JP5240397B2 - 燃料性状検出装置の異常検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料性状検出装置の異常検出装置に関する。
内燃機関の燃費やエミッションなどの性能を優れたものとするためには、エンジン制御パラメータ(例えば、燃料噴射量、空燃比、点火時期、燃料噴射時期、EGR率など)の値を、燃料の性状に応じて、適切な値に補正する必要がある。そこで、燃料性状に応じて内燃機関を最適に制御することを可能とするべく、燃料性状を検出するための各種の装置が従来より提案されている。
車載式故障診断システム(OBDシステム)を義務付ける法規に適合するためには、上記燃料性状検出装置が正常に動作しているかどうかを判定し、異常が生じた場合にはそれを迅速に検出することが求められる場合がある。
日本実開平2−112949号公報には、アルコール混合燃料のアルコール濃度を検出するセンサにより検出される濃度の変化量が所定値以上のときに警戒信号を出力し、警戒信号が出された場合には空燃比の変化を所定時間監視し、空燃比の偏りが検出された場合にはアルコール濃度センサを異常と判定する技術が開示されている。
日本実開平2−112949号公報 日本特開2008−274825号公報 日本特開2007−248118号公報 日本特開平10−266858号公報
しかしながら、上記従来の技術では、燃料性状に変化がなく、同じ燃料が供給され続けている場合には、燃料性状センサの検出値に変化が現れないので、センサの故障を検出することができない。また、センサ自体が故障していなくても、センサの近傍に異物が詰まるなどして燃料の流れが乱された場合には、センサの検出値が変化することがある。そのような場合に、燃料性状センサの故障であると誤判定するおそれがある。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、燃料性状検出装置の異常の有無を正確に検出することのできる異常検出装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料性状検出装置の異常検出装置であって、
内燃機関に燃料を供給する燃料通路に配置されたセンサ部を有し、前記燃料通路を通る燃料の性状を検出する燃料性状検出装置と、
前記センサ部近傍の燃料温度を検出する温度検出手段と、
前記センサ部近傍の燃料温度を上昇させることのできるヒータと、
前記ヒータが作動したときに前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記燃料性状検出装置の異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記異常判定手段は、前記センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定する燃料流れ異常判定手段と、前記燃料性状検出装置自体の故障の有無を判定する故障判定手段とを含み、前記燃料流れ異常判定手段によって前記センサ部近傍の燃料流れに異常がないと判定された場合に、前記故障判定手段による判定を実行することを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記異常判定手段は、前記センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定する燃料流れ異常判定手段を含み、
前記燃料流れ異常判定手段は、
前記燃料通路を通る燃料流量を取得する流量取得手段と、
前記ヒータによるエネルギー投入量を取得するエネルギー投入量取得手段と、
前記エネルギー投入量と前記燃料流量とに基づいて、前記温度検出手段が検出すると推定される温度を算出する温度推定手段と、
前記温度推定手段により算出された推定温度と、前記温度検出手段により実際に検出された温度とを比較することにより、前記センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定する手段と、
を含むことを特徴とする。
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、
前記燃料流れ異常判定手段の判定の実行に先立って前記燃料通路を通る燃料流量を増加させる制御を行う流量増加手段を備えることを特徴とする。
また、第5の発明は、第2または第3の発明において、
前記燃料通路を通る燃料流量が所定値より低い場合に、前記燃料流れ異常判定手段による判定の実行を回避させる回避手段を備えることを特徴とする。
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、
前記異常判定手段は、前記燃料性状検出装置自体の故障の有無を判定する故障判定手段を含み、
前記センサ部は、温度依存特性を有する値を検出するものであり、
前記燃料性状検出装置は、前記センサ部により検出された値に対し、前記温度検出手段により検出された燃料温度に基づく補正処理を施すことによって燃料性状値を算出する温度補正手段を含み、
前記故障判定手段は、前記ヒータが作動したときに前記燃料温度が異なる複数の点において前記補正処理が施された燃料性状値を取得し、それら各点の燃料性状値間の誤差に基づいて、前記燃料性状検出装置の故障の有無を判定することを特徴とする。
また、第7の発明は、第6の発明において、
前記センサ部は、前記内燃機関の各気筒の燃料インジェクタに燃料を分配する燃料分配通路またはその近傍に配置されており、
前記ヒータは、前記燃料分配通路内の燃料を加熱可能であることを特徴とする。
また、第8の発明は、第7の発明において、
前記故障判定手段は、前記内燃機関の冷間始動時に前記ヒータが作動される機会を利用して前記判定を実行することを特徴とする。
また、第9の発明は、第7または第8の発明において、
前記内燃機関の冷間始動時に、前記温度検出手段により検出された燃料温度に基づいて前記ヒータへの通電を制御する手段を備えることを特徴とする。
第1の発明によれば、燃料性状検出装置のセンサ部近傍の燃料温度をヒータにより上昇させ、そのときのセンサ部近傍の温度を検出することにより、燃料性状検出装置の異常の有無を迅速かつ正確に検出することができる。
第2の発明によれば、センサ部近傍の燃料流れに異常があるのか、燃料性状検出装置自体に故障があるのかを正確に区別して検出することができる。
第3の発明によれば、ヒータによるエネルギー投入量と燃料通路の燃料流量とに基づいて推定された温度と、実際に検出された温度とを比較することにより、センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定することができる。これにより、センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を、簡単な方法で正確に検出することができる。
第4の発明によれば、燃料通路の燃料流量が高いときにセンサ部近傍の燃料流れの異常検出制御を実行することができるので、検出精度を向上することができる。
第5の発明によれば、燃料通路の燃料流量が高いときにセンサ部近傍の燃料流れの異常検出制御を実行することができるので、検出精度を向上することができる。
第6の発明によれば、燃料性状検出装置自体の故障の有無を迅速かつ正確に検出することができる。
第7の発明によれば、燃料分配通路内の燃料を加熱するためのヒータを用いて燃料性状検出装置の異常検出を行うことができるので、燃料性状検出装置に専用のヒータを設ける必要がない。このため、構造を簡素化し、コストを低減することができる。
第8の発明によれば、故障判定手段は、内燃機関の冷間始動時に燃料分配通路内の燃料を加熱するヒータが作動される機会を利用して燃料性状検出装置の故障検出を実行することができる。このため、燃料性状検出装置の故障検出のためだけにヒータを作動させる必要がないので、エネルギーロスを抑制することができる。
第9の発明によれば、燃料分配通路内の燃料を加熱するヒータへの通電を、検出された燃料温度に基づいて制御することができる。このため、冷間始動時に内燃機関に供給される燃料の温度を必要十分な範囲で上昇させることができるので、燃料の気化不良を確実に防止しつつ、エネルギーロスを抑制することができる。
本発明の実施の形態1の装置構成を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態1の装置構成の他の例を模式的に示す図である。 エタノール含有燃料のエタノール濃度、温度および静電容量の関係を示す図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 電極部推定温度を算出するためのマップである。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態2の装置構成を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態2の装置構成の他の例を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の装置構成を模式的に示す図である。本実施形態の装置は、バイオマスに由来する成分(本実施形態では、エタノールとする)を含有した燃料が使用される自動車に搭載され、その含有される成分の濃度を検出する機能を有するものである。
図1に示すように、本実施形態の装置は、電極10,12と、温度センサ14と、ヒータ18と、ECU(Electronic Control Unit)50とを備えている。電極10,12および温度センサ14は、それぞれ、ECU50と電気的に接続されている。ECU50は、ヒータ18への通電を制御可能になっている。更に、ECU50には、内燃機関(以下、「エンジン」と称する)70に対して設けられた燃料インジェクタ、点火プラグ、スロットル弁などの各種のアクチュエータやクランク角センサ、空燃比センサなどの各種のセンサが電気的に接続されている。
電極10,12は、図示しない燃料タンクからエンジン70の燃料インジェクタへ燃料を送るための燃料通路60の内部に設置されている。電極10,12は、共に円筒形をなしており、大径の電極10の内側に小径の電極12が挿入された状態で同心的に配置されている。図示の構成では、電極10,12の中心線が燃料通路60の燃料流れ方向と平行となるように配置されている。これにより、電極10と電極12との隙間を燃料が流れ易いので、電極10と電極12との隙間に燃料が滞留することを確実に防止することができる。
電極10,12の近傍には、例えばサーミスタなどで構成される温度センサ14が設置されている。この温度センサ14によれば、電極10,12間に介在する燃料の温度を検出することができる。電極10,12の近傍には、ヒータ18が更に設置されている。このヒータ18に通電して加熱することにより、電極10,12間に介在する燃料の温度を上昇させることができる。
図2は、本発明の実施の形態1の装置の他の構成例を模式的に示す図である。図2に示す装置では、共に円筒形で同心的に位置する大径の電極10と小径の電極12とは、それらの中心線が燃料通路60の燃料流れ方向と直交する向きで配置されている。図2中では、電極10,12は断面図で示されている。外側の電極10の側面には、燃料流れ方向と交差する2箇所に孔20が形成されている。燃料通路60を流れる燃料は、上流側の孔20を通って電極10と電極12との隙間に入り、下流側の孔20から出て行くことができる。これにより、電極10と電極12との隙間を燃料が容易に流れることができ、電極10と電極12との隙間に燃料が滞留することを確実に防止することができる。
図2に示す装置において、電極12の内側には、温度センサ14およびヒータ18が設置されている。電極12の端部は閉じており、電極12の内側には燃料が入り込まない。このため、温度センサ14およびヒータ18は、燃料と直接に接することはない。しかしながら、電極10,12間の隙間にある燃料の温度と、電極12の内側の温度とは、ほぼ等しいので、温度センサ14による検出温度は、電極10,12間の燃料温度とみなすことができる。また、ヒータ18が発した熱は、電極10,12間の隙間にある燃料に伝達するので、ヒータ18によって電極10,12間に介在する燃料の温度を上昇させることができる。
図2に示す装置は、上記の点以外は、図1に示す装置と同様である。本実施形態は、図1に示す装置構成と、図2に示す装置構成との何れを用いても実現可能である。以下に説明する事項は、図1および図2に共通である。
ECU50は、電極10,12間の静電容量を検出(測定)する機能を有している。電極10,12間の静電容量(以下、単に「静電容量」と称する)は、電極10,12間に介在する燃料の比誘電率に応じて変化する。エタノール含有燃料は、含まれるエタノールの濃度に応じて比誘電率が変化する。このため、静電容量は、電極10,12間に介在する燃料のエタノール濃度に応じて変化する。
また、エタノール自体の比誘電率が温度によって変化する性質がある。このため、静電容量は、温度によっても変化する。従って、静電容量は、エタノール含有燃料の濃度と温度とに応じて変化する。図3は、エタノール含有燃料のエタノール濃度、温度および静電容量の関係を示す図である。ECU50には、図3のようなマップ(以下、「エタノール濃度算出マップ」と称する)が予め記憶されている。ECU50は、検出された静電容量と、温度センサ14により検出された燃料温度と、図3に示すエタノール濃度算出マップとに基づいて、エタノール濃度を算出することができる。
ところで、電極10,12間の隙間に異物が挟まるなど、電極10,12間の燃料の流れ(以下、「電極間燃料流れ」と称する)が何らかの原因で妨げられている場合には、電極10,12間に同じ燃料が滞留し続けることになるので、燃料通路60を流れていく燃料の正確なエタノール濃度を検出できなくなる。このため、万一このような事態が発生した場合には、そのことを迅速に検出できることが望ましい。
そこで、本実施形態では、次のようにして、電極間燃料流れの異常を検出することとした。ヒータ18によって電極10,12間の燃料を加熱したとき、温度センサ14によって検出される電極10,12間の燃料温度(以下、「電極部温度」と称する)は、ヒータ18による加熱量(エネルギー投入量)と、燃料の流れによって持ち去られる熱量とのバランスによって決まる。従って、電極部温度は、ヒータ18による加熱量と、燃料通路60の燃料流量とに基づいて推定することができる。一方、電極間燃料流れが異常により妨げられている場合には、持ち去られる熱量が少なくなるので、温度センサ14によって検出された電極部温度は、推定された電極部温度より高くなる。従って、推定された電極部温度と、温度センサ14によって検出された電極部温度とを比較することにより、電極間燃料流れが正常であるか異常であるかを判定することができる。
図4は、電極間流れの異常の有無を判定する際に本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図4に示すルーチンによれば、まず、ヒータ18への通電開始に先立って、温度センサ14の検出値が取得される(ステップ100)。ここでの検出値を以下「電極部初期温度」と称し、記号Tで表す。続いて、ヒータ18への通電が開始される(ステップ102)。
次いで、電極部温度を推定する処理が実行される(ステップ104)。ここでの推定値を以下「電極部推定温度」と称し、記号Tsで表す。このステップ104では、上記ステップ102で取得された電極部初期温度Tと、ヒータ18への通電量(以下、「ヒータ電力」と称する)と、燃料通路60の燃料流量とに基づいて、電極部推定温度Tsを算出する。図5は、電極部推定温度Tsを算出するためのマップである。ヒータ電力は、ヒータ18による加熱量(エネルギー投入量)に等しいとみなせる。電極部温度は、加熱量(ヒータ電力)が大きいほど、電極部初期温度Tと比べて高くなる。ただし、燃料通路60の燃料流量が大きいほど、持ち去られる熱量が大きくなるので、電極部温度は低くなる。すなわち、電極部温度は、燃料流量が小さいほど、高くなる。このようなことから、電極部推定温度Tsは、図5に示すマップによって算出することができる。また、燃料通路60の燃料流量は、エンジン70によって消費される燃料の量に対応するので、ECU50は、燃料インジェクタからの燃料噴射量に基づいて燃料流量を算出することができる。
続いて、上記ステップ104で算出された電極部推定温度Tsと、この時点での温度センサ14による電極部温度の実測値Tとが比較される(ステップ106)。具体的には、次式の成否が判定される。
Ts+α<T ・・・(1)
上記(1)式中、αは、正常範囲内とみなせる最大の誤差として予め設定された値である。上記ステップ106において、上記(1)式が成立した場合には、電極部温度の実測値Tは、電極部推定温度Tsと比べて有意に高いとみなすことができる。この場合、電極部温度の実測値Tと電極部推定温度Tsとのずれは、電極間燃料流れの異常に起因するものであると判断できる。よって、この場合には、電極間燃料流れに異常があると判定される(ステップ108)。
一方、上記ステップ106において、上記(1)式が不成立の場合には、電極部温度の実測値Tは、電極部推定温度Tsと比べて有意に高いものではないので、電極10,12間には燃料が正常に流れていると判断できる。よって、この場合には、電極間燃料流れは正常であると判定される(ステップ110)。
上述したような電極間燃料流れの異常検出制御は、燃料通路60に燃料が流れているときであれば、いつでも実行可能である。ただし、燃料通路60の燃料流量がある程度大きい場合の方が、異常検出精度が高い。なぜなら、燃料通路60の燃料流量が小さい場合(エンジン負荷が小さく、燃料消費量が少ない場合)には、電極間燃料流れが元々遅いので、電極間燃料流れに異常があるかどうかを判別しにくいからである。
そこで、電極間燃料流れの異常検出制御を実行する場合に、検出精度を高めるため、燃料流量を増加させる制御を行うようにしてもよい。図6は、そのような制御を行う場合にECU50が実行するルーチンのフローチャートである。
図6に示すルーチンによれば、電極間燃料流れの異常検出制御を実行すべき条件が成立しているか否かが判定される(ステップ120)。電極間燃料流れの異常検出制御は、例えば、所定時間毎に実行する、あるいはエンジン始動から停止までの1トリップの間に1回実行する、など、実行すべきタイミングが予め決められている。このステップ120では、その実行すべきタイミングが到来したか否かが判定される。
上記ステップ120で、電極間燃料流れの異常検出制御を実行すべきと判定された場合には、燃料通路60の燃料流量を増加させる制御が実行される(ステップ122)。この制御は、例えば次のようにして実行することができる。
(1)エンジン70と電気モータとを併用するハイブリッド車両の場合において、エンジン70を高負荷運転して発電量を増加させ、余剰の電力はバッテリに充電する。これにより、エンジン70での燃料消費量が増加し、燃料通路60の燃料流量を増加させることができる。
(2)燃料インジェクタで噴射されなかった余剰の燃料を燃料タンクに戻す燃料リターン通路を備えた装置の場合において、通常の燃料リターン通路と高流量の燃料リターン通路とに切り換え可能に構成し、高流量の燃料リターン通路に切り換える。これにより、エンジン70を高負荷運転しなくても、燃料通路60の燃料流量を増加させることができる。
上記のようにして燃料通路60の燃料流量を増加させる制御が実行された後、電極間燃料流れの異常検出制御を実行する(ステップ124)。すなわち、このステップ124では、前述した図4のルーチンの処理を実行する。
上述した図6のルーチンの制御によれば、燃料流量が高い状態で電極間燃料流れの異常検出制御を実行することができるので、検出精度を高めることができる。
なお、上述した制御では、電極間燃料流れの異常検出制御の実行に先立って、燃料流量を強制的に増加させる制御を実行するようにしているが、燃料流量が高い状態が訪れるのを待ってから電極間燃料流れの異常検出制御を実行するようにしても、同様の効果が得られる。図7は、そのような制御を行う場合にECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図7において、図6に示すルーチンのステップと同様のステップには、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
図7に示すルーチンによれば、ステップ120において電極間燃料流れの異常検出制御を実行すべき条件が成立していると判定された場合には、次に、現在の燃料通路60の燃料流量が取得され、その値が所定値以上であるか否かが判定される(ステップ126)。この所定値は、電極間燃料流れの異常を十分に高い精度で検出できるかどうかの判定値である。よって、上記ステップ126で、現在の燃料流量が上記所定値未満であった場合には、十分な検出精度が得られないと予測できるので、電極間燃料流れの異常検出制御の実行を回避する。これに対し、上記ステップ126で、現在の燃料流量が上記所定値以上であった場合には、十分な検出精度が得られると予測できるので、電極間燃料流れの異常検出制御を実行する(ステップ124)。このような制御によっても、燃料流量が高い状態で電極間燃料流れの異常検出制御を実行することができるので、検出精度を高めることができる。
以上説明した実施の形態1では、静電容量に基づいて燃料性状を検出する装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば燃料の屈折率、吸光度などの他の物理量を測定することによって燃料性状を検出する装置にも適用可能である。
また、上述した実施の形態1においては、電極10,12が前記第1の発明における「センサ部」に、エタノール濃度が前記第1の発明における「燃料の性状」に、温度センサ14が前記第1の発明における「温度検出手段」に、静電容量(比誘電率)が前記第6の発明における「温度依存特性を有する値」に、それぞれ相当している。また、ECU50が、図4のルーチンの処理を実行することにより前記第2の発明および前記第3の発明における「燃料流れ異常判定手段」が、図7のルーチンの処理を実行することにより前記第4の発明における「流量増加手段」が、上記ステップ120,126の処理を実行することにより前記第5の発明における「回避手段」が、検出された静電容量および燃料温度と図3に示すマップとに基づいてエタノール濃度(燃料性状値)を算出することにより前記第6の発明における「温度補正手段」が、それぞれ実現されている。
実施の形態2.
次に、図8乃至図10を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。
図8は、本発明の実施の形態2の装置構成を模式的に示す図である。図8に示すように、直列4気筒型のエンジン70の各気筒に設けられた燃料インジェクタ22は、デリバリパイプ(燃料分配通路)24に接続されている。燃料タンクから送られてきた燃料は、デリバリパイプ24を通って、各気筒の燃料インジェクタ22に分配される。
デリバリパイプ24には、デリバリパイプ24内の燃料を加熱可能なヒータ26が設置されている。ヒータ26への通電は、ECU50により制御される。エンジン70では、冷間始動のとき、ヒータ26に通電することにより、デリバリパイプ24内の燃料を加熱することができる。これにより、燃料インジェクタ22に供給される燃料の温度を上昇させることができる。このため、低温で気化しにくい高エタノール濃度の燃料が使用されている場合であっても、冷間始動時の燃料の気化不良を防止することができるので、始動性やエミッション特性を改善することができる。
デリバリパイプ24の入口付近の燃料通路30には、燃料性状センサユニット28が設置されている。燃料性状センサユニット28は、静電容量を検出するための電極と、電極間の燃料の温度を検出する温度センサとを備えている。その電極および温度センサの構成は、例えば、図1あるいは図2に示す構成と同様とすることができる。ただし、燃料性状センサユニット28には、ヒータ18が備えられていない。
図9は、本発明の実施の形態2の装置構成の他の例を模式的に示す図である。本実施形態では、図9に示すように、燃料性状センサユニット28をデリバリパイプ24自体に設置するようにしてもよい。この点以外は、図9の構成は、図8の構成と同様である。本実施形態は、図8の構成と、図9の構成との何れを用いても実現可能である。以下の説明は、特に断らない限り、図8の構成および図9の構成に共通である。
ECU50は、燃料性状センサユニット28によって検出される静電容量および燃料温度と、図3に示すエタノール濃度算出マップとに基づいて、燃料通路30を通ってエンジン70に供給される燃料のエタノール濃度を算出することができる。本実施形態では、このエタノール濃度検出装置に異常がないかどうかを次のようにして判定することとした。前述したように、エタノールの比誘電率は温度によって変化するため、エタノール濃度が同じであっても燃料温度によって静電容量は変化する。このため、図3に示すエタノール濃度算出マップを用いた、燃料温度に基づく補正処理を施して、エタノール濃度を算出している。本実施形態では、燃料温度が異なる二つの点において検出された静電容量に基づいてそれぞれエタノール濃度を算出し、それらのエタノール濃度が一致するかどうかによって、エタノール濃度検出装置の異常の有無を判定することとした。エタノール濃度検出装置が正常であれば、燃料温度が異なる二つの点で測定したエタノール濃度は一致するはずである。このため、燃料温度が異なる二つの点で測定したエタノール濃度が一致しなかった場合には、エタノール濃度検出装置に異常があると判定できる。また、エタノール濃度検出装置に異常があるとすると、燃料温度が異なる二つの点において検出した、異なる静電容量値から求めた二つのエタノール濃度の値が偶然に一致する可能性は低い。よって、燃料温度が異なる二つの点で測定したエタノール濃度が一致すれば、エタノール濃度検出装置は正常であると判定することができる。
また、本実施形態では、上述した、燃料温度が異なる二つの点でのエタノール濃度の測定を、エンジン70の冷間始動時にヒータ26が作動される機会を利用して行うこととした。すなわち、燃料性状センサユニット28内の燃料温度は、ヒータ26の作動前には低く、ヒータ26の作動後には高くなるので、それぞれの時点でエタノール濃度を検出することにより、燃料温度が異なる二つの点でのエタノール濃度の測定値を得ることができる。
図10は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50がエンジン70の始動要求があった際に実行するルーチンのフローチャートである。図10に示すルーチンによれば、まず、図示しない水温センサにより検出されるエンジン冷却水温が所定の冷間判定値以下であるかどうか、および、燃料性状センサユニット28内の温度センサにより検出される燃料温度が所定の冷間判定値以下であるかどうかが判断される(ステップ200)。
上記ステップ200において、エンジン冷却水温および燃料温度の少なくとも一方が冷間判定値より大きかった場合には、エンジン70は暖まった状態であると判定される。この場合には、デリバリパイプ24内の燃料を予熱しなくても、始動性やエミッションに悪影響はないと判断できる。このため、この場合には、ヒータ26に通電することなく、エンジン70の始動が実行される(ステップ214)。
これに対し、エンジン冷却水温および燃料温度が何れも冷間判定値以下であった場合には、エンジン70は冷えた状態であり、デリバリパイプ24内の燃料の予熱が必要であると判定される。この場合には、まず、このときの燃料温度T1の下で、燃料性状センサユニット28内の電極により静電容量を検出し、エタノール濃度算出マップに基づき、エタノール濃度E1を算出する(ステップ202)。
続いて、ヒータ26に通電し、デリバリパイプ24内の燃料を加熱する(ステップ204)。図9に示す構成の場合、デリバリパイプ24内の燃料が加熱されることにより、燃料性状センサユニット28内の電極間の燃料温度が直ちに上昇する。また、図8に示す構成の場合であっても、この時点ではエンジン70の始動前でありデリバリパイプ24および燃料通路30内の燃料の流れがないので、ヒータ26によって加えられた熱が容易に燃料性状センサユニット28に伝達し、電極間の燃料温度が上昇する。
なお、上記ステップ204では、燃料性状センサユニット28内の温度センサにより検出される温度に基づいて、デリバリパイプ24内の燃料温度が所定範囲内になるように、ヒータ26の通電量を制御するようにしてもよい。これにより、デリバリパイプ24内の燃料温度が、始動時の気化不良を解消するために必要な燃料温度まで上昇しなかったり、あるいは必要以上に上昇してエネルギーをロスたりすることを確実に防止することができる。
ヒータ26によってデリバリパイプ24内の燃料が予熱された後、このときに検出された燃料温度T2の下で、燃料性状センサユニット28内の電極により静電容量を検出し、エタノール濃度算出マップに基づき、エタノール濃度E2を算出する(ステップ206)。上述したように、ヒータ26からの熱によって燃料性状センサユニット28付近の燃料温度は上昇しているので、燃料温度T2>燃料温度T1である。
続いて、上記ステップ202で算出されたエタノール濃度E1と、上記ステップ206で算出されたエタノール濃度E2との差の絶対値|E1−E2|が、正常な誤差の範囲として定められた所定値より小さいかどうかが判断される(ステップ208)。|E1−E2|が上記所定値より小さかった場合には、燃料温度T1でのエタノール濃度E1と、燃料温度T2でのエタノール濃度E2との差は、有意ではなく、両者は一致していると判断できる。この場合には、エタノール濃度検出装置は正常であると判定される(ステップ210)。
これに対し、上記ステップ208で、|E1−E2|が上記所定値以上であった場合には、燃料温度T1でのエタノール濃度E1と、燃料温度T2でのエタノール濃度E2との間に有意な誤差があると判断できる。この場合には、エタノール濃度検出に異常があり、エタノール濃度検出装置が故障していると判定される(ステップ212)。この場合、エタノール濃度検出装置の故障内容としては、静電容量検出値の異常や、温度補正処理の異常などが考えられる。なお、この例では2点の燃料温度でのエタノール濃度検出値に基づいて故障検出を行っているが、燃料温度の異なる3点以上で検出したエタノール濃度の値を比較することによって故障検出を行うようにしてもよい。
上記のようにしてエタノール濃度検出装置が正常であるか故障しているかが判定された後、エンジン70の始動が実行される(ステップ214)。
本実施形態によれば、エタノール濃度検出装置が正常であるか故障しているかを精度良く判定することができる。
また、本実施形態によれば、冷間始動時のヒータ26の作動を利用して上記故障検出を行うことができ、故障検出のためだけの燃料加熱を行う必要が無いので、エネルギーロスが少ない。また、エンジン始動前の燃料が流れていない状態で故障検出を行っており、燃料温度T1でのエタノール濃度E1の算出時と、燃料温度T2でのエタノール濃度E2の算出時とで燃料性状センサユニット28付近の実際のエタノール濃度が変化する可能性がない。このため、誤判定を確実に防止することができる。
ただし、本発明では、エンジン70の冷間始動時に限らず、エンジン70の運転中の任意の時期において、ヒータ26を作動させて上記と同様の故障検出制御を行うようにしてもよい。
また、本実施形態で説明した故障検出制御は、デリバリパイプ24のヒータ26を用いて行うことに限定されるものではない。すなわち、図1あるいは図2に示す装置構成と同様にして燃料性状センサユニット28にヒータ18を設け、このヒータ18を作動させることによって、上記と同様の故障検出制御を行うようにしてもよい。この場合、燃料性状センサユニット28の設置箇所は特に限定されず、デリバリパイプ24以外の箇所に燃料性状センサユニット28を設置してもよい。
また、本実施形態では、静電容量に基づいて燃料性状を検出する装置の故障検出を行う場合について説明したが、静電容量に限らず、温度依存特性を有する物性値あるいは物理量に基づいて燃料性状を検出する装置であれば、いかなる装置の故障も上記と同様にして検出することができる。
また、本発明では、前述した実施の形態1で説明した方法によって電極間燃料流れ(センサ部近傍の燃料流れ)の異常の有無を検出し、電極間燃料流れが正常であると判定された場合に、本実施形態の方法によってエタノール濃度検出装置(燃料性状検出装置)の故障の有無を判定するようにすることが好ましい。このようにすれば、エタノール濃度検出装置自体には故障がなく、電極間燃料流れに異常があった場合に、エタノール濃度検出装置の故障であると誤判定することを確実に防止することができる。すなわち、電極間燃料流れに異常があるのか、エタノール濃度検出装置自体に故障があるのかを正確に区別して検出することができる。
なお、上述した実施の形態2においては、燃料性状センサユニット28が前記第1および前記第7の発明における「センサ部」に相当している。また、ECU50が、図10のルーチンの処理を実行することにより前記第2の発明および前記第6の発明における「故障判定手段」が実現されている。
10,12 電極
14 温度センサ
18 ヒータ
20 孔
22 燃料インジェクタ
24 デリバリパイプ
26 ヒータ
28 燃料性状センサユニット
30,60 燃料通路
50 ECU
70 エンジン

Claims (8)

  1. 内燃機関に燃料を供給する燃料通路に配置されたセンサ部を有し、前記燃料通路を通る燃料の性状を検出する燃料性状検出装置と、
    前記センサ部近傍の燃料温度を検出する温度検出手段と、
    前記センサ部近傍の燃料温度を上昇させることのできるヒータと、
    前記ヒータが作動したときに前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記燃料性状検出装置の異常の有無を判定する異常判定手段と、
    を備え
    前記異常判定手段は、前記燃料性状検出装置自体の故障の有無を判定する故障判定手段を含み、
    前記センサ部は、温度依存特性を有する値を検出するものであり、
    前記燃料性状検出装置は、前記センサ部により検出された値に対し、前記温度検出手段により検出された燃料温度に基づく補正処理を施すことによって燃料性状値を算出する温度補正手段を含み、
    前記故障判定手段は、前記ヒータが作動したときに前記燃料温度が異なる複数の点において前記補正処理が施された燃料性状値を取得し、それら各点の燃料性状値間の誤差に基づいて、前記燃料性状検出装置の故障の有無を判定することを特徴とする燃料性状検出装置の異常検出装置。
  2. 内燃機関に燃料を供給する燃料通路に配置されたセンサ部を有し、前記燃料通路を通る燃料の性状を検出する燃料性状検出装置と、
    前記センサ部近傍の燃料温度を検出する温度検出手段と、
    前記センサ部近傍の燃料温度を上昇させることのできるヒータと、
    前記ヒータが作動したときに前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記燃料性状検出装置の異常の有無を判定する異常判定手段と、
    を備え、
    前記異常判定手段は、前記センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定する燃料流れ異常判定手段と、前記燃料性状検出装置自体の故障の有無を判定する故障判定手段とを含み、前記燃料流れ異常判定手段によって前記センサ部近傍の燃料流れに異常がないと判定された場合に、前記故障判定手段による判定を実行することを特徴とする燃料性状検出装置の異常検出装置。
  3. 内燃機関に燃料を供給する燃料通路に配置されたセンサ部を有し、前記燃料通路を通る燃料の性状を検出する燃料性状検出装置と、
    前記センサ部近傍の燃料温度を検出する温度検出手段と、
    前記センサ部近傍の燃料温度を上昇させることのできるヒータと、
    前記ヒータが作動したときに前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記燃料性状検出装置の異常の有無を判定する異常判定手段と、
    を備え、
    前記異常判定手段は、前記センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定する燃料流れ異常判定手段を含み、
    前記燃料流れ異常判定手段は、
    前記燃料通路を通る燃料流量を取得する流量取得手段と、
    前記ヒータによるエネルギー投入量を取得するエネルギー投入量取得手段と、
    前記エネルギー投入量と前記燃料流量とに基づいて、前記温度検出手段が検出すると推定される温度を算出する温度推定手段と、
    前記温度推定手段により算出された推定温度と、前記温度検出手段により実際に検出された温度とを比較することにより、前記センサ部近傍の燃料流れの異常の有無を判定する手段と、
    を含むことを特徴とする燃料性状検出装置の異常検出装置。
  4. 前記燃料流れ異常判定手段の判定の実行に先立って前記燃料通路を通る燃料流量を増加させる制御を行う流量増加手段を備えることを特徴とする請求項2または3記載の燃料性状検出装置の異常検出装置。
  5. 前記燃料通路を通る燃料流量が所定値より低い場合に、前記燃料流れ異常判定手段による判定の実行を回避させる回避手段を備えることを特徴とする請求項2または3記載の燃料性状検出装置の異常検出装置。
  6. 前記センサ部は、前記内燃機関の各気筒の燃料インジェクタに燃料を分配する燃料分配通路またはその近傍に配置されており、
    前記ヒータは、前記燃料分配通路内の燃料を加熱可能であることを特徴とする請求項記載の燃料性状検出装置の異常検出装置。
  7. 前記故障判定手段は、前記内燃機関の冷間始動時に前記ヒータが作動される機会を利用して前記判定を実行することを特徴とする請求項記載の燃料性状検出装置の異常検出装置。
  8. 前記内燃機関の冷間始動時に、前記温度検出手段により検出された燃料温度に基づいて前記ヒータへの通電を制御する手段を備えることを特徴とする請求項6または7記載の燃料性状検出装置の異常検出装置。
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