JP5227223B2 - 細胞培養支持体 - Google Patents
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(1)ディスパーゼは菌由来のものであり、回収された細胞シートを十分に洗浄する必要性があること。
(2)培養された細胞ごとにディスパーゼ処理の条件が異なり、その処理に熟練が必要であること。
(3)ディスパーゼ処理により培養された表皮細胞が病理学的に活性化されること。
(4)ディスパーゼ処理により細胞外マトリックスが分解されること。
(5)そのためその細胞シートを移植された患部は感染され易いこと。
(1)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、
(2)培養した前眼部関連細胞シートまたは3次元構造体を高分子膜に密着させ、及び
(3)そのまま高分子膜と共に剥離する
ことを特徴とする前眼部関連細胞シートまたは3次元構造体の製造法を提供する。
更に加えて、本発明は、深部まで欠損及び/または創傷した組織に対し、上記前眼部関連細胞シートまたは3次元構造体を移植することを特徴とする治療法を提供する。
更に加えて、本発明は、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子が被覆されたA領域と、細胞と親和性の低い高分子が被覆されているB領域の2領域を有する細胞培養支持体を提供する。
(1)細胞と親和性の低い高分子が被覆されている領域、
(2)A領域と異なる量の温度応答性高分子が被覆されている領域、
(3)A領域と異なる温度に応答する高分子が被覆されている領域
のいずれか、または(1)〜(3)の任意の2つもしくは3つの組み合わせからなるB領域の2領域を表面に持つことを特徴とするものである。
(1)高分子膜と密着した細胞シートを細胞培養支持体に付着させ、その後培地を加えることで高分子膜を細胞シートからはがし、そして更に別の高分子膜と密着した細胞シートを付着させることを繰り返すことで細胞シートを重層化させる方法。
(2)高分子膜と密着した細胞シートを反転させ細胞培養支持体上で高分子膜側で固定させ、細胞シート側に別の細胞シートを付着させ、その後培地を加えることで高分子膜を細胞シートからはがし、再び別の細胞シートを付着させる操作を繰り返すことで細胞シートを重層化させる方法。
(3)高分子膜と密着した細胞シート同士を細胞シート側で密着させる方法。
(4)高分子膜と密着した細胞シートを生体の患部に当て、細胞シートを生体組織に付着させた後、高分子膜をはがし、再び別の細胞シートを重ねていく方法。
市販のポリスチレン製細胞培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製 ファルコン(FALCON)3001ペトリディッシュ(直径3.5cm)上に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを40%(実施例1)、50%(実施例2)になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.10ml塗布した。その塗布面上に直径2cmの孔を1つ持つ直径3.5cmの金属製マスクをのせ、そのままの状態で0.25MGyの強度の電子線を照射し、培養皿表面にN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(PIPAAm)を円形状(島状の部分。マスク下の部分は電子線が当たらず何も被覆されない海部分となる。)に固定化した。次に、その金属製マスクをはずし、20%になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.10ml塗布した。そして、今度は、その円形部分にのみ直径2cmの円形の金属製マスクをおいて、そのままの状態で0.25MGyの強度の電子線を照射することで、円形PIPAAm層の外側にアクリルアミドポリマーを固定化した。照射後、金属製マスクをはずし、イオン交換水により培養皿を洗浄し、残存モノマーおよび培養皿に結合していないPIPAAmを取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、エチレンオキサイドガスで滅菌することで細胞培養支持体材料を得た。ここで島部分のPIPAAmの被覆量は、マスクを使わずに上と全く同条件で作製した細胞培養支持体材料より求めた。その結果、この条件下であれば、基材表面に温度応答性高分子が1.6μg/cm2(実施例1)、2.2μg/cm2(実施例2)被覆されることが分かった。得られた細胞培養支持体材料上にて、常法により正常ウサギ角膜上皮細胞を培養した(使用培地:コルネパック(クラボウ(株)製。37℃、5%CO2下)。その結果、何れの細胞培養支持体材料上の角膜上皮細胞においても中心部の円形部分にのみ正常に付着し、増殖した。培養14日後、培養した細胞の上に直径2cmのポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜をかぶせ、培地を静かに吸引し、細胞培養支持体材料ごと20℃で30分インキュベートし冷却することで、何れの細胞培養支持体材料上の細胞もそのかぶせた膜と共に剥離させられた。かぶせた膜は何れの細胞シートから容易に剥がすことができた。また、剥離された細胞シートは、細胞、細胞間のデスモソーム構造、及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質が保持され、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
実施例1の細胞培養支持体上で、培地をマイトマイシンCを含む通常のグリーンらの培地(DMEM+AB(フィーダーレイヤー作製用)、ヒト新生児由来角化表皮細胞用)。に変更する以外は同様な方法で正常ウサギ角膜上皮細胞を培養させた。その結果、培養支持体材料上の角膜上皮細胞は中心部の円形部分にのみ正常に付着し、増殖し、さらに重層化した。培養16日後、細胞培養支持体材料ごと20℃で30分インキュベートし冷却することで重層化角膜上皮細胞を剥離させられた。剥離された重層化角膜上皮細胞(3次元構造体)は、円形で細胞、細胞間のデスモソーム構造、及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質が保持され、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
ウサギ角膜より角膜内皮細胞を常法に従い回収した。実施例1のポリイソプロピルアミド(PIPAAm)をグラフト化培養皿上に2×106cells/cm2の細胞密度で播種し、常法に従って培養した(使用培地:10%ウシ胎児血清を含むDMEM、37℃、5%CO2下)。その結果、この角膜内皮細胞においても中心部の円形部分にのみ正常に付着し、増殖した。10日後、角膜内皮細胞がコンフルエントになったことを確認した後、実施例1と同様に培養した細胞の上に直径2cmのポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜をかぶせ、培地を静かに吸引し、細胞培養支持体材料ごと20℃で30分インキュベートし冷却することで、細胞をそのかぶせた膜と共に剥離させられた。かぶせた膜は細胞シートから容易に剥がすことができた。また、剥離された細胞シートは、細胞、細胞間のデスモソーム構造、及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質が保持され、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
実施例2の細胞培養支持体材料の製造法において、まず直径2cmの円形の金属製マスクを培養皿の中心に置き、PIPAAmを周囲に固定化し、次に直径2cmの円形の孔のあいた金属製マスクをかぶせることでポリアクリルアミドを中心部に固定化した細胞培養支持体材料(実施例1の内側の高分子層と外側の高分子層とが逆なものとなる。)を製造した。孔の外側のPIPAAmの被覆量は2.1μg/cm2であった。次に、ウサギの眼より結膜上皮細胞を常法に従い回収した。先のグラフト化培養皿上に2×105cells/cm2の細胞密度で播種し、常法に従って培養した(使用培地:10%ウシ胎児血清を含むMEM、37℃、5%CO2下)。その結果、播種された結膜上皮細胞は中心部の周囲のみに正常に付着し、増殖した。10日後、結膜上皮細胞がコンフルエントになったことを確認した後、実施例1と同様に培養した細胞の上にポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜をかぶせ、培地を静かに吸引し、細胞培養支持体材料ごと20℃で30分インキュベートし冷却することで、細胞をそのかぶせた膜と共に剥離させられた。かぶせた膜は細胞シートから容易に剥がすことができた。また、剥離された結膜上皮細胞シートは、細胞、細胞間のデスモソーム構造、及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質が保持され、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
冷却せずに静かに培地を除去した実施例2の培養皿上の角膜上皮細胞シートに対し、実施例1で剥離された角膜上皮細胞シートを直ちに重ねた。その後、実施例3で用いた培地を静かに入れ、密着した高分子膜を剥がした。この状態で2日間培養することで、角膜上皮細胞の重層化シート(3次元構造体)を得た。得られた角膜上皮細胞の重層化シートは実施例3と同様に低温処理を施すことにより支持体表面から剥離した。剥離された角膜上皮細胞の重層化シート(3次元構造体)は、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
冷却せずに静かに培地を除去した実施例4の培養皿上の角膜内皮細胞シートに対し、実施例3で剥離された角膜上皮細胞の重層化シートを直ちに重ねた。その後、実施例3で用いた培地を静かに入れ、密着した高分子膜を剥がした。この状態で2日間培養することで、角膜内皮細胞層を有する角膜上皮細胞の重層化シート(3次元構造体)を得た。得られた角膜上皮細胞の重層化シートは実施例3と同様に低温処理を施すことにより支持体表面から剥離した。剥離された3次元構造体は、細胞、細胞間のデスモソーム構造、及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質が保持され、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
冷却せずに静かに培地を除去した実施例4の培養皿上の角膜内皮細胞シートに対し、まず5%IV型コラーゲン溶含有培地(コラーゲンが含まれること以外は実施例4の培地と同一のもの。)を入れ、そのまま20分間静置させた。その後、再び冷却せずに静かに培地を除去した。培養皿の上に残された角膜内皮細胞シートに対し、実施例3で剥離された角膜上皮細胞の重層化シートを直ちに重ねた。その後、実施例3で用いた培地を静かに入れ、密着した高分子膜を剥がした。この状態で2日間培養することで、角膜内皮細胞層を有する角膜上皮細胞の重層化シート(3次元構造体)を得た。得られた角膜上皮細胞の重層化シートは実施例3と同様に低温処理を施すことにより支持体表面から剥離した。剥離された3次元構造体は、1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
[実施例9]
実施例3で得られた角膜上皮細胞の重層化シート(3次元構造体)を角膜上皮細胞部を欠損させたウサギに常法に従い移植した。その際、角膜上皮細胞の重層化シートを直接、創傷部へ縫合した。約3週間後、抜糸した結果、角膜上皮細胞の重層化シートは眼球に良好に生着していた。
Claims (3)
- 水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子が被覆されたA領域と、B領域の2領域を有する細胞培養支持体であって、
温度応答性高分子がポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)であり、その被覆量が0.8〜3.0μg/cm2 であり、
B領域は、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、セルロース、シリコーン高分子、及びフッ素高分子からなる群より選択される高分子で被覆される、
前記細胞培養支持体。 - B領域は、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、セルロース、シリコーン高分子、及びフッ素高分子からなる群より選択される高分子で被覆される、請求項1記載の細胞培養支持体。
- 高分子が被覆された領域の形態が、上部から観察して、(1)ラインとスペースからなるパターン、(2)水玉模様のパターン、(3)格子状のパターンのいずれか、または(1)〜(3)の任意の2つもしくは3つの組み合わせからなるものである、請求項1または2記載の細胞培養支持体。
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