図1は、本発明の実施形態に係る転写システム1の概略構成を示す平面図である。
以下、説明の便宜のために、水平方向の一方向をX軸方向とし、水平方向の他の一方向であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とし、X軸方向に対して15°傾いていると共にY軸方向に対して直交している方向をU軸方向(図4、図12等参照)とし、U軸方向とY軸方向とに直交する方向をW方向とする(図4、図12等参照)。
転写システム1は、クリーンルーム内に設置されて、複数枚の被成型品Wに毎葉で、微細な転写パターンを転写するものであり、転写装置3と、微細な転写パターンが転写される前の被成型品(被転写素材)Wと微細な転写パターンが転写された被成型品Wとを格納する被成型品ストッカ5と、型Mと被成型品Wとを仮組み立てしたり分離したりする仮組立・分離ユニット7と、被成型品ストッカ5と仮組立・分離ユニット7との間で被成型品Wを搬送する被成型品搬送手段9と、仮組立・分離ユニット7と転写装置3との間で、仮組立された型Mと被成型品W(仮組立体TA)とを搬送する仮組立体搬送手段11とを備えて構成されている。
ここで、転写システム1(転写装置3)で転写がされる被成型品W等について、例を掲げて詳しく説明する。
図2、図3は、被成型品W2(被成型品W)の転写工程を含むHDD基板の製造工程を示す図である。
被成型品W2は、たとえば、トラックビットを有するディスクリートメディアHDD基板のもとになるものである。図2(a)には、転写前の被成型品W2等が示されている。図2(b)には、転写をすべく各型MA、MB(各型M)で被成型品W2を挟み込んでいるときの、被成型品W2等が示されている。図3(c)には、転写後の被成型品W2等が示されている。
転写前の被成型品W2は、図2(a)に示すように、たとえば、直径2.5インチの平板状のガラスディスク基板W1の厚さ方向の両面に、厚さ約30nmのパラジウム(Pd)下地層と厚さ約50nmの垂直磁気記録材料コバルト・クロム白金(CoCrPt)を堆積して磁性層W3A、W3Bを形成し、さらに各磁性層W3A、W3B上に厚さ約50nmのSiO2膜W5A、W5Bを堆積してあり、各SiO2膜W5A、W5Bの上に各レジスト膜W7A、W7Bをたとえばスピンコートにより塗布してある。
詳しくは後述するが、転写装置3を用いて、図2(a)に示す転写前の被成型品W2に、型Mに形成されている微細な転写パターン(微細な凹凸で形成されている転写パターン)が転写される(図2(b)参照)。
転写後の被成型品W2は、図3(c)に示すように、各レジスト膜W7A、W7Bの表面に各型MA、MBの微細な凹凸パターンが転写されている。なお、レジスト膜W7A、W7Bとして、紫外線硬化樹脂(UV樹脂)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を採用することができ、図2(a)に示す状態では、レジスト膜W7A、W7Bは硬化しておらず、図2(b)に示す転写の際に硬化するようになっている。
続いて、図3(d)に示すように、各磁性層W3A、W3Bをパターニングする。具体的には、微細な凹凸を転写した各レジスト膜W7A、W7Bをマスクとして、RIE(Reactive Ion Etching)により各磁性層W3A、W3Bの表面に達するまでSiO2膜W5A、W5BをエッチングしてSiO2膜にパターンを転写し、さらに、このパターンを利用して磁性層W3A、W3Bをエッチングする。このようにして形成された溝領域が分離領域となる。また、パターニングされた各磁性層W3A、W3Bが記録トラック帯を形成する。
続いて、図3(e)に示したように、基板全面に厚さ約50nmのSiO2膜W9A、W9Bを成膜して各磁性層W3A、W3Bの溝部分を埋め込んで分離領域を形成する。その後、SiO2膜W9A、W9Bの表面をケミカルメカニカルポリッシング(CMP)により研磨して平坦化する。そして、全面に保護膜W11A、W11Bとしてダイアモンドライクカーボンを成膜することにより、図3(f)に表したように磁気記録媒体(HDD基板)WPが得られる。
なお、転写システム1(転写装置3)は、図2、図3に示す製造工程のうちで、図2(a)、図2(b)、図3(c)の工程を担当するものである。また、図2や図3では明らかでないが、被成型品W、各型MBは、中央部に円形状の貫通孔を有する薄い円板状に形成されている。
次に、転写装置3について詳しく説明する。
図4は、転写装置3の概略構成を示す正面図であり、図5は、図4におけるV矢視図であり、図6は、図4におけるVI矢視図であり、図7は、図4におけるVII矢視図であり、図8は、図4におけるVIII−VIII矢視図であり、図9は、図5のIX部の拡大図である。
図10は、図4におけるX矢視図(拡大図)であり、図11は、図10の側面図であり、図12は、転写装置3の設置体13と押圧体15とを、実際の状態と同じ斜めに描いて示した図である。なお、図9等で示す設置体13には、型M(MA,MB)と被成型品Wとで構成された仮組立体TAが設置された治具17が設置されている。
転写装置3は、たとえば、円形な平板状の被成型品Wの厚さ方向の一方の面に、円形な平板状の第1の型MAの厚さ方向の一方の面に形成されている微細な転写パターンを転写し、円形な平板状の被成型品Wの厚さ方向の他方の面に、円形な平板状の第2の型MBの厚さ方向の一方の面に形成されている微細な転写パターンを転写する装置であり、治具17が着脱自在に設置される設置体13と、押圧体15とを備えて構成されている。
治具17は、図9で示すように、本体部材19と支持体構成部材21とを備えて一体的に構成されている。これにより、治具17は、所定の厚さを備えた円板状の基端部23と、所定の厚さを備えた円板状の先端部25と、円柱状の支持体27とで構成されている。基端部23、先端部25、支持体27は同軸で配置されており、基端部23、先端部25、支持体27の順につながっている。基端部23の外径は先端部25の外径よりも大きくなっており、支持体27の外径は先端部25の外径よりも小さくなっている。
基端部23側の先端部25の部位の外周には、リング状の凹部(被把持部)29が形成されており、仮組立体搬送手段11で仮組立体TAが設置されている治具17を搬送するときに、仮組立体搬送手段11のハンド31が被把持部29に係合し(図13、図14、図29参照)、仮組立体TAが設置されている治具17を把持するようになっている。なお、治具17を、本体部材19と支持体構成部材21とのように別体で構成するこなく、一体で構成してあってもよい。
仮組立体TAは、型MA、被成型品W、型MBが、これらの厚さ方向で、この順で重なっているものである。より詳しくは、仮組立体TAでは、微細な転写パターンが形成されている型MAの厚さ方向の一方の面と、微細な転写パターンが転写される被成型品Wの厚さ方向の一方の面とが、お互いに面接触して重なっており、微細な転写パターンが形成されている型MBの厚さ方向の一方の面と、微細な転写パターンが転写される被成型品Wの厚さ方向の他方の面とが、お互いに面接触して重なっている。そして、仮組立体TAは、たとえば、円形な平板状に形成されている(図9、図12等参照)。
治具17には、所定の大きさの円形状の設置面33が形成されている。設置面33は、先端部25の平面(厚さ方向の端面)で構成されている。治具17に仮組立体TAを設置するときに、仮組立体TAの厚さ方向の一方の面が設置面33に面接触するようになっている。より詳しく説明すると、治具17に仮組立体TAを設置する場合、仮組立体TAにおける型MBの背面(型MBの厚さ方向の、微細な転写パターンが形成されていない他方の面)の全面(微細な転写パターンが形成されている面に対応した型MBの背面の全面)が面接触するようになっている。
また、設置面33には、仮組立体TAを保持するための真空吸着等に使用する溝や孔が一切設けられておらず、ごく僅かな加工誤差等を無視すれば、設置面33は完全に平らな平面になっている。
支持体27は、すでに理解されるように、設置面33の中央部から突出して治具17に設けられている。支持体27は、仮組立体TAが治具17に設置されるとき(設置された後も含む)に、また、仮組立体TAが設置された治具17が設置体13に設置されるとき(設置された後も含む)に、仮組立体TAの一部と当接して仮組立体TAが重力で落下することを防止するためのものである。また、支持体27は、仮組立体TAが治具17に設置されたとき等に、設置面33の展開方向(たとえば図9に示すY軸方向やW軸方向)で、設置面33に対する仮組立体TAの位置決めをするためのものである。
さらに説明すると、仮組立体TAの中央(各型MA、MB、被成型品W)には、前述したように、円形状の貫通孔が設けられており、仮組立体TAを設置面33に面接触させて設置するときに、仮組立体TAの貫通孔に支持体27が入り込んで嵌合し、仮組立体TAの落下防止と位置決めとがされるようになっている。仮組立・分離ユニット7で仮組立体TAが設置された治具17が、仮組立体搬送手段11で搬送されて転写装置3の設置体13に設置されるときにも、仮組立体TAの落下防止と位置決めに維持とがされるようになっている。
仮組立体TAが設置された治具17を搬送して設置体13に設置するときにおける治具17の設置面33の傾斜角度は、支持体27と嵌合して位置決め設置されている仮組立体TAが、治具17から落下せずまた位置ずれしないような必要最小限の角度であることが望ましい。すなわち、たとえば、治具17の設置面(治具17に設置された仮組立体TAの他方の面である型MAの背面が面接触する面)33が上方を臨んでいると共に、設置面33の法線ベクトルの向きが水平方向に対して、15°程度の角度で交差している(U軸方向に延びている)ことが望ましい。なお、支持体27を設置面33の中央に設けることに代えてもしくは加えて、複数の支持体(突起)を設置面33の下方の周辺に設け、これらの突起に仮組立体TAの側面(外周部)を当接させて、仮組立体TAの落下防止と位置決めとをする構成であってもよい。
設置体13は、基端部側に円板状の鍔部35を備えた円柱状に形成されている。そして、鍔部35が転写装置3の移動体37に支持されている。設置体13の先端部には、円柱状の凹部39が設けられており、この凹部39の側面と底面(Y軸方向やW軸方向に展開している平面;U軸方向に対して直交している底面)とに、治具17の基端部23が嵌合し(嵌り込み)、クランパ41(図10、図11参照)で治具17がクランプされることによって、設置体13の所定の位置で治具17が一体的に設置されるようになっている。このようにして、設置体13に設置された治具17の設置面33は、斜め上方を向いている(上方を臨んで斜めに傾いている)。たとえば、治具17の設置面33が上方を向いてしかも設置面33の法線ベクトルの向きが水平方向に対して所定の角度(45°以下の角度;好ましくは5°〜40°の角度;より好ましくは約15°の角度)で交差している。
押圧体15は、図9で示すように、基端部側に円板状の鍔部43を備えた円柱状に形成されている。押圧体15の先端には、仮組立体TAの他方の面(型MBの背面)が面接触する平面である押圧面45が設けられている。押圧面45は、設置体13に設置されている治具17の設置面33と平行で対向している所定の大きさの平面になっている。この平面には、型MBを真空吸着等するための溝や孔が一切設けられておらず、加工誤差等を無視すれば完全に平らな平面になっている。
そして、治具17を介して設置体13に設置されている仮組立体TAを設置体13と押圧体15とで協働して挟み込んで押圧するために(図15参照)、押圧体15に接近・離反する方向(U軸方向)で、設置体13が押圧体15に対して相対的に移動位置決め自在になっている。なお、すでに理解されるように、設置体13と押圧体15とで仮組立体TAを挟み込んで押圧するときには、仮組立体TAの厚さ方向の一方の面(型MAの背面)が設置面33に面接触しており、仮組立体TAの厚さ方向の他方の面(型MBの背面)が押圧面45に面接触している。また、押圧体15の押圧面45の中央には、上記押圧をするときに支持体27が入り込む孔47が設けられている。支持体27の外径は、孔47の内径よりも僅かに小さくなっている。
押圧体15には、空気経路(貫通孔)49が設けられており、空気経路49の一端部は、孔47の底部に通じている。そして、空気経路49の他端部は、図示しないフィルタと図示しない真空ポンプ等の負圧発生装置とがつながっており、設置体13と押圧体15とで仮組立体TAを挟み込んで押圧するときに、孔47内の空気を吸引して、孔47内にごく僅かに存在する微粒子を除去するようになっている。また、同様にして、設置体13にも、空気経路(貫通孔)51が設けられており、治具17を設置体13に設置するときに、凹部39内の空気を吸引して、凹部39の側面と治具17の基端部23の側面との接触によってごく僅か発生する微粒子、もしくは、もともと凹部39内にごく僅か存在する微粒子を除去するようになっている。
設置体13は、ロードセル53を介して移動体37に支持されている。そして、治具17に設置されている仮組立体TAを、設置体13と押圧体15とで協働して挟み込んで押圧するときの押圧力をロードセル53で測定し、制御装置55の制御の下、ロードセル53の検出結果の応じて、押圧体15(設置体13)による押圧力が予め定められている所定の押圧力になるような制御をするようになっている。
また、治具17が斜めに設置されていることにより、仮組立体TAが設置された治具17が設置体13に設置されたときに、仮組立体TAと治具17と設置体13との重量による回転モーメントで、ロードセル53の起歪体(起歪部)58に歪が発生するが、転写装置3には、上記歪を低減するための歪低減手段56が設けられている。
例を掲げて詳しく説明すると、ロードセル53は、たとえば、中央部に円形状の貫通孔54を備え所定の厚さで円板状に形成された本体部57を備えて構成されており、本体部57の径方向の中間部には円環状の凹部59が形成されている。この凹部59が形成されていることにより、本体部57は、円環状の中央部61と、この中央部61の外側に位置している円環状の起歪部58と、この起歪部58の外側に位置している円環状の外周部63とに分かれている。
中央部61は、スペーサ66を介して設置体13に一体的に設けられており、外周部63は、移動体37に一体的に設けられている。起歪部58には、歪ゲージ(図示せず)が設けられている。そして、図9で右方向の力が設置体13にかかったときに、起歪部58に歪が発生し、設置体13と押圧体15とによる仮組立体TAの押圧力を測定することができるようになっている。
また、設置体13の基端部の中央には、円柱状のガイド部材65が一体的に設けられている。ガイド部材65は、たとえば、滑り対偶をなして円筒状のガイド部材支持体67に係合しており、円筒状のガイド部材支持体67に対して、ガイド部材65が、がたつきのほとんど無い状態で、U軸方向に移動可能になっている。すなわち、ガイド部材65の外径は、ガイド部材支持体67の内径に対して、ごく僅かに小さくなっている。円筒状のガイド部材支持体67は、詳しくは後述する移動体37に一体的に設けられている。これにより、仮組立体TAと治具17と設置体13との重量による回転モーメントを、ガイド部材65と円筒状のガイド部材支持体67とで受けることができ、ロードセル53の起歪部58に発生する歪を低減することができるようになっている。
なお、ガイド部材65、ガイド部材支持体67は、本体部57の中央に設けられている貫通孔54内に位置しており、ロードセル53、スペーサ65は、移動体37に形成されている凹部69内に位置している。また、円筒状のガイド部材支持体67として、ガイド部材65に対してころがり対偶をなすリニアガイドベアリングを採用してもよい。この場合、円筒状のガイド部材支持体67に係合しているガイド部材65に、径方向の与圧がかかっていることが望ましい。
また、転写装置3には、押圧体15の押圧面45の中央部を、設置体13に設置されている治具17側にごく僅かに凸に弾性変形させる押圧面変形手段71が設けられている。
具体的には、押圧体15は、この基端部が詳しくは後述する押圧体支持体74に一体的に設けられている。押圧体支持体74には、凹部73が設けられており、凹部73内には、ピエゾ素子75等で構成されているアクチュエータが設置されている。ピエゾ素子75は、制御装置55の制御の下、U軸方向に伸縮するようになっておる。ピエゾ素子75のU軸方向における一端部は、凹部73の底部に接触しており、ピエゾ素子75のU軸方向における他端部は、押圧体15の基端部の中央部に接触している。そして、ピエゾ素子75に電圧が印加されていない図9に示す状態では、ピエゾ素子75の長さ(U軸方向の長さ)と凹部73の深さとがお互いに一致しているが、ピエゾ素子75に電圧を印加すると、ピエゾ素子75が印加した電圧の値に応じて伸び、押圧面45の中央部が適宜凸状に弾性変形するようになっている。
ここで、転写装置3の他の部位について詳しく説明する。
転写装置3は、図4に示すように、ベース体77を備えて構成されている。U軸方向におけるベース体77の一端部には、スペーサ79を介して押圧体支持体74が一体的に設けられている。U軸方向におけるベース体77の他端部には、移動体支持体81が設けられている。U軸方向におけるベース体77の中間部には、移動体37が設けられている。押圧体支持体74と移動体支持体81とは、U軸方向に延びている4本のタイロッド83でお互いが連結されている。U軸方向から見ると、押圧体支持体74と移動体37と移動体支持体81とは、矩形状に形成されてお互いがほぼ重なっている。4本のタイロッド83は、押圧体支持体74や移動体支持体81の4隅の近傍に設けられており、移動体37の4隅の近傍には、各タイロッド83が通過している貫通孔85が設けられている。したがって、各タイロッド83と移動体37とは、お互いが非接触の状態になっている。
移動体支持体81は、スペーサ87とリニアガイドベアリング89とを介して、ベース体77に支持されている。したがって、被成型品Wへの転写の際の押圧力の印加や除去でタイロッド83がU軸方向に僅かに伸縮した場合、この伸縮に応じて、移動体支持体81が、ベース体77に対してU軸方向で移動するようになっている。
移動体37は、リニアガイドベアリング91を介してベース体77に支持されている。また、移動体37が、ボールねじ93を介して移動体支持体81に支持されている。そして、制御装置55の制御の下、サーボモータ95等のアクチュエータにより、移動体37が、移動体支持体81(ベース体77)に対して、U軸方向で移動位置決め自在になっている。
さらに説明すると、図5に示すように、U軸方向に延びているボールねじ93のねじ軸97の一端部が、移動体37に一体的に設けられている。なお、ボールねじ93は、移動体支持体81に設けられている貫通孔105の内部を通っている。U軸方向におけるねじ軸97の中間部には、ナット99が係合している。ナット99のU軸方向における他端部には、円筒状でカップ状に形成されている連結部材101が一体的に設けられている。U軸方向における連結部材101の他端部(ナット99とは反対側の端部)は、カップリング103を介してサーボモータ95の回転出力軸に連結されている。
連結部材101は、ベアリング107を介して、円筒状のベアリング支持体109に回転自在に支持されている。ベアリング支持体109は、移動体支持体81に一体的に設けられている。サーボモータ95の筐体は、サーボモータ支持体111を介して移動体支持体81に一体的に設けられている。
なお、押圧体支持体74と移動体37と移動体支持体81との中心軸(U軸方向に延びている中心軸)CL1と、設置体13の中心軸、設置体13に設置された治具17の中心軸、押圧体15の中心軸、ボールねじ93の中心軸とは、お互いが一致している。
ベース体77は、図4に示すように、W軸方向で軸CL1の下方に位置している。設置体13と押圧体15とで仮組立体TAを押圧するときに加わる力を考慮して、移動体支持体81のリニアガイドベアリング89は、W軸方向で軸CL1とほぼ一致するところに設けられている。一方、移動体37のリニアガイドベアリング91は、W軸方向で軸CL1の下方に設けられている。これにより、W軸方向から見ると、ベース体77やタイロッド83に邪魔されることなく設置体13が覗けるようになっており、仮組立体搬送手段11による、治具(仮組立体TAが設置されている治具)17の設置体13への設置(ローディング)や、設置体13からの搬出(アンローディング)が容易になっている。
また、ベース体77が、上面が傾いている架台113に載置され一体的に設けられていることにより、中心軸CL1がU軸方向で斜めに延びていると共に、設置体13に設置された治具17の設置面33が、前述したように、U軸に対して直交する方向に展開している。なお、図4や図12の参照符号GLは、水平な床面を示している。
クランパ41は、図8、図10、図11に示すように、設置体13の上方と、設置体13の下方とに設けられている。クランパ41は、軸部115と、この軸部115の先端部で軸部115に一体的に設けられた爪部117とを備えている。軸部115は、移動体37に対して、U軸方向で移動自在になっていると共にU軸に平行な軸を回動中心にして、たとえば、90°の角度回動するようになっている。
そして、治具17を設置する前においては、爪部117(軸部115)が、図10、図11に示すPS1の位置に退避している。仮組立体搬送手段11で治具17が設置体13に設置されたとき、軸部115(爪部117)が、PS2の位置まで延出し、爪部117が90°回動し(PS3の位置参照)、この後、軸部115(爪部117)が、設置体13側に引っ込み、爪部117が設置体13の鍔部35を押して、治具17のクランプがされるようになっている(PS4の位置参照)。
なお、上述した各クランパ41の動作は、制御装置55の制御の下、たとえば、図示しないロボットシリンダ等のアクチュエータでなされるようになっている。
次に、仮組立・分離ユニット7について説明する。
図16は、仮組立・分離ユニット7の正面図であり、図17は、仮組立・分離ユニット7の側面図であり、図18は、図16におけるXVIII矢視図であり、図19は、図16におけるXIX−XIX矢視図である。
仮組立・分離ユニット7は、各型MA,MBと微細な転写パターンが転写される前の被成型品Wとで仮組立体TAを生成し、また、各型MA,MBと微細な転写パターンが転写された被成型品Wとで構成されている仮組立体TAを各型MA,MBと被成型品Wとに分離する装置である。
仮組立・分離ユニット7は、治具17を保持自在な治具保持体119と、治具保持体119の上方に設けられ下面で型MAを保持自在である型保持体121とを備えて構成されており、治具保持体119が、型保持体121に接近離反する方向(Z軸方向)で型保持体121に対して相対的に移動位置決め自在になっている。
さらに、説明すると、仮組立・分離ユニット7は、ベース体123を備えており、治具保持体119が、リニアガイドベアリング125を介して、高さ方向におけるベース体123の中間部でベース体123に支持されている。また、治具保持体119は、サーボモータ126等のアクチュエータとボールねじ129とにより、制御装置55の制御の下、Z軸方向で移動位置決め自在になっている。
治具保持体119の上側の部位127は、前述した転写装置3の設置体13と同様に構成されており、この上方で位置決め設置された治具17をクランパ41によって保持することができるようになっている。
型保持体121は、ベース体123の上方でベース体123に一体的に設けられている。型保持体121の下側の部位131は、前述した転写装置3の押圧体15と同様に構成されている。ただし、下側の部位131には、型MBを真空吸着するための空気経路132が設けられており、下側の部位131の平面状の下面に型MBの背面を接触させ真空吸着で型MBを保持するようになっている。
そして、治具保持体119が下方に位置して型保持体121から離れており、治具保持体119が型MAを設置してある治具17を保持しており、型保持体121が型MBを保持している状態で、転写がされる前の被成型品Wを型MAの上に重ねて設置し、被成型品Wが型MBに接触するまで治具保持体119を上昇し、型保持体121による型MBの保持を解除し、治具保持体119を下方に移動することにより、治具17の上に、型MAと被成型品Wと型MBとが重なった仮組立体TAが設置されるようになっている。
なお、転写がされる前の被成型品Wは、被成型品搬送手段9によって、ストッカ5から搬送されてくるようになっている。また、型MAと被成型品Wと型MBとが重ねられて設置された治具17は、治具保持体119のクランパ41による保持が解除された後、仮組立体搬送手段11によって転写装置3まで搬送され転写装置3の設置体13に設置されるようになっている。
また、転写装置3で転写がされた被成型品Wを含む仮組立体TAが設置されている治具17が、仮組立体搬送手段11により搬出されて仮組立・分離ユニット7の治具保持体119に設置されるようになっている。この後、治具17をクランパ41で保持し、治具保持体119を上昇し型保持体121を型MBに接触させ、型MBを真空吸着で保持し、治具保持体119を下降することにより、型MBが組立体TAから分離されるようになっている。この状態では、型MAと転写がされた被成型品Wとは、治具17と共に治具保持体119に設置されている。この後、転写がされた被成型品Wが、被成型品搬送手段9によって、ストッカ5まで搬送されるようになっている。
次に、ストッカ5について説明する。
ストッカ5は、図1に示すように、転写がされる前の被成型品Wを格納するストッカ5Aと、転写がされた被成型品Wを格納するストッカ5Bとで構成されている。ストッカ5Aは、複数の円板状の被成型品Wを、これらの厚さ方向が上下方向になるようにして、また、各被成型品Wが上下方向で所定の間隔をあけて並ぶようにして、格納することができる構成である。ストッカ5Bもストッカ5Aと同様に構成されている。
次に、被成型品搬送手段9について詳しく説明する。
被成型品搬送手段9は、たとえば、1軸ロボットで構成された第1の被成型品搬送手段133と、1軸ロボットで構成された第2の被成型品搬送手段135と、円筒座標型ロボットで構成された第3の被成型品搬送手段137とを備えて構成されている。
1軸ロボット133は、転写前被成型品用のストッカ5Aと、円筒座標型ロボット137との間で転写前の被成型品Wを搬送するものであり、1軸ロボット135は、円筒座標型ロボット137と転写後被成型品用のストッカ5Bとの間で転写後の被成型品Wを搬送するものである。円筒座標型ロボット137は、各一軸ロボット133,135と、仮組立・分離ユニット7との間で、被成型品Wを搬送するものである。
図24(図24(a)は1軸ロボット133の平面図、図24(b)は1軸ロボット133の側面図)に示すように、第1の被成型品搬送手段(1軸ロボット)133は、筐体139と、筐体に対してY軸方向で移動位置決め自在な移動体141とを備えて構成されている。移動体141の先端部には、クランパ143が設けられており、このクランパ143によって、円板状の被成型品Wをクランプし、Y軸方向で搬送するようになっている。クランパ143によるクランプは、被成型品Wの円弧状の外周部を上下方向で把持してなされるようになっている。ストッカ5Aの筐体は、上下方向で移動位置決め自在になっており、ストッカ5Aに格納されている各成型品Wを1枚ずつ、1軸ロボット133で、搬出することができるようになっている。なお、第2の被成型品搬送手段(1軸ロボット)135(図25参照)も、移動体141の移動ストロークが異なっている点を除いて1軸ロボット133と同様に構成されている。
図26(円筒座標型ロボット137の側面図)や図27(円筒座標型ロボット137の平面図;図26におけるXXVII矢視図)に示すように、第3の被成型品搬送手段(円筒座標型ロボット)137は、筐体145と、水平方向に延びているアーム147とを備えて構成されている。アーム147は、Z軸方向に移動位置決め自在になっていると共に、筐体145の中心を通ってZ軸方向に延びて通っている軸CL2を中心にして、回動位置決め自在になっている。
軸CL2は、アーム147の長手方向の基端部側を通っている。アーム147の先端部側には、クランパ149が設けられており、このクランパ149によって、円板状の被成型品Wをクランプし搬送するようになっている。クランパ149によるクランプは、被成型品Wの円弧状の2箇所の外周部(対向している2箇所の外周部)を、対向している2つの部材151,153で、被成型品Wの径方向からごく小さい力で挟み込んでなされるようになっている。このように、被成型品Wを保持する部位が各1軸ロボット133,135とは異なるので、各1軸ロボット133,135と干渉することなく、円筒座標型ロボット137で被成型品Wを掴み替えて保持することができる。すなわち、たとえば、1軸ロボット133で保持している被成型品Wをこの保持をしている状態のまま、円筒座標型ロボット137で保持することができる。
なお、クランパ149を構成している各部材151,153の下端部には、被成型品Wの落下を防止するための各突出部155,157が形成されている(図2(a)、図28(c)参照)。そして、仮組立・分離ユニット7に被成型品Wを設置する際に、各部材151,153と型MAとの干渉を避けるために、型MAの外径が被成型品Wの外径よりに僅かに小さくなっている。
また、図1に示すように、円筒座標型ロボット137のクランパ149は、円弧状の軌跡を描いて移動するようになっている。そして、位置P1でロボット133から一枚の被成型品Wを受け取り、仮組立・分離ユニット7の位置P2まで搬送し、仮組立・分離ユニット7の位置P2で一枚の被成型品Wを受け取り、位置P3まで搬送し一軸ロボット135に渡すようになっている。
次に、仮組立体搬送手段11について詳しく説明する。
仮組立体搬送手段11は、仮組立・分離ユニット7と転写装置3との間で、治具17に設置されている仮組立体TAを搬送する(仮組立体TAを治具17ごと搬送する)ものであり、たとえば、多関節ロボット159で構成されている。多関節ロボット159のアームの先端部には、図29に示すように、バンド(クランパ)31が設けられており、このクランパ31で治具17を保持し搬送することができるようになっている。
次に、転写システム1の動作について説明する。
初期状態として、ストッカ5Aに転写前の被成型品Wが格納されており、各ロボット133,135,137,159や転写装置3が、被成型品Wや治具17を保持しておらず、仮組立・分離ユニット7が、型MAのみが設置されている治具17と、型MBとを保持しているものとする(図21参照)。
この初期状態において、制御装置55の制御の下、ロボット133で1枚の被成型品Wをストッカ5Aから取り出し、図1の位置P1まで搬送する。そして、位置P1の存在する被成型品Wを、ロボット137が保持して、仮組立・分離ユニット7の位置P2まで搬送する(図1、図22参照)。図22に示す状態から、ロボット137のアーム147を下降して(治具保持体119を上昇してもよい。)治具17に設置されている型MAに被成型品Wを接触させ、クランパ149による保持を解除して型MAの上に被成型品Wを載置する。この後、ロボット137のアーム147を回動等して、クランパ149(アーム147)を位置P2から退避させる。
続いて、治具保持体119を上昇させて、被成型品Wと型MBとを接触させ、治具17の上で下側から型MA,被成型品W,型MBの順に重なるようにし(図23参照)、この後、型保持体121による型MBの保持を解除し、治具保持体119を下降する。これにより、治具17に仮組立体TAが設置される(図20参照)。この状態では、仮組立された仮組立体TAの厚さ方向の一方の面(型MAの背面)が治具17の設置面33に面接触している。また、仮組立体TAの一部(中央の貫通孔)が治具17に設けられた支持体27に当接して(嵌合して)おり、治具17がある程度斜めに傾いても、仮組立体TAの重力による落下が防止されるようになっている。また、前記状態では、設置面33の展開方向で、設置面33に対する仮組立体TAの位置決め設置がされている。
続いて、位置P2に存在している治具(仮組立体TAが設置されている治具)17を、ロボット159のハンド31で把持し(図20参照)、ロボット159を用いて転写装置3まで搬送し、転写装置3に設置する。この後、ロボット159のアームを退避させる。なお、仮組立体TAが設置されている治具17の転写装置3への設置であるが、ロボット159で、治具17を、設置体13と押圧体15との間の所定の空間まで搬送し、この後に、設置体13(移動体37)を移動して、設置体13と治具17とを係合させ、治具17の設置体13への設置をするようなっている(図13、図14参照)。
続いて、設置体13への設置がされた治具17を、クランパ41によってクランプし、設置体13(移動体37)を移動し押圧体15と設置体13とで、仮組立体TAを挟み込んで転写を行う(図15参照)。
続いて、厚さ方向の両面に微細な転写パターンが転写された被成型品Wを含む仮組立体TAが設置されている治具(転写後治具)17を、ロボット159を用いて転写装置3から搬出し、仮組立・分離ユニット7まで搬送する(図20参照)。
この搬送後にロボット159のアームを退避させ、仮組立・分離ユニット7の治具保持体119に設置された治具17を、治具保持体119のクランパ41でクランプし、治具保持体119を上昇し、型MBと型保持体121とを接触させて型保持体121で型MBを保持し(図23参照)、治具保持体119を下降する(図21参照)。
続いて、被成型品(治具保持体119に設置されている治具17に設置されている型MAに載っている被成型品)Wを、ロボット137で位置P3まで搬送し、この搬送された被成型品Wをロボット135でストッカ5Bまで搬送し、ストッカ5Bに格納し、上記初期状態に戻る。
ところで、転写システム1で、転写装置3の設置体13に治具17を設置する場合には、ロボット159で治具を所定の位置に位置決めしておき、転写装置3の設置体13(移動体37)を移動しているが、設置体13を所定の位置に停止しておいて、ロボット159で治具17を移動するようにしてもよい。このように、構成した場合、設置体13(移動体37)に代えてまたは加えて、押圧体15をU軸方向で移動位置決めするように構成してもよい。
転写装置3によれば、治具17の設置面33が斜め上方を向いており、仮組立体TAが、斜め上方を向くようにして治具17と共に設置体13に設置されるので、真空吸着やクランパを設けることなく、簡素な構成で被成型品Wへの転写不良の発生を抑制することができる。
すなわち、押圧体15と、設置体13に設置された治具17に設置された仮組立体TAとの間の空間に、クリーン度がより高い空気をたとえば上方から下方に向かって流すことによって、仮組立体TAと押圧体15との間の空間の空気中に存在する微粒子の滞留を防止して微粒子を排除することがきると共に、真空吸着をすることなく治具17で仮組立体TAを保持しているので、治具17の設置面(仮組立体TAが接触する設置面)33や押圧体15の押圧面45をほぼ完全な平面にすることができ、転写がされる被成型品Wや型MA,MBの全面を均一な押圧力で押圧することができ、部分的に押圧力が不足することによる転写不良の発生を防止することができる。
また、クランパを用いて治具17で仮組立体TAを保持する必要がないので、装置の構成が簡素になると共に、クランパで部分的にクランプ力を加えることによって薄い板状の仮組立体TAに湾曲が生じるおそれが回避され、転写不良の発生を防止することができる。
また、仮組立体TAを治具17に設置する構成であるので、仮組立体(被成型品Wへの転写がされる前の仮組立体)TAを転写装置3に設置し、もしくは、仮組立体(被成型品Wへの転写がされた仮組立体)TAを転写装置3から搬出する際、ロボット159で治具17を把持すればよく、仮組立体TAの搬送がしやすくなる。
また、転写装置3によれば、仮組立体TAが設置された治具17が設置体13に設置されたときに、仮組立体TAと治具17と設置体13との重量による回転モーメントでロードセル53の起歪体58に発生する歪を低減することができるので、転写の際における押圧力を正しいものにすることができ、正確な転写をすることができる。
また、転写装置3によれば、押圧体15の押圧面45の中央部を設置体13側にごく僅かに凸に弾性変形させるピエゾ素子75を備えているので、転写の際における中抜け(被成型品Wの中央部で転写がされなかったり転写が不十分になる現象)を防止することができる。
ところで、転写システム1を、1台の転写装置3と、1つのストッカ5と、1台の仮組立・分離ユニット7と、1台のロボット133と、1台のロボット135と、1台のロボット159とで構成してあるが、上記各装置の工程作業時間(タクトタイム)に応じて、各装置の台数を変えてもよい。
たとえば、転写装置3のタクトタイムが他の装置に比べて半分程度であるならば、1台の転写装置3と、2台のストッカ5と、2台の仮組立・分離ユニット7と、2台の各ロボット133,135,137,159とでシステムを構成してもよい。
また、転写システム1では、被成型品Wを各型MA,MBで挟み、被成型品Wの厚さ方向の両面に転写をするようにしているが、各型MA,MBのうちの一方の型を用いないで、被成型品Wの厚さ方向の一方の面にのみ、微細な転写パターンを転写するようにしてもよい(図30参照)。この場合において、図32に示すように、たとえば、型MBを押圧体15で真空吸着により保持し続ける構成であってもよい。すなわち、治具17と被成型品Wのみをロボット159で搬送する構成であってもよい。
さらに、転写システム1で、被成型品Wを各型MA,MBで挟み、被成型品Wの厚さ方向の両面に転写をするようにしている場合において、図31で示すように、たとえば、型MBを押圧体15で真空吸着により保持し続ける構成であってもよい。すなわち、治具17と被成型品Wと型MAのみをロボット159で搬送する構成であってもよい。
また、転写システム1において、治具17を削除した構成であってもよい。
すなわち、転写装置を、斜め上方を向いている所定の大きさの平面であって、前記型と前記被成型品とが重なっている仮組立体を設置するときに前記仮組立体の一方の面が面接触する平面である設置面を備えた設置体と、前記仮組立体を前記設置面に面接触させて設置するときに、前記仮組立体の一部と当接して、前記仮組立体が重力で落下することを防止する支持体と、前記設置体の設置面と平行で対向している所定の大きさの平面であって、前記仮組立体の他方の面が面接触する平面である押圧面を備え、前記設置体に設置されている仮組立体を前記設置体と協働して挟み込んで押圧する押圧体とを有する転写装置としてもよい。