以下、本発明の車両用回転電機の冷却装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図9を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両を駆動する駆動装置のケースの内方に設けられ、車両の駆動軸との間で動力を伝達する回転電機を冷却する車両用回転電機の冷却装置に関する。
図3は、本実施形態に係る駆動装置1の概略構成を示す断面図である。図3には、車両に搭載された状態の駆動装置1が示されており、図3の上下方向は、車両の上下方向と一致する。以下の他の図面においても、同様であり、図の上下方向と車両の上下方向とは一致している。
図3において、符号1は、駆動装置を示す。駆動装置1は、ケース2と、ケース2の内部に配置された入力軸3、MG軸4、デフ軸5、およびカウンタ軸6を有する。入力軸3は、車両の駆動源として搭載されたエンジン(図示せず)の出力軸と同軸に連結されている。また、ケース2内には、入力軸3と同軸に配置された回転電機MG1、および、MG軸4と同軸に配置された回転電機MG2が設けられている。回転電機MG1及びMG2は、供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えた、いわゆるモータジェネレータである。
MG軸4は、回転電機MG2の入出力軸である。入力軸3とMG軸4との間では、入力軸3のギヤ10とMG軸4のギヤ11とを介してトルクが伝達される。また、入力軸3の回転は、入力軸3のギヤ10からカウンタ軸6のギヤ12に伝達され、さらに、カウンタ軸6のギヤ13からデフ軸5のデフリングギヤ(回転部材)14に伝達される。デフ軸5の回転は、図示しないデファレンシャル装置を介して車両の駆動輪へ伝達される。
本実施形態の駆動装置1では、以下に説明するように、デフリングギヤ14により掻き揚げられた潤滑油(冷却媒体)が駆動装置1の各部に供給される(デフリングギヤ14を介して潤滑油が駆動装置1の各部に供給される)ことにより、駆動装置1の各部の潤滑および冷却が行われる。
図3に示すように、ケース2の下部には、潤滑油を貯留する貯留部(オイル溜り)36が設けられている。ケース2の上部には、オイルキャッチタンク31が形成されている。オイルキャッチタンク31は、MG軸4の軸方向においてデフリングギヤ14の設置位置に対応する位置に配置されている。具体的には、オイルキャッチタンク31は、デフリングギヤ14の上方に設けられている。
デフリングギヤ14は、デフリングギヤ14の下部が貯留部36に貯留された潤滑油の液面Lvよりも下方に位置するように設けられている。車両の走行(前進)と連動してデフリングギヤ14が矢印Y1方向に回転すると、デフリングギヤ14により貯留部36の潤滑油が掻き揚げられ、矢印Y2に示すように、オイルキャッチタンク31に送られる。
オイルキャッチタンク31に送られた潤滑油は、オイルキャッチタンク31からケース2内の被潤滑部に向けて滴下する。被潤滑部は、例えば、ギヤ10から14のそれぞれの噛み合い部等である。被潤滑部を潤滑した潤滑油は、貯留部36に流入する。
また、オイルキャッチタンク31に貯留された潤滑油の一部は、回転電機MG1,MG2に導かれて回転電機MG1,MG2の冷却に使用される。以下に、図1および図2を参照して、回転電機MG2を冷却する冷却装置について説明する。
図1は、駆動装置1における回転電機MG2付近の部分断面図(横断面図)、すなわち、回転電機MG2の軸線に直交する方向の部分断面図を示す。図2は、駆動装置1における回転電機MG2付近の部分断面図(縦断面図)、すなわち、回転電機MG2の軸線に沿う方向の部分断面図を示す。
図1において、符号41は、回転電機MG2のステータ40のリングを示す。リング41は、円筒形状をなしており、内部にコイル43が設けられている。図2に示すように、回転電機MG2は、軸線が水平な状態で配置されている。また、回転電機MG2は、駆動輪に接続されるドライブシャフト(図示せず)と回転電機MG2の軸線とが平行となるように設けられている。以下の説明において、右側、および左側とは、車両の進行方向右側、および進行方向左側をそれぞれ意味する。
図2に示すように、リング41における軸方向の両端部は、焼きばめによりコイルエンド44,45にそれぞれ嵌合している。リング41における軸方向の右側(図2において右側)に設けられた右側コイルエンド45の外径は、軸方向の左側(図2において左側)に設けられた左側コイルエンド44、およびリング41の外径と比較して、大きい。これは、右側コイルエンド45にリード等が設けられていることによる。ケース2の軸方向の左側の端部には、カバー25が設けられている。
オイルキャッチタンク31は、ケース2における軸方向の右側に設けられている。上述したように、デフリングギヤ14(図3参照)は、オイルキャッチタンク31の下方に設けられている。すなわち、デフリングギヤ14は、軸方向において、回転電機MG2の軸方向の一方の端部(右側の端部)に対応する位置に設けられている。デフリングギヤ14により掻き揚げられた潤滑油は、オイルキャッチタンク31に貯留される。オイルキャッチタンク31に貯留された潤滑油の一部が、回転電機MG1,MG2の冷却に使用される。ここで、以下に図4を参照して説明するように、オイルキャッチタンク31から回転電機MG2に潤滑油を供給する場合に、回転電機MG2の広範囲に潤滑油を行き渡らせることが困難であるという問題がある。
図4は、オイルキャッチタンク31から回転電機MG2に潤滑油を供給する方法の一例を示す図である。
図4に示すように、オイルキャッチタンク31から回転電機MG2に潤滑油を供給する場合に、矢印Y3に示すように、右側コイルエンド45の上部に潤滑油を供給し、供給された潤滑油を左側コイルエンド44へ向けて流す方法が考えられる。しかしながら、この場合、潤滑油が右側コイルエンド45から左側コイルエンド44へ向けて流れる間に、矢印Y4に示すように、リング41の外周部に沿って潤滑油が下方に流出してしまい、左側コイルエンド44まで潤滑油が供給されない場合がある。特に、右側コイルエンド45の外径がリング41の外径よりも大きい場合、リング41の上部とケース2との間隔Lが大きなものとなるため、リング41の外周部を軸方向に流れる間に、潤滑油が下方に流出しやすくなる。
これに対して、本実施形態の回転電機の冷却装置では、以下に説明するように、潤滑油が下方に流出し過ぎることを抑制して両側のコイルエンド44,45に潤滑油を供給することが可能であると共に、リング41の外周部に沿って適切に潤滑油を流出させることでステータ40の広範囲を潤滑油で覆うことができる。これにより、ステータ40の広範囲を冷却することが可能となる。
図1および図2に示すように、ケース2の内周部で、かつ、リング41の上方の部分には、軸方向に沿って一対の油溝(供給通路)22が設けられている。油溝22は、ケース2の内周部に設けられ、リング41から離間する方向、すなわち、回転電機MG2の径方向外方に向かう凹形状に形成された凹状部である。油溝22は、図2に示すように、軸方向に沿って、ケース2の左側の端部から、右側コイルエンド45の上方までの間の部分に設けられている。
一対の油溝22は、ケース2の内周部の周方向において最も高い位置を挟んで周方向の両側に設けられている。言い換えると、一対の油溝22の一方は、回転電機MG2の軸線よりも車両の前方側に設けられ、他方は、回転電機MG2の軸線よりも車両の後方側に設けられている。これにより、オイルキャッチタンク31から供給される潤滑油をステータ40における車両前方側と車両後方側とに均等に供給することが可能となる。
図2に示すように、ケース2には、オイルキャッチタンク31と油溝22とを連通する油孔(供給手段)21が設けられている。油孔21は、ケース2におけるステータ40の上方に軸方向に沿って設けられている。油孔21の一方の端部は、オイルキャッチタンク31と接続されており、他方の端部は、一対の油溝22のそれぞれに接続されている。油孔21と油溝22との接続部23(図2参照)は、ステータ40のリング41における右側コイルエンド45との接続部の上方に位置している。つまり、油孔21の長さは、オイルキャッチタンク31からリング41の上方に潤滑油を導くことが可能な範囲でできる限り短くされている。オイルキャッチタンク31から油孔21へ流出する潤滑油は、接続部23を通り、油溝22を介してリング41の上部に流下する。
本実施形態では、上記のように、オイルキャッチタンク31から回転電機MG2に至るまでの潤滑油の油路が、油孔21と油溝22とで構成されているため、低コストでかつコンパクトに油路を設けることができる。油孔21は、ケース2に孔加工を行うだけであり、油溝22は、ダイカスト粗材で成形可能であるため低コストで容易に設けることができる。ケース2自体に油路が設けられているため、潤滑油の油路をパイプ等で独立して設ける場合と比較して、油路をコンパクトに配置することができる。
リング41には、以下に説明するように、油溝22を介して供給された潤滑油がリング41の外周部に沿って流下する量を適切な量に抑制することを可能とする手段としてリブ42が設けられている。
図1および図2に示すように、ステータ40のリング41の外周部には、軸方向に沿って一対のリブ42が設けられている。リブ42は、リング41の外周部の上部に設けられ、ケース2へ近づく方向、すなわち、回転電機MG2の径方向外方に向かう凸形状に形成された凸状部である。図2に示すように、リブ42は、リング41における右側コイルエンド45との接続部から左側コイルエンド44との接続部まで設けられている。言い換えると、リブ42は、ステータ40の軸方向の一端部から他端部まで設けられている。これにより、後述する通路部51は、ステータ40の軸方向の端部において開口する形状を有する。
図1に示すように、一対のリブ42は、リング41の外周部の周方向において最も高い位置を挟んで周方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられている。すなわち、一対のリブ42のうち一方は、回転電機MG2の軸線よりも車両前方に設けられ、他方は、回転電機MG2の軸線よりも車両後方に設けられている。
また、リブ42は、リング41の外周部における油溝22と対向する部分よりも下方に設けられている。つまり、リブ42は、油溝22を介して供給された潤滑油がリング41の外周部に沿って流れる場合の周方向の流れ方向の下流側に設けられている。
図5は、図1におけるステータ40の上部を拡大した拡大図である。
図5に示すように、リブ42は、ケース2へ向けて突出する凸形状に形成されている。リブ42とケース2の内周部とにより、リング41の外周部とケース2の内周部との間隔が狭くなる一対の特定部50が形成される。また、一対の特定部50の間には、通路部51が形成されている。通路部51は、周方向における一対の特定部50の間、径方向におけるケース2の内周部と、リング41の外周部との間に形成されている。つまり、通路部51は、ケース2とリング41との間の空間部における、リブ42よりも周方向の上方に形成される。通路部51におけるリング41の外周部とケース2の内周部との間隔(符号L2参照)は、特定部50におけるリング41の外周部とケース2の内周部との間隔(リブ42とケース2との間隔)である所定の間隔よりも大きい。言い換えると、リング41の外周部の上部には、リング41とケース2との間の間隔が狭い一対の特定部50に挟まれて、リング41とケース2との間の間隔が広い通路部51が軸方向に沿って形成されている。
上記所定の間隔は、少なくとも潤滑油が通過可能な大きさとされている。これにより、油溝22を介して通路部51に供給された潤滑油が、特定部50においてリブ42とケース2との間を通過してリング41の外周部に沿って下方に流れることができる。よって、潤滑油でリング41の外周部を覆い、リング41の広範囲を均一に冷却することができる。
また、特定部50において、リブ42が設けられてリング41とケース2との間隔が狭くなっていることにより、図5に示すように、油溝22を介して通路部51に流入した潤滑油(矢印Y7参照)が、リング41の外周部に沿って下方に流れる場合に、その流れが特定部50において抑制される。よって、リブ42が設けられていない(リング41とケース2との間隔が狭くされた部分が無い)場合と比較して、潤滑油は、通路部51を介して軸方向の広い範囲に到達することができる。これにより、リング41における軸方向の広い範囲に潤滑油を供給することができる。
なお、上記所定の間隔は、通路部51に供給された潤滑油が、図2に矢印Y5で示すように左側コイルエンド44へ向けて流れる場合に、少なくとも左側コイルエンド44に到達可能とする値とされることが望ましい。あるいは、上記所定の間隔は、油溝22を介して供給された潤滑油が、左側コイルエンド44に到達するまでの間に通路部51から全て下方へ流出してしまうことを抑制可能な値とされることが望ましい。本実施形態では、リブ42とケース2の内周部との間の隙間の大きさ(径方向の間隔)である所定の間隔は、隙間を通過する潤滑油の流量を抑制し、通路部51に供給された潤滑油が左側コイルエンド44に到達可能となる値にされている。
よって、油溝22を介して通路部51に供給された潤滑油が、通路部51を流れる間に全て流れ落ちてしまうことなく、潤滑油の一部が左側コイルエンド44に到達することができる。これにより、左側コイルエンド44に到達した潤滑油により、左側コイルエンド44を冷却することができる。また、潤滑油が通路部51を流れる間に、潤滑油がリブ42とケース2との間の隙間を通って通路部51から流出し、矢印Y8に示すように、リング41の外周部に沿って流れ落ちる。これにより、リング41の外周部を冷却することができる。リブ42の高さ(所定の間隔)を適切な値としておくことで、通路部51から適量の潤滑油、例えば、リング41を冷却するために必要な量の潤滑油を流出させることができる。これにより、リング41を適切に冷却することができる。たとえば、通路部51から流出する潤滑油の流量の分布が軸方向に沿って概ね一定となるように、リブ42を設けることができる。
また、本実施形態では、リブ42は、リング41の外周部の周方向において最も高い位置を挟んで周方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられている。よって、リング41の外周部の両側(車両前方側と車両後方側と)にそれぞれ潤滑油を供給して両側を均等に冷却することができる。
なお、本実施形態では、リブ42は、リブ42の上部と右側コイルエンド45の上部との高さ方向の位置が等しくなるように設けられている。これにより、潤滑油が供給された場合に、通路部51における潤滑油のオイルレベルは、右側コイルエンド45の上部とほぼ一致するようになる。
本実施形態では、油溝22の軸方向の一端部が右側コイルエンド45の上方に設けられていることで、右側コイルエンド45に潤滑油を適切に供給できる。図2に矢印Y6で示すように、オイルキャッチタンク31から油孔21を介して油溝22に流入した潤滑油は、通路部51に供給されると共に、右側コイルエンド45の上部へ供給される。本実施形態では、上述したように、通路部51における潤滑油のオイルレベルが、右側コイルエンド45の上部と一致するため、右側コイルエンド45に供給された潤滑油は、通路部51に流れてしまうことなく、右側コイルエンド45の先端部(図2の右方向)へ流れ、右側コイルエンド45の全体を冷却する。
以上説明したように、本実施形態では、リング41の上部に軸方向に沿って一対のリブ42が設けられ、一対のリブ42の間に通路部51が形成されている。リブ42が設けられていることにより、通路部51に供給された潤滑油が、リング41の外周部に沿って周方向に流れ落ちる際の流量が多くなりすぎることが抑制される。これにより、潤滑油が、リング41の軸方向の広範囲に到達することができる。リブ42の高さを適切な値とすることで、潤滑油が左側コイルエンド44に到達して左側コイルエンド44を冷却することができる。また、リブ42とケース2との間に潤滑油が通過できる隙間が設けられていることで、通路部51から漏れた潤滑油により、リング41の外周部を冷却することができる。また、ケース2に設けられた油溝22の一端部が右側コイルエンド45の上部に設けられていることで、油溝22を介して供給される潤滑油の一部で右側コイルエンド45を冷却することができる。
以上により、本実施形態の回転電機の冷却装置によれば、回転電機MG2の広範囲を冷却することができる。さらに、潤滑油を回転電機MG2の各部に供給するための配管等を設置することなく、回転電機MG2の一部に供給した潤滑油を簡素な構成で回転電機MG2の広範囲に行き渡らせることが可能となる。
また、本実施形態によれば、単純なボーリング加工でケース2の内径加工を行うことができる。本実施形態では、回転電機MG2の広範囲に潤滑油を供給するために求められるリング41とケース2との間隔の調整がリブ42によりなされるものであるため、ケース2の内径は軸方向で一定(例えば、右側コイルエンド45の外径に対応する一定値)とすることができる。単純なボーリング加工でケース2の内径加工がなされることで、低コストで精度よくリング41とケース2との隙間を所望の大きさとすることができる。
なお、リブ42は、潤滑油が、左側コイルエンド44のより広範囲を覆うことができるように配置されることが望ましい。図6は、リブ42の周方向の配置について説明するための図である。
図6において、符号θは、MG軸4の軸線とリブ42とを結ぶ線分が鉛直軸となす角度、すなわち、MG軸4の中心軸線を原点とし、鉛直上方を角度0とした場合のリブ42の周方向の方向角である。リブ42は、リング41の外周部における最も高い位置から周方向に角度θだけ離れた位置に設けられている。
図7は、リブ42の周方向の方向角θが、小さすぎる場合の潤滑油の流れについて説明するための図である。方向角θが小さすぎる場合、通路部51を流れてきた潤滑油が、左側コイルエンド44に到達すると、左側コイルエンド44の周方向へは流れずに、矢印Y9で示すように、軸方向に流れ落ちてしまう。この場合、符号44aで示す部分、すなわち、左側コイルエンド44における車両前方側や後方側の部分を十分に冷却することができない。
図8は、リブ42の周方向の方向角θが、大きすぎる場合の潤滑油の流れについて説明するための図である。方向角θが大きすぎる場合、通路部51を流れてきた潤滑油が、左側コイルエンド44に到達すると、矢印Y10で示すように、主として左側コイルエンド44の周方向に流れ落ちてしまう。また、リブ42の位置が低くなるため、左側コイルエンド44の上部には潤滑油が流れなくなる。この場合、符号44bで示す部分、すなわち、左側コイルエンド44におけるMG軸4の上方の部分を十分に冷却することができない。
本実施形態では、潤滑油が、左側コイルエンド44のより広範囲を覆うことができるように、リブ42の周方向の方向角θが設定されている。図9は、リブ42の周方向の方向角θが適切である場合の潤滑油の流れの一例について説明するための図である。通路部51を流れてきた潤滑油は、左側コイルエンド44に到達すると、周方向および軸方向にバランスよく流れる。よって、左側コイルエンド44の広範囲を均一に冷却することが可能となる。方向角θは、例えば、約30度とすることができる。
なお、本実施形態では、油溝22を介して通路部51に供給される潤滑油がデフリングギヤ14により掻き揚げられた潤滑油である場合を例に説明したが、通路部51への潤滑油の供給方法はこれには限定されない。オイルポンプ等により供給された潤滑油が通路部51に供給されるものであってもよい。なお、デフリングギヤ14により掻き揚げられた潤滑油を回転電機MG2の冷却に用いる場合、潤滑油の供給経路がデフリングギヤ14の設置位置による制限を受ける。このため、回転電機MG2に潤滑油を供給する場合の通路部51における供給箇所が制限される場合がある。例えば、デフリングギヤ14が駆動装置1の軸方向における端部に設けられる場合には、回転電機MG2における潤滑油の供給箇所が、軸方向におけるデフリングギヤ14が設けられた側の端部付近となることがある。
本実施形態によれば、上記のように、回転電機MG2の軸方向の端部付近に潤滑油が供給される場合など、回転電機MG2の一部に潤滑油が供給される場合であっても、回転電機MG2の広範囲に潤滑油を行き渡らせることができる。さらに、リング41にリブ42を設けるだけの簡素な構成であるため、コスト低減を実現できる。
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について説明する。
上記第1実施形態では、リブ42がリング41の上部に設けられていたが、リング41の外周部において、リブ42が設けられる位置(周方向の位置)は、上部には限定されない。リブ42は、リブ42が設けられることにより、リブ42よりも周方向の上方にリング41とケース2との間の通路部51が形成される位置に設けられていればよい。例えば、リブ42の設置位置は、MG軸4(ステータ40の中心軸線)の鉛直下方を除く位置とすることができる。リブ42の設置位置に応じて、潤滑油を適切な量や適切な圧で通路部51に供給することで、回転電機MG2の広範囲に潤滑油を行き渡らせることが可能である。
なお、ステータ40の上部をより確実に冷却するためには、潤滑油がステータ40の上部を流れるようにリブ42が配置されていることが好ましい。このため、リブ42の設置位置を、例えば、MG軸4(ステータ40の中心軸線)の高さ方向の位置よりも上方とすることができる。言い換えると、リブ42が、車両に搭載された状態において、回転電機MG2の中心軸線よりも上方となる位置に設けられることができる。
また、上記第1実施形態では、リブ42が2本(一対)設けられていたが、リブ42の設置数は、これには限定されない。例えば、リング41の外周部に設けるリブ42の数は、1つであってもよい。この場合であっても、リブ42よりも周方向の上方に通路部51を形成することが可能である。通路部51に潤滑油を十分な量や十分な圧で供給することにより、通路部51におけるオイルレベルを高めれば、ステータ40における車両前後方向(図5における左右方向)の一方側だけでなく、他方側にも通路部51から潤滑油を流出させてステータ40の広範囲を冷却することが可能となる。
(第2実施形態)
図10を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第1実施形態では、一対のリブ42の間に通路部51が形成されていた。本実施形態では、これに代えて、ステータ40のリング41に設けられた溝部により通路部が構成される。
図10は、本実施形態に係る装置の要部断面図である。
図10に示すように、本実施形態のステータ40のリング41の外径は、ケース2の内径よりもわずかに小さい。すなわち、リング41の外周部と、ケース2の内周部とが近接している。ケース2には、上記第1実施形態(図5参照)と同様に、油溝22が設けられている。油溝22には、上記第1実施形態と同様に、油孔21(図示せず)を介して、オイルキャッチタンク31(図示せず)から潤滑油が流入する。
リング41の外周部における油溝22と対向する部分には、軸方向に沿って一対のリング側油溝46が形成されている。リング側油溝46は、ケース2から遠ざかる方向、すなわち、回転電機MG2の径方向内方に向かう凹形状を有する凹状部をなしている。この場合、リング41の外周部とケース2の内周部との隙間における、リング側油溝46の周方向両側の部分が、特定部50であり、リング側油溝46が通路部52として機能する。
特定部50におけるリング41の外周部とケース2の内周部との間の間隔である所定の間隔は、油溝22を介して通路部52に供給された潤滑油が、各コイルエンド44,45まで到達可能な値とされている。言い換えると、所定の間隔は、潤滑油が各コイルエンド44,45に到達するまでの間に通路部52から全て下方へ流出してしまうことを抑制可能な値である。よって、油溝22を介して通路部52に供給された潤滑油は、通路部52を流れる間に全て流れ落ちてしまうことなく、各コイルエンド44,45に到達することができる。これにより、各コイルエンド44,45を冷却することができる。
また、上記所定の間隔は、少なくともリング41とケース2との間を潤滑油がリング41の外周部に沿って流れ落ちることができる値とされている。よって、通路部52から漏れてリング41の外周部に沿って流れ落ちる潤滑油(矢印Y11参照)により、リング41の外周部を冷却することができる。上記所定の間隔を適切な値としておくことで、通路部52から適量の潤滑油、例えば、リング41の外周部を冷却するために必要な量の潤滑油を周方向に流出させることができる。これにより、リング41の外周部を適切に冷却することができる。リング41の外径は、例えば、右側コイルエンド45の外径と同じ径にすることができる。
本実施形態のリング側油溝46のように、リング41に溝部を設ける方法によれば、簡単な加工で容易に通路部52を設けることができる。
なお、リング41において、リング側油溝46が設けられる位置(周方向の位置)は、上部には限定されないが、ステータ40の上部をより確実に冷却するためには、潤滑油がステータ40の上部を流れるようにリング側油溝46が配置されていることが望ましい。リング側油溝46の設置位置を、例えば、MG軸4(ステータ40の中心軸線)の高さ方向の位置よりも上方とすることができる。言い換えると、リング側油溝46が、車両に搭載された状態において、回転電機MG2の中心軸線よりも上方となる位置に設けられることができる。
また、リング側油溝46の数は、2には限定されない。例えば、リング41の外周部に設けられるリング側油溝46の数は、1つであってもよい。この場合、ステータ40における車両前後方向のいずれにも潤滑油を流出させることが可能な位置、例えば、ステータ40の中心軸線の上方にリング側油溝46が設けられることが望ましい。
(第3実施形態)
図11を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第2実施形態では、通路部52が、ステータ40のリング41に設けられた溝部であった。これに代えて、本実施形態では、ケース2に設けられた溝部により通路部が構成される。
図11は、本実施形態に係る装置の要部断面図である。
図11に示すように、本実施形態のステータ40のリング41の外径は、上記第2実施形態と同様に、ケース2の内径よりもわずかに小さい。すなわち、リング41の外周部と、ケース2の内周部とが近接している。ケース2の内周部におけるステータ40の上方の部分には、軸方向に沿って一対の油溝24が設けられている。油溝24は、リング41から遠ざかる方向、すなわち、回転電機MG2の径方向外方に向かう凹形状を有する凹状部をなしている。この場合、リング41の外周部とケース2の内周部との隙間における、油溝24の周方向両側の部分が、特定部50であり、油溝24が通路部53として機能する。油溝24には、上記第1実施形態の油孔21と同様の油孔(図示せず)を介して、オイルキャッチタンク31(図示せず)から潤滑油が供給される。
特定部50におけるリング41の外周部とケース2の内周部との間の間隔である所定の間隔は、通路部53に供給された潤滑油が、各コイルエンド44,45まで到達可能な値とされている。言い換えると、所定の間隔は、潤滑油が各コイルエンド44,45に到達するまでの間に通路部53から全て下方へ流出してしまうことを抑制可能な値である。よって、通路部53に供給された潤滑油は、通路部53を流れる間に全て流れ落ちてしまうことなく、各コイルエンド44,45に到達することができる。これにより、各コイルエンド44,45を冷却することができる。
また、上記所定の間隔は、少なくともリング41とケース2との間をリング41の外周部に沿って潤滑油が流れ落ちることができる値とされている。よって、通路部53から漏れてリング41の外周部に沿って流れ落ちる潤滑油(矢印Y12参照)により、リング41の外周部を冷却することができる。上記所定の間隔を適切な値としておくことで、通路部53から適量の潤滑油、例えば、リング41の外周部を冷却するために必要な量の潤滑油を流出させることができる。これにより、リング41の外周部を適切に冷却することができる。リング41の外径は、例えば、右側コイルエンド45の外径と同じ径にすることができる。
本実施形態のように、油溝24を通路部53とする方法によれば、通路部53を設けるための加工をステータ40のリング41に施す必要がなく、ケース2の加工のみで済む。ケース2の油溝24は、ダイカスト粗材で成形可能であるため、通路部53を設けるためのコストを低減することができる。
なお、ケース2において、油溝24が設けられる位置(周方向の位置)は、上部には限定されないが、ステータ40の上部をより確実に冷却するためには、潤滑油がステータ40の上部を流れるように油溝24が配置されていることが望ましい。油溝24の設置位置を、例えば、MG軸4(ステータ40の中心軸線)の高さ方向の位置よりも上方とすることができる。言い換えると、油溝24が、車両に搭載された状態において、回転電機MG2の中心軸線よりも上方となる位置に設けられることができる。
なお、油溝24の数は、2つには限定されない。例えば、ケース2の内周部に設けられる油溝24の数は、1つであってもよい。この場合、ステータ40における車両前後方向のいずれにも潤滑油を流出させることが可能な位置、例えば、ステータ40の中心軸線の上方に油溝24が設けられることが望ましい。
(上記各実施形態の変形例)
上記各実施形態の変形例について説明する。
本変形例では、上記各実施形態のケース2に設けられた一対の油溝22,24における軸方向の端部に、油溝22,24同士を連通する連通油路が設けられる。これにより、以下に説明するように、油溝22,24の端部における潤滑油の油圧を低下させ、油溝22,24から潤滑油が噴出することを抑制することができる。以下に、第2実施形態(図10)の油溝22に連通油路が設けられる場合を例に説明する。
図12は、本変形例に係る装置における回転電機MG2の軸方向の端部の断面図である。図13は、本変形例に係る装置の縦断面図である。図12および図13に示すように、油溝22における軸方向の端部(本例では、左側の端部)には、油溝22同士を連通する連通油路22aが設けられている。連通油路22aは、ケース2の軸方向の端部2aにおける一対の油溝22の間の部分に設けられている。ケース2の内周部における一対の油溝22の間の部分において、軸方向の端部は、軸方向の端部以外の部分と比較して、リング41との間の間隔が大きくされている。言い換えると、ケース2の内周部における軸方向の端部には、一対の油溝22同士の間で潤滑油を流通させることが可能な連通油路22aが形成されている。
油孔21を介して多くの潤滑油が供給された場合など、潤滑油のオイルレベルが油溝22まで上昇した場合、通路部52の油圧が上昇し、通路部52の軸方向の端部において、潤滑油が勢いよく流れ出して(噴出して)しまい、コイルエンド44,45の広範囲に潤滑油を供給することができなくなる可能性がある。これに対して、本変形例のように、油溝22の軸方向の端部同士を連通する連通油路22aが設けられることで、油溝22における軸方向の端部では、上記端部以外の部分と比較して断面積(流路面積)が大きなものとなるため、油圧を低下させることができる。
その結果、油溝22の軸方向の端部において、潤滑油が軸方向に噴出してしまうことを抑制し、コイルエンド44,45の表面の広範囲に潤滑油を供給してコイルエンド44,45を効果的に冷却することができる。また、連通油路22aが設けられることにより、軸方向の端部において、通路部52や油溝22からだけでなく、連通油路22aからも潤滑油をコイルエンド44,45へ流出させることができる。よって、より確実にコイルエンド44,45の広範囲に潤滑油を供給することができる。
連通油路22aは、ダイカスト粗材で油溝22と一体成形ができるため、コストの増加を伴うことなく、連通油路22aを設けることができる。