黒く光沢のあるものは白化現象なしで○、黒い表面に白っぽい粉がうっすらと乗ったように見えるものを白化現象ありで×とする。
無端ベルト1〜6について、穴数及び白化状態を表1に示した。
(無端ベルトの表面輝度測定)
表面輝度測定装置は、照明ランプ(フィリップス株式会社:77241)、CCDカメラ(株式会社ソニー:XC−003)を備えた顕微鏡本体(ニコン株式会社:EPI−U)であり、その下部に測定対象の無端ベルトをセットし、照明ランプから無端ベルトに垂直に光照射する。CCDカメラはコンピュータに接続されており、画像処理ソフトウェア(王子計測機器株式会社:DA−6000)により取り込んだ画像データから表面輝度値を算出する。CCDカメラの画像の明るさは0〜255諧調で表すものとする。無端ベルト1〜6につき測定した表面輝度を表1に示した。
(無端ベルトの実用性評価)
実施例1〜5、および比較例1で作成した無端ベルト1〜6を、それぞれタンデム方式のカラープリンタ(株式会社沖データ:MicroLine9055c)に装着して実機テストをした。プリント速度は、A4用紙を横21枚/分印刷する速度で1万枚印刷して、約千枚目ごとに同じ文字を印刷して印字濃度を比較した。11枚の印刷文字の濃度がほぼ同じものを◎、印刷文字に濃度差や汚れはあるが並べてその印刷状態を対比して観察しなければ分からない程度のものを○とした。印刷文字に明らかな濃度差があるものを×とした。評価結果を表1に示した。また、無端ベルト1〜5の印刷テスト中印刷面に汚れは発生しなかったが、無端ベルト6の印刷テストではトナー回収ブレードのビビリ振動よるトナーのすり抜けに起因すると考えられる印刷面の汚れが観察された。
Figure 0005246828
表1の結果から分かるように、本発明の無端ベルト1〜5(実施例1〜5)は、比較例1の無端ベルト6に較べて無端ベルトの表面の白化現象がなく、表面輝度が高く、実機テストにおける印刷の濃淡のばらつきや汚れもなかった。
本発明の無端ベルトを転写ベルトとして備えた画像形成装置は、印刷の濃淡むらがなく長寿命でレーザプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置として有用である。
図1は無端ベルトの斜視図である。
符号の説明
1:無端ベルト

Claims (2)

  1. 反射型電子顕微鏡(SEM)で無端ベルトの表面に観察される有効直径0.1〜3μmの穴が400μm 中に25個以下である画像形成装置用の無端ベルトを製造する方法であって、
    芳香族ポリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを、重合触媒として前記芳香族ポリカルボン酸無水物に対してフッ化カリウムを2mol%以下若しくはジブチル錫オキサイドを3mol%以下添加して、又は重合触媒を使用しないで、重合反応させた芳香族ポリアミドイミド樹脂を含む導電性付与剤含有樹脂組成物を成形し、二次溶媒除去工程として110〜350℃の過熱水蒸気で10〜120分間処理する無端ベルトの製造方法。
  2. 前記芳香族ポリカルボン酸無水物と前記ジイソシアネート化合物とは、当量が重合される請求項1に記載の無端ベルトの製造方法。
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