JP5224891B2 - バスキュラーアクセスカテーテル - Google Patents

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Description

本発明は、血液浄化療法や輸液・薬剤の投与など、医療上の治療の目的で使用される血管内留置用のバスキュラーアクセスカテーテルに関するものである。
従来、腎不全、糖尿病、薬物中毒、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、多臓器不全(MOF)、肝炎、膵炎等の疾病のために血液浄化を必要とする患者に対しては、血管内にカテーテルを留置して血液を脱返血するバスキュラーアクセスカテーテルが使用されている(非特許文献1参照)。
このバスキュラーアクセスカテーテルは通常、1本のカテーテルの内腔が2層のルーメンに分かれ、1つのルーメンから血液を吸引して体外に排出し、人工腎臓等を介して浄化された血液が、もう一つのルーメンから体内に戻されるダブルルーメンカテーテルがもっとも多く使用されている。また、近年、前記ダブルルーメンカテーテルに薬剤等の投与やCVP(中心静脈圧)測定に用いる第3のルーメンを付与したトリプルルーメンカテーテルの使用割合も増えてきている。
ダブルルーメンカテーテルの形状としては、内腔が1つの隔壁を介してサイドバイサイド状に分かれ、返血ルーメンは先端孔まで通じ、脱血ルーメンの開口部はカテーテル外側の壁面に設けられた側孔となっているダブルアクシャル型(非特許文献2参照)や、アウターカテーテルの内腔に着脱式のインナーカテーテルを挿入したコアクシャル型(非特許文献3参照)、さらにはダブルアクシャル型の脱血ルーメンが先端孔となり、脱返血側の先端が段差状となるエンドホール型の形状(非特許文献2参照)が開発され臨床現場で広く使用されている。
トリプルルーメンカテーテルの形状は、ダブルルーメン同様にサイドバイサイド型(例えば特許文献1参照)で脱返血ルーメンを有し、先端部に第3のルーメンの開口部を有している。また、脱返血ルーメンの開口部および第3のルーメンの開口部がエンドホール型のトリプルルーメンカテーテルも開発されている(特許文献2参照)。更には脱返血ルーメンの開口部、第3および第4のルーメンの開口部がエンドホール型の4ルーメンカテーテルも開発されている(特許文献3参照)。また、脱血ルーメンの開口部から先の延長部に広径部を有するダブルルーメンカテーテル(特許文献4)が開発されている。
前記のカテーテルは、それぞれ長所と短所を有しているが、共通する最も大きな問題点として、カテーテル先端部近傍の脱血ルーメンの開口部が、留置された血管の血管壁に接触して、いわゆる“血管へばりつき現象”を起こし、カテーテル内腔の血液の流量が低下する現象が挙げられる。この血管へばりつき現象を解決するために、従来、種々の提案がなされている。
その中の代表的なものとしては、脱血ルーメン側壁の対向した位置に一対の側孔を設けるもの(例えば、特許文献1、6参照)、脱血ルーメン開口部を基部側手前にてエンドホール型とし(例えば、特許文献2、3参照)、さらには開口部端面の向きを軸方向に対して傾斜させるもの(例えば、特許文献7参照)、また、脱血ルーメン開口部をエンドホール型以外の特殊な形状とするもの(例えば、特許文献5参照)や脱血ルーメンの開口部のある位置から先端側のカテーテル本体の形状を断面積の小さい狭径部とそれに引続く断面積の大きい広径部とからなるものにするもの(例えば、特許文献4参照)などである。
平沢油平:透析療法マニュアル(改訂第5版)、170、日本メディカルセンター(1999) 阿岸鉄三、天野泉:ブラッドアクセスインターベンション治療の実際、18、秀潤社(1999) 宮形滋、本郷隆二、松崎章、加藤隆三、小林浩悦、原田忠、土田正義:ダブルルーメンカテーテル型UKカテーテルの考案、日本透析学会雑誌5(4)、220(1990) 特開平9−276410号公報 特開2007−202901号公報 特開2008−441号公報 特開2001−340466号公報 特開2005−118361号公報 特開2006−95134号公報 特開2001−104486号公報
しかしながら、上記した種々の提案に基づくカテーテルにおいても、血管へのへばりつき現象の防止・抑制効果は、臨床での成績が依然として低いものであった。
血液浄化療法中に、このような血液の流量が低下する現象は、医療従事者、患者双方に肉体的、精神的に多大な負担を強いるものであるばかりでなく、最悪の場合カテーテルの交換を余儀なくされるなど医療経済上も大きな損失を招くものであった。
本発明は、主に血液浄化療法に使用されるバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、安定した血流量を得る為に大きな障害となっていたカテーテル先端の脱血ルーメンの開口部の“血管へばりつき現象”を回避し得るバスキュラーアクセスカテーテルを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、バスキュラーアクセスカテーテルが血管内に留置された場合には、当該カテーテルが「血流」という流れの中にあることに着眼し、従来にない斬新な原理に基づきカテーテル先端近傍の形状を工夫することにより、脱血ルーメンの開口部と血管壁との間隔を大きくすることができ、結果的に脱血ルーメン開口部への血管のへばりつき現象を回避することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、長手方向に設けられた隔壁により脱血ルーメンと返血ルーメンの少なくとも2つのルーメンを備えるバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、カテーテル先端部近傍の形状を、当該バスキュラーアクセスカテーテルが血管内に留置され血流中に置かれたときに、脱血ルーメンの開口部が位置する側とは反対側の方向へ揚力が発生し得る形状としたことを特徴とするバスキュラーアクセスカテーテルを要旨とするものであり、好ましくは、脱血ルーメンの開口部が位置する側とは反対側の方向へ揚力が発生し得る形状が、脱血ルーメンの開口部の位置する側が凹状となるように屈曲又は湾曲している形状であるものであり、また好ましくは、返血ルーメンの開口部がカテーテル先端まで貫通してエンドホール型となり、脱血ルーメンの開口部がカテーテル先端からカテーテル基部側へ1〜11cm隔てた位置にあり、この脱血ルーメンの開口部より先端側の形状が揚力を発生し得る形状となっている上記したバスキュラーアクセスカテーテルであり、さらに好ましくは、上記したバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、返血ルーメンの開口部の端面が、カテーテル本体の長手方向に対し、脱血ルーメンの開口部の位置する側へ傾斜しているものである。
本発明によれば、カテーテルの脱血ルーメンの開口部から生じる血液の吸引力により脱血ルーメンの開口部へ血管壁が密着する現象(血管へばりつき現象)を今まで以上に防止・抑制することができる一方、複雑な形状でないために簡便に作製することができる。さらに、カテーテル挿入時においてもスムーズな挿入が可能なものである。また、先端の返血ルーメンの開口部の向きをカテーテル長手方向に対して脱血ルーメンの開口部側に傾斜させることによる吐出圧が加わることにより、血管へばりつき現象をより確実に防ぐことができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるバスキュラーアクセスカテーテルは、1本のカテーテル内を長手方向に仕切って設けた少なくとも2つのルーメンを通じて血液を脱返血するカテーテルであって、カテーテル先端近傍の形状を、脱血ルーメンの開口部が位置する側とは反対側の方向へ揚力が発生する形状としたことを特徴とするものである。ここで、「揚力」とは、流れの中に置かれた物体が流れから受ける力のうち、流れと垂直な方向に働く力をいい、本発明においては血流が「流れ」に相当し、カテーテルが「物体」に相当することになる。したがって、カテーテル先端近傍において、脱血ルーメンの開口部がある側と反対方向へ揚力を発生させることができれば、カテーテル先端近傍が脱血ルーメンの開口部がある側と反対方向へ移動することとなり、その結果、脱血ルーメンの開口部が血管壁より離れることとなる。
本発明において、カテーテルが血管内に留置され血流中に置かれたときに、脱血ルーメンの開口部が位置する側とは反対側の方向へ揚力が発生し得る形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテーテルの先端近傍の形状が、飛行機の翼、あるいはヨットのセールのように、脱血ルーメンの開口部の位置する側が凹状となるように血流に対してある角度(以下、この角度を「迎え角」という。)をもって屈曲又は湾曲した形状が挙げられる。
これらの形状について、返血ルーメンの開口部がカテーテル先端まで貫通してエンドホール型となり、脱血ルーメンの開口部がカテーテル先端から基部側へ1〜11cmほど隔てた位置にあるダブルルーメンカテーテルを例にとって図面に基づき説明する。
まず初めにカテーテル先端近傍が屈曲した形状のものについて説明する。
図1はそのようなダブルルーメン型バスキュラーアクセスカテーテル1の全体図を示しており、正面図である。図中、2はカテーテル本体であり、その先端部に返血ルーメンの開口部11がエンドホール型で外部と挿通している。10は脱血ルーメンの開口部を示し、開口部の端面はカテーテル本体2の長手方向に対しある角度で傾斜している。この脱血ルーメン開口部10より先端側は狭径部13を形成し、その狭径部13におけるある箇所を屈曲点としてそこから先端部が血流に対し迎え角をもって脱血ルーメン開口部側へ屈曲した形状12を呈している。9は、脱血ルーメンの吸引圧が開口部10に集中しないよう、また、万一、開口部10が閉塞した際の緊急ルートとなるよう開口部10とは別に設けた側孔を表し、14はカテーテル先端が血管壁に接触した際に血管壁を傷つける等の物理的な影響を少なくするために先端の材質をカテーテル本体2の材質よりも柔らかくしたカテーテル先端柔軟部であることを表している。
カテーテル本体2から基部側の構成は従来のダブルルーメンカテーテルと同様の構成とすることができ、すなわち、分岐部3を経て両方のルーメンに対応する枝管4が伸び、脱血側ハブ5及び返血側ハブ6が接続されている。枝管4にはクランプ7が備わっている。8は、糸掛具である。
図2(a)は図1のバスキュラーアクセスカテーテルの先端部分を拡大した正面図であり、図2(b)は図2(a)の下面図である。図2(a)において、脱血ルーメン開口部10から先端側へ屈曲点までの距離をβ、屈曲点から先端までの距離をγ、カテーテル本体が血流と平行に位置しているとして、迎え角がαとなる。本発明においては、脱血ルーメン開口部より先端側の長さ(β+γ)は、使用目的やカテーテル外径の大きさにも拠るが、おおよそ10〜110mm、好ましくは10〜50mm、さらに好ましくは15〜35mmである。また、βとγの比率は、0≦β/γ<100であり、好ましくは、10≦β/γ≦95、さらに好ましくは20≦β/γ≦90である。β/γの値が100に近づくに従い、いわゆる“ダックテール”の形状となるが、この場合、脱血ルーメンの開口部10を血管壁より離す方向へ揚力を生じる形状ならばどのようなダックテール形状でもよく、滑らかにはね上がるような形状(図面では下向きにはね上がる)や突起状になったものも含まれる。
本発明において、迎え角αは、1度≦α<90度であり、好ましくは2度≦α≦60度であり、さらに好ましくは3度≦α≦45度である。
また、カテーテル先端部の返血ルーメン開口部11の端面が、カテーテル本体の長手方向の軸との間で形成する角度εは、特に限定するものではないが、開口部端面がこの図2(a)で下を向くほど返血流の吐出力により血管壁を押す力が大きくなることから、好ましくはカテーテル長手方向に対して0度≦ε≦90度がよく、より好ましくは0度≦ε≦70度であり、もっとも好ましくは0度≦ε≦50度である。
本発明において、カテーテル本体および脱血ルーメン開口部より先端側の狭径部の断面形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、図5に挙げたようなものが考えられる。図5は、本発明のバスキュラーアクセスカテーテルの断面形状を示しており、図1のカテーテル本体2のA−A’位置の断面図を(a)に、図2(b)の狭径部13B−B’位置の断面図を(b)、先端柔軟部14のC−C’断面図を(c)に示す。カテーテル本体の内腔は脱血ルーメン15と返血ルーメン16の2層にわかれ、脱血ルーメンの開口部10から先端部側の狭径部13は返血ルーメン16だけが延び、返血ルーメン16先端部ではほぼ真円状になっている。このような断面形状は従来からのエンドホール型カテーテルに多く採用されている。本発明においては、狭径部13においてより大きな揚力を得るために、断面形状をより扁平なものとするのが好ましい。
なお、脱血ルーメンの開口部10がエンドホール型の場合、その端面は、カテーテル長手方向に対して25度以上、90度未満の角度の傾斜がよく、更に好ましくは25度以上、45度未満がよい。
以上、説明したようなカテーテル先端近傍が屈曲した形状を有するカテーテルを血管内に留置すると、図4に示したような方向へ揚力が生じカテーテル先端部が移動することとなる。
次にカテーテル先端近傍が湾曲した形状のものについて説明する。
図3はそのような形状の一例を示すものである。その湾曲の程度を、曲率半径Rを用いて表すと、カテーテル長手方向に対して曲率半径Rは1〜100mmであり、より好ましくは2〜50mmであり、もっとも好ましくは10〜30mmである。また、脱血ルーメン開口部10から先端側へ、湾曲が開始する点までの距離をβ、その点から先端までの距離をγとすると、βとγの比率は、0≦β/γ<100であり、好ましくは、10≦β/γ≦95、さらに好ましくは20≦β/γ≦90である。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルについて、上述したようにダブルルーメンカテーテルを例にとって説明したが、マルチルーメンカテーテルの形状には脱返血ルーメン以外に薬剤投与やCVP測定用の第3、第4のルーメンを有しているものも含まれる。例えば、狭径部に第3のルーメンの開口部を設けた形状のもの(例えば、上記の特許文献2)、あるいは狭径部に第3及び第4のルーメンの開口部を設けた形状のもの(例えば、上記の特許文献3)が同様に用いることができる。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、脱血ルーメンの開口部以外に設けられる側孔9については、無くてもよく、1個以上設けられていてもよい。また、大きさはカテーテルの直径よりも大きくなければよいが、通常は1〜3mmの大きさである。脱血側ルーメンの側孔位置は特に限定されない。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルの材質は、体内、特に血管内に留置して安全な弾性のある材質であればよく、例えば、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、カテーテル本体が柔軟な方が揚力発生部に揚力が発生した時にその力を受けて脱血ルーメンの開口部を血管壁より離す効果が得られやすいため、体外では適度な硬度を保ち体内で柔軟性を有するポリウレタンが好ましい。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルは、皮膚のカテーテル刺入部から血管の刺入部までの間の皮下組織と密着させる機能を有するカフがカテーテルの表面の1箇所、または2箇所以上取り付けられているものであってもよい。カフの形状としては、繊維の綿状のもの、スポンジ状のもの、カテーテルの一部が盛り上がったもの等が挙げられ、材質としては、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、アクリル等の合成高分子化合物または綿、絹、キチン等の天然高分子化合物等が挙げられる。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルは、皮下組織または血管への挿入を容易にするために基材表面を親水性高分子化合物でコーティングするなどの潤滑性処理が施されているもの(例えば、特開平10−248919号公報参照)であってもよい。潤滑性処理する方法は多くの方法が開発されているが、特にどの方法を選択しても良い。また、潤滑性処理の範囲は人体に接触する部分、またはカテーテルを留置する用具等に接触する部分であれば特にどの部分であってもよい。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルは、留置中に血液と接触して血栓が形成されるのを防ぐために、抗血栓処理が施されていてもよい。抗血栓処理はウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチベーターを化学結合法により基材のカテーテル表面に固定化する方法(詳細は、特許第1406830号公報参照)、ヘパリン等の抗凝固因子をカテーテル表面に固定化する方法等様々な方法が開発されているが、特定の方法に限定されるものではない。また、抗血栓処理の範囲は生体内と接触する部分であれば、カテーテルの内面、外面またはその両方であってもよい。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルは、カテーテル留置中に細菌や真菌、ウイルスなどに感染することを防止するため、基材のカテーテル表面に抗菌剤や、抗生物資などがコーティングしているもの(例えば、特開2001−276210号公報参照)や、抗菌剤が基材に直接混練されているもの(例えば、特開平8−157641号公報参照)であってもよい。
本発明の作用原理について説明する。
血管内の血流は本発明のバスキュラーアクセスカテーテルに設けられた揚力発生形状にて、図4に示すように揚力発生形状の下側の流れは揚力発生形状によって下向きに曲げられ流れていく。これは揚力発生形状が流れを下向きに押しているからであり、その結果作用反作用の原理により揚力発生部は逆方向に力を受けることになる。一方、揚力発生形状の上側の流れは揚力発生形状に沿って流れ、やや下向きに向かって向きを変えて流れていくという性質(流体の流れは曲面に沿って曲がるという性質(コアンダ効果))がある。このとき、揚力発生形状は流れを下向きに引っ張り下向きに曲げているため揚力発生部は代わりに逆向きの力を受けることになる。つまり、本発明の揚力を発生する形状によって流れを脱血側へ曲げることにより、揚力を得て脱血側開口部を血管壁より離すことが可能となる。
更には、血液浄化療法施行中では、先端の返血ルーメンの開口部よりカテーテル長手方向に対して脱血ルーメン側に角度がついた状態で排出される返血流の吐出力により血管壁からカテーテルの脱血ルーメンの開口部を離すことができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例1
図1、図2及び図5に示すように、外径4mmの断面形状図5(a)を有し、長さ25cmのポリウレタン製チューブをダブルルーメンのカテーテル本体2とするバスキュラーアクセスカテーテルを作製した。脱血ルーメンの開口部10から先端における狭径部は、半径2mmの半円形の断面形状図5(b)の形状を有し、先端になるに従いテーパーが付いて、先端の返血ルーメンの開口部は、断面形状図5(c)の形状を有し、外径2.2mm、内径1.6mmとなっている。カテーテル先端近傍の形状は、屈曲型とし、迎え角α=10度、β=10mm、γ=15mm、ε=80度とした。なお、脱血ルーメンの開口部10のカテーテル長手方向にたいする角度は30度とした。
実施例2
実施例1のバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、β=0mm、γ=20mmとした他は同様にしてバスキュラーアクセスカテーテルを作製した。
実施例3
実施例1のバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、迎え角α=20度、ε=70度とした他は同様にしてバスキュラーアクセスカテーテルを作製した。
実施例4
実施例1のバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、迎え角α=20度、γ=10mm、ε=0度とした他は同様にしてバスキュラーアクセスカテーテルを作製した。
実施例5
カテーテル先端近傍の形状を図3に示した湾曲型とし、曲率半径R=15mm、β=10mm、γ=12mm、ε=45度とした他は実施例1と同様にしてバスキュラーアクセスカテーテルを作製した。
比較例1
実施例1のバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、カテーテル本体が先端まで直線的に伸びた(迎え角α=0度)従来のものを作製した。
試験例1
図6に示すような模擬血管循環モデル装置を作製した。内径10mmのポリ塩化ビニル製チューブを模擬血管18に見立てて、その内腔19に実施例1〜5のバスキュラーアクセスカテーテルおよび比較例1のカテーテルを脱血側開口部が下側になるように留置し、チューブ内に37℃のグリセリン40%水溶液を擬似血液として3L/分の流速で流した際の脱血側開口部のリフトアップ距離L(図7参照)を測定した。
得られた結果を表1に示した。実施例1〜5のバスキュラーアクセスカテーテルにおいてはカテーテル脱血側開口部が1.0〜3.0mmリフトアップすることが確認された。これに対し比較例1ではカテーテル脱血側開口部は全くリフトアップしなかった。
試験例2
試験例1の条件下でさらに血液回路コネクター(返血側)22と血液回路コネクター(脱血側)23を透析回路に接続し、回路内流量(カテーテル流量)を200mL/分にて流したときの脱血側開口部のリフトアップ距離Lを測定した。
得られた結果を表2に示した。実施例1〜5は揚力と吐出力によりリフトアップ距離が試験例1の結果より増大し、2.5〜4.5mmとなった。一方、比較例1では試験例1同様リフトアップはまったく確認されなかった。
本発明のバスキュラーアクセスカテーテルの一例の全体を示す概略図である。 図1のバスキュラーアクセスカテーテルの先端部の形状を示す概略図である(a:正面図、b:背面図)。 本発明のバスキュラーアクセスカテーテルの他の例の先端部の形状を示す概略図である。 本発明のバスキュラーカテーテル先端部での血流の流れと揚力の関係を示す模式図である。 図1及び図2のバスキュラーアクセスカテーテルにおける断面形状を示す概略図である(a:A−A’、b:B−B’、c:C−C’)。 試験例において用いた模擬血液循環モデル装置を示す図である。 図6におけるカテーテル先端部付近を示す拡大図である。
符号の説明
1 バスキュラーアクセスカテーテル
2 カテーテル本体
3 分岐部
4 枝管
5 脱血側ハブ
6 返血側ハブ
7 クランプ
8 糸掛具
9 側孔
10 脱血ルーメンの開口部
11 返血ルーメンの開口部
12 揚力発生形状
13 狭径部
14 カテーテル先端柔軟部
15 脱血ルーメン
16 返血ルーメン
17 カテーテル
18 擬似血管
19 擬似血管内腔
20 恒温循環ポンプ
21 血流方向矢印
22 血液回路コネクター(返血側)
23 血液回路コネクター(脱血側)
24 カテーテル先端部

Claims (3)

  1. 長手方向に設けられた隔壁により脱血ルーメンと返血ルーメンの少なくとも2つのルーメンを備えるバスキュラーアクセスカテーテルにおいて、カテーテル先端部近傍の形状が、当該バスキュラーアクセスカテーテルが血管内に留置され血流中に置かれたときに、前記脱血ルーメンの開口部が位置する側とは反対側の方向へ揚力が発生し得る形状であって、前記脱血ルーメンの開口部の位置する側が凹状となるように屈曲又は湾曲している形状であることを特徴とするバスキュラーアクセスカテーテル。
  2. 返血ルーメンの開口部がカテーテル先端まで貫通してエンドホール型となり、脱血ルーメンの開口部がカテーテル先端からカテーテル基部側へ1〜11cm隔てた位置にあり、この脱血ルーメンの開口部より先端側の形状が揚力を発生し得る形状となっている請求項1記載のバスキュラーアクセスカテーテル。
  3. 返血ルーメンの開口部の端面が、カテーテル本体の長手方向に対し、脱血ルーメンの開口部の位置する側へ傾斜している請求項1又は2記載のバスキュラーアクセスカテーテル。
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