図2は、磁気ディスク基板作製用転写型(スタンパ)を作成するモードル作成工程の一例を示している。この図2に従って磁気ディスク基板作製用スタンパの作成方法を説明すると、先ず、ガラス板、炭素基板、又はシリコンウェハからなる基板の表面が研磨、洗浄され(ステップS1)、それにより平滑面とされた基板上にスピンコート法等により液状のレジスト材料が均一な厚さとなるように塗布され(ステップS2)、その後、プリベークすることが行われる(ステップS3)。これにより、レジスト材料が加熱乾燥されてレジスト層が形成される。このレジスト材料には、例えば塩素、硫黄、フッ素等のような電子吸引性の元素又は電子吸引機能を有する基(これ以降、電子吸引基として記載する)等が添加されているため、形成されるレジスト層は、その電子吸収感度が向上されている。
次いで、基板上のレジスト層に対し、その上面側から電子ビーム描画装置によって電子ビームが照射され、レジスト層が露光されることにより、レジスト層の表面に潜像が形成されて、データ信号の記録が行われる(ステップS4)。すなわち、図3に示すように、基板4への電子ビーム照射によってサーボゾーン及びデータゾーン各々のマーク部分(電子ビームによる露光部分)を含むパターンが基板4のレジスト層6に潜像7として形成される(露光工程)。そのような基板4は電子ビーム描画装置から取り出された後、レジスト層6が現像され(ステップS5)、ポストベークされることにより潜像部分7が除去されて(ステップS6)、レジスト層6の上面に複数の溝部よりなるサーボゾーン及びデータゾーン各々の凹凸パターンが形成される(現像工程)。このようにしてレジスト層6に対してパターニング処理が施される。
続いて、スパッタリング法、蒸着法、無電界メッキ法等の方法により、レジスト層6の上面に金属材料よりなる電極膜が均一な膜厚となるように形成されることにより行われる(ステップS7)。
更に、上記の電極膜を電極として使用し、電鋳法を施すことにより、電極膜の上面にNi元素が堆積され、金属層が積層される(ステップS8)。そして、金属層を電極膜とともに、基板4及びレジスト層6の表面から剥離させることにより、金属層及び電極膜が一体となったマスタスタンパが形成される(ステップS9)。すなわち、図3に示すように、凹凸パターンが形成された基板4から転写工程でマスタスタンパ(転写型)5が作製される。マスタスタンパ5には図4に示す如きサーボゾーンとデータゾーンとかなるパターンが形成される。
マスタスタンパの凹凸パターンが形成された面上に電鋳法を施すことにより、マスタスタンパのパターンが転写された凹凸パターンを有するサブマスタスタンパが形成され(ステップS10)、更に、そのサブマスタスタンパの凹凸パターンが形成された面上に電鋳法を施すことにより、マスタスタンパと同一形状の複数のベビースタンパが形成される(ステップS11)。ベビースタンパを使用して磁気ディスクの基板を射出形成することができる。
次に、ベビースタンパに基づいてナノインプリント法を用いた磁気ディスクを製造する方法について説明する。
先ず、図5に示すように、先ず、アルミ又はガラスからなる基板材料71の表面上にはレジスト等の転写層72が形成され、その基板材料71がモールドであるベビースタンパ5aに対してセットされる(基板セット)。基板材料71はガラス等の非磁性体からなる。熱式インプリント方式では、パターンが転写されるべき転写層72は室温又はガラス転移温度以上まで加温した時に流動性を有する樹脂からなる。また、UV式(紫外線照射式)インプリント方式では、パターンが転写されるべき転写層72は紫外線照射により硬化する(ポリマー化する)紫外線硬化樹脂からなる。転写層72にベビースタンパ5aによって圧力を加えて転写が行われる(ステップS21:転写工程)。凹凸パターンが転写された転写層72が硬化したのち、基板71とベビースタンパ5aを剥離して得られた転写工程後の基板材料71に対してエッチングが施される(ステップS22:エッチング工程)。エッチング工程によって残った転写層72は剥離される(ステップS23:転写層除去工程)。これによってサーボゾーン及びデータゾーン各々が凹凸パターンとして表面に形成された基板73が作製される。
次に、基板73の凹凸面上に磁性体膜74が形成される(ステップS24:磁性体形成工程)。磁性体膜74がポリッシング処理されて基板73の表面の凹部にのみ磁性体膜74が残る(ステップS25:ポリッシング工程)。すなわち、サーボゾーン及びデータゾーン各々のパターンが磁性体によって形成される。そして、基板73の表面に潤滑層75が形成され(ステップS26:潤滑層形成工程)、この結果、磁気ディスクが得られる。
図6は図5の転写工程で用いられるインプリント装置の概略構成を示している。このインプリント装置においては、装置筐体111内に作業用チャンバ112が形成され、そこにインプリント装置本体が配置されている。装置筐体111内上部にはベビースタンパ5aを転写面を下方に向けて保持する転写型保持部114が固定されている。
装置筐体111内下部には昇降加圧ユニット117が固定されている。昇降加圧ユニット117はその上部の可動部117aに設けられたテーブル118を上下に移動させる。その昇降加圧ユニット117によるテーブル118の上下移動は図示しない制御装置によって制御される。テーブル118上には表面に転写層72が形成された基板材料71が載置される。基板材料71の転写層72表面がベビースタンパ5aと対向するようにされている。昇降加圧ユニット117がテーブル118を基板材料1と共に上昇させると、その加圧によってベビースタンパ5aが転写層72に押し付けられる。これによりベビースタンパ5aのパターンが転写層72に転写されることになる。
真空ポンプ115はベビースタンパ5aによるインプリント時に装置筐体111内に作業用チャンバ112の圧力を調整弁116を介して減圧させるために設けられている。これは、ベビースタンパ5aと転写層72との気泡の混入を防ぐと共に、加熱や硬化反応によって転写層72から発生する脱ガスを除去するためである。
図7は、本発明による電子ビーム描画装置の調整方法に従ってその調整が可能な電子ビーム描画装置の全体構成を示す図である。この電子ビーム描画装置は上記の磁気ディスク基板作製用転写型(スタンパ)を製造する際の露光工程で使用するものである。
図7に示すように、電子ビーム描画装置は、ディスク原盤用の基板15を回転、並進移動させるステージ駆動装置を含む真空チャンバ11、電子ビームカラム20、及び当該ステージ駆動装置並びに電子ビームカラム20を駆動する駆動系を含むブロック10(以下、仮に本体部10と称する)と、本体部10に対する制御を行う電子ビーム描画装置の制御装置としてのフォーマッタ50、及び補正データ生成部100からなる。
ディスク原盤用の基板15は、ターンテーブル16上に載置されている。なお、基板15は例えばガラス基板、カーボン基板又はシリコン基板の上に、電子ビームによって感光するレジスト材料が塗布されている。ターンテーブル16は、基板15を回転駆動する回転駆動装置であるスピンドルモータ17によってディスク基板主面の垂直軸(Z軸)に関して回転駆動される。スピンドルモータ17は並進ステージ(以下、単にステージとも称する)18上に設けられている。ステージ18は、移送(並進駆動)装置である並進モータ19に結合され、スピンドルモータ17及びターンテーブル16を基板15の主面と平行な面内の所定方向に移動することができるようになっている。
基板15はターンテーブル16上に吸着保持される。ターンテーブル16は誘電体、例えば、セラミックからなり、静電チャッキング機構(図示しない)を有している。かかる静電チャッキング機構は、ターンテーブル16とターンテーブル16内に設けられ静電分極を生起させるための導体からなる電極とを備えて構成されている。当該電極には高電圧電源(図示しない)が接続されており、高電圧電源から当該電極に電圧が印加されることにより基板15を吸着保持している。
ステージ18上には、後述するレーザ位置測定システム35の一部である反射鏡35A、干渉計などの光学要素が配されている。
真空チャンバ11は、エアーダンパなどの防振台(図示しない)を介して設置され、外部からの振動の伝達が抑制されている。また、真空チャンバ11は、真空ポンプ(図示しない)が接続されており、これによってチャンバ内を排気することによって真空チャンバ11の内部が所定圧力の真空雰囲気となるように設定されている。
電子ビームカラム20内には、電子ビームを射出する電子銃(エミッタ)21、収束レンズ22、ブランキング電極23、アパーチャ24、ビーム偏向コイル25、アライメントコイル26、偏向電極27、フォーカスレンズ28、対物レンズ29がこの順で配置されている。
電子銃21は、加速高圧電源(図示しない)から供給される高電圧が印加される陰極(図示しない)により数10〜100KeVに加速された電子ビーム(EB)を射出する。収束レンズ22は、射出された電子ビームを収束する。ブランキング電極23は、ブランキング駆動部31からの変調信号に基づいて電子ビームのオン/オフ切換(ON/OFF)を行う。すなわち、ブランキング電極23間に電圧を印加して通過する電子ビームを大きく偏向させることにより、電子ビームがアパーチャ24を通過するのを阻止し、基板15への電子ビームの照射をオフ状態(非照射)とすることができる。
アライメントコイル26は、ビーム位置補正器32からの補正信号に基づいて電子ビームの位置補正を行う。偏向電極27は、偏向駆動部33からの制御信号に基づいて電子ビームをラジアル方向及びタンジェンシャル方向に偏向させる。また、偏向電極27としては、ラジアル方向及びタンジェンシャル方向それぞれに偏向を制御する為の複数の偏向電極からなるものであっても良い。かかる偏向駆動により、基板15に塗布されたレジストの表面上に形成される電子ビームスポットの位置が調整される。
フォーカスレンズ28は、フォーカス駆動部34から供給されたフォーカス駆動信号(後述する)に基づいて、電子ビームに対するフォーカス調整を行い、そのフォーカス調整処理の施された電子ビームを対物レンズ29に導出する。
対物レンズ29は、フォーカスレンズ28から供給された電子ビームを収束しこれを、上記レジストの表面に照射する。この際、レジスト表面において電子ビームが照射された箇所に潜像が形成される。以降、このような電子ビームの照射によってレジスト表面に潜像を形成させることを、「描画」と称する。
真空チャンバ11には、基板15の主面の高さを検出するための光源36A及び光検出器36Bが設けられている。光検出器36Bは、例えば、ポジションセンサやCCD(Charge Coupled Device)などを含み、光源36Aから射出され、基板15の表面で反射された光ビーム(レーザ光)を受光し、その受光信号を高さ検出部36に供給する。高さ検出部36は、受光信号に基づいて基板15の主面の高さを検出し、その高さを示す高さ検出信号をフォーカス駆動部34に供給する。
フォーカス駆動部34は、上記高さ検出信号又はフォーカス調整信号FC(後述する)に応じて、フォーカスレンズ28におけるフォーカス調整量に対応したフォーカス駆動信号を生成してフォーカスレンズ28に供給する。
レーザ位置測定システム35は、内蔵する光源(図示せぬ)からの測定用レーザ光によってステージ18までの距離を測定し、その測定データ、すなわちステージ18の位置データを並進コントローラ37に供給する。
並進コントローラ37は、フォーマッタ50から供給されるリファレンス信号である並進クロック信号(T-CLK)F4に同期してXステージの並進制御を行う。また、並進コントローラ37は、レーザ位置測定システム35からのステージ位置データに基づいて並進誤差信号を生成し、ビーム位置補正器32に送出する。上記したように、この並進誤差信号に基づいてビーム位置補正器32は電子ビームの位置補正を行う。また、並進コントローラ37は、並進モータ19の制御を行う制御信号を生成して並進モータ19に供給する。
回転コントローラ38は、フォーマッタ50から供給されるリファレンス信号である回転クロック信号(R-CLK)F5に同期してスピンドルモータ17の回転制御を行う。より詳細には、スピンドルモータ17にはロータリエンコーダ(図示しない)が設けられており、スピンドルモータ17によってターンテーブル16(すなわち、基板15)が回転される際に、回転信号を生成する。当該回転信号は、基板15の基準回転位置を表す原点信号及び基準回転位置からの所定回転角ごとのパルス信号(ロータリ・エンコーダ信号)を含んでいる。当該回転信号は、回転コントローラ38に供給される。回転コントローラ38は、当該ロータリ・エンコーダ信号によりターンテーブル16の回転誤差を検出し、該検出された回転誤差に基づいてスピンドルモータ17の回転補正を行う。
EBRインターフェース回路(EBR I/F)39には、フォーマッタ50から種々の描画制御信号が供給される。より具体的には、フォーマッタ50からフォーカス調整信号FC、変調信号F1及び偏向信号F3が供給される。ブランキング駆動部31は変調信号F1に基づいて電子ビームのオン/オフを行い、偏向駆動部33は偏向信号F3に基づいて電子ビームの照射方向を偏向させる。フォーカス駆動部34は、かかるフォーカス調整信号FCに応じて、フォーカスレンズ28におけるフォーカス調整量に対応したフォーカス駆動信号を生成してフォーカスレンズ28に供給する。
ここで、フォーマッタ50から供給される各種描画制御信号及び当該制御信号に基づくフォーマッタ50の動作について以下に詳述する。
図8は、本体部10を制御するEBR制御装置としてのフォーマッタ50の内部構成を示す図である。
図8に示すように、フォーマッタ50は、EBR制御信号生成器(プロセッサ)51、クロック信号生成器52、メモリ53、フォーマッタ・インターフェース回路(フォーマッタ I/F)54、入出力部55及び表示部56からなる。
クロック信号生成器52は、例えば、CLV(Constant Line Velocity)描画やCAV(Constant Angular Velocity)描画に応じたクロック信号、或いは、後述するが如きスピンドルモータ17及び並進モータ19の駆動量を表す回転クロック及び並進クロック信号を生成する。
メモリ53は、後述する種々の制御信号に関する設定値やデータ等が記憶される。又、メモリ53には、テスト描画(後述する)を含む各種描画を行う為のプログラムが予め格納されている。
入出力部55は、使用者からの各種動作指令、或いは本体部10を制御する際に用いられる各種設定値等の入力を受け付け、その内容(動作指令、設定値)を表す信号をEBR制御信号生成器51に供給する。表示部56は、EBR制御信号生成器51からの表示指令に応じて、本体部10及びフォーマッタ50自身の動作条件、動作状態、設定値などを表示する。
EBR制御信号生成器51は、入出力部55からの動作指令に応じたプログラムをメモリ53から読み出し、そのプログラムに従って本体部10を制御するための以下の各種制御信号を生成し、これらをフォーマッタ・インターフェース回路54を介して本体部10に供給する。又、この間、EBR制御信号生成器51は、本体部10から供給された以下の開始信号F6をフォーマッタ・インターフェース回路54を介して受け取る。
・変調信号F1(F1-Modulation(/Blanking)):電子ビームをオン/オフするためにフォーマッタが出力する信号。例えば、”Low”のとき電子ビームはブランキングされ、電子ビームはオフとされる。
・鋸歯状波偏向信号F3(F3-Saw-Tooth-Deflection-X)、偏向信号F3:スパイラルを同心円とするための偏向信号。Xステージの移動方向によりランプ波の極性反転を伴う信号。
・並進クロック信号F4(F4-Translation-clock):フォーマッタが出力するXステージのへのリファレンス信号。EBR装置はこの信号に同期して並進ステージ(Xステージ)を駆動する。パルスの基準単位(ΔX)をフォーマッタ側で設定可能とする。デフォルト値としては、例えば、632.991345/1024nm。また、ΔX/2,ΔX/4,ΔX/8等も設定可能。
・回転クロック信号F5(F5-Rotation-clock):フォーマッタが出力する回転スピンドルへのリファレンス信号。デフォルトは、例えば、3600pulse/rev。デューティは、例えば、50%。
・開始信号F6(F6-/Start):終了信号F7(下記)が”High”状態であり且つ並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5が有効になった後に、EBR装置側がこれらのクロックに同期し、描画開始半径になった時点で”Low”状態の描画開始信号F6をフォーマッタに供給する。これにより、フォーマッタが描画(信号出力)を開始する。
・終了信号F7(F7-End):フォーマッタが描画(信号出力)の終了を”High”状態にてEBR装置に通知する。尚、終了信号F7は、並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5が有効な期間は”Low”状態に維持される。この信号を受けてEBR装置は描画開始信号F6を”High”に切り替えて、現在の描画動作を終了する。
・ビーム外周方向オフセット信号F8(F8-BeamOffsetOut)、外周方向オフセット信号F8、高速オフセット(+)信号F8:高速でビームを外周へオフセットさせる信号。
・ビーム内周方向オフセット信号F9(F9-BeamOffsetOut)、内周方向オフセット信号F9、高速オフセット(−)信号F9:高速でビームを内周へオフセットさせる信号。
・ビーム・タンジェンシャル方向偏向信号F16(F16-BeamTangentialDeflection)、タンジェンシャル偏向信号F16:高速でビームをタンジェンシャル方向又は円周方向(+θ,−θ方向)へ偏向する信号。
なお、加速電圧などの制御可能なパラメータを制御可能となるようにインタフェースを構成してもよい。
次に、上記の如き構成を有する本体部10及びフォーマッタ50による描画動作について、レジストが塗布されたテスト用の基板15に複数の同心円のラインを描く同心円ライン描画動作を一例にとって、図9〜図12を参照しつつ説明する。
[同心円ライン描画動作]
基板15がEBR本体部10にセットした後、使用者が、入出力部55によって同心円ラインを描かせるべき同心円ライン描画指令操作を行うと、フォーマッタ50は、メモリ53に格納されている同心円ライン描画プログラムに従った以下の如き制御を順次実行する。
先ず、フォーマッタ50は、図9に示す如く、本体部10に対して並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5の送出を開始すると共に、本体部10に送出する終了信号F7(F7-End)を”High”状態から”Low”状態に切り替える(図9、時点Tp)。この際の並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5は描画開始時の周波数(Fini)のクロック信号である。これら並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5の供給が開始されると、本体部10がこれらのクロックに同期して動作し、その後、描画開始半径になった時点で本体部10が”Low”(アクティブ)の描画開始信号F6(F6-/Start)をフォーマッタ50に送出する。
フォーマッタ50は、”Low”(アクティブ)の開始信号F6に応じて、図9又は図10に示すように、描画信号である変調信号F1及び偏向信号F3各々を本体部10に対して送出開始する。尚、図9又は図10に示すように、偏向信号F3は鋸歯状信号(アナログ電圧信号)であって、基板15が1回転する間(Tini 〜T1)に亘り、基準電圧(V=Vref=0volt)からV=VDに到るまで線形にレベルが変化する。時点T1において偏向信号F3は基準電圧Vref(=0volt)に戻され、電子ビームは基準偏向位置(例えば、基板15に対して垂直位置)に戻される。これにより、基板15は、並進クロック(T-CLK)F4に基づく一定速度にて、図11に示す如く並進する。より詳細には、基板15は、描画開始時の位置(破線で示す、基板中心をOで示す)から1回転終了時の位置(実線で示す、基板中心をO’で示す)までX方向に並進する。この際、図11に示すように、電子ビームEBは、偏向信号F3によって基板15を追従するようにビーム偏向がなされる。つまり、図12に示すように、電子ビームEBの偏向(すなわち、射出方向)が固定されている場合には、基板15上でスパイラル状のビーム軌跡(破線で示す)となるが、偏向信号F3により、本体部10は、同心円のラインLN1(実線で示す)を描画する。なお、以下においては、ライン番号j(すなわち、LN=j)の同心円のラインをLNjのように表記して説明する。当該第ラインLN1の描画の終了と同時に(T=T1)、偏向信号F3によって偏向電圧は基準電圧(V=Vref=0volt、図10)に戻される。すなわち、電子ビームはラインLN1の描画開始時の偏向位置(基準偏向位置)に戻され、電子ビームEBのビームスポットは基板15の中心に関してラインLN1の描画終了時の角度位置と同一の角度位置に戻される。一方、この時点において、基板15上のビームスポットの基板15の中心に関する半径位置(ラジアル位置)は、ラインLN1の描画に要した並進距離だけ移動している。この際、かかる距離が図12に示す如きライン間のピッチq(ラインピッチという。)になる。
そして、基板15の第2回転〜第4回転(REV=2〜4)において、フォーマッタ50は、上記したのと同様な制御を繰り返し実行することにより、ラインピッチqだけ互いに離れた同心円の第1ラインLN1〜第4ラインLN4の描画を行う(図12)。なお、図12においては、図の説明上、ラインピッチを拡大して示している。
ここで、レジスト表面上に所望のライン幅を有する同心円のラインを正確に描画させる為には、本体部10の設置時又は定期的に、本体部10自体の各種調整を行う必要がある。
EBR本体部10は、真空チャンバ11、及び真空チャンバ11内に配された円形の基板を載置及び回転、並進移動させるステージ駆動装置、及び真空チャンバ11に取り付けられた電子ビームカラム20、及びステージ駆動装置の制御、電子ビーム制御等をなす種々の制御系が設けられている。
ディスク原盤用のディスク状の基板15は、ターンテーブル16上に載置されている。なお、基板15は例えばガラス基板又はシリコン基板の上に、電子ビームによって感光するレジスト材料が塗布されている。ターンテーブル16は、基板15を回転駆動する回転駆動装置であるスピンドルモータ17によってディスク基板主面の垂直軸(Z軸)に関して回転駆動される。スピンドルモータ17は並進ステージ(以下、単にステージとも称する)18上に設けられている。ステージ18は、移送(並進駆動)装置である並進モータ19に結合され、スピンドルモータ17及びターンテーブル16を基板15の主面と平行な面内の所定方向に移動することができるようになっている。
基板15はターンテーブル16上に吸着保持される。ターンテーブル16は誘電体、例えば、セラミックからなり、静電チャッキング機構(図示しない)を有している。かかる静電チャッキング機構は、ターンテーブル16とターンテーブル16内に設けられ静電分極を生起させるための導体からなる電極とを備えて構成されている。当該電極には高電圧電源(図示しない)が接続されており、高電圧電源から当該電極に電圧が印加されることにより基板15を吸着保持している。
ステージ18上には、後述するレーザ位置測定システム35の一部である反射鏡35A、干渉計などの光学要素が配されている。
真空チャンバ11は、エアーダンパなどの防振台(図示しない)を介して設置され、外部からの振動の伝達が抑制されている。また、真空チャンバ11は、真空ポンプ(図示しない)が接続されており、これによってチャンバ内を排気することによって真空チャンバ11の内部が所定圧力の真空雰囲気となるように設定されている。
電子ビームカラム20内には、電子ビームを射出する電子銃(エミッタ)21、収束レンズ22、ブランキング電極23、アパーチャ24、ビーム偏向コイル25、アライメントコイル26、偏向電極27、フォーカスレンズ28、対物レンズ29がこの順で配置されている。
電子銃21は、加速高圧電源(図示しない)から供給される高電圧が印加される陰極(図示しない)により数10KeV〜100Kevに加速された電子ビーム(EB)を射出する。収束レンズ22は、射出された電子ビームを収束する。ブランキング電極23は、ブランキング制御部31からの変調信号に基づいて電子ビームのオン/オフ切換(ON/OFF)を行う。すなわち、ブランキング電極23間に電圧を印加して通過する電子ビームを大きく偏向させることにより、電子ビームがアパーチャ24を通過するのを阻止し、基板15への電子ビームの照射をオフ状態(非照射)とすることができる。
アライメントコイル26は、ビーム位置補正器32からの補正信号に基づいて電子ビームの位置補正を行う。偏向電極27は、偏向制御部33からの制御信号に基づいて電子ビームをラジアル方向及びタンジェンシャル方向に偏向制御する。また、偏向電極27としては、ラジアル方向及びタンジェンシャル方向それぞれに偏向を制御する為の複数の偏向電極からなるものであっても良い。かかる偏向制御により、基板15に塗布されたレジストの表面上に形成される電子ビームスポットの位置が調整される。
フォーカスレンズ28は、フォーカス制御部34から供給されたフォーカス制御信号(後述する)に基づいて、電子ビームに対するフォーカス調整を行い、そのフィーカス調整処理の施された電子ビームを対物レンズ29に導出する。
対物レンズ29は、フォーカスレンズ28から供給された電子ビームを収束しこれを、上記レジストの表面に照射する。この際、レジスト表面において電子ビームが照射された箇所に潜像が形成される。以降、このような電子ビームの照射によってレジスト表面に潜像を形成させることを、「描画」と称する。
真空チャンバ11には、基板15の主面の高さを検出するための光源36A及び光検出器36Bが設けられている。光検出器36Bは、例えば、ポジションセンサやCCD(Charge Coupled Device)などを含み、光源36Aから射出され、基板15の表面で反射された光ビーム(レーザ光)を受光し、その受光信号を高さ検出部36に供給する。高さ検出部36は、受光信号に基づいて基板15の主面の高さを検出し、その高さを示す高さ検出信号をフォーカス制御部34に供給する。
フォーカス制御部34は、上記高さ検出信号又はフォーカス調整信号FC(後述する)に応じて、フォーカスレンズ28におけるフォーカス調整量を示すフォーカス制御信号を生成してフォーカスレンズ28に供給する。
レーザ位置測定システム35は、内蔵する光源(図示せぬ)からの測定用レーザ光によってステージ18までの距離を測定し、その測定データ、すなわちステージ18の位置データを並進コントローラ37に供給する。
並進コントローラ37は、フォーマッタ50から供給されるリファレンス信号である並進クロック信号(T-CLK)F4に同期してXステージの並進制御を行う。また、並進コントローラ37は、レーザ位置測定システム35からのステージ位置データに基づいて並進誤差信号を生成し、ビーム位置補正器32に送出する。上記したように、この並進誤差信号に基づいてビーム位置補正器32は電子ビームの位置補正を行う。また、並進コントローラ37は、並進モータ19の制御を行う制御信号を生成して並進モータ19に供給する。
回転コントローラ38は、フォーマッタ50から供給されるリファレンス信号である回転クロック信号(R-CLK)F5に同期してスピンドルモータ17の回転制御を行う。より詳細には、スピンドルモータ17にはロータリエンコーダ(図示しない)が設けられており、スピンドルモータ17によってターンテーブル16(すなわち、基板15)が回転される際に、回転信号を生成する。当該回転信号は、基板15の基準回転位置を表す原点信号及び基準回転位置からの所定回転角ごとのパルス信号(ロータリ・エンコーダ信号)を含んでいる。当該回転信号は、回転コントローラ38に供給される。回転コントローラ38は、当該ロータリ・エンコーダ信号によりターンテーブル16の回転誤差を検出し、該検出された回転誤差に基づいてスピンドルモータ17の回転補正を行う。
EBRインターフェース回路(EBR I/F)39には、フォーマッタ50から種々の制御信号が供給される。より具体的には、フォーマッタ50からフォーカス調整信号FC、変調信号F1及び偏向信号F3が供給される。ブランキング制御部31は変調信号F1に基づいてブランキング制御(電子ビームのオン/オフ)を行い、偏向制御部33は偏向信号F3に基づいて電子ビームの偏向制御を行う。フォーカス制御部34は、かかるフォーカス調整信号FCに応じて、フォーカスレンズ28におけるフォーカス調整量を示すフォーカス制御信号を生成してフォーカスレンズ28に供給する。
ここで、フォーマッタ50から供給される各種制御信号及び当該制御信号に基づくフォーマッタ50の動作について以下に詳述する。
図8は、EBR本体部10を制御するEBR制御装置としてのフォーマッタ50の内部構成を示す図である。
図8に示すように、フォーマッタ50は、EBR制御信号生成器(プロセッサ)51、クロック信号生成器52、メモリ53、フォーマッタ・インターフェース回路(フォーマッタ I/F)54、入出力部55及び表示部56からなる。
クロック信号生成器52は、例えば、CLV(Constant Line Velocity)描画やCAV(Constant Angular Velocity)描画に応じたクロック信号、或いは、後述するが如きスピンドルモータ17及び並進モータ19の駆動量を表す回転クロック及び並進クロック信号を生成する。
メモリ53は、後述する種々の制御信号に関する設定値や描画パターンに関するデータ等が記憶される。
入出力部55は、使用者からの各種動作指令、或いはEBR本体部10を制御する際に用いられる各種設定値等の入力を受け付け、その内容(動作指令、設定値)を表す信号をEBR制御信号生成器51に供給する。表示部56は、EBR制御信号生成器51からの表示指令に応じて、EBR本体部10及びフォーマッタ50自身の動作条件、動作状態、設定値などを表示する。
EBR制御信号生成器51は、入出力部55からの動作指令に応じたプログラムをメモリ53から読み出し、そのプログラムに従ってEBR本体部10を制御するための以下の各種制御信号を生成し、これらをフォーマッタ・インターフェース回路54を介してEBR本体部10に供給する。又、この間、EBR制御信号生成器51は、EBR本体部10から供給された以下の開始信号F6をフォーマッタ・インターフェース回路54を介して受け取る。
・変調信号F1(F1-Modulation(/Blanking)):電子ビームをオン/オフするためにフォーマッタが出力する信号。例えば、”Low”のとき電子ビームはブランキングされ、電子ビームはオフとされる。
・鋸歯状波偏向信号F3(F3-Saw-Tooth-Deflection-X)、偏向信号F3:スパイラルを同心円とするための偏向信号。Xステージの移動方向によりランプ波の極性反転を伴う信号。
・並進クロック信号F4(F4-Translation-clock):フォーマッタが出力するXステージのへのリファレンス信号。EBR装置はこの信号に同期して並進ステージ(Xステージ)を駆動する。パルスの基準単位(ΔX)をフォーマッタ側で設定可能とする。デフォルト値としては、例えば、632.991345/1024nm。また、ΔX/2,ΔX/4,ΔX/8等も設定可能。
・回転クロック信号F5(F5-Rotation-clock):フォーマッタが出力する回転スピンドルへのリファレンス信号。デフォルトは、例えば、3600pulse/rev。デューティは、例えば、50%。
・開始信号F6(F6-/Start):終了信号F7(下記)が”High”状態であり且つ並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5が有効になった後に、EBR装置側がこれらのクロックに同期し、描画開始半径になった時点で”Low”状態の描画開始信号F6をフォーマッタに供給する。これにより、フォーマッタが描画(信号出力)を開始する。
・終了信号F7(F7-End):フォーマッタが描画(信号出力)の終了を”High”状態にてEBR装置に通知する。尚、終了信号F7は、並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5が有効な期間は”Low”状態に維持される。この信号を受けてEBR装置は描画開始信号F6を”High”に切り替えて、現在の描画動作を終了する。
・ビーム外周方向オフセット信号F8(F8-BeamOffsetOut)、外周方向オフセット信号F8、高速オフセット(+)信号F8:高速でビームを外周へオフセットさせる信号。
・ビーム内周方向オフセット信号F9(F9-BeamOffsetOut)、内周方向オフセット信号F9、高速オフセット(−)信号F9:高速でビームを内周へオフセットさせる信号。
・ビーム・タンジェンシャル方向偏向信号F16(F16-BeamTangentialDeflection)、タンジェンシャル偏向信号F16:高速でビームをタンジェンシャル方向又は円周方向(+θ,−θ方向)へ偏向する信号。
なお、加速電圧などの制御可能なパラメータを制御可能となるようにインタフェースを構成してもよい。
次に、上記の如き構成を有するEBR本体部10及びフォーマッタ50による描画動作について、ディスクの中心点を中心にして複数の同心円のラインを描く同心円ライン描画動作を一例にとって、図9〜図12を参照しつつ説明する。
[同心円ライン描画動作]
使用者が、入出力部55によって同心円ラインを描かせるべき同心円ライン描画指令操作を行うと、フォーマッタ50は、メモリ53に格納されている同心円ライン描画プログラムに従った以下の如き制御を順次実行する。
先ず、フォーマッタ50は、図9に示す如く、EBR本体部10に対して並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5の送出を開始すると共に、EBR本体部10に送出する終了信号F7(F7-End)を”High”状態から”Low”状態に切り替える(図9、時点Tp)。この際の並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5は描画開始時の周波数(Fini)のクロック信号である。これら並進クロック信号F4及び回転クロック信号F5の供給が開始されると、EBR本体部10がこれらのクロックに同期して動作し、その後、描画開始半径になった時点でEBR本体部10が”Low”(アクティブ)の描画開始信号F6(F6-/Start)をフォーマッタ50に送出する。
フォーマッタ50は、”Low”(アクティブ)の開始信号F6に応じて、図9又は図10に示すように、初期パターンを示す描画信号である変調信号F1及び偏向信号F3各々をEBR本体部10に対して送出開始する。尚、図9又は図10に示すように、偏向信号F3は鋸歯状信号(アナログ電圧信号)であって、基板15が1回転する間(Tini 〜T1)に亘り、基準電圧(V=Vref=0volt)からV=VDに到るまで線形にレベルが変化する。時点T1において偏向信号F3は基準電圧Vref(=0volt)に戻され、電子ビームは基準偏向位置(例えば、基板15に対して垂直位置)に戻される。これにより、基板15は、並進クロック(T-CLK)F4に基づく一定速度にて、図11に示す如く並進する。より詳細には、基板15は、描画開始時の位置(破線で示す、基板中心をOで示す)から1回転終了時の位置(実線で示す、基板中心をO’で示す)までX方向に並進する。この際、図11に示すように、電子ビームEBは、偏向信号F3によって基板15を追従するようにビーム偏向がなされる。つまり、図12に示すように、電子ビームEBの偏向(すなわち、射出方向)が固定されている場合には、基板15上でスパイラル状のビーム軌跡(破線で示す)となるが、偏向信号F3により、EBR本体部10は、同心円のラインLN1(実線で示す)を描画する。なお、以下においては、ライン番号j(すなわち、LN=j)の同心円のラインをLNjのように表記して説明する。
当該第ラインLN1の描画の終了と同時に(T=T1)、偏向信号F3によって偏向電圧は基準電圧(V=Vref=0volt、図10)に戻される。すなわち、電子ビームはラインLN1の描画開始時の偏向位置(基準偏向位置)に戻され、電子ビームEBのビームスポットは基板15の中心に関してラインLN1の描画終了時の角度位置と同一の角度位置に戻される。一方、この時点において、基板15上のビームスポットの基板15の中心に関する半径位置(ラジアル位置)は、ラインLN1の描画に要した並進距離だけ移動している。この際、かかる距離が図12に示す如きライン間のピッチq(ラインピッチという。)になる。
そして、基板15の第2回転〜第4回転(REV=2〜4)において、フォーマッタ50は、上記したのと同様な制御を繰り返し実行することにより、ラインピッチqだけ互いに離れた同心円の第1ラインLN1〜第4ラインLN4の描画を行う。なお、図12においては、図の説明上、ラインピッチを拡大して示している。
ここで、かかる電子ビーム描画装置を用いてステップS4の露光工程で初期パターンを示す描画信号に応じて図13(a)に示すように長方形のパターンを描画したとする。電子ビームによって基板上のレジスト層に描画される長方形は4つの角がほぼ90度である。なお、ラインLN1〜LN4上で合成されたドーズ量分布は完全な長方形ではなく、角の丸くなった楕円形の形状となる。ビーム径は四角形ではないため、描いた長方形の角は完全に直角にはならないためである。また、各ラインのドーズ量を合成したドーズ量分布は長方形ではなく各辺が膨らんだ形状になる場合もある。
次に、ステップS11で形成されるモールドのベビースタンパ5aに形成されるパターンでは、図13(b)に示すように長方形の角が取れて丸くなり、その後の転写工程でナノインプリント法で転写されたパターンは図13(c)に示すように更に角が丸くなる。潤滑層形成工程で形成される磁気ディスクの最終のパターンは図13(d)に示すように楕円に近いものとなる。すなわち、長方形を目標パターンとすると、最終のパターンは異なった形状となる。ナノインプリンによる形状誤差がどのようにパターン形状に影響するかは、ナノインプリント方式(熱式、UV式)でも異なるし、基板への圧力印加の方法や基板とモールドを剥離する剥離方法の違いによっても異なる。
そこで、図14に示すように、電子ビームによる露光工程のレジスト層の潜像パターンP0、上記のモールド作成工程のベビースタンパ5aに形成されるパターンP1、ナノインプリント法の転写工程で転写されたパターンP2及び磁気ディスク製造工程で形成される磁気ディスクの最終のパターンP3の少なくとも1のパターンの形状に応じて電子ビームによって基板上のレジスト層への描画のための初期パターンを示す描画信号のデータに補正を加えることが行われる。つまり、電子ビーム露光のドーズ量分布によるパターン変形、モールド作成工程によるパターン変形、ナノインプリントによるパターン変形、ナノインプリント後の磁性体形成〜潤滑層形成までの磁気ディスク作成工程で発生するパターン変形の、いずれか1つまたはそれを組み合わせた合計のパターン変形量を考慮して、初期パターンのドーズ量分布を決定するのである。
つまり、予め各プロセスでの変形量を測定又は計算しておき、各プロセスで初期パターンからの変形が発生したとしても最終の目的パターンが、意図したパターン形状になるように、電子ビームで描画する初期パターンを調整しておくのである(各プロセスで発生する変形量が加わって最終の目的パターンになるべく初期パターンの形状またはドーズ量分布を決定する)。
最終の目的パターンを、磁気ディスク製造工程の最終パターン、ナノインプリント工程後のパターン、モールド作成工程後のパターン、電子ビーム描画工程後のパターンとするかは、装置を使用する使用者の意思による。また、初期パターンに反映する変形量も、電子ビーム露光のドーズ量分布によるパターン変形、モールド作成工程によるパターン変形、ナノインプリントによるパターン変形、ナノインプリント後の磁性体形成〜潤滑層形成までの磁気ディスク作成工程で発生するパターン変形の合計の変形量でもよいし、いずれか1つまたはそれを組み合わせた合計の変形量でもよい。これについても、装置を使用する使用者の意思による。
変形量を反映した初期パターンの描画方法は後述する図15〜30に示すように、露光時間、露光回数、露光量(エネルギー量)を変化させるなどの数々の方法がある。以下、初期パターンの描画方法の例について説明する。
磁気ディスクの最終のパターンとして長方形が目標パターンであるとする。この場合には、露光工程で初期パターンを示す描画信号に応じた電子ビームによる描画パターンは図15(a)に示すように長方形のエッジを強調したパターンとなる。すなわち、長方形の4角に小さな直方形の突出部が付加されたパターンとなる。ステップS11で形成されるモールドのベビースタンパ5aに形成されるパターンでは、図15(b)に示すように突出部が小さくなり、その後の転写工程でナノインプリント法で転写されたパターンは図15(c)に示すように突出部が若干残った状態となる。潤滑層形成工程で形成される磁気ディスクの最終のパターンは図15(d)に示すように突出部が全くなくなり目標の長方形となる。
図15(a)の電子ビームによる描画パターンは、図16に示すように複数の描画ラインLN1〜LN4及びLN0,LN0’,LN5,LN5’によって形成されている。LN0,LN0’,LN5,LN5’が上記の突出部に対応する。
また、磁気ディスクの最終のパターンとして長方形が目標パターンであるとする場合に、図17に示すように、4つの描画ラインLN1〜LN4によって形成することもできる。この描画ではエッジ強調として第1及び第4描画ラインLN1,LN4がその間の第2及び第3描画ラインLN2,LN3よりも両端で若干長くされている。
図18は、描画ラインLN1〜LN4の各々に描画されるピット片V(j)(j=1〜4)を模式的に示している。描画ラインLN1〜LN4の描画(ライン数NLN=4)によってラインLN1〜LN4を1つのトラックとしてピットW(描画パターン)の列(ピットシーケンスWW)が描画されることになる。
つまり、電子ビームのプロファイルは広がり(一般的には、ガウシアン形状)を有し、また、照射ビームの前方及び後方散乱によってドーズ量プロファイル(ドーズ量分布)は変化する。本実施例においては、フォーマッタ50は、描画ラインの隣接する描画ライン間の間隔は各ラインのドーズ量プロファイルがオーバーラップするように制御する。従って、ラインLN1〜LN4の描画(ビーム照射)によるドーズ量プロファイルはこれらの合成されたものとなる。
従って、描画ラインLN1〜LN4の各々にピット片の列(ピット片シーケンス)を描画することによって、これらの描画されたピット片の合成によってピットシーケンスWWが描画される。
次に、図面を参照して、フォーマッタ50によって、描画ラインLN(j)上にピット片V(j)を描画し、複数のピット片V(j)(jはライン番号、j=1,2,...)により任意の形状のピットWを構成する制御、当該ピットWの列(ピットシーケンス)からなるピットパターンWWを描画する制御について詳細に説明する。
図19は、描画ラインLN(j)の各々にピット片V(j)(j=1,2,...)を描画する場合の手順を示すフローチャートである。なお、以下においては、描画ラインLN1〜LN4(j=1〜4)の各々上にピット片V(1)〜V(4)を描画する場合を例に説明する。ピット片V(1)〜V(4)によって任意形状のピットWを形成することができる。
まず、フォーマッタ50は、電子ビームの照射位置が基板15上の描画開始ライン(LN1,すなわち、j=1)上の描画開始位置に到達したか否かを判別する(ステップS31)。描画開始位置に到達したと判別された場合、フォーマッタ50は、描画データに基づいて当該ラインに描画すべきパターン(以下、ライン描画パターンともいう。)を生成、出力し、描画を行う(ステップS32)。ここで、当該ライン描画パターンは描画ラインLN1に描画すべきピット片V(1)の列(ピット片シーケンス)であって、ラインLN1の当該ピット片シーケンスは、例えば、k1個のピット片V(1,k1)からなる。そして、k1=1の場合は連続してラインLN1上に描画(ビーム照射)することを示し、k1=0の場合はラインLN1上には描画(ビーム照射)をしないことを示している。また、ラインLN1〜LN4にはそれぞれk1〜k4個のピット片V(j,kj)からなるピット片シーケンスVQ(j)が描画される。
本実施例においては、ラインLN1〜LN4上に描画されるピット片シーケンスVQ(1)〜VQ(4)のうち、ラインLN1〜LN4上の同一の半径位置(r)にそれぞれピット片V(1)〜V(4)を描画する場合を例に説明する。
図20に示すように、フォーマッタ50は、ラインLN1上におけるピット片V(1)のピット片描画開始点(以下、単に描画開始点という。)VS(1)からピット片描画終了点(以下、単に描画終了点という。)VE(1)まで描画(ビーム照射)を行う。これにより、ピット片V(1)の描画が行われる。なお、描画ライン毎の描画開始位置及び描画終了点、あるいは、後述するピット片描画長さの設定値はメモリ53、あるいは、EBR制御信号生成器(プロセッサ)51に設けられた記憶部に記憶されている。なお、メモリ53には、例えばディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアなどのハードディスクの初期パターンデータ(同心円状パターン、トラックエリアのパターン、サーボエリアのパターンなど)が記録されている。プロセッサ51は、この初期パターンデータを用いてEBR10の制御信号を生成する。
なお、図10に示すように、ラインLN1の描画においては半径方向へのビームシフト信号(第2偏向信号)である外周方向及び内周方向オフセット信号F8及びF9は出力されず、ビームの高速シフト量はゼロである。従って、ラインLN1からのシフト無しに当該ラインのピット片シーケンスVQ(1)の描画がなされる。
このように、ラインLN1上にピット片シーケンスVQ(1)を描画し、ラインLN1の描画を終了したと判別された場合(ステップS33)、フォーマッタ50は、ライン番号jをインクリメントする(ステップS34)。次に、描画パターンWWの描画が終了したか否かが判別される(ステップS35)が、描画すべきライン番号はj=2であるので、ステップS32に移行する。
ラインLN2について上記ステップS32〜ステップS35が実行され、ラインLN2上にピット片シーケンスVQ(2)が描画される。なお、図10に示すように、ラインLN2の描画においては外周方向オフセット信号F8によって外周方向にビームが偏向(+シフト)され、描画がなされる。ピット片V(2)についてもピット片V(1)の場合と同様に、描画開始点VS(2)からピット片描画終了点VE(2)まで描画がなされ、ピット片V(2)の描画が行われる。
描画ラインLN3については、内周方向オフセット信号F9によって内周にビームが偏向(−シフト)された状態で、描画開始点VS(3)からピット片描画終了点VE(3)まで描画がなされ、ピット片V(3)の描画が行われる。また、描画ラインLN4については、外周方向及び内周方向オフセット信号F8、F9によるビームの偏向はなされず、描画開始点VS(4)からピット片描画終了点VE(4)まで描画がなされ、ピット片V(4)の描画が行われる。
描画ラインLN4の描画終了により、描画パターンWWの描画が終了したと判別され(ステップS35)、本制御を終了する。
上記したように、ピット片V(1)〜V(4)の合成によって任意形状のピットWを形成することができる。より詳細には、ピット片V(1)〜V(4)の描画の重なり、又は描画(ビーム照射)におけるビーム強度に応じてドーズ量プロファイルは変化する。つまり、電子ビームのプロファイルは広がり(一般的には、ガウシアン形状)を有し、また、照射ビームの前方及び後方散乱によってドーズ量プロファイルは変化する。従って、実際のピットWの形状(ドーズ量プロファイル)はこれらの合成となる。より具体的には、図21に示すように、ピット片V(1)〜V(4)の描画によって、ラジアル方向のドーズ量のプロファイルを調整することができる。例えば、プロファイルR−Aのようにラジアル方向の中央部を増強する、あるいは、プロファイルR−Bのようにラジアル方向のエッジ部を増強することができる。
あるいは、フォーマッタ50はタンジェンシャル偏向信号F16(第3偏向信号)を出力し、ピット片V(j)を描画する際に高速でビームを接線方向又は円周方向(+θ,−θ方向)に偏向することで、タンジェンシャル方向又は円周方向のドーズ量のプロファイルを調整することができる。図22に示すように、例えば、プロファイルT−Aのようにタンジェンシャル方向の中央部を増強したり、あるいは、プロファイルT−Bのようにタンジェンシャル方向のエッジ部を増強することができる。
なお、外周方向及び内周方向へのオフセット量(オフセット信号F8、F9)は任意に設定可能であり、フォーマッタ50は、入力された重なり度合いに応じてオフセット量を調整する機能を有する。
図14に示したように、このように電子ビームによって描画された各描画ラインLN1〜LN4によるパターンを有する基板に基づいたモールド作成工程のベビースタンパのパターンP1、ナノインプリント法の転写工程で転写されたパターンP2及び潤滑層形成工程で形成される磁気ディスクの最終のパターンP3のうちの少なくとも1パターンの形状に応じて電子ビームによって基板上のレジスト層に描画されるパターンに補正を加えるフィードバック動作が行われる。補正としてラジアル方向及び/又はタンジェンシャル方向におけるドーズ量のプロファイルを調整することによって描画パターンの角の大きさが変化することになる。上記のフィードバック動作を繰り返すことにより所望の最終パターンを得ることができる。
このように、描画の初期パターンを補正することにより、電子ビーム描画によって作成されたスタンパに基づいて磁気ディスクが製造されるまでの工程において存在するパターン誤差成分に係わらず磁気ディスクにおける最終パターンを目標パターンの形状通りに形成することができる。よって、高精度のパターンを有する磁気ディスクを形成することができる。
上記の実施例においては、使用者がモールド作成工程のベビースタンパのパターン、ナノインプリント法の転写工程で転写されたパターン及び潤滑層形成工程で形成される磁気ディスクの最終のパターンのうちの少なくとも1パターンを考慮して初期パターンのデータに補正を加えるが、図23に示すように初期パターンを自動補正しても良い。
図23のパターンを自動補正においては、先ず、潤滑層形成工程で形成された磁気ディスクの最終のパターンが映像として取得される(ステップS41)。なお、自動補正の際に、実際に形成された磁気ディスクの最終のパターン映像を用いるのではなく、磁気ディスク上に形成したい(あるいは描画したい)パターン形状を示すデータを補正することにより初期パターンを得るようにしてもよい。
図示しない撮影手段によって最終のパターンの映像が得られると、その最終のパターンの分析を行って誤差が検出される(ステップS42)。すなわち、最終のパターンの角部分についての目標パターンとの誤差が検出される。例えば、4つの角各々のラジアル方向の誤差の最大値及びタンジェンシャル方向の誤差の最大値が検出される。誤差に応じて初期パターンの補正量が決定される(ステップS43)。図17及び図18の描画パターンの場合には補正量はタンジェンシャル方向におけるドーズ量分布を調整する量である。補正量は予め定められたデータテーブルに従って決定することができる。そして、その補正量に応じて補正した初期パターン(ピット片シーケンスVQ(1)〜VQ(4))の描画信号が生成される(ステップS44)。ステップS34によって生成された描画信号はメモリ53に書き込まれる(ステップS45)。その後、メモリ53に書き込まれた描画信号に応じて露光工程が実行される。
自動補正後の初期パターンの描画信号に応じて電子ビーム描画がされ、それによって得られた描画パターンに基づいてスタンパが作成され、そのスタンパに基づいた磁気ディスクの製造工程中の潤滑層形成工程で磁気ディスクの最終のパターンが得られたならば、再度、かかる自動補正動作を行っても良い。
このように、描画の初期パターンを自動補正することにより、電子ビーム描画によって作成されたスタンパに基づいて磁気ディスクが製造されるまでの工程において存在するパターン誤差成分に係わらず磁気ディスクにおける最終パターンを目標パターンの形状通りに容易にかつ短時間で形成することができる。よって、高精度のパターンを有する磁気ディスクを形成することができる。
なお、この自動補正動作を行うに当たっては、フォーマッタ50の入力段に、図24に示すように最終パターン取得部81、誤差検出部82、補正量算出部83及び描画信号生成部84が備えられる。また、最終パターン取得部81の出力を入出力部55を介してEBR制御信号生成器51に供給し、EBR制御信号生成器51が上記の誤差検出、補正量算出及び描画信号生成の動作を行うようにしても良い。
また、同一ラインを複数回描画するようにしてエッジ強調を行っても良い。例えば、上記のラインLN1〜LN4全て或いはそのうちのラインLN1,LN4だけを4回描画することにより、1回描画に比べて角部分が丸くなることを防止するこができる。
図25〜図30は磁気ディスク等の記録媒体に最終的に形成される目標パターンのための電子ビームによるパターン描画方法を示している。
図25に示した描画方法においては、電子ビームを複数回照射して描画し、その際、ピットパターン内部の照射を間引くことが行われる。例えば、図25の符号A1で示した部分では4回の電子ビーム照射が行われ、符号A2で示した部分では3回の電子ビーム照射が行われる。これにより、符号A1で示した部分と、符号A2で示した部分では受光量(エネルギー量)が異なることになる。
図26に示した描画方法においては、ディザ(Dither)が利用されている。図26の符号B1で示した部分では電子ビームが照射され、図26の符号B2で示した部分では電子ビームが照射されないか、高速で偏向させることが行われる。これにより、初期パターンとして最適なドーズ量分布となる。
図27に示した描画方法においては、ピットパターンのエッジラインとなるLN1及びLN4では4周のトラッキングをして符号C1で示した部分では4回の電子ビーム照射が行われ、ピットパターンの内部ラインとなるLN2及びLN3では3周のトラッキングをして符号C2で示した部分では3回の電子ビーム照射が行われる。
図28に示した描画方法においては、ピットパターンのエッジラインとなるLN1及びLN4では4周のトラッキングをして符号D1で示した部分では4回の電子ビーム照射が行われ、符号D2で示した部分では3回の電子ビーム照射が行われる。ピットパターンの内部ラインとなるLN2及びLN3では3周のトラッキングをして符号D2で示した部分では3回の電子ビーム照射が行われる。
図25〜図28の描画方法では露光時間又は露光回数、あるいは露光時間と露光回数の双方)を変化させているが、露光量(露光エネルギー量)を変化させてパターン描画を行うこともできる。
図29及び図30に示した描画方法においては、偏向を用いてレジストに照射されるエネルギー量を変化させることが行われる。符号E1及びE2の領域ではディスク基板の回転方向に電子ビームを偏向させることにより、単位面積当たりの露光量が変化されている。符号E1及びE2の領域では回転と逆方向に所定速度で電子ビームに対して偏向をかけることが行われる。符号E1及びE2の領域では他の領域より、ビーム偏向の速度が加わり、基板に対する電子ビームの相対速度が速くなるため、レジスト層に照射されるエネルギー量が小さくなる。
また、図29及び図30に示した描画方法においては、電子ビームの加速電圧を変化させて、レジスト層に照射されるエネルギー量を変化させても良い。符号E1及びE2の領域では、電子ビームの加速電圧を減少させる。符号E1及びE2の領域に照射される電子は、減少された加速電圧分だけ運動エネルギーが減り、結果的に、単位面積あたりの露光量が少なくなる。なお、これとは、逆に符号E1及びE2の領域以外の領域(クロス線領域)の描画時に加速電圧を増加させるようにしても良い。
更に、上記した実施例においては、フォーマッタ50をEBR本体部10の外部に設けるようにしているが、フォーマッタ50をEBR本体部10内部に搭載するようにしても良い。
また、本発明に用いられるビームは、電子ビームのみならず、イオンビームであっても良い。