以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態1は、カフと本体とが分離されて構成された上腕式血圧計に本発明を適用した場合を例示するものであり、以下に示す実施の形態2は、カフと本体とが一体化されて構成された上腕式血圧計に本発明を適用した場合を例示するものである。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における血圧計の外観構造を示す斜視図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における血圧計の外観構造について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における血圧計1Aは、本体10、カフ20およびエア管70を主として備えている。本体10は、測定時においてテーブル等の載置面に載置されて使用されるものであり、上面に表示部14および操作部16を有している。カフ20は、測定時においてテーブル等の載置面に載置された状態で上腕に装着されて使用されるものであり、上腕支持台30と腕帯40と肘置き台80とを含んでいる。エア管70は、分離して構成された本体10とカフ20とを連結する部材であり、可撓性のチューブにて構成されている。
上腕支持台30は、ケース体31と台座部32とからなる支持台本体にて主として構成されており、略多角柱形状の外形を有している。腕帯40は、長尺帯状の部材からなり、その長手方向の一方端寄りの部分が上腕支持台30の内部に位置しており、他方端寄りの部分が上腕支持台30から外部へと引き出されている。肘置き台80は、概ね平板状の部材からなり、上腕支持台30の所定位置に取り外し可能に取付けられている。なお、カフ20の詳細な構造については、後述することとする。
図2は、本実施の形態における血圧計の機能ブロックの構成を示すブロック図である。次に、この図2を参照して、本実施の形態における血圧計の機能ブロックの構成について説明する。
図2に示すように、本体10は、上述した表示部14および操作部16に加え、制御部11と、メモリ部12と、電源部18と、加圧ポンプ61と、排気弁62と、圧力センサ63と、加圧ポンプ駆動回路64と、排気弁駆動回路65と、増幅器66と、A/D(Analog/Digital)変換回路67とを有している。一方、カフ20は、空気袋45と、巻取りローラ50とを主として有している。
制御部11は、たとえばCPU(Central Processing Unit)にて構成され、血圧計1Aの全体を制御するための手段である。メモリ部12は、たとえばROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)にて構成され、血圧値測定のための処理手順を制御部11等に実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果等を記憶したりするための手段である。表示部14は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成され、測定結果等を表示するための手段である。操作部16は、被験者等による操作を受付けてこの外部からの命令を制御部11や電源部18に入力するための手段である。電源部18は、制御部11に電源としての電力を供給するための手段である。
制御部11は、加圧ポンプ61および排気弁62を駆動するための制御信号を加圧ポンプ駆動回路64および排気弁駆動回路65に入力したり、測定結果としての血圧値をメモリ部12や表示部14に入力したりする。また、制御部11は、圧力センサ63によって検出された圧力値に基づいて被験者の血圧値を算出する。したがって、制御部11は、血圧値算出部としての機能も有している。この制御部11によって取得された血圧値が、測定結果として上述したメモリ部12や表示部14に入力される。なお、血圧計1Aは、測定結果としての血圧値を外部の機器(たとえばPC(Personal Computer)やプリンタ等)に出力する出力部を有していてもよい。出力部としては、たとえばシリアル通信回線や各種の記録媒体への書込み装置等が利用可能である。
空気袋45は、装着状態において上腕を圧迫するための流体袋であり、上述したエア管70を介して後述するエア系コンポーネント60に接続されている。空気袋45は、上述した腕帯40に内包されている。巻取りローラ50は、上述した腕帯40を巻き取るための巻取り機構の一部を構成するものであり、上述した上腕支持台30の内部に配設されている。
加圧ポンプ駆動回路64は、制御部11から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ61の動作を制御する。排気弁駆動回路65は、制御部11から入力された制御信号に基づいて排気弁62の開閉動作を制御する。増幅器66は、圧力センサ63の出力値を増幅し、A/D変換回路67に入力する。A/D変換回路67は、増幅器66から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して制御部11に入力する。
加圧ポンプ61は、空気袋45の内腔に空気を供給するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路64によって制御される。排気弁62は、空気袋45の内部の圧力(以下、「カフ圧」とも称する)を維持したり、空気袋45の内部の空間を外部に開放するためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路65によって制御される。圧力センサ63は、空気袋45の内部の圧力に応じた出力値を増幅器66に入力する。なお、これら構成要素のうち、加圧ポンプ61、排気弁62および圧力センサ63が上述したエア系コンポーネント60に相当し、特に加圧ポンプ61と排気弁62が空気袋45を膨縮させる膨縮機構に相当する。
図3は、本実施の形態における血圧計用カフの上腕支持台の斜視図であり、図4は、本実施の形態における血圧計用カフの肘置き台の斜視図である。また、図5は、上腕支持台に対して着脱自在に取付けられる肘置き台の取付位置を説明するための組立図である。次に、これら図3ないし図5を参照して、本実施の形態における血圧計用カフの詳細な構造について説明する。
図3および図5に示すように、本実施の形態におけるカフ20の上腕支持台30は、略直方体形状のケース体31と、ケース体31の下方に設けられた台座部32とを有している。ケース体31は、上面開口のケース部と当該ケース部の上面開口を閉塞する蓋部とを組み合わせることによって箱状に形成されており、その上面に上腕支持面31aを有している。台座部32は、ケース体31の下面に取付けられており、上腕支持台30を載置面に載置する際に当該載置面に選択的に当接することとなる第1被載置面33aおよび第2被載置面34aをその所定位置に有している。なお、上腕支持面31aは、装着状態において上腕が延びる方向に沿って延在しており、第1被載置面33aおよび第2被載置面34aは、当該上腕支持面31aが延びる方向に並んで配置されている。
ケース体31の内部には、上述した巻取りローラ50を含む巻取り機構が配設されている。巻取り機構は、腕帯40の一方端が固定された巻取りローラ50(図2参照)と、当該巻取りローラ50を腕帯40の巻取り方向に付勢する付勢手段(不図示)とを含んでいる。巻取り機構は、上述した付勢手段の付勢力に基づいて巻取りローラ50によって腕帯40を巻き取るためのものである。なお、巻取りローラ50を付勢する付勢手段としては、好適には発条バネや定荷重バネ等が利用される。
ケース体31の一方の側面には、上腕支持面31aよりも上方に向けて突出するようにガイド部35が付設されている。また、ガイド部35が位置する側のケース体31の上面側端部には、ガイド部35に並行してスリット状の腕帯引き出し口31dが設けられている。腕帯引き出し口31dは、腕帯40の他方端寄りの部分をケース体31から引き出すための部位であり、ガイド部35は、腕帯引き出し口31dから引き出された部分の腕帯40を起立させた状態(すなわち腕帯40の上記他方端寄りの部分が上方に向けて立ち上がった状態)とするための支持枠である。ガイド部35は、湾曲した板状の部材にて構成されており、その上端部の中央位置に切り欠き形状の引っ掛け部35aを有している。腕帯引き出し口31dから引き出された部分の腕帯40は、腕帯40の他方端寄りの部分に設けられたニップル(図示せず)または当該ニップルに接続されたエア管70を上記引っ掛け部35aに引っ掛けることにより、上述した起立姿勢をとることになる。
ケース体31の他方の側面には、側方に向けて突出するように形成されたフック36が設けられている。フック36は、後述する腕帯40に設けられた穴42を掛止するための部位であり、その形状は略円柱状に構成されている。
ケース体31の上腕支持面31aが延びる方向の一方の端部である第1端部31Bには、第1端面31bが位置している。第1端面31bの所定位置には、後述する肘置き台80の連結ピン81b1(図4参照)が挿し込み可能な連結穴31b1が設けられている。一方、ケース体31の上腕支持面31aが延びる方向の他方の端部である第2端部31Cには、第2端面31cが位置している。第2端面31cの所定位置には、後述する肘置き台80の連結ピン81b1(図4参照)が挿し込み可能な連結穴31c1が設けられている。
腕帯40は、内部に空間を有する袋状カバー41と、当該袋状カバー41に内包された空気袋45(図2参照)とを有している。袋状カバー41および空気袋45は、いずれも展開した状態において平面視略矩形状を有しており、上述した巻取りローラ50によってその一方端寄りの部分が巻取り可能とされている。
袋状カバー41は、好適にはポリアミド(PA)、ポリエステル等の合成繊維からなる布地によって形成され、腕帯40を上腕に巻き付けた場合に上腕に接触することとなる内周側部分を構成する内側カバー部と、腕帯40を上腕に巻き付けた場合に上腕に非接触となる外周側部分を構成する外側カバー部とを含んでいる。袋状カバー41の内側カバー部は、好適には伸縮性に優れた部材にて構成され、袋状カバー41の外側カバー部は、好適には内側カバー部よりも伸縮性に乏しい部材にて構成される。これら袋状カバー41の内側カバー部と外側カバー部との結合には、溶着や縫合等が利用される。また、袋状カバー41は、その長手方向の他方端寄りの部分の幅方向の略中央部に穴42を有している。この穴42は、上述したケース体31の左側面に設けられたフック36に掛合するものであり、内側カバー部と外側カバー部とを貫通するように平面視略円形状に形成されている。
空気袋45は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなる。空気袋45は、腕帯40を上腕に巻き付けた場合に上腕側に位置することとなる内側シートと、腕帯40を上腕に巻き付けた場合に内側シートよりも外側に位置することとなる外側シートとを重ね合わせ、その周縁を溶着することにより袋状に形成されており、内部に膨縮空間を有している。この膨縮空間は、ニップル(不図示)を介して上述のエア管70に接続されており、上述の膨縮機構によってその加減圧が行なわれる。なお、空気袋45を構成する樹脂シートの材質としては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間からの漏気がないものであればどのようなものでも利用可能である。このような観点から、樹脂シートの好適な材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、生ゴム等が挙げられる。
台座部32は、上述した上腕支持面31aと交差する2つの被載置面(第1被載置面33aおよび第2被載置面34a)を含む多角柱状の形状を有しており、これら2つの被載置面のいずれかを選択的に載置面に当接配置することにより、上腕支持面31aをテーブル等の載置面に対して傾斜した状態に維持する。台座部32には、テーブル等の載置面に載置した状態において上腕支持台30がスリップすることを防止するためのたとえばゴム部材等からなるスリップ防止部材33,34が設けられており、これらスリップ防止部材33,34のそれぞれの主面にて上述した第1被載置面33aおよび第2被載置面34aが構成されている。なお、第1被載置面33aおよび第2被載置面34aは、同一平面に含まれないように互いに交差して設けられている。
図4に示すように、肘置き台80は、その上面に肘置き面81aを有しており、その下面には、テーブル等の載置面に載置した状態において肘置き台80がスリップすることを防止するためのたとえばゴム部材等からなるスリップ防止部材82が設けられている。また、肘置き台80の上腕支持台30に取付けられる側の端面81bには、上述した上腕支持台30の第1端面31bおよび第2端面31cに設けられた連結穴31b1,31c1のいずれにも挿入が可能な連結ピン81b1が設けられている。
図5に示すように、本実施の形態におけるカフ20にあっては、上腕支持台30に対して肘置き台80を着脱自在に取付けることが可能である。ここで、肘置き台80は、上腕支持台30の上腕支持面31aが延びる方向に位置する第1端部31Bおよび第2端部31Cのいずれにも取付けが可能であり、取付けられた状態において上腕支持面31aと肘置き面81aとは、実質的に連続して延びるように構成される。
具体的には、上腕支持台30の第1端部31Bに肘置き台80を取付ける場合には、ケース体31の第1端面31bと肘置き台80の端面81bとを対向させた状態とし、ケース体31の第1端面31bに設けられた連結穴31b1に肘置き台80の端面81bに設けられた連結ピン81b1が挿し込まれるように肘置き台80を上腕支持台30に向けて押し付け(図中矢印A方向に向けて押付け)、連結穴31b1と連結ピン81b1とを係合させることで上腕支持台30に肘置き台80を固定する。一方、上腕支持台30の第2端部31Cに肘置き台80を取付ける場合には、ケース体31の第2端面31cと肘置き台80の端面81bとを対向させた状態とし、ケース体31の第2端面31cに設けられた連結穴31c1に肘置き台80の端面81bに設けられた連結ピン81b1が挿し込まれるように肘置き台80を上腕支持台30に向けて押し付け(図中矢印B方向に向けて押付け)、連結穴31c1と連結ピン81b1とを係合させることで上腕支持台30に肘置き台80を固定する。以上の如くの作業を選択的に行なうことにより、本実施の形態におけるカフ20は、上腕支持台30の第1端部31Bに肘置き台80が取付けられた状態と、上腕支持台30の第2端部31Cに肘置き台80が取付けられた状態との2状態を採ることになる。
図6は、本実施の形態における血圧計用カフにおいて選択的に採り得る上述の2状態を示す図である。より詳細には、図6(A)は、上腕支持台の第1端部に肘置き台が取付けられた状態においてカフを載置面に載置した状態を示す側面図であり、図6(B)は、上腕支持台の第2端部に肘置き台が取付けられた状態においてカフを載置面に載置した状態を示す側面図である。次に、この図6を参照して、本実施の形態における血圧計用カフにおいて選択的に採り得る2状態のそれぞれにおいてカフを載置面にどのように載置すべきかについて説明する。
図6(A)に示すように、上腕支持台30の第1端部31Bに肘置き台80が取付けられた状態においては、上腕支持台30の台座部32に設けられた第1被載置面33aがテーブル等の載置面300に当接した状態となるようにカフ20が配置される。この状態においては、上腕支持台30の第1端部31Bは上腕支持台30の第2端部31Cよりも下方に位置することになり、上腕支持台30の上腕支持面31aが傾斜した状態に維持されることになる。当該状態においては、上腕支持面31aに被験者の上腕が宛がわれることによって上腕支持台30にて上腕を安定的に支持することができる。
一方、図6(B)に示すように、上腕支持台30の第2端部31Cに肘置き台80が取付けられた状態においては、上腕支持台30の台座部32に設けられた第2被載置面34aがテーブル等の載置面300に当接した状態となるようにカフ20が配置される。この状態においては、上腕支持台30の第1端部31Bは上腕支持台30の第2端部31Cよりも上方に位置することになり、上腕支持台30の上腕支持面31aが傾斜した状態に維持されることになる。当該状態においては、上腕支持面31aに被験者の上腕が宛がわれることによって上腕支持台30にて上腕を安定的に支持することができる。
図7は、図6(A)に示す状態において左手の上腕に血圧計用カフを装着した状態を示す斜視図であり、図8は、図6(B)に示す状態において右手の上腕に血圧計用カフを装着した状態を示す斜視図である。次に、これら図7および図8を参照して、本実施の形態における血圧計用カフを左手の上腕および右手の上腕にそれぞれ装着する装着手順および装着後の状態について説明する。
左手の上腕にカフ20を装着する場合には、まず図6(A)において示したように、上腕支持台30の第1端部31Bに肘置き台80を取付け、この肘置き台80が第1端部31Bに取付けられた状態を維持しつつ、台座部32に設けられた第1被載置面33aがテーブル等の載置面300に当接配置されるように上腕支持台30を設置する。次に、図7に示すように、この状態において左手の上腕100を上腕支持台30の上腕支持面31aに宛がう。その際、肘置き台80の肘置き面81aに左手の肘101を載せ、上腕100が上腕支持面31aによって安定的に支持されるようにする。次に、被験者から見て左手の上腕100よりも外側に位置している腕帯40の他方端寄りの部分を右手で把持し、これを体の内側に向けて引っ張り出して上腕100に巻き付け、腕帯40に設けられた穴42を上腕支持台30に設けられたフック36(図1等参照)に引っ掛ける。その際、上腕支持台30の内部に設けられた巻取り機構によって腕帯40の余剰部分が巻き取られるため、腕帯40は、被験者の左手の上腕100にぴったりと巻き付けられることになる。
一方、右手の上腕にカフ20を装着する場合には、まず図6(B)において示したように、上腕支持台30の第2端部31Cに肘置き台80を取付け、この肘置き台80が第2端部31Cに取付けられた状態を維持しつつ、台座部32に設けられた第2被載置面34aがテーブル等の載置面300に当接配置されるように上腕支持台30を設置する。次に、図8に示すように、この状態において右手の上腕200を上腕支持台30の上腕支持面31aに宛がう。その際、肘置き台80の肘置き面81aに右手の肘201を載せ、上腕200が上腕支持面31aによって安定的に支持されるようにする。次に、被験者から見て右手の上腕200よりも外側に位置している腕帯40の他方端寄りの部分を左手で把持し、これを体の内側に向けて引っ張り出して上腕200に巻き付け、腕帯40に設けられた穴42を上腕支持台30に設けられたフック36(図1等参照)に引っ掛ける。その際、上腕支持台30の内部に設けられた巻取り機構によって腕帯40の余剰部分が巻き取られるため、腕帯40は、被験者の右手の上腕200にぴったりと巻き付けられることになる。
図9は、本実施の形態における血圧計の血圧値測定処理の流れを示すフローチャートである。次に、この図3を参照して、本実施の形態における血圧計における血圧値測定処理の流れについて説明する。このフローチャートに従うプログラムは、図2において示したメモリ部12に予め記憶されており、制御部11がメモリ部12からこのプログラムを読出して実行することにより、血圧値測定処理が実施される。
まず、図9に示すように、カフ20を左手の上腕100または右手の上腕200のいずれか(図7または図8参照)に装着した被験者が血圧計1Aの操作部16を操作して電源オンの命令を入力すると、電源部18から制御部11に対して電源としての電力が供給され、これにより制御部11が駆動し、血圧計1Aの初期化が行なわれる(ステップS101)。次に、制御部11は、血圧値測定のために空気袋45の加圧を開始する(ステップS102)。具体的には、制御部11は、加圧ポンプ61を駆動してカフ圧を上昇させ、所定のカフ圧となるように空気袋45の加圧を行なう。
次に、制御部11は、血圧値測定のために空気袋45の微速減圧を開始する(ステップS103)。具体的には、制御部11は、加圧ポンプ61の駆動を停止し、その後排気弁62の開放量を制御しつつ徐々に排気弁62を開放させる。また、その際、制御部11は、圧力センサ63によって検出されるカフ圧の変動を取得する。
次に、制御部11は、微速減圧過程において得られたカフ圧の変動に基づいて血圧値を算出する(ステップS104)。つづいて、制御部11は、空気袋45を開放する(ステップS105)。具体的には、制御部11は、排気弁62を完全に開放し、空気袋45内の空気を外部へと排気させる。
次に、制御部11は、ステップS104において得られた血圧値をメモリ部12および表示部14に出力し、メモリ部12において当該血圧値が測定結果として記憶され(ステップS106)、表示部14において上記測定結果としての血圧値が表示される(ステップS107)。ここで、表示部14は、収縮期血圧値および拡張期血圧値をたとえば数値として表示する。これら血圧値の記録、表示後において血圧計1Aは待機状態をとり、被験者の操作部16による電源オフの命令の入力を待って電源としての電力の供給を停止する。
なお、以上において説明した測定方式は、空気袋の減圧時に脈波を検出して血圧値を算出するいわゆる減圧測定方式に基づいたものであるが、空気袋の加圧時に脈波を検出して血圧値を算出するいわゆる加圧測定方式を採用することも当然に可能である。
以上において説明した本実施の形態におけるカフ20にあっては、上腕支持台30に対する肘置き台80の取付け位置を変更することにより、左手の上腕100に適したカフ20の装着状態と、右手の上腕200に適したカフ20の装着状態とが実現されるように構成している。すなわち、上腕支持台30を上腕支持面31aが延びる方向の中央部を基準に左右対称な形状とし、上腕支持台30の下面に第1被載置面33aおよび第2被載置面34aをそれぞれ設けて、いずれの被載置面がテーブル等の載置面300に当接配置された場合にも上腕支持面31aの傾斜状態が維持されるように構成している。このように構成することにより、左右両方の上腕100,200に対しても容易に装着が可能なカフ20としている。
ここで、上記構成のカフ20においては、上腕支持面31aが設けられた上腕支持台30の上面の一方の側端部から腕帯40が引き出された構成であるため、カフ20の装着の際の腕帯40の引き出し方向は、体の外側から内側に向けてが好都合である。仮に、当該腕帯40の引き出し方向が体の内側から外側に向けて行なわれるように構成した場合には、腕帯40に設けられた穴42を上腕支持台30の他方の側面に設けられたフック36に係止させる際の作業が非常に行ないづらくなる。これは、カフ20が装着されない方の手でカフ20が装着される方の腕のさらに外側において上記係止作業が必要になるためであり、体を大きく捻ることが必要になるためである。しかしながら、本実施の形態におけるカフ20にあっては、左手の上腕100にカフ20を装着する場合および右手の上腕200にカフ20を装着する場合のいずれにおいても、腕帯引き出し口31dが設けられた上腕支持台30の上面側端部が体の外側に配置されることになるため、カフ20の装着の際の腕帯40の引き出し方向は、体の外側から内側に向けての方向となり、非常に使い勝手のよいものとなっている。
また、本実施の形態におけるカフ20にあっては、肘置き台80の上腕支持台30に対する取付けをこれらに設けられた連結ピン81b1および連結穴31b1,31c1によって実現している。このように構成すれば、非常に簡便に肘置き台80の上腕支持台30に対する取付け位置を変更することが可能であり、非常に使い勝手のよいカフとすることができる。ただし、この連結ピン81b1および連結穴31b1,31c1を用いた取付構造以外にも、面ファスナを用いた取付構造や磁石を用いた取付構造など、その取付構造には、種々のものが利用可能であることは言うまでもない。
したがって、上述の如くのカフ20およびこれを具備した血圧計1Aとすることにより、左右いずれの上腕にカフを装着した場合にもその利便性が損なわれることのない使い勝手のよい血圧計用カフおよびこれを備えた血圧計とすることができ、当該血圧計用カフおよびこれを備えた血圧計を利用して血圧値を測定することにより、測定中において上腕が安定的に支持されることによって高精度に血圧値を測定することが可能になる。
ここで、図6を参照して、テーブル等の載置面300と上腕支持面31aとが成す角θ1,θ2は、左手の上腕100にカフ20が装着される場合および右手の上腕200にカフ20が装着される場合のいずれにおいても30°以上60°以下であることが好ましい。したがって、本実施の形態におけるカフ20にあっては、第1被載置面33aと第2被載置面34aとの内角θ3が、好適には60°以上120°以下とされる。このように構成すれば、上述したテーブル等の載置面300と上腕支持面31aとが成す角θ1,θ2とが必ず30°以上60°以下の範囲内となり、左手の上腕100にカフ20が装着される場合および右手の上腕200にカフ20が装着される場合のいずれにおいても正しい測定姿勢が実現されるようになる。
(実施の形態2)
図10および図11は、本発明の実施の形態2における血圧計の外観構造を示す斜視図であり、図12は、本実施の形態における血圧計の機能ブロックの構成を示すブロック図である。以下においては、これら図10ないし図12を参照して本発明の実施の形態2における血圧計に本発明を適用した具体例について説明する。なお、上述の実施の形態1における血圧計と同様の部分および対応する部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図10および図11に示すように、本実施の形態における血圧計1Bは、カフと本体とが一体化された構成を有しており、支持台本体としての本体90と、肘置き台80とを備えている。ここで、肘置き台80の構成は、上述の実施の形態1におけるそれと同様である。本体90は、台座部32と、台座部32の上部に設けられた上腕挿入部38とを主として有している。台座部32は、第1被載置面33aと第2被載置面34aとを含む多角柱形状の外形を有しており、その一方の側面に操作部16が設けられている。上腕挿入部38は、中空開口部39を有する略円筒状の外形を有しており、その一方の側面に表示部14が設けられている。上腕挿入部38に設けられた中空開口部39の内周面には、流体袋としての空気袋45(図12参照)を内包する腕帯が配置されている。腕帯が配置された上記内周面のうちの底部部分は、上腕が宛がわれた場合に上腕を支持することとなる上腕支持面に相当する。なお、操作部16が設けられた台座部32の一方の側面と、表示部14が設けられた上腕挿入部38の一方の側面とは、本体90の同じ側に位置している。
図12に示すように、本実施の形態における血圧計1Bにおいては、本体90に、制御部11、メモリ部12、表示部14、操作部16、電源部18、空気袋45、加圧ポンプ61、排気弁62、圧力センサ63、加圧ポンプ駆動回路64、排気弁駆動回路65、増幅器66およびA/D変換回路67のすべての構成要素が設けられている。これら個々の構成要素の機能は、上述の実施の形態1におけるそれと同様である。なお、本実施の形態における血圧計1Bにあっては、腕帯を巻取り可能にする上述の実施の形態1の如くの巻取り機構は設けられていない。これに代え、本実施の形態における血圧計1Bは公知の自動巻付け機構を具備しているが、その詳細な説明はここでは割愛する。
図10および図11に示すように、本体90の上腕支持面が延びる方向の一方の端部である第1端部31Bには、第1端面31bが位置しており、第1端面31bの所定位置には、肘置き台80の連結ピンが挿し込み可能な連結穴31b1が設けられている。一方、本体90の上腕支持面が延びる方向の他方の端部である第2端部31Cには、第2端面31cが位置しており、第2端面31cの所定位置には、肘置き台80の連結ピンが挿し込み可能な連結穴31c1が設けられている。
図10および図11に示すように、本実施の形態における血圧計1Bにおいても、上述の実施の形態1における血圧計1Aの場合と同様に、本体90に対して肘置き台80を着脱自在に取付けることが可能である。ここで、肘置き台80は、本体90の上腕支持面が延びる方向に位置する第1端部31Bおよび第2端部31Cのいずれにも取付けが可能である。
図10に示すように、本体90の第1端部31Bに肘置き台80が取付けられた状態においては、本体90の台座部32に設けられた第1被載置面33aがテーブル等の載置面に当接した状態となるようにカフ20が配置される。この状態においては、本体90の第1端部31Bは本体90の第2端部31Cよりも下方に位置することになり、本体90の上腕支持面が傾斜した状態に維持されることになる。当該状態においては、上腕支持面に被験者の上腕が宛がわれることによって本体90にて上腕を安定的に支持することができる。
一方、図11に示すように、本体90の第2端部31Cに肘置き台80が取付けられた状態においては、本体90の台座部32に設けられた第2被載置面34aがテーブル等の載置面に当接した状態となるようにカフ20が配置される。この状態においては、本体90の第1端部31Bは本体90の第2端部31Cよりも上方に位置することになり、本体90の上腕支持面が傾斜した状態に維持されることになる。当該状態においては、上腕支持面に被験者の上腕が宛がわれることによって本体90にて上腕を安定的に支持することができる。
このように、本実施の形態の如くの血圧計1Bとした場合にも、上述の実施の形態1における血圧計1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、左右いずれの上腕にカフを装着した場合にもその利便性が損なわれることのない使い勝手のよい血圧計とすることができ、当該血圧計を利用して血圧値を測定することにより、測定中において上腕が安定的に支持されることによって高精度に血圧値を測定することが可能になる。
なお、図10および図11に示すように、本実施の形態における血圧計1Bにおいては、本体90の側面から突出して設けられた表示部14が、本体90に対して図中矢印C方向に示す方向に回転可能に取付けられていることが好ましい。このように構成すれば、左手の上腕100にカフ20が装着される場合および右手の上腕200にカフ20が装着される場合のいずれにおいても被験者が容易に表示部14を視認することができる。なお、そのように構成した場合には、表示部14に加速度センサ等を取付けて表示部14の回転位置を検出し、これに基づいて表示部14における表示を上限反転させるように構成することが好ましい。
以上において説明した本発明の実施の形態1および2における血圧計または血圧計用カフにあっては、上腕支持台または本体に対して肘置き部が着脱自在に取付けられるように構成した場合を例示して説明を行なったが、この肘置き部は必ずしも本発明の目的を達成する上での必須の構成要素ではなく、任意の構成要素である。
また、上述の本発明の実施の形態1および2における血圧計または血圧計用カフにあっては、上腕支持台または本体に設けられたスリップ防止部材の主面にて第1被載置面および第2被載置面が構成されることとした場合を例示して説明を行なったが、このスリップ防止部材も必ずしも必須の構成要素ではない。スリップ防止部材を上腕支持台または本体に設けない場合には、上腕支持台または本体自体の主面にて第1被載置面および第2被載置面が構成されることになる。
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1A,1B 血圧計、10 本体、11 制御部、12 メモリ部、14 表示部、16 操作部、18 電源部、20 カフ、30 上腕支持台、31 ケース体、31B 第1端部、31C 第2端部、31a 上腕支持面、31b 第1端面、31b1 連結穴、31c 第2端面、31c1 連結穴、31d 腕帯引き出し口、32 台座部、33,34 スリップ防止部材、33a 第1被載置面、34a 第2被載置面、35 ガイド部、35a 引っ掛け部、36 フック、38 上腕挿入部、39 中空開口部、40 腕帯、41 袋状カバー、42 穴、45 空気袋、50 巻取りローラ、60 エア系コンポーネント、61 加圧ポンプ、62 排気弁、63 圧力センサ、64 加圧ポンプ駆動回路、65 排気弁駆動回路、66 増幅器、67 A/D変換回路、70 エア管、80 肘置き台、81a 肘置き面、81b 端面、81b1 連結ピン、82 スリップ防止部材、90 本体、100 左手の上腕、101 左手の肘、200 右手の上腕、201 右手の肘、300 載置面。