しかしながら、上記特許文献1による場合、光ファイバ同士を接合する際に粘着性接続部材が光ファイバの外周面側にはみ出し、軸ずれやごみの付着の原因となる。
また、上記特許文献2の場合、光ファイバの端面全体に液状屈折率整合体を吸着させて固化し、他の光ファイバに接続するため、接続する光ファイバ同士の端面間の距離が大きくなり、接続損失が大きくなる可能性がある。また、光ファイバ同士を接続する際に屈折率整合体が光ファイバの外周面側にはみ出し、軸ずれやごみの付着の原因となる。
本発明は上記事実を考慮し、光ファイバ同士を接続する際の接続損失を低減し、軸ずれやごみの付着を抑制することができる光ファイバ端面構造、光ファイバ接続構造、光コネクタ、メカニカルスプライス及び光ファイバ接続方法を得ることが目的である。
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る光ファイバ端面構造は、第1の光ファイバの端面に第2の光ファイバの端面が接続される光ファイバ端面構造であって、前記第1の光ファイバの端面のコア部を含み、かつ前記端面の縁を除く領域に屈折率整合剤が付着されており、前記屈折率整合剤の表面に非粘着性で、かつ一部に切れ目が設けられた表面層が形成されているものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面のコア部を含み、かつ当該端面の縁を除く領域に屈折率整合剤が付着されており、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続する。その際、第1の光ファイバの端面の縁を除く領域に屈折率整合剤が付着されていることにより、屈折率整合剤が第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間から第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出しにくい。また、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤及び表面層を介して第2の光ファイバの端面が接続されたときに、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)が低減される。さらに、第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面に屈折率整合剤がはみ出して第1の光ファイバ又は第2の光ファイバに力が加わることが抑制され、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生が抑制される。また、屈折率整合剤が第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出しにくいため、ごみの付着が抑制される。
さらに、屈折率整合剤の表面に形成された非粘着性の表面層の一部に切れ目が設けられおり、第1の光ファイバの端面に第2の光ファイバの端面を突き当てて接続したときに、屈折率整合剤が潰れて表面層の切れ目から屈折率整合剤が露出し、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面とが屈折率整合剤を介して接続される。また、屈折率整合剤が表面層で保護されているため、屈折率整合剤へのごみの付着が抑制される。
また、上記目的を達成するために、請求項2の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1に記載の発明において、第1の光ファイバの端面に前記屈折率整合剤及び前記表面層を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続したときに、前記屈折率整合剤が前記第1の光ファイバの端面と前記第2の光ファイバの端面との間から前記第1の光ファイバ又は前記第2の光ファイバの外周面にはみ出さないように付着されているものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面に屈折率整合剤及び表面層を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続したときに、屈折率整合剤が第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間から第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出さない。また、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時に第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)がより確実に低減される。さらに、第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面に屈折率整合剤がはみ出すことにより第1の光ファイバ又は第2の光ファイバに力が加わることが阻止され、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生がより確実に抑制されると共に、ごみの付着がより確実に抑制される。
また、請求項3の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第1の光ファイバの端面には、前記コア部を含んで突出した突出面が設けられており、前記突出面に前記屈折率整合剤が付着されているものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面のコア部を含んで突出した突出面に屈折率整合剤が付着されており、第1の光ファイバの端面の突出面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続する。第1の光ファイバの端面の突出面に屈折率整合剤が付着されていることにより、屈折率整合剤が突出面の外側に逃げ、第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出しにくい。これによって、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時に第1の光ファイバの端面の突出面と第2の光ファイバの端面との間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)がより一層低減されると共に、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生やごみの付着がより一層抑制される。
請求項4の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発明において、前記屈折率整合剤が付着されている領域が、前記第1の光ファイバのコア部を含み、かつ端面の面積の34%〜71%であるものである。
本発明によれば、屈折率整合剤が付着されている領域が、第1の光ファイバのコア部を含み、かつ端面の面積の34%〜71%とすることで、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時に、コア部の屈折率整合を確保しつつ、屈折率整合剤が第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間から第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面に確実にはみ出さなくする事ができる。また、同時に屈折率整合剤の量を少なくする事が可能となり、接続時の第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間の距離を小さくする事ができる。従って、接続損失(伝送損失)がより確実に低減されると共に、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生やごみの付着がより確実に抑制される。
請求項5の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の発明において、前記屈折率整合剤が凸曲面状に付着されているものである。
本発明によれば、第1の光ファイバの端面の屈折率整合剤が凸曲面状に付着されており、第2の光ファイバの端面を突き合わせて接続するときに、第2の光ファイバの端面が凸曲面状の屈折率整合剤の頂部から当たり、気泡を巻き込みにくい。このため、接続損失をより一層低減することができる。
請求項6の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1に記載の発明において、前記表面層がフッ素樹脂であるものである。
本発明によれば、屈折率整合剤の表面層がフッ素樹脂とされているため、当該屈折率整合剤へのごみの付着を抑制することができる。
請求項7の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1又は請求項6に記載の発明において、前記表面層が非光透過性であるものである。
本発明によれば、表面層が非光透過性であり、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時にのみ表面層の切れ目が広がり、屈折率整合剤が露出して光を通過させるシャッタ機能を持たせることができる。
請求項8の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1又は請求項7に記載の発明において、前記表面層が金属薄膜であるものである。
本発明によれば、表面層が金属薄膜であり、屈折率整合剤を保護すると共に、シャッタ機能を持たせることができる。
請求項9の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の発明において、前記屈折率整合剤が半固形状であるものである。
本発明によれば、屈折率整合剤が半固形状(いわゆるゲル状)であり、第1の光ファイバの端面のコア部を含み、かつ当該端面の縁を除く領域に屈折率整合剤を安定して付着することができる。
請求項10の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の発明において、前記屈折率整合剤がシリコーン樹脂であるものである。
本発明によれば、屈折率整合剤がシリコーン樹脂であり、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間に当該屈折率整合剤が介在されることで、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間に空気が入ることが抑制され、接続損失が低減される。
一方、上記目的を達成するために、請求項11の発明に係る光ファイバ接続構造は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた第1の光ファイバに、第2の光ファイバが接続されているものである。
本発明によれば、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた第1の光ファイバに、第2の光ファイバが接続されており、屈折率整合剤が第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出しにくい。このため、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)が低減されると共に、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生やごみの付着が抑制される。
請求項12の発明に係る光ファイバ端面構造は、請求項11に記載の発明において、前記第2の光ファイバに空孔が形成されているものである。
本発明によれば、第2の光ファイバの端面に空孔が形成されている場合でも、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間に屈折率整合剤を介在させて接続することができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項13の発明に係る光コネクタは、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造が形成された第1の光ファイバがフェルールに内蔵された内蔵光ファイバであり、前記内蔵光ファイバと第2の光ファイバとが接続されているものである。
本発明によれば、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造が形成された第1の光ファイバがフェルールに内蔵された内蔵光ファイバであり、内蔵光ファイバの端面に屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を突き当てることにより接続される。その際、屈折率整合剤が内蔵光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出しにくい。このため、内蔵光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)が低減されると共に、内蔵光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生やごみの付着が抑制される。
一方、上記目的を達成するために、請求項14の発明に係るメカニカルスプライスは、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造が両端面に形成された第1の光ファイバが内蔵され、前記第1の光ファイバの両端面にそれぞれ第2の光ファイバが接続されているものである。
本発明によれば、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造が両端面に形成された第1の光ファイバが内蔵され、第1の光ファイバの両端面にそれぞれ屈折率整合剤を介して第2の光ファイバの端面を突き当てることにより接続される。その際、屈折率整合剤が第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの外周面にはみ出しにくい。このため、第1の光ファイバの端面と第2の光ファイバの端面との間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)が低減されると共に、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接続時の軸ずれの発生やごみの付着が抑制される。
請求項15の発明に係る光ファイバ接続方法は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光ファイバ端面構造を備えた光ファイバ接続方法であって、前記第1の光ファイバの端面の少なくとも前記突出面に前記屈折率整合剤を付着させると共に、前記屈折率整合剤の表面に非粘着性で、かつ一部に切れ目が設けられた表面層を形成する工程と、前記第1の光ファイバの端面の前記突出面に前記屈折率整合剤及び前記表面層を介して第2の光ファイバの端面を突き当てて接続する工程と、を有する。
本発明によれば、光ファイバ同士を接続する際の接続損失を低減し、軸ずれの発生やごみの付着を抑制することができる。
以下、図1及び図2を用いて、本発明の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタの第1実施形態について説明する。
図1Aには、現場組立型光コネクタ10の全体構成が示されている。また、図1Bには、この光コネクタ10に内蔵される光ファイバの端面付近が斜視図にて示されている。また、図2A〜図2Cには、この光コネクタ10に内蔵される光ファイバに他の光ファイバを接続する過程が示されている。図1Aに示されるように、光コネクタ10は、第2の光ファイバとしての光ファイバ40を位置決め固定するためのファイバ固定部20と、ファイバ固定部20の上部側を覆う蓋部材14と、蓋部材14をファイバ固定部20に向けてばね力により押圧するクランプ部材16と、を備えている。
基板12は、蓋部材14により光ファイバ40が押し当てられるファイバ固定部20と、ファイバ固定部20の一端側に固着された筒状の鍔部22に挿入される略円柱状のフェルール24と、を備えている。ファイバ固定部20は、長手方向と直交する方向の断面が略矩形状に形成されており、長手方向に沿って平面状の上面部20Aを備えている。上面部20Aには、長手方向に沿って浅い溝部20Bとこの溝部20Bよりも深くかつ幅広の溝部20Cとが連続して形成されている。溝部20B、20Cは、長手方向と直交する方向の断面が略V字状に形成されている。
フェルール24の芯部には、第1の光ファイバとしての光ファイバ26が内蔵されており、光ファイバ26の端部26Aがフェルール24の鍔部22側から突出している。鍔部22側から突出した光ファイバ26は、ファイバ固定部20の溝部20Bに挿入されている。
光ファイバ40は、裸光ファイバ40Aの長手方向後端側に裸光ファイバ40Aの周囲を樹脂等で被覆した被覆部40Bを備えている。光ファイバ40の裸光ファイバ40Aはファイバ固定部20の溝部20Bに保持され、光ファイバ40の被覆部40Bはファイバ固定部20の溝部20Cに保持されるようになっている。
蓋部材14は、ファイバ固定部20の溝部20B、20Cに挿入される光ファイバ40を押さえるものである。蓋部材14は、長手方向と直交する方向の断面が略矩形状に形成されており、長手方向に沿って平面状の下面部14Aが形成されている。蓋部材14の下面部14Aとファイバ固定部20の上面部20Aとが突き合わされるように配置されている。
クランプ部材16は、長手方向と直交する方向の断面が略U字状に形成されており、クランプ部材16で蓋部材14とファイバ固定部20とを挟み込むことによって、蓋部材14をファイバ固定部20に向けてばね力により押圧する構成となっている。
図1B、図2A及び図2Bに示されるように、光ファイバ26は略円柱状に形成されており、軸心のコア部27Aと、このコア部27Aの周囲のクラッド27Bと、を備えている。光ファイバ26の軸方向先端の端面26Bには、コア部27Aを含み、かつ端面26Bの縁を除く領域に屈折率整合剤30が塗布(付着)されている。すなわち、屈折率整合剤30は、光ファイバ26の端面26Bのコア部27Aを含む中心部にのみ塗布されており、端面26Bに塗布された領域がほぼ円形状となっている。
光ファイバ40の裸光ファイバ40Aは略円柱状に形成されており、軸心のコア部41Aと、このコア部41Aの周囲のクラッド41Bと、を備えている。光ファイバ40の裸光ファイバ40Aの軸方向先端の端面40Cには屈折率整合剤は塗布されてない。
屈折率整合剤30は、光ファイバ26と光ファイバ40との接続時に光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間に介在させることで、光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間に空気が入ることによって生じるフレネル反射を回避し、接続損失(伝送損失)を低減するものである。
屈折率整合剤30は、半固形状(いわゆるゲル状)の材料からなり、本実施形態ではシリコーン樹脂が用いられている。屈折率整合剤30は、シリコーン樹脂に代えて、アクリレート樹脂やポリウレタン樹脂を用いてもよい。また、屈折率調整の為に、フッ素等の屈折率調整剤を添加しても良い。屈折率整合剤30は、光ファイバ26の端面26Bのコア部27Aを含む中心部に凸曲面状に形成されている。本実施形態では、精密ディスペンサーを用いることで、光ファイバ26の端面26Bのコア部27Aを含む中心部(端面26Bの縁を除いた領域)に精密な形状で屈折率整合剤30を塗布している。精密ディスペンサーとして、例えば、武蔵エンジニアリング社製NANO MASTERシリーズなどが用いられる。
また、光ファイバ26の端面26Bのコア部27Aを含む中心部の周囲(屈折率整合剤30を塗布する箇所以外の部位)に環状にフッ素樹脂をコーティングしてもよい。これによって、フッ素樹脂がコーティングされている部位は屈折率整合剤30をはじくため、図1B及び図2Aに示されるような精密な位置に屈折率整合剤30を塗布することができる。
このとき、屈折率整合剤30が塗布されている領域は、当技術分野で一般的に用いられている屈折率整合剤樹脂等の光ファイバ接続時の圧縮変形を考慮すると、光ファイバ26の端面26Bの面積(あるいは端面近傍の光ファイバの断面積の)の34%〜71%に設定されることが好ましい。また、最低限度の樹脂量が必要とされることから端面26Bの面積の34%〜50%が好ましく、特には、端面26Bの面積の34%〜40%の面積であることがより好ましい。
ここで、屈折率整合剤30を塗布する領域を光ファイバ26の端面26Bの面積の34%〜71%に設定する根拠について説明する。
図12に示されるように、屈折率整合剤30である液滴を塗布するときの液滴半径をR、光ファイバ26のコア半径をRc、液滴を塗布するときの誤差をEa、光ファイバ半径をRf、液滴を塗布しない縁の幅をRrとしたとき、最小の液滴半径Rminと最大の液滴半径Rmaxは、それぞれ数式(1)、数式(2)となる。
上記の数式(1)及び数式(2)から、液滴半径Rは、数式(3)で示される。
光ファイバ26の端面26Bの面積をSi、液滴の面積をSfとしたとき、光ファイバ26の端面26Bの面積に対する液滴の面積の比率(Sf/Si)は、数式(4)で示される。
近年の定量ディスペンサーは位置精度が5μm以下(Ea≦5μm)、光ファイバ接続で用いられる屈折率整合剤の場合、縁の幅Rrは10μm程度で十分である。従って、最も広く用いられている外径125μmの光ファイバ(Rf=62.5μm)で、コア径10μmのシングルモードの場合(Rc=5μm)は付着面積を2.5%〜71%、またコア径50μmのマルチモードの場合(Rc=25μm)は付着面積を23%〜71%に設定すると都合が良く、さらにコア径62.5μmのマルチモードの場合(Rc=31.25μm)は付着面積を34%〜71%に設定すると都合が良い。従って、いずれの光ファイバにも対応させるためには、屈折率整合剤30の付着面積を34%〜71%に設定すると良い。
なお、屈折率整合剤30の付着面積は、付着装置(付着条件)、付着材料(および付着量)、および付着対象ファイバから実験的に求められる。また、実際に使用される付着面積は、接合損失を重視する際は下限値近傍を利用して接合端面間隔を短くし、接合の安定性を重視する際は上限値近傍を利用して接触面積を稼ぐように設定する。
次に、本実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタ10の作用並びに効果について説明する。
図1Aに示されるように、光コネクタ10を光ファイバ40に取り付ける際には、ファイバ固定部20の溝部20B、20Cに光ファイバ40を裸光ファイバ40A側から軸方向に沿って挿入し、光ファイバ40の裸光ファイバ40Aを溝部20Bに配置された光ファイバ26に突き当たるまで挿入する。
その際、図2A及び図2Bに示されるように、光ファイバ26の端面26Bには、コア部27Aを含み、かつ端面26Bの縁を除いた領域に屈折率整合剤30が塗布されているため、図2Cに示されるように、光ファイバ26の端面26Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の裸光ファイバ40Aの端面40Cを突き当てたときに、屈折率整合剤30が光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間から光ファイバ26、光ファイバ40の外周面にはみ出しにくい。なお、ここで「突き当てたとき」とは、一方の光ファイバに、接続すべき光ファイバを、その光ファイバが曲がらない程度の押圧力でファイバ同士を突き当てることを意図している。したがって、縁を除いた領域はこの突き当て時の屈折率整合剤30の広がりを考慮して設定される。また、光ファイバ26の端面26Bの縁を除いた領域に屈折率整合剤30が塗布されていることにより、光ファイバ26と光ファイバ40との接続時に光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)を低減することができる。さらに、光ファイバ26、光ファイバ40の外周面に屈折率整合剤30がはみ出して光ファイバ26又は光ファイバ40に力が加わることが阻止され、光ファイバ26と光ファイバ40との軸ずれの発生を抑制することができる。また、屈折率整合剤30が光ファイバ26、光ファイバ40の外周面にはみ出しにくいため、ごみの付着を抑制することができる。
また、屈折率整合剤30が塗布されている領域が、光ファイバ26の端面26Bの面積の34%〜71%に設定されていることにより、光ファイバ26の端面26B全体に屈折率整合剤30が塗布されている場合に比べて屈折率整合剤30の量が少なくなり、光ファイバ26と光ファイバ40との間隔を小さくする事が可能になると同時に、屈折率整合剤30が光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間から光ファイバ26、光ファイバ40の外周面にはみ出すことをより確実に抑制することができる。
さらに、光ファイバ26の端面26Bの屈折率整合剤30が凸曲面状に形成されており、光ファイバ40の端面40Cが屈折率整合剤30の頂部から当たり、屈折率整合剤30が外側に広がるので、気泡を巻き込みにくい。このため、接続損失をより一層低減することができる。
一方、図3A及び図3Bに示されるように、光ファイバ200の端面200Aのほぼ全面に屈折率整合剤30が凸曲面状に塗布されている場合には、光ファイバ200の端面200Aに屈折率整合剤30を介して光ファイバ202の端面202Aを突き当てると、屈折率整合剤30が光ファイバ200の端面200Aと光ファイバ202の端面202Aとの間から光ファイバ200、光ファイバ202の外周面側にはみ出す。その際、光ファイバの端面間にゲル状の屈折率整合剤30が多く存在するので、光ファイバ200の端面200Aと光ファイバ202の端面202Aとの間の距離が大きくなり、接続損失(伝送損失)が大きくなる可能性がある。また、屈折率整合剤30が光ファイバ200及び光ファイバ202の外周面側にはみ出すことにより光ファイバ200又は光ファイバ202に力が加わり、光ファイバ200と光ファイバ202との軸ずれが発生しやすい。さらに、屈折率整合剤30のはみ出し時にごみを取り込む虞があり、その場合は光ファイバの再接続の際に取り込まれたごみによって接続損失の増大も起こりえる。
これに対して、本実施形態では、従来法によるものに比べて使用される屈折率整合剤30の量が相対的に小さいので光ファイバ26と光ファイバ40との接続時に光ファイバ26の端面26Bと光ファイバ40の端面40Cとの間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)を低減できると共に、光ファイバ26と光ファイバ40との軸ずれの発生やごみの付着を抑制することができる。
次に、本発明の第2実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタについて説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、図4及び図5Aに示されるように、光コネクタのファイバ固定部(図1参照)に内蔵される第1の光ファイバとして、第1実施形態の光ファイバ26に代えて、光ファイバ50が用いられている。光ファイバ50の軸方向先端の端面50Aには、コア部27Aを含み、かつ端面50Aの縁を除いた領域(コア部27Aを含む中心部)に半固形状(いわゆるゲル状)の屈折率整合剤52が塗布されており、さらに屈折率整合剤52の表面に表面層54が形成されている。表面層54は、屈折率整合剤52よりも硬度の高い非粘着質材料からなり、屈折率整合剤52の表面を覆っている。表面層54の中央部には、1本の直線状の切れ目55が設けられている。本実施形態では、表面層54として、フッ素樹脂が用いられている。屈折率整合剤52には、第1実施形態と同様にシリコーン樹脂が用いられている。なお、表面層54として、フッ素樹脂以外にエポキシ樹脂、アクリレート樹脂、屈折率整合剤52よりも硬度の高いシリコーン樹脂、金属薄膜などを用いてもよい。
本実施形態では、光ファイバ50の端面50Aに精密ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製NANO MASTERシリーズなど)で屈折率整合剤52を凸曲面状に塗布し、硬化させる。更に、屈折率整合剤52の表面にフッ素樹脂溶液を塗布し、加熱乾燥させることによりフッ素樹脂薄膜からなる表面層54を形成する。ここでフッ素樹脂薄膜と屈折整合剤52との接着が生じない場合はフッ素樹脂溶液やその他の剥離溶液や剥離剤を用いる必要はない。その際、図示を省略するが、フッ素樹脂薄膜を屈折率整合剤52の表面だけでなく光ファイバ50の端面50A全体に形成してもよい。表面層54をフッ素樹脂とすることで、汚れを付きにくくすることができる。また、フッ素樹脂溶液を表面層54の表面に塗布することで後述する押圧時に切れ目の広がりを促進することもできる。
また、表面層54の切れ目55は、レーザー加工等により形成することができる。
図5Bに示されるように、光ファイバ50の端面50Aに光ファイバ40(第2の光ファイバ)の端面40Cが突き当てられると、表面層54の内部の屈折率整合剤52が潰れて広がると同時に切れ目55が広がり、光ファイバ40の端面40Cのコア部41Aに屈折率整合剤52が現れ、屈折率整合剤52と光ファイバ40の端面40Cが密着される。これによって、光ファイバ50の端面50Aと光ファイバ40の端面40Cとが接続される。
光ファイバ50の端面50Aのコア部27Aを含む中心部(端面50Aの除いた領域)にのみ屈折率整合剤52が塗布されると共に、屈折率整合剤52が表面層54で覆われているため、屈折率整合剤52が光ファイバ50の端面50Aと光ファイバ40の端面40Cとの間から光ファイバ50、光ファイバ40の外周面にはみ出すことが防止される。これにより、光ファイバ50と光ファイバ40との接続時に光ファイバ50の端面50Aと光ファイバ40の端面40Cとの間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)を低減できると共に、光ファイバ50と光ファイバ40との軸ずれの発生を抑制することができる。
また、屈折率整合剤52は、光ファイバ40が接続されない状態(未接続状態)では、表面層54により保護されているため、ごみなどの汚れの付着等がなく、光ファイバ40が接続されるときには常に汚れの付着のない綺麗な屈折率整合剤52の面が現れて光ファイバ40の端面40Cと接続される。
光コネクタ(図1参照)から光ファイバ40が抜去されると、再び未接続状態に戻るため、屈折率整合剤52が硬度の高い表面層54で保護される。このため、屈折率整合剤52に汚れが付着することが防止され、繰り返し光ファイバ40を接続することができる。
なお、表面層54を金属薄膜などの非光透過性の材料とすることで、光ファイバ40の接続時にのみ屈折率整合剤52が露出して光が透過するような、シャッタ機能を付与することもできる。
なお、上記実施形態では、切れ目55は1本の直線であるが、これに限定されず、例えば、十字の線や、表面層による接続損失を避けるための、接続対象のファイバのコアよりも若干大きな円形の穴を持つ形状としてもよい。また、押圧時に表面層が端面50Aから剥離することを防止するために、表面層54の形成前に、端面50Aの屈折率整合剤52の周囲の部分に端面50Aとの接着性を向上させる樹脂や接着剤を塗布しても良い。
次に、本発明の第3実施形態の光ファイバ端面構造が適用されたメカニカルスプライスについて説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図6及び図7Aに示されるように、メカニカルスプライス70は、矩形状の基板72と、矩形状の蓋部材74と、を備えている。基板72の上面部20Aには、長手方向中央部に浅い溝部20Bと、この溝部20Bの長手方向両側に溝部20Bよりも深くかつ幅広の溝部20Cとが連続して形成されている。溝部20Bの中間部には、第1の光ファイバとしての短尺状の光ファイバ76が内蔵されており、この光ファイバ76の軸方向両側に第2の光ファイバとしての光ファイバ40が接続される構成となっている。光ファイバ40が接続される際には、光ファイバ40の裸光ファイバ40Aが溝部20Bに保持され、被覆部40Bが溝部20Cに保持される。
図示を省略するが、メカニカルスプライス70は、基板72と蓋部材74を挟み込むクランプ部材を備えており、クランプ部材のばね力により蓋部材74で光ファイバ76及び光ファイバ40が溝部20B、20Cに押し当てられて把持されるようになっている。
図7Bに示されるように、光ファイバ76の軸方向両側の端面76A、76Bには、コア部27Aを含み、かつ端面76A、76Bの縁を除いた領域(コア部27Aを含む中心部)に屈折率整合剤30が塗布されている。屈折率整合剤30は凸曲面状に形成されている。屈折率整合剤30は、半固形状(いわゆるゲル状)の材料からなり、本実施形態ではシリコーン樹脂が用いられている。
このメカニカルスプライス70では、図8A及び図8Bに示されるように、基板72の長手方向両側から溝部20B、20Cに2本の光ファイバ40を光ファイバ76の端面76A、76Bに突き当たるまで挿入する。
光ファイバ76の端面76A、76Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを突き当てると、光ファイバ76の端面76A、76Bのコア部27Aを含む中心部にのみ屈折率整合剤30が塗布されていることにより、屈折率整合剤30が光ファイバ76の端面76A、76Bと光ファイバ40の端面40Cとの間から光ファイバ76、光ファイバ40の外周面にはみ出しにくい。
このように光ファイバ76の端面76A、76Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを突き当てた状態で、図9に示されるように、基板72の上方を蓋部材74で覆うと共に、クランプ部材(図示省略)で基板72と蓋部材74を挟み込むことで、クランプ部材のばね力により蓋部材74で光ファイバ76及び光ファイバ40が溝部20B、20Cに押し当てられて固定される。
このようなメカニカルスプライス70では、光ファイバ76の端面76A、76Bに屈折率整合剤30を介して光ファイバ40の端面40Cを接続したときに、光ファイバ76の端面76A、76Bと光ファイバ40の端面40Cとの間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)を低減できると共に、光ファイバ76と光ファイバ40との軸ずれの発生やごみの付着を抑制することができる。
なお、接続作業の簡易化のために、蓋74を、接続用の光ファイバ76の中央部分を固定する蓋と、短尺ファイバと接続されるそれぞれのファイバの接続部とそれぞれのファイバを固定する蓋の3分割し、それぞれの蓋を個別にクランプするクランプ部材を用意し、まず、光ファイバ76を蓋とクランプで固定し、一端ずつ接続作業を行い、それぞれに対応する蓋によって固定しても良い。
ここでは中間に接続用の短尺状のファイバを用いる例を示したが、接続用の短尺状のファイバを用いずに、予め接続する一方の端面の周囲部分にフッ素コーティングし、その後、屈折率整合剤溶液に端面を浸し、フッ素コーティングのされていない中央部分に付着した凸曲面上のゲル状の屈折率整合剤を形成して他方の光ファイバと接続しても良い。
次に、本発明の第4実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタについて説明する。なお、第1実施形態〜第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図10Aに示されるように、光コネクタのファイバ固定部(図1参照)に内蔵される第1の光ファイバとして、第1実施形態の光ファイバ26に代えて、光ファイバ90が用いられている。光ファイバ90の軸方向先端には、先端側が徐々に細くなるように突出する突出部92が設けられており、突出部92の端部に平面状の突出面92Aが形成されている。突出部92を側方から見ると直線状のテーパー部が形成されている。言い換えると、突出部92は、円錐形の先端部が切り欠かれて平面状の突出面92Aが形成された形状であり、突出部92を側方から見ると直線状のテーパー部を備えている。突出部92は、従来の面取り加工に用いていた工具を用いて形成することもできる。
屈折率整合剤94は、突出部92の突出面92Aのほぼ全面に塗布されている。これによって、屈折率整合剤94は、光ファイバ90の端面(突出部92)のコア部27Aを含み、かつ光ファイバ90の端面(突出部92)の縁を除いた領域、すなわち突出部92のコア部27Aを含む中心部にのみ塗布されている。屈折率整合剤94は凸曲面状に形成されている。屈折率整合剤94は、半固形状(いわゆるゲル状)の材料からなり、本実施形態ではシリコーン樹脂が用いられている。
図10Bに示されるように、光ファイバ90の突出面92Aに屈折率整合剤94を介して光ファイバ40(第2の光ファイバ)の端面40Cを突き当てると、屈折率整合剤94が光ファイバ90の突出面92Aと光ファイバ40の端面40Cとの間から突出部92のテーパー部側にはみ出す。その際、屈折率整合剤94が光ファイバ90、光ファイバ40の外周面にはみ出すことが防止され、光ファイバ90又は光ファイバ40に力が加わることがない。これにより、光ファイバ90と光ファイバ40との接続時に光ファイバ90の突出面92Aと光ファイバ40の端面40Cとの間の距離が小さくなり、接続損失(伝送損失)を低減できると共に、光ファイバ90と光ファイバ40との軸ずれの発生やごみの付着を抑制することができる。なお、突出部92の切り欠かれたテーパー部の大きさは押しつぶされた屈折率整合剤94のはみ出し量を考慮して設定される。
次に、本発明の第5実施形態の光ファイバ端面構造が適用された光コネクタについて説明する。なお、第1実施形態〜第4実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、図11Aに示されるように、第4実施形態の屈折率整合剤94に代えて、光ファイバ90の突出部92の突出面92Aの一部であるコア部27Aを含む中心部に屈折率整合剤96が塗布されている。すなわち、屈折率整合剤96は、光ファイバ90の突出部92の突出面92Aの縁を除いた領域に塗布されている。屈折率整合剤96は凸曲面状に形成されている。屈折率整合剤96は、半固形状(いわゆるゲル状)の材料からなり、本実施形態ではシリコーン樹脂が用いられている。
図11Bに示されるように、光ファイバ90の突出面92Aに屈折率整合剤96を介して光ファイバ40(第2の光ファイバ)の端面40Cを突き当てると、屈折率整合剤96が突出面92Aの中心部に塗布されていることにより、屈折率整合剤96が光ファイバ90の突出面92Aと光ファイバ40の端面40Cとの間から突出部92のテーパー部側にはみ出しにくい。これにより、光ファイバ90と光ファイバ40との接続時に光ファイバ90の突出面92Aと光ファイバ40の端面40Cとの間の距離がさらに小さくなり、接続損失(伝送損失)を低減できると共に、光ファイバ90と光ファイバ40との軸ずれの発生やごみの付着を抑制することができる。
なお、上述した第4実施形態および第5実施形態では端面のテーパー部に屈折率整合剤の付着前にフッ素樹脂溶液のような剥離作用を持つ物質を付着しておくことで突出部先端以外に屈折率整合剤が付くようなことをさけることができる。
なお、上述した第2実施形態、第4実施形態及び第5実施形態は光コネクタの例であるが、同様の光ファイバの端面形状及び屈折率整合剤の構成をメカニカルスプライスに適用してもよい。
また、上述した第4実施形態及び第5実施形態では、突出部92は、直線状のテーパー部を有するように突出した形状であるが、突出部92の形状はこれに限定されず、R状又は球面状に突出した形状でもよい。
上述した第1実施形態〜第5実施形態においては、第1の光ファイバの端面のコア部を含み、かつ端面の縁を除いた領域にのみ屈折率整合剤を塗布するために、第1の光ファイバの端面の表面処理(プライマー処理やプラズマ放電による表面処理)を行ってもよい。
上述した第1実施形態〜第5実施形態では、第1の光ファイバに接続される第2の光ファイバとして、空孔がないタイプの光ファイバ40が用いられているが、軸方向に空孔が形成された光ファイバを上記実施形態に適用しても同様の効果を得ることができる。