JP5228846B2 - タンデムアーク溶接方法 - Google Patents
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Description
ガスシールドアーク溶接は、使用するシールドガスの種類に応じて、CO2ガスを主成分(すなわち99体積%以上)とするガスをシールドガスとして用いる炭酸ガスアーク溶接法,ArガスとCO2ガスの混合ガスをシールドガスとして用いる混合ガスアーク溶接法(いわゆるMAG溶接法),ArガスとHeガスの混合ガスをシールドガスとして用いる混合ガスアーク溶接法(いわゆるMIG溶接法)等に分類される。
なおMAG溶接法では、炭酸ガスアーク溶接法とMIG溶接法の特性がシールドガスのCO2含有量に応じて現われる。
たとえば特許文献1には、2本以上の溶接用ワイヤを電極として用いる多電極ガスシールドアーク溶接において、溶接用ワイヤの成分と電極の極性とを規定することによって、アークを安定させ、かつ施工能率を高める技術が開示されている。しかし、いずれの電極においてもCO2を含有するシールドガスを使用するので、CO2の酸化反応によって溶接金属の表面にスラグが生成するのは避けられず、スラグの巻込みに起因する溶接欠陥が生じる惧れがある。
さらに、電極として使用する溶接用ワイヤの成分を規定し、各電極の極性を規定することによって、十分な溶込み深さが得られ、平滑な溶接金属が形成され、かつスラグの生成を抑制できる効果が向上することが分かった。また、電極の間隔を規定すれば、効果が一層改善されることが分かった。
すなわち本発明は、2本の溶接用ワイヤを電極に用いた消耗電極式のタンデムアーク溶接方法において、先行極の溶接用ワイヤがREMを0.015〜0.100質量%含有し、かつ先行極を正極性とし、さらに先行極のシールドガスとして不活性ガスと80体積%以上のCO 2 ガスからなる活性ガスまたは炭酸ガスを用い、後行極の溶接用ワイヤがREMを0.015〜0.100質量%含有し、かつ後行極を逆極性とし、さらに後行極のシールドガスとしてArガス,HeガスおよびH2ガスの中から選ばれる1種または2種以上を合計99.5体積%以上含有する不活性ガスを用いるとともに、先行極で生じた溶融メタルが凝固する前に後行極でスラグのクリーニングを行なうタンデムアーク溶接方法である。
電極となる溶接用ワイヤは、フラックスを内装していないソリッドワイヤと呼ばれるものを使用する。また2本の電極は、溶接の進行方向に対して平行に配置する。ここでは、2本の電極を溶接の進行方向に対して平行に配置して行なうガスシールドアーク溶接をタンデムアーク溶接と記す。また2本の電極のうち、溶接の進行方向の前方に配置される電極を先行極と記し、後方に配置される電極を後行極と記す。
まず、先行極では融合不良を防止する観点から、溶込みの深さを増大させる。ただし、MIG溶接では溶込み深さの増大は期待できないので、先行極では炭酸ガスアーク溶接またはMAG溶接を採用する。つまり、不活性ガスと80体積%以上のCO2ガスとを混合した活性ガスまたは炭酸ガス(すなわちCO2ガス)をシールドガスとして使用する。その不活性ガスはArガスを使用することが好ましい。先行極のシールドガスのCO2含有量が80体積%未満では、十分な溶込み深さは得られず、多層溶接における融合不良を防止できない。したがって先行極では、不活性ガスと80体積%以上のCO2ガスとを混合した活性ガスまたは炭酸ガス(すなわちCO2ガス)をシールドガスとして使用して、MAG溶接を行なう。シールドガスのCO2含有量は100体積%(すなわち炭酸ガスアーク溶接)であっても良い。
そこで後行極では、溶融メタル表面のスラグを再び溶解(以下、クリーニングという)させるために、MIG溶接を採用する。つまり後行極では、Arガス,HeガスおよびH2ガスの中から選ばれる1種または2種以上を混合したシールドガスを使用する。ただしシールドガスに含有されるAr,HeおよびH2の中から選ばれる1種または2種以上の合計が99.5体積%未満では、クリーニング効果が得られず、スラグ巻込みを防止できない。したがって後行極では、Ar,HeおよびH2の中から選ばれる1種または2種以上を合計99.5体積%以上含有するシールドガスを用いて、MIG溶接を行なう。なお、シールドガスのAr,HeおよびH2の中から選ばれる1種または2種以上の含有量は合計99.9体積%以上が好ましい。
以上に説明した通り、本発明のタンデムアーク溶接方法において、先行極では炭酸ガスアーク溶接またはMAG溶接を採用し、後行極ではMIG溶接を採用することは、融合不良およびスラグ巻込みを防止する上で重要な意味を持っている。
先行極では、既に説明した通り、溶込み深さを増大させるために炭酸ガスアーク溶接またはMAG溶接を採用する。そこで、電極の極性を正極性(すなわち溶接用ワイヤをマイナス極)として、アークを集中させる。使用する溶接用ワイヤの希土類元素(以下、REMという)の含有量が0.015質量%未満では、正極性でアークを集中させる効果が得られない。一方、0.100質量%を超えると、溶接用ワイヤの製造工程における加工性が劣化するので、製造コストの上昇を招く。したがって先行極で使用する溶接用ワイヤのREM含有量は、0.015〜0.100質量%の範囲内とする。
先行極で使用する溶接用ワイヤと後行極で使用する溶接用ワイヤは、いずれも上記したREMの他に、Ca,O,Nの含有量を規定することが好ましい。Ca,O,Nは、いずれも溶接用ワイヤの素材となる溶鋼を溶製する工程、および得られた線材を伸線加工する工程で不可避的に混入する元素である。
Oは、溶滴の移行形態を微細化する作用を有する。O含有量が0.0010質量%未満では、溶滴を微細化する効果が得られない。一方、0.010質量%を超えると、アークの安定性が阻害される。したがって、O含有量は0.0010〜0.010質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.0010質量%以上0.0080質量%未満である。
次に、本発明のタンデムアーク溶接における先行極と後行極との間隔について説明する。
X線透過試験では、スラグ巻込みに起因する内部欠陥を想定して1mm以上の幅を有する欠陥の個数を測定した。その結果を表3に示す。なお表3では、突合せ継手の長さ方向300mm当たりの個数に換算して、幅1mm以上の欠陥が2個未満の突合せ継手を優(○),2個以上5個未満の突合せ継手を良(△),5個以上の突合せ継手を不可(×)として評価した。
また溶接金属の外観を目視で検査したところ、発明例では平滑な溶接金属が形成されていた。
Claims (2)
- 2本の溶接用ワイヤを電極に用いた消耗電極式のタンデムアーク溶接方法において、先行極の溶接用ワイヤがREMを0.015〜0.100質量%含有し、かつ前記先行極を正極性とし、さらに前記先行極のシールドガスとして不活性ガスと80体積%以上のCO2ガスからなる活性ガスまたは炭酸ガスを用い、後行極の溶接用ワイヤがREMを0.015〜0.100質量%含有し、かつ前記後行極を逆極性とし、さらに前記後行極のシールドガスとしてArガス、HeガスおよびH2ガスの中から選ばれる1種または2種以上を合計99.5体積%以上含有する不活性ガスを用いるとともに、前記先行極で生じた溶融メタルが凝固する前に前記後行極でスラグのクリーニングを行なうことを特徴とするタンデムアーク溶接方法。
- 前記先行極と前記後行極との間隔を15〜40mmとすることを特徴とする請求項1に記載のタンデムアーク溶接方法。
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