JP5233926B2 - 魚眼監視システム - Google Patents

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Description

本発明は、魚眼レンズ付きビデオカメラで撮影した画像をモニタ画面上に表示する魚眼監視システムに関する。
最近は、セキュリティ確保のため、建物の天井や壁面に設置した防犯カメラで撮影した画像をモニタ画面上に表示し、周囲の監視に役立てるシステムが普及している。このような監視システム用のカメラには、魚眼レンズが用いられることが多い。魚眼レンズを用いると、メカニカルな動作機構なしに、半球状の全方位を示す円形画像を得ることができる。このため、周囲を監視する用途には、魚眼レンズが最適である。特に、魚眼レンズ付きビデオカメラを用いれば、極めて広い視野内の画像をリアルタイムで監視することが可能なシステムが実現できる。
ただ、魚眼レンズを用いた撮影で得られる画像は、歪曲した円形の画像になるため、この歪曲円形画像を、歪みの少ない平面正則画像に変換する処理を行う必要がある。たとえば、下記の特許文献1および2には、コンピュータを利用して歪曲円形画像の一部分を平面正則画像にリアルタイムで変換する技術が開示されている。このような変換技術を利用すれば、魚眼レンズ付きビデオカメラで撮影した歪曲円形画像からなる動画を、平面正則画像からなる動画としてリアルタイムで観察することが可能になり、180°の画角をもった監視システムが構築できる。
一方、監視システムの産業分野では、古くから動体追跡の技術が研究されてきている。これはフレーム単位で時系列的に得られる撮影画像を、コンピュータによって解析し、カメラの視野内に存在する動体を自動的に認識して追尾する技術である。この技術を用いれば、モニタ画面上に動体を自動的にズームアップして表示することができ、動体が移動した場合でも、これを自動追跡してズームアップ状態を続けることができる。
このような動体追跡の技術を、魚眼監視システムに導入する試みも提案されている。たとえば、下記の特許文献3には、魚眼レンズによって撮影された歪曲円形画像を解析して動体を認識し、当該動体を含む部分を切り出して平面正則画像に変換した上でモニタ画面に表示する技術が開示されている。
特許第3012142号公報 特許第3051173号公報 特開2002−329207号公報
上述したとおり、魚眼レンズを用いた撮影によって得られる歪曲円形画像は、半球状の全方位の情報を含む画像であり、通常の肉眼観測で得られる画角に比べて、極めて広い画角をもった画像になる。このため、モニタ画面上に表示する平面正則画像は、歪曲円形画像のごく一部分を切り出して歪みを補正した部分画像にならざるを得ない。もちろん、必要に応じて、歪曲円形画像をモニタ画面上に表示して、画像全体の提示を行うことも可能であるが、歪んだ画像をそのまま提示しても、人間には、個々の撮影対象物や相互の位置関係を正しく認識することができないので、監視システムの用途には不適当である。
結局、魚眼監視システムにおいてモニタ画面上に提示される画像は、常に、撮影によって得られた歪曲円形画像の特定の一部を切り出した画像ということになる。ここで、歪曲円形画像上の切り出し部分を第1の部分から第2の部分へと切り替えると、モニタ画面上に提示される平面正則画像も切り替わることになるが、モニタ画面を注視しているユーザには、切り替え前後の画像の空間的な位置関係の把握が困難になるという問題が生じる。
特に、動体追跡の技術を盛り込んだ魚眼監視システムの場合、動体が検出された時点で、歪曲円形画像上の切り出し部分や表示倍率などの切出条件を、当該動体の表示に適した切出条件に自動的に切り替える処理が行われるが、そのような切り替えを行うと、モニタ画面上には、動体注視に適した平面正則画像の提示が可能になるものの、映像が時間的に不連続になるため、ユーザは、どの場所の映像に切り替わったのかを認識することが困難である。
そこで本発明は、歪曲円形画像の切出条件を切り替える場合にも、ユーザが、切り替え前後の画像の空間的な位置関係を容易に把握することができる魚眼監視システムおよび画像提示システムを提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換し、これを画面上に表示する魚眼監視システムにおいて、
装着した魚眼レンズによって、外界の画像を歪曲円形画像として撮影する魚眼レンズ付ビデオカメラと、
二次元XY座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、二次元XY座標系の原点Oを中心とし半径Rをもった歪曲円形画像を、少なくとも1フレーム格納する歪曲円形画像用メモリと、
魚眼レンズ付ビデオカメラから1フレームごとの時系列データとして順次与えられる歪曲円形画像を、歪曲円形画像用メモリに格納する画像入力部と、
二次元UV座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像用メモリと、
平面正則画像用メモリに格納されている平面正則画像を読み出して出力する画像出力部と、
画像出力部から出力された平面正則画像を画面上に表示するモニタ装置と、
歪曲円形画像上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件を、歪曲円形画像の一部から平面正則画像を切り出すための条件として決定する実切出条件決定部と、
歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像の切出中心点Pで示される切り出し位置から、平面傾斜角φで示される切り出し向きに、倍率mで示される切り出しサイズの画像を切り出し、これを平面正則画像に変換して、平面正則画像用メモリに格納する画像切出変換部と、
標準切出中心点P0と、標準平面傾斜角φ0と、標準倍率m0と、によって構成される標準切出条件を格納する標準切出条件格納部と、
歪曲円形画像用メモリに時系列で順次格納される歪曲円形画像を相互に比較して動体検出処理を行い、動体検出がなされた場合に、検出動体の切り出し位置を示す目標切出中心点Pnと、検出動体の切り出し向きを示す目標平面傾斜角φnと、検出動体の切り出しサイズを示す目標倍率mnと、によって構成される目標切出条件のうち、少なくとも目標切出中心点Pnを、実切出条件決定部に与える動体検出部と、
動体検出の後、検出動体を追跡する動体追跡処理を行い、追跡動体の切り出し位置を示す追跡切出中心点P(i)と、追跡動体の切り出し向きを示す追跡平面傾斜角φ(i)と、追跡動体の切り出しサイズを示す追跡倍率m(i)と、によって構成される追跡切出条件のうち、少なくとも追跡切出中心点P(i)を、追跡動体が消滅したとの消滅判断がなされるまで、継続して実切出条件決定部に与える動体追跡部と、
を設け、
実切出条件決定部が、動体検出がなされていない静的監視期間を担当する静的監視期間担当部と、動体検出がなされた後の所定の移行期間を担当する移行期間担当部と、移行期間が完了してから消滅判断がなされるまでの動的監視期間を担当する動的監視期間担当部と、を備え、静的監視期間担当部は、標準切出条件を実切出条件と定め、移行期間担当部は、標準切出条件から目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、動的監視期間担当部は、追跡切出条件を実切出条件と定めるようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
歪曲円形画像が配置された二次元XY直交座標系を含む三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心として半径Rの仮想球面を定義し、原点Oに向かって当該仮想球面上の1点に入射した外光が、撮影に用いた魚眼レンズの光学作用によってXY平面上の1点に到達する場合に、当該仮想球面上の1点と当該XY平面上の1点とを相互に対応する点と定義し、切出中心点Pに対応する仮想球面上の点である対応点Qをとり、原点Oを起点として対応点Qを通るベクトルを視線ベクトルnと定義し、この視線ベクトルn上における、原点Oから「倍率mと半径Rとの積m・R」だけ離れた点Gを原点とし、点Gを通り視線ベクトルnに直交する平面上もしくは当該平面を湾曲させた曲面上に平面傾斜角φに応じた向きをもって配置された二次元UV座標系を定義したときに、
画像切出変換部が、二次元UV座標系上の座標(u,v)と二次元XY直交座標系上の座標(x,y)との対応関係を示す所定の対応関係式を用いて、座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出することにより、歪曲円形画像から切り出した画像を平面正則画像に変換する処理を行うようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、移行期間前半のパンニング期間において、切出中心点Pが標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変わる実切出条件を定め、移行期間後半のズーミング期間において、倍率mが標準倍率m0から目標倍率mnへと段階的に変わる実切出条件を定めるようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1または第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、移行期間の全期間をパンニング期間およびズーミング期間に設定し、切出中心点Pが標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変わると同時に、倍率mが標準倍率m0から目標倍率mnへと段階的に変わる実切出条件を定めるようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、パンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、標準切出中心点P0についての仮想球面上の対応点Q0と、目標切出中心点Pnについての仮想球面上の対応点Qnと、を定義したときに、切出中心点Pについての仮想球面上の対応点Qの仮想球面上での移動経路が、対応点Q0と対応点Qnとを仮想球面上で結ぶ最短経路となるようにするものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第5の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O上に設定されており、
移行期間担当部が、原点Oから目標切出中心点Pnへ向かって、歪曲円形画像の半径に沿って切出中心点Pを移動させるようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O以外の位置に設定されており、
移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、パンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、標準切出中心点P0から原点Oへ向かって、歪曲円形画像の半径に沿って切出中心点Pを移動させた後、原点Oから目標切出中心点Pnへ向かって、歪曲円形画像の半径に沿って切出中心点Pを移動させるようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第5〜第7の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、対応点Qの仮想球面上の運動が等速運動となるように、切出中心点Pの位置を変化させるようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第5〜第7の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、対応点Qの仮想球面上の運動が、パンニング期間の開始部分および終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるような不等速運動となるように、切出中心点Pの位置を変化させるようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第5〜第7の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、
対応点Qの仮想球面上の移動距離bと時間tとの関係を示す関数を格納する関数格納部と、
この関数を用いて求まる「時間tにおける対応点Qの位置」に対応するXY平面上の点を、当該時間tにおける切出中心点Pとして出力する対応点変換部と、
を有するようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、パンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、切出中心点Pについての仮想球面上の対応点Qが、予め設定された所定の球面移動経路上を、時間に関する関数として設定された所定の球面移動速度で移動するように、切出中心点Pの位置を決定するようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をズーミング期間に設定し、ズーミング期間の間、時間軸に沿って単調増加もしくは単調減少するように、倍率mを標準倍率m0から目標倍率mnへと変化させるようにしたものである。
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、ズーミング期間の間、倍率mを時間軸に沿って線形変化させるようにしたものである。
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第12の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、ズーミング期間の開始部分および終了部分の倍率変化速度が、中間部分の変化速度よりも遅くなるような不等速変化するように、倍率mを時間軸に沿って変化させるようにしたものである。
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第12の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、
倍率mと時間tとの関係を示す関数を格納する関数格納部と、
この関数を用いて求まる時間tにおける倍率を、当該時間tにおける倍率mとして出力する倍率決定部と、
を有するようにしたものである。
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
標準切出条件格納部には、撮影画像における実世界の鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような標準平面傾斜角φ0を設定しておき、
動体検出部が、鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような目標平面傾斜角φnを設定し、
移行期間担当部が、鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるように、平面傾斜角φを標準平面傾斜角φ0から目標平面傾斜角φnへと変化させ、
動体追跡部が、鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるように、追跡平面傾斜角φ(i)を設定するようにしたものである。
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第16の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
撮像面となるXY平面が鉛直面に一致し、Y軸が鉛直軸Wに対して角度ξをなす方向を向くように魚眼レンズ付ビデオカメラが設置されており、
二次元UV座標系の原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸として与えられる回転基準軸Jと、二次元UV座標系のU軸とのなす角を平面傾斜角φと定義し、視線ベクトルnのXY平面上への正射影とY軸とのなす角を方位角αと定義し、U軸方向を平面正則画像の横方向と定義した場合に、常にφ=−α−ξとなる設定が行われるようにしたものである。
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第17の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O上に設定されており、
標準切出条件格納部には、V軸が撮影画像の原点Oの位置における実世界の鉛直軸に対応するように平面正則画像が切り出されるような切り出し向きを示す標準切出条件を設定しておき、
動体検出部は、目標切出中心点Pnについての方位角をαnとしたときに、目標平面傾斜角φn=−αn−ξなる設定を行い、
移行期間担当部が、常に平面傾斜角φ=φnに設定するようにしたものである。
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第16の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
撮像面となるXY平面が水平面に一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラが設置されており、
二次元UV座標系の原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸として与えられる回転基準軸Jと、二次元UV座標系のU軸とのなす角を平面傾斜角φと定義し、U軸方向を平面正則画像の横方向と定義した場合に、常にφ=0°となる設定が行われるようにしたものである。
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
画像切出変換部が、平面正則画像を構成する1つの着目画素の座標(u,v)についての対応座標(x,y)を算出し、歪曲円形画像用メモリ内の対応座標(x,y)の近傍に配置された画素の画素値を読み出し、読み出した画素値に基づいて着目画素の画素値を決定する処理を、平面正則画像を構成する各画素について実行し、平面正則画像用メモリ内に各画素の画素値を書き込むことにより、平面正則画像に変換する処理を行うようにしたものである。
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第20の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
画像切出変換部が、座標(u,v)で示される位置に配置された着目画素の画素値を決定する際に、対応座標(x,y)で示される位置の近傍に配置された歪曲円形画像上の複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行うようにしたものである。
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第2の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
画像切出変換部が、仮想球面上に、撮影に用いた魚眼レンズの投影方式に応じて、二次元XY直交座標系上の座標(xi,yi)で示される点Siに対応する球面上対応点Qiをとり、原点Oと球面上対応点Qiとを結ぶ直線と二次元UV座標系の配置面との交点Tiの二次元UV座標系上での座標を(ui,vi)としたときに、座標(xi,yi)が座標(ui,vi)に対応する対応座標として求まる対応関係式を用いるようにしたものである。
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第22の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
画像切出変換部が、
歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像が、正射影方式の魚眼レンズによって撮影された正射影画像である場合には、座標(xp,yp)で示される切出中心点Pに対して、当該点Pを通りZ軸に平行な直線と仮想球面との交点として与えられる座標(xp,yp,zp)で示される点を球面上対応点Qとし、座標(xi,yi)で示される点Siに対して、当該点Siを通りZ軸に平行な直線と仮想球面との交点として与えられる座標(xi,yi,zi)で示される点を球面上対応点Qiとする正射影画像用対応関係式を用い、
歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像が、非正射影方式の魚眼レンズによって撮影された非正射影画像である場合には、正射影画像上の座標と非正射影画像上の座標との間の座標変換式を用いて正射影画像用対応関係式を補正することにより得られる非正射影画像用対応関係式を用いるようにしたものである。
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第23の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
画像切出変換部が、視線ベクトルnのXY平面上への正射影とY軸とのなす角を方位角αとし、視線ベクトルnとZ軸正方向とのなす角を天頂角βとして、
A=cosφ cosα − sinφ sinα cosβ
B=−sinφ cosα − cosφ sinα cosβ
C=sinβ sinα
D=cosφ sinα + sinφ cosα cosβ
E=−sinφ sinα + cosφ cosα cosβ
F=−sinβ cosα
w=mR
との定義の下で、座標(u,v)と座標(x,y)との対応関係を示す正射影画像用対応関係式として、
x=R(uA+vB+wC)/√(u+v+w
y=R(uD+vE+wF)/√(u+v+w
なる式を用いるようにしたものである。
(25) 本発明の第25の態様は、上述した第24の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
画像切出変換部が、
歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像が、等距離射影方式の魚眼レンズによって撮影された等距離射影画像である場合には、正射影画像上の座標(xa,ya)を等距離射影画像上の座標(xb,yb)に変換する座標変換式
xb=xa(2R/πr) sin-1 (r/R)
yb=ya(2R/πr) sin-1 (r/R)
但し、r=√(xa+ya
を用いて、正射影画像用対応関係式に対する補正を行うようにしたものである。
(26) 本発明の第26の態様は、上述した第1〜第25の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体検出部が、
歪曲円形画像用メモリに所定の初期時点で格納されていた画像を背景歪曲円形画像として保持する背景画像保持部と、
歪曲円形画像用メモリに時系列でフレームごとに順次格納される歪曲円形画像上の個々の画素の画素値を、背景歪曲円形画像上の対応する画素の画素値と比較し、両者の差がしきい値以上となる画素を着目画素として抽出する対応画素比較部と、
着目画素からなる連続領域であって、基準面積以上、かつ、縦幅および横幅がともに所定の基準寸法以上となる条件を満たす着目領域を探索する着目領域探索部と、
着目領域を含む歪曲円形画像が、基準のフレーム数以上、連続して得られた場合に、動体検出がなされた旨の判定を行い、最終着目領域に基づいて目標切出条件を生成する動体検出判定部と、
を有するようにしたものである。
(27) 本発明の第27の態様は、上述した第26の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体検出判定部が、同一の動体に起因して形成されたと予想される特定の着目領域を含む歪曲円形画像が、基準のフレーム数以上、連続して得られた場合に、動体検出がなされた旨の判定を行うようにし、互いに離隔した複数の着目領域が存在する場合には、より面積の大きい着目領域を上記特定の着目領域とする判定を行うようにしたものである。
(28) 本発明の第28の態様は、上述した第26または第27の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体検出判定部が、最終着目領域の重心位置を目標切出中心点Pnと設定し、最終着目領域の縦幅および横幅に基づいて目標倍率mnを設定するようにしたものである。
(29) 本発明の第29の態様は、上述した第1〜第28の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体追跡部が、
歪曲円形画像用メモリに格納されている第(i−1)番目のフレーム画像上において既に認識されている既知動体領域の情報を保持する既知動体領域保持部と、
歪曲円形画像用メモリに格納されている第i番目のフレーム画像から、既知動体領域の近傍に位置する複数通りの領域を候補領域として抽出する候補領域抽出部と、
既知動体領域と複数通りの候補領域とについて、それぞれ画像の特徴を示す特徴量を求める演算を行う特徴量演算部と、
特徴量演算部によって演算された、既知動体領域の特徴量と、複数通りの候補領域の特徴量と、をそれぞれ比較し、既知動体領域の特徴量に対する類似度が所定の基準以上、かつ、最も高い特徴量をもった候補領域を、第i番目のフレーム画像上の新動体領域と認識する新動体領域認識部と、
新動体領域認定部における認識が成功した場合には、新動体領域に基づいて第i番目のフレーム画像についての追跡切出条件を生成し、認識が失敗した場合には、追跡動体が消滅したとの消滅判断を行う動体追跡判定部と、
を有し、
既存動体領域保持部が、動体検出部から与えられた検出動体の領域情報を、最初の既知動体領域の情報として保持し、以後、新動体領域の情報を新たな既知動体領域の情報として保持するようにしたものである。
(30) 本発明の第30の態様は、上述した第29の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体追跡判定部が、第i番目のフレーム画像について認識された新動体領域の重心位置を追跡切出中心点P(i)と設定し、この新動体領域の縦幅および横幅に基づいて追跡倍率m(i)を設定するようにしたものである。
(31) 本発明の第31の態様は、上述した第29または第30の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
特徴量演算部が、演算対象として与えられた領域を構成する画素の色ヒストグラムもしくはエッジ方向ヒストグラムを特徴量として求めるようにしたものである。
(32) 本発明の第32の態様は、上述した第1〜第31の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体検出部が、動体追跡部による動体追跡処理が行われている間、新たな動体検出処理を休止するようにしたものである。
(33) 本発明の第33の態様は、上述した第1〜第31の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体検出部が、動体追跡部による動体追跡処理が行われている間も動体検出処理を続行し、動体追跡処理の対象となっている旧動体とは異なる新動体の検出がなされた場合、この新動体についての目標切出条件を実切出条件決定部に与える処理を行い、
実切出条件決定部に新動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部が、旧動体についての追跡切出条件から新動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、
動体追跡部が、新動体に対する追跡処理を行うようにしたものである。
(34) 本発明の第34の態様は、上述した第1〜第31の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体検出部が、動体追跡部による動体追跡処理が行われている間も動体検出処理を続行し、動体追跡処理の対象となっている旧動体とは異なり、かつ、旧動体よりも面積が大きいという条件を満たす別な動体の検出がなされた場合、当該条件を満たす新動体についての目標切出条件を実切出条件決定部に与える処理を行い、
実切出条件決定部に新動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部が、旧動体についての追跡切出条件から新動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、
動体追跡部が、新動体に対する追跡処理を行うようにしたものである。
(35) 本発明の第35の態様は、上述した第33または第34の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
動体追跡部が、新動体に対する追跡処理を行うとともに、旧動体に対する追跡処理も併せて行い、新動体に基づいて追跡切出条件を設定し、旧動体よりも新動体が先に消滅した場合、動体検出部に代わって、旧動体についての目標切出条件を、実切出条件決定部に与え、
実切出条件決定部に旧動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部が、新動体についての追跡切出条件から旧動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、
動体追跡部が、旧動体に対する追跡処理を続行するようにしたものである。
(36) 本発明の第36の態様は、上述した第33〜第35の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
移行期間担当部が、旧動体から新動体へ交替する移行処理を行う際に、旧動体についての動的監視期間が所定の最小基準時間に満たない場合には、動的監視期間が最小基準時間に達するまで、待機時間をおいてから処理を開始するようにしたものである。
(37) 本発明の第37の態様は、上述した第1〜第36の態様に係る魚眼監視システムにおいて、
ユーザの設定操作に基づいて、実切出条件決定部が決定すべき実切出条件および標準切出条件格納部に格納される標準切出条件を任意に設定する機能をもった手動条件設定部を更に設けたものである。
(38) 本発明の第38の態様は、上述した第1〜第37の態様に係る魚眼監視システムにおける魚眼レンズ付ビデオカメラおよびモニタ装置を除く構成部分を、コンピュータに専用プログラムを組み込むことにより構成するようにしたものである。
(39) 本発明の第39の態様は、上述した第1〜第37の態様に係る魚眼監視システムにおける魚眼レンズ付ビデオカメラおよびモニタ装置を除く構成部分を、これら構成部分に対応する機能を果たす電子回路が組み込まれた半導体集積回路により構成するようにしたものである。
(40) 本発明の第40の態様は、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換し、これを画面上に提示する画像提示システムにおいて、
二次元XY座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、二次元XY座標系の原点Oを中心とし半径Rをもち、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像用メモリと、
二次元UV座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像用メモリと、
平面正則画像用メモリ内に格納されている平面正則画像を画面上に表示する画像表示装置と、
歪曲円形画像上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件を、歪曲円形画像の一部から平面正則画像を切り出すための条件として決定する実切出条件決定部と、
実切出条件決定部から与えられた実切出条件に基づいて、歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像の切出中心点Pで示される切り出し位置から、平面傾斜角φで示される切り出し向きに、倍率mで示される切り出しサイズの画像を切り出し、これを平面正則画像に変換して、平面正則画像用メモリに格納する画像切出変換部と、
を設け、
実切出条件決定部が、現在の切出中心点P0を含む現切出条件から、目標となる切出中心点Pnを含む目標切出条件への変更を行う際に、画像切出変換部に対して与える切出中心点Pの位置を、点P0から点Pnへと段階的に移行させる処理を行うようにしたものである。
(41) 本発明の第41の態様は、上述した第40の態様に係る画像提示システムにおいて、
歪曲円形画像が配置された二次元XY直交座標系を含む三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心として半径Rの仮想球面を定義し、原点Oに向かって当該仮想球面上の1点に入射した外光が、撮影に用いた魚眼レンズの光学作用によってXY平面上の1点に到達する場合に、当該仮想球面上の1点と当該XY平面上の1点とを相互に対応する点と定義し、切出中心点Pに対応する仮想球面上の点である対応点Qをとり、原点Oを起点として対応点Qを通るベクトルを視線ベクトルnと定義し、この視線ベクトルn上における、原点Oから「倍率mと半径Rとの積m・R」だけ離れた点Gを原点とし、点Gを通り視線ベクトルnに直交する平面上もしくは当該平面を湾曲させた曲面上に平面傾斜角φに応じた向きをもって配置された二次元UV座標系を定義したときに、
画像切出変換部が、二次元UV座標系上の座標(u,v)と二次元XY直交座標系上の座標(x,y)との対応関係を示す所定の対応関係式を用いて、座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出することにより、歪曲円形画像から切り出した画像を平面正則画像に変換する処理を行うようにしたものである。
(42) 本発明の第42の態様は、上述した第41の態様に係る画像提示システムにおいて、
実切出条件決定部が、切出中心点Pについての仮想球面上の対応点Qが、予め設定された所定の球面移動経路上を、時間に関する関数として設定された所定の球面移動速度で移動するように、切出中心点Pの位置を決定するようにしたものである。
(43) 本発明の第43の態様は、上述した第40〜第42の態様に係る画像提示システムにおいて、
実切出条件決定部が、切出中心点Pの位置を点P0から点Pnへと段階的に移行させる処理を行うとともに、倍率mの値を、現在の倍率m0から目標となる倍率mnへと段階的に移行させる処理を行うようにしたものである。
(44) 本発明の第44の態様は、上述した第43の態様に係る画像提示システムにおいて、
実切出条件決定部が、時間に関する関数として設定された所定の倍率変更速度で倍率mの値を移行させるようにしたものである。
本発明の魚眼監視システムおよび画像提示システムによれば、歪曲円形画像の切出条件を切り替える際に、所定の移行期間を設け、この移行期間に切出条件が段階的に変わるようにしたため、モニタ画面上の平面正則画像には、切り替え時にパンニングやズーミングの効果が加わることになる。したがって、ユーザは、切り替え前後の画像の空間的な位置関係を容易に把握することができるようになる。
正射影方式の魚眼レンズを用いた撮影により歪曲円形画像Sを形成する基本モデルを示す斜視図である。 魚眼レンズを用いた撮影によって得られた歪曲円形画像Sの一例を示す平面図である(歪曲円形画像Sの一般的なイメージを示すものであり、正確な画像を示すものではない)。 歪曲円形画像Sの一部分に切出領域Eを定義した例を示す平面図である。 歪曲円形画像Sを含む二次元XY直交座標系と、平面正則画像Tを含む二次元UV直交座標系との関係を示す斜視図である。 二次元UV直交座標系上に定義された平面正則画像Tと平面傾斜角φとの関係を示す平面図である。 二次元XY直交座標系から二次元UV直交座標系への座標変換の原理を示す斜視図である。 図6の斜視図に示されている各構成要素を水平方向から見た図である。 図6の斜視図に示されている各構成要素を上方から見た図である。 倍率mを考慮したモデルにおいて、二次元XY直交座標系上における点Si(xi,yi)と二次元UV直交座標系上における点Ti(ui,vi)との対応関係を示す斜視図である。 倍率m=1に設定した場合の二次元UV直交座標系の配置および切出領域E1の範囲を示す側面図である。 倍率m>1に設定した場合の二次元UV直交座標系の配置および切出領域E2の範囲を示す側面図である。 図2に示す歪曲円形画像Sの一部分を切り出すことにより、二次元UV直交座標系上に得られた平面正則画像Tの一例を示す平面図である。 図2に示す歪曲円形画像Sの一部分を切り出すことにより、二次元UV直交座標系上に得られた平面正則画像Tの別な一例を示す平面図である。 二次元UV直交座標系上に定義された平面正則画像Tを示す平面図である。 二次元XY直交座標系上に定義された歪曲円形画像Sを示す平面図である。 二次元XY直交座標系上における点S1(x1,y1),S2(x2,y2)と、二次元UV直交座標系上における点T1(u1,v1),T2(u2,v2)との対応関係を示すための仮想球面の側面図である。 二次元XY直交座標系上における座標(x,y)と二次元UV直交座標系上における座標(u,v)との対応関係を示す正射影画像用対応関係式である。 魚眼レンズ付ビデオカメラを屋外の監視用に設置した例を示す側面図である。 図18に示す魚眼レンズ付ビデオカメラを用いた撮影によって得られる歪曲円形画像の一例を示す平面図である。 図19に示す歪曲円形画像上に、2通りの切出領域E0,Enを設定した例を示す平面図である。 図20に示す2通りの切出領域E0,Enに対応して得られる平面正則画像を示す平面図である。 図19に示す歪曲円形画像について、動体検出が行われた状態を示す平面図である。 図22に示す検出動体に対して、更に動体追跡が行われた状態を示す平面図である。 図22に示す2通りの切出領域E0,Enに対応して得られる平面正則画像を示す平面図である。 図22に示す動体検出が行われたときに、切出領域を徐々に移動させることによりパンニング効果を生じさせる原理を示す平面図である。 図25に示すパンニング効果の後に、ズーミング効果を生じさせる原理を示す平面図である。 図26に示すズーミング効果の後に、動体追跡を行う原理を示す平面図である。 本発明の一実施形態に係る魚眼監視システム100の基本構成を示すブロック図である。 図28に示すシステムの動体検出部160によって行われる動体検出処理の手順を示す流れ図である。 図29の流れ図におけるステップS13,S14の具体的プロセスを示す平面図である。 図29の流れ図におけるステップS13,S14の具体的プロセスによって、猫が動体として検出された例を示す平面図である。 図28に示すシステムの動体検出部160の詳細構成を示すブロック図である。 図28に示すシステムの動体追跡部190によって行われる動体追跡処理の手順を示す流れ図である。 図28に示すシステムの動体追跡部190の詳細構成を示すブロック図である。 図28に示すシステムの実切出条件決定部170によって行われる実切出条件の決定処理の手順を示す流れ図である。 図28に示すシステムの実切出条件決定部170の詳細構成を示すブロック図である。 図36に示す移行期間担当部172によって行われる具体的な移行プロセスを示す平面図である。 図22に示す動体検出が行われた場合における移行期間の実切出条件の具体的な変遷例を示す表である。 本発明に係る等速パンニングの具体的方法を示す側面図である。 本発明に係る等速パンニングの具体的方法を示す平面図およびグラフである。 本発明に係る不等速パンニングの具体的方法を示す平面図およびグラフである。 本発明に係る等速および不等速ズーミングの具体的方法を示すグラフである。 本発明に係る等速および不等速パンニングの具体的なステップを示す表である。 本発明に係る等速および不等速ズーミングの具体的なステップを示す表である。 図36に示す移行期間担当部172の詳細構成を示すブロック図である。 図45に示す実切出中心点決定部70の詳細構成を示すブロック図である。 図45に示す実倍率決定部90の詳細構成を示すブロック図である。 撮像面が鉛直面に一致し、X軸が実世界の鉛直軸Wに一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラを設置した場合の切出領域の向きを示す平面図である。 撮像面が鉛直面に一致し、実世界の鉛直軸Wに対してY軸が角度ξをなすような向きに魚眼レンズ付ビデオカメラを設置した場合の切出領域の向きを示す平面図である。 撮像面が水平面に一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラを設置した場合の切出領域の向きを示す平面図である。 撮像面が水平面に一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラを設置した場合の撮影画像の水平面方向を示す平面図である。 標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O以外の位置に設定されている場合のパンニング経路の一例を示す平面図である。 標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O以外の位置に設定されている場合のパンニング経路の別な一例を示す平面図である。 図53に示すパンニング経路を採る場合の切出中心点Pの移動経路を求める原理を示す斜視図である。 図54に示す原理に基づいて、切出中心点Pの位置を決定するための演算式を示す図である。 複数の動体が存在する場合の第1の取扱方針を示すタイムチャートである。 複数の動体が存在する場合の第2の取扱方針を示すタイムチャートである。 複数の動体が存在する場合の第3の取扱方針を示すタイムチャートである。 移行処理を行う前に待機時間を確保する運用を示すタイムチャートである。 正射影方式の魚眼レンズにおける入射光の投影状態を示す側面図である。 正射影方式の魚眼レンズを用いて形成される正射影画像と、等距離射影方式の魚眼レンズを用いて形成される等距離射影画像と、の関係を示す斜視図である。 等距離射影画像上の座標と正射影画像上の座標との間で座標変換を行うための変換式を示す図である。 二次元XY直交座標系上における点Si(xi,yi)と曲面上に定義された二次元UV座標系上における点Ci(ui,vi)との対応関係を示す斜視図である。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.画像変換処理の基本モデル >>>
魚眼レンズを用いた撮影で得られる画像は、歪曲した円形の画像になるため、モニタの画面上に表示するには、この歪曲円形画像を、歪みの少ない平面正則画像に変換する処理を行う必要がある。そこで、ここでは、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一般的な特徴と、その一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理の基本原理を説明する。
図1は、正射影方式の魚眼レンズを用いた撮影により歪曲円形画像Sを形成する基本モデルを示す斜視図である。一般に、魚眼レンズは、その投影方式によって複数の種類に分けられるが、この図1に示すモデルは、正射影方式の魚眼レンズについてのものである(正射影方式以外の魚眼レンズに本発明を適用する手法は、§9−3で述べる)。
図1には、三次元XYZ直交座標系におけるXY平面上に歪曲円形画像Sが形成された例が示されている。ここでは、図示のとおり、Z軸を図の上方にとり、Z軸の正の領域側にドーム状の仮想球面H(半球)を定義した例を示すことにする。
XY平面上に形成された歪曲円形画像Sは、座標系の原点Oを中心とした半径Rの円を構成する画像であり、Z軸の正の領域側における180°の画角をもった領域に存在する像を歪ませて記録したものに相当する。図2は、魚眼レンズを用いた撮影によって得られた歪曲円形画像Sの一例を示す平面図である。このように、歪曲円形画像Sには、Z軸の正の領域側に存在するすべての像が記録されることになるが、その中心部分と周囲部分とでは、像の縮尺倍率が異なっており、記録された像の形状は歪んだものになる。なお、図2に示す歪曲円形画像Sは、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一般的なイメージを示すものであり、実際の魚眼レンズを用いて得られる正確な画像を示すものではない。
実際の魚眼レンズは、複数の凸レンズや凹レンズを組み合わせた光学系によって構成されるが、その光学的な特性は、図1に示すような仮想球面Hによってモデル化できることが知られている。すなわち、歪曲円形画像Sの上面に、半径Rをもったドーム状の仮想球面H(半球)を配置したモデルを考えれば、正射影方式の魚眼レンズの光学的特性は、仮想球面H上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線L1は、Z軸に平行な入射光線L2として、XY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする、と考えてよい。逆言すれば、図2において歪曲円形画像S上の点S(x,y)に位置する画素は、図1に示す入射光線L1の延長線上に存在する物体上の1点を示していることになる。
もちろん、実際の魚眼レンズで生じている光学的現象は、複数の凸レンズや凹レンズによる屈折により、撮像対象となる物体の特定の点が、XY平面上の特定の点S(x,y)上に結像する現象ということになるが、画像変換処理などを行う上では、図1に示すような仮想球面Hを用いたモデルに置き換えた議論を行っても何ら支障はない。したがって、前掲の特許文献に開示されている画像変換処理でも、このようなモデルを前提とした手法が示されており、本発明における以下の説明においても、このようなモデルを前提とした説明を行うことにする。
本発明に係る装置では、歪曲円形画像S上の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理が必要になる。たとえば、図2に示す歪曲円形画像Sを見たユーザが、その左下に描かれている女性の画像を、歪みのない正しい画像で観察したいと考えたとしよう。このような場合、ユーザは、歪曲円形画像Sのどの部分を切り出して変換を行うべきかを指定する必要がある。たとえば、図3にハッチングを施して示すような切出領域Eを変換対象とすべき領域として指定するのであれば、最も直観的な指定方法は、その中心点P(xp,yp)の位置を指定する方法であろう。本願では、このようにしてユーザやシステムによって指定される点Pを、切出中心点Pと呼ぶことにする。もっとも、歪曲円形画像Sは歪んだ画像であるため、切出中心点Pは、切出領域Eについての正確な幾何学的中心にはならない。
ここでは、切出中心点P(xp,yp)を中心とした切出領域E内の画像を、平面正則画像に変換するために、次のような基本モデルを考える。図4は、この基本モデルにおいて、歪曲円形画像Sを含む二次元XY直交座標系と、平面正則画像Tを含む二次元UV直交座標系との関係を示す斜視図である。図示のとおり、歪曲円形画像Sは、三次元XYZ直交座標系のXY平面上に定義されているので、歪曲円形画像S自身は、二次元XY直交座標系上に定義された画像である。そこで、この歪曲円形画像S上に定義された切出中心点P(xp,yp)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点Gを考える。この交点Gは、いわば切出中心点P(xp,yp)の真上の点であり、その位置座標は(xp,yp,zp)である。
次に、この交点G(xp,yp,zp)において、仮想球面Hに接する接平面を定義し、この接平面上に二次元UV直交座標系を定義する。そして、平面正則画像Tを、この二次元UV直交座標系上の画像として求めることにする。図4に示す例の場合、交点G(xp,yp,zp)が原点となるように二次元UV直交座標系が定義されている。結局、このモデルにおけるUV座標系の原点Gは、仮想球面H上のいずれかに設定され、UV座標系を構成するUV平面は、この原点Gの位置における仮想球面Hに対する接平面に一致する。
UV座標系の原点となる点G(xp,yp,zp)の位置は、図示のとおり、方位角αと天頂角βとによって特定することができる。ここで、方位角α(0≦α<360°)は、切出中心点P(xp,yp)とXY座標系の原点Oとを結ぶ直線とY軸とのなす角であり、天頂角β(0≦β≦90°)は、UV座標系の原点となる点G(xp,yp,zp)とXY座標系の原点Oとを結ぶ直線とZ軸とのなす角(鋭角)である。
このように、UV平面は、方位角αと天頂角βとを指定することによって特定することができるが、UV座標系を決定するには、更にもう1つの角度φを指定する必要がある。この角度φは、直線OGを回転軸としたUV座標系の向きを示すパラメータであり、図4の例では、U軸とJ軸とのなす角度として定義されている。ここで、J軸は、点G(xp,yp,zp)を通り、XY平面に平行かつ直線OGに直交する軸であり、以下、回転基準軸と呼ぶことにする。要するに、角度φは、UV座標系においてU軸方向を向いたベクトルUと、回転基準軸Jの方向を向いたベクトルJと、を定義したときに、ベクトルUとベクトルJとのなす角度として定義される角であり、通常、「平面傾斜角」と呼ばれている。
図5は、UV座標系上に定義された平面正則画像Tと平面傾斜角φとの関係を示す平面図である。ここに示す例の場合、平面正則画像Tは、UV座標系の原点G(xp,yp,zp)を中心とするUV平面上の矩形として定義されており、その長辺はU軸に平行、短辺はV軸に平行になっている。平面傾斜角φは、上述したとおり、U軸とJ軸とのなす角であるから、図5に示す例の場合、UV平面上での平面正則画像Tの回転ファクターを示すパラメータということになる。
結局、図4に示す平面正則画像Tを形成するためのUV座標系の位置および向きは、方位角α,天頂角β,平面傾斜角φという3つの角度からなるパラメータを設定することにより一義的に決定される。この3つの角度は、一般にオイラー角と呼ばれている。
さて、ここで行うべき画像変換処理は、結局、XY座標系からUV座標系への座標変換ということになる。そこで、XY座標系とUV座標系との幾何学的な位置関係を、もう少し詳しく見てみよう。図6の斜視図に示されているように、XY平面上の歪曲円形画像Sを、方位角αによって示される方向に対して、天頂角βだけ傾斜すると、傾斜面S1が得られる。ここで、図示のとおり、XY座標系の原点OからUV座標系の原点Gへ向かう方向に視線ベクトルnを定義し、傾斜面S1をこの視線ベクトルnの方向に距離Rだけ平行移動させると、接平面S2が得られることになる。移動距離Rは、歪曲円形画像Sの半径であり、仮想球面Hの半径でもある。
接平面S2は、点Gにおいて仮想球面Hに接する平面であり、視線ベクトルnは、点Gにおける仮想球面Hの法線方向を示すベクトルである。そして、UV座標系は、この接平面S2上に定義される座標系であり、点Gを原点とし、U軸とJ軸(点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸であり、図における傾斜面S1とXY平面との交線に平行な軸になる。)とのなす角が平面傾斜角φとなるように定義された二次元直交座標系である。図7は、図6の斜視図に示されている各構成要素を水平方向から見た図である。前述したとおり、点G(xp,yp,zp)は、歪曲円形画像S上に定義された切出中心点P(xp,yp)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点として定まる点であり、その位置は方位角αおよび天頂角βによって定まる。一方、図8は、図6の斜視図に示されている各構成要素を上方から見た図である。図に示す交点G(xp,yp,zp)は、仮想球面H上の点であり、XY平面の上方に位置している。そして、この交点G(xp,yp,zp)における仮想球面Hに対する接平面上にUV座標系が定義される。このとき、U軸とJ軸とのなす角がφとなるように、U軸の向きが定められる。
<<< §2.倍率を加味した画像変換処理の基本原理 >>>
§1では、原点G(xp,yp,zp)が仮想球面H上の1点となるように、UV座標系を定義する基本モデルを述べた。この場合、XY座標系の原点OとUV座標系の原点Gとの距離は半径Rに一致する。これに対して、通常は、変換により得られる平面正則画像にスケーリングファクタを導入した実用モデルが利用される。すなわち、所定の倍率mを設定し、2点OG間の距離が、半径Rのm倍となるような位置にUV座標系を配置し、このUV座標系上に、倍率mに対応するサイズをもった平面正則画像Tを定義する実用モデルが用いられる。ここでは、この実用モデルにおける画像変換処理の基本原理を説明する。
図9は、この実用モデルについて、二次元XY直交座標系上における点Si(xi,yi)と二次元UV直交座標系上における点Ti(ui,vi)との対応関係を示す斜視図である。図4に示す基本モデルとの相違は、二次元UV直交座標系の原点G(xg,yg,zg)の位置である。すなわち、図9に示す実用モデルの場合、2点OG間の距離は、m・Rに設定されている。図9は、m=2に設定した例である。図4に示す基本モデルは、この実用モデルにおいて、m=1に設定し、原点G(xg,yg,zg)を球面上対応点Q(xp,yp,zp)に一致させるようにした特殊な例に相当する。
ここで、球面上対応点Q(xp,yp,zp)は、切出中心点P(xp,yp)に対応した仮想球面H上の点であり、正射影方式の魚眼レンズの場合、切出中心点P(xp,yp)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点として定義される点である。視線ベクトルnは、原点Oから球面上対応点Q(xp,yp,zp)へ伸びるベクトルとして定義されるので、切出中心点P(xp,yp)を定めることは、視線ベクトルnを定めることと等価である。
もちろん、この図9に示す実用モデルの場合も、二次元UV直交座標系の原点G(xg,yg,zg)は、視線ベクトルn上の点であり、UV座標系は、この視線ベクトルnに直交する平面上に定義される。また、U軸の向きは、平面傾斜角φに基づいて決定される。具体的には、図示のとおり、原点G(xg,yg,zg)を通る回転基準軸JとU軸とのなす角度が、平面傾斜角φに一致するように、UV座標系の向きが決定されることになる。
ここで行う画像変換処理の目的は、XY座標系上に定義された歪曲円形画像S上の切出中心点P(xp,yp)を中心とした切出領域内の歪曲画像を切り出して変形し、UV座標系上に平面正則画像Tを得ることにある。具体的には、UV座標系上に得られる平面正則画像T上の1点Ti(ui,vi)に位置する画素の画素値を、これに対応するXY座標系上の1点Si(xi,yi)の近傍に位置する画素の画素値に基づいて決定することである。そのためには、§3で述べるように、座標(ui,vi)と座標(xi,yi)との対応関係を示す対応関係式が必要になる。
このような画像変換処理を行う上で、視線ベクトルnは、平面正則画像の切り出し位置を示すパラメータとして機能する。視線ベクトルnを図示の方向に設定した場合、切出中心点P(xp,yp)を中心とした切出領域内から、平面正則画像の切り出しが行われることになる。視線ベクトルnの方向を変えれば、切出中心点Pの位置も変わることになり、平面正則画像の切り出し位置も変わってくる。一方、平面傾斜角φは、平面正則画像の切り出し向きを示すパラメータとして機能し、倍率m(2点OG間の距離を決めるファクター)は、平面正則画像の切り出しサイズを示すパラメータとして機能する。
図10および図11は、倍率mと切出領域Eとの関係を示す側面図である。図10は、倍率m=1に設定したモデル(図4に示すモデル)に相当し、切出中心点Pの真上に位置する球面上対応点Qが、そのままUV座標系の原点G1となっており、2点O,G1間の距離は半径Rに等しい。これに対して、図11は、倍率m>1に設定したモデル(図9に示すモデル)に相当し、切出中心点Pの真上に位置する球面上対応点Qから離れた位置にUV座標系の原点G2が設定されており、2点O,G2間の距離は半径Rのm倍に等しい。いずれも切出中心点Pの位置、球面上対応点Qの位置、視線ベクトルnの位置は同じであるが、原点の位置G1,G2が異なるため、UV座標系の位置(その上に形成される平面正則画像T1,T2の位置)も異なっている。
図10と図11とを比較すれば、倍率mに応じて、切出領域Eが異なることが理解できよう。すなわち、倍率m=1の設定では、図10のように、E1が切出領域となるのに対して、倍率m>1の設定では、図11のように、E2が切出領域となり、倍率mが大きくなるほど、切出領域Eの面積は小さくなる。ここで、得られる平面正則画像T1,T2をモニタ装置の画面上に表示させる場合、平面正則画像T1,T2の大きさ(モニタ画面の大きさに応じて定まる)は一定である。したがって、平面正則画像T1,T2は、いずれも切出中心点Pを中心として切り出した画像であるが、倍率m>1に設定した平面正則画像T2の方が、より狭い切出領域E2を拡大表示した画像になる。別言すれば、平面正則画像T1が、画角F1内の被写体を撮影した画像になるのに対して、平面正則画像T2は、より狭い画角F2内の被写体を撮影した画像になる。
これに対して、平面傾斜角φは、平面正則画像の切り出し向きを示すパラメータであり、平面傾斜角φを変えると、平面正則画像T内に現れる被写体と画像枠との位置関係(回転方向に関する位置関係)が変わることになる。これは、図5において、角度φを増加させると、U軸(およびV軸)が反時計回りに回転し、平面正則画像Tの画像枠も反時計回りに回転することから、容易に理解できよう。
結局、ユーザは、視線ベクトルn(切出中心点P),倍率m,平面傾斜角φという3つのパラメータを設定することにより、UV座標系上に所望の平面正則画像Tを得ることができる。また、得られた平面正則画像Tが満足のゆくものでなかった場合には、これら3つのパラメータを適宜修正することにより、平面正則画像Tを修正することができる。すなわち、得られた画像の向きに満足しなければ、平面傾斜角φを修正すればよいし、得られた画像の画角に満足しなければ、倍率mを修正すればよいし、得られた画像の切り出し位置に満足しなければ、視線ベクトルn(切出中心点P)を修正すればよい。
図12は、図2に例示した歪曲円形画像Sについて、上記3つのパラメータを適宜設定し、その一部分を切り出して変換することによりUV座標系上に得られた平面正則画像Tの一例を示す平面図である。この例では、図2に示す歪曲円形画像Sにおける女性の鼻の位置が切出中心点Pとして設定されており、女性の顔周辺の画像が切り出されている。ただ、女性の身長方向がU軸となるような切り出し向きが設定されているため、図示のように、U軸を水平方向にとったモニタ画面に表示させると、女性は横向きに表示されてしまう。
このような場合、ユーザは、平面傾斜角φを修正すればよい。たとえば、角度φを90°程度減少させれば、U軸(およびV軸)が時計回りに回転し、平面正則画像Tの画像枠も時計回りに回転することになり、女性の正立像が得られることになる。ただ、図示のモニタ画面は、横方向寸法a(水平方向の画素数)より縦方向寸法b(垂直方向の画素数)の方が小さい矩形枠を有しているため、女性の胸元まで表示するためには、倍率mを若干減少させる修正も必要になる。
図13は、このような修正によって得られた平面正則画像Tである。ユーザの要望どおり、女性の胸元までの正立像が得られている。図12も図13も、視線ベクトルn(切出中心点P)は同一の設定となっており、いずれも女性の鼻の位置に指定した切出中心点Pが中心となる画像になっている。ただ、両者では定義されるUV座標系の位置および向きが異なっているため、得られる平面正則画像Tが異なる結果となっている。
なお、本願にいう「平面正則画像」とは、必ずしも「歪みのない完全な画像」を意味するものではなく、「魚眼レンズを用いた撮影により得られる歪曲円形画像Sに比べて、通常レンズを用いた撮影により得られる画像に近い平面画像」を意味するものである。したがって、図2に示す歪曲円形画像S上の女性像に比べれば、図12,図13に示す平面正則画像Tは歪みのない画像に見えるが、完全に歪みが取り除かれているわけではない。
<<< §3.正射影方式の対応関係式 >>>
図14は、二次元UV直交座標系上に定義された平面正則画像Tを示す平面図である。ここでは、この平面正則画像T上の任意の点Tiを、UV座標系の座標値ui,viを用いて、Ti(ui,vi)と表すことにする。図9に示すとおり、このUV座標系の原点Gは、三次元XYZ直交座標系上における座標を用いて、点G(xg,yg,zg)で示されることになるが、二次元UV直交座標系を用いて示すと、図14に示すとおり、点T(0,0)ということになる。
一方、図15は、二次元XY直交座標系上に定義された歪曲円形画像Sを示す平面図である。ここでは、この歪曲円形画像S上の任意の点Siを、XY座標系の座標値xi,yiを用いて、Si(xi,yi)と表すことにする。図14に示す原点G(点T(0,0))上の画像は、図15に示す切出中心点P(xp,yp)上の画像に対応し、図14に示す任意の点Ti(ui,vi)上の画像は、図15に示す点Si(xi,yi)上の画像に対応する。
前述したとおり、二次元UV直交座標系上に平面正則画像Tを得るためには、図14に示す点Ti(ui,vi)に位置する画素の画素値を、図15に示す点Si(xi,yi)に位置する画素(二次元XY直交座標系上の歪曲円形画像S内の画素)の画素値に基づいて決定する必要がある。そのためには、二次元UV直交座標系上の座標(ui,vi)と二次元XY直交座標系上の座標(xi,yi)との間の1対1の対応関係を示す対応関係式が必要になる。このような対応関係式を用いれば、図14に示す平面正則画像T上の任意の点は、図15に示す歪曲円形画像Sの切出領域E内のいずれかの点に対応づけられることになり、切出領域E内の歪曲画像を平面正則画像Tに変換することができる。
このような対応関係式は、三次元XYZ座標系の空間内に配置されたUV座標系の位置および向きが決定すれば、幾何学的な手法で一義的に定義することが可能である。たとえば、図9に示す例において、平面正則画像T上の点Ti(ui,vi)と、歪曲円形画像S上の点Si(xi,yi)との位置関係に着目すれば、点Si(xi,yi)の真上にある仮想球面H上の点を球面上対応点Qi(xi,yi,zi)としたときに、原点Oと球面上対応点Qiとを結ぶ直線niとUV座標系の座標平面との交点に、点Ti(ui,vi)が位置することになる。
図16は、このような2点間の位置関係をより明確に説明するための側面図である。この図16において、視線ベクトルnは、原点Oから天頂角βをもつ方向に伸び、視線ベクトルnと仮想球面Hとの交点Qは、切出中心点P(xp,yp)の真上に位置している。また、視線ベクトルn上における原点Oからの距離がmRの位置に点Gが定義されている。この点Gは、二次元UV直交座標系の原点であり、このUV座標系の座標面は、視線ベクトルnに直交しており、平面正則画像Tは、このUV座標系の座標面上に定義される。
平面正則画像T上の任意の点T1(u1,v1)についての歪曲円形画像S上の対応点S1(x1,y1)は、次のようにして定義される。すなわち、点T1(u1,v1)と原点Oとを結ぶ直線と仮想球面Hとの交点位置に、球面上対応点Q1を求め、この球面上対応点Q1の真下の位置にある歪曲円形画像S上の点を、対応点S1(x1,y1)とすればよい。同様に、平面正則画像T上の任意の点T2(u2,v2)については、点T2(u2,v2)と原点Oとを結ぶ直線と仮想球面Hとの交点位置に、球面上対応点Q2を求め、この球面上対応点Q2の真下の位置にある歪曲円形画像S上の点を、対応点S2(x2,y2)とすればよい。
このような2点間の対応関係は、幾何学的な対応関係式で記述することができる。具体的には、図17に示す式(1)〜(9)によって記述できることが知られており、たとえば、前掲の特許文献1,2などに、このような対応関係式を用いた画像変換の方法が開示されている。なお、座標系のとり方や角度の定義方法などによって、各項の符号等に多少の相違が生じるため、文献によっては、掲載されている式に若干の食い違いが生じるが、本質的には同一の幾何学演算を示す式である。
この図17に示す対応関係式は、図9に示す座標系および角度の定義を行った場合の式であり、UV座標系の位置を示すパラメータα,βと、UV座標系の向きを示すパラメータφとを含む式になっている。これら3つのパラメータは、前述したオイラー角、すなわち、方位角α,天頂角β,平面傾斜角φである。
具体的には、
x=R(uA+vB+wC)/
√(u+v+w) 式(1)
は、UV座標系上の1点T(u,v)の座標値u,vを用いて、XY座標系上の対応点S(x,y)のx座標値を求めるための式であるが、A,B,Cは、それぞれ、
A=cosφ cosα − sinφ sinα cosβ 式(3)
B=−sinφ cosα − cosφ sinα cosβ 式(4)
C=sinβ sinα 式(5)
なる数式で求まる値であり、オイラー角α,β,φの三角関数を用いた演算によって決定されることになる。
同様に、
y=R(uD+vE+wF)/
√(u+v+w) 式(2)
は、UV座標系上の1点T(u,v)の座標値u,vを用いて、XY座標系上の対応点S(x,y)のy座標値を求めるための式であるが、D,E,Fは、それぞれ、
D=cosφ sinα + sinφ cosα cosβ 式(6)
E=−sinφ sinα + cosφ cosα cosβ 式(7)
F=−sinβ cosα 式(8)
なる数式で求まる値であり、オイラー角α,β,φの三角関数を用いた演算によって決定されることになる。
なお、式(1),(2)におけるwは、
w=mR 式(9)
で与えられる値である。ここで、Rは、既に述べたとおり、歪曲円形画像Sの半径であり、mは倍率である。倍率mは、座標値u,vのスケーリングと、座標値x,yのスケーリングとの関係を示すものであり、倍率mを大きく設定すればするほど、平面正則画像Tには拡大された画像が求められるが、歪曲円形画像Sの切出領域Eは小さくなる。
結局、図17に示す式において、Rの値は歪曲円形画像Sの半径として既知であるから、方位角αおよび天頂角β(別言すれば、切出中心点Pの位置)と、平面傾斜角φと、倍率mとを定めて、UV座標系の位置および向きを決定してやれば、図17に示す対応関係式において、座標値x,yを算出するための未知数はu,vのみになる。したがって、この対応関係式を用いれば、平面正則画像Tにおける任意の1点T(u,v)に対応する歪曲円形画像S上の対応点S(x,y)を決定することができる。
<<< §4.本発明の基本概念 >>>
続いて、本発明の基本概念を説明する。図18は、一般的な魚眼レンズ付ビデオカメラを屋外の監視用に設置した例を示す側面図である。この例では、路面10の左側に位置する建物20の右側壁面に、魚眼レンズ付ビデオカメラ30が設置されている。ビデオカメラ30の撮像面(魚眼レンズの結像面)、すなわち、図1に示すXY平面は、建物20の側壁面に沿った面となっており、撮像中心点31がXY座標系の原点Oに対応する。要するに、図1に示すXY平面(歪曲円形画像Sが形成される面)が、実世界の鉛直面に沿った面となるように、ビデオカメラ30が取り付けられていることになる。
一方、路面10の右側には、樹木40とガードレール50が配置されており、ビデオカメラ30は、この樹木40とガードレール50を含む景色を正面から撮影することになる。図19は、このような魚眼レンズ付ビデオカメラ30を用いた撮影によって得られる歪曲円形画像Sの一例を示す平面図である。路面10に沿って樹木40とガードレール50が左右方向に配置されている状態が示されているが、円周に近い部分ほど、画像に歪みが生じている。
ここでは、XY座標系のY軸が水平面に平行となりX軸が鉛直軸となるように、ビデオカメラ30の向きが設定されているものとする。したがって、図19に示すように、XY平面上に得られた歪曲円形画像Sの原点Oの直近に関しては、Y軸方向が実世界の景色の水平線方向、X軸方向が実世界の景色の鉛直方向ということになる。このような方向性の特徴は、画像の円周に近くなるほど失われてくる。
前掲の特許文献1,2に開示されているような一般的な魚眼監視システムには、ユーザの要望に応じて、図19に示すような歪曲円形画像S上の任意の一部分を切り出して、これを平面正則画像に変換してモニタ画面上に表示する機能が備わっている。たとえば、図20に示すように、ユーザが、歪曲円形画像Sの中心にある点P0を切出中心点として切出領域E0の部分を切り出す指示を与えれば、モニタ画面上には、図21(a) にフレームF0として示すような平面正則画像が得られ、樹木40の細部を確認することができる。これに対して、図20において、ユーザが、歪曲円形画像Sの右下にある点Pnを切出中心点として切出領域Enの部分を切り出す指示を与えれば、モニタ画面上には、図21(b) にフレームFnとして示すような平面正則画像が得られ、ガードレール50の細部を確認することができる。
なお、図20では、各切出領域E0,Enを矩形の領域として示しているが、実際には、図21(a) ,(b) に示すように、モニタ画面上に表示される平面正則画像が矩形の画像である場合、これに対応する切出領域E0,Enは、矩形ではなく、歪んだ形状になる。ただ、図面上で切り出し向き(平面傾斜角φ)を示す上では、矩形の切出領域を描いた方が好都合である。たとえば、図20に示す例の場合、切出領域E0,Enは、いずれもU軸(図5に示す例のように、矩形状の平面正則画像の長辺方向の軸)が図の水平方向となる向きに設定した領域である。したがって、以後の説明においても、歪曲円形画像S上の切出領域は、便宜的に矩形の領域として示すことにし、その長辺方向によってU軸の向きを示すことにする。
図9に示すモデルで説明したように、歪曲円形画像Sの中の一部分を切り出して平面正則画像Tを得るためには、切り出す場所を示すための切出中心点の位置P(xp,yp)、切り出す向きを示すための平面傾斜角φ、切り出し倍率を示すための倍率m、という3つのパラメータからなる切出条件を与える必要がある。具体的には、図21(a) に示す平面正則画像を得るためには、図20に示す切出中心点P0の位置、切出領域E0の向き(平面傾斜角φ)、切出領域E0のサイズ(倍率m)、という切出条件を指定する必要がある。
このような具体的な切出条件をユーザに指定させるためのマンマシンインターフェイスとしては、様々な形態のものが知られている。たとえば、切出中心点P0の位置は、モニタ画面上に図20に示すような歪曲円形画像Sを表示し、マウスなどのポインティングデバイスによって、任意の位置をクリックするユーザ操作によって取り込むことが可能である。また、切出領域E0の向きやサイズも、モニタ画面上に表示した歪曲円形画像S上でのユーザ操作に基づいて取り込むことができる。もちろん、点P0の位置座標値、角度φの値、倍率mの値を、ユーザに数値入力させることも可能である。
したがって、たとえば警備に従事するユーザが、リアルタイムで撮影画像の監視を行う場合、モニタ画面上に表示された図20のような歪曲円形画像Sを見ながら、この魚眼監視システムに対して所望の切出条件を入力すれば、任意の位置の画像を、任意の向きに、任意の倍率で切り出した平面正則画像を得ることができる。図21(a) ,(b) に示すように、こうして得られた平面正則画像は、図18に示す撮像中心点31の位置から、通常のレンズを用いたカメラで所定方向を撮影した画像と同等の画像になるので、ユーザは、通常レンズを装着した監視カメラの視野をメカニカルな機構で動かした場合と同等の監視作業を行うことができる。
しかしながら、通常レンズを装着した監視カメラの場合、メカニカルな機構で視野を動かすため、視野の切替プロセスは、必ずパンニング動作やズーミング動作を伴うことになるのに対して、魚眼レンズを装着した監視カメラの場合、そのようなメカニカルな切替プロセスは存在しない。たとえば、図21(a) に示すフレームF0の画像から、図21(b) に示すフレームFnの画像へと切り替える場合、通常レンズを装着した監視カメラであれば、途中にフレームF1,F2,F3,... という中間的なフレームが介挿され、モニタ画面上には、フレームF0,F1,F2,F3,... ,Fnという段階的な切替プロセスが表示されることになる。ところが、魚眼レンズを装着したカメラを用いる監視システムの場合、メカニカルな切替プロセスではなく、切出条件を変更する電子的な切替処理が行われるため、フレームF0からフレームFnへと瞬時の切り替えが行われる。
このように、フレームF0からフレームFnへの切り替えが瞬時に行われると、ユーザは、フレームF0に表示されていた樹木40を含む景色と、フレームFnに表示されているガードレール50を含む景色との相対的な位置関係を直感的に把握することが困難になる。この問題は、特に、動体追跡の技術を盛り込んだ魚眼監視システムの場合に顕著である。
一般に、ユーザ自身が、所望の切出条件を指定して、モニタ画面上に得られる平面正則画像を切り替えた場合、ユーザは、切り替え前後の画像の空間的な位置関係を意識的には認識していることになる。たとえば、図20に示す切出領域E0からEnへと、ユーザ自身が切替指示を与えたのであれば、モニタ画面上に表示されている平面正則画像が、図21(a) から(b) へと瞬時に切り替わったとしても、ユーザは、図21(a) が真正面の監視画像であり、図21(b) が右下路面の監視画像であることを、意識的には理解することができる(もちろん、視野の移動を直感的に把握するには不十分である)。
ところが、切出領域E0からEnへの切り替えが、ユーザの意志とは無関係に、監視システムによって勝手に行われた場合、切り替え前後の画像の空間的な位置関係の把握は極めて困難になる。たとえば、前掲の特許文献3に開示されている動体追跡機能をもった魚眼監視システムの場合、動体が検出された時点で、歪曲円形画像S上の切り出し部分や表示倍率などの切出条件を、当該動体の表示に適した切出条件に自動的に切り替える処理が行われる。たとえば、図20に示す例において、通常は、領域E0から切り出した画像をモニタ上に表示し続け、領域En内に動体が検出された場合に、この領域Enから切り出した画像表示に自動的に切り替える処理を行うことにすると、モニタ画面は図21(a) に示すフレームF0から、図21(b) に示すフレームFnへと、ユーザの意志とは無関係に瞬時に切り替えられてしまうため、映像が時間的に不連続になり、モニタ画面を注視していたユーザには、どの場所の映像に切り替わったのかを認識することが非常に困難である。
本発明は、このような問題を解決するための新技術を提案するものであり、歪曲円形画像の切出条件を切り替える場合にも、ユーザが、切り替え前後の画像の空間的な位置関係を容易に把握することができるようにすることを目的とする。
以下に説明する実施形態に係る魚眼監視システムは、動体検出機能および動体追跡機能を有するシステムであり、動体検出がなされていない静的監視期間、動体検出がなされた後の移行期間、この移行期間が完了してから動体を追跡する動的監視期間、という3つの期間に分けて、それぞれ最適な態様で、モニタ画面上に平面正則画像を表示することができる。
たとえば、動体検出がなされていない静的監視期間は、図22に示すように、切出中心点P0を中心とした切出領域E0内の画像を切り出して、平面正則画像に変換し、これをモニタ画面上に表示する設定がなされていた場合を考えよう。ここで、もし図示のとおり、点Pnの近傍に動体60が検出された場合(ここでは、猫が動体として検出されたものとする)、切出領域を領域E0からEnへと徐々に移行させる移行期間の処理が行われ、続いて、図23に示すように、動体60を追跡しながら、切出領域を領域EnからE(i)へと順次移動させる動的監視期間の処理が行われる。
ここで、切出中心点の位置に着目すれば、動体検出がなされていない静的監視期間は、図22に示すように、歪曲円形画像Sの中心点P0の位置を維持し続けるが、動体検出が行われると、点P0から点Pnへと段階的に移動し(移行期間)、更に、図23に示すように、動体60の移動に同期して、点Pnから点P(i)へと段階的に移動することになる(動的監視期間)。このような動体追跡処理は、動体60が消滅したと判断されるまで続行される。
一方、切出領域のサイズ(切り出しの倍率m)も必要に応じて変化する。すなわち、静的監視期間における切出領域E0は一定のサイズを維持するが、移行期間では、図22に示すように、切出領域のサイズは、領域E0のサイズから領域Enのサイズへと段階的に変化し、続く動的監視期間では、図23に示すように、切出領域のサイズは、領域Enのサイズから領域E(i)のサイズへと段階的に変化する。ここで、領域Enおよび領域E(i)のサイズは、動体60の表示に適したサイズとなるように自動的に設定される。
結局、この実施形態に係る魚眼監視システムを利用すれば、監視業務に従事するユーザは、モニタ画面を注視してさえいれば、何ら指示操作を行わなくても、監視範囲内に進入した動体を認識することができる。すなわち、監視範囲内の動体が検出されていない静的監視期間には、図24(a) に示すような樹木40を含む静的画像が、モニタ画面上に表示され続ける。ところが、動体60が検出されると、モニタ画面上に表示される平面正則画像は、図24(b) に示すような動体60を含む画像に自動的に切り替えられ、以後の動的監視期間では、常に動体60を含む画像が表示されるよう、動体追跡が行われる。
しかも、図24(a) に示すフレームF0の画像から、図24(b) に示すフレームFnの画像へ切り替える際に、所定の移行期間が設けられ、あたかもメカニカルな機構で視野を動かすかのようなパンニング動作やズーミング動作が行われる。すなわち、この移行期間の間、フレームF1,F2,F3,... という中間的なフレームが介挿され、モニタ画面上には、フレームF0,F1,F2,F3,... ,Fnという段階的な切替プロセスが表示されることになる。
移行期間に介挿する中間的なフレームの平面正則画像は、たとえば、切出条件を図25および図26に示すように、徐々に変化させてゆくことによって得ることができる。ここに示す例は、移行期間を、前半のパンニング期間と、後半のズーミング期間とによって構成した例であり、図25はパンニング期間における切出領域の位置の変遷を示し、図26はズーミング期間における切出領域のサイズの変遷を示している。
図25に示すように、前半のパンニング期間には、切出中心点の位置を、点P0から点Pjへ徐々に移動させる処理が行われる。ここで、点Pjは、図22に示す点Pnと同じ位置の点であり、点Piは、点P0から点Pjへの移動途中の点である。図示のとおり、切出中心点は、XY平面上での移動経路Aに沿って徐々に移動する。ここに示す例の場合、最初の切出中心点P0がXY座標系の原点Oの位置(歪曲円形画像Sの中心点)であるため、移動経路Aは、この歪曲円形画像Sの半径に沿った経路になる。切出中心点は、モニタ画面上に表示させる平面正則画像のフレーム周期に同期して、P0,P1,... ,Pi,... ,Pjと変遷することになる。
これに応じて、各切出領域も、E0,... ,Ei,... ,Ejと変遷することになる。各切出領域は、いずれも各切出中心点を中心とした領域であるので、切出中心点の移動とともに移動経路Aに沿って移動することになる。ここに示す例の場合、パンニング期間中、倍率mは一定に維持しているため、便宜的に矩形で示す領域E0〜Ejのサイズは互いに等しい。なお、前述したとおり、ここで図示する切出領域は、切り出しの位置P,向きφ,倍率mを便宜的に矩形の位置,向き,サイズで示すものであり、実際に画像が切り出される領域を正確に示すものではない。
一方、後半のズーミング期間では、図26に示すように、切出中心点の位置を固定したまま(点Pj〜Pnは同じ位置の点である)、切出領域のサイズを徐々に小さくしてゆく処理が行われる。その結果、切出領域は、領域Ej,... ,Ek,... ,Enと変遷することになる。ここで、領域Enは、図22に示す領域Enであり、検出された動体60の表示に適したサイズに設定されている。
かくして、切出領域は、図25に示すように、E0,... ,Ei,... ,Ejと変遷し(前半のパンニング期間)、更に、図26に示すように、Ej,... ,Ek,... ,Enと変遷する(後半のズーミング期間)。移行期間中、このように切出条件を段階的に変化させれば、モニタ画面上には、図24(a) に示すフレームF0に後続して、ズーム倍率は一定にして右下方向へパンニングした画像に相当するフレームF1,... ,Fi,... ,Fjが表示され、続いて、視線方向は固定して望遠側へズーミングした画像に相当するフレームF(j+1),... ,Fk,... が表示されることになり、最終的に、図24(b) に示すフレームFnが得られる。
このような移行期間を設けるようにすれば、ユーザは、フレームF0からFnへの移行プロセスを、視覚的に認識することができるので、監視システムの動体検出機能によって、ユーザの意志とは無関係に画像の切り替えが行われたとしても、ユーザは、切り替え前後の画像の空間的な位置関係を容易に把握することができる。なお、動体の移動速度が速い場合、移行期間の終了時には切出領域En内から動体60が走り去っているケースもありうるが、その後の動的監視期間で追跡が行われるため支障はない。
なお、前半のパンニング期間と後半のズーミング期間とを分けて設定する代わりに、パンニング動作(切出中心点の移動動作)とズーミング動作(切出領域のサイズ変更動作)とを並行して行うようにしてもかまわない。前半にパンニング動作のみを行うと、図25の切出領域Ejのように、一部分が歪曲円形画像Sの領域からはみ出してしまう可能性があるが(この場合、一部が欠けた平面正則画像がモニタ画面に表示されることになる)、パンニング動作とズーミング動作とを並行して行うようにすれば、そのようは弊害を防ぐことができる。
要するに、移行期間の全期間をパンニング期間およびズーミング期間に設定して、パンニング動作とズーミング動作とを並行して行うようにしてもよいし、移行期間の一部の期間をパンニング期間、別な一部の期間をズーミング期間に設定して、パンニング動作とズーミング動作とを別個に行ってもよい。あるいは、パンニング期間およびズーミング期間が部分的に重なるような設定を行うことも可能である。
こうして、移行期間が完了し、図26に示す切出領域En内の画像がモニタ画面上に表示されるようになったら、動的監視期間が開始し、移動する動体を追いかけるように、切出領域の位置およびサイズが変更される。図27は、このような動体追跡の様子を示す図である。図27に示す切出中心点P(0)および切出領域E(0)は、図26に示す切出中心点Pnおよび切出領域Enと同じものである。切出中心点がP(i),P(j),P(k)と移動しているが、これは動体60(猫)がこの位置に移動したためである。動体60を追跡して、切出領域もE(i),E(j),E(k)と移動することになる。なお、ここでは、便宜上、移行期間における変遷を、添字「0,1,...,i,... ,n」で示し、動的監視期間における変遷を、括弧付きの添字「(0),(1),...,(i),... 」で示して相互に区別することにする。
結局、ユーザには、図24(a) に示すフレームF0から図24(b) に示すフレームFnまで、段階的に変化するフレーム画像が提示された後、フレームFn内の動体60を追跡したフレーム画像の提示が、当該動体が消滅するまで、継続して行われることになる。動体60が消滅した場合(歪曲円形画像Sの外部へ移動した場合)、監視システムは、動体消滅の判断を行い、再び、図24(a) に示すフレームF0の提示を行うことになる。
以上、本発明の基本概念を説明したが、続く§5以降では、このような基本概念に基づいて設計された魚眼監視システムの具体的な実施形態を詳述する。
<<< §5.本発明に係る魚眼監視システムの基本構成 >>>
ここでは、図28のブロック図を参照しながら、本発明の一実施形態に係る魚眼監視システムの基本構成を説明する。このシステムにおいて、図の上半分に示されている構成要素、すなわち、魚眼レンズ付ビデオカメラ110、モニタ装置120、画像入力部115、画像出力部125、歪曲円形画像用メモリ130、平面正則画像用メモリ140、画像切出変換部150は、従来の魚眼監視システムが備えている一般的な構成要素であり、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換し、これをモニタ画面上に表示する基本機能を有している。
魚眼レンズ付ビデオカメラ110は、装着した魚眼レンズによって、外界の画像を歪曲円形画像として撮影するビデオカメラであり、たとえば、図18に示す例の場合、建物20の壁面に取り付けられたビデオカメラが、図28に示すビデオカメラ110に対応する。ビデオカメラ110で撮影されたフレーム単位の画像は、画像入力部115を介して歪曲円形画像用メモリ130に格納される。魚眼レンズ付カメラの撮影画像は、たとえば、図19に示す例のように、歪曲した円形の画像になる。メモリ130は、この歪曲円形画像Sを画像データとして格納する。具体的には、歪曲円形画像Sは、二次元XY直交座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、この二次元XY直交座標系の原点Oを中心とし半径Rをもった画像として、メモリ130に格納される。
ビデオカメラ110からは、このような歪曲円形画像Sが、フレーム単位の画像データとして所定周期(たとえば、30フレーム/秒)で出力される。画像入力部115は、このように1フレームごとの時系列データとして順次与えられる歪曲円形画像Sを、メモリ130内に順次格納する処理を行う。メモリ130は、このような歪曲円形画像Sを少なくとも1フレーム格納する記憶容量をもっているバッファメモリである。もちろん、より大きな容量をもったメモリを用意しておけば、連続した複数フレーム分の歪曲円形画像のデータを同時に保持することができる。また、図には示されていないが、監視映像を記録として残す場合は、別途用意したハードディスク装置などに、メモリ130に格納された画像データを逐次転送するようにする。
一方、平面正則画像用メモリ140は、二次元UV直交座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像Tを格納するバッファメモリであり、ここに格納された平面正則画像Tは、画像出力部125によって読み出され、モニタ装置120へと出力される。通常、この平面正則画像Tは、モニタ装置120の表示画面に表示するのに適した矩形状の画像になるが、もちろん、平面正則画像Tの輪郭は、どのような形状のものであってもかまわない。
ここに示す実施形態の場合、画像出力部125は、メモリ140内に格納されている平面正則画像Tを読み出してモニタ装置120に出力する機能とともに、メモリ130内に格納されている歪曲円形画像Sを読み出してモニタ装置120に出力する機能も併せもつ。モニタ装置120にいずれの画像を出力するかは、ユーザの指示操作によって切り替え可能であり、モニタ装置120の表示画面には、平面正則画像Tを表示させることも可能であるし、歪曲円形画像Sを表示させることも可能であるし、必要があれば、画面を分割して、双方の画像を同時に表示させることも可能である。
既に述べたとおり、メモリ130内に格納される歪曲円形画像Sが、たとえば、図19に示すような180°の画角をもった魚眼撮影画像であるのに対して、メモリ140内に格納される平面正則画像Tは、たとえば、図21(a) ,(b) に示すように、歪曲円形画像Sの一部を切り出して、歪みを補正する変換処理を施した画像になる。画像切出変換部150は、このような部分画像の切り出しと、歪み補正の変換処理と、を行う構成要素である。
実際には、この画像切出変換部150の処理は、平面正則画像Tを構成する個々の画素の画素値を、歪曲円形画像S上の対応画素の画素値に基づいて決定する作業によって行われる。すなわち、UV座標系上の座標(u,v)に配置された平面正則画像T上の特定の着目画素について、XY座標系上の対応座標(x,y)を求め、この対応座標(x,y)に位置する歪曲円形画像S上の画素の画素値を、当該着目画素についての画素値とする作業を行えばよい。
ただ、歪曲円形画像Sは、二次元XY直交座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成された画像であり、実際には、所定ピッチで縦横に配列された多数の格子点の位置に、それぞれ固有の画素値を定義したデジタルデータによって構成されている。このため、対応する座標(x,y)の位置は、通常、複数の格子点の間の位置になる。たとえば、歪曲円形画像Sが、ピッチ1で縦横に配列された多数の格子点位置の画素値を定義したデジタルデータによって構成されている場合、いずれの格子点も、その座標値は整数値になる。よって、算出された対応座標xおよびyの値が小数を含む値であると(多くの場合はそうなるであろう)、対応座標(x,y)の位置は、複数の格子点の間の位置になり、対応する画素値を1つに決めることはできない。
したがって、実際には、画像切出変換部において、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の着目画素の画素値を決定する際には、対応座標(x,y)で示される位置の近傍に配置された歪曲円形画像S上の複数の参照画素の画素値を読み出し、これら複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行う必要がある。このような補間演算を行う方法としては、たとえば、バイリニア補間法、バイキュービック・スプライン補間法など、様々な方法が公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。もちろん、そのような補間を行わずに、対応座標(x,y)で示される位置に最も近い画素の画素値をそのまま着目画素の画素値と決定する方法を採ることも可能である。
結局、画像切出変換部150は、平面正則画像Tを構成する1つの着目画素の座標(u,v)についての対応座標(x,y)を算出し、歪曲円形画像用メモリ130内の当該対応座標(x,y)の近傍に配置された画素の画素値を読み出し、読み出した画素値に基づいて当該着目画素の画素値を決定する処理を、平面正則画像Tを構成する各画素について実行し、平面正則画像用メモリ140内に各画素の画素値を書き込むことにより、歪曲円形画像Sから切り出した一部分の画像を、平面正則画像Tに変換する処理を行うことになる。
なお、座標(u,v)についての対応座標(x,y)を算出するには、§3で述べたように、図17に示す式(1)〜(9)を利用すればよい。これらの式に基づく演算を行うには、既に述べたとおり、方位角αおよび天頂角β(切出中心点Pの位置)、平面傾斜角φ、倍率m、という3つのパラメータを定める必要がある。これらのパラメータは、切り出しの位置、向き、サイズという切出条件を定めるパラメータである。画像切出変換部150は、結局、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像Sの切出中心点Pで示される切り出し位置から、平面傾斜角φで示される切り出し向きに、倍率mで示される切り出しサイズの画像を切り出し、これを平面正則画像Tに変換して、平面正則画像用メモリ140に格納する処理を行うことになる。
図28のブロック図において、図の下半分に示されている構成要素、すなわち、動体検出部160、実切出条件決定部170、標準切出条件格納部180、手動条件設定部185、動体追跡部190は、画像切出変換部150に対して、切出中心点P、平面傾斜角φ、倍率m、という3つのパラメータ(切出条件)を指定するための構成要素である。
前述したとおり、歪曲円形画像用メモリ130には、リアルタイム(たとえば、30フレーム/秒)で撮影画像が逐次格納されてゆく。画像切出変換部150は、これら個々のフレームごとに、所定の切出条件に従って画像の切り出しを行い、平面正則画像への変換処理を行う。したがって、モニタ装置120の画面には、やはりリアルタイムで平面正則画像Tの表示が行われる。このため、画像切出変換部150には、リアルタイムで、切出中心点P、平面傾斜角φ、倍率m、という切出条件を与える必要がある。ここでは、このようにリアルタイムで画像切出変換部150に与えられる切出条件を、実切出条件と呼ぶことにする。
実切出条件決定部170は、この実切出条件を、フレームに同期してリアルタイムで決定し、画像切出変換部150に与える役割を果たす。すなわち、実切出条件決定部170は、歪曲円形画像S上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件を、歪曲円形画像Sの一部から平面正則画像Tを切り出すための条件として決定する働きをする。
これに対して、標準切出条件格納部180、動体検出部160、動体追跡部190は、実切出条件を決定するための参考条件を実切出条件決定部170に与えることにより、実切出条件決定部170を補佐する役割を果たす。実切出条件決定部170は、与えられた参考条件に基づいて実切出条件を決定し、これを画像切出変換部150に与える処理を実行する。
§4で述べたとおり、この実施形態に係る魚眼監視システムは、動体検出機能および動体追跡機能を有するシステムであり、動体検出がなされていない静的監視期間(たとえば、図20に示す画像が得られている期間)、動体検出がなされた後の移行期間(たとえば、図22において、切出領域をE0からEnへ移行させる期間)、移行期間が完了してから動体を追跡する動的監視期間(たとえば、図23に示すように、動体60を追跡して表示する期間)、という3つの期間に分けて、それぞれ最適な態様で、モニタ画面上に平面正則画像を表示することができる。標準切出条件格納部180は、静的監視期間の切出条件を実切出条件決定部170に与えるための構成要素であり、動体検出部160は、移行期間における目標となる切出条件を実切出条件決定部170に与えるための構成要素であり、動体追跡部190は、動的監視期間の切出条件を実切出条件決定部170に与えるための構成要素である。
より具体的に説明すれば、標準切出条件格納部180には、静的監視期間の切出条件(標準切出条件)として、標準切出中心点P0、標準平面傾斜角φ0、標準倍率m0が格納されている。たとえば、静的監視期間の切出領域として、図20に示す切出領域E0を設定する場合、標準切出条件格納部180には、図示の画像の中心点を示す標準切出中心点P0の座標値(この例の場合、XY座標系の原点Oの座標値(0,0))と、切出領域E0の向きを示す標準平面傾斜角φ0(図の横方向をU軸方向とする向きを示す角度φ)と、切出領域E0のサイズに応じた標準倍率m0が、標準切出条件格納部180に格納される。
このような標準切出条件を標準切出条件格納部180に設定しておけば、動体検出がなされていない静的監視期間にモニタ装置120に表示される平面正則画像は、図21(a) に示すような画像になる。監視業務に従事するユーザには、監視視野に動体が侵入しない限り、もしくは、当該ユーザが意図的に特定の切出条件を指定する操作を行わない限り、図21(a) に示す画像が提示されることになる。
一方、動体検出部160は、歪曲円形画像用メモリ130に時系列で順次格納される歪曲円形画像Sを相互に比較して動体検出処理を行い、動体検出がなされた場合に、検出動体の切り出し位置を示す目標切出中心点Pnと、検出動体の切り出し向きを示す目標平面傾斜角φnと、検出動体の切り出しサイズを示す目標倍率mnと、によって構成される目標切出条件を生成し、この目標切出条件を実切出条件決定部170に与える処理を行う。
たとえば、図22に示す例のように、図示の切出領域E0を規定する標準切出条件に基づいて静的監視を行っている状態において、動体検出部160によって動体60の検出が行われた場合、動体検出部160は、図示の切出領域Enを規定する目標切出条件を生成し、これを実切出条件決定部170に与える処理を行う。具体的には、図示の切出領域Enの位置を示す目標切出中心点Pnと、切出領域Enの向きを示す目標平面傾斜角φnと、切出領域Enのサイズに応じた倍率を示す目標倍率mnと、が生成され、実切出条件決定部170に与えられる。なお、ここに示す実施形態の場合、目標倍率mnは、§6で詳述するように、「切出領域Enが、検出された動体60を含む領域となるような適当な値」として計算される。
実切出条件決定部170は、動体検出部160から目標切出条件「Pn,φn,mn」が与えられると、標準切出条件格納部180から与えられている標準切出条件「P0,φ0,m0」から、当該目標切出条件「Pn,φn,mn」へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定める。具体的には、図25に示すように、点P0から点Pj(=Pn)へ向かって段階点に移動する点を、実切出中心点Pと決定し、図26に示すように、切出領域Ejのサイズ(=E0のサイズ)に応じた標準倍率m0から、切出領域Enのサイズに応じた目標倍率mnへ向かって段階的に変化する倍率値を、実倍率mと決定する。
なお、切り出し向きについては、図22に示す例の場合、切出領域E0〜Enのいずれも、U軸(平面正則画像の横軸)がY軸(図の横方向軸)に平行な方向に対応するような切り出し向きになっていればよいので、平面傾斜角φ0=φnとなり、実質的に平面傾斜角φは変化させる必要はない。また、目標倍率mnは、上述したとおり、検出された動体のサイズ(撮影画面上での見かけのサイズ)に応じて定まる量なので、たまたま、mn=m0であった場合、実質的に倍率mは変化させる必要はない。あるいは、意図的にズーミングを行わない仕様にするのであれば、検出された動体のサイズにかかわらず、常に目標倍率mn=標準倍率m0に固定した運用も可能である。
結局、動体検出部160から実切出条件決定部170へ伝達する目標切出条件には、少なくとも目標切出中心点Pnの情報が含まれていれば足りる。たとえば、φ0=φnの場合には、動体検出部160から実切出条件決定部170へ目標平面傾斜角φnの情報を伝えることを省略することができ、m0=mnの場合には、動体検出部160から実切出条件決定部170へ目標倍率mnの情報を伝えることを省略することができる。
また、動体追跡部190は、動体検出部160による動体検出の後、検出動体を追跡する動体追跡処理を行い、追跡動体の切り出し位置を示す追跡切出中心点P(i)と、追跡動体の切り出し向きを示す追跡平面傾斜角φ(i)と、追跡動体の切り出しサイズを示す追跡倍率m(i)と、によって構成される追跡切出条件を、追跡動体が消滅したとの消滅判断がなされるまで、継続して実切出条件決定部170に与える処理を行う。
たとえば、図22に示す例のように、動体検出部160によって動体60の検出が行われた場合、上述したとおり、切出領域Enが決定され、実切出領域を、領域E0からEnへ向けて段階的に変化させる移行期間の処理が実行される。このとき、動体追跡部190は、動体検出部160から動体60の情報を引き継ぎ、動体60を追跡する作業を行う。そして、図27に示す例のように、動体60の位置に応じて、追跡切出条件を「P(0),φ(0),m(0)」(=「Pn,φn,mn」)から、「P(i),φ(i),m(i)」,「P(j),φ(j),m(j)」,「P(k),φ(k),m(k)」,... と変化させてゆく。これにより、追跡切出領域は、E(0),E(i),E(j),E(k),... と移動することになる。実切出条件決定部170は、上述した移行期間の処理を完了した後、動体追跡部190から与えられる追跡切出条件を、実切出条件として採用する処理を行う。
ここに示す例の場合、追跡切出領域E(0),E(i),E(j),E(k),... はいずれも、U軸(平面正則画像の横軸)がY軸に平行な方向に対応するような切り出し向きになっていればよいので、平面傾斜角φ(i)は、常にそのような切り出し向きに対応する値に設定すればよい。なお、§8で詳述するように、魚眼レンズ付ビデオカメラを、その撮像面(XY平面)が鉛直面となるように設置した場合、通常、平面傾斜角φ(i)を追跡位置に応じて変えてゆく必要があるが、撮像面が水平面となるように設置した場合、平面傾斜角φ(i)は固定してかまわない。
また、追跡倍率m(i)は、目標倍率mnと同様に、動体のサイズ(撮影画面上での見かけのサイズ)に応じて定めるのが好ましいが、意図的にズーミングを行わない仕様にするのであれば、追跡中の動体のサイズにかかわらず、常に追跡倍率m(i)=目標倍率mnのように、一定値に固定した運用も可能である。
結局、動体追跡部190から実切出条件決定部170へ伝達する追跡切出条件には、少なくとも追跡切出中心点P(i)の情報が含まれていれば足りる。たとえば、魚眼レンズ付ビデオカメラを、その撮像面が水平面となるように設置した場合は、後述するとおり、φ(i)を所定の固定値(0°)に維持することができる。また、得られる平面正則画像の向きを不問とする運用(モニタ上に表示される景色が天地逆でも、斜めでもかまわないとする運用)を採る場合には、ビデオカメラの設置向きにかかわらず、φ(i)を固定値に維持することができる。このように、φ(i)を所定の固定値に維持する場合、動体追跡部190から実切出条件決定部170へ追跡平面傾斜角φ(i)の情報を伝えることを省略することができる。同様に、m(i)を固定する運用を行う場合は、動体追跡部190から実切出条件決定部170へ追跡倍率m(i)の情報を伝えることを省略することができる。
動体追跡部190は、動体を見失った場合、追跡切出条件を伝達する代わりに、動体が消滅した旨を実切出条件決定部170に報告する。実切出条件決定部170は、動体消滅の報告を受けると、実切出条件を、標準切出条件に切り替える処理を行う。その結果、モニタ装置120の画面には、元どおり図24(a) に示す平面正則画像が表示されることになる。
一方、手動条件設定部185の第1の機能は、ユーザの設定操作に基づいて、実切出条件決定部170が決定すべき実切出条件を強制的に任意の条件に設定する機能である。上述したとおり、実切出条件決定部170は、静的監視期間、移行期間、動的監視期間という3つの期間に分けて、自動的に実切出条件を決定する自動決定処理を行うが、手動条件設定部185から任意の切出条件が与えられた場合、いずれの期間であっても、自動決定処理を一時中断し、手動条件設定部185から与えられた切出条件を優先的に実切出条件として採用し、画像切出変換部150へ与える処理を行う。
別言すれば、手動条件設定部185は、ユーザの割込操作によって入力された切出条件を実切出条件決定部170へと伝達する役割を果たし、実切出条件決定部170は、当該割込操作によって指示された切出条件を、無条件に実切出条件として採用して、画像切出変換部150へ与える処理を行うことになる。また、ユーザが、手動条件設定部185に対して、当該割込操作を解除する指示を与えれば、この解除指示を受けた実切出条件決定部170は、元の自動決定処理に復帰する。
手動条件設定部185の第2の機能は、ユーザの設定操作に基づいて、標準切出条件格納部180に格納される標準切出条件を任意に設定する機能である。たとえば、上述した例では、標準切出条件格納部180には、標準切出条件として、図20の切出領域E0を示す標準切出中心点P0、標準平面傾斜角φ0、標準倍率m0が格納されていたため、静的監視期間には、モニタの画面上に図21(a) に示す平面正則画像が表示されることになる。ユーザは、手動条件設定部185に対して、任意の切出条件を標準切出条件に設定する指示を与えることができる。このような指示が与えられると、手動条件設定部185は、標準切出条件格納部180に格納されている標準切出条件を、新たな切出条件に書き換える処理を行う。したがって、ユーザは、静的監視期間に表示させる平面正則画像を、所望の画像に変更することができる。
手動条件設定部185を用いて、任意の切出条件をユーザに指定させるためのマンマシンインターフェイスとしては、前述したように、モニタ画面上に表示された歪曲円形画像上で、マウスなどのポインティングデバイスによって指定させる形式のものや、ユーザに数値入力させるものなどを適宜設計できる。なお、この手動条件設定部185は、本発明の構成に必須の構成要素ではないので、ユーザによる手動設定が不要なシステムでは、省略してもかまわない。
以上、図28に示すブロック図を参照して、本発明の一実施形態に係る魚眼監視システム100の基本構成を説明したが、実際には、このブロック図に示されている構成要素のうち、魚眼レンズ付ビデオカメラ110およびモニタ装置120を除く構成部分は、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって実現可能である。したがって、この魚眼監視システム100は、当該専用プログラムを組み込んだコンピュータに、魚眼レンズ付ビデオカメラ110およびモニタ装置120を接続することによって構築することが可能である。
また、このシステムにおける魚眼レンズ付ビデオカメラ110およびモニタ装置120を除く構成部分を、コンピュータにプログラムを組み込んで構成する代わりに、電子回路が組み込まれた半導体集積回路によって構成することも可能である。その場合、この魚眼監視システム100は、当該半導体集積回路に、魚眼レンズ付ビデオカメラ110およびモニタ装置120を接続することによって実現できる。
<<< §6.動体検出処理 >>>
続いて、図28に示す魚眼監視システム100における動体検出部160の動体検出処理の詳細を説明する。
動体検出部160による動体検出処理は、歪曲円形画像用メモリ130に時系列で順次格納される歪曲円形画像Sを相互に比較して、監視領域内の動体の有無を検出し、更に、画像上での動体の領域を認識する処理である。一般に、動画データを解析して動体を認識する手法としては、様々なアルゴリズムに基づく手法が知られている。動体検出部160による動体検出には、このような公知の任意の手法を利用することが可能である。
ここでは、そのような手法の一例を、図29の流れ図に基づいて説明する。既に述べたとおり、歪曲円形画像用メモリ130には、ビデオカメラ110によって撮影された歪曲円形画像Sがフレームごとの時系列画像データとして順次格納される。ここに示す手法の基本原理は、予め基準となる背景歪曲円形画像を記憶しておき、歪曲円形画像用メモリ130に時系列でフレームごとに順次格納される歪曲円形画像を、背景歪曲円形画像と比較し、両者の相違が所定の基準以上となる領域を、動体の領域と認識するものである。
まず、ステップS11では、フレームカウンタCの初期化を行う。ここで、フレームカウンタは、フレーム単位での処理を行う上で、現在の処理が何番目のフレームであるかを示すパラメータであり、ここに示す例の場合、初期値としてC=1に設定される。続く、ステップS12では、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている第C番目のフレームの歪曲円形画像が動体検出部160へと読み込まれる。そして、ステップS13では、この第C番目のフレームの歪曲円形画像S(C)を、前述した背景歪曲円形画像S(0)と比較し、画素値の差がしきい値d以上となる画素を着目画素として抽出する処理が行われる。
図30は、このステップS13で行われる具体的なプロセスを示す平面図である。背景歪曲円形画像S(0)も、第C番目のフレームの歪曲円形画像S(C)も、XY平面上に配置された多数の画素の集合であるので、同じ座標位置に配置された一対の画素を対応画素として認識することができる。そこで、この対応する画素の画素値の差を求める。そして、差が所定のしきい値d以上となる画素を着目画素として抽出する。図30の右下部分には、こうして抽出されたいくつかの着目画素が例示されている。
なお、カラー画像の場合、1つの画素に、R/G/Bなどの3原色の画素値が定義されることになるが、その場合は、たとえば、3原色の画素値の差についての平均値をしきい値dと比較するか、もしくは、3原色の中で最も大きい差をしきい値dと比較する等の方法をとることもできるし、RGB三次元色空間上にそれぞれの画素値をプロットし、両方のプロット点の空間上の距離をしきい値dと比較してもよい。
次に、ステップS14では、ステップS13で抽出された着目画素からなる連続領域であって、基準面積S以上の面積をもち、かつ、縦幅および横幅(X軸方向の幅およびY軸方向の幅)がともに基準寸法D以上となる条件を満たす領域を探索し、これを着目領域とする処理が行われる。たとえば、図30に示す例の場合、着目画素からなる2つの連続領域A1,A2が存在する。連続領域A1は、面積8,縦幅3,横幅4であり、連続領域A2は、面積2,縦幅1,横幅2である。したがって、基準面積S=6,基準寸法D=3に設定した場合、連続領域A1は着目領域となるが、連続領域A2は着目領域にならない。
基準面積Sに満たない連続領域を着目領域としないのは、ノイズ成分や微小な物体が動体として検出されることを避けるためである。また、縦幅および横幅の双方が基準寸法D以上という基準を設定するのは、一般的には動体である可能性が低い細長い対象物が動体として検出されることを避けるためである。
図31は、ステップS13,S14のプロセスによって、図22に示す動体60(猫)の領域が着目領域として認識された状態を示す平面図である。図にハッチングを施して示した画素が着目画素であり、この着目画素からなる連続領域は、基準面積S以上の領域であり、かつ、縦幅および横幅の双方が基準寸法D以上という基準を満たす領域となっている。
ただ、この図29に示す方法では、ステップS14の条件を満たす着目領域が探索されたとしても、これを直ちに動体として認識することはせず、そのような着目領域が基準のフレーム数(Cmax)に渡って連続して探索された場合に限って、これを動体として認識する処理を行うようにしている。すなわち、ステップS15において、着目領域が探索されたと判定された場合は、ステップS16へと進み、フレームカウンタCを1だけ増やす更新処理が行われ、ステップS17を経て、ステップS12からの処理が繰り返し実行される。すなわち、歪曲円形画像用メモリ130から次のフレームが読み出され、上述したプロセスが繰り返される。こうして、ステップS17において、フレームカウンタCの値が基準のフレーム数Cmax に到達したら、ステップS18へ進み、動体検出との判断がなされる。これは、ステップS14の条件を満足する着目領域が、Cmax フレーム分連続して存在した場合に、当該着目領域が動体の領域と認識されることを意味する。
一方、ステップS15において、着目領域が探索されなかった場合には、ステップS11へと戻り、フレームカウンタCがC=1に初期化されることになる。したがって、たとえ数フレーム分に渡って着目領域が探索されたとしても、Cmax フレーム分連続して探索されなかった場合には、ステップS15からステップS11へと戻り、動体検出は行われない。
なお、着目領域がCmax フレーム分連続して存在したとの判断を行う際には、Cmax フレームに渡って存在した着目領域の同一性が確保されていることも条件に入れるようにするのが好ましい。具体的には、ステップS15では、単に「着目領域が探索されたか否か」を判定するだけではなく、「前回探索された着目領域と同一性をもった着目領域が探索されたか否か」を判定するようにする。ここで、同一性の判定は、たとえば、前回探索された着目領域を構成する個々の着目画素と、今回探索された着目領域を構成する個々の着目画素との位置関係を調べ、同一位置の画素の割合が所定割合以上であった場合に、両着目領域は同一性をもつ(同一の動体に起因して形成された領域である)、との判定を行うようにすればよい。もちろん、同一性の判定には、この他にも、着目領域のサイズや形状の類似度が所定の基準以上である場合、着目領域の特徴量(色ヒストグラムやエッジ方向ヒストグラムなど)の類似度が所定の基準以上である場合、など様々な基準を用いることができ、これら複数の基準の論理和や論理積を条件とする判定を行うことも可能である。
このように、ステップS15の判定において、フレーム間に渡って存在する着目領域の同一性が確保されているか否かという条件を入れることにより、異なる位置に複数の着目領域が交替で出現したような事象を、動体として誤検出してしまうことを避けることができる。なお、この場合、互いに離隔した複数の着目領域が存在する場合には、より面積の大きい着目領域を対象とした判定を行うようにすればよい。
こうして、ステップS18において、動体検出との判断がなされた場合、動体検出部160は、目標切出条件(Pn,φn,mn)を生成し、これを実切出条件決定部170に伝達する処理を行う。また、動体追跡部190に対しては、最終着目領域(図29の流れ図において、フレームカウンタC=Cmax の時点で探索された着目領域)を示す情報を伝達する処理を行う。
§5で述べたとおり、目標切出条件は、検出動体の切り出し位置を示す目標切出中心点Pnと、検出動体の切り出し向きを示す目標平面傾斜角φnと、検出動体の切り出しサイズを示す目標倍率mnと、によって構成される。これらの情報は、最終着目領域に基づいて設定することができる。たとえば、最終着目領域の重心位置を目標切出中心点Pnと設定し、最終着目領域の縦幅および横幅に基づいて、当該最終着目領域の全体が目標切出領域内に含まれるように、目標倍率mnを設定すればよい。
具体的には、たとえば、図31に示すハッチング画素の集合からなる領域が最終着目領域であったとすれば、これらハッチング画素の集合からなる図形の重心点位置が目標切出中心点Pnとなり、これらハッチング画素の集合からなる図形全体が、目標切出領域内に含まれるように、目標倍率mnが決定される。なお、ここに示す実施形態の場合、前述したとおり、目標平面傾斜角φnは固定値(平面正則画像のU軸がY軸に平行な方向に対応するような切り出し向きを示す値)でよい。
図32は、図29の流れ図に示す動体検出処理を実行する機能をもった動体検出部160の詳細構成を示すブロック図である。図示のとおり、この動体検出部160は、歪曲円形画像用メモリ130からフレームごとの歪曲円形画像を読み出して動作し、背景画像保持部161、対応画素比較部162、着目領域探索部163、動体検出判定部164によって構成される。もっとも、実際には、これらの各構成要素は、コンピュータ用のプログラムもしくは半導体集積回路上の論理回路によって構成される。
背景画像保持部161は、歪曲円形画像用メモリ130に所定の初期時点で格納されていた画像を背景歪曲円形画像S(0)として保持する構成要素である。どの時点の画像を背景画像として保持するかは、たとえば、ユーザの指示に基づいて決定することができる。モニタ画面上の正則平面画像を監視中のユーザが、動体が存在しない時点で、その時点のメモリ130内の画像を背景画像として保持する旨の指示を与えればよい。当該指示を受けた背景画像保持部161は、その時点の画像を背景画像として取り込んで保持する。
ただ、ビデオカメラ110が屋外に設置されているケースでは、動体を含まない本来の背景画像自身が、時刻や天候によって大きく変化する。たとえば、同じ背景を撮影した画像であっても、昼間と夜間とでは、全体的な輝度に大きな変化が生じる。そこで、実用上は、背景画像保持部161が定期的に、保持する背景画像の自動更新を行うようにするのが好ましい。具体的には、メモリ130から全フレームの画像を背景画像保持部161に順次取り込んでゆくようにし、所定周期で、静的監視期間に取り込まれた複数フレーム分の画像の平均画像(各画素の画素値の平均をとった画像)を、新たな背景画像として保持する更新処理を行えばよい。たとえば、1分ごとに、「直近の静的監視期間に取り込んだ100フレーム分の画像の平均画像を新たな背景画像とする」という更新処理を行えば、常に最新の背景画像を保持することができる。その他、直前までの複数フレームから得られる、画素ごとの画素値の分布モデル(正規分布近似やヒストグラム)から統計的な背景画像(各画素値は上限と下限で表現される)を作成する方法も、一般的な動体検出の手法として広く利用されており、これらの手法を適用することも可能である。この場合、動体領域は、ある閾値以上もしくはある閾値以下の画素値を有する領域として検出される。
一方、対応画素比較部162は、歪曲円形画像用メモリ130に時系列でフレームごとに順次格納される歪曲円形画像S(C)上の個々の画素の画素値を、背景画像保持部161に保持されている背景歪曲円形画像S(0)上の対応する画素の画素値と比較し、両者の差がしきい値以上となる画素を着目画素として抽出する処理(図30参照)を行う。この処理は、図29の流れ図におけるステップS13の処理に対応する。抽出した着目画素を特定する情報(たとえば、その座標値)は、着目領域探索部163に伝達される。
着目領域探索部163は、着目画素からなる連続領域であって、基準面積S以上、かつ、縦幅および横幅がともに所定の基準寸法D以上となる条件を満たす着目領域を探索し、探索された着目領域を特定する情報(たとえば、当該領域を構成する個々の画素の座標値)を動体検出判定部164に伝達する。この処理は、図29の流れ図におけるステップS14の処理に対応する。なお、前述したとおり、互いに離隔した複数の着目領域が存在する場合には、より面積の大きい着目領域の情報を動体検出判定部164に伝達すればよい。
動体検出判定部164は、着目領域を含む歪曲円形画像が、基準のフレーム数Cmax 以上、連続して得られた場合に、動体検出がなされた旨の判定を行う。この処理は、図29の流れ図におけるステップS15〜S18の処理に対応する。既に述べたとおり、このとき、基準のフレーム数Cmax にわたって連続して得られた着目領域が、同一性の条件を満足しているか否かのチェックを行うのが好ましい。すなわち、連続して得られた着目領域が、同一の動体に起因して形成された領域であると予想される場合に限り、動体検出との判断が行われるようにする。同一性の判定は、前回探索された着目領域を構成する個々の着目画素と、今回探索された着目領域を構成する個々の着目画素との位置関係を調べ、同一位置の画素の割合が所定割合以上であった場合に、両着目領域は同一性をもつ、との基準や、前述した様々な基準に基づいて行えばよい。
こうして、動体検出が行われた場合には、動体検出判定部164は、最終着目領域を示す情報(たとえば、第Cmax 番目のフレーム内の着目領域を構成する個々の画素の座標値)を動体追跡部190に伝える。また、この最終着目領域に基づいて目標切出条件を生成し、これを実切出条件決定部170に与える。具体的には、前述したとおり、最終着目領域の重心位置を目標切出中心点Pnと設定し、最終着目領域の縦幅および横幅に基づいて目標倍率mnを設定すればよい。
なお、ここに示す実施形態の場合、目標平面傾斜角φnは固定値であるので、動体検出判定部164によって設定する必要はない。また、ズーミングを行わずに目標倍率mnを固定値にする運用をとる場合には、動体検出判定部164は、目標倍率mnを設定する必要もないので、目標切出中心点Pnのみを目標切出条件として生成し、これを実切出条件決定部170に与えれば足りる。
<<< §7.動体追跡処理 >>>
続いて、図28に示す魚眼監視システム100における動体追跡部190の動体追跡処理の詳細を説明する。
動体追跡部190による動体追跡処理は、動体検出部160による動体検出の後、検出動体を追跡する動体追跡処理を行い、追跡切出中心点P(i)と、追跡平面傾斜角φ(i)と、追跡倍率m(i)と、によって構成される追跡切出条件を、追跡動体が消滅したとの消滅判断がなされるまで、継続して実切出条件決定部170に与える処理である。
動体追跡部190は、動体検出部160から、検出動体に関する情報(最終着目領域を示す情報)を受け取った後、歪曲円形画像用メモリ130からフレーム単位で歪曲円形画像を順次読み出し、検出動体を追跡する処理を行う。一般に、動画データを解析して動体を追跡してゆく方法には、様々なアルゴリズムに基づく手法が知られている。動体追跡部190による動体追跡には、このような公知の任意の手法を利用することが可能である。
ここでは、そのような手法の一例を、図33の流れ図に基づいて説明する。まず、ステップS21では、動体検出部160で検出された動体(最終着目領域)を第0番目のフレーム画像上の第0番目の追跡動体とする処理が行われる。
そして、ステップS22において、第0番目の追跡動体の特徴量の演算が行われる。ここで、「追跡動体の特徴量」とは、対象となるフレーム画像上で認識されている動体を構成する領域(着目領域)について、画像の特徴を示す量であり、たとえば、当該領域を構成する画素の色ヒストグラムもしくはエッジ方向ヒストグラムを特徴量として利用することができる。具体的には、第0番目の追跡動体、すなわち、動体検出部160で検出された動体(最終着目領域)を構成する個々の画素の画素値を用いて、特徴量を求めるための所定の演算式に基づく演算が実行される。
次のステップS23では、追跡パラメータiが初期値1に設定される。この追跡パラメータiは、動体検出プロセスにおけるフレームカウンタCと同様に、フレーム単位での処理を行う上で、現在の処理が何番目のフレームであるかを示すパラメータである。ここに示す例の場合、動体検出処理の対象となった最終フレームを、動体追跡処理の対象となる第0番目のフレームに設定し、後続する第1番目以降のフレームについての動体追跡が行われることになる。
続くステップS24では、第i番目のフレーム画像における第(i−1)番目の追跡動体の近傍範囲を探索し、特徴量が類似する領域を第i番目の追跡動体と認識する処理が行われる。たとえば、i=1の場合、第1番目のフレーム画像について、第0番目のフレーム上の追跡動体の近傍範囲(すなわち、動体検出部160から与えられた最終着目領域の近傍範囲)を探索して、ステップS22で求められた第0番目の追跡動体の特徴量に類似した特徴量をもつ範囲の探索が行われる。具体的には、たとえば、動体検出部160から与えられた最終着目領域を、上下左右に数画素分ずらすことにより、もしくは上下左右に数画素分増減させることにより、複数通りの候補領域を定義し、これら複数の候補領域についての特徴量を求め、類似する特徴量をもった候補領域を探索する処理を行えばよい。そして、類似度が所定の基準以上、かつ、最も高い特徴量をもった候補領域を、第i番目のフレーム画像における追跡動体の領域と認識すればよい。
こうして、追跡動体の認識に成功した場合、ステップS25からステップS26へと進み、追跡パラメータiを1だけ増加する更新を行い、ステップS24の処理が繰り返される。すなわち、歪曲円形画像用メモリ130から、次のフレーム画像が読み出され、前のフレーム画像で認識されている追跡動体の領域と類似する特徴量をもった領域が、追跡動体の領域として認識される。
一方、追跡動体の認識に失敗した場合、すなわち、前のフレーム画像で認識されている追跡動体の領域と類似する特徴量をもった候補領域が発見できなかった場合、ステップS25からステップS27へと進み、動体消滅との判断がなされる。
ステップS25において、追跡動体の認識に成功したとの判断がなされた場合、動体追跡部190は、第i番目のフレームに関する追跡切出条件(P(i),φ(i),m(i))を生成し、これを実切出条件決定部170に伝達する処理を行う。一方、追跡動体の認識に失敗したとの判断がなされた場合、動体追跡部190は、動体消滅を示す情報を実切出条件決定部170に伝達する処理を行う。
§5で述べたとおり、追跡切出条件は、追跡動体の切り出し位置を示す追跡切出中心点P(i)と、追跡動体の切り出し向きを示す追跡平面傾斜角φ(i)と、追跡動体の切り出しサイズを示す追跡倍率m(i)と、によって構成される。これらの情報は、認識した追跡動体を構成する領域に基づいて設定することができる。たとえば、当該領域の重心位置を追跡切出中心点P(i)と設定し、当該領域の縦幅および横幅に基づいて、当該領域の全体が追跡切出領域内に含まれるように、追跡倍率m(i)を設定すればよい。なお、前述したとおり、ビデオカメラの設置形態や運用形態によっては、追跡倍率m(i)や追跡平面傾斜角φ(i)を固定値にすることもできる。
図34は、図33の流れ図に示す動体追跡処理を実行する機能をもった動体追跡部190の詳細構成を示すブロック図である。この動体追跡部190は、動体検出部160から最終着目領域を示す情報を受け取ってから動作を開始し、歪曲円形画像用メモリ130からフレームごとの歪曲円形画像を読み出して検出動体の追跡を行う機能を有し、図示のとおり、既知動体領域保持部191、候補領域抽出部192、特徴量演算部193、新動体領域認識部194、動体追跡判定部195によって構成される。もっとも、実際には、これらの各構成要素は、コンピュータ用のプログラムもしくは半導体集積回路上の論理回路によって構成される。
既知動体領域保持部191は、歪曲円形画像用メモリ160に格納されている第(i−1)番目のフレーム画像上において既に認識されている既知動体領域の情報を保持する構成要素である。i=1の場合、第0番目のフレーム画像上の既知動体領域の情報は、動体検出部160から最終着目領域の情報として与えられる。i=2以降の既知動体領域の情報は、後述するように、動体追跡判定部195から新動体領域の情報として与えられる。
候補領域抽出部192は、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている第i番目のフレーム画像から、既知動体領域の近傍に位置する複数通りの領域を候補領域として抽出する処理を行う。具体的には、上述したように、既知動体領域保持部191に保持されている第(i−1)番目のフレーム画像についての既知動体領域を、上下左右に数画素分ずらすことにより、もしくは上下左右に数画素分増減させることにより、複数通りの候補領域を定義すればよい。
特徴量演算部193は、既知動体領域保持部191に保持されている既知動体領域(第(i−1)番目のフレーム画像上で認識されている動体の領域)と、候補領域抽出部192によって抽出された複数通りの候補領域(第i番目のフレーム画像上で定義された領域)とについて、それぞれ画像の特徴を示す特徴量を求める演算を行う。具体的には、上述したように、演算対象として与えられた領域を構成する画素の色ヒストグラムもしくはエッジ方向ヒストグラムを特徴量として求める演算を行えばよい。なお、既知動体領域の特徴量は、1フレーム前の処理で候補領域の特徴量として既に演算済みなので、実用上、特徴量演算部193は再度の演算を行う必要はなく、1フレーム前の処理で求めた演算結果を流用することができる。
新動体領域認識部194は、特徴量演算部193によって演算された、既知動体領域の特徴量と、複数通りの候補領域の特徴量と、をそれぞれ比較し、既知動体領域の特徴量に対する類似度が所定の基準以上、かつ、最も高い特徴量をもった候補領域を、第i番目のフレーム画像上の新動体領域と認識する処理を行う。類似度が所定の基準以上である候補領域が複数発見された場合でも、その中で最も高い特徴量をもった候補領域を新動体領域と認識することにより、動体追跡の確度を高めることができる。
動体追跡判定部195は、新動体領域認定部194における認識が成功した場合には、認識された新動体領域に基づいて第i番目のフレーム画像についての追跡切出条件P(i),φ(i),m(i)を生成し、実切出条件決定部170へ伝達する。この場合、第i番目のフレーム画像について認識された新動体領域の重心位置を追跡切出中心点P(i)と設定し、この新動体領域の縦幅および横幅に基づいて追跡倍率m(i)を設定することは既に述べたとおりである。一方、認識が失敗した場合には、追跡動体が消滅したとの判断を行い、動体消滅を示す情報を実切出条件決定部170へ伝達する。
また、動体追跡判定部195は、認識に成功した場合、新動体領域を示す情報を既存動体領域保持部191へ与える。既存動体領域保持部191は、動体検出部160から与えられた検出動体の領域情報を、最初の既知動体領域の情報として保持するが、以後、動体追跡判定部195から逐次与えられる新動体領域の情報を新たな既知動体領域の情報として保持する。したがって、候補領域抽出部192が、第i番目のフレームについての候補領域を抽出する際には、既存動体領域保持部191には、第(i−1)番目のフレームについて認識された動体領域が保持されていることになる。
なお、追跡平面傾斜角φ(i)として固定値を採用する場合、動体追跡判定部195は、φ(i)を追跡切出条件として生成する必要はない。また、ズーミングを行わずに追跡倍率m(i)を固定値にする運用をとる場合には、追跡倍率m(i)を生成する必要もないので、動体追跡判定部195は、追跡切出中心点P(i)のみを追跡切出条件として生成し、これを実切出条件決定部170に与えれば足りる。
<<< §8.実切出条件の決定処理 >>>
ここでは、図28に示す魚眼監視システム100における実切出条件決定部170による実切出条件の決定処理の詳細を説明する。
<8−1.実切出条件決定部の基本機能>
実切出条件決定部170の基本機能は、歪曲円形画像S上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件をリアルタイムで画像切出変換部150に与えることである。
図35は、この実切出条件決定部170によって行われる実切出条件の決定処理の手順を示す流れ図である。図示のとおり、この決定処理は、ステップS31,32からなる静的監視期間W1、ステップS33,34からなる移行期間W2、ステップS35,36からなる動的監視期間W3という3つの期間ごとに、それぞれ異なる内容の処理が行われる。
静的監視期間W1では、ステップS31に示されているとおり、標準切出条件格納部180に格納されている標準切出条件(P0,φ0,m0)を、そのまま実切出条件(P,φ,m)として、画像切出変換部150に与える処理が行われる。そして、ステップS32において動体検出の判断が行われるまで、別言すれば、動体検出部160から目標切出条件(Pn,φn,mn)が与えられるまで、ステップS31の処理が続行され、静的監視期間W1が継続する。
一方、ステップS32において動体検出の判断が行われると、すなわち、動体検出部160から目標切出条件(Pn,φn,mn)が与えられると、移行期間W2が開始する。すなわち、ステップS33に示されているとおり、標準切出条件(P0,φ0,m0)から目標切出条件(Pn,φn,mn)へ移行するように、段階的に変わる実切出条件(P,φ,m)が生成され、これを画像切出変換部150に与える処理が行われる。そして、ステップS34において移行完了の判断が行われるまで、別言すれば、生成された実切出条件(P,φ,m)が目標切出条件(Pn,φn,mn)に到達するまで、ステップS33の処理が続行され、移行期間W2が継続する。
ここで、ステップS34において移行完了の判断が行われると、すなわち、標準切出条件(P0,φ0,m0)から段階的に変化させていった実切出条件(P,φ,m)が目標切出条件(Pn,φn,mn)に到達すると、動的監視期間W3が開始する。すなわち、ステップS35に示されているとおり、動体追跡部190から与えられる追跡切出条件(P(i),φ(i),m(i))を、そのまま実切出条件(P,φ,m)として、画像切出変換部150に与える処理が行われる。そして、ステップS36において動体消滅の判断が行われるまで、別言すれば、動体追跡部190から動体消滅を示す報告がなされるまで、ステップS35の処理が続行され、動的監視期間W3が継続する。
ステップS35において動体消滅の判断が行われると、動的監視期間W3は終了となり、ステップS31へ戻り、静的監視期間W1が再開する。
このような処理を実行するためには、実切出条件決定部170を、図36に示すように、静的監視期間担当部171と、移行期間担当部172と、動的監視期間担当部173によって構成すればよい。もっとも、実際には、これらの各構成要素は、コンピュータ用のプログラムもしくは半導体集積回路上の論理回路によって構成される。
ここで、静的監視期間担当部171は、動体検出がなされていない静的監視期間W1を担当する構成要素であり、当該期間W1の間、標準切出条件格納部180に格納されている標準切出条件(P0,φ0,m0)を実切出条件(P,φ,m)と定めて出力する機能を有する。また、移行期間担当部172は、動体検出がなされた後の所定の移行期間W2を担当する構成要素であり、当該期間W2の間、標準切出条件(P0,φ0,m0)から目標切出条件(Pn,φn,mn)へ移行するように段階的に変わる実切出条件(P,φ,m)を生成して出力する機能を有する。そして、動的監視期間担当部173は、移行期間が完了してから消滅判断がなされるまでの動的監視期間W3を担当する構成要素であり、当該期間W3の間、動体追跡部190から与えられる追跡切出条件(P(i),φ(i),m(i))を実切出条件(P,φ,m)と定めて出力する機能を有する。
要するに、図36に示す各担当部171,172,173は、期間W1,W2,W3のうちの自己の担当期間のみ、実切出条件(P,φ,m)を出力する働きをする。したがって、実切出条件決定部170から出力される実切出条件(P,φ,m)は、各担当部171,172,173のいずれかから選択的に出力された条件になる。
なお、既に述べたように、実切出条件のうち平面傾斜角φや倍率mは固定する運用をとることが可能である。この場合、実切出条件決定部170は、平面傾斜角φや倍率mについては当該固定値を常に出力すればよいので、実質的に、切出中心点Pの値のみを決定する処理を行えばよい。また、動体検出部160は、目標切出条件として目標切出中心点Pnの値のみを出力すれば足り、動体追跡部190は、追跡切出条件として追跡切出中心点P(i)の値のみを出力すれば足りる。
さて、図36に示す各担当部171,172,173のうち、静的監視期間担当部171は、標準切出条件をそのまま出力する処理を行えばよく、動的監視期間担当部173は、追跡切出条件をそのまま出力する処理を行えばよいので、その構成は非常に単純である。これに対して、移行期間担当部172は、実切出条件を、標準切出条件(P0,φ0,m0)から目標切出条件(Pn,φn,mn)へと段階的に移行させる移行処理を行う必要がある。そこで、以下、この移行処理の具体的な方法をいくつかの例を挙げながら説明する。
実切出条件は、P,φ,mという3つのパラメータによって構成されるが、移行は個々のパラメータごとに独立して行うことができる。すなわち、切出中心点Pについては、P0からPnへと段階的に移行させ、平面傾斜角φについては、φ0からφnへと段階的に移行させ、倍率mについては、m0からmnへと段階的に移行させればよい。これらの移行は、並行して同時に進行させてもよいし、それぞれ別個の期間に行ってもよい。
§4では、図22に示す歪曲円形画像S上で、標準切出領域E0から目標切出領域Enへと段階的に移行させる例を説明した。この例の場合、移行期間W2を前半のパンニング期間と後半のズーミング期間とに分け、パンニング期間において、図25に示すように切出中心点Pを点P0から点Pjへと移行し、ズーミング期間において、図26に示すように切出領域Eを領域EjからEnへと移行することになる。ここでは、このような移行プロセスを行う場合の具体的な実切出条件の変遷を考えてみよう。
図37は、この移行プロセスにおける切出中心点Pの移動状態を示す平面図である。図示のとおり、点Pは、歪曲円形画像Sを構成する円の中心点P0から、この円の半径に沿った移動経路A(Y軸を基準にして方位角αで示される方向)に沿って、P1,... ,Pi,... ,Pj〜Pnと移動する。点Pj〜点Pnは同一の点である。矢印で示すJi,Jj〜Jnは、後述するように、各位置における回転基準軸であり、移動経路Aに対して直交する軸になる。ここで、点P1〜Pjまでの移動期間が、前半のパンニング期間であり、点Pj〜Pnに留まっている期間が、後半のズーミング期間である。
図38は、この移行プロセスにおける実切出条件の具体的な変遷を示す表である。フレームFの欄には、切出処理の対象となる歪曲円形画像のフレーム番号F0〜Fnが記載されており、切出領域Eの欄には、各フレーム画像上に設定される切出領域E0〜Enが記載されている。実切出条件は、切出中心点P、平面傾斜角φ、倍率mの各欄に記載されているとおり変遷する。
まず、切出中心点Pは、第0番目の点P0から第n番目の点Pnへと変遷するが、実際には、第j番目以降の点Pj〜は、いずれも第n番目の点Pnと同一点であり、切出中心点Pの移動は、第j番目のフレームFjで完了している。これは前半のパンニング期間が、第j番目のフレームFjまでで完了することを意味する。これに対して、倍率mは、第0番目の倍率m0から第n番目の倍率mnへと変遷するが、実際には、第j番目の倍率mjまでは元の倍率m0と等しく、倍率が変化し始めるのは、第(j+1)目の倍率からである。これは後半のズーミング期間が、第j番目のフレームFjから始まることを意味する。
一方、平面傾斜角φは、この例の場合、移動経路Aに沿って移動中は、常に同一の値でよい。平面傾斜角φは、切り出しの向きを定めるパラメータであるが、図37に示す回転基準軸Ji,Jj〜Jnを基準に定めた角度であるので、方位角αが同じであれば、平面傾斜角φは常に同一の値に固定しておけばよい。この平面傾斜角φの取り扱いについては、後にまとめて説明する。
ここに示す例のように、移行期間担当部172が、移行期間前半のパンニング期間において、切出中心点Pが標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変わる実切出条件を定め、移行期間後半のズーミング期間において、倍率mが標準倍率m0から目標倍率mnへと段階的に変わる実切出条件を定めるようにすると、ユーザから見ると、動体検出時に、まず、視野が動体位置まで移動するパンニングが行われた後、動体観察に適した倍率までズーミングが行われることになる。このように、倍率固定のまま前半にパンニングを行う方法をとると、ユーザは位置関係の把握をより直感的に行うことができる。なお、後半のズーミングでは、mn>m0の場合はズームイン動作になるが、mn<m0の場合はズームアウト動作になる。
ただ、上例のようにパンニングとズーミングとを期間を分けて実施すると、移行期間が長くなり、また、図25の切出領域Ejのような設定が行われると、一部分が歪曲円形画像Sの領域からはみ出してしまう弊害も生じる。このような弊害を避けるには、移行期間担当部172が、移行期間の全期間をパンニング期間およびズーミング期間に設定し、切出中心点Pが標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変わると同時に、倍率mが標準倍率m0から目標倍率mnへと段階的に変わる実切出条件を定めるようにし、パンニングとズーミングとを並行して行うようにすればよい。この場合、第0番目のフレームF0から第n番目のフレームFnに向かって、切出中心点Pと倍率mとが並行して段階的に変化してゆくことになる。
<8−2.切出中心点Pの移動(パンニング)>
続いて、パンニングを行うための具体的な切出中心点Pの移動方法を考えてみる。一般に、パンニングの方法には、等速パンニングと不等速パンニングとが知られている。たとえば、通常のレンズを装着したビデオカメラを用いて、水平パンニングを行う場合、カメラを水平方向へ回転させることになるが、回転角速度を一定にすれば等速パンニングとなり、回転角速度を変化させれば不等速パンニングになる。ところが、本発明のように、魚眼レンズを装着したビデオカメラによって撮影された歪曲円形画像を利用して、パンニング撮影で得られるような平面正則画像を擬似的に得る処理を行う場合、通常のレンズを装着したビデオカメラのパンニング操作とは若干異なった取り扱いを行う必要がある。
まず、等速パンニングを行うことを考えてみよう。魚眼レンズを用いて撮影された歪曲円形画像を用いて擬似的にパンニングを行う場合、切出中心点Pを等速移動させても、等速パンニングの効果は得られない。たとえば、図37に示す例では、前半のパンニング期間に、切出中心点Pを移動経路Aに沿って点P0から点Pjへ移動させることになるが、点Pの移動速度を一定に維持した場合、通常のレンズを装着したビデオカメラによる等速パンニングの効果は得られない。これは、歪曲円形画像Sの中心部分と周辺部分とでは、撮影対象の画角が異なっているためである。
図39は、本発明に係る等速パンニングの具体的方法を示す側面図である。図の水平線は歪曲円形画像Sが形成されたXY平面を示し、半円は、この歪曲円形画像S上に定義された仮想球面Hを示している。ここでは、図の右方を向いた矢印Aの方向に切出中心点Pの移動経路をとり、図示の点P0から点Pnに向けてn段階からなる等速パンニングを行うことを考えてみよう。
§2で述べたとおり、XY平面上の任意の点Pに対して、仮想球面H上に対応点Qを定義することができる。この場合、2点P,Qには、「原点Oに向かって仮想球面H上の点Qに入射した外光がXY平面上の点Pに到達する」という関係があり、正射影方式の魚眼レンズを用いた場合、対応点Qは点Pの真上の点(同じXY座標をもつ点)になる。図39に示す点Q0,Q1,... ,Qi,... ,Qnは、それぞれ点P0,P1,... ,Pi,... ,Pnの対応点である。XY平面上の歪曲円形画像Sが歪んでいるのは、仮想球面H上の球面画像をXY平面上に投影したためである。いわば、仮想球面H上の実映像空間が、XY平面上の魚眼映像空間に歪んで収容されていることになる。
通常のレンズを装着したビデオカメラを用いた等速パンニングは、図39の点P0の位置(原点Oの位置)から仮想球面H上の実映像空間を望む視線ベクトルを考え、この視線ベクトルを等角速度で運動させることに相当する。したがって、通常のレンズを装着したビデオカメラによる等速パンニングの効果を得るためには、XY平面上における切出中心点Pの運動ではなく、仮想球面H上における対応点Qの運動が、等速運動となるようにすればよい。
たとえば、図示のとおり、切出中心点Pを、点P0から点Pnに向けてn段階に分けて移動させる場合、第i番目の点Piの移動距離ai(移動始点P0から移動経路Aに沿った距離)が時間tに対して線形変化するようにしても、等速パンニングの効果は得られない。等速パンニングの効果を得るためには、第i番目の対応点Qiの仮想球面H上での移動距離bi(移動始点Q0から、図に矢印Bで示す仮想球面上での移動経路Bに沿った距離:別言すれば、円弧Q0−Qiの長さ)が時間tに対して線形変化するように、第i番目の点Piの位置を定めればよい。
この対応点Qの運動を数式で示せば、図39の上段に示すような関係が得られる。すなわち、図示のとおり、対応点QiおよびQnの天頂角を、それぞれβiおよびβnとすれば、移動経路Aに沿った移動距離aiは、歪曲円形画像Sの半径(仮想球面Hの半径)をRとして、「ai=R・sin βi」である。そして、等速パンニングを行う場合、角度βiを0°〜βnまで、n段階にわたって等間隔で変化させる必要があるから、「βi=i/n・βn」となり、結局、「ai=R・sin (i/n・βn)」が得られる。ここで、角度βnは、点Pの最終移動距離をanとすれば、「βn=sin -1 an」である。結局、XY平面上において、点Pを移動経路Aに沿って点P0から点Pnに向けてn段階に分けて移動させる場合、第i番目の点Piの移動距離aiを、
ai=R・sin (i/n・(sin -1 an))
に設定すれば、等速パンニングの効果が得られることになる。
図40は、この等速パンニングの具体的方法を示す平面図およびグラフである。上段に示す円形の図は、XY平面上に定義された魚眼映像空間(歪曲円形画像S)を示しており、右方向に移動経路Aがとられている。切出中心点Pの始点は標準切出中心点P0であり、終点は目標切出中心点Pnである。切出中心点Pは、始点P0から終点Pnへ向かう移動経路Aに沿って、距離anだけ移動することになる。移動はn段階に分けて行われ、第i段階の移動位置を示す点Piは、始点P0から移動距離aiだけ離れた点になる。このXY平面は、歪んだ魚眼映像空間に対応するので、等速パンニングを行う場合、XY平面上での点Pの移動速度は等速度にならず、図示のとおり、時間tとともに速度が減少してゆく。
一方、図40の中段に示す矩形の図は、仮想球面H上に定義された実映像空間を示しており、右方向に移動経路Bがとられている。この移動経路Bは、仮想球面Hの円周に沿った経路であり、その始点は点P0の対応点Q0、終点は点Pnの対応点Qnである。対応点Qは、始点Q0から終点Qnへ向かう移動経路Bに沿って、距離bnだけ移動することになる。移動はn段階に分けて行われ、第i段階の移動位置を示す点Qiは、始点Q0から移動距離biだけ離れた点になる。上段の図と中段の図とを結ぶ破線は、各点P0,... ,Pi,... ,Pnと、各点Q0,... ,Qi,... ,Qnとの対応関係を示している。等速パンニングを行う場合、図示のとおり、実映像空間での対応点Qの移動速度を等速度にすればよい。
図40の下段左に示すグラフは、仮想球面上を点Q0〜点Qnに向かって移動経路Bに沿って移動する対応点Qの時間tに対する移動距離bを示すグラフであり、下段右に示すグラフは、XY平面上を点P0〜点Pnに向かって移動経路Aに沿って移動する切出中心点Pの時間tに対する移動距離aを示すグラフである。図示のとおり、対応点Qが等速運動をするのに対して、切出中心点Pの運動は等速運動にならない。結局、本発明に係るシステムにおいて、通常のレンズを装着したビデオカメラを用いた等速パンニングと同等の効果を得るためには、移行期間担当部172が、対応点Qの仮想球面上の運動が等速運動となるように、切出中心点Pの位置を変化させるようにすればよい。
このように、本発明において等速パンニングを行う基本原理がわかれば、この基本原理を利用して、所望の不等速パンニングを行うことが可能である。不等速パンニングは、文字どおり、等速パンニング以外のパンニング手法をすべて含む概念であるが、ここでは、パンニング期間の開始部分および終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるような視線移動を行う不等速パンニングを例示する。このような不等速パンニングの手法は、物理的なカメラの動きに合致するので、視聴者に対して自然な動きを提示する利点をもち、様々な映像表現に広く利用されている。
図41は、本発明に係る不等速パンニングの具体的方法を示す平面図およびグラフである。図40と同様に、上段に示す円形の図は、XY平面上に定義された魚眼映像空間(歪曲円形画像S)を示し、中段に示す矩形の図は、仮想球面H上に定義された実映像空間を示し、下段左に示すグラフは、仮想球面上を移動経路Bに沿って移動する対応点Qの移動距離bを示し、下段右に示すグラフは、XY平面上を移動経路Aに沿って移動する切出中心点Pの移動距離aを示している。
ここで、下段左のグラフに注目すると、対応点Qの運動は、運動開始部分および運動終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるように設定されている。このような設定は、上述した一般的な不等速パンニングに対応する運動のための設定であり、実映像空間での対応点Qは、中段の矩形の図に示すような運動を行うことになる。このように、実映像空間での対応点Qの運動を規定すれば、これに対応する切出中心点PのXY平面上での運動を決定することができる。下段右のグラフは、こうして決定された切出中心点Pの運動を示すものであり、上段の円形の図には、移動経路Aに沿ってこのような運動をする切出中心点Pの軌跡が示されている。
結局、この場合は、移行期間担当部172が、対応点Qの仮想球面上の運動が、パンニング期間の開始部分および終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるような不等速運動となるように、切出中心点Pの位置を変化させるようにすればよい。このような切出中心点Pの運動を数式で示せば、図41の上段に示すように、
ai=R・sin (bi/bn・(sin -1 an))
となる(前掲の等速パンニングの式における係数「i/n」を、係数「bi/bn」に置き換えた式)。ここで、aiは、XY平面上において、点Pを移動経路Aに沿って点P0から点Pnに向けてn段階に分けて移動させる場合の第i番目の点Piの移動距離であり、bnは、図41の中段に示すように、仮想球面Hに沿って測定した点Q0から点Qnまでの距離、biは、同様に、仮想球面Hに沿って測定した点Q0から点Qiまでの距離である。そして、距離biは、図41の下段左のグラフによって与えられる時間tiにおける移動距離ということになる。したがって、この図41の下段左のグラフを定義しておけば、上式に基づいて、同図下段右のグラフを演算によって求めることができ、所定の時間tiにおける距離ai(すなわち、切出中心点Pの位置)を一義的に決定することができる。
<8−3.倍率mの変更(ズーミング)>
次に、ズーミングを行うための具体的な倍率mの変更方法を考えてみる。一般に、ズーミングの方法も、等速ズーミングと不等速ズーミングとが知られている。通常のレンズを装着したビデオカメラの場合、光学的なズーミングは、対物レンズを光軸に沿って移動させる操作によって行う。対物レンズの移動速度が等速なら等速ズーミング、不等速なら不等速ズーミングになる。通常、不等速ズーミングを行う場合は、不等速パンニングと同様に、ズーミング期間の開始部分および終了部分の対物レンズの移動速度が、中間部分の移動速度よりも遅くなるような設定がなされる。
本発明の場合、ズーミング操作は、倍率mを変更することによって行われる。§2で述べたとおり、倍率mは、図9に示すモデルにおける三次元XYZ直交座標系の原点Oと、二次元UV直交座標系の原点Gとの距離を決定するパラメータであり、両点の距離は、仮想球面Hの半径をRとした場合に、m・Rで与えられることになる。図10に示すように、倍率mを小さく設定すれば、より広い切出領域E1が設定され、フレームF1には広角画像が得られることになり、図11に示すように、倍率mを大きく設定すれば、より狭い切出領域E2が設定され、フレームF2には望遠画像が得られることになる。
したがって、ズーミング操作は、移行期間担当部172が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をズーミング期間に設定し、当該ズーミング期間の間、時間軸に沿って単調増加(mn>m0の場合:ズームイン動作)もしくは単調減少(mn<m0の場合:ズームアウト動作)するように、倍率mを標準倍率m0から目標倍率mnへと変化させることにより行うことができる。
図42は、本発明に係る等速および不等速ズーミングの具体的方法を示すグラフであり、上段は等速ズーミングのグラフ、下段は不等速ズーミングのグラフである。いずれも横軸は時間t、縦軸は倍率mを示している。等速ズーミングの場合は、上段のグラフに示すとおり、倍率mは、時間t0〜tnのズーミング期間に、標準倍率m0から目標倍率mnまで線形増加する。したがって、倍率をn段階にわたって段階的に変化させる場合、第i番目の段階の倍率miは、図示のとおり、
mi=m0+i/n・(mn−m0)
で与えられる。したがって、等速ズーミング動作は、移行期間担当部172が、ズーミング期間の間、倍率mを時間軸に沿って線形変化させることにより行うことができる。
一方、不等速ズーミングの場合は、下段のグラフに示すとおり、倍率mは、時間t0〜tnのズーミング期間に、標準倍率m0から目標倍率mnまで非線形増加する。したがって、倍率をn段階にわたって段階的に変化させる場合、第i番目の段階の倍率miは、図示のとおり、
mi=m0+Ki・(mn−m0)
で与えられる。ここで、係数Kiは、下段のグラフの形状によって決定される第i番目の段階に固有の比例係数である。
したがって、予め図42の下段に示すグラフを用意しておき、移行期間担当部172が、このグラフに応じて倍率mを標準倍率m0から目標倍率mnまで変化させれば、ズーミング期間の開始部分および終了部分の倍率変化速度が、中間部分の変化速度よりも遅くなるような不等速変化するように、倍率mを時間軸に沿って変化させることができ、不等速ズーミングを行うことができる。
図43は、上述した等速および不等速パンニングの具体的なステップを示す表であり、合計8段階のステップによるパンニング動作が例示されている。各表の左欄にはステップの番号、右欄には当該ステップの時点における対応点Qの実映像空間(仮想球面上)での移動距離bが記載されている。図43(a) に示す等速パンニングでは、距離bが線形増加しているのに対して、図43(b) に示す不等速パンニングでは、距離bが非線形増加(開始部分および終了部分の増加速度が中間部分の増加速度よりも遅くなるような非線形増加)していることがわかる。
ここで、bnの値は、目標切出中心点Pnの位置(すなわち、検出された動体の位置)に応じて変動することになるが、これに乗じられる係数の部分は表に掲載された値に固定しておくことができるので、この係数の部分を関数式もしくはテーブルとして用意しておけば、テーブルの内容に応じた所望のパンニング動作を行うことが可能である。
一方、図44は、上述した等速および不等速ズーミングの具体的なステップを示す表であり、合計8段階のステップによるズーミング動作が例示されている。各表の左欄にはステップの番号、右欄には当該ステップの時点における実倍率mが記載されている。図44(a) に示す等速ズーミングでは、倍率mが線形増加しているのに対して、図44(b) に示す不等速ズーミングでは、倍率mが非線形増加(開始部分および終了部分の増加速度が中間部分の増加速度よりも遅くなるような非線形増加)していることがわかる。
ここでも、目標倍率mnの値は検出された動体のサイズに応じて変動することになるが、これに乗じられる係数の部分は表に掲載された値に固定しておくことができるので、この係数の部分を関数式もしくはテーブルとして用意しておけば、テーブルの内容に応じた所望のズーミング動作を行うことが可能である。
図45は、図36に示す移行期間担当部172の詳細構成を示すブロック図である。図示のとおり、この移行期間担当部172は、実切出中心点決定部70、実平面傾斜角決定部80、実倍率決定部90によって構成されている。
実切出中心点決定部70は、標準切出中心点P0と目標切出中心点Pnとに基づいて、点P0から点Pnへ移行するように段階的に変わる実切出中心点Pの値を定める処理を実行する。その具体的な方法は、上述した等速パンニングや不等速パンニングの手法として述べたとおりである。ここで、パンニングの速度は、予め定めた関数に基づいて制御することが可能である。
要するに、所望の速度でパンニングを行うには、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、このパンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、切出中心点Pについての仮想球面上の対応点Qが、予め設定された所定の球面移動経路上を、時間に関する関数として設定された所定の球面移動速度で移動するように、切出中心点Pの位置を決定すればよい。
たとえば、図46に示すように、実切出中心点決定部70を、関数格納部71と対応点変換部72よって構成し、関数格納部71には、対応点Qの仮想球面上の移動距離bと時間tとの関係を示す関数を格納しておき、対応点変換部72によって、当該関数を用いて求まる「時間tにおける対応点Qの位置」に対応するXY平面上の点を、当該時間tにおける切出中心点Pとして出力するようにすれば、用意した関数に応じた所望の速度でパンニングを行うことが可能になる。
具体的には、図40の下段左に示すグラフに対応する関数式や、図43(a) の距離b欄の係数に対応する数値テーブルを関数格納部71に格納しておけば、等速パンニングを行うことが可能になる。また、図41の下段左に示すグラフに対応する関数式や、図43(b) の距離b欄の係数に対応する数値テーブルを関数格納部71に格納しておけば、開始部分および終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるような不等速パンニングを行うことが可能になる。
一方、実倍率決定部90は、標準倍率m0と目標倍率mnに基づいて、倍率m0から倍率mnへ移行するように段階的に変わる実倍率mの値を定める処理を実行する。その具体的な方法は、上述した等速ズーミングや不等速ズーミングの手法として述べたとおりである。ここで、ズーミングの速度は、予め定めた関数に基づいて制御することが可能である。
たとえば、図47に示すように、実倍率決定部90を、関数格納部91と関数参照部92によって構成し、関数格納部91には、倍率mと時間tとの関係を示す関数を格納しておき、関数参照部92によって、当該関数を用いて求まる時間tにおける倍率を、当該時間tにおける倍率mとして出力するようにすれば、用意した関数に応じた所望の速度でズーミングを行うことが可能になる。
具体的には、図42の上段に示すグラフに対応する関数式や、図44(a) の倍率m欄の係数に対応する数値テーブルを関数格納部91に格納しておけば、等速ズーミングを行うことが可能になる。また、図42の下段に示すグラフに対応する関数式や、図44(b) の倍率m欄の係数に対応する数値テーブルを関数格納部91に格納しておけば、開始部分および終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるような不等速ズーミングを行うことが可能になる。
<8−4.平面傾斜角φの決定>
最後に、平面傾斜角φの決定方法を考えてみる。図45に示す実平面傾斜角決定部80は、標準平面傾斜角φ0と目標平面傾斜角φnに基づいて、角度φ0から角度φnへ移行するように段階的に変わる実平面傾斜角φの値を定める処理を実行する。ただ、実用上は、平面傾斜角φを段階的に変える処理は行う必要はない。以下にその理由を説明する。
図28に示す魚眼監視システム100において、画像切出変換部150が、実切出条件の1つとして平面傾斜角φを必要とするのは、図17に示す画像変換式において、画像の切り出し向きを示すパラメータとしてφが利用されるためである。この平面傾斜角φは、図9に示すように、二次元UV直交座標系のU軸(平面正則画像の横軸)の向きを定めるパラメータである。すなわち、二次元UV直交座標系は、視線ベクトルn上における原点Oから距離m・Rだけ離れた点Gを原点とし、UV平面が視線ベクトルnに直交する座標系として定義され、視線ベクトルnを回転軸とした回転ファクターが平面傾斜角φとして定義される。具体的には、平面傾斜角φは、「回転基準軸JとU軸とのなす角」と定義され、「回転基準軸J」は、「原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸」と定義される。
そこで、まず、図18に示す例のように、魚眼レンズ付ビデオカメラ30を建物20の側壁面に取り付けた場合を考える。この場合、カメラの撮像面、すなわち、XY平面(歪曲円形画像Sが形成される面)は、実世界の鉛直面に沿った面になる。ここでは、説明の便宜上、X軸が実世界の鉛直線方向、Y軸が実世界の水平面方向となるような向きに、カメラが設置されているものとしよう。そうすると、撮像面であるXY平面には、図48に示すような外界の画像が形成される。
この図48に示す撮像画像において、原点Oの位置における実世界の鉛直軸Wは、図の真下へ向かう方向であり、X軸と一致する。ここでは、この鉛直軸Wに対してY軸がなす角度をξと定義する。図示のとおり、鉛直軸WとY軸とは直交しているので、鉛直軸Wを基準として時計まわりの方向に角度ξを定義することにすれば、図示の例では、ξ=−90°となる(Y軸は、鉛直軸Wを反時計まわりに90°回転した位置にある)。
ここで、この図48に示す歪曲円形画像から、切出領域Eの部分を切り出して平面正則画像に変換することを考えよう。切出領域Eの位置は切出中心点Pで指定され、サイズは倍率mで指定され、向きは平面傾斜角φで指定される。前述したように、矩形状の平面正則画像を得る場合、切出領域Eは矩形ではなく歪んだ形状になるが、ここでは説明の便宜上、矩形の切出領域Eを描いており、その長辺方向がU軸方向を示している。図示の例では、切出領域Eの長辺方向、すなわち、U軸の方向は、Y軸に平行になっている。U軸がY軸に平行となるように切り出し向きを決める理由は、撮影画像上の鉛直軸Wの方向を下方向とする向きに平面正則画像を切り出すためである。そのような向きに切り出せば、図21(a) ,(b) に示すように、常に、鉛直軸Wの方向を下方向とする平面正則画像を得ることができる。
もちろん、得られる平面正則画像の向きは任意に設定することができるので、モニタ画面上に、実世界の景色を天地逆に表示したり、斜めに表示したりすることも可能であるが、一般的な監視用途で要求される画像は、鉛直軸Wの方向を下方向とする画像であろう。したがって、実用上、平面正則画像を切り出す際の向きは、「鉛直軸Wの方向を下方向とする画像が得られる向き」ということになる。
このように「常に天地の関係が正しい平面正則画像がモニタ画面上に得られるような向きに切り出す」という基本条件を設定するならば(実用上は、そのような基本条件を設定することになろう)、図28に示す魚眼監視システムにおいて、標準切出条件格納部180には、撮影画像における実世界の鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような標準平面傾斜角φ0を設定しておき、動体検出部160が、鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような目標平面傾斜角φnを設定し、動体追跡部190が、鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるように、追跡平面傾斜角φ(i)を設定するようにすればよい。また、実切出条件決定部170内の移行期間担当部172が、鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるように、平面傾斜角φを標準平面傾斜角φ0から目標平面傾斜角φnへと変化させるようにすればよい。
そこで、「鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような平面傾斜角φ」の値がどのような値になるかを考えてみる。上述したとおり、平面傾斜角φは、「回転基準軸JとU軸とのなす角」であり、「回転基準軸J」は、「原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸」である。したがって、図48に示す例の場合、図示のとおり、回転基準軸JとU軸とのなす角として平面傾斜角φが定義されることになる。本来、回転基準軸JとU軸は、図9に示すように、原点Gを起点としたベクトルとして定義されるが、図48では、説明の便宜上、これらのベクトルの起点を切出中心点Pまで平行移動した状態を示している。また、回転基準軸JはXY平面に平行な軸であるが、U軸は必ずしもXY平面に平行な軸にはならないので、図48に示すU軸は、本来のU軸ではなく、切出中心点PにおけるU軸に対応する軸(平面正則画像に変換した場合のU軸方向)を示すことになる。
ここで、「回転基準軸J」は、「原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸」であり、図48に示す半径方向軸Rは、視線ベクトルnのXY平面上への正射影に相当する軸であるから、図48に示す「平行移動後の回転基準軸J」は、半径方向軸Rに直交する軸になる。一方、半径方向軸R(視線ベクトルnの正射影)は、図9に示すとおり、Y軸を基準とした方位角αで示される向きに配置されているので、平面傾斜角φと方位角αとの間には、φ=−α+90°の関係が成り立つ。すなわち、切出中心点Pが、この歪曲円形画像上のどこに位置していたとしても、「鉛直軸Wの方向を下方向とする画像が得られる向き」(別言すれば、図示のU軸がY軸に平行となるような向き)に平面正則画像を切り出すためには、平面傾斜角φ=−α+90°なる設定を行えばよいことがわかる。
たとえば、図のY軸上に切出中心点Pをとった場合、方位角α=0°になるので、平面傾斜角φ=+90°になる。Y軸上の切出中心点Pについては、X軸に平行な方向に回転基準軸Jが定義されるので、平面傾斜角φ=+90°に設定すれば、図示のU軸はY軸に平行な方向に設定される。同様に、図のX軸上に切出中心点Pnをとった場合、方位角α=90°になるので、平面傾斜角φ=0°になる。X軸上の切出中心点Pについては、Y軸に平行な方向に回転基準軸Jが定義されるので、平面傾斜角φ=0°に設定すれば、図示のU軸はY軸に平行な方向に設定される。
このように、図48に示す例の場合、平面傾斜角φ=−α+90°なる設定を行えば、切出中心点Pの位置にかかわらず、常に、鉛直軸Wの方向を下方向とする平面正則画像が得られることになる。したがって、図37に示すように、移行期間中に切出中心点Pを、半径方向軸(移動経路A)に沿って点P0から点Pjへ移動させる場合でも、方位角αは一定であるから平面傾斜角φも一定(φ=−α+90°)でよい。
以上、図48に例示するように、撮像面が鉛直面に一致し、X軸が実世界の鉛直軸Wに一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラを設置した場合の説明を行った。続いて、X軸が斜めになるような設置が行われた場合を考えてみよう。図49に示す例は、撮像面が鉛直面に一致するようにビデオカメラが設置されている点は図48に示す例と同じであるが、X軸と鉛直軸Wとが一致しないような配置がなされた例である。別言すれば、実世界の鉛直軸Wに対してY軸がなす角度をξとした場合、図48はξ=−90°に設定された例であるのに対して、図49はξが任意の角度に設定された例ということになる。
図49を見れば明らかなように、X軸と鉛直軸Wとが一致しないため、XY平面上に得られる歪曲円形画像は、X軸およびY軸を基準にすると、斜めに配置された画像になる。この場合でも、半径方向軸Rが方位角αで与えられ、回転基準軸Jが半径方向軸Rに直交する軸になる点に変わりはない。したがって、「鉛直軸Wの方向を下方向とする画像が得られる向き」に平面正則画像を切り出すためには、平面傾斜角φと方位角αとの間には、角度ξを介して、φ=−α−ξの関係が成り立つ。すなわち、切出中心点Pが、この歪曲円形画像上のどこに位置していたとしても、平面傾斜角φ=−α−ξなる設定を行えばよいことになる。図48に示す例は、図49に示す一般例において、ξ=−90°とした特殊な例に他ならない。
結局、撮像面となるXY平面が鉛直面に一致し、Y軸が鉛直軸Wに対して角度ξをなす方向を向くように魚眼レンズ付ビデオカメラが設置されていた場合、平面傾斜角φは、常にφ=−α−ξとなるように設定すれば、常に天地の関係が正しい平面正則画像がモニタ画面上に得られることになる。
続いて、カメラの撮像面(XY平面)が水平面となるような設置を行った場合を考えてみよう。たとえば、図50に示す例は、カメラを地面に設置して、周囲の景色を撮影した画像である。この場合、撮像面は地面に平行な面になる。一般的な魚眼監視システムの場合、カメラを地面や床に設置するケースよりも、カメラを天井に設置するケースの方が多いであろうが、「撮像面が水平面となるように設置する」という設置形態に関しては共通であり、平面傾斜角φの決定方法も共通する。
図50に示す例において、たとえば、切出中心点Pの近傍に切出領域Eを設定して、ビルの一部についての平面正則画像を得る場合を考える。この場合、「常に天地の関係が正しい平面正則画像がモニタ画面上に得られるような向きに切り出す」という基本条件を満足させるためには、図示のような方向にU軸を設定する必要がある。ここで、切出中心点Pの位置における回転基準軸Jは、半径方向軸Rに直交する軸であり、U軸は回転基準軸Jに一致するので、平面傾斜角φ=0°になる。
図51は、撮像面が水平面に一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラを設置した場合の撮影画像の実世界の水平面方向を示す平面図である。図示の円Cは、実世界の等高線を示している。この等高線Cは、実世界での水平面に平行な所定平面の位置を示しており、この歪曲円形画像Sにおいて、外界の景色の水平方向は、等高線Cとして示される円の円周方向ということになる。したがって、たとえば、図示の切出中心点Paの近傍における景色の水平方向は、円Cの点Paにおける接線τaの方向になり、図示の切出中心点Pbの近傍における景色の水平方向は、円Cの点Pbにおける接線τbの方向になる。これらの接線は、当然、半径方向軸に対して直交するので、いずれも回転基準軸Jと同じ方向を向くことになる。このため、これら接線方向にU軸を設定するためには、平面傾斜角φを常に0°に設定すればよいことになる。
結局、撮像面となるXY平面が水平面に一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラが設置されていた場合、切出中心点Pの位置がどこであろうとも、常にφ=0°となるように設定すれば、常に天地の関係が正しい平面正則画像がモニタ画面上に得られることになる。
魚眼監視システムの用途では、実用上、撮像面を鉛直面もしくは水平面のいずれかに一致させてカメラを設置するのが一般的であり、また、常に天地の関係が正しい平面正則画像がモニタ画面上に得られるようにするのが一般的である。このような一般的な用途で利用する限り、特定の切出中心点Pの位置についての平面傾斜角φは、「φ=−α−ξ」(撮像面が鉛直面の場合)もしくは「φ=0°」(撮像面が水平面の場合)として一義的に算出できる。特に、撮像面が水平面の場合は、切出中心点Pの位置にかかわらず、常に、φ=0°という固定値になるので、動体検出部160は目標平面傾斜角φnを設定する必要はなく、動体追跡部190は追跡平面傾斜角φ(i)を設定する必要はない。
なお、設計実務上、留意しておくべき点は、切出中心点PがXY平面の原点O(歪曲円形画像の中心点)に位置する場合、平面傾斜角φの値が定まらない点である。平面傾斜角φは、「回転基準軸JとU軸とのなす角」として定義されるが、切出中心点Pが原点O上に位置する場合、回転基準軸Jを定義することができない。すなわち、回転基準軸Jは、「原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸」であるが、切出中心点Pが原点O上に位置する場合、視線ベクトルnはZ軸に一致し、原点GはZ軸上の点になる。このため、「原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルn(Z軸)に直交する軸」は無数に存在し、回転基準軸Jによって特定の方向を定義することができない。実際、切出中心点Pが原点O上に位置する場合、天頂角β=0になるが、方位角αと平面傾斜角φは定義することができない。このため、図17に示す変換式もそのままでは適用することができず、例外的な演算を行う必要が生じる。
したがって、切出中心点Pが原点O上に位置する場合だけ例外的に、別な方法によって切り出し向きを指定する必要がある。たとえば、図49に示す例のように、撮像面が鉛直面となるようにカメラを設置した場合、切出中心点Pについての切り出し向きは、「V軸が撮影画像の原点Oの位置における実世界の鉛直軸Wに対応するように平面正則画像が切り出されるような切り出し向き」に設定すればよい。
結局、図22に示す例のように、標準切出中心点P0を、二次元XY直交座標系の原点O上に設定する場合、標準切出条件格納部180には、V軸が撮影画像の原点Oの位置における実世界の鉛直軸に沿うように平面正則画像が切り出されるような切り出し向きを示す標準切出条件を設定しておくようにし、動体60を検出した動体検出部160は、目標切出中心点Pnについての方位角をαnとしたときに、目標平面傾斜角φn=−αn−ξなる設定を行い(ξは、前述したとおり、実世界の鉛直軸Wに対してY軸がなす角度)、実切出条件決定部170が、移行期間中、常に平面傾斜角φ=φnに設定するようにすればよい。
図38に示す表の平面傾斜角φの欄には、便宜上、標準平面傾斜角をφ0と記載したが、実際には、原点O上に位置する標準切出中心点P0について、平面傾斜角は定義することができないので、標準切出条件における切り出し向きは、別な方法(たとえば、図48や図49に示す例の場合、U軸とY軸とのなす角)で定義する必要がある。
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ここでは、これまで述べてきた本発明の一実施形態に係る魚眼監視システムについての変形例を述べる。
<9−1.標準切出中心点の任意設定>
これまで述べてきた実施形態では、標準切出中心点P0を、歪曲円形画像Sの中心点(すなわち、XY座標系の原点O)の位置に設定しているが、標準切出中心点P0は、静的監視期間W1の間(撮影範囲内に動体が検出されていない間)、モニタ装置120に表示させる平面正則画像の標準位置を指定するパラメータであり、歪曲円形画像S上の任意の位置に設定することが可能である。
たとえば、図20に示す例では、歪曲円形画像Sの中心に標準切出中心点P0を設定しているため、静的監視期間W1の間、図21(a) に示すように、樹木40の正面像がモニタ画面上に表示されることになる。これに対して、もし、ガードレール50の近傍を表示させたい場合は、標準切出中心点P0の位置を下方に修正すればよい。予め、標準切出中心点P0の位置として、図28に示す標準切出条件格納部180に任意の座標値を格納しておくようにすれば、静的監視期間W1の間、当該任意の座標値で示される位置近傍から切り出した平面正則画像をモニタ画面上に表示させることができる。
なお、動体検出がなされた場合、既に述べたとおり、図36に示す移行期間担当部172によって、実切出中心点Pを、標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへ向かって段階的に移動させるパンニング処理を行う必要がある。ここで、標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O(歪曲円形画像Sの中心)に設定されている場合、図37に示すように、原点Oから目標切出中心点Pnへ向かって、歪曲円形画像Sの半径方向の移動経路Aに沿って、切出中心点Pを移動させればよい。このように、円の中心から半径方向に切出中心点Pを移動させるパンニングは、比較的単純な演算処理によって実行可能である。実際、図40に示す式を用いた等速パンニングや、図41に示す式を用いた不等速パンニングは、それほど複雑な演算処理を必要としない。
ところが、標準切出中心点P0が二次元XY直交座標系の原点O以外の任意の位置に設定されている場合、当該任意の位置から目標切出中心点Pnへ直接向かう移動経路に沿って、点Pを移動させるパンニングを行うためには、かなり複雑な演算処理を必要とする。このような複雑な演算処理を避けるためには、原点Oを経由するパンニング経路をとればよい。
たとえば、図52に破線の経路で示すように、まず、パンニング期間の前段階として、標準切出中心点P0から原点Oへ向かって、歪曲円形画像Sの半径に沿って切出中心点Pを移動させた後、パンニング期間の後段階として、原点Oから目標切出中心点Pnへ向かって、歪曲円形画像Sの半径に沿って切出中心点Pを移動させるようにすればよい。図52に破線で示すパンニング経路は、点P0から点Pnへ直接向かう経路に比べて長くなるが、演算処理は単純化される。
もっとも、演算処理の負担が問題にならないシステムであれば、図53に破線で示すように、点P0から点Pnへ直接向かうパンニング経路をとるのが好ましい。一般に、動体検出が行われた後の移行期間のパンニング経路は、最短経路を採るのが効率的である。すなわち、ユーザには、切り替え前後の画像の空間的な位置関係を明瞭に認識させつつ、できるだけ速やかに検出動体を提示するのが好ましい。したがって、システムの演算処理速度に問題がなければ、図52のような原点経由のパンニング経路を採るよりも、図53のような直行パンニング経路を採るのが好ましく、特に、「最短経路」を採用するのが好ましい。
ただ、ここで言う「最短経路」とは、「魚眼映像空間上での最短経路」ではなく、「実映像空間上での最短経路」とすべきである。たとえば、図53に示す例の場合、点P0から点Pnに至る「魚眼映像空間上での最短経路」は、「XY平面上での最短経路」であるので、2点P0,Pnを結ぶ線分が最短経路になる。ところが、切出中心点Pを、そのような線分に沿って移動させると、通常のレンズを装着したビデオカメラを、実映像空間における歪んだ経路に沿ってパンニングした結果が得られるため、モニタ画面を観察しているユーザから見ると、不自然なパンニング動作が行われたように見えてしまう。
図53に示す例の場合、破線で示すパンニング経路は、XY平面上での最短経路にはなっていないが、仮想球面上での対応点の移動軌跡が最短経路となるようになっているので、「実映像空間上での最短経路」に沿ってパンニングした結果が得られ、モニタ画面を観察しているユーザには、自然なパンニング動作が行われたように見える。具体的には、図示の歪曲円形画像S上に仮想球面Hを配置し、標準切出中心点P0についての仮想球面H上の対応点Q0と、目標切出中心点Pnについての仮想球面H上の対応点Qnと、を定義し、切出中心点Pについての仮想球面H上の対応点Qの仮想球面H上での移動経路が、対応点Q0と対応点Qnとを仮想球面H上で結ぶ最短経路となるようにすればよい。
上述した条件に基づいて、切出中心点Pを点P0から点Pnへと移動させる経路は、幾何学的演算によって一義的に求めることができる。この演算式は、前述したとおり、かなり複雑な式になるが、以下、図54および図55を参照しながら簡単に説明する。
まず、図54の上段に示すような三次元モデルを考える。この図は、XY平面上の歪曲円形画像Sの上に仮想球面Hを配置した状態を示す斜視図である。歪曲円形画像S上には、点P0と点Pnとが定義されており、両点間に破線で示すような経路が描かれている。この破線で示す経路を定めるには、当該経路上の任意の点Pi(切出中心点Pを、点P0から点Pnに向かって段階的に移動させる際の第i番目の点)の座標値が求まればよい。
そこで、まず、2点P0,Pnについて、それぞれ仮想球面H上の対応点Q0,Qnを考える。既に述べたとおり、正射影方式の魚眼レンズを用いて撮影された歪曲円形画像Sの場合、対応点Q0,Qnは、各点P0,Pnの真上の点になる。次に、この2つの対応点Q0,Qnと、原点Oと、を通る仮想球面Hの切断面S3を定義する。切断面S3は原点Oを通る面であるので、半径Rの円形切断面になる。そして、この切断面S3に直交し、原点Oを起点とする法線ベクトルnを定義する。
続いて、この切断面S3の円周上の点であって、点Q0と点Qnとの間に位置する任意の点Qiを定義し、当該点Qiを対応点とする点PiをXY平面上に定義すれば、点Piの座標値は、対応点Qiの座標値に基づいて決定される。すなわち、正射影方式の魚眼レンズを用いて撮影された歪曲円形画像Sの場合、対応点Qiは、点Piの真上の点になるので、対応点QiのX座標値およびY座標値が、そのまま点Piの座標値になる。結局、対応点Qiの座標値が求まれば、目的となる点Piの座標値が求まることになる。
そこで、まず、図54の下段に示すように、点Q0の座標値をQ0(x0,y0,z0)とし、点Qnの座標値をQn(xn,yn,zn)とする。これらの座標値は、点P0,Pnの座標値から求めることができるので既知の値である。また、求めるべき点Qiの座標値をQi(xi,yi,zi)とする。更に、点Oから点Q0へ向かうベクトルをベクトルV0,点Oから点Qnへ向かうベクトルをベクトルVn,点Oから点Qiへ向かうベクトルをベクトルViとし、法線ベクトルnのベクトル成分をn(nx,ny,nz)とする。
そうすると、図55に示すとおり、外積の公式より、式(10)が導かれる。また、ベクトルV0とベクトルVnのなす角θは、その外積の大きさにより式(11)で表され、式(12)で算出される。ここで、等速パンニングを行うものとして、弧Q0Qnをn等分したときの第i番目の点が点Qiであるとすると、ベクトルViとベクトルV0のなす角θiは、式(13)で表される。円形切断面S3の円周に沿って、点Q0を角度θiだけ回転運動させれば、点Qiの位置にくるので、結局、点Qiの座標値(xi,yi,zi)は、ロドリゲスの公式によって、式(14)で求められることになる。なお、不等速
パンニングを行う場合は、式(13)の「i/n」の部分をiに応じた所望の値に設定すればよい。
<9−2.複数の動体の取り扱い>
本発明に係る魚眼監視システムでは、図35の流れ図に示すとおり、静的監視期間W1において動体検出がなされると、移行期間W2を経て動的監視期間W3へと移行し、動体追跡が行われる。そして、動体が消滅したと判断されると、再び静的監視期間W1に復帰する処理が行われる。ただ、これまで述べてきた基本的な処理手順は、撮影領域内に単一の動体のみが存在するという前提で組まれた手順であり、§6で述べた動体検出処理の具体例においても、動体の候補となる着目領域が複数存在する場合には、より面積の大きい着目領域のみを考慮する処理が行われていた。
しかしながら、複数の着目領域のそれぞれを考慮した処理を行えば、動体検出部160によって複数の動体を検出することが可能であり、動体追跡部190によって複数の動体を追跡することが可能である。ここでは、このように複数の動体についての取り扱い方を、いくつかの方針に基づいて説明する。
第1の取扱方針は、最初に検出された動体のみを考慮し、当該動体が消滅するまで、2番目以降の動体を無視する取り扱いを行う、という最も単純な方針である。この方針を採る場合、動体検出部160は、動体追跡部190による動体追跡処理が行われている間、新たな動体検出処理を休止すればよい。図56は、この第1の取扱方針を示すタイムチャートである。
3本のバーはいずれも横軸を時間軸とし、それぞれ固有の事象の時間変化を示している。まず、上段のバーは、各時点における実切出領域に含まれている動体(すなわち、切出対象として平面正則画像上に表示されるべき動体)の変遷を示している。「0」は切出対象となる動体が存在しないことを示し、静的監視期間W1を維持している状態を示す。「0→A」は、動体Aが検出されたために移行期間W2が進行中であることを示し、「A」は、動体Aを追跡する動的監視期間W3が進行中であることを示す。一方、中段のバーは、動体検出部160による動体検出処理が行われているか否かを示す、「サーチ」はたとえば図29に示す動体検出処理が実行されていることを示し、「(休止)」は当該処理が休止していることを示す。また、下段のバーは、動体追跡部190による追跡対象の状態を示し、「Aの追跡」は動体Aを追跡中であることを示し、「(休止)」は当該処理が休止していることを示す。
図における時刻t0〜t1の期間は、何ら動体検出が行われていない静的監視期間W1である。切出対象となる動体は存在せず、モニタ画面上には何ら動体の表示は行われていない。この期間中、動体検出部160は動体検出処理(サーチ)を実行しているが、動体追跡部190は処理を休止している。
ここで、時刻t1において、動体検出部160による動体Aの検出が行われると、時刻t1〜t2の間が移行期間W2となり、切出対象を動体Aとする移行処理が行われる。モニタ画面上では、パンニング動作が行われ、やがて画面上に動体Aが表示される。一方、動体検出部160は、このように最初の動体Aが検出されたら、その時点で動体検出処理を一時休止する。一方、動体追跡部190は、動体検出部160から動体Aが検出された旨の報告を受け、動体Aの追跡処理を開始する。
やがて、時刻t2において移行処理が完了すると、実切出中心点Pが目標切出中心点Pnへ到達していることになるので、モニタ画面上には動体Aが表示され、動的監視期間W3が開始する。すなわち、モニタ画面上では、動体追跡部190が追跡中の動体Aが表示され続ける。そして、時刻t3において、動体追跡部190による動体消滅の判断がなされると、再び静的監視期間W1へ戻り、時刻t0からの処理と同じ処理が繰り返し実行される。
この図56に示す第1の取扱方針によれば、動体検出部160は、最初に動体Aを検出すると、以降、動体Aが消滅するまで、動体検出処理を休止するので、新たに2番目以降の動体が検出されることはない。したがって、ユーザには、1つの動体が検出されたら、当該動体が消滅するまで、当該動体のみを考慮した画面提示が行われることになる。
第2の取扱方針は、常に最新の検出動体を考慮し、新たに動体検出がなされた場合には、常に新動体をユーザに提示してゆくという方針である。この方針を採る場合、動体検出部160は、動体追跡部190による動体追跡処理が行われている間も動体検出処理を続行し、動体追跡処理の対象となっている旧動体とは異なる新動体の検出がなされた場合、この新動体についての目標切出条件を実切出条件決定部170に与える処理を行えばよい。そして、実切出条件決定部170に新動体についての目標切出条件が与えられた場合には、移行期間担当部172が、旧動体についての追跡切出条件から新動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定めるようにし、動体追跡部190は、新動体に対する追跡処理を行うようにすればよい。図57は、この第2の取扱方針を示すタイムチャートである。
図57における時刻t0〜t1の期間は、何ら動体検出が行われていない静的監視期間W1である。切出対象となる動体は存在せず、モニタ画面上には何ら動体の表示は行われていない。この期間中、動体検出部160は動体検出処理(サーチ)を実行しているが、動体追跡部190は処理を休止している。
ここで、時刻t1において、動体検出部160による動体Aの検出が行われると、時刻t1〜t2の間が移行期間W2となり、切出対象を動体Aとする移行処理が行われる。モニタ画面上では、パンニング動作が行われ、やがて画面上に動体Aが表示される。ただし、動体検出部160は、最初の動体Aが検出された後も、動体検出処理(サーチ)を続行する。動体追跡部190は、動体検出部160から動体Aが検出された旨の報告を受け、動体Aの追跡処理を開始する。
やがて、時刻t2において移行処理が完了すると、実切出中心点Pが目標切出中心点Pnへ到達していることになるので、モニタ画面上には動体Aが表示され、動的監視期間W3が開始する。すなわち、モニタ画面上では、動体追跡部190が追跡中の動体Aが表示され続ける。
動体検出部160は、時刻t2以降も動体検出処理を続行する。この場合、常に動体Aが検出されることになるが、動体追跡部190から追跡結果の報告を受けるようにすれば、各フレーム画像上での動体Aの占有領域を認識することができるので、検出された動体が新たな動体であるのか、動体追跡部190が追跡中の旧動体であるのかを判断することが可能である。旧動体のみしか検出されなかった場合、外部への報告は行われないが、新動体が検出された場合、実切出条件決定部170および動体追跡部190に対して、新動体が検出された旨の報告がなされる。
図57には、時刻t3において、動体検出部160が新動体Bを検出した例が示されている。時刻t2〜t3の動的監視期間W3は、旧動体Aを追跡して表示する処理が行われていたが、時刻t3において新動体Bが検出されると、その報告を受けた実切出条件決定部170は、切出対象を旧動体Aから新動体Bへ切り替えるための移行処理を実行する。したがって、図示の時刻t3〜t4は移行期間W2になる。ただ、ここで実行される移行処理は、これまで述べてきた移行処理とは若干異なる。
すなわち、これまで述べてきた移行処理は、静的監視期間W1から動的監視期間W3へ移行するための処理であり、実切出条件決定部170は、実切出条件を、標準切出条件から目標切出条件へ段階的に変化させる処理を行っていたが、切出対象を旧動体Aから新動体Bへ切り替えるための移行処理では、旧動体Bについての追跡切出条件(時刻t3において、動体追跡部190から与えられた切出条件)から新動体Aについての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定めることになる。なお、任意の位置から別な任意の位置へ切出中心点Pを移動させるには、たとえば、§9−1で述べた方法を利用すればよい。
一方、動体追跡部190は、時刻t3において、動体検出部160から新動体Bを検出した旨の報告を受けると、追跡対象を旧動体Aから新動体Bに切り替え、以後、新動体Bの追跡処理を実行する。やがて、時刻t4において、旧動体Aから新動体Bへの移行処理が完了すると、実切出中心点Pが新動体Bについての目標切出中心点へ到達していることになるので、モニタ画面上には動体Bが表示され、新動体Bについての動的監視期間W3が開始する。すなわち、モニタ画面上には、動体追跡部190が追跡中の新動体Bが表示されることになる。そして、時刻t5において、動体追跡部190による動体Bの消滅判断がなされると、再び静的監視期間W1へ戻り、時刻t0からの処理と同じ処理が繰り返し実行される。
この図57に示す第2の取扱方針によれば、新たに検出された動体が次々と表示されることになるので、ユーザには、常に最新の動体情報の提示を行うことができる。
なお、この第2の取扱方針のバリエーションとして、動体Bが検出された時点で、動体Aとの面積比較を行い、動体Bの面積が動体Aの面積よりも大きい場合に限って、切出対象を動体Bへ切り替える運用を採ることもできる。動体Bの面積が動体Aの面積よりも大きくなければ、切出対象は引き続き動体Aということになる。そうすれば、現在追跡中の動体よりも重要度の高い動体(ここでは、面積の大きい動体)が出現した場合にのみ、追跡対象の切り替えが行われることになり、より実用度が増すことになる。
このような運用を採る場合、動体検出部160は、動体追跡部190による動体追跡処理が行われている間も動体検出処理を続行し、動体追跡処理の対象となっている旧動体とは異なり、かつ、旧動体よりも面積が大きいという条件を満たす別な動体の検出がなされた場合、当該条件を満たす新動体についての目標切出条件を実切出条件決定部170に与える処理を行うようにすればよい。上記面積条件を満たさない限り、別な動体の検出がなされても、当該別な動体は、新動体としての取り扱いを受けないことになる。
第3の取扱方針は、上述した第2の取扱方針に加えて、動体追跡部190に、複数の動体の同時追跡処理を実行させるものである。図57に示す例では、時刻t3において、新動体Bの検出がなされると、動体追跡部190は、旧動体Aの追跡を中止し、新動体Bの追跡を開始しているが、図33の流れ図に示す動体追跡処理は、複数の動体について並行して行うことも可能である。このように、複数の動体が検出されたときに、複数の動体について同時追跡処理を行う利点は、一方の動体が消滅した時点で直ちに他方の動体を切出対象とすることができる点である。
すなわち、動体追跡部190が、ある動体についての追跡処理を実行中に、動体検出部160から新動体を検出した旨の報告を受けた場合、新動体に対する追跡処理を行うとともに、旧動体に対する追跡処理も併せて行うようにする。この場合、実切出条件決定部170に対して与える追跡切出条件は、あくまでも新動体に基づく追跡切出条件にする。したがって、切出対象はあくまでも新動体になり、旧動体に対する追跡処理は、いわば水面下で行われる処理になる。そうすれば、旧動体よりも新動体が先に消滅した場合、動体追跡部190が動体検出部160に代わって、旧動体についての目標切出条件を、実切出条件決定部170に与えることができる。もちろん、動体追跡部190には、そのまま旧動体に対する追跡処理を続行させる。
実切出条件決定部170に対して、動体追跡部190から旧動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部172が、新動体についての追跡切出条件から旧動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定めるようにすればよい。
図58は、この第3の取扱方針を示すタイムチャートである。図57に示すタイムチャートとの相違点は、時刻t3において、新動体Bが検出されたときに、動体追跡部190が、新動体Bの追跡とともに、旧動体Aの追跡を並行して行う点である。そうすれば、もし、時刻t5において新動体Bが消滅したときに、旧動体Aがまだ存在していれば、動体追跡部190は、実切出条件決定部170に対して、新動体Bの消滅を報告するとともに、旧動体Aを切出対象とするための目標切出条件を報告することができる。実切出条件決定部170は、この報告を受け、切出対象を新動体Bから旧動体Aへ移行する移行処理を行うことができるので、図示のとおり、時刻t5〜t6の移行期間W2を経て、旧動体Aについての動的監視期間W3へ移行することができる。
以上、複数の動体が存在する場合の取扱方針をいくつか述べたが、切出対象(表示対象)となる動体が、短時間の間に頻繁に変更されると、ユーザに対して非常に目まぐるしい画像提示が行われることになり好ましくない。したがって、実用上は、移行期間担当部172が、旧動体から新動体へ交替する移行処理を行う際に、旧動体についての動的監視期間W3が所定の最小基準時間tmin に満たない場合には、当該動的監視期間W3が最小基準時間tmin に達するまで、待機時間をおいてから処理を開始するようにするのが好ましい。
図59は、図58に示す事例において、このような待機時間を設けるようにした例を示すタイムチャートである。図58のタイムチャートでは、時刻t2〜t3の期間が比較的短いため、動体Aについての動的監視期間W3を十分に確保することができず、動体Aの位置へのパンニング動作が完了した後(時刻t2)、わずかな時間で、新たな動体Bの位置へのパンニング動作が開始する(時刻t3)。この時刻t2〜t3の期間が、たとえば、1秒間といった短い時間であると、ユーザには、表示対象物の切り替えタイミングが早すぎて非常に目まぐるしい印象を与えることになる。
これに対して、図59のタイムチャートでは、新動体Bが検出された時刻t3を過ぎても、切出対象は依然として旧動体Aのまま維持されている。すなわち、動体追跡部190は、時刻t3から、新動体Bと旧動体Aの双方の追跡動作を並行して実行するが、実切出条件決定部170は、時刻t3のタイミングでは、依然として旧動体Aについての動的監視期間W3を継続しており、旧動体Aについての追跡切出条件を、実切出条件として採用している。
実切出条件決定部170が、旧動体Aから新動体Bへの移行期間W2を開始するのは、時刻t2から最小基準時間tmin だけ経過した時刻t4の時点であり、時刻t3〜t4の待機時間だけ延長されている。そうすれば、旧動体Aについての動的監視期間W3として、最小基準時間tmin を確保することができるので、ユーザに対して目まぐるしい印象を与えることを避けることができる。なお、図示の例の場合、新動体Bから旧動体Aへの移行期間W2は、新動体Bの消滅判定がなされた時刻t6に開始しているが、これは新動体Bについての動的監視期間W3(時刻t5〜t6)として、最小基準時間tmin が確保されているためである。もし、時刻t5〜t6の期間が、最小基準時間tmin に満たない場合には、新動体Bから旧動体Aへの移行期間W2の開始時刻は所定の待機時間だけ延長されることになる。
<9−3.非正射影方式への適用>
これまでの実施形態は、いずれも正射影方式の魚眼レンズを用いた例であり、画像変換に用いる対応関係式も、正射影方式の魚眼レンズで撮影された歪曲円形画像Sを前提とした式になっていた。ところが、実際に市販されている魚眼レンズは、必ずしも正射影方式のレンズとは限らない。実際、魚眼レンズの投影方式としては、等距離射影方式、立体射影方式、等立体角射影方式など、様々な方式が知られており、用途に応じて、これら様々な射影方式をとる魚眼レンズが利用されている。ここでは、このような非正射影方式の魚眼レンズによって撮影された非正射影画像に対して本発明を適用する方法を説明する。
正射影方式の魚眼レンズの光学的特性は、既に述べたとおり、図1に示すようなモデルによって説明することができる。すなわち、仮想球面H上の任意の入射点H(x,y,z)に対して、その法線方向から入射する入射光線L1は、Z軸に平行な方向に進む入射光線L2として、XY平面上の点S(x,y)へ到達する、という特性である。図60は、この正射影方式の魚眼レンズにおける入射光の投影状態を示す正面図である。図示のとおり、天頂角βをもった仮想球面H上の入射点H(x,y,z)に対して、その法線方向から入射した入射光線L1は、Z軸に平行な方向に進む入射光線L2として、XY平面上の点S(x,y)へ到達している。
ここで、入射点H(x,y,z)の天頂角βと、当該入射点H(x,y,z)を経た入射光線L2がXY平面上で到達する到達点S(x,y)の原点Oからの距離rと、の関係は、正射影方式の魚眼レンズを用いた撮影によって形成される正射影画像の場合、r=f・sinβなる式で表される。ここで、fは、魚眼レンズに固有の定数である。これに対して、たとえば、等距離射影方式の魚眼レンズを用いた撮影によって形成される等距離射影画像の場合、両者の関係は、r=f・βなる式で表されることになる。
図61は、正射影方式の魚眼レンズを用いて形成される正射影画像と、等距離射影方式の魚眼レンズを用いて形成される等距離射影画像と、の関係を示す斜視図である。図に同心円状に示す線は、同一の天頂角βをもつ入射点を経た入射光線についてのXY平面上での到達点の集合を示している。図61(a) に示す正射影画像の場合、r=f・sinβなる式が成り立つため、隣接する同心円状の線の配置間隔は、中心から周囲に向かうほど小さくなってゆく。これに対して、図61(b) に示す等距離射影画像の場合、r=f・βなる式が成り立つため、同心円状の線は、中心から周囲に向かって等間隔に配置される。
このように、正射影画像と等距離射影画像とは、いずれも歪曲円形画像という点では共通するものの、その歪みの状態が両者では異なっているため、当然ながら、平面正則画像に変換するために用いる変換演算式も異なったものになる。したがって、正射影画像を平面正則画像に変換する場合には、図17に示す正射影画像用対応関係式を用いることができるが、等距離射影画像などの非正射影画像を平面正則画像に変換する場合には、それぞれについての専用の対応関係式を用いる必要がある。
ただ、正射影画像上の座標と非正射影画像上の座標とは、所定の座標変換式を介して相互に変換することが可能である。したがって、本発明を実施するにあたって、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像Sが、非正射影方式の魚眼レンズによって撮影された非正射影画像である場合には、正射影画像上の座標と非正射影画像上の座標との間の座標変換式を用いて正射影画像用対応関係式を補正することにより得られる非正射影画像用対応関係式を用いるようにすればよい。以下、非正射影画像として、等距離射影画像を用いた場合を例にとって、この方法を説明する。
図61に示すように、正射影画像上の任意の1点と、等距離射影画像上の特定の1点とは、相互に1対1の対応関係を定義することができる(図の破線は、この対応関係を示している)。具体的には、等距離射影画像上の任意の1点の座標を(xb,yb)とし、これに対応する正射影画像上の特定の1点の座標を(xa,ya)とすれば、両者間には、図62の上段に示すように、
xa=xb(R/r) sin (πr/2R) 式(15)
ya=yb(R/r) sin (πr/2R) 式(16)
但し、r=√(xb+yb
なる式が成り立つ。逆に、正射影画像上の任意の1点の座標を(xa,ya)とし、これに対応する等距離射影画像上の特定の1点の座標を(xb,yb)とすれば、両者間には、図26の下段に示すように、
xb=xa(2R/πr) sin-1 (r/R) 式(17)
yb=ya(2R/πr) sin-1 (r/R) 式(18)
但し、r=√(xa+ya
が成り立つ。
結局、上記式(15),(16)は、等距離射影画像上の座標(xb,yb)を正射影画像上の座標(xa,ya)に変換する式(以下、第1の座標変換式と言う)であり、上記式(17),(18)は、正射影画像上の座標(xa,ya)を等距離射影画像上の座標(xb,yb)に変換する式(以下、第2の座標変換式と言う)ということになる。
そこで、図28に示す歪曲円形画像用メモリ130に格納されている画像が、等距離射影方式の魚眼レンズによって撮影された等距離射影画像である場合には、画像切出変換部150は、まず、これまで述べてきた正射影画像用対応関係式を用いて、所望の座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出すればよい。こうして算出された対応座標(x,y)は、正射影画像上の座標(xa,ya)に対応するものであるから、上述した第2の座標変換式を用いて、これを等距離射影画像上の座標(xb,yb)に変換し、変換後の座標(xb,yb)を、歪曲円形画像用メモリ130を実際にアクセスする際に用いる座標として利用すればよい。
なお、図9,図39,図54等に示すモデルにおいて、歪曲円形画像S上の切出中心点Pと、これに対応する仮想球面H上の対応点Qとの関係についても留意が必要である。これまで述べてきた実施形態のように、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像Sが、正射影方式の魚眼レンズによって撮影された正射影画像である場合には、図9のモデルのように、切出中心点P(xp,yp)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点Q(xp,yp,zp)を定義すれば、当該交点Qが切出中心点Pの対応点になる。これは、正射影方式の場合、切出中心点Pの真上の位置に、仮想球面H上の対応点Qが位置するからである。
ところが、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像Sが、非正射影方式の魚眼レンズによって撮影された非正射影画像である場合には、仮想球面上の対応点Qは切出中心点Pの真上には位置しない。そこで、この場合、正射影画像上の座標と非正射影画像上の座標との間の座標変換式を用いて、切出中心点Pの座標を補正し、補正後の点を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点を対応点Qとする必要がある。
たとえば、歪曲円形画像Sが等距離射影画像の場合、当該歪曲円形画像S上の1点として指定された切出中心点Pの座標は、等距離射影画像上の座標(xb,yb)に相当するので、上述した第1の座標変換式を用いて、これを正射影画像上の座標(xa,ya)に変換し、変換後の座標(xa,ya)によって示される点を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点を対応点Qとすればよい。
このような方法を採れば、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている画像が、等距離射影方式の魚眼レンズによって撮影された等距離射影画像である場合にも、基本的には、これまで述べてきた実施形態と同等の変換処理を適用することが可能になる。もちろん、この方法は、等距離射影画像への適用に限定されるものではなく、非正射影画像一般に広く適用することが可能である。
結局、一般論として述べれば、画像切出変換部150は、仮想球面H上に、撮影に用いた魚眼レンズの投影方式に応じて、二次元XY直交座標系上の座標(xi,yi)で示される点Siに対応する球面上対応点Qiをとり、原点Oとこの球面上対応点Qiとを結ぶ直線と二次元UV直交座標系の配置面との交点Tiの二次元UV直交座標系上での座標を(ui,vi)としたときに、座標(xi,yi)が座標(ui,vi)に対応する対応座標として求まる対応関係式を用いて、歪曲円形画像Sを平面正則画像Tに変換する処理を行えばよい。
特に、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像Sが、正射影方式の魚眼レンズによって撮影された正射影画像である場合には、図9に示すモデルで説明したとおり、座標(xp,yp)で示される切出中心点Pに対して、当該点Pを通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点として与えられる座標(xp,yp,zp)で示される点を仮想球面H上の対応点Qとし、座標(xi,yi)で示される点Siに対して、当該点Siを通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点として与えられる座標(xi,yi,zi)で示される点を仮想球面H上の対応点Qiとすることを前提として成り立つ正射影画像用対応関係式(図17に示す関係式)を用いて、座標(x,y)と座標(u,v)との間の変換を行うようにすればよい。
一方、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像Sが、非正射影方式の魚眼レンズによって撮影された非正射影画像である場合には、正射影画像上の座標と非正射影画像上の座標との間の座標変換式を用いて正射影画像用対応関係式を補正することにより得られる非正射影画像用対応関係式を用いるようにすればよい。具体的には、歪曲円形画像用メモリ130に格納されている歪曲円形画像が、等距離射影方式の魚眼レンズによって撮影された等距離射影画像である場合には、図62の下段に示すように、正射影画像上の座標(xa,ya)を等距離射影画像上の座標(xb,yb)に変換する座標変換式
xb=xa(2R/πr) sin-1 (r/R)
yb=ya(2R/πr) sin-1 (r/R)
但し、r=√(xa+ya
を用いて、正射影画像用対応関係式に対する補正を行えばよい。
<9−4.曲面上に配置された座標系の利用>
これまで述べた実施形態では、図9のモデルに示すとおり、平面上に定義された二次元UV直交座標系上に平面正則画像Tを求める変換方法を採っていた。しかしながら、歪曲円形画像Sから平面正則画像Tへの画像変換には、必ずしも平面上に定義された二次元UV直交座標系を用いる必要はなく、曲面上に定義された二次元UV湾曲座標系を用いることも可能である。
図63は、図9のモデルにおける二次元UV直交座標系の代わりに、曲面上に定義された二次元UV湾曲座標系を用いたモデルである。両者の相違点は、UV座標系の定義の仕方だけである。すなわち、図9のモデルでは、UV座標系は、点G(xg,yg,zg)を通り、視線ベクトルnに直交する平面上に定義されているのに対し、図63のモデルでは、この平面上に定義されたUV直交座標系を円柱側面に沿って湾曲させている。したがって、図9のモデルでは、二次元UV直交座標系(平面上の座標系)上に平面正則画像Tが得られることになるのに対して、図63のモデルでは、二次元UV湾曲座標系(円柱側面上の座標系)上に湾曲正則画像Cが得られることになる。
図63に破線で示す平面正則画像Tは、図9に実線で示す平面正則画像Tと同じものであり、点G(xg,yg,zg)を通り、視線ベクトルnに直交する平面上に定義された二次元UV直交座標系上の画像である。これに対して、図63に実線で示す湾曲正則画像Cは、この平面正則画像Tを湾曲させた画像に相当し、円柱側面に沿った曲面上の画像になる。
要するに、この図63に示すモデルで定義される二次元UV湾曲座標系は、三次元XYZ直交座標系を構成する空間内の所望の位置において、仮想円柱の側面に沿った湾曲面上に配置された座標系ということになり、この湾曲座標系上に定義される湾曲正則画像Cも、仮想円柱の側面に沿って湾曲した画像ということになる。
この二次元UV湾曲座標系も、U軸とV軸とを有する二次元の座標系であるから、湾曲正則画像C内の任意の1点が(ui,vi)なる座標で示される点は、通常の平面上の二次元座標系の場合と同じである。ただ、この二次元UV湾曲座標系は、点Gを原点とし、視線ベクトルnに直交する平面上に配置された二次元UV直交座標系を、仮想円柱の側面に沿って湾曲させることにより定義された座標系になる。そして、この湾曲のプロセスに用いる仮想円柱は、二次元UV直交座標系のV軸に平行な中心軸をもち、半径がmR(点OG間の距離)に等しい円柱とし、その側面上に点Gがくるように配置される。結局、このような条件を満たす仮想円柱を三次元XYZ直交座標系上に配置すると、当該仮想円柱の中心軸は、図63に一点鎖線で示すように、原点Oを通る軸V′になり、2点OGを結ぶ線分は、この仮想円柱の半径を構成することになる。
このような二次元UV湾曲座標系上に湾曲正則画像Cを得る原理は、二次元UV直交座標系上に平面正則画像Tを得る原理と全く同じである。すなわち、湾曲正則画像C上の1点Ci(ui,vi)について、歪曲円形画像S上の1点Si(xi,yi)を対応づけ、点Ci(ui,vi)に位置する画素の画素値を、点Si(xi,yi)の近傍に位置する画素の画素値に基づいて決定すればよい。そのためには、二次元UV湾曲座標系上の任意の座標(u,v)とXY平面上の対応座標(x,y)とを1対1に対応づける対応関係式が必要になる。このような対応関係式は、図17に示す対応関係式とは若干異なるが、XYZ三次元座標系における仮想円柱側面の幾何学的位置を考慮することにより求めることができる。詳細は、たとえば、特願2008−225570明細書などに開示されているので、ここでは具体的な対応関係式についての説明は省略する。
結局、本発明に係る魚眼監視システムの画像切出変換部150は、二次元UV座標系(平面上に定義された直交座標系でもよいし、曲面上に定義された湾曲座標系でもよい)上の座標(u,v)と二次元XY座標系上の座標(x,y)との対応関係を示す所定の対応関係式を用いて、座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出することにより、歪曲円形画像Sから切り出した画像を平面正則画像Tに変換する処理を行えばよい。
この場合、図9もしくは図63に示すモデルのように、切出中心点Pに対応する仮想球面H上の点である対応点Qをとり、原点Oを起点として対応点Qを通るベクトルを視線ベクトルnと定義し、この視線ベクトルn上における、原点Oから「倍率mと半径Rとの積m・R」だけ離れた点Gを原点とし、点Gを通り視線ベクトルnに直交する平面上もしくは当該平面を湾曲させた曲面上に平面傾斜角φに応じた向きをもって配置された二次元UV座標系を定義すればよい。ここで、点Qと点Pとの対応関係は、歪曲円形画像Sが配置された二次元XY直交座標系を含む三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心として半径Rの仮想球面Hを定義し、原点Oに向かって当該仮想球面H上の1点に入射した外光が、撮影に用いた魚眼レンズの光学作用(レンズの投射方式によって異なる)によってXY平面上の1点に到達する場合に、当該仮想球面H上の1点Qと当該XY平面上の1点Pとの関係として定義される。
なお、これまで述べた例では、得られる平面正則画像の中心点が、UV座標系の原点Gに一致していたが、平面正則画像は、必ずしも原点Gを中心に切り出したものにする必要はない。
<9−5.動体消滅後の移行期間>
これまで述べてきた実施形態では、図35の流れ図に示すとおり、動体追跡中に動体が消滅したと判断されると、動的監視期間W3から静的監視期間W1に復帰する処理が行われる。この復帰時には、特に移行期間を設けていないため、モニタ画面上では、動体が消滅したと判定されると、当該動体を追跡していた画面から、急に、もとの標準監視画面(標準切出中心点P0の周辺を示す画面)へ切り替わることになる。
この標準監視画面は、たとえば、図21(a) に示すフレームF0の画面のように、動体の検出が行われていない場合にモニタに表示されるデフォルト画面であり、監視業務を行うユーザであれば、その位置を潜在的に認識していることになる。したがって、動的監視期間W3から静的監視期間W1への切り替えが急に行われて、モニタ画面が標準監視画面に切り替わったとしても、切り替え前後の画像の空間的な位置関係の認識に混乱が生じるわけではない。むしろ、標準監視画面への急な切り替えを行うことにより、ユーザに、追跡中の動体が消滅した事実を明示的に報知する効果が得られるメリットがある。
ただ、画面の急激な切り替えを行うことが好ましくない事情がある場合には、動的監視期間W3から静的監視期間W1に復帰する際に、移行期間W4を設けることも可能である。この場合、実切出条件決定部170は、この移行期間W4において、動的監視期間W3の最終的な追跡切出条件から標準切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を決定すればよい。具体的な移行プロセスは、移行期間W2における移行プロセスと同様であり、パンニング動作およびズーミング動作によって、表示画面が徐々に切り替わることになる。
<<< §10.一般的な画像提示システムへの適用 >>>
以上、本発明の基本的技術思想を魚眼監視システムという具体的なシステムに応用した実施形態を述べたが、本発明の技術思想は、魚眼監視システムへの応用に限定されるものではない。すなわち、この技術思想は、監視カメラの用途だけではなく、一般的な画像提示システムに広く利用可能であり、たとえば、ゲーム装置、遊技装置などのエンターテインメントの分野において、画像を提示する技術にも利用可能である。
もちろん、このような分野に用いる画像提示システムでは、魚眼レンズ付ビデオカメラは必須の構成要件にはならない。たとえば、何らかの歪曲円形画像S(実際に魚眼レンズを用いた撮影によって得られた画像でもよいし、CGで作成した画像でもよい)を予めメモリに格納しておき、ユーザが指定した任意の切出条件に基づいて、所定の箇所から、所定の向きに、所定の倍率で画像を切り出して平面正則画像に変換し、これを提示する画像提示システムの場合、ユーザが新たな切出条件を指定するたびに、旧切出条件から新切出条件へ移行する処理が必要になるが、§8で述べたパンニング処理やズーミング処理は、このような移行処理へ応用することができる。
要するに、本発明は、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像もしくは同等のCG処理で作成された歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換し、これを画面上に提示する画像提示システムに広く応用することが可能である。
たとえば、二次元XY座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、当該座標系の原点Oを中心とし半径Rをもち、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像用メモリと、二次元UV座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像用メモリと、平面正則画像用メモリ内に格納されている平面正則画像を画面上に表示する画像表示装置と、歪曲円形画像上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件を、歪曲円形画像の一部から平面正則画像を切り出すための条件として決定する実切出条件決定部と、この実切出条件決定部から与えられた実切出条件に基づいて、歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像の切出中心点Pで示される切り出し位置から、平面傾斜角φで示される切り出し向きに、倍率mで示される切り出しサイズの画像を切り出し、これを平面正則画像に変換して、平面正則画像用メモリに格納する画像切出変換部と、を備えた一般的な画像提示システムに対して、本発明に係るパンニング処理を適用するのであれば、実切出条件決定部が、現在の切出中心点P0を含む現切出条件から、目標となる切出中心点Pnを含む目標切出条件への変更を行う際に、画像切出変換部に対して与える切出中心点Pの位置を、点P0から点Pnへと段階的に移行させる処理を行うようにすればよい。
具体的には、これまで述べてきた実施形態と同様に、歪曲円形画像が配置された二次元XY直交座標系を含む三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心として半径Rの仮想球面Hを定義し、原点Oに向かって当該仮想球面H上の1点に入射した外光が、撮影に用いた魚眼レンズの光学作用によってXY平面上の1点に到達する場合に、当該仮想球面H上の1点と当該XY平面上の1点とを相互に対応する点と定義し、切出中心点Pに対応する仮想球面H上の点である対応点Qをとり、原点Oを起点として対応点Qを通るベクトルを視線ベクトルnと定義し、この視線ベクトルn上における、原点Oから「倍率mと半径Rとの積m・R」だけ離れた点Gを原点とし、点Gを通り視線ベクトルnに直交する平面上もしくは当該平面を湾曲させた曲面上に平面傾斜角φに応じた向きをもって配置された二次元UV座標系を定義する。そして、画像切出変換部が、二次元UV座標系上の座標(u,v)と二次元XY直交座標系上の座標(x,y)との対応関係を示す所定の対応関係式を用いて、座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出することにより、歪曲円形画像から切り出した画像を平面正則画像に変換する処理を行うようにすればよい。
このとき、実切出条件決定部が、切出中心点Pについての仮想球面H上の対応点Qが、予め設定された所定の球面移動経路上を、時間に関する関数として設定された所定の球面移動速度で移動するように、切出中心点Pの位置を決定するようにすれば、実映像空間における所望の速度でのパンニング動作が可能になるので、ユーザに対して自然なパンニング効果を提供することができる。
また、本発明に係るパンニング処理に加えて、本発明に係るズーミング処理を適用するのであれば、実切出条件決定部が、切出中心点Pの位置を点P0から点Pnへと段階的に移行させる処理を行うとともに、倍率mの値を、現在の倍率m0から目標となる倍率mnへと段階的に移行させる処理を行うようにすればよい。この場合も、時間に関する関数として設定された所定の倍率変更速度で倍率mの値を移行させるようにすれば、実映像空間における所望の速度でのズーミング動作が可能になるので、ユーザに対して自然なズーミング効果を提供することができる。
10:路面
20:建物
30:魚眼レンズ付ビデオカメラ
31:撮像中心点
40:樹木
50:ガードレール
60:動体
70:実切出中心点決定部
71:関数格納部
72:対応点変換部
80:実平面傾斜角決定部
90:実倍率決定部
91:関数格納部
92:関数参照部
100:魚眼監視システム
110:魚眼レンズ付ビデオカメラ
115:画像入力部
120:モニタ装置
125:画像出力部
130:歪曲円形画像用メモリ
140:平面正則画像用メモリ
150:画像切出変換部
160:動体検出部
161:背景画像保持部
162:対応画素比較部
163:着目領域探索部
164:動体検出判定部
170:実切出条件決定部
171:静的監視期間担当部
172:移行期間担当部
173:動的監視期間担当部
180:標準切出条件格納部
185:手動条件設定部
190:動体追跡部
191:既知動体領域保持部
192:候補領域抽出部
193:特徴量演算部
194:新動体領域認識部
195:動体追跡判定部
A〜F:回転係数(数式における符号)
A:XY平面上での移動経路
A1,A2:着目画素からなる連続領域
a:モニタ装置の横方向寸法(水平方向の画素数)
a,ai,an:移動経路Aに沿った移動距離
B:仮想球面上での移動経路
b:モニタ装置の縦方向寸法(垂直方向の画素数)
b,bi,bn:移動経路Bに沿った移動距離
C:曲面上に定義された二次元UV座標系上の湾曲正則画像/等高線/フレームカウンタの値
Ci(ui,vi):曲面上に定義された二次元UV座標系上の湾曲正則画像C内の点
D:基準寸法
E,E1,E2:切出領域
E0:標準切出領域
Ei,Ej,Ek:移行途中の切出領域
En:目標切出領域
E(0),E(i),E(j),E(k):追跡切出領域
F1,F2:画角
F0,F1,Fi,Fj,Fk,Fn:撮像画像の各フレーム
f:魚眼レンズに固有の定数
G,G1,G2:二次元UV座標系の原点
G(xp,yp,zp):二次元UV座標系の原点
G(xg,yg,zg):二次元UV座標系の原点
H:仮想球面
H(x,y,z):仮想球面H上の入射点
i:整数
J,Ji,Jn:回転基準軸
j:整数
k:整数
Ki:比例定数
L1,L2:入射光線
m:倍率/実倍率
m0:標準倍率
m1,mi,mk:移行途中の倍率
mn:目標倍率
m(i):追跡倍率
n:視線ベクトル/整数
n(nx,ny,nz):法線ベクトル
ni:OとQiとを結ぶ直線
O:三次元XYZ直交座標系の原点
P:切出中心点/実切出中心点
P(xp,yp):切出中心点
Pa,Pb:切出中心点
P0:標準切出中心点
Pn:目標切出中心点
Pi:移行途中の切出中心点
Pn:目標切出中心点
P(0),P(i),P(j),P(k):追跡切出中心点
Q,Q0,Q1,Q2,Qi,Qn:球面上対応点
Q(xp,yp,zp):球面上対応点
Q0(x0,y0,z0):球面上対応点
Qi(xi,yi,zi):球面上対応点
Qn(xn,yn,zn):球面上対応点
R:歪曲円形画像Sの半径(仮想球面Hの半径)/半径方向軸
r:歪曲円形画像Sの中心点からの距離
S:歪曲円形画像/基準面積
S1:傾斜面
S2:接平面
S3:仮想球面の切断面
S(0):背景歪曲円形画像
S(C):現在読み込んだ歪曲円形画像
S(x,y):二次元XY直交座標系上の歪曲円形画像S内の点
S1(x1,y1):二次元XY直交座標系上の歪曲円形画像S内の点
S2(x2,y2):二次元XY直交座標系上の歪曲円形画像S内の点
Si(xi,yi):二次元XY直交座標系上の歪曲円形画像S内の点
S11〜S36:流れ図の各ステップ
T,T1,T2:二次元UV直交座標系上の平面正則画像
Ti(ui,vi):二次元UV直交座標系上の平面正則画像T内の点
T(0,0):二次元UV直交座標系の原点
T1(u1,v1):二次元UV直交座標系上の平面正則画像T内の点
T2(u2,v2):二次元UV直交座標系上の平面正則画像T内の点
Ti(ui,vi):二次元UV直交座標系上の平面正則画像T内の点
t,t0〜t7,tn:時間
tmin:最小基準時間
U:二次元UV座標系の座標軸
u:二次元UV座標系の座標軸Uに関する座標値
V:二次元UV座標系の座標軸
V0,Vi,Vn:ベクトル
v:二次元UV座標系の座標軸Vに関する座標値
W:実世界の鉛直軸
W1:静的監視期間
W2:移行期間
W3:動的監視期間
w:m×Rで与えられる数値
X:三次元XYZ直交座標系の座標軸
x,xa,xb:二次元XY直交座標系の座標軸Xに関する座標値
Y:三次元XYZ直交座標系の座標軸
y,ya,yb:二次元XY直交座標系の座標軸Yに関する座標値
Z:三次元XYZ直交座標系の座標軸
α:方位角
β,βi,βn:天頂角
θ,θi:ベクトル間の角度
φ:平面傾斜角/実平面傾斜角
φ0:標準平面傾斜角
φn:目標平面傾斜角
φ(i):追跡平面傾斜角
ξ:鉛直軸Wに対する角度
τa,τb:接線

Claims (44)

  1. 魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換し、これを画面上に表示する魚眼監視システムであって、
    装着した魚眼レンズによって、外界の画像を歪曲円形画像として撮影する魚眼レンズ付ビデオカメラと、
    二次元XY座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、前記二次元XY座標系の原点Oを中心とし半径Rをもった歪曲円形画像を、少なくとも1フレーム格納する歪曲円形画像用メモリと、
    前記魚眼レンズ付ビデオカメラから1フレームごとの時系列データとして順次与えられる歪曲円形画像を、前記歪曲円形画像用メモリに格納する画像入力部と、
    二次元UV座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像用メモリと、
    前記平面正則画像用メモリに格納されている平面正則画像を読み出して出力する画像出力部と、
    前記画像出力部から出力された平面正則画像を画面上に表示するモニタ装置と、
    歪曲円形画像上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件を、歪曲円形画像の一部から平面正則画像を切り出すための条件として決定する実切出条件決定部と、
    前記歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像の前記切出中心点Pで示される切り出し位置から、前記平面傾斜角φで示される切り出し向きに、前記倍率mで示される切り出しサイズの画像を切り出し、これを平面正則画像に変換して、前記平面正則画像用メモリに格納する画像切出変換部と、
    標準切出中心点P0と、標準平面傾斜角φ0と、標準倍率m0と、によって構成される標準切出条件を格納する標準切出条件格納部と、
    前記歪曲円形画像用メモリに時系列で順次格納される歪曲円形画像を相互に比較して動体検出処理を行い、動体検出がなされた場合に、検出動体の切り出し位置を示す目標切出中心点Pnと、検出動体の切り出し向きを示す目標平面傾斜角φnと、検出動体の切り出しサイズを示す目標倍率mnと、によって構成される目標切出条件のうち、少なくとも目標切出中心点Pnを、前記実切出条件決定部に与える動体検出部と、
    前記動体検出の後、検出動体を追跡する動体追跡処理を行い、追跡動体の切り出し位置を示す追跡切出中心点P(i)と、追跡動体の切り出し向きを示す追跡平面傾斜角φ(i)と、追跡動体の切り出しサイズを示す追跡倍率m(i)と、によって構成される追跡切出条件のうち、少なくとも追跡切出中心点P(i)を、追跡動体が消滅したとの消滅判断がなされるまで、継続して前記実切出条件決定部に与える動体追跡部と、
    を備え、
    前記実切出条件決定部が、前記動体検出がなされていない静的監視期間を担当する静的監視期間担当部と、前記動体検出がなされた後の所定の移行期間を担当する移行期間担当部と、前記移行期間が完了してから前記消滅判断がなされるまでの動的監視期間を担当する動的監視期間担当部と、を備え、前記静的監視期間担当部は、前記標準切出条件を実切出条件と定め、前記移行期間担当部は、前記標準切出条件から前記目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、前記動的監視期間担当部は、前記追跡切出条件を実切出条件と定めることを特徴とする魚眼監視システム。
  2. 請求項1に記載の魚眼監視システムにおいて、
    歪曲円形画像が配置された二次元XY直交座標系を含む三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心として半径Rの仮想球面を定義し、原点Oに向かって当該仮想球面上の1点に入射した外光が、撮影に用いた魚眼レンズの光学作用によってXY平面上の1点に到達する場合に、当該仮想球面上の1点と当該XY平面上の1点とを相互に対応する点と定義し、切出中心点Pに対応する前記仮想球面上の点である対応点Qをとり、原点Oを起点として前記対応点Qを通るベクトルを視線ベクトルnと定義し、この視線ベクトルn上における、前記原点Oから「倍率mと半径Rとの積m・R」だけ離れた点Gを原点とし、前記点Gを通り前記視線ベクトルnに直交する平面上もしくは当該平面を湾曲させた曲面上に平面傾斜角φに応じた向きをもって配置された二次元UV座標系を定義したときに、
    画像切出変換部が、前記二次元UV座標系上の座標(u,v)と前記二次元XY直交座標系上の座標(x,y)との対応関係を示す所定の対応関係式を用いて、座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出することにより、歪曲円形画像から切り出した画像を平面正則画像に変換する処理を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  3. 請求項1または2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、移行期間前半のパンニング期間において、切出中心点Pが標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変わる実切出条件を定め、移行期間後半のズーミング期間において、倍率mが標準倍率m0から目標倍率mnへと段階的に変わる実切出条件を定めることを特徴とする魚眼監視システム。
  4. 請求項1または2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、移行期間の全期間をパンニング期間およびズーミング期間に設定し、切出中心点Pが標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変わると同時に、倍率mが標準倍率m0から目標倍率mnへと段階的に変わる実切出条件を定めることを特徴とする魚眼監視システム。
  5. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、前記パンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、前記標準切出中心点P0についての前記仮想球面上の対応点Q0と、前記目標切出中心点Pnについての前記仮想球面上の対応点Qnと、を定義したときに、切出中心点Pについての前記仮想球面上の対応点Qの前記仮想球面上での移動経路が、前記対応点Q0と前記対応点Qnとを前記仮想球面上で結ぶ最短経路となるようにすることを特徴とする魚眼監視システム。
  6. 請求項5に記載の魚眼監視システムにおいて、
    標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O上に設定されており、
    移行期間担当部が、原点Oから目標切出中心点Pnへ向かって、歪曲円形画像の半径に沿って切出中心点Pを移動させることを特徴とする魚眼監視システム。
  7. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O以外の位置に設定されており、
    移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、前記パンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、標準切出中心点P0から原点Oへ向かって、歪曲円形画像の半径に沿って切出中心点Pを移動させた後、原点Oから目標切出中心点Pnへ向かって、歪曲円形画像の半径に沿って切出中心点Pを移動させることを特徴とする魚眼監視システム。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、対応点Qの仮想球面上の運動が等速運動となるように、切出中心点Pの位置を変化させることを特徴とする魚眼監視システム。
  9. 請求項5〜7のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、対応点Qの仮想球面上の運動が、パンニング期間の開始部分および終了部分の速度が中間部分の速度よりも遅くなるような不等速運動となるように、切出中心点Pの位置を変化させることを特徴とする魚眼監視システム。
  10. 請求項5〜7のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、
    対応点Qの仮想球面上の移動距離bと時間tとの関係を示す関数を格納する関数格納部と、
    前記関数を用いて求まる「時間tにおける対応点Qの位置」に対応するXY平面上の点を、当該時間tにおける切出中心点Pとして出力する対応点変換部と、
    を有することを特徴とする魚眼監視システム。
  11. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をパンニング期間に設定し、前記パンニング期間に切出中心点Pを標準切出中心点P0から目標切出中心点Pnへと段階的に変化させる際に、切出中心点Pについての仮想球面上の対応点Qが、予め設定された所定の球面移動経路上を、時間に関する関数として設定された所定の球面移動速度で移動するように、切出中心点Pの位置を決定することを特徴とする魚眼監視システム。
  12. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、移行期間の全期間もしくは一部の期間をズーミング期間に設定し、前記ズーミング期間の間、時間軸に沿って単調増加もしくは単調減少するように、倍率mを標準倍率m0から目標倍率mnへと変化させることを特徴とする魚眼監視システム。
  13. 請求項12に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、ズーミング期間の間、倍率mを時間軸に沿って線形変化させることを特徴とする魚眼監視システム。
  14. 請求項12に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、ズーミング期間の開始部分および終了部分の倍率変化速度が、中間部分の変化速度よりも遅くなるような不等速変化するように、倍率mを時間軸に沿って変化させることを特徴とする魚眼監視システム。
  15. 請求項12に記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、
    倍率mと時間tとの関係を示す関数を格納する関数格納部と、
    前記関数を用いて求まる時間tにおける倍率を、当該時間tにおける倍率mとして出力する倍率決定部と、
    を有することを特徴とする魚眼監視システム。
  16. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    標準切出条件格納部には、撮影画像における実世界の鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような標準平面傾斜角φ0が設定されており、
    動体検出部が、前記鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるような目標平面傾斜角φnを設定し、
    移行期間担当部が、前記鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるように、平面傾斜角φを標準平面傾斜角φ0から目標平面傾斜角φnへと変化させ、
    動体追跡部が、前記鉛直軸方向を下方向とする向きに平面正則画像が切り出されるように、追跡平面傾斜角φ(i)を設定することを特徴とする魚眼監視システム。
  17. 請求項16に記載の魚眼監視システムにおいて、
    撮像面となるXY平面が鉛直面に一致し、Y軸が鉛直軸Wに対して角度ξをなす方向を向くように魚眼レンズ付ビデオカメラが設置されており、
    二次元UV座標系の原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸として与えられる回転基準軸Jと、二次元UV座標系のU軸とのなす角を平面傾斜角φと定義し、視線ベクトルnのXY平面上への正射影とY軸とのなす角を方位角αと定義し、U軸方向を平面正則画像の横方向と定義した場合に、常にφ=−α−ξとなる設定が行われることを特徴とする魚眼監視システム。
  18. 請求項17に記載の魚眼監視システムにおいて、
    標準切出中心点P0が、二次元XY直交座標系の原点O上に設定されており、
    標準切出条件格納部には、V軸が撮影画像の原点Oの位置における実世界の鉛直軸に対応するように平面正則画像が切り出されるような切り出し向きを示す標準切出条件が設定されており、
    動体検出部は、目標切出中心点Pnについての方位角をαnとしたときに、目標平面傾斜角φn=−αn−ξなる設定を行い、
    移行期間担当部が、常に平面傾斜角φ=φnに設定することを特徴とする魚眼監視システム。
  19. 請求項16に記載の魚眼監視システムにおいて、
    撮像面となるXY平面が水平面に一致するように魚眼レンズ付ビデオカメラが設置されており、
    二次元UV座標系の原点Gを通り、XY平面に平行かつ視線ベクトルnに直交する軸として与えられる回転基準軸Jと、二次元UV座標系のU軸とのなす角を平面傾斜角φと定義し、U軸方向を平面正則画像の横方向と定義した場合に、常にφ=0°となる設定が行われることを特徴とする魚眼監視システム。
  20. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    画像切出変換部が、平面正則画像を構成する1つの着目画素の座標(u,v)についての対応座標(x,y)を算出し、歪曲円形画像用メモリ内の前記対応座標(x,y)の近傍に配置された画素の画素値を読み出し、読み出した画素値に基づいて前記着目画素の画素値を決定する処理を、前記平面正則画像を構成する各画素について実行し、前記平面正則画像用メモリ内に各画素の画素値を書き込むことにより、平面正則画像に変換する処理を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  21. 請求項20に記載の魚眼監視システムにおいて、
    画像切出変換部が、座標(u,v)で示される位置に配置された着目画素の画素値を決定する際に、対応座標(x,y)で示される位置の近傍に配置された歪曲円形画像上の複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  22. 請求項2に記載の魚眼監視システムにおいて、
    画像切出変換部が、仮想球面上に、撮影に用いた魚眼レンズの投影方式に応じて、二次元XY直交座標系上の座標(xi,yi)で示される点Siに対応する球面上対応点Qiをとり、原点Oと前記球面上対応点Qiとを結ぶ直線と二次元UV座標系の配置面との交点Tiの前記二次元UV座標系上での座標を(ui,vi)としたときに、前記座標(xi,yi)が前記座標(ui,vi)に対応する対応座標として求まる対応関係式を用いることを特徴とする魚眼監視システム。
  23. 請求項22に記載の魚眼監視システムにおいて、
    画像切出変換部が、
    歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像が、正射影方式の魚眼レンズによって撮影された正射影画像である場合には、座標(xp,yp)で示される切出中心点Pに対して、当該点Pを通りZ軸に平行な直線と仮想球面との交点として与えられる座標(xp,yp,zp)で示される点を球面上対応点Qとし、座標(xi,yi)で示される点Siに対して、当該点Siを通りZ軸に平行な直線と仮想球面との交点として与えられる座標(xi,yi,zi)で示される点を球面上対応点Qiとする正射影画像用対応関係式を用い、
    歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像が、非正射影方式の魚眼レンズによって撮影された非正射影画像である場合には、前記正射影画像上の座標と前記非正射影画像上の座標との間の座標変換式を用いて前記正射影画像用対応関係式を補正することにより得られる非正射影画像用対応関係式を用いることを特徴とする魚眼監視システム。
  24. 請求項23に記載の魚眼監視システムにおいて、
    画像切出変換部が、視線ベクトルnのXY平面上への正射影とY軸とのなす角を方位角αとし、視線ベクトルnとZ軸正方向とのなす角を天頂角βとして、
    A=cosφ cosα − sinφ sinα cosβ
    B=−sinφ cosα − cosφ sinα cosβ
    C=sinβ sinα
    D=cosφ sinα + sinφ cosα cosβ
    E=−sinφ sinα + cosφ cosα cosβ
    F=−sinβ cosα
    w=mR
    との定義の下で、座標(u,v)と座標(x,y)との対応関係を示す正射影画像用対応関係式として、
    x=R(uA+vB+wC)/√(u+v+w
    y=R(uD+vE+wF)/√(u+v+w
    なる式を用いることを特徴とする魚眼監視システム。
  25. 請求項24に記載の魚眼監視システムにおいて、
    画像切出変換部が、
    歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像が、等距離射影方式の魚眼レンズによって撮影された等距離射影画像である場合には、正射影画像上の座標(xa,ya)を等距離射影画像上の座標(xb,yb)に変換する座標変換式
    xb=xa(2R/πr) sin-1 (r/R)
    yb=ya(2R/πr) sin-1 (r/R)
    但し、r=√(xa+ya
    を用いて、正射影画像用対応関係式に対する補正を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  26. 請求項1〜25のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体検出部が、
    歪曲円形画像用メモリに所定の初期時点で格納されていた画像を背景歪曲円形画像として保持する背景画像保持部と、
    前記歪曲円形画像用メモリに時系列でフレームごとに順次格納される歪曲円形画像上の個々の画素の画素値を、前記背景歪曲円形画像上の対応する画素の画素値と比較し、両者の差がしきい値以上となる画素を着目画素として抽出する対応画素比較部と、
    前記着目画素からなる連続領域であって、基準面積以上、かつ、縦幅および横幅がともに所定の基準寸法以上となる条件を満たす着目領域を探索する着目領域探索部と、
    前記着目領域を含む歪曲円形画像が、基準のフレーム数以上、連続して得られた場合に、動体検出がなされた旨の判定を行い、最終着目領域に基づいて目標切出条件を生成する動体検出判定部と、
    を有することを特徴とする魚眼監視システム。
  27. 請求項26に記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体検出判定部が、同一の動体に起因して形成されたと予想される特定の着目領域を含む歪曲円形画像が、基準のフレーム数以上、連続して得られた場合に、動体検出がなされた旨の判定を行うようにし、互いに離隔した複数の着目領域が存在する場合には、より面積の大きい着目領域を前記特定の着目領域とする判定を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  28. 請求項26または27に記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体検出判定部が、最終着目領域の重心位置を目標切出中心点Pnと設定し、最終着目領域の縦幅および横幅に基づいて目標倍率mnを設定することを特徴とする魚眼監視システム。
  29. 請求項1〜28のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体追跡部が、
    歪曲円形画像用メモリに格納されている第(i−1)番目のフレーム画像上において既に認識されている既知動体領域の情報を保持する既知動体領域保持部と、
    歪曲円形画像用メモリに格納されている第i番目のフレーム画像から、前記既知動体領域の近傍に位置する複数通りの領域を候補領域として抽出する候補領域抽出部と、
    前記既知動体領域と前記複数通りの候補領域とについて、それぞれ画像の特徴を示す特徴量を求める演算を行う特徴量演算部と、
    前記特徴量演算部によって演算された、既知動体領域の特徴量と、複数通りの候補領域の特徴量と、をそれぞれ比較し、前記既知動体領域の特徴量に対する類似度が所定の基準以上、かつ、最も高い特徴量をもった候補領域を、前記第i番目のフレーム画像上の新動体領域と認識する新動体領域認識部と、
    前記新動体領域認定部における認識が成功した場合には、前記新動体領域に基づいて前記第i番目のフレーム画像についての追跡切出条件を生成し、認識が失敗した場合には、追跡動体が消滅したとの消滅判断を行う動体追跡判定部と、
    を有し、
    前記既存動体領域保持部が、動体検出部から与えられた検出動体の領域情報を、最初の既知動体領域の情報として保持し、以後、前記新動体領域の情報を新たな既知動体領域の情報として保持することを特徴とする魚眼監視システム。
  30. 請求項29に記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体追跡判定部が、第i番目のフレーム画像について認識された新動体領域の重心位置を追跡切出中心点P(i)と設定し、この新動体領域の縦幅および横幅に基づいて追跡倍率m(i)を設定することを特徴とする魚眼監視システム。
  31. 請求項29または30に記載の魚眼監視システムにおいて、
    特徴量演算部が、演算対象として与えられた領域を構成する画素の色ヒストグラムもしくはエッジ方向ヒストグラムを特徴量として求めることを特徴とする魚眼監視システム。
  32. 請求項1〜31のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体検出部が、動体追跡部による動体追跡処理が行われている間、新たな動体検出処理を休止することを特徴とする魚眼監視システム。
  33. 請求項1〜31のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体検出部が、動体追跡部による動体追跡処理が行われている間も動体検出処理を続行し、動体追跡処理の対象となっている旧動体とは異なる新動体の検出がなされた場合、この新動体についての目標切出条件を実切出条件決定部に与える処理を行い、
    実切出条件決定部に新動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部が、前記旧動体についての追跡切出条件から前記新動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、
    動体追跡部が、前記新動体に対する追跡処理を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  34. 請求項1〜31のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体検出部が、動体追跡部による動体追跡処理が行われている間も動体検出処理を続行し、動体追跡処理の対象となっている旧動体とは異なり、かつ、旧動体よりも面積が大きいという条件を満たす別な動体の検出がなされた場合、当該条件を満たす新動体についての目標切出条件を実切出条件決定部に与える処理を行い、
    実切出条件決定部に前記新動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部が、前記旧動体についての追跡切出条件から前記新動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、
    動体追跡部が、前記新動体に対する追跡処理を行うことを特徴とする魚眼監視システム。
  35. 請求項33または34に記載の魚眼監視システムにおいて、
    動体追跡部が、新動体に対する追跡処理を行うとともに、旧動体に対する追跡処理も併せて行い、新動体に基づいて追跡切出条件を設定し、旧動体よりも新動体が先に消滅した場合、動体検出部に代わって、前記旧動体についての目標切出条件を、実切出条件決定部に与え、
    実切出条件決定部に前記旧動体についての目標切出条件が与えられた場合、移行期間担当部が、前記新動体についての追跡切出条件から前記旧動体についての目標切出条件へ移行するように段階的に変わる実切出条件を定め、
    動体追跡部が、前記旧動体に対する追跡処理を続行することを特徴とする魚眼監視システム。
  36. 請求項33〜35のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    移行期間担当部が、旧動体から新動体へ交替する移行処理を行う際に、旧動体についての動的監視期間が所定の最小基準時間に満たない場合には、前記動的監視期間が前記最小基準時間に達するまで、待機時間をおいてから処理を開始することを特徴とする魚眼監視システム。
  37. 請求項1〜36のいずれかに記載の魚眼監視システムにおいて、
    ユーザの設定操作に基づいて、実切出条件決定部が決定すべき実切出条件および標準切出条件格納部に格納される標準切出条件を任意に設定する機能をもった手動条件設定部を更に備えることを特徴とする魚眼監視システム。
  38. 請求項1〜37のいずれかに記載の魚眼監視システムにおける魚眼レンズ付ビデオカメラおよびモニタ装置を除く構成部分としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  39. 請求項1〜37のいずれかに記載の魚眼監視システムにおける魚眼レンズ付ビデオカメラおよびモニタ装置を除く構成部分として機能する電子回路が組み込まれた半導体集積回路。
  40. 魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換し、これを画面上に提示する画像提示システムであって、
    二次元XY座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、前記二次元XY座標系の原点Oを中心とし半径Rをもち、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像用メモリと、
    二次元UV座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像用メモリと、
    前記平面正則画像用メモリ内に格納されている平面正則画像を画面上に表示する画像表示装置と、
    歪曲円形画像上の1点である切出中心点Pと、所定の平面傾斜角φと、所定の倍率mと、によって構成される実切出条件を、歪曲円形画像の一部から平面正則画像を切り出すための条件として決定する実切出条件決定部と、
    前記実切出条件決定部から与えられた実切出条件に基づいて、前記歪曲円形画像用メモリに格納されている歪曲円形画像の前記切出中心点Pで示される切り出し位置から、前記平面傾斜角φで示される切り出し向きに、前記倍率mで示される切り出しサイズの画像を切り出し、これを平面正則画像に変換して、前記平面正則画像用メモリに格納する画像切出変換部と、
    を備え、
    前記実切出条件決定部が、現在の切出中心点P0を含む現切出条件から、目標となる切出中心点Pnを含む目標切出条件への変更を行う際に、前記画像切出変換部に対して与える切出中心点Pの位置を、点P0から点Pnへと段階的に移行させる処理を行うことを特徴とする画像提示システム。
  41. 請求項40に記載の画像提示システムにおいて、
    歪曲円形画像が配置された二次元XY直交座標系を含む三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心として半径Rの仮想球面を定義し、原点Oに向かって当該仮想球面上の1点に入射した外光が、撮影に用いた魚眼レンズの光学作用によってXY平面上の1点に到達する場合に、当該仮想球面上の1点と当該XY平面上の1点とを相互に対応する点と定義し、切出中心点Pに対応する前記仮想球面上の点である対応点Qをとり、原点Oを起点として前記対応点Qを通るベクトルを視線ベクトルnと定義し、この視線ベクトルn上における、前記原点Oから「倍率mと半径Rとの積m・R」だけ離れた点Gを原点とし、前記点Gを通り前記視線ベクトルnに直交する平面上もしくは当該平面を湾曲させた曲面上に平面傾斜角φに応じた向きをもって配置された二次元UV座標系を定義したときに、
    画像切出変換部が、前記二次元UV座標系上の座標(u,v)と前記二次元XY直交座標系上の座標(x,y)との対応関係を示す所定の対応関係式を用いて、座標(u,v)に対応する対応座標(x,y)を算出することにより、歪曲円形画像から切り出した画像を平面正則画像に変換する処理を行うことを特徴とする画像提示システム。
  42. 請求項41に記載の画像提示システムにおいて、
    実切出条件決定部が、切出中心点Pについての仮想球面上の対応点Qが、予め設定された所定の球面移動経路上を、時間に関する関数として設定された所定の球面移動速度で移動するように、切出中心点Pの位置を決定することを特徴とする画像提示システム。
  43. 請求項40〜42のいずれかに記載の画像提示システムにおいて、
    実切出条件決定部が、切出中心点Pの位置を点P0から点Pnへと段階的に移行させる処理を行うとともに、倍率mの値を、現在の倍率m0から目標となる倍率mnへと段階的に移行させる処理を行うことを特徴とする画像提示システム。
  44. 請求項43に記載の画像提示システムにおいて、
    実切出条件決定部が、時間に関する関数として設定された所定の倍率変更速度で倍率mの値を移行させることを特徴とする画像提示システム。
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