JP5232576B2 - 硬化性高分子化合物の製造方法および組成物、ならびに平版印刷版原版 - Google Patents

硬化性高分子化合物の製造方法および組成物、ならびに平版印刷版原版 Download PDF

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本発明は、硬化性高分子化合物の製造方法および硬化性高分子化合物の組成物に関する。さらに、レーザーによる画像記録が可能であり、現像処理または機上現像により製版可能な平版印刷版原版に関する。
近年、各種刷版、エレクトロニクス用途の発展に伴い、微細なパターンを得るために、優れた解像度が得られる材料が求められている。これら市場ニーズに牽引される形で高分子工業の著しい進歩が見られ、多種多様な高分子材料が開発され、広範囲にわたって用いられるようになっている。このような市場のニーズを受け、側鎖に複数個の二重結合を有する反応性オリゴマーあるいはポリマーは、熱硬化性、光硬化性、電子線硬化性高分子化合物等として、更にはそれ以外の機能性高分子化合物として、広範囲な工業用途に様々な分野から検討、開発が行われている。
その中でも、特に側鎖に炭素−炭素二重結合を有する硬化性高分子化合物は、主鎖に炭素−炭素二重結合およびエステル結合を有する不飽和ポリエステル高分子化合物のような硬化性高分子化合物と比べて物性上優れた性能を有するために、その用途が各方面に拡大しつつあり、特に、平版印刷版の分野において注目を集めている。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部に対応する感光層を残存させ、非画像部に対応する不要な感光層をアルカリ性現像液または有機溶剤含有現像液によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な感光層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化または簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
簡易な製版方法の一つとして、感光層の不要部分の除去を通常の印刷工程の中で行えるような感光層を用い、露光後、印刷機上で感光層の不要部分を除去して平版印刷版を得る、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な感光層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラ類やブランケットとの接触により、感光層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤などの浸透によって感光層の凝集力または感光層と支持体との接着力を弱めた後、ローラ類やブランケットとの接触により、感光層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
例えば、アルカリ現像液による湿式現像処理を必要としない、赤外線レーザーで画像記録をする機上現像型の平版印刷版原版として、支持体上に、赤外線吸収剤、ラジカル重合開始剤、および重合性化合物とを含有する感光層を設けた平版印刷版原版が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
機上現像性を改良する目的で、このような重合性組成物にエーテル基、エステル基およびアミド基のうち少なくとも1つを分子内に有する高分子化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このように機上現像性の改良、すなわち、親水性を高くすると、耐刷性が低下する傾向があるため、機上現像性と耐刷性との両立を達成するのは困難であり、さらなる技術改良が望まれた。
耐刷性を向上させるためには、側鎖にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する高分子化合物を含有する感光層が有効であることが知られている(例えば、特許文献3参照。)。また、この文献には、この感光層を有する平版印刷版原版が機上現像可能である旨記載されている。
このような側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物の合成法として、分子内に不飽和結合を2個以上含むモノマーを単独あるいは種々のモノマーと共重合して製造する方法がある。通常、反応性の高いアクリル基またはメタクリル基(以下、アクリル基またはメタクリル基を示すために(メタ)アクリル基と表記することがある)を複数有するモノマーの重合では、希薄な溶液中であっても重合途中に複数の官能基が反応に関与し、分子間の3次元架橋によりゲル化という問題を生ずる。
この問題を解決するために、長鎖の置換基を有するような(メタ)アクリレートモノマーを共重合させ、置換基の立体効果を利用して、分子間の架橋反応を抑制することが知られている(特許文献4参照。)。しかし、架橋反応は一部進行しており分子量分布は通常の重合物に比べ広くなる。また、高反応率および高固形分濃度での重合には適さない。また、アリルメタクリレートの如く反応性の異なる不飽和基を有するモノマーの重合例がある。この場合、固形分濃度が10質量%を越える条件では上記例と同様、分子間の3次元架橋によりゲル化が発生するといった問題点が生じる。このため、通常希薄条件で反応を行うが、希薄条件であっても反応率を90%以上にすると一部ゲル化が観察される。
上記の各種の製造方法は、高固形分濃度では製造が困難であり、反応率を上げるとゲル化するのでモノマーの残存が多く、生産性の点から見ると十分な製造法とはいえない。
また、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する高分子化合物は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有していない高分子化合物の官能基に、二重結合を有する化合物を付加させることによっても製造されている。なかでも、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する高分子化合物は、側鎖にカルボキシ基を有する高分子化合物に、分子内にエチレン性不飽和基とエポキシ基の両方を有する化合物を付加させることにより合成されることが知られている(例えば、特許文献5〜7参照。)。また、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物にカルボキシ基を付加することで得られる高分子化合物の平版印刷版原版への利用も知られている(例えば、特許文献8参照。)。
これらの先行技術では、付加反応の触媒として、第3級アミン触媒、ホスフィン触媒、第4級アンモニウム-ハロゲン化物イオン触媒を利用している。しかしながら、第3級アミン触媒、ホスフィン触媒を用いて、側鎖にカルボキシ基を有する高分子化合物の全てのカルボキシ基に対して不飽和基を有するエポキシ化合物を付加させると、反応後の反応液中において、付加したエチレン性不飽和部位の安定性が悪いという問題点があった。また、ホスフィン触媒を用いると、反応後の反応液が褐色に着色する問題点があった。また、アンモニウム-ハロゲン化物イオン触媒を用いると、側鎖にカルボキシ基を有する高分子化合物の全てのカルボキシ基に対してエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させた場合、反応中に高分子化合物中のエチレン性不飽和基同士が架橋し、分子量が増大する、またはゲル化するという問題があった。さらに該触媒を用いて合成した高分子化合物を平版印刷版原版に適用すると、経時によってハロゲン化物イオンに起因する点状の汚れが印刷物非画像部に生ずるという問題を有していた。そのため、これら記載の方法を用いて側鎖にエチレン性不飽和基を有する高分子化合物を製造した場合、製造後に再沈工程を経る必要があり、性能上も、生産性の点でも十分な製造方法とはいえなかった。
特開2002−287334号公報 特開2006−116941号公報 特開2006−111860号公報 特開平4−252213号公報 特開平1−289820号公報 特開平6−138659号公報 特開2005−163033号公報 特開平9−134011号公報
そこで本発明の目的は、エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を、酸基を有する高分子化合物に付加させる際に、ハロゲン化物イオンを含まず、且つ優れた反応性を有し、さらに得られた硬化性高分子化合物が反応液中で優れた安定性を有する硬化性高分子化合物の製造方法、ならびに、その製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含む、組成物および平版印刷版原版を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、反応触媒として、分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。本発明は以下のとおりである。
〔1〕.エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を高分子化合物中に存在する酸基に付加させる硬化性高分子化合物の製造方法であって、触媒として分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩を用いることを特徴とする硬化性高分子化合物の製造方法。
〔2〕.前記の分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記〔1〕記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
Figure 0005232576

一般式(1)中、R 、R およびR は、各々独立にアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R 、R およびR のいずれか2つが連結し、環を形成してもよい。Lは2価の有機連結基を表す。
〔3〕.エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物が下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
Figure 0005232576

〔一般式(A)中、R 〜R は、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Y は単結合または2価の連結基を表す。一般式(B)中、R 〜R 18 は、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Y は単結合または2価の連結基を表す。〕
〔4〕.硬化性高分子化合物が下記一般式(2)で表される基および下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する高分子化合物であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
Figure 0005232576

〔一般式(2)中、R 〜R は、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Y は単結合または2価の連結基を表す。一般式(3)中、R 〜R 18 は、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Y は単結合または2価の連結基を表す。〕
〔5〕.硬化性高分子化合物の酸価が、3mgKOH/g未満であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
〔6〕.前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする硬化性高分子化合物組成物。
〔7〕.前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
〔8〕.前記〔7〕記載の平版印刷版原版が、支持体上に、露光後に印刷機上で印刷インキと湿し水とを供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
本発明は、上記〔1〕〜〔8〕項に関するものであるが、その他の事項についても参考のために記載した。
1.エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を高分子化合物中に存在する酸基に付加させる硬化性高分子化合物の製造方法であって、触媒として分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩を用いることを特徴とする硬化性高分子化合物の製造方法。
2.前記の分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
Figure 0005232576
一般式(1)中、R、RおよびRは、各々独立にアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R、RおよびRのいずれか2つが連結し、環を形成してもよい。Lは2価の有機連結基を表す。
3.エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物が下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
Figure 0005232576
〔一般式(A)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、カルボニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。一般式(B)中、R〜R18は、各々独立に、水素原子、カルボニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。〕
4.硬化性高分子化合物が下記一般式(2)で表される基および下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する高分子化合物であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
Figure 0005232576
〔一般式(2)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、カルボニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。一般式(3)中、R〜R18は、各々独立に、水素原子、カルボニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。〕
5.硬化性高分子化合物の酸価が、3mgKOH/g未満であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
6.前記1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする硬化性高分子化合物組成物。
7.前記1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
8.前記7記載の平版印刷版原版が、支持体上に、露光後に印刷機上で印刷インキと湿し水とを供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
本発明によれば、硬化性高分子化合物の製造において、高分子間で架橋が起こることなく、優れた反応性を有し、また反応後のポリマー溶液の保存安定性も向上することができる。該方法で製造したポリマーは硬化性に優れるため、良好な硬化性高分子組成物が可能であり、平版印刷版原版に用いた場合には、現像性および耐刷性に優れ、触媒にハロゲン化物イオンを含まないため、点状の汚れが良化した平版印刷版原版を提供できる。
1.硬化性高分子化合物の製造方法
本発明の硬化性高分子化合物の製造方法は、エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を高分子化合物中に存在する酸基に付加させる際に、触媒として分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩を用いることを特徴とする。本発明は、酸基を有する高分子化合物の一部もしくは全ての酸基にエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を付加させることを包含する。
〔酸基を有する高分子化合物〕
本発明の酸基を有する高分子化合物は、少なくとも一個の酸基を有する高分子化合物を意味する。ここで、酸基とは、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、スルホニルアミノ基、フェノール性メルカプト基が挙げられ、原料入手性の観点から、より好ましくは、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基であり、最も好ましくは、カルボキシ基である。
酸基を有する高分子化合物は、少なくとも1個の酸基を有するラジカル重合性化合物を共重合する方法、無水マレイン酸を共重合した後に、酸無水物基を開環させる方法、ヒドロキシ基を有する高分子化合物に酸無水物を付加させる方法、酸基を有するジオール化合物とジイソシアネート化合物との重付加反応を行う方法等、既知の方法で合成できる。
この中でも、少なくとも1個の酸基を有するラジカル重合性化合物を共重合する方法が好ましく、少なくとも1個の酸基を有するラジカル重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルフェノール、ビニルチオフェノール、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、不飽和基とカルボン酸の間に鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、例えばβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸のような化合物が挙げられる。
変性不飽和モノカルボン酸として具体的には、(メタ)アクリル酸をラクトン変性した化合物として下記式(4)で表される化合物が、末端ヒドロキシ基を酸無水物により酸変性させたラクトン変性物として下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
CH=C(-R)CO-[O(CR)CO]m,-OH (4)
CH=C(-R)COO-CHCHO[CO(CR)lO]CORCOOH (5)
〔式(4)、(5)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。RおよびRは、各々水素原子、メチル基またはエチル基を表し、互いに異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の2価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の2価の脂環式飽和または不飽和炭化水素基、p-キシリレン基、フェニレン基等を表す。l は4〜8の整数、mは1〜10の整数、nは0〜10の整数を表す。〕
エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸にエチレンオキサイド等のエポキシ化合物を付加させ、付加物の分子末端ヒドロキシ基を酸無水物により酸変性物とした下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
CH=C(-R)COO-[(CR)O]CORCOOH (6)
〔式(6)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。RおよびRは、各々水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、互いに異なっていてもよい。Rは炭素数1〜10の2価の脂肪族飽和または不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の2価の脂環式飽和または不飽和炭化水素基、p-キシリレン、フェニレン基等を表す。mおよびnは1〜10の整数を表す。〕
また、少なくとも1個の酸基を有するラジカル重合性化合物は、マレイン酸等のカルボキシ基を分子中に2個以上含む化合物であってもよい。
少なくとも1個の酸基を有するラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
本発明の少なくとも一個の酸基を有する高分子化合物は、他の共重合成分を含んでいてもよい。
他の共重合成分を形成し得るラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロロエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチル メタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクゾレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えば、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲン化スチレン(例えば、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、プロムスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリルが挙げられる。
〔エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物〕
本発明のエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物とは、1分子中に少なくとも1個のラジカル重合性を有する不飽和基とエポキシ基とを有する化合物である。具体的には、脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物および脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。
脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物としては、アリールグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、および下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。なかでも一般式(A)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005232576
一般式(A)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、カルボニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。R〜Rの少なくとも2つがそれぞれ結合して環構造を有してもよい。
一般式(A)中、R〜Rのアルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数1〜20の直鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキル基、および炭素原子数5〜10の環状のアルキル基がより好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、および2−ノルボルニル基を挙げられる。
〜Rで表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。
〜Rで表される複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。
〜Rとしては、アルキル基または水素原子であることが好ましく、水素原子が最も好ましい。
で表される連結基としては、下記の2価の基、または、それらが適宜組み合わさって構成される基を挙げることができる。
Figure 0005232576
上記の中でも、Yは単結合または置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、付加反応性の観点から、単結合であることが好ましい。
一般式(A)で表される化合物の具体例としては、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、4,5−エポキシペンチルメタクリレート、グリシジル−α−エチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。なかでも、グリシジルメタクリレートが好ましい。
本発明のエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物である脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、下記構造式で示した化合物および一般式(B)で表される化合物が挙げられる。下記構造式中、R06は水素原子またはメチル基を示し、R07は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、R08は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
一般式(B)中、R〜R18は、各々独立に、水素原子、水素原子、カルボニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。R〜R18の少なくとも2つがそれぞれ結合して環構造を有してもよい。
一般式(B)中、R〜R18で表されるアルキル基、アリール基および複素環基の具体例としては、前記一般式(A)のR〜Rで表されるアルキル基、アリール基および複素環基の具体例と同じものが挙げられる。また、Yで表される2価の連結基は、一般式(A)中のYと同義である。
〜R18としては、アルキル基または水素原子であることが好ましく、水素原子が最も好ましい。Yとしては、単結合が最も好ましい。
上記脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、一般式(B)で表される化合物が好ましく、一般式(B)で表される化合物のなかでは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記の中でも、本発明で用いるエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレートが最も好ましい。
これらのエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物は単独で用いても2種以上併用してもよい。
このエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物の付加量は、得られる硬化性高分子化合物に対して2〜70質量%の範囲にあることが望ましい。この範囲内で良好な硬化性が得られる。付加量が2質量%以上であると硬化性が良くなり、硬化被膜の物性が向上するので好ましい。70質量%以下であると高分子化合物の保存安定性が良くなり、好ましい。
〔分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩〕
本発明では、酸基を有する高分子化合物の酸基にエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を付加させる際に、触媒として、分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩(以下では、特定オニウム塩と称する。)を使用する。分子内にカウンターアニオンを有する化合物とは、1分子中に、カチオン性基とアニオン性基を有する化合物を表す。カチオン性基としては、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウムなどの、オニウム基が好ましく、反応性の観点から、アンモニウム基、ホスホニウム基が好ましく、アンモニウム基であることが最も好ましい。カウンターアニオンとしては、カルボキシレート、スルホネート、スルフィネート、ホスホネート、ホスフィネートが好ましく、反応性の観点から、カルボキシレートが最も好ましい。
本発明の特定オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
Figure 0005232576
一般式(1)中、R,RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。R,RおよびRのいずれか2つが連結し、環を形成してもよい。Lは2価の有機連結基を表す。
,RおよびRで表されるアルキル基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数1から12までの直鎖状のアルキル基、炭素原子数3から12までの分岐状のアルキル基、および炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、および2−ノルボルニル基を挙げられる。
,RおよびRで表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基のような炭素数7〜12個のものが挙げられる。
,RおよびRで表されるアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、等を挙げることができる。
反応性の観点から、R,RおよびRは、炭素数4以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
Lは、2価の有機連結基を表す。2価の有機連結基としては、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つものであることが好ましい。
また、2価の連結基として、より具体的には、下記の2価の基、または、それらが適宜組み合わさって構成される基を挙げることができる。
Figure 0005232576
Lで表される2価の有機連結基は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜4のフェニレン基、または、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜4のフェニレン基の組み合わせであることが好ましく、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
以下に、特定オニウム塩として好ましい具体例を挙げるが、これらに限定されない。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
特定オニウム塩としては、反応性の観点から、N,N,N−トリメチルグリシン(上記O−1)であることが最も好ましい。
特定オニウム塩の添加量としては、酸基を有する高分子化合物に対して好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%用いる。この範囲内で、良好な触媒効果および硬化皮膜の物性が得られる。
〔その他の製造条件および生成物〕
硬化性高分子の合成に用いることのできる溶媒は、モノマーおよび重合体を溶解するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、メチルプロピレングリコール、メチルジプロピレングリコールなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアルキルアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルアセテート、メチルプロピレングリコールアセテート、2−メトキシエチルアセテートなどのエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンジクロリド、などのハロゲン化炭化水素など、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が用いられる。これらの溶媒は単独で、または混合して使用してもよい。特に、反応温度より高い沸点を有しかつ原料および生成物を溶解するものが好ましい。
反応溶媒中の高分子化合物濃度は20質量%〜60質量%が好ましい。高分子化合物濃度が20質量%以上であると十分な反応速度が得られ好ましく、60質量%以下であると反応中にゲル化物が生じることがなく好ましい。
反応温度は60℃以上、130℃以下が、特に80℃〜120℃が好ましい。反応温度が60℃以上であると実用上十分な反応速度が得られ好ましく、130℃以下であると熱によるラジカル重合によって二重結合部が架橋してゲル化物が生じることがなく、好ましい。
反応中のゲル化物の生成を防止するために、開環付加は重合禁止剤の存在下で行うのが好ましい。重合禁止剤は、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルメトキシフェノール、トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン(商品名トパノール)等のヒンダードフェノール類、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン・アンモニウム塩(商品名クペロン)、ピペリジン−1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシル フリーラジカル化合物類、等が挙げられる。
これらの重合禁止剤の量は反応液全体に対して1〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppmである。重合禁止剤量が反応液全体に対して1ppm以上であると十分な重合禁止効果が得られ好ましく、10000ppm以下であると生成した高分子化合物の諸物性に悪影響を及ぼさず、好ましい。
〔硬化性高分子化合物〕
本発明の硬化性高分子化合物は、上記のようにエチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を、酸基を有する高分子化合物中の酸基に付加させて得られる。本発明の硬化性高分子化合物としては、なかでも、下記構造を有する高分子化合物であることが好ましい。
Figure 0005232576
一般式(2)のR〜RおよびYは、それぞれ、一般式(A)のR〜RおよびYと同義であり、好ましい態様も同じである。一般式(3)のR〜R18およびYは、それぞれ、一般式(B)のR〜R18およびYと同義であり、好ましい態様も同じである。
一般式(2)または(3)で表される基の好ましい具体例を次に示すが、これらに限定されない。
Figure 0005232576
本製造方法は、高分子間で架橋が起こることなく優れた反応性を有する点から、硬化性高分子化合物の酸価が、0〜150mgKOH/g、さらには0〜20mgKOH/g、最も好ましくは3mgKOH/g未満である硬化性高分子化合物の製造に好適に使用される。また、3mgKOH/g未満の硬化性高分子化合物は、後述する機上現像型平版印刷版に機上現像性の観点から、好ましく使用できる。
本発明の方法で製造される硬化性高分子化合物は、質量平均モル質量(Mw)で、好ましくは2,000以上であり、硬化性皮膜の物性の観点から、40,000〜300,000の範囲であることが好ましく、反応時の安定性の観点から、40,000〜90,000の範囲であることが最も好ましい。また、本発明に係る硬化性高分子化合物中には、未反応の単量体を含んでいてもよい。この場合、高分子化合物中に占める単量体の割合は、15質量%以下が望ましい。
本発明の方法で製造される硬化性高分子化合物は、可視光、紫外線、赤外線もしくは熱、X線または電子線、あるいはそれらの複合によって硬化するものである。
2.硬化性高分子化合物組成物
本発明の硬化性高分子化合物組成物は、本発明の硬化性高分子化合物の少なくとも一種以上を必須とすることを特徴とする。
本発明の硬化性高分子化合物組成物は、必要に応じて本発明の硬化性高分子化合物に種々の重合性化合物、ラジカル重合開始剤、増感色素、連鎖移動剤、溶剤等の成分を混合することができる。混合される成分の具体例としては、後述の平版印刷版原版の感光層に用いられる成分として記載したものと同じものを挙げることができる。
本発明の硬化性高分子化合物組成物に含まれる硬化性高分子化合物の含有量は、硬化性高分子化合物組成物固形分に対して、好ましくは約5〜95質量%であり、より好ましくは、約10〜85質量%である。この範囲内で、良好な画像部強度と画像形成性が得られる。
3.平版印刷版原版
本発明の平版印刷版原版は、上記硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする。より具体的には、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に感光層を有し、感光層が上記硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする。また、本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、感光層以外の層、保護層、下塗り層などを有することができる。
(感光層)
本発明の感光層は上記硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする。感光層に含まれる硬化性高分子化合物の含有量は、感光層固形分に対して好ましくは約5〜95質量%であり、より好ましくは、約10〜85質量%である。この範囲内で、良好な画像部強度と画像形成性が得られる。
さらに、本発明の感光層は、輻射線照射による重合反応を利用して照射部を硬化させて画像形成を行うための、(A)増感色素、(B)ラジカル重合開始剤、および、(C)重合性化合物を含有することが好ましい。また、(D)疎水化前駆体を含有することも好ましい。さらに、本発明の感光層は必要に応じて、種々の添加物を含有できる。
以下に、感光層に含むことができる各成分について、順次説明する。
<(A)増感色素>
本発明に用いられる増感色素としては、可視光または紫外線レーザー光源により画像形成する場合には、(A1)350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素が好ましく、760〜1200nmの赤外線を発するレーザー光源により画像形成する場合には、(A2)赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
本発明に用いられる増感色素がカチオン性化合物である場合には、対イオンとしてハロゲン化物イオンを含まないものを使用することが好ましい。
(A1)350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素
該増感色素としては、300〜850nmに吸収ピークを有するものが好ましく、300〜600nmに吸収ピークを有するものがさらに好ましい。このような増感色素としては、分光増感色素、光源の光を吸収して光重合開始剤と相互作用する以下に示す染料あるいは顔料が挙げられる。
好ましい分光増感色素または染料としては、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロラン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオエン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類で(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スタアリウム類(例えば、スタアリウム)等が挙げられる。
より好ましい分光増感色素または染料の例としては、特公昭37−13034号公報記載のスチリル系色素、特開昭62−143044号公報記載の陽イオン染料、特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩、特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物、特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類、特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンデン染料、特開平2−226148号および特開平2−226149号各公報記載のアクリジン類、特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類、特公昭46−42363号公報記載のシアニン類、特開平2−63053号公報記載のベンゾフラン色素、特開平2−85858号、特開平2−216154号各公報記載の共役ケトン色素、特開昭57−10605号公報記載の色素、特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体、特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素、特開昭62−31844号、特開昭62−31848号、特開昭62−143043号各公報記載のキサンテン系色素、特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン、特公昭61−962l号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−179643号公報記載の色素、特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素、特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素、特開昭59−89803号公報記載のメロシアニン色素、特開平8−129257号記載のメロシアニン色素、特開平8−334897号記載のベンゾピラン系色素、等を挙げることができる。
本発明に用いられる増感色素は下記一般式(7)で表されるものであることがさらに好ましい。
Figure 0005232576
一般式(7)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R1)−を表し、Yは酸素原子または−N(R1)−を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団を表し、AとR1、R2、R3とは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
ここで、R1、R2、R3が一価の非金属原子団をあらわすとき、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
次に、R1、R2、R3の好ましい例について具体的に述べる。好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO32)およびその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO32)およびその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基等を挙げることができる。
ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、または多環芳香族環から誘導される基が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環しても良く、また置換基を有していてもよい。
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基のうち、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、アルキルホスホナト基、モノアリールホスホノ基、アリールホスホナト基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキリデン基(メチレン基等)が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
上記置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られるR1、R2、またはR3として好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトプロピル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、等を挙げることができる。
1、R2、またはR3として好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
1、R2、またはR3として好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、(水素原子以外の)1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
なお、R2およびR3のさらに好ましい例としては、置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられる。また、R1のさらに好ましい例としては、置換もしくは無置換のアリール基が挙げられる。その理由は定かではないが、このような置換基を有することで、光吸収により生じる電子励起状態と開始剤化合物との相互作用が特に大きくなり、開始剤化合物のラジカル、酸または塩基を発生させる効率が向上するためと推定される。
次に、一般式(7)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(7)におけるR1、R2、またはR3についての前述の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
なかでも、好ましいAとしては、アルコキシ基、チオアルキル基、アミノ基を有するアリール基が挙げれ、特に好ましいAとしてはアミノ基を有するアリール基が挙げられる。
次に、一般式(7)におけるYについて説明する。Yは上述のAおよび隣接炭素原子と共同して、複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。このような複素環としては縮合環を有していてもよい5、6、7員の含窒素、あるいは含硫黄複素環が挙げられ、好ましくは5、6員の複素環がよい。
含窒素複素環の例としては例えば、L. G. Brookerら著、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)第73巻(1951年)、p.5326-5358および参考文献に記載されるメロシアニン色素類における塩基性核を構成するものとして知られるものをいずれも好適に用いることができる。
具体例としては、チアゾール類(例えば、チアゾール、4−メチルチアゾール、4−フェニルチアゾール、5−メチルチアゾール、5−フェニルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、4,5−ジフェニルチアゾール、4,5−ジ(p−メトキシフェニルチアゾール)、4−(2−チエニル)チアゾール、4,5−ジ(2−フリル)チアゾール等)、ベンゾチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール、6−クロロベンゾチアゾール、7−クロロベンゾチアゾール、4−メチルベンゾチアゾール、5−メチルベンゾチアゾール、6−メチルベンゾチアゾール、5−ブロモベンゾチアゾール、4−フェニルベンゾチアゾール、5−フェニルベンゾチアゾール、4−メトキシベンゾチアゾール、5−メトキシベンゾチアゾール、6−メトキシベンゾチアゾール、5−ヨードベンゾチアゾール、6−ヨードベンゾチアゾール、4−エトキシベンゾチアゾール、5−エトキシベンゾチアゾール、テトラヒドロベンゾチアゾール、5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、5,6−ジオキシメチレンベンゾチアゾール、5−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、6ージメチルアミノベンゾチアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾチアゾール、等)、ナフトチアゾール類(例えば、ナフト[1,2]チアゾール、ナフト[2,1]チアゾール、5−メトキシナフト[2,1]チアゾール、5−エトキシナフト[2,1]チアゾール、8−メトキシナフト[1,2]チアゾール、7−メトキシナフト[1,2]チアゾール、等)、チアナフテノ−7',6',4,5−チアゾール類(例えば、4'−メトキシチアナフテノ−7',6',4,5−チアゾール、等)、オキサゾール類(例えば、4−メチルオキサゾール、5−メチルオキサゾール、4−フェニルオキサゾール、4,5−ジフェニルオキサゾール、4−エチルオキサゾール、4,5−ジメチルオキサゾール、5−フェニルオキサゾール等)、ベンゾオキサゾール類(ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、5ーメチルベンゾオキサゾール、5−フェニルベンゾオキサゾール、6−メチルベンゾオキサゾール、5,6−ジメチルベンゾオキサゾール、4,6−ジメチルベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−メトキシベンゾオキサゾール、4−エトキシベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、6ーメトキシベンゾオキサゾール、5−ヒドロキシベンゾオキサゾール、6−ヒドロキシベンゾオキサゾール、等)、
ナフトオキサゾール類(例えば、ナフト[1,2]オキサゾール、ナフト[2,1]オキサゾール、等)、セレナゾール類(例えば、4−メチルセレナゾール、4−フェニルセレナゾール、等)、ベンゾセレナゾール類(例えば、ベンゾセレナゾール、5−クロロベンゾセレナゾール、5−メトキシベンゾセレナゾール、5−ヒドロキシベンゾセレナゾール、テトラヒドロベンゾセレナゾール、等)、ナフトセレナゾール類(例えば、ナフト[1,2]セレナゾール、ナフト[2,1]セレナゾール、等)、チアゾリン類(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン、4,5−ジメチルチアゾリン、4−フェニルチアゾリン、4,5−ジ(2−フリル)チアゾリン、4,5−ジフェニルチアゾリン、4,5−ジ(p−メトキシフェニル)チアゾリン等)、2−キノリン類(例えば、キノリン、3−メチルキノリン、5−メチルキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、6−クロロキノリン、8−クロロキノリン、6−メトキシキノリン、6−エトキシキノリン、6ーヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン、等)、4−キノリン類(例えば、キノリン、6−メトキシキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、等)、1−イソキノリン類(例えば、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン、等)、3−イソキノリン類(例えば、イソキノリン等)、ベンズイミダゾール類(例えば、1,3−ジメチルベンズイミダゾール、1,3−ジエチルベンズイミダゾール、1−エチル−3−フェニルベンズイミダゾール、等)、3,3−ジアルキルインドレニン類(例えば、3,3−ジメチルインドレニン、3,3,5−トリメチルインドレニン、3,3,7−トリメチルインドレニン、等)、2−ピリジン類(例えば、ピリジン、5−メチルピリジン、等)、4−ピリジン(例えば、ピリジン等)等を挙げることができる。また、これらの環の置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
また、含硫黄複素環の例としては、例えば、特開平3−296759号記載の色素類におけるジチオール部分構造を挙げることができる。
具体例としては、ベンゾジチオール類(例えば、ベンゾジチオール、5−t−ブチルベンゾジチオール、5−メチルベンゾジチオール、等)、ナフトジチオール類(例えば、ナフト[1,2]ジチオール、ナフト[2,1]ジチオール、等)、ジチオール類(例えば、4,5−ジメチルジチオール類、4−フェニルジチオール類、4−メトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジメトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジエトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジトリフルオロメチルジチオール、4,5−ジシアノジチオール、4−メトキシカルボニルメチルジチオール、4−カルボキシメチルジチオール、等)等を挙げることができる。
以上に述べた一般式(7)における、Yが上述のAおよび隣接する炭素原子と共同して形成する含窒素あるいは含硫黄複素環の例のうち、下記一般式(8)の部分構造式で表される構造を有する色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた、感光性組成物を与えるため、特に好ましい。
Figure 0005232576
一般式(8)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R1)−を表す。R1、R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子または一価の非金属原子団を表し、AとR1、R4、R5、R6は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
一般式(8)中、AおよびR1は一般式(7)におけるのと同義であり、R4は一般式(7)におけるR2と、R5は一般式(7)におけるR3と、R6は一般式(7)におけるR1と、それぞれ同義である。
一般式(7)で表される化合物は、下記一般式(9)で表される化合物であることがさらに好ましい。
Figure 0005232576
一般式(9)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R1)−を表す。R1、R4、R5は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、AとR1、R4、R5は、それぞれ互いに、脂肪族性または芳香族性の環を形成するために結合することができる。Arは置換基を有する芳香族環またはヘテロ環を表す。但し、Ar骨格上の置換基は、そのハメット値の総和が0より大きいことを要する。ここでハメット値の総和が0より大きいとは、1つの置換基を有し、その置換基のハメット値が0より大きいものであってもよく、複数の置換基を有し、それらの置換基におけるハメット値の総和が0より大きいものであってもよい。
一般式(9)中、AおよびR1は一般式(7)におけるものと同義であり、R4は一般式(7)におけるR2と、R5は一般式(7)におけるR3と同義である。また、Arは置換基を有する芳香族環またはヘテロ環を表し、具体例としては、先に一般式(7)におけるAの説明に記載されたもののうち、置換基を有する芳香族環またはヘテロ環に係る具体例が同様に挙げられる。ただし、一般式(9)におけるArに導入可能な置換基としては、ハメット値の総和が0以上であることが必須であり、そのような置換基の例としては、トリフルオロメチル基、カルボニル基、エステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホキシド基、アミド基、カルボキシ基等を挙げることができる。これら置換基のハメット値を以下に示す。トリフルオロメチル基(−CF3、m:0.43、p:0.54)、カルボニル基(例えば−COH、m:0.36、p:0.43)、エステル基(−COOCH3、m:0.37、p:0.45)、ハロゲン原子(例えばCl、m:0.37、p:0.23)、シアノ基(−CN、m:0.56、p:0.66)、スルホキシド基(例えば−SOCH3、m:0.52、p:0.45)、アミド基(例えば−NHCOCH3、m:0.21、p:0.00)、カルボキシ基(−COOH、m:0.37、p:0.45)等が挙げられる。かっこ内は、その置換基のアリール骨格における導入位置と、そのハメット値を表し、(m:0.50)とは、当該置換基がメタ位に導入された時のハメット値が0.50であることを示す。このうち、Arの好ましい例としては置換基を有するフェニル基を挙げることができ、Ar骨格上の好ましい置換基としてはエステル基、シアノ基が挙げられる。置換の位置としてはAr骨格上のオルト位に位置していることが特に好ましい。
以下に、一般式(7)で表される増感色素の好ましい具体例(例示化合物D1〜例示化合物D57)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これらのうち、一般式(8)で表される化合物に該当するものは、例示化合物D2、D6、D10、D18、D21、D28、D31、D33、D35、D38、D41およびD45〜D57である。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
このような一般式(7)で表される化合物の合成方法について述べる。
一般式(7)で表される化合物は、通常、活性メチレン基を有する酸性核と、置換もしくは非置換の芳香族環またはヘテロ環との縮合反応によって得られるが、これらは特公昭59−28329を参照して合成することができる。例えば、下記反応式(I)に示すように、酸性核化合物と、ヘテロ環上にアルデヒド基またはカルボニル基を有する塩基性核原料の縮合反応を利用する合成方法が挙げられる。縮合反応は必要に応じ、塩基(Base)存在下で実施される。塩基としては、一般的に汎用されるもの、例えば、アミン、ピリジン類(トリアルキルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンDBU等)、金属アミド類(リチウムジイソプロピルアミド等)、金属アルコキシド類(ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド等)、金属水素化物類(水素化ナトリウム、水素化カリウム等)が制限なく利用できる。
Figure 0005232576
また、望ましい他の合成方法としては、下記反応式(II)による方法が挙げられる。すなわち、前記反応式(I)における酸性核化合物として、Yが硫黄原子である酸性核化合物を出発物質として用い、ヘテロ環上にアルデヒド基またはカルボニル基を有する塩基性核原料の縮合反応により色素前駆体を合成する工程までは前記反応式(I)と同様に行った後、該色素前駆体に、さらに硫黄原子と化学的に相互作用し金属硫化物を形成可能である金属塩および水あるいは1級アミン化合物(R−NH2:ここでRは一価の非金属原子団を表す)を作用させる反応である。
これらのうち、反応式(II)で表される反応は各反応の収率が高く、合成効率上特に好ましく、なかでも、前記一般式(8)で表される化合物を合成する場合にこの反応式(II)で表される反応が有用である。
Figure 0005232576
なお、前記反応式(II)中、Mn+nはチオカルボニル基の硫黄原子と化学的に相互作用し金属硫化物を形成可能である金属塩を表す。具体的な化合物としては、例えば、MがAl、Au、Ag、Hg、Cu、Zn、Fe、Cd、Cr、Co、Ce、Bi、Mn、Mo、Ga、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Sc、Sb、Sr、Mg、Ti等であり、Xが、F、Cl、Br、I、NO3、SO4、NO2、PO4、CH3CO2等であるAgBr、AgI、AgF、AgO、AgCl、Ag2O、Ag(NO3)、AgSO4、AgNO2、Ag2CrO4、Ag3PO4、Hg2(NO32、HgBr2、Hg2Br2、HgO、HgI2、Hg(NO32、Hg(NO22、HgBr2、HgSO4、Hg22、Hg2SO4、Hg(CH3CO22、AuBr、AuBr3、AuI、AuI3、AuF3、Au23、AuCl、AuC13、CuCl、CuI、CuI2、CuF2、CuO、CuO2、Cu(NO32、CuSO4、Cu3(PO42の如き化合物が挙げられる。このうち、硫黄原子と相互作用しやすいという点で、最も好ましい金属塩としては銀塩が使用できる。
前記本発明に用いられる一般式(7)で表される増感色素に関しては、さらに、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの色素の不要な析出抑制を行うことができる。
また、増感色素と後述のラジカル重合開始剤におけるラジカル発生能を有する部分構造(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高めることができる。
さらに、本発明の組成物を好ましい使用様態である平版印刷版原版の感光層として用いる場合には、アルカリ系、あるいは、水系の現像液への処理適性を高める目的に対しては、親水性部位(カルボキシ基並びにそのエステル、スルホ基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は、感光層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。
その他、例えば、感光層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させることができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
本発明に用いる増感色素としては、前記一般式(7)で表される増感色素を少なくとも一種用いることが好ましく、この一般式(7)で示される限りにおいて、例えば、先に述べた修飾を施したものなど、どのような構造の色素を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光層への相溶性を高めることができる。
増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光層の膜物性の点からも有利である。
なお、本発明においては、前記一般式(7)で表される増感色素のみならず、本発明の効果を損なわない限りにおいて他の汎用の増感色素を用いることもできる。
感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化させる目的に対しては、このような低い吸光度の方がかえって硬化度を上げられる場合もある。また、吸光度が3以上のような高い領域では、感光層表面で大部分の光が吸収され、より内部での硬化が阻害され、例えば印刷版として使用した場合には膜強度、基板密着性の不十分なものとなる。
例えば、本発明の組成物を比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版原版の感光層に使用する場合には、増感色素の添加量は、感光層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。吸光度は前記増感色素の添加量と感光層の厚みとにより決定されるため、所定の吸光度は両者の条件を制御することにより得られる。感光層の吸光度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、あるいは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に感光層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
本発明の組成物を平版印刷版原版の感光層として利用する場合には、増感色素の添加量は、通常、感光層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
(A2)赤外線吸収剤
本発明において、760から1,200nmの赤外線を発するレーザーを光源とした露光が行われる場合には、通常、赤外線吸収剤が用いられる。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述のラジカル重合開始剤に電子移動および/またはエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
染料としては、市販の染料および例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 0005232576
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)〜一般式(e)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 0005232576
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 0005232576
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−023360号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Na+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14およびR15〜R20は互いに独立に水素原子またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基から選択される置換基、あるいは、これらを2つもしくは3つ組み合わせた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、および、R9〜R14およびR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
前記一般式(c)中、Y3およびY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24およびR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基を表す。また、式中Za-は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
前記一般式(d)中、R29ないしR32は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。R33およびR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、またはハロゲン原子を示す。nおよびmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、またはR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29および/またはR30はR33と、またR31および/またはR32はR34と結合して環を形成してもよく、更に、R33あるいはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2およびX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、X2およびX3の少なくとも一方は水素原子またはアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基またはペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc-は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示し、これらの基に置換基が導入可能な場合は、置換基を有してもよい。Mは2つの水素原子もしくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、なかでも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
Figure 0005232576
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μmから10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μmから1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μmから1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径を0.01μm以上にすると、分散物の感光層塗布液中での安定性が増し、また、10μm以下にすると感光層の均一性が良好になる。
顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
組成物の硬化を促進するために添加される、これらの赤外線吸収剤等の(A)増感色素は、本発明の組成物をネガ型平版印刷版原版の感光層として適用する場合、感光層に添加してもよいし、別の層、例えば上塗り層、下塗り層を設けそこへ添加してもよい。また、特に、本発明の組成物をネガ型感光性平版印刷版の感光層に適用する場合には、これらの(A)増感色素は、感度の観点から、感光層の波長760nmから1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1から3.0の間にあることが好ましい。光学濃度は前記赤外線吸収剤の添加量と感光層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。
感光層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、あるいは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に感光層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
<(B)ラジカル重合開始剤>
本発明に用いられる(B)ラジカル重合開始剤としては、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、(C)重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうるラジカル重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
本発明におけるラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ系重合開始剤、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
(a)有機ハロゲン化物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に好ましいものとして、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基が結合したs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−フルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−クロロ−4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−シアノフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−アセチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−エトキシカルボニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−フェノキシカルボニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスルホニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルスルホニウムフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン・テトラフルオロボレート、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ジエトキシホスホリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(4−ヒドロキシフェニルカルボニルアミノ)フェニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(p−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−(o−メトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(3,4−エポキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−〔1−フェニル−2−(4−メトキシフェニル)ビニル〕−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−ヒドロキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(3,4−ジヒドロキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−t−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
(b)カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキシド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
(e)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
(f)アジド化合物としては、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号、特許第2764769号明細書、特開2002−116539号公報、および、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
(i)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2003−328465号公報等に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物が挙げられる。具体例としては下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005232576
(k)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
特に、反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物あるいはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好適なものとして挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明に好適なオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
Figure 0005232576
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11-は1価の陰イオンを表し、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21−は1価の陰イオンを表し、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31-は1価の陰イオンを表し、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましくは特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
以下に、本発明においてラジカル重合開始剤として好適に用いられるオニウム塩の例を挙げるが、本発明はこれら制限されるものではない。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
(B)ラジカル重合開始剤としては、上記に限定されないが、特に反応性、安定性の面から、(a)有機ハロゲン化物、なかでも、これに包含されるトリアジン系開始剤、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物に包含されるジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩がより好ましい。また、点状汚れの観点から、イオン性化合物を使用する場合には、ハロゲン化物イオンを含まない化合物を使用することが好ましい。また、これらのラジカル重合開始剤のなかでも赤外線吸収剤との組み合わせで焼き出し画像の視認性向上を図る観点からは、オニウム塩であって、対イオンとして無機アニオン、例えば、PF6 -、BF4 -など、を有するものが好ましい。さらに、発色に優れていることから、オニウム塩としては、ジアリールヨードニウムが好ましい。
これらの(B)ラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(B)ラジカル重合開始剤は、感光層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
また、これらの(B)ラジカル重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、感光層中や、これに隣接して別の層を設けそこに添加してもよい。
<(C)重合性化合物>
本発明に用いることができる(C)重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態をもつ。
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(m1)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R19)COOCH2CH(R20)OH 一般式(m1)
(ただし、R19およびR20は、それぞれ、HまたはCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキシド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号、各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、感光層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、ラジカル重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
本発明において、(C)重合性化合物は、感光層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。
そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
本発明の感光層は必要に応じ、次に述べる成分を含有することができる。
<(D)疎水化前駆体>
本発明における疎水性化前駆体とは、熱が加えられたときに感光層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、およびミクロゲルから選ばれる少なくともひとつの粒子が好ましい。疎水化前駆体は機上現像型平版印刷版原版の画像記録層に用いることにより機上現像性を向上させることができる。
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報および欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
疎水化前駆体として用いうる前記粒径の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法が挙げられ、その他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、およびその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基およびこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基および反応相手であるヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物および反応相手であるアミノ基またはヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合または懸濁重合ることが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。
熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマーまたは親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、そのなかでも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度および経時安定性が得られる。
本発明で用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、感光層の構成成分(前述の(A)〜(C)成分)の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、感光層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する感光層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
本発明においては、架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中および/または表面に、前述の(A)〜(C)の一部を含有することができ、特に、(C)重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
感光層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
例えば、マイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、前述の硬化性高分子化合物に導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
一方、ミクロゲルを調製する方法としては、特公昭38−19574号、同42−446号明細書に記載されている界面重合による造粒、特開平5−61214号明細書に記載されているような非水系分散重合による造粒を利用することが可能である。但し、これらの方法に限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、界面重合により造粒され3次元架橋を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
疎水化前駆体の含有量としては、固形分濃度で5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明における感光層には、必要に応じて、さらに他の成分を含有することができる。用いる成分がカチオン性化合物である場合は、対イオンとしてハロゲン化物イオンを含まないものを使用することが好ましい。
以下、本発明の感光層に用いられる他の成分について説明する。
(1)界面活性剤
本発明における感光層には、塗布面状を向上させるため、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、なかでもフッ素系の界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤にハロゲン化物イオンが不純物や対イオンとして含まれる場合は、脱塩、イオン交換などの方法で、除去または他の陰イオンに交換することが好ましい。
界面活性剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
(2)着色剤
本発明における感光層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤を用いると、画像形成後の画像部と非画像部の区別がつきやすくなるので、添加する方が好ましい。
なお、添加量は、感光層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
(3)焼き出し剤
本発明における感光層には、焼き出し画像の生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。
このような化合物としては、例えば、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
酸またはラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、感光層固形分に対して0.01〜10質量%の割合であることが好ましい。
(4)重合禁止剤
本発明における感光層には、感光層の製造中または保存中において、(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、感光層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
(5)高級脂肪酸誘導体等
本発明における感光層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。
高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
(6)可塑剤
本発明における感光層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
(7)無機微粒子
本発明における感光層は、硬化皮膜強度向上および機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、感光層中に安定に分散して、感光層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、感光層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
(8)低分子親水性化合物
本発明における感光層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させることから、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類およびその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩、ベタイン化合物、等が挙げられる。
これらのなかでも、有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸のナトリウム塩やリチウム塩などの有機硫酸塩、ベタイン化合物が好ましく使用される。
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルホン酸ナトリウム、イソブチルスルホン酸ナトリウム、sec−ブチルスルホン酸ナトリウム、tert−ブチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルホン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルホン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルホン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘプチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルオクチルスルホン酸ナトリウム、tert−オクチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルノニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、2−メチルアリルスルホン酸ナトリウム、4−[2−(2−ブチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−[2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−{2−[2−(2−エチル)ヘキシルオキシ−エトキシ]−エトキシ}−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−[2−(2−デシルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−{2−[2−(2−ブチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−〔2−{2−[2−(2−エチル)ヘキシルオキシ−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ〕−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1,3−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,5−ベンゼントリスルホン酸トリナトリウム、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、2−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、2,6−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウム、およびこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
有機スルファミン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルファミン酸ナトリウム、イソブチルスルファミン酸ナトリウム、tert−ブチルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルファミン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルファミン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルファミン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム、およびこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
これらの化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどなく、長鎖アルキルスルホン酸塩や長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などが良好に用いられる前述の界面活性剤とは明確に区別される。
有機硫酸塩としては、特に、下記一般式(10)で示される化合物が好ましく使用される。
Figure 0005232576
上記一般式(10)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、mは1〜4の整数を表し、Xはナトリウム、カリウム、またはリチウムを表す。
Rは、好ましくは、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、その場合、導入可能な置換基としては、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、ハロゲン原子、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。
一般式(10)で表される化合物の好ましい例としては、オキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウム、トリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、テトラオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、最も好ましい化合物としては、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウムが挙げられる。
上記の低分子親水性化合物の感光層への添加量は、感光層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
ベタイン化合物としては、一般式(11)および一般式(12)で表される化合物が好ましく使用される。
Figure 0005232576
1〜R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、ヒドロキシ基あるいはアミノ基で置換されていてもよい。Zは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。R1〜R3およびZの少なくとも2つが結合して複素環を形成してもよい。
これらの化合物を感光層に含有することにより、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させることが可能になる。なかでも、R1〜R3が炭素数1〜3のアルキル基、またはR1〜R3およびZの2つが結合した5〜6員環の複素環であることが望ましく、特に、R1〜R3がメチル基もしくはエチル基である第4級アンモニウム骨格、またはR1〜R3およびZの2つが結合して環を形成したピロリジン骨格、ピペリジン骨格、ピリジン骨格、イミダゾリン骨格を有すものが望ましい。
上記一般式(11)の具体的な化合物を以下に例示するが、本発明は以下に限定される
ものではない。
Figure 0005232576
上記一般式(12)の具体的な化合物を以下に例示するが、本発明は以下に限定される
ものではない。
Figure 0005232576
これらの有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸塩およびベタイン化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が感光層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、感光層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
一般式(11)または(12)で表される化合物の感光層への添加量は、感光層全固形分量の0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以上2質量%以下である。これらの範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの低分子親水性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(9)感脂化剤
後述の保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合は、着肉性を向上させるために、感光層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。また、感脂化剤としては種類の異なるものを併用してもよい。
これらの化合物は無機質の層状化合物の表面被覆剤(感脂化剤)として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報に記載の下記一般式(K1)または特開2007−50660号公報に記載の下記一般式(K2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005232576
一般式(K1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基または水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はカウンターアニオンを示す。
一般式(K2)において、Ar1〜Ar6は、各々独立してアリール基または複素環基を表し、Lは2価の連結基を表し、Xn−はn価のカウンターアニオンを表し、nは1〜3の整数を表し、mはn × m=2を満たす数を表す。ここでアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。Lは2価の連結基を表す。連結基中の炭素数は6〜15が好ましく、より好ましくは、炭素数6〜12の連結基である。Xn−の好ましいものとしては、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物アニオン、トルエンスルホナート、ナフタレン−1,7−ジスルホナート、ナフタレン−1,3,6−トリスルホナート、5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼン−4−スルホナートなどのスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、硫酸エステルアニオン、硫酸アニオン、PF 、BF 、過塩素酸アニオンなどが挙げられる。なかでも、スルホン酸アニオンが特に好ましい。
上記一般式(K1)または(K2)で表されるホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
Figure 0005232576
本発明に好適の用いられる感脂化剤として、上記ホスホニウム化合物の他に、次の含窒素低分子化合物が挙げられる。好ましい含窒素低分子化合物としては下記一般式(K3)の構造を有す化合物が挙げられる。
Figure 0005232576
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基または水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はアニオンであり、PF6 -、BF4 -、またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基ならびに複素環基から選ばれる置換基を有する有機スルホン酸アニオンを示す。
すなわち本発明に用いられる含窒素低分子化合物としては、R1〜R4の少なくとも1つが水素原子であるアミン塩類、およびR1〜R4がいずれも水素原子でない第4級アンモニウム塩類が挙げられる。また下記一般式(K4)で示されるイミダゾリニウム塩類、下記一般式(K5)で示されるベンゾイミダゾリニウム塩類、下記一般式(K6)で示されるピリジニウム塩類、下記一般式(K7)で示されるキノリニウム塩類の構造でもよい。
Figure 0005232576
上記式中、R5とR6は、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基または水素原子を表す。X-はアニオンであり、前記一般式(K3)のX-と同義である。
これらのなかでも、第4級アンモニウム塩類、およびピリジニウム塩類が好ましく用いられる。以下に、それらの具体例を示す。
Figure 0005232576
感光層への上記ホスホニウム化合物または含窒素低分子化合物の添加量は、感光層固形分の0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。これらの範囲内で印刷途中の良好なインキ着肉性が得られる。
本発明に用いられる感脂化剤としては、さらに下記のアンモニウム基含有ポリマーも好適なものとして挙げられる。アンモニウム基含有ポリマーは、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、繰り返し単位として下記一般式(K8)および一般式(K9)の構造を含むポリマーであることが好ましい。
Figure 0005232576
(式中、R11およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。R2は置換基を有してもよいアルキレン基、および置換基を有してもよいアルキレンオキシ基などの2価の連結基を表し、R31、R32およびR33は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を表す。X-は、F-、Cl-、Br-、I-、置換基を有してもよいベンゼンスルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、プロピル硫酸アニオン、分岐してもよいブチル硫酸アニオン、分岐してもよいアミル硫酸アニオン、PF6 -、BF4 -、B(C654 -などの有機または無機のアニオンを表す。R4は炭素数1〜21のアルキル基、アラルキル基、アリール基、-(C24O)n- R5、または-(C36O)n-R5を表し、R5は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。nは1または2を表す。)
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、一般式(K8)および一般式(K9)で表される構造単位を、それぞれ少なくとも1種含有するが、どちらかが2種以上であってもよいし、両方が2種以上であってもよい。両構造単位の比率は限定されないが、特に好ましくは、モル比として5:95〜80:20である。また、このポリマーは、本発明の効果を確保できる範囲内で、他の共重合成分を含有してもよい。
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:cSt/g/ml)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。
<還元比粘度の測定方法>
30質量%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液をウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れ、30℃にて流れおちる時間を測定し、計算(「動粘度」=「粘度計定数」×「液体が細管を通る時間(秒)」)を用いて定法により算出する。
アンモニウム塩含有ポリマーの含有量は、感光層の全固形分に対して0.0005質量%〜30.0質量%が好ましく、0.001質量%〜20.0質量%がより好ましく、0.002質量%〜15.0質量%が最も好ましい。この範囲で、良好な着肉性が得られる。アンモニウム塩含有ポリマーは、さらに保護層に含有させてもよい。
以下に、アンモニウム塩含有ポリマーの具体例を示す。
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
Figure 0005232576
(10)連鎖移動剤
本発明の感光層には連鎖移動剤を含有することができる。特に、露光光源が紫外線または可視光で、波長350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素を用いる場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤は、感度および保存安定性に寄与する。連鎖移動剤として作用する化合物としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、または、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
本発明の感光層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
また、1分子中2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物を使用することができる。多官能チオール化合物の具体例としては、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
連鎖移動剤としては、なかでも、特開2006−091479号公報記載の下記一般式(13)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、および感光層から蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保存安定性に優れ、さらには高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
Figure 0005232576
一般式(13)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環または6員環の複素環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
さらに好ましくは下記一般式(13A)または一般式(13B)で表されるものが使用される。
Figure 0005232576
一般式(13A)および式(13B)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
具体的化合例としては、1−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−プロピル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ヘキシル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ヘキシル−2−メルカプト−5−クロロベンゾイミダゾール、1−ペンチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−オクチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−オクチル−2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、1−シクロヘキシル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−メチルスルホニルベンゾイミダゾール、1−(p−トリル)−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−メトキシエチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ブチル−2−メルカプトナフトイミダゾール、1−メチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ブチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ヘプチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−シクロヘキシルル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−(3−フルオロフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(p−トリル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(p−トリフルオロメチルフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(3,5−ジクロロフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−(p−トリル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−(1−ナフチル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−(4−ブロモフェニル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−(4−トリフルオロフェニル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、などが挙げられる。
これらの連鎖移動剤の使用量は感光層の全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
<感光層の形成>
本発明における感光層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥することで形成される。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明における感光層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散または溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して、多層構造の感光層を形成することも可能である。
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と感光層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
(保護層)
本発明の平版印刷版原版は、感光層の上に保護層(オーバーコート層)を有することが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、感光層での傷の発生防止、高照度レーザー露光時のアブレーション防止などの機能も有する。以下、保護層を構成する成分等について説明する。
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる感光層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が感光層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、さらに、露光に用いられる光の透過性が良好で、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に記載されている。
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。
これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。そのなかでも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシ基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、さらにはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、(株)クラレ製のPVA−105,PVA−110,PVA−117,PVA−117H,PVA−120,PVA−124,PVA−124H,PVA−CS,PVA−CST,PVA−HC,PVA−203,PVA−204,PVA−205,PVA−210,PVA−217,PVA−220,PVA−224,PVA−217EE,PVA−217E,PVA−220E,PVA−224E,PVA−405,PVA−420,PVA−613,L−8等が挙げられる。
また、変性ポリビニルアルコールとしては、いずれも(株)クラレ製の、アニオン変性部位を有すKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、カチオン変性部位を有すC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有すM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有すMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有すHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有すR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
また、保護層には無機質の層状化合物、すなわち、無機化合物であって層状構造を有し、かつ、平板状の形状を有する化合物を含有することが好ましい。このような無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、耐刷性が顕著に改善される。また、保護層の膜強度が一層向上して耐キズ性が向上する他、保護層にマット性を付与することができる。
無機質の層状化合物としては、例えば、下記一般式A(B,C)2−5D410(OH,F,O)2〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
雲母化合物のうち、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si410)F2等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
上記雲母化合物のなかでも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイトおよび膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明に有用であり、特に、入手容易性、品質の均一性の観点から、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
層状化合物の形状は平板状であり、拡散制御の観点からは、その厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。粒子径が0.3μm以上であれば酸素や水分の透過の抑制が十分であり、効果を十分に発揮でき好ましい。また20μm以下であれば塗布液中での分散安定性が十分であり、安定的な塗布を行うことができ好ましい。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
次に、層状化合物を保護層に用いる場合の一般的な分散方法の例について述べる。
まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。
この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、上記ポリビニルアルコールなどのポリマー溶液と配合して調製するのが好ましい。
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用される上記ポリマーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比に適合することが好ましい。
保護層の他の添加物として、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、ソルビトール等を前記水溶性または水不溶性ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができる。また、皮膜の物性改良のため水溶性の(メタ)アクリル系ポリマー、水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。
さらに、本発明における保護層は後述のような保護層用塗布液を用いて形成されるが、この塗布液には、感光層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
すなわち、保護層用塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、具体的には、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。これら界面活性剤の添加量は前記水溶性または水不溶性ポリマーに対して0.1〜100質量%添加することができる。
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報および英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系ポリマー、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリフルオロエチレン等の固体粒子を20〜60質量%混合させ、感光層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
さらに、保護層に、前記の低分子窒素化合物やアンモニウム塩含有ポリマーなどの感脂化剤を添加することもできる。これらの添加で、さらなる、着肉性の向上効果が得られる。感脂化剤を保護層に添加する場合の添加量としては、0.5〜30質量%の範囲であることが好ましい。
さらに、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。また、平版印刷版原版最表面の滑り性を制御する目的で、前述の感光層に添加したような球状の無機微粒子を含有してもよい。この無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。この無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、50nm〜3μmであるのがより好ましい。上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、保護層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがより好ましい。
保護層の形成は、上記保護層成分を溶媒に分散または溶解して調製された保護層用塗布液を、感光層上に塗布、乾燥して行われる。
塗布溶剤は、用いるポリマーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書または特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。
具体的には、例えば、保護層を形成する際には、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が用いられる。
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.02〜3g/m2の範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/m2の範囲である。
(下塗り層)
平版印刷版原版においては、必要に応じて、感光層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)が設けられる。下塗り層は、露光部においては支持体と感光層との密着を強化し、未露光部においては感光層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。以下に、本発明の下塗り層に用いられる成分などについて説明する。
下塗り層用化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
最も好ましい下塗り層用化合物としては、吸着性基、親水性基、および架橋性基を有する高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、および架橋性基を有するモノマーを共重合してなることが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、親水性支持体表面への吸着性基を有することが好ましい。親水性支持体表面への吸着性の有無は、例えば、以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に、試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば、蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)、あるいは官能基(例えば、ヒドロキシ基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基またはカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2、−COCH2COCH3が挙げられる。なかでも、−OPO32、およびPO32が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基が挙げられる。なかでも、アンモニウム基、ホスホニウム基、およびスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基、およびホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂を合成する際に用いられる、吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記一般式(U1)または一般式(U2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005232576
上記一般式(U1)および(U2)中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。
1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、またはメチル基であることが最も好ましい。R2およびR3は、水素原子であることが特に好ましい。
Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基であり、該吸着性の官能基については、前述した通りである。
一般式(U1)および(U2)において、Lは、単結合、または2価の連結基である。 Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)、または2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、またはカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
前記2価の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。2価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。また、2価の脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。さらに、2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。また、2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。また、複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
本発明において、Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
一般式(U1)において、Xは、酸素原子(−O−)、またはイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。
一般式(U2)において、Yは炭素原子または窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。
以下に、一般式(U1)または一般式(U2)で表される代表的な化合物の例を示す。
Figure 0005232576
下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂は親水性基を有することが好ましく、この親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等が好適に挙げられる。なかでも、高親水性を示すスルホ基が好ましい。
スルホ基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。なかでも、親水性能および合成の取り扱いから、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
これらは下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂を合成する際に好適に用いられる。
本発明における下塗り層用の高分子樹脂は架橋性基を有することが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗り層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたはCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23、および(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、およびCH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗り層用の高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドが好適である。
下塗り層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、および良好な保存安定性が得られる。
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均モル質量/数平均モル質量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
下塗り用の高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の下塗り層は、生版(未露光の平版印刷版原版)の経時における汚れ防止するため、第2級または第3級アミンや重合禁止剤を含有することができる。第2級または第3級アミンとしては、イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、トリス(2−ヒドロキシー1−メチル)アミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,10−フェナントロリン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニル、ジフェニルアミン、1,3−ジフェニルグアニジン、4−フェニルピリジン、N,N’−エチレンビス(2,2,5,5−テトラメチルピロリジン)などが挙げられる。
重合禁止剤としては、公知の熱重合禁止剤が挙げられる。なかでも好ましい重合禁止剤は、フェノール系ヒドロキシ基含有化合物、キノン化合物類、N−オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、ジアゾニウム化合物類、カチオン染料類、スルフィド基含有化合物、ニトロ基含有化合物、およびFeCl3 、CuCl2 等の遷移金属化合物からなる群より選択される化合物である。上記の化合物のなかでも特にキノン化合物類が好適である。キノン化合物類の具体例としては、1,4−ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、クロラニル、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、ナフトキノン、2−フルオロ−1,4−ナフトキノン、2−ヒドロキシエチル−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン、2,6−ジヒドロキシアントラキノン、などが挙げられる。
下塗り層へのこれらの化合物の添加量は、下塗り層構成成分の10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がさらに好ましく、30〜70質量%が最も好ましい。
また、生版経時における汚れ防止に効果のある化合物として、アミノ基または重合禁止能を有する官能基と、アルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物を用いることもできる。アルミニウム支持体表面と相互作用する基としては、トリアルコキシシリル基、オニウム基、またはフェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−およびCOCH2CO−から選ばれる酸基もしくはその金属塩などが挙げられる。
アミノ基とアルミニウム支持体表面との相互作用基を有する化合物の例としては、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと酸との塩、4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン構造を少なくとも1つ有する化合物(例えば、1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン=p−トルエンスルホナート)、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、などが挙げられる。重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基を有する化合物としては、2−トリメトキシシリルプロピルチオ−1,4−ベンゾキノン、2、5−ビス(トリメトキシシリルプロピルチオ)−1,4−ベンゾキノン、2―カルボキシアントラキノン、2−トリメチルアンモニオアントラキノン=クロリドなどが挙げられる。
下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の高分子樹脂および必要な添加物を有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)および/または水に溶解して得られる。下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層用塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および感光層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、さらに、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろん、これら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。例えば、封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
<1>無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、さらに、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、機上現像性および耐汚れ性を向上させることができる。
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性および耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
<2>水蒸気による封孔処理
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105 〜1.043×105 Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
<3>熱水による封孔処理
熱水による封孔処理としては、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
前記親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解および縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。なかでも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい
点で好ましい。
(製版方法)
本発明の平版印刷版原版は、画像露光した後、現像液を用いる現像処理工程で製版されるか、または機上現像によって製版される。機上現像が、処理の簡易化の点でより好ましい。
以下製版方法について、詳しく説明する。
<露光>
本発明の平版印刷版原版の露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。
本発明の平版印刷版原版を露光する光源としては、公知のものを制限なく用いることができる。光源の波長は300nmから1200nmでもよく、具体的には各種レーザーを光源として用いることができ、なかでも、波長760nm〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザーを用いることができる。
光源としてはレーザーが好ましく、例えば、350〜450nmの波長の入手可能なレーザー光源としては以下のものを利用することができる。
ガスレーザーとしては、Arイオンレーザー(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザー(356nm,351nm,10mW〜1W)、He−Cdレーザー(441nm,325nm,1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355mm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm,10mW)が挙げられる。半導体レーザー系としては、KNbO3、リング共振器(430nm,30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)、その他、パルスレーザーとしてN2レーザー(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)が挙げられる。
特に、この中でAlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
その他、450nm〜700nmの入手可能な光源としてはAr+レーザ−(488nm)、YAG−SHGレーザー(532nm)、He−Neレーザー(633nm)、He―Cdレーザー、赤色半導体レーザー(650〜690nm)、および700nm〜1200nmの入手可能な光源としては半導体レーザー(800〜850nm)、Nd−YAGレーザー(1064nm)が好適に利用できる。
その他、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、紫外のレーザーランプ(ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーなど)、可視の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等、放射線としては電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線なども利用できる。
上記の中でも、本発明に係る画像記録材料の像露光に用いられる光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
また、露光機構は内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等のいずれでもよい。
<機上現像>
露光された平版印刷版原版は、印刷機の版胴に装着される。レーザー露光装置付きの印刷機の場合は、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像様露光される。
平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく湿し水と印刷インキとを供給して印刷すると、感光層の露光部においては、露光により硬化した感光層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水および/または印刷インキによって、未硬化の感光層が溶解または分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の感光層に着肉して印刷が開始される。
ここで、最初に版面に供給されるのは、湿し水でもよく、印刷インキでもよいが、湿し水が除去された感光層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。湿し水および印刷インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
<現像処理>
本発明の平版印刷版原版は、機上現像性に優れるが、通常の処理、すなわち、画像露光後に、現像液を用いた湿式現像処理により感光層の未露光部を除去し、画像を得る製版方法をとることもできる。以下、アルカリ現像処理を行う場合の製版方法について説明する。
本発明に用いられる好ましい現像液としては、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミンまたはジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%になるように添加される。
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やべンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号明細書および同第3615480号明細書に記載されているものを挙げることができる。
さらに、特開昭50−26601号公報、同58−54341号公報、特公昭56−39464号公報、同56−42860号に記載されている現像液も優れている。
また、現像液として、特開2002−202616号公報に記載の特定の芳香族ノニオン界面活性剤含有現像液を用いることが、現像性の点でより好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、pHが10以下の非アルカリ水溶液を現像液として用いて現像処理を行ってもよい。ここで用いることができる非アルカリ水溶液としては、例えば、水単独または水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、一般的に公知な湿し水と同様組成の水溶液や界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系等)を含有する水溶液が好ましい。該現像液のpHは、2〜10が好ましく、より好ましくは3〜9、さらに好ましくは5〜9である。
現像液として用いることができる非アルカリ水溶液には、有機酸、無機酸、無機塩などを含有してもよい。
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形で用いることもできる。現像液中の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%である。
無機酸および無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。現像液中の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%である。
本発明で使用する現像液に用いることができるアニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
本発明で使用する現像液に用いることができるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明で使用する現像液に用いることができるノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
これらノニオン性界面活系剤は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、ソルビトールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、本発明の現像液に使用するノニオン系界面活性剤としては、HLB(Hydorophile−Lipophile Balance)値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
さらに、現像液中に含有するノニオン性界面活性剤の比率は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
本発明の現像液に使用する界面活性剤としては、抑泡性の観点から、ノニオン性界面活性剤が特に好適である。
また、本発明で使用する現像液には、有機溶剤を含有してもよい。ここで含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、"アイソパーE、H、G"(エッソ化学(株)製)あるいはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロロベンゼン等)や、下記の極性溶剤が挙げられる。
極性溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル 、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)、が挙げられる。
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
また、本発明に用いられる現像液には、水溶性高分子化合物として、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などを含有することができる。
上記大豆多糖類は、公知のものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
上記変性澱粉も、公知のものが使用でき、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
水溶性高分子化合物は2種以上を併用することもできる。水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
本発明に用いられる現像液には上記の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤などを含有することができる。
防腐剤としては、フェノールまたはその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系界面活性剤のHLBが5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型および可溶化等がいずれも使用できる。
本発明における非アルカリ水溶液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号各公報に記載の自動処理機や、米国特許第5148746号、米国特許第5568768号、英国特許第2297719号の各明細書に記載のシリンダー上にセットされた画像記録後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。なお、本発明において、擦り処理後の平版印刷版を、引き続いて、水洗、乾燥処理、不感脂化処理することも任意に可能である。
上記現像液の温度は、任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃である。
上記現像液および補充液を用いて現像処理された印刷版は、現像液を除去するため、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液で処理された後、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
その他、該平版印刷版原版の製版プロセスとしては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。特に機上現像に供する平版印刷版原版の場合には、露光前から印刷工程に付するまでの間に、全面露光あるいは全面加熱を行うことが好ましい。このような加熱あるいは露光により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や、感度の安定化といった利点が生じ得る。通常、現像あるいは印刷工程の前に行われる加熱あるいは露光は、非画像部におけるかぶりを抑制するため、非画像に影響を与えない程度の穏和な条件で行うことが好ましい。このような観点から、一般に加熱は、150℃以下の温度像件で行われる。
さらに、現像工程を行う製版プロセスでは、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行うことも有効である。
現像後の加熱には、前記現像前に行い如き制限がないので、非常に強い条件を利用することも可能であり、通常は200〜500℃の温度範囲である。この温度範囲においては、充分な画像強化作用が発揮され、支持体の劣化や画像部の熱分解といった問題を生じることもない。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔合成例1:硬化性高分子化合物(P−1)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:306.0g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:60.1g、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート:150.6g、メタクリル酸:51.65g、重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製):5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:312.6g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(1)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(1)の反応液に、グリシジルメタクリレート:110.9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル フリーラジカル:0.75g、N,N,N−トリメチルグリシン:2.6gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−1)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、カルボキシ基が残存していないことが確認された。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例2:硬化性高分子化合物(P−1)の合成〕
上記合成例1と同様の方法で合成した酸基を有する高分子化合物(1)の反応液に、グリシジルメタクリレート:110.9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.75g、特定オニウム塩(O−4):2.6gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物P−1を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、3mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された
〔合成例3:硬化性高分子化合物(P−1)の合成〕
上記合成例1と同様の方法で合成した酸基を有する高分子化合物(1)の反応液に、グリシジルメタクリレート:110.9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.75g、特定オニウム塩(O−5):2.6gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−1)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、3mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された
〔合成例4:硬化性高分子化合物(P−1)の合成〕
上記合成例1と同様の方法で合成した酸基を有する高分子化合物(1)の反応液に、グリシジルメタクリレート:110.9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.75g、特定オニウム塩(O−8):2.6gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−1)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、3mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された
〔合成例5:硬化性高分子化合物(P−1)の合成〕
上記合成例1と同様の方法で合成した酸基を有する高分子化合物(1)の反応液に、グリシジルメタクリレート:110,9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.75g、特定オニウム塩(O−20):2.6gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−1)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、5mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された
〔合成例6:硬化性高分子化合物(P−2)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:312.6g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:100.12g、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート:150.6g、メタクリル酸:17.2g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:312.6g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(2)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(2)の反応液に、グリシジルメタクリレート:37.0g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.61g、N,N,N−トリメチルグリシン:2.7gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−2)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−2)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、63,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、カルボキシ基が残存していないことが確認された。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例7:硬化性高分子化合物(P−3)の合成〕
上記合成例6と同様の方法で合成した酸基を有する高分子化合物(2)の反応液に、サイクロマーM100(ダイセル工業(株)製):51.0g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.63g、N,N,N−トリメチルグリシン:2.7gを加え、再び90℃まで加熱し、8時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−3)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−3)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、66,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、0.1mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例8:硬化性高分子化合物(P−4)の合成〕
上記合成例6と同様の方法で合成した酸基を有する高分子化合物(2)の反応液に、アリルグリシジルエーテル:29.7g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.63g、N,N,N−トリメチルグリシン:2.7gを加え、再び90℃まで加熱し、16時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−4)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−4)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、62,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、0.1mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例9:硬化性高分子化合物(P−5)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:346.2g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:100.12g、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート:150.6g、4−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]―4−オキソブタン酸:46.0g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:346.2g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(3)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(3)の反応液に、グリシジルメタクリレート:29.4g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.65g、N,N,N−トリメチルグリシン:3.0gを加え、再び90℃まで加熱し、16時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−5)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−5)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、70,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は、1.4mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔比較合成例1〕
上記合成例1のN,N,N−トリメチルグリシン:2.6gを、テトラエチルアンモニウムクロリド:2.6gとする以外、合成例1と同様の方法で合成を行い、硬化性高分子化合物(R−1)を得た。得られた硬化性高分子化合物(R−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、165,000であり、質量平均モル質量が異常に増加していることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は1.1mgKOH/gであった。高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔比較合成例2〕
上記合成例1のN,N,N−トリメチルグリシン:2.6gを、テトラエチルアンモニウムアセタート:2.7gとする以外、合成例1と同様の方法で合成を行い、硬化性高分子化合物(R−1)を得た。得られた硬化性高分子化合物(R−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は8.4mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔比較合成例3〕
上記合成例1のN,N,N−トリメチルグリシン:2.6gを、トリフェニルホスフィン:2.6gとする以外、合成例1と同様の方法で合成を行い、硬化性高分子化合物(R−1)を得た。得られた硬化性高分子化合物(R−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、65,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は72.9mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔比較合成例4〕
上記合成例1のN,N,N−トリメチルグリシン:2.6gを、ジメチルベンジルアミン:2.6gとする以外、合成例1と同様の方法で合成を行い、硬化性高分子化合物(R−1)を得た。得られた硬化性高分子化合物(R−1)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、74,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は10.1mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例10:硬化性高分子化合物(P-6)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:215.6g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:90.1g、メタクリル酸:94.7g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:215.6g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(4)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(4)の反応液に、グリシジルメタクリレート:110.9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.59g、N,N,N−トリメチルグリシン:1.65gを加え、再び90℃まで加熱し、6時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−6)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−6)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、63,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は108mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例11:硬化性高分子化合物(P-7)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:218.9g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:110.1g、メタクリル酸:77.5g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:218.9g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(5)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(5)の反応液に、グリシジルメタクリレート:73.9g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.52g、N,N,N−トリメチルグリシン:1.64gを加え、再び90℃まで加熱し、6時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−7)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−7)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、57,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は118mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例12:硬化性高分子化合物(P−8)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:218.2g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:106.1g、メタクリル酸:80.9g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:218.9g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(6)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(6)の反応液に、サイクロマーM100(ダイセル工業(株)製):102.0g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.52g、N,N,N−トリメチルグリシン:1.64gを加え、再び90℃まで加熱し、6時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−8)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−8)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、63,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は115mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例13:硬化性高分子化合物(P−9)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:219.2g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:112.1g、メタクリル酸:75.8g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:219.2g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(7)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(7)の反応液に、アリルグリシジルエーテル:59.4g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.52g、N,N,N−トリメチルグリシン:1.64gを加え、再び90℃まで加熱し、6時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−9)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−9)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、56,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は117mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔合成例14:硬化性高分子化合物(P−10)の合成〕
コンデンサー、攪拌器を取り付けた2000mlフラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:327.7g入れ、窒素気流下、72.5℃まで加熱した。メタクリル酸メチル:102.1g、4−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]―4−オキソブタン酸:225.6g、V−601:5.5gの1−メトキシ−2−プロパノール:327.7g溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、72.5℃で、2時間撹拌した後、V−601:2.3gを加え、90℃まで昇温し、更に2時間攪拌した。室温まで反応溶液を冷却し、酸基を有する高分子化合物(8)を得た。
上記酸基を有する高分子化合物(8)の反応液に、グリシジルメタクリレート:59.8g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル:0.78g、N,N,N−トリメチルグリシン:2.87gを加え、再び90℃まで加熱し、6時間攪拌し、硬化性高分子化合物(P−10)を得た。
得られた硬化性高分子化合物(P−10)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、65,000であり、正常に重合が行われていることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は89mgKOH/gであった。更に、高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
〔比較合成例5〕
上記合成例10のN,N,N−トリメチルグリシンを、テトラエチルアンモニウムクロリド:1.65gとする以外、合成例10と同様の方法で合成を行い、硬化性高分子化合物(R−2)を得た。(R−2)を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量を測定した結果、153,000であり、異常に質量平均モル質量が増大していることが確認された。また、酸価滴定の結果、酸価は109mgKOH/gであった。高分子反応によりメタクリル基が側鎖に導入されたことが、NMRスペクトルより確認された。
以下に合成例で得られたP−1〜P−10の硬化性高分子化合物の構造式を示す。構造式の各構成単位の下に記載の数字は重合モル比である。
Figure 0005232576
〔合成した硬化性高分子化合物の溶液安定性の評価方法〕
合成したポリマー溶液を、60℃のオーブンに3日間加熱し、室温まで冷却後、NMR測定を行い、メタクリル基の有無を確認することで、ポリマーの溶液安定性を確認した。
評価結果を表1に示す。メタクリル基が導入されたままであるものを ”○”、メタクリル基が分解し、メタクリル基含量が減少しているものを”×”として、記載する。
上記合成例で合成した各合成条件での硬化性高分子化合物の反応性および保存安定性を下記表1にまとめる。
Figure 0005232576
上記表1から明らかなように、本発明の分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩を触媒とする製造方法によれば、Mwの異常な増加もなく、エポキシ基と酸基とが高い反応性を示し、また、反応後の溶液のまま保存しておいても、生成した硬化性高分子化合物は安定である。
〔実施例1〜5および比較例1〕
(1)硬化性高分子化合物組成物の調製
合成例10〜14で合成した硬化性高分子化合物(P−6〜P−10)を、30質量%の1−メトキシ−2−プロパノール溶液に調製した。調製した高分子化合物の溶液に、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名TMP−A 共栄社化学(株)製)、光重合開始剤およびチオール化合物を、以下の表2に示す組成で配合することにより硬化性高分子化合物組成物(実施例1〜5)を調製した。比較例1では、硬化性高分子化合物として、比較合成例5で得た硬化性高分子化合物(R−2)を用いて、同様に組成物を調製した。
Figure 0005232576
(光感度評価)
表2の硬化性高分子化合物組成物および比較硬化性高分子化合物組成物を、100×100×1mmの大きさのガラス基板に、スピンコーターで乾燥膜厚が約15μmになるように塗布した。さらに各塗装板は、70℃30分の条件で熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、21段ステップタブレット(日立化成工業(株))を各塗膜の上にのせ、超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(ウシオ電機(株)製、商品名 マルチライト ML−251A/B)で200mJ/cm2となるように露光した。照射紫外線量はウシオ電機(株)の紫外線積算光量計 UIT−150(受光部 UVD−S365)にて測定した。露光後、各塗装板を30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理した後、水洗、エアーガンにて乾燥した。その後、完全に塗膜が残った段数を読んだ。現像時間1分のものを光感度評価−1、現像時間2分のものを光感度評価−2とした。ここで段数が大きいほど光感度が高いことを示す。さらにその残膜の形状を光学顕微鏡で観察して良否を判定した。結果を表2に示す。
(現像性の評価)
上記の各塗装板を未露光のまま30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で30秒間現像処理した後、水洗、エアーガンにて乾燥し、目視で塗布した硬化性高分子化合物組成物の残存物が存在しないか観察し、現像性の評価を行った。目視で、何も存在していないものを○、残存物があるものを×とした。結果を表2に示す。
表2の結果より、本発明の製造方法で合成した硬化性高分子化合物は、ラジカル重合性およびアルカリ現像特性が良好であるため、優れた表面硬化性およびアルカリ現像性を有する塗膜を形成できる組成物を調製することができる。一方、比較例1の高分子化合物組成物は現像性が劣る。
〔実施例6〜10および比較例2〕
−アルカリ現像系ネガ型平版印刷版原版の作製と評価−
(1)支持体の製作
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti 0.02質量%、Cu 0.013質量%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板厚0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
次いで、支持体と感光層の密着性を良好にし、かつ非画後部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミニウムを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミニウムウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm 2 、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm 2 を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20質量%水溶液を35℃で用い、アルミニウムウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm 2 の直流で電解処理を行うことで2.5g/m 2 の陽極酸化皮膜を作製した。
その後、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミニウムウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m 2 であった。以上により作製した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
(2)感光層の形成
下記感光層塗布液(P−1)を調製し、上記のようにして得られたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して感光層を形成し、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m 2 の範囲内であった。
なお、実施例に使用したアルカリ可溶性高分子化合物としては前記合成例により得られた硬化性高分子化合物を、30質量%の1−メトキシ−2−プロパノール溶液に調製したものを使用した。
<感光層塗布液(P−1)>
・アルカリ可溶性高分子化合物:硬化性高分子化合物(表3記載) 6.7g
・ラジカル重合性化合物:ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0g
・赤外線吸収剤「IR−6」〔下記構造〕 0.08g
・スルホニウム塩「S−1」〔下記構造〕 0.30g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸 塩 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176,大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
Figure 0005232576
(平版印刷版原版の評価)
(1)露光
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm 2 、解像度2400dpiの条件で露光した。
(2)現像処理
露光後、富士フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
(3)耐刷性の評価
次に、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。結果を前記 表3に示す。
(4)非画像部汚れ性の評価
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存して強制経時させた後、前記と同様の印刷を行い非画像部汚れ性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005232576
表3より、本発明の硬化性高分子化合物を感光層として用いた平版印刷版原版は、非画像部の汚れもなく、耐刷性に優れ、また、高温、高湿環境下で保存した後も、非画像部の汚れ性が低下せず、経時安定性に優れていることがわかった。
〔実施例11〜19および比較例3〜5〕
−機上現像型平版印刷版原版の作製と評価−
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で12秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体(1)を得た。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
(2)下塗り層の形成
次に、上記支持体(1)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が28mg/m2になるよう塗布して、下塗り層を設けた。
<下塗り層用塗布液(1)>
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
Figure 0005232576
(3)感光層の形成
上記のようにして形成された下塗り層上に、下記組成の感光層塗布液をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の感光層を形成した。
感光層塗布液は下記感光液(1)およびミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。なお、実施例に使用した高分子化合物は前記合成例により得られた硬化性高分子化合物を、30質量%の1−メトキシ−2−プロパノール溶液に調製したものを使用した。
<感光液(1)>
・硬化性高分子化合物
(表4記載の化合物, 30質量%の1−メトキシ−2−プロパノール溶液)
0.800g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.030g
・ラジカル重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)〔下記構造〕 0.055g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
上記の、赤外線吸収剤(1)、ラジカル重合開始剤(1)、ホスホニウム化合物(1)、低分子親水性化合物(1)、およびフッ素系界面活性剤(1)の構造は、以下に示す通りである。
Figure 0005232576
上記に記載のミクロゲル(1)は、以下のようにして合成されたものである。
<ミクロゲル(1)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート〔(C)成分〕(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
(4)保護層の形成
上記のようにして形成された感光層上に、さらに下記組成の保護層用塗布液(1)をバー塗布した後、120℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成し、平版印刷版原版(1)〜(9)と(R−1)〜(R−3)を得た。
<保護層用塗布液(1)>
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%重合度、500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 8.60g
・イオン交換水 6.0g
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
(5)平版印刷版原版の評価
得られた平版印刷版原版(1)〜(9)と(R−1)〜(R−3)の機上現像性および耐刷性を下記のようにして評価した。結果を表4に示す。
<機上現像性>
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像および20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
感光層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。結果を表4に示す。
<耐刷性>
上述した機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に感光層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を表4に示す。
<汚れ性>
得られた平版印刷版原版を、60℃相対湿度75%に設定した恒温恒湿槽中に2日間放置した後、上記と同様にして露光、印刷し、非画像部に現れた点状汚れの数を目視でカウントした。結果を表4に示す。
Figure 0005232576
表4からわかるように、本発明の製造方法で得られた硬化性高分子化合物を用いた平版印刷版原版は、良好な機上現像性および耐刷性を有し、さらに汚れ性にも優れている。

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を高分子化合物中に存在する酸基に付加させる硬化性高分子化合物の製造方法であって、触媒として分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩を用いることを特徴とする硬化性高分子化合物の製造方法。
  2. 前記の分子内にカウンターアニオンを有するオニウム塩が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
    Figure 0005232576

    一般式(1)中、R、RおよびRは、各々独立にアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R、RおよびRのいずれか2つが連結し、環を形成してもよい。Lは2価の有機連結基を表す。
  3. エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物が下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
    Figure 0005232576

    〔一般式(A)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。一般式(B)中、R〜R18は、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。〕
  4. 硬化性高分子化合物が下記一般式(2)で表される基および下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
    Figure 0005232576

    〔一般式(2)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。一般式(3)中、R〜R18は、各々独立に、水素原子、アルキルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、またはヒドロキシ基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表す。〕
  5. 硬化性高分子化合物の酸価が、3mgKOH/g未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性高分子化合物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする硬化性高分子化合物組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた硬化性高分子化合物を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
  8. 請求項7記載の平版印刷版原版が、支持体上に、露光後に印刷機上で印刷インキと湿し水とを供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
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