JP5237859B2 - 緑化工法 - Google Patents

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本発明は、緑化工法に関する。
種子吹き付けや張芝等による緑化工法は、早期に地面の緑化をすることができるため、地盤の安定と景観の修復を図ることを可能としている。
緑化における基盤材料としては、客土を使用するのが一般的である。ところが、基盤材料として客土を使用する場合は、礫含有率40%以下、粘土やシルト等の細粒分含有率20%以上のいわゆる粘性土を使用するという制限があり、入手に手間や費用がかかる場合があった。
一方、特許文献1乃至特許文献3等では、建設工事等において発生した脱水ケーキを、緑化の基盤材料として使用することで、廃棄物処分費の低減化を図る緑化方法が開示されている。
かかる緑化方法によれば、脱水ケーキを破砕して基盤材料を生成するため、好適な粒度分布からなる材料を簡易かつ安価に入手することができる。
特開2001−226971号公報 特開2005−318891号公報 特開2003−235338号公報
ところが、脱水ケーキは一般的に凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)や高分子凝集剤を使用した無機物であるため、有機物が少なく、肥料(バーク堆肥やピートモス等)、生長促進剤、植物ホルモン等を添加混合して土壌改良する必要があった。そのため、この土壌改良に手間と費用がかかるという問題点を有していた。
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、簡易かつ安価に施工を行うことを可能とした、緑化工法を提案することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明の緑化工法は、キトサンを含む凝集剤にて凝集・脱水された脱水ケーキを乾燥して乾燥固形物を生成する工程と、前記乾燥固形物を粉砕して粒状基盤材を生成する工程と、前記粒状基盤材を緑化対象領域に吹き付ける工程と、を備える緑化工法であって、前記脱水ケーキを40〜110℃に加熱して含水率30%以下になるまで乾燥させることを特徴としている。
かかる緑化工法によれば、脱水ケーキとして、キトサンを含む天然有機高分子凝集剤により凝集・脱水されたものを使用しているため、生分解性を有しており、土壌改良を要することなく使用することができる。そのため、土壌改良に要する手間や費用を削減することができる。
また、産業廃棄物として処分されていた脱水ケーキを有効に活用することで、その処分費の削減、地球環境の保護を可能としている。
脱水ケーキを粉砕することで、基盤材に適した粒度分布の粒状基盤材を生成するため、均質の基盤材を生成することを可能としているとともに、客土を採取する場合と比べて簡易に材料を調達することができる。
本発明の緑化工法は、前記粒状基盤材を吹き付ける工程の前に、前記緑化対象領域に生分解性高分子材料または植物性の繊維からなるネットを張る工程を含んでいてもよい。
これにより、例えば緑化対象領域が法面である場合において、法面に吹き付けられた粒状基盤材がネットにより付着しやすくなる。また、緑化により植物が法面(緑化対象領域)根付いた頃にはネットが生分解される。
また、前記粒状基盤材を生成する工程において、当該粒状基盤材に種子または肥料を添加混合することで、目的とする植物の発芽生育を促進し、緑化を早期に達成させてもよい。
また、緑化対象領域への粒状基盤材の接合性の向上を目的として、前記粒状基盤材を生成する工程において、生分解性高分子材料または植物性の短繊維からなる接合材を当該粒状基盤材に混合してもよいし、前記粒状基盤材を吹き付ける工程の前に、同接合材を前記緑化対象領域に吹き付けてもよい。
本発明の緑化工法によれば、簡易かつ安価に緑化対象領域の緑化を行うことが可能となる。
本発明の好適な実施の形態に係る緑化工法の手順を示すフローチャートである。
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の緑化工法は、図1に示すように、乾燥工程S1と、粉砕工程S2と、ネット張り工程S3と、接合材吹付け工程S4と、基盤材吹付け工程S5と、を備えている。
乾燥工程S1は、キトサンを含む凝集剤にて凝集・脱水された脱水ケーキを乾燥して乾燥固形物を生成する工程である。
本実施形態では、フィルタープレス、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水、真空脱水等により脱水処理された脱水ケーキを乾燥させる。なお、脱水ケーキの脱水方法は限定されるものではない。
脱水ケーキの乾燥は、含水率75%以上のものを、含水率30%以下になるまで行う。
ここで、脱水ケーキの乾燥方法は限定されるものではないが、例えばパドルドライヤー、ロータリードライヤー等により40〜110℃程度に加熱することにより行えばよい。
キトサンは、天然の有機物であって、自然環境中に生分解される材料である。また、キトサンは、植物に必要な窒素分補給の役割を担い、かつ植物病原菌であるフザリウム等に抗菌性を有しているため、土壌改良のための肥料や農薬等を添加することなく、あるいは少ない添加量により基盤材を生成することが可能である。
粉砕工程S2は、乾燥工程S1において生成された乾燥固形物を粉砕することで、粒状基盤材を生成する工程である。
本実施形態では、粒径組成が、細粒分(粒径0.075mm以下)を20%以上含み、礫分(粒径2mm以上)を40%以下となるように乾燥固形物を粉砕する。
乾燥固形物の粉砕方法は限定されるものではないが、本実施形態ではミキサー等により行うものとする。
また、乾燥固形物の粉砕に伴い、ミキサー内に種子や肥料を添加して、粒状基盤材に種子や肥料を混合してもよい。本実施形態では、粒状基盤材1〜3mに対して、0.05〜2kgの種子を添加する。
種子や肥料の添加混合は、必要に応じて行えばよく、省略してもよい。また、粒状基盤材の粒径組成は、生育させる植物の種類等に応じて適宜設定することが可能である。
ネット張り工程S3は、緑化を行う法面(緑化対象領域)に、生分解性高分子材料または植物性の繊維からなるネットを張る工程である。
なお、ネットを構成する材料は限定されるものではないが、例えば、生分解性のプラスチックである脂肪族ポリエステル樹脂が使用可能である。具体的には、「ポリ3−ヒドロキシ酪酸」、「3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸のコポリマー」、「ポリグリコール酸」、「ポリ乳酸」、「乳酸と3−ヒドロキシ酪酸またはグリコール酸または6−ヒドロキシカプロン酸のコポリマー」、「ポリエチレンサクシネート」、「ポリブチレンサクシネート」、「ポリエチレンオキサレート」、「ポリブチレンオキサレート」、「ポリブチレンサクシネート/アジペート」、または「これらの水酸基末端ポリブチレンサクシネートオリゴマー等とヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖延長剤で高分子化したもの」があげられ、また、「乳酸、ブタンジオール、コハク酸コポリマーのようなヒドロキシカルボン酸とジオール、ジカルボン酸のコポリマー」、あるいはこれらの混合物等があげられる。
また、「ヤシ天然繊維やワラやイグサ等で編んだ天然繊維等」により構成されたネットを使用してもよい。
また、本実施形態では、目合の範囲が9〜30mmのネットを使用するが、ネットの構成は限定されるものではない。
法面に配置されたネットは、ポリ乳酸等の生分解性アンカーを打ち付けることにより固定する。なお、生分解性アンカーの材質は限定されるものではない。また、ネットの固定方法は、生分解性アンカーによるものに限定されるものではない。
接合材吹付け工程S4は、ネット張り工程S3において、ネットが配置された法面に、生分解性高分子材料または植物性の短繊維からなる接合材を前記法面に散布する工程である。
なお、接合材として短繊維を使用する場合は、長さが2〜10mm、外径が0.05〜1mmのものが好適に用いられる。
接合材は、粒状基盤材の法面への接着性を向上させることを目的として散布されるものである。接合材の吹き付け厚は、法面の状況に応じて適宜設定する。本実施形態では、乾式吹付けにより接合材を散布するが、接合材は水を混合する湿式吹付けにより行ってもよい。
接合材を構成する材料は限定されるものではないが、天然高分子系(生分解性)の材料が好適に使用可能である。
天然高分子系の材料としては、例えば、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、グアーガム、アラビアゴム、デキストラン、デキストリン、ガゼイン等の各種たんぱく質があげられる。
難分解性の材料であっても、ポリアクリルアミド、バーサチック酸ビニル樹脂共重合体、エチレン・酢ビ重合体等の合成高分子系の材料も接合材として採用可能である。
なお、粉砕工程S2において、生分解性高分子材料または植物性の短繊維からなる接合材を粒状基盤材に混合することで、接合材吹付け工程S4を省略してもよい。この場合において、接合材の混合量は、粒状基盤材1〜3mに対して、1〜5kg程度とする。
基盤材吹付け工程S5は、接合材吹付け工程S4において表面に接合材が吹き付けられた法面に、粒状基盤材を散布する工程である。
本実施形態では、乾式吹付けにより粒状基盤材を散布するものとし、1〜10cmの吹き付け厚で1層以上吹き付けるものとする。
なお、法面の土壌条件が比較的良好な場合には、粒状基盤材に水を混合する湿式吹付けにより、吹き付け厚3cm以下にて行ってもよい。
本実施形態の緑化工法によれば、キトサン凝集剤を含む脱水ケーキを使用しているため、脱水ケーキ自体が植物の生育に適しており、速やかな自然植生の復元を促すことが可能となる。
また、キトサン凝集剤は天然素材であり、分解性も高いので、施工時の処理水等が周辺環境に悪影響を及ぼす可能性が低く、安全性に優れている。
産業廃棄物として処分される脱水ケーキを有効に利用するので、脱水ケーキの廃棄移動費や処分費等を省略することができる。また、建設発生土のリサイクルにより、環境保護の面でも優れている。
粒状基盤材は、植生に適した粒径組成に調整されているため、速やかな自然植生の復元を促すことが可能となる。
また、脱水ケーキにより形成された乾燥固形物を粉砕することにより所望の粒径組成に調整するため、客土等を採取して所望の粒径組成に調整する場合と比較して、手間を大幅に削減することができる。
バーク堆肥やピートモス等の肥料を省略または添加量を削減できるため、材料コストを大幅に削減することができる。
また、粒状基盤材は、接合材を介して法面に配設されるため、早期に法面から崩落することが防止され、法面全体の緑化に寄与する。
粒状基盤材の吹き付け面には、予めネットが張られているため、粒状基盤材の法面への接合性に優れている。また、ネットとして、生分解性高分子材料または植物性の繊維からなるものを使用しているため、緑化の進行に伴い、ネットは自然分解されて、法面に残存することがない。また、ネットを固定するアンカーも生分解性であるため、法面に残存することがない。
粒状基盤材の吹き付けを乾式により行うことで、粒状基盤材を圧送する際に使用するホースの内面に材料が付着することがなく、施工性に優れている。
粒状基盤材には、予め種子が混合されているため、目的とする植物の発芽生育を促進させることができる。
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態で示した、ネット張り工程および接合材吹付け工程は、基盤材吹付け工程よりも前に実施されていればよく、乾燥工程や粉砕工程と並行して行うなど、その順序は前記実施形態の順序に限定されるものではない。
また、粒状基盤材には、必要に応じて細粒分として粘土・シルト粒子が混合されていてもよい。また、粒状基盤材には、植物性繊維の粉末や0.5cm以下に破砕された短繊維が混合されていてもよい。
また、前記実施形態では、法面の緑化を行う場合について説明したが、平坦な地面の緑化について本発明の緑化工法を採用してもよく、緑化対象領域となる地盤の形状は限定されるものではない。
また、前記実施形態では、粒状基盤材に予め種子を混合する場合について説明したが、粒状基盤材を吹き付けた後に、種子や肥料等を緑化対象領域に吹き付けても良い。
また、粒状基盤材等の吹き付け方法は、所定の圧力を付与した状態でノズル等から噴出させることにより行う方法に限定されるものではなく、あらゆる散布方法が含まれるものとする。
次に、キトサンを含む凝集剤にて凝集・脱水された脱水ケーキにより生成された粒状基盤材による、植栽基盤材としての適用性について行った確認実験結果を示す。
本確認実験では、細粒分(粒径0.075mm以下)が20%以上、礫分(粒径2mm以上)が40%以下となるように調整された粒状基盤材Aと、粒径が20mm以下に調整された粒状基盤材Bと、についてそれぞれ植物の植生を行い、その生育状況を確認した。
また、本確認実験では、比較例として、凝集剤としてPACが使用された脱水ケーキにより生成された粒状基盤材A’,B’についても同条件による植物の植生を行った。
確認実験は、人工気象室において、温度25℃、日長14時間、光量子50〜90μmol/m/sの条件下で行った。また、各粒状基盤材には、肥料や土壌改良材等は混合されていない。
表1に、確認実験結果を示す。
Figure 0005237859
表1に示すように粒状基盤材A,Bは、粒度分布に極端な差は生じることなく、21日後には発芽率が100%となり、植栽用の基盤材として良好であることが確認された。
また、粒状基盤材A,Bは、粒度分布に関わらず、比較例の粒状基盤材A’,B’よりも発芽率が良好であることが確認された。
したがって、キトサンを含む凝集剤で処理された脱水ケーキを植栽土として利用した場合に、植物の発芽や生育に大きな悪影響を及ぼすことがないことが確認された。
S1 乾燥工程
S2 粉砕工程
S3 ネット張り工程
S4 接合材吹付け工程
S5 基盤材吹付け工程

Claims (5)

  1. キトサンを含む凝集剤にて凝集・脱水された脱水ケーキを乾燥して乾燥固形物を生成する工程と、
    前記乾燥固形物を粉砕して粒状基盤材を生成する工程と、
    前記粒状基盤材を緑化対象領域に吹き付ける工程と、を備える緑化工法であって、
    前記脱水ケーキを40〜110℃に加熱して含水率30%以下になるまで乾燥させることを特徴とする、緑化工法。
  2. 前記粒状基盤材を吹き付ける工程の前に、前記緑化対象領域に生分解性高分子材料または植物性の繊維からなるネットを張る工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の緑化工法。
  3. 前記粒状基盤材を生成する工程において、当該粒状基盤材に種子または肥料を添加混合することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の緑化工法。
  4. 前記粒状基盤材を生成する工程において、生分解性高分子材料または植物性の短繊維からなる接合材を当該粒状基盤材に混合することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の緑化工法。
  5. 前記粒状基盤材を吹き付ける工程の前に、生分解性高分子材料または植物性の短繊維からなる接合材を前記緑化対象領域に吹き付ける工程を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の緑化工法。
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