本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーが、樹脂成分として、(A)基材樹脂として、(a−1)エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二元共重合体の金属イオン中和物、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物、または、これらの混合物からなるアイオノマー樹脂(以下、単に「(a−1)アイオノマー樹脂」と称する場合がある)、および/または、(a−2)エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二元共重合体、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、または、これらの混合物からなる非イオン性樹脂(以下、単に「(a−2)非イオン性樹脂」と称する場合がある)と、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有し、前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記(A)基材樹脂100質量部に対して1質量部〜45質量部であるカバー用組成物から形成されていることを特徴とする。
まず、前記カバー用組成物について説明する。
前記カバー用組成物の樹脂成分の(A)基材樹脂として用い得る「(a−1)アイオノマー樹脂」について説明する。
前記(a−1)アイオノマー樹脂は、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、または、これらの混合物からなるものである。
前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
前記エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体や、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられるが、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオンが好ましく、亜鉛、マグネシウムがより好ましい。2価の金属イオンを採用することによって、得られるゴルフボールの耐久性および低温耐久性が向上するからである。
これらの中でも、本発明で使用する(a−1)アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、または、これらの混合物からなるものを使用することが好ましい。なお、本願において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、および/または、メタクリル酸を示す。
さらに、本発明で使用する(a−1)アイオノマー樹脂としては、(a−1−1)エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を1価の金属イオンで中和したもの、または、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を1価の金属イオンで中和したものと、(a−1−2)エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を2価の金属イオンで中和したもの、または、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を2価の金属イオンで中和したものとを混合してなるアイオノマー樹脂を使用することが好ましい態様である。
上述のようなアイオノマー樹脂の混合物を使用することによって、カバー用組成物の反発弾性率をより向上させることができる。前記1価の金属イオンとしては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが好ましく、前記2価の金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが好ましい。またこの場合、(a−1−1)と(a−1−2)との配合割合は、(a−1−1)/(a−1−2)=20質量%〜80質量%/80質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは25質量%〜77質量%/75質量%〜23質量%、さらに好ましくは30質量%〜75質量%/70質量%〜25質量%である。
前記(a−1)アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
また、前記(a−1)アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、得られるカバーの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、カバー用組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、(a−1)アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
前記(a−1)アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1702(Zn)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など)」、「HPF 1000(Mg)、HPF 2000(Mg)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
前記カバー用組成物の樹脂成分の(A)基材樹脂として用い得る「(a−2)非イオン性樹脂」について説明する。
前記(a−2)非イオン性樹脂は、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体のカルボキシル基が中和されていないもの、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基が中和されていないもの、または、これらの混合物からなるものである。
前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、「(a−1)アイオノマー樹脂」を構成するものとして例示したものと同一のもの使用することができる。
これらの中でも、本発明で使用する(a−2)非イオン性樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体、または、これらの混合物からなるものを使用することが好ましい。
前記(a−2)非イオン性樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
前記(a−2)非イオン性樹脂の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル社製の「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、ニュクレルAN4214C、ニュクレルAN4225C、ニュクレルAN4318、ニュクレルAN42115C、ニュクレルN0903HC、ニュクレルN0908C、ニュクレルAN42012C、ニュクレルN410、ニュクレルN1035、ニュクレルN1050H、ニュクレルN2050H、ニュクレルN1108C、ニュクレルN1110H、ニュクレルN1207C、ニュクレルN1214、ニュクレルAN4221C、ニュクレルN1525、ニュクレルN1560、ニュクレルN0200H、ニュクレルAN4228C、ニュクレルN4213C、ニュクレルN035Cなど)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「PRIMACOR(登録商標)5990I」で市販されているエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
前記(A)基材樹脂としては、前記(a−1)アイオノマー樹脂または(a−2)非イオン性樹脂を単独で用いてもよいし、これらを併用してもよい。(A)基材樹脂として、(a−1)アイオノマー樹脂と(a−2)非イオン性樹脂とを併用する場合、これらの配合比は(a−1)アイオノマー樹脂/(a−2)非イオン性樹脂=1質量%〜90質量%/99質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%/95質量%〜20質量%、さらに好ましくは10質量%〜70質量%/90質量%〜30質量%である。前記配合比を上記範囲とすることにより、ゴルフボールへの成形性が向上し、特に薄カバー成形が容易に行うことができる。
カバー用組成物に使用する「(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル」について説明する。
前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリン分子中の水酸基の少なくとも一部が脂肪酸によりエステル化された化合物である。なお、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、カバー用組成物を構成する樹脂成分には含まれない。
前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、下記式(1)で表されるものが好ましい。
[式中、R
1、R
2、R
3は、同一または異なって、水素原子、または、炭素数6〜30の脂肪酸残基を表し、nは
2〜20の整数を表す。なお
、複数存在するR
3は、同一でも異なっていてもよい。]
このように、ポリグリセリン骨格が直鎖状構造であって、脂肪酸残基の炭素数が6〜30であれば、(A)基材樹脂との相溶性が高くなり、カバー成形後に(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルがブリードアウトしにくくなるため、塗膜密着性がより向上する。
上記式における前記炭素数6〜30の脂肪酸残基としては、例えば、ヘキサン酸残基、ヘプタン酸残基、オクタン酸残基、ペラルゴン酸残基、デカン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ヘプタデカン酸残基、ステアリン酸残基、イコサン酸残基、ベヘン酸残基、リグノセリン酸残基、セロチン酸残基などの飽和脂肪酸残基;パルミトレイン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、α−リノレン酸残基、γ−リノレン酸残基、アラキドン酸残基などの不飽和脂肪酸残基などが挙げられる。これらの中でも、飽和脂肪酸残基が好ましく、より好ましくはステアリン酸残基、ベヘン酸残基である。
上記式においてnで示されるグリセリンの重合度は、2以上であれば特に限定されないが、3以上が好ましく、より好ましくは4以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは18以下である。グリセリンの重合度を2以上20以下とすることにより、カバー成形後にブリードアウトしにくくなり、塗膜密着性がより向上する。
本発明に用いられる(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が、0以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、10以下であることが好ましく、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBを上記範囲内とすることにより、(A)基材樹脂成分との相溶性が良くなり、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルが(A)基材樹脂成分に均一に分散するようになり、カバー用組成物の流動性がより向上する。
なお、本発明において(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、HLB=20×{1−(S/A)}(S:ポリグリセリン脂肪酸エステルのケン化価、A:ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の酸価)で求めることができる。
前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、デカグリセリントリステアレート、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンヘプタベヘネートよりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例を商品名で例示すると、例えば、坂本薬品工業社の「SYグリスター DAS−7S(デカグリセリンデカステアレート)」、「SYグリスター PS−5S(ヘキサグリセリンペンタステアレート)」、「SYグリスター PS−3S(テトラグリセリンペンタステアレート)」、「SYグリスター HB−750(デカグリセリンヘプタベヘネート)」、「SYグリスター TS−7S(デカグリセリントリステアレート)」、「SYグリスター MS−150(ジグリセリンモノステアレート)」などが挙げられる。
前記カバー用組成物中の(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、(A)基材樹脂100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、45質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が上記範囲であれば、カバー用組成物の流動性が向上し、カバーの薄肉化が可能になる。その結果、得られるゴルフボールの反発性や耐久性なども向上する。
前記カバー用組成物は、さらに、前記(A)基材樹脂中のカルボキシル基を中和することができる(C)金属イオン源を、前記(A)基材樹脂100質量部に対して0.1質量部〜10質量部含有することが好ましい。
前記(C)金属イオン源は、前記(A)基材樹脂中の未中和のカルボキシル基を中和することができる塩基性金属化合物である。なお、(C)金属イオン源は、カバー用組成物を構成する樹脂成分には含まれない。
前記(C)金属イオン源としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。これらの(C)金属イオン源は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(C)金属イオン源としては、金属水酸化物が好ましく、特に水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが好適である。
また、前記カバー用組成物中の(C)金属イオン源の含有量は、(A)基材樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは9質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。(C)金属イオン源の含有量が上記範囲であれば、得られるゴルフボールの反発性能がより向上する。また、カバー用組成物のゴルフボールへの成形性も向上する。
また、(C)成分の含有量は、(A)基材樹脂が有する全てのカルボキシル基の中和度が50モル%以上となるように調整することが好ましく、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
本発明において、前記カバー用組成物は、樹脂成分として(A)基材樹脂のみを含有することが好ましい態様であるが、本発明の効果を損なわない程度に、さらに(A)基材樹脂以外の他の樹脂成分を含有してもよい。
前記他の樹脂成分としては、例えば、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミド系エラストマー;東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー;三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性ポリスチレン系エラストマーまたは商品名「プリマロイ(登録商標)(例えば、「プリマロイB1942N」)」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマー;BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランET880」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物を硫黄、有機過酸化物などで架橋してなる硬化物、熱硬化性ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。
本発明において、カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
前記カバー用組成物のメルトフローレイト(190℃×2.16kg)は、0.1g/10min以上が好ましく、0.5g/10min以上がより好ましく、1.0g/10min以上が更に好ましく、100g/10min以下が好ましく、95g/10min以下がより好ましく、90g/10min以下が更に好ましい。カバー用組成物のメルトフローレイトが0.1g/10min以上であれば、成形性が高くなり、カバーの薄肉化がより容易に行うことができる。
前記カバー用組成物の曲げ剛性率は、100MPa以上が好ましく、より好ましくは110MPa以上、さらに好ましくは120MPa以上であり、450MPa以下が好ましく、より好ましくは420MPa以下、さらに好ましくは400MPa以下である。カバー用組成物の曲げ剛性率が100MPa以上であれば、得られるゴルフボールを外剛内柔構造とすることができ、飛距離が向上する。また、カバー用組成物の曲げ剛性率が450MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
前記カバー用組成物の反発弾性率は、40%以上が好ましく、より好ましくは41%以上、さらに好ましくは42%以上である。カバー用組成物の反発弾性率を、40%以上とすることにより、得られるゴルフボールの飛距離が大きくなる。ここで、カバー用組成物の曲げ剛性率および反発弾性率とは、カバー用組成物をシート状に成形して測定した曲げ剛性率および反発弾性率であり、後述する測定方法により測定する。
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で40以上が好ましく、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは68以下、さらに好ましくは65以下である。カバー用組成物のスラブ硬度がショアD硬度で40以上であれば、得られるカバーの剛性が高まり、反発性(飛距離)により優れるゴルフボールが得られる。一方、カバー用組成物のスラブ硬度がショアD硬度で70以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性が一層向上する。ここで、カバー用組成物のスラブ硬度とは、カバー用組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
なお、前記カバー用組成物のメルトフローレイト、曲げ剛性率、反発弾性率およびスラブ硬度は、前記(A)基材樹脂、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)金属イオン源、その他の樹脂成分および添加剤の種類、含有量などを適宜選択することによって、調整することができる。
前記カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。カバーの厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。カバーの厚みが0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。なお、カバーの厚みとは、ディンプルが形成されていない部分、すなわち、ランドの直下におけるカバーの厚みを、少なくとも4点測定して得られる平均値である。
本発明のゴルフボールの構造は、コアとカバーとを有するものであれば、特に限定されず、単層のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボール、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコアと前記コアを被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール、センターと前記センターを被覆する複数片もしくは複数層の中間層とからなるコアと前記コアを被覆するカバーとを有するマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きコアとカバーとを有する糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
次に、本発明のゴルフボールのコアの好ましい態様について説明する。本発明のゴルフボールのコアの構造としては、例えば、単層のコア;センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコア;センターと前記センターを被覆する複数片もしくは複数層の中間層とからなるコア;などを挙げることができる。
コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。一方、センターの形状としては、球状が一般的であるが、球状センターの表面を分割するように突条が設けられていても良く、例えば、球状センターの表面を均等に分割するように突条が設けられていても良い。前記突条を設ける態様としては、例えば、球状センターの表面にセンターと一体的に突条を設ける態様、あるいは、球状センターの表面に突条の中間層を設ける態様などを挙げることができる。
前記突条は、例えば、球状センターを地球とみなした場合に、赤道と球状センター表面を均等に分割する任意の子午線とに沿って設けられることが好ましい。例えば、球状センター表面を8分割する場合には、赤道と、任意の子午線(経度0度)、および、斯かる経度0度の子午線を基準として、東経90度、西経90度、東経(西経)180度の子午線に沿って設けるようにすれば良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数片の中間層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の中間層によって充填するようにして、コアの形状を球形とするようにすることが好ましい。前記突条の断面形状は、特に限定されることなく、例えば、円弧状、あるいは、略円弧状(例えば、互いに交差あるいは直交する部分において切欠部を設けた形状)などを挙げることができる。
本発明のゴルフボールのコアまたはセンターには、従来公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができ、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤、および、充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。0.2質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、3質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を増加する必要があり、反発性が不足気味になる。
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、または、これらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上であって、50質量部以下が好ましく、より好ましくは40質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が50質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
コア用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの比重を1.0〜1.5の範囲に調整するための比重調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上であって、50質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下である。充填剤の配合量が2質量部未満では、重量調整が難しくなり、50質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
前記老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
前記コアの直径は、39.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは39.5mm以上、さらに好ましくは40.8mm以上である。コアの直径が39.0mm未満では、前記カバーが厚くなり過ぎて反発性が低下するからである。また、コアの直径は、42.2mm以下であることが好ましく、より好ましくは42.0mm以下、さらに好ましくは41.8mm以下である。コアの直径が42.2mmを超えると相対的にカバーが薄くなり過ぎて、カバーによる保護効果が十分に得られないからである。
また、コアは、直径39.0mm〜42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が1.90mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が1.90mm未満では、コアが硬くなって打球感が低下する傾向があり、一方、4.00mmを超えると、柔らかくなりすぎて打球感が重く感じられる場合がある。
本態様のゴルフボールは、コアとして、表面硬度が中心硬度より大きいコアを使用することも好ましい態様である。例えば、多層コア構造とすることによって、容易にコアの表面硬度を中心硬度より大きくすることができる。コアの表面硬度と中心硬度との硬度差は、ショアD硬度で4以上であることが好ましく、さらに好ましくは8以上である。コアの表面硬度を中心硬度より大きくすることによって、打出角が高くなり、スピン量が低くなる。その結果、飛距離が向上する。また、コアの表面硬度と中心硬度との硬度差の上限は、特に限定されないが、ショアD硬度で、24であることが好ましく、より好ましくは20である。硬度差が大きくなりすぎると、耐久性が低下する虞があるからである。
さらに、前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上であり、さらに好ましくは35以上である。コアの中心硬度がショアD硬度で30未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で50以下であることが好ましく、より好ましくは48以下であり、さらに好ましくは45以下である。前記中心硬度がショアD硬度で50を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で45以上であることが好ましく、より好ましくは50以上であり、さらに好ましくは55以上である。前記表面硬度が45より小さいと、軟らかくなり過ぎて、反発性が低下する場合がある。また、コアの表面硬度は、ショアD硬度で65以下であることが好ましく、より好ましくは62以下であり、さらに好ましくは60以下である。前記表面硬度がショアD硬度で65超であると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する場合があるからである。
本発明のゴルフボールのコアの構造が、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコアまたはセンターと前記センターを被覆する複数片もしくは複数層の中間層とからなるコアの場合、前記センターの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは35.0mm以上、さらに好ましくは35.2mm以上であり、41.2mm以下が好ましく、より好ましくは41.0mm以下、さらに好ましくは40.8mm以下である。前記センターの直径が34.8mm以上であれば、中間層またはカバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果反発性がより良好となる。一方、センターの直径が41.2mm以下であれば、中間層またはカバー層が薄くなり過ぎず、中間層またはカバー層の機能がより発揮される。
前記センターは、直径34.8mm〜41.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、1.90mm以上が好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下が好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が、1.90mm以上であれば打球感がより良好となり、4.00mm以下であれば、反発性がより良好となる。
前記センターの表面硬度は、ショアD硬度で45以上が好ましく、より好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは62以下、さらに好ましくは60以下である。前記センターの表面硬度を、ショアD硬度で45以上とすることにより、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記センターの表面硬度をショアD硬度で65以下とすることにより、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
前記コアが、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコア、センターと前記センターを被覆する複数片もしくは複数層の中間層とからなるコアなどの場合、前記中間層を形成する中間層用組成物としては、例えば、三井デュポンポリケミカル(株)から商品名「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミランAM7329(Zn))」で市販されているアイオノマー樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ(登録商標)(例えば、「プリマロイB1942N」)」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどが挙げられる。また前記中間層には、前記樹脂成分に加えてさらに、硫酸バリウム、タングステン等の比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
前記中間層用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、30以上が好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは34以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは71以下である。中間層用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で、30以上であれば、得られるゴルフボールの反発性が向上し、飛距離がより向上する。一方、中間層用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で、75以下であれば、優れた打球感が得られると共に、繰り返し打撃による耐久性の低下をより抑制することができる。
前記中間層の厚みは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.6mm以下である。中間層の厚みが0.3mm以上であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより向上する。また、中間層の厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性の低下を抑制できる。
本発明のゴルフボールが、糸巻きゴルフボールの場合、コアとして糸巻きコアを用いれば良い。斯かる場合、糸巻きコアとしては、例えば、上述したコア用ゴム組成物を硬化させてなるセンターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成るものを使用すればよい。また、前記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを使用することができ、例えば、天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤などを配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻きつけて糸巻きコアを作製する。
本発明のゴルフボールは、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
また、本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有する塗装ゴルフボールに好適である。
すなわち、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、(A)基材樹脂として使用される(a−1)アイオノマー樹脂および/または(a−2)非イオン性樹脂との相溶性が高いため、カバー成形時に、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル成分がゴルフボール本体表面にブリードアウトしてくることが抑制される。その結果、ゴルフボール本体表面に対する塗膜密着性に優れるゴルフボールが得られる。
塗膜(ペイント層)を構成する樹脂成分は、特に限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などを使用できるが、後述する2液硬化型ポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。2液硬化型ポリウレタン樹脂を使用すると、耐久性に一層優れた塗膜が得られるからである。
前記2液硬化型ポリウレタン樹脂は、主剤と硬化剤とを反応し硬化させてなるポリウレタン樹脂であり、例えば、ポリオール成分を含有する主剤をポリイソシアネート化合物またはその誘導体で硬化させたものが挙げられる。前記ポリオール成分を含有する主剤には、ウレタンポリオールが含まれることが好ましい。ウレタンポリオールは、ポリイソシアネート化合物とポリオールとの反応により合成される。
前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上、より好ましくは7μm以上、25μm以下、より好ましくは18μm以下であることが望ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が25μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
以下、本発明のゴルフボールの製造方法について説明する。
本発明のゴルフボールの製造方法は、コアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールの製造方法であって、(A)基材樹脂として、(a−1)エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二元共重合体の金属イオン中和物、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物、または、これらの混合物からなるアイオノマー樹脂、および/または、(a−2)エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の二元共重合体、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、または、これらの混合物からなる非イオン性樹脂と、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを、前記(A)基材樹脂100質量部に対して前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを1質量部〜45質量部の割合で混合し、カバー用組成物を得る工程;得られたカバー用組成物を用いてカバーを成形する工程;を含むことを特徴とする。
また、前記ゴルフボールの製造方法は、前記カバー用組成物を得る工程において、さらに、前記(A)基材樹脂中のカルボキシル基を中和することができる(C)金属イオン源を、前記(A)基材樹脂100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の割合で混合し、(A)基材樹脂中のカルボキシル基を(C)金属イオン源により中和することも好ましい態様である。
前記カバー用組成物を得る工程における、カバー用組成物の調製方法としては、例えば、押出機を用いて、(A)基材樹脂としての(a−1)アイオノマー樹脂および/または(a−2)非イオン性樹脂、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)金属イオン源を同時に混合する方法;サイドフィーダー付きの押出機を用いて、(A)基材樹脂としての(a−1)アイオノマー樹脂および/または(a−2)非イオン性樹脂、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルとを混合し、さらにサイドフィーダーから(C)金属イオン源を加えて混合する方法などを挙げることができる。
また得られたカバー用組成物を用いてカバーを形成する方法としては、例えば、単層コアまたは多層コアを前記カバー用組成物で被覆してカバーを成形する方法が挙げられる。カバーを成形する方法は、例えば、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。
前記カバー用組成物をコア上に射出成形してカバーを成形する場合、カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、加熱溶融されたカバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、980kPa〜1,500kPaの圧力で型締めした金型内に、150℃〜230℃に加熱溶融したカバー用組成物を0.1秒〜1秒で注入し、15秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。上記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
なお、前記成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。またカバー用組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状のカバー用組成物を、プランジャー面積:1cm2、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
カバーを被覆してゴルフボール本体を作製する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
なお、前記センターおよび単層コアは、前述のコア用ゴム組成物から形成することができ、前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成形条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
また、コアがセンターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコア、センターと前記センターを被覆する複数片もしくは複数層の中間層とからなるコアなどの場合、中間層用組成物を用いて中間層を成形する方法としては、例えば、センターを前記中間層用組成物で被覆して中間層を成形する。中間層を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、前記中間層用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてセンターを包み、130℃〜170℃で1分間〜5分間加圧成形する方法、または前記中間層用組成物を直接センター上に射出成形してセンターを包み込む方法などが用いられる。
また、カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
本発明のゴルフボールが、塗装ゴルフボールの場合には、塗膜(ペイント層)を形成する工程を有する。塗膜は、ゴルフボール本体表面に塗料を塗布し、塗料を乾燥させることにより形成できる。
前記ゴルフボール本体への塗料の塗装方法は限定されず、スプレー塗装、刷毛塗り、ペイントガンを用いる方法、静電塗装など、主剤と硬化剤とからなる2液硬化型塗料の塗装方法として従来公知の塗装方法はいずれも採用することができる。なお、スプレーガンで塗装する場合には、主剤と硬化剤とを少量ずつ混合して使用してもよく、2液定比率ポンプを使ってスプレーガン直前のペイント輸送経路でスタティックミキサーのようなラインミキサーを通して連続的に2液を定比率で混合してもよく、また混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いることもできる。
また、塗料の乾燥方法は限定されず、例えば、オーブンなどを用いればよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
(1)センター、コア、ゴルフボール硬度(ショアD硬度)
ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、センター、コアまたはゴルフボールの表面部において測定したショアD硬度をセンター表面硬度、コア表面硬度またはゴルフボールのカバー硬度とし、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したショアD硬度をコア中心硬度とした。
(2)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールまたはコアが縮む量)を測定した。
(3)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で行った。
(4)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物または中間層用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(5)曲げ剛性率(MPa)
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。曲げ剛性率を、JIS K 7106に準じて測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHで行った。
(6)反発弾性率(%)
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
(7)塗膜密着性(塗膜耐久性)
ツルーテンパー社製スイングロボットにドライバー(1W)を取り付け、ヘッドスピード45m/sでゴルフボールを100回繰返し打撃し、塗膜の剥離程度を観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎:塗膜に剥離がなかった。
○:塗膜に1mm2未満の剥離が発生した。
△:塗膜に1〜4mm2未満の剥離が発生した。
×:塗膜に4mm2以上の剥離が発生した。
(8)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の上記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。なお、反発係数は、ゴルフボールNo.11の反発係数を100.0として、指数化した値で示した。
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、15分間加熱プレスすることにより球状のコアを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.4gとなるように適量加えた。
(2)カバー用組成物および中間層用組成物の調製
表1、表2に示した配合材料を用いて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物をそれぞれ調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
BR−730:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺(登録商標)R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
ハイミラン1555:三井デュポンポリケミカル社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ラバロンT3221C:三菱化学社製のスチレン系エラストマー
(3)ゴルフボール本体の作製
上記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得たセンター上に射出成形することにより、前記センターを被覆する中間層を形成して、球状コアを作製した。続いて、前記球状コア上にカバー用組成物を射出成型することによりカバーを形成して、ゴルフボールを作製した。成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、厚み10μmのペイント層を形成し、直径42.8mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。クリアーペイントとしては、以下のものを用いた。ゴルフボール特性について評価した結果を併せて表2に示した。
[クリアーペイントの調製]
(1)主剤:ウレタンポリオール
60質量部のPTMG250(BASF社製:ポリオキシテトラメチレングリコール、分子量250)と54質量部の550U(住化バイエルウレタン社製:分子量550の分岐ポリオール)とを、溶剤120質量部(トルエンおよびメチルエチルケトン)に溶解し、これにジブチル錫ジラウリレートを主剤全体に対して0.1質量%となるように添加した。このポリオールを80℃に保持しながら、66質量部のイソホロンジイソシアネートを滴下して、ウレタンポリオール(固形分60質量%、水酸基価75mgKOH/g、重量平均分子量7808)を調製した。
(2)硬化剤:イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン)
(3)配合比:硬化剤のNCO/主剤のOH=1.2(モル比)
ハイミラン1555:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):10g/10min)
サーリン8150:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):4.5g/10min)
ハイミランAM7329:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5g/10min)
サーリン9150:デュポン社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):4.5g/10min)
サーリン6320:デュポン社製、マグネシウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):1.1g/10min)
HPF1000:デュポン社製、マグネシウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):0.7g/10min)
ニュクレル2050H:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):500g/10min)
ニュクレルAN4318:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):30g/10min)
PS−3S:阪本薬品工業社製、テトラグリセリンペンタステアレート(HLB:2.6)
HB−750:阪本薬品工業社製、デカグリセリンヘプタベヘネート(HLB:3.5)
MS−150:阪本薬品工業社製、ジグリセリンモノステアレート(HLB:5.5)
ベヘニン酸:日油社製、「NAA−222S粉末」
ステアリン酸:日油社製、「粉末ステアリン酸つばき」
Mg(OH)
2:米山薬品工業社製
Ca(OH)
2:米山薬品工業社製
本発明の実施例に相当するゴルフボールNo.1〜No.10のカバー用組成物は、反発性が高いにも拘らず、メルトフローレイトが高く流動性に優れることが分かる。また、これらのカバー用組成物は、脂肪酸などの低分子材料を配合していないため、カバー成形時に、脂肪酸などの低分子材料がブリードアウトすることがない。その結果、これらのカバー用組成物を用いたゴルフボールNo.1〜10は、塗膜密着性および反発係数に優れていた。これらの中で、ゴルフボールNo.1とゴルフボールNo.8とを比較すると、(C)金属イオン源を含有することにより、カバー用組成物の反発性が向上することがわかる。
ゴルフボールNo.11,13は、カバー用組成物が脂肪酸などの低分子材料を含有する場合であるが、これらのゴルフボールでは塗膜密着性が劣る。ゴルフボールNo.12は、カバー用組成物が(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび脂肪酸などの低分子材料を含有しない場合であるが、流動性が悪く、カバーを成形することができなかった。ゴルフボールNo.14は、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が(A)基材樹脂100質量部に対して45質量%を超える場合であるが、(B)成分の含有量が多すぎるため、溶融時に流動性が高くなりすぎて、カバーを成形することができなかった。