JP5219135B2 - 炎症性疾患モデル動物 - Google Patents

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Description

本発明は、糖転移酵素遺伝子の機能が欠損あるいは抑制された炎症性疾患モデル動物、及び該モデル動物を使用した創薬のためのスクリーニング法等に関する。
近年、世界的に種々の生物のゲノム配列の解明とその解析が進められて来た。例えば、ヒトやマウスでは、ゲノム全配列の解析が終了している。ゲノム情報は、創薬において非常に重要な意義を有すると考えられるものの、単にゲノム配列が決定されただけでは、遺伝子の機能が明らかになり創薬標的蛋白質が見出されるわけではない。また、RNAの網羅的な解析が進められており、かつ蛋白質においても、プロテオミクス等の技術により、網羅的な解析が進められている。糖鎖は蛋白質や脂質に結合し、糖蛋白あるいは糖脂質として機能を果たしているが、その詳細な機能は未だ明らかになっていないことの方が多い。糖鎖は様々な糖転移酵素群の複合的(協調的)な働きによって合成が行われている3次的な生成物である。糖蛋白などの多くは糖鎖が付加していないと機能を果たさないものも多く存在していることが知られている。その為、ゲノミクスあるいはプロテオミクスなどの解析だけでは糖鎖を含む複合糖質の機能を明らかにし、創薬標的とするためには不十分である。
複合糖質の機能を解明する手法の一つとして、糖鎖を合成する遺伝子の遺伝子ノックアウト技術が知られている。遺伝子ノックアウト技術によれば、ゲノム配列解析、プロテオミクス解析などでは得られない重要な糖鎖の機能に対する情報が得られ、新規の創薬標的となる複合糖質を発見することが可能である。
α1,3-フコース転移酵素9(Fucosyltransferase9、Fut9)は、糖脂質あるいは糖蛋白質上の受容体糖鎖に対してα1,3結合でフコースを転移し、ルイスx(Lewis x)構造(Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc-R)を合成する酵素である。(非特許文献1参照)
ルイスx構造はStage Specific Embryonic Antigen-1 (SSEA-1)としても知られている糖鎖構造で、神経幹細胞の細胞マーカーとしても使用されている(非特許文献2参照)が、生物学的な機能はあまりよく分かってはいない。
本発明者により、α1,3-フコース転移酵素9と情動異常(非特許文献3参照)についての報告がなされ、また、本発明者は、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子を発見・解析し、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損マウスについて既に特許出願しているが(特許文献1参照)、免疫・炎症疾患、あるいはそれらを背景とした疾患などとの関連は未だ知られていない。
一方、萎縮性胃炎などの胃粘膜病変を認める遺伝子改変マウスとしてはTGF-β欠損マウス(非特許文献4参照)、SMAD4欠損マウス(非特許文献5参照)、Runx3欠損マウス(非特許文献6参照)などが既に報告されている。
例えば、TGFb(+/-)マウスや、TGFbのシグナルトランスデューサーであるSMAD4(+/-)マウスは、炎症を背景とした胃粘膜異常を呈することから、TGFb受容体シグナルの破綻は胃粘膜病変の発症と関与することが指摘されて来た。これらのマウスでは、生存観察において、炎症を背景とする胃粘膜病変の出現に引き続き、胃がんを発症することが明らかにされている。
このようなマウスでは炎症も伴うが、むしろ胃粘膜上皮細胞でのシグナル異常が原因となって、上皮細胞の恒常性維持に破綻を来して生じる病変のモデルとなっているもので、炎症による作用と上皮細胞でのシグナル破綻を別途評価できるものではない。したがって発症メカニズムの作用点の評価を目的としたモデル実験としては、特異性にかけるものである。
また、これらのマウス個体の病態は、胃組織以外の炎症が全身に及ぶ症状を伴い、早期に死亡するため、このような疾患を対象とした薬剤・治療剤、あるいは毒性のスクリーニングなどに用いるためには十分ではないといえる。
WO 00/06708 Kudo et al., J Biol Chem. 1998, 273(41):26729-38. Muramatsu et al., Glycoconjugate Journal, 2004, 21:41-45. Kudo et al., Glycobiology. 2007 Jan;17(1):1-9. Lab Invest. 1996 Feb;74(2):513-8. Oncogene. 2000 Apr 6;19(15):1868-74. Cell. 2002 Apr 5;109(1):113-24.
本発明の課題は、このような従来技術の現状に鑑み、萎縮性胃炎等の炎症性疾患の病態モデル動物であって、他(多)臓器での炎症等に基づく早期死亡のない、好適なモデル動物を提供するとともに、これを用いた各種炎症性疾患の予防、治療あるいは発症、促進化合物の評価・スクリーニング方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子の機能を欠損あるいは抑制させた動物が、(炎症性)萎縮性胃炎、潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患を発症すること、また、炎症応答(粘膜免疫)が亢進し、その結果、免疫反応の亢進が背景となった大腸の発癌が起こりやすくなること、α1,3-フコース転移酵素9欠損動物は胃または大腸を対象とした場合、他(多)臓器での炎症を伴わないため、早期に死亡することがなく、正確なスクリーニングを行うことができ、疾患モデル系として非常に有用であるとの知見を得た。また、このようなモデル動物は、α1,3-フコース転移酵素9(Fucosyltransferase 9、Fut9)遺伝子の機能解析に有用な手段となるとともに、上記炎症性疾患の病態機序の解明および疾患の治療方法の検討、及びこれら疾患の予防・治療剤、あるいは発癌性・毒性化合物等の評価・スクリーニングにおいても非常に有用であるとの結論に至り、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)の機能が欠損あるいは抑制されていることを特徴とする、炎症性疾患の非ヒトモデル動物。
(2)α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)がノックアウトあるいはノックダウンされた、請求項1に記載の炎症性疾患の非ヒトモデル動物。
(3)α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)がノックアウトあるいはノックダウンされ、萎縮性胃炎、潰瘍性大腸炎、大腸癌、関節炎、肺線維症、肝炎、脳炎からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の疾患を発症していることを特徴とする非ヒトモデル動物。
(4)α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)の機能を欠損あるいは抑制されていることを特徴とする、炎症性発癌の非ヒトモデル動物。
(5)癌イニシエータの投与量が野生型動物よりも少ない量で発ガンすることを特徴とする、上記(4)に記載の非ヒトモデル動物。
(6)癌イニシエーターが投与されていることを特徴とする、上記(4)又は(5)に記載の非ヒトモデル動物。
(7)癌イニシエーターが、アゾキシメタン(azoxymethane(AOM))であることを特徴とする、上記(5)又は(6)に記載の非ヒトモデル動物。
(8)粘膜免疫応答の亢進を伴っていることを特徴とする。上記(1)〜(7)のいずれかに記載の非ヒトモデル動物。
(9)α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)の機能を欠損あるいは抑制されている非ヒトモデル動物に、被験物質を投与し、非ヒトモデル動物における炎症性疾患の発症、促進、予防、抑制あるいは治癒を指標にして、該被験物質を評価することを特徴とする、該被験物質の有用性あるいは有害性の評価方法。
(10)α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)がノックアウトあるいはノックダウンされていることを特徴とする、上記(9)に記載の評価方法。
(11)炎症性疾患が、炎症に起因する癌であることを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の評価方法。
(12)上記(9)〜(12)のいずれかに記載の評価方法による評価に基づき、炎症性疾患の予防若しくは治療用物質、または炎症性疾患の発症若しくは促進物質をスクリーニングすることを特徴とする、炎症性疾患の予防剤、治療剤、又は炎症性疾患の誘発剤、促進剤のスクリーニング方法。
(13)上記(8)に記載の非ヒトモデル動物に被験物質を投与し、粘膜免疫の亢進あるいは抑制を指標にして、該被験物質を評価することを特徴とする、被験物質の粘膜免疫制御作用の評価方法。
(14)上記(13)に記載の評価方法による評価に基づき、免疫賦活化作用を有する物質あるいは免疫抑制作用を有する物質をスクリーニングすることを特徴とする、免疫賦活化剤あるいは免疫抑制剤のスクリーニング方法。
本発明のモデル動物は、萎縮性胃炎、潰瘍性大腸炎、あるいはこれらに起因して発症した大腸癌のモデル動物として、あるいは、さらに、関節炎、肺線維症、肝炎、脳炎等様々な炎症性疾患のモデル動物として有用であるほか、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子およびこれが合成する糖鎖の免疫機能の解析などに有用である。
さらに、Fut9酵素阻害剤は、免疫賦活化剤としての可能性をもつ。また逆に、糖鎖(Lewis x含有)薬剤はトレランス等の免疫抑制作用を有することが期待される。本発明のモデル動物は、Lewis xを基軸とした新規免疫制御薬剤の開発とそのスクリーニングに活用できる。
一方、加齢と伴に発症する萎縮性胃炎には、ピロリ菌や自己免疫性と関連しないものが多分に含まれ、非感染性炎症、神経、内分泌性要因の関与が指摘されてきた。本発明のモデル動物は、非感染性萎縮性胃炎のモデルであり、胃炎の原因治療に対する薬剤の開発が期待される。大腸発癌では、プロモーション作用として炎症の作用が知られている。したがって潰瘍性大腸炎では、その炎症のコントロールが発癌抑制に必須となっている。当該マウスを用いた本発明のスクリーニング方法は、潰瘍性大腸炎等の炎症性発癌リスクを抑制する抗炎症剤ならびに、機能性食品のスクリーニング/評価に使用できるモデルである。発癌のイニシエーションとして働く化学物質の評価(毒性評価)ならびに、発癌リスクの高感度なスクリーニングモデル動物として有用である。
本発明のモデル動物は、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子の機能が欠損あるいは抑制されているものであって、炎症性疾患のモデル動物である。
α1,3-フコース転移酵素9遺伝子の機能が欠損した非ヒトモデル動物(以下、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物という場合がある。)とは、染色体に導入された変異により、機能が欠損した変異型α1,3-フコース転移酵素9遺伝子を有する非ヒト動物を意味する。α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物あるいはα1,3-フコース転移酵素9ノックダウン動物が含まれるが、これらの動物ではα1,3-フコース転移酵素9の機能、さらにこの酵素が合成する糖鎖および糖鎖機能を欠損している。
α1,3-フコース転移酵素9遺伝子の機能が抑制された非ヒトモデル動物(以下、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子抑制動物という場合がある。)とは、染色体あるいは染色体外核酸に導入された、RNAi法あるいはアンチセンスRNA法により、α1,3-フコース転移酵素9タンパク質の発現量を低下あるいは消失した非ヒト動物を意味する。
なお、以下、単に、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物というとき、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子の機能が欠損あるいは抑制されているモデル動物を含む。
この炎症性疾患には、萎縮性胃炎、潰瘍性大腸炎、関節炎、肺線維症、肝炎、脳炎等の他、炎症応答をプロモーション作用とする発癌、すなわち、炎症性発癌による癌疾患を含む。これには潰瘍性大腸炎から誘発された大腸癌等がある。
また、本発明のモデル動物の種類については特に限定されず、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ラット、マウス等が用いられるが、この中では、マウスがより好ましい。その場合、マウスの系統はC57BL/6でもBALB/c系統など問わないが、戻し交配等によりより遺伝子背景が純系に近い方が好ましく、比較対象となる野生型マウスと同系統であることが好ましい。
本発明のモデル動物は、以下のようにして作成される。
〔ノックアウト動物及びノックダウン動物の作成〕
1)α1,3-フコース転移酵素9遺伝子を欠損する動物は、それ自体公知の方法〔例えば、ジーンターゲティング、メディカル・サイエンス・インターナショナル社刊、等を参照〕を用いて作製することができる。具体的にはα1,3-フコース転移酵素9遺伝子(FUT9)のDNAを含むベクターを用い、目的とする動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ラット、マウス等の胚性幹細胞(embryonic stem cell, ES細胞)中の染色体上のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子またはそれに相当するオーソログ遺伝子の全体もしくは酵素活性に関与する部分を含む一部をコードするDNAを、一般的に公知な相同組換えの手法により不活化または任意の配列と置換した変異クローンを作成することができる(例えば、Nature, Vol.350, No.6315, pp.243.1991)。
前述のようにして作製した胚性幹(ES)細胞クローンを、遺伝子欠損個体を作製したい動物の受精卵の胚盤胞(blastcyst)中へマイクロインジェクション法などの公知の方法により導入する。注入キメラ法または集合キメラ法等の手法により胚性幹細胞クローンと正常細胞からなるキメラ個体を作成することができる。このキメラ個体と正常個体の掛け合わせにより、全身の細胞の染色体上の本発明のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子と該遺伝子に任意の変異を導入した対立遺伝子とを有し対立遺伝子型がヘテロの個体(ヘテロ個体)を得ることができ、さらにそのヘテロ個体の交配により相同染色体の双方に変異が入った、ホモ個体である遺伝子欠損動物を得ることができる。このようにして動物個体において、染色体上のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子あるいはそのオーソログ遺伝子の任意の位置へ変異の導入が可能である。
また、shRNAをレトロウィルスベクターやアデノウィルスベクターに組み込んで動物に導入することでトランスジェニック(ノックダウン)動物を得てもよい。
本発明の発現産物であるα1,3-フコース転移酵素9タンパク質の活性が、性状個体と比較して低下している動物は、好ましくはα1,3-フコース転移酵素9の活性が正常個体の50%以下に低下している動物であり、特に好ましくはα1,3-フコース転移酵素9活性が消失している動物である。
2)他の公知の方法、例えば、shRNAベクター等を導入することにより、遺伝子改変(トランスジェニック)動物を作製する手法によっても可能である(Nucleic Acids Res. 2005; 33(7): e67.)。この場合、導入したshRNAの効果により、遺伝子発現を抑制された動物個体を得ることが可能である。なお、遺伝子改変を施した胚性幹細胞(embryonic stem cell, ES細胞)の作製、あるいはその細胞の受精卵の胚盤胞への導入、ならびにホモ個体作製までの過程は、上記1)に記載の、公知の方法により可能である。このshRNAベクター等を用いた遺伝子改変(トランスジェニック)動物の作製の場合には、ベクターが染色体上で相同組換えを起こす位置は、染色体上のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子あるいはそのオーソログ遺伝子の位置には依らない。
shRNAをレトロウィルスベクターやアデノウィルスベクターに組み込んで動物に導入することでノックダウン動物を得る方法としては、公知の方法(例えばNucleic Acids Research, 2007, Vol. 35, No. 7 e54)に従って作成することが可能である。
レトロウィルスベクターやアデノウィルスベクターによりshRNAを発現させ、特定の時期、場所で遺伝子の機能を抑制したノックダウン動物(J Biomed Biotechnol. 2006; 2006: 28945)を作成することも可能である。
さらに、3)別の公知方法の手順にしたがって、動物個体の染色体上のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子の任意の位置に変異を導入することによっても、本発明のモデル動物を作成することが可能である。例えば染色体上のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子あるいはそのオーソログ遺伝子の翻訳領域中への塩基置換、欠失、挿入等の変異を導入することにより、その産物の活性を変化させることができる。またその発現制御領域への同様な変異の導入により、発現の程度、時期、組織特異性等を改変させることも可能である。
さらに4)遺伝子を欠損・抑制させるためのターゲティングベクターの設計の上で、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子の他にloxP配列などを組み込んでおくことができる。バクテリオファージP1由来のCre酵素はloxP配列を認識するリコンビナーゼであり、loxP配列で挟まれたDNA領域を除去することが可能である(Methods in Enzymology; 1993, Vol. 225, 890-900)。これを用いて、公知の方法である、Cre-loxP系(Methods in Molecular Biology, Vol.346, part II, pp. 187-199,2006(Springer)、あるいは、Nutrition Reviews, Vol.62, No. 6, 1, pp.243-246(4),2004)との組合せにより、目的に応じて、より積極的に発現時期、発現部位、発現量等を制御することも可能である。α1,3-フコース転移酵素9遺伝子ならびにloxP配列を含むターゲティングベクターで遺伝子改変された動物個体は、特定の条件でα1,3-フコース転移酵素9遺伝子を欠損するような動物個体が作製できる。具体的にはこのターゲティングベクターを使用して、後記実施例記載の、遺伝子欠損ES細胞の作出法ならびにマウス胚盤胞へのマイクロインジェクション、キメラマウス作製、ヘテロマウス・ホモマウス作製、に至る一連の方法と同様にして作製できる。適宣、後述のように、目的に応じたCreマウスとの交配により、遺伝子を欠損するようなマウスを作製できる。発現時期・発現部位・発現量が制御されたCre酵素を発現させる動物個体(Cre発現マウス)との交配により、特定の条件でα1,3-フコース転移酵素9遺伝子を欠損するような動物個体が作製できる(例としてAm J Physiol Renal Physiol 276: F651-F657, 1999、あるいはCirculation Research. 2006;Vol.98:pp.1547)。また、Cre酵素を特定の条件下で発現するようなベクター系を用いて、作製した動物個体あるいは動物個体由来の細胞等に作用させ、特定の条件下でα1,3-フコース転移酵素9遺伝子を欠損させることもできる。
このような例としては脳のある特定の領域で発現されるプロモータを利用して、その領域でのみ目的遺伝子を欠失させた例〔Cell, Vol.87, No.7,pp.1317 ,1996〕やCre酵素を発現するアデノウィルスを用いて、目的の時期に、臓器特異的に目的遺伝子を欠失させた例〔Science,Vol.278, pp.5335, 1997〕が知られている。
したがって、染色体上のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子あるいはそのオーソログ遺伝子についてもこのように任意の時期や組織で発現を制御できる、または任意の挿入、欠失、置換をその翻訳領域や、発現制御領域に有する動物個体を作成することが可能である。
このような動物は任意の時期、任意の程度または任意の部位で、本発明におけるα1,3-フコース転移酵素9遺伝子機能の欠損あるいは抑制に起因する種々の炎症性疾患の症状を誘導することができる。
α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物については、本発明に至るまで該欠損動物がどの様な疾患のモデル系になるのかについて全く明らかになっていなかったものである。
α1,3-フコース転移酵素9遺伝子はマウス個体では胃、大腸などの消化管、腎臓、神経その他の組織に発現しているが、本発明のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物は、非感染性萎縮性胃炎のモデルとして使用でき、このモデルとを使用して、被験物質が感染性萎縮性胃炎の予防、治療剤、あるいは促進剤等になりうるかどうかの評価、あるいはこれに基づくスクリーニングを可能にする点で極めて有用である。
すなわち、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物は、加齢と伴に出現する炎症性と固有胃腺の退縮を示す。これはいわゆる萎縮性胃炎の組織像に合致するものであるので、この病態モデルとしての利用が可能である。加齢と伴に発症する萎縮性胃炎には、ピロリ菌感染性胃炎や自己免疫性胃炎の様に原因がはっきりしたものばかりではない。そして多くの場合、ストレスやそれによる交間神経系の亢進、内分泌異常に原因を求めるが、それが確かなものであるとは言い難い。さらに、これら非特異的萎縮性胃炎を引き起こす発症メカニズムは、十分に明らかでないため、根治は難しく、対処療法すら十分に有効とは言えない状況にある。本発明のモデル動物は、これら非特異的炎症生胃炎のモデル動物であり、本発明のモデル動物におけるメカニズムを解析することにより、萎縮性胃炎の亢進する機構を明らかにすることが可能になると考えられ、このタイプの胃炎発症のメカニズムに合致した治療とその為の薬剤開発に資するものである。
本発明のモデル動物は野生型に比べ、同条件において、高感受性で炎症および発癌を起こす。特に、本発明のモデル動物においては、潰瘍性大腸炎から高頻度で大腸癌を誘発するが、このような大腸癌を発症したモデル動物においては粘膜免疫の亢進が観察されている。
このような大腸での粘膜免疫の亢進は、発癌のプロモーション作用の増強と考察できる。したがって、本α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物は発癌のイニシエーションとして働く化学物質の評価ならびに、発癌リスクの高感度なスクリーニングモデル動物として利用可能である。
発癌のイニシエーションとして働く化学物質には、azoxymethane (AOM)のような化学物質が知られている。一方、発癌のプロモーション作用を増強するような物質にはdextran
sodium sulfate(DSS)のような化学物質が知られている(非特許文献、Cancer Sci. 2003 Nov;94(11):965-73.)。
上記したように、本発明のモデル動物は、高感受性で発癌を起こすことから、このような物質の使用によりたやすく癌を発症させることができる。したがって、本発明のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物を用いることにより高感度に毒性あるいは発癌リスクの評価を行うことが可能となる。
一方、大腸発癌では、プロモーション作用として炎症が知られている。したがって潰瘍性大腸炎(UC)では、その炎症のコントロールが発癌抑制に必須となっている。当該モデル動物は、例えば、UC等の炎症性発癌リスクを抑制する抗炎症剤、癌治療剤のスクリーニングあるいは機能性食品の安全性等の評価に使用できるモデル系である。
上記した、評価、スクリーニングにおいては、本発明のモデル動物に被験物質を投与し、該病変が生じてくるかどうか、あるいは該病変が治癒または軽快しているか否かを指標にした観察等により、被験物質の作用を判断することにより行う。
本発明の評価法、あるいはこれに基づくスクリーニング方法に供される被験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質(複合糖質)、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
本発明において、上記萎縮性胃炎のモデルとしては、例えばマウスの場合、48週齢以降を使用する。この齢においては、60%で発症する。また、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate(DSS))誘発大腸癌のモデルとしては8週齢以降、より好ましくは16週齢以降を使用する。この齢以降においては、ほぼ100%で発症する。大腸癌のモデルとしては48週齢以降を使用する。この齢においては、20%で発症する。
本発明の被験物質の評価は以下のように行う。モデル動物としてマウスを用いた炎症性疾患の発症・促進効果を評価する場合を下記に例として示す。α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物の飼育下において、被検物質を飲水中に適切な濃度で混入させ、適切な期間、自然に飲水させる。あるいはマウスの腹腔に、注射にて適切な量を投与する。濃度・量や回数、投与期間などは適当な条件を設定する方が好ましい。より炎症反応・発癌を誘発・促進させる目的のため、癌プロモーターとして、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate(DSS))を適切な量・回数・期間で飲水中に含ませて、投与することが好ましい。試験開始時点でのみ被検物質を投与すればイニシエーター(誘発)活性の判定が可能であるし、その後の投与を持続させればプロモーター(促進)活性を評価することが可能である。一定期間の(投与)後に、マウス個体を解剖し、該当する臓器を組織染色法などにより解析する。
(ネガティブ)コントロールとして被検物質を含まない水を飲水させる、あるいはvehicle(被検物質を溶解した溶媒。例えば生理食塩水、PBSなどの溶液)を腹腔注射して、被検物質を投与した場合と比較する。通常、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物の他に、対象となる野生型動物を使用して、同時・同様にして行い、お互いの解析結果を比較をすることによって判定する。判定方法としては、野生型動物と比較して、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物で、より炎症を伴う解析結果が得られるかどうかを基準に判定する。このようにして該被検物質の有害性を評価することが可能である。
モデル動物としてマウスを用いた炎症性疾患の予防・抑制効果を評価する場合を下記に例として示す。α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物の飼育下において、癌イニシエーターであるアゾキシメタン(azoxymethane(AOM))を腹腔に注射するとともに、被検物質を飲水中に適切な濃度で混入させ、適切な期間、自然に飲水させる。あるいは、被検物質をマウスの腹腔に、注射にて適切な量を投与する。投与は同時でも、一定期間後でも良い。濃度・量や回数、投与期間などは適当な条件を設定する方が好ましい。より炎症反応・発癌を誘発・促進させる目的のため、癌プロモーターとして、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate(DSS))を適切な量・回数・期間で飲水中に含ませて、投与することが好ましい。一定期間の(投与)後に、マウス個体を解剖し、該当する臓器を組織染色法などにより解析する。
(ネガティブ)コントロールとして被検物質を含まない水を飲水させる、あるいはvehicle(被検物質を溶解した溶媒。例えば生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)などの溶液)を腹腔注射して、被検物質を投与した場合と比較する。通常、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物の他に、対象となる野生型動物を使用して、同時・同様にして行い、お互いの解析結果を比較をすることによって判定する。判定方法としては、野生型動物と比較して、α1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物で、より炎症が抑制されている解析結果が得られるかどうかを基準に判定する。デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate(DSS))誘発大腸癌のモデルの系に被検物質を組み込むことで、抑制あるいは予防効果があったかどうかを野生型マウスとの比較により行うことができる。このようにして該被検物質の有用性を評価することが可能である。
また、本発明のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物においては、上記したように、粘膜免疫が増強されており、α1,3-フコース転移酵素9酵素阻害剤は、免疫賦活化剤としての使用することが可能である。また、逆に、糖鎖(Lewis x含有)薬剤はトレランス等の免疫抑制作用を有することが期待される。当該モデルマウスは、Lewis xを基軸とした新規免疫制御薬剤の開発とそのスクリーニングに活用できるモデル動物である。また、本発明のモデル動物は、Lewis x機能を代替する化合物等のスクリーニングに使用することが可能である。
α1,3-フコース転移酵素9酵素阻害剤に関しては、天然物・化合物ライブラリ等の上記被験物質の存在下で酵素活性をモニタリングすることによりその選定が可能である。また、一般的なリコンビナント蛋白質の作成法にしたがって、酵素蛋白を作成することが出来、酵素蛋質の立体構造から計算科学的に活性部位をブロックするような化合物を設計して製造することも可能である。
このようにして選定、あるいは設計製造されたα1,3-フコース転移酵素9酵素阻害剤(免疫賦活化剤)の被験物質あるいは前述の糖鎖(Lewis x含有)薬剤等の被験物質は、本発明のα1,3-フコース転移酵素9遺伝子欠損動物に投与され、実際に免疫賦活作用を有するかあるいは免疫抑制作用を有するかを指標にスクリーニングされる。
すなわち、本発明のモデル動物に被試験物質を投与し、免疫反応の程度を解析することにより、免疫賦活化作用の効果を判断することが可能である。
免疫反応の程度は一般的な免疫実験の評価方法(Current Protocols in immunology, John Wiley and Sons, Inc.などを参照)を始め、後述のフルオレッセンス・アクティベーティド・セル・ソーター(FACS)/フローサイトメーターによっても解析可能であるし、組織化学的染色法(および免疫組織化学的染色法)による解析によっても評価できる。
このように免疫反応の効果は、例えば対象とする組織(胃、大腸ほか)の一般的な組織化学的染色法の結果から、組織形態や免疫細胞の浸潤の程度などからも解析可能であるし、動物個体の全身症状などからも判定可能である。
このように免疫反応の効果は、例えば対象とする病理組織(胃、大腸ほか)のヘマトキシリン・エオジン染色のように病理検査室で一般的に使用される組織染色でも、T細胞を検出できる抗CD3抗体や、B細胞を検出できるIgM、B220抗体、もしくは免疫系細胞を同定できるCD45抗体を用いた免疫組織化学的染色法の結果から、免疫細胞の浸潤の程度によって判別可能である。さらには、上皮細胞をはじめとする特定臓器の構成細胞の障害と消失を組織学的に検出することでも可能であるし、血液生化学的には血中CRPやハプトグロビン値の上昇によっても判定可能である。
本明細書中で使用される場合、免疫細胞とは、生体内における免疫(例えば、液性免疫、細胞性免疫)機能を担う細胞又はその前駆細胞をいう。免疫細胞としては、例えば、B細胞、T細胞、NKT細胞等のリンパ球系細胞(lymphoid cell)の他、マクロファージなどが挙げられるが、リンパ球系細胞が好ましい。
各細胞に特異的な細胞マーカーは公知であるので、当業者であれば、免疫学的手法により免疫細胞の種類を同定することが可能であり、また、フルオレッセンス・アクティベーティド・セル・ソーター(FACS)/フローサイトメーター等の細胞ソーティング法を用いることで、免疫細胞をその種類に応じて選別することが可能である。例えば、マウスでは、各細胞マーカーは以下の通りである:B細胞(B220+);T細胞(CD3ε+)、NK細胞(NK1.1+)、NKT細胞(TCR+、NK1.1+);マクロファージ(Mac-1+);プロB細胞(B220+、CD43+、IgM-)、プレB細胞(B220+、CD43-、IgM-);未熟B細胞(B220+、CD43+、IgM +);成熟B細胞(B220+、PNA -);Germinal Center B細胞(B220+、PNA+)。組織に存在する(浸潤する)免疫細胞の判定においては、組織化学的染色法による解析の際に、haematoxylin-eosin染色などの一般的な方法の他に、上記の細胞マーカーを使用して、コンジュゲートした蛍光物質によって、細胞毎に染め分けて解析することも可能である。
以下に、本発明を実施例としてさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に何ら限定・制約されるものではない。
遺伝子操作的手法として、特に断らない限りモレキュラー・クローニング((Molecular Cloning - A laboratory Manual、Sambrook and Russell社刊)に記載された公知の方法を用いた。
実施例1
α1,3-フコース転移酵素9欠損(ノックアウト)マウス作製
クローニングした遺伝子をもとに、α1,3-フコース転移酵素9欠損マウスを作製した。具体的な方法を以下に示す。α1,3-フコース転移酵素9(以下、Fut9)対立遺伝子を欠損したES細胞を作製するために、まず置換型ターゲティング用ベクターDNAを作製した。その概略図を図1に示す。
本ベクターを作製するために、マウスのゲノムDNAクローンを分離した。クローンの分離にはλFixII phage genomic library(129/Svマウス由来、ストラタジーン社)をDNAプローブにてスクリーニングして行った。プローブにはCB-197(5’末側-AAGCCTAATGCTTGCTCTCAGTCG-3’末側;配列番号1)およびCB-56 (5’末側-CCACATGAATGAATGAATCAGCTGG-3’末側;配列番号2)を用いたPCR(Taq DNAポリメラーゼを用い、94℃で1分、64℃で1分、72℃で3分、の3ステップを35サイクル反応させた)で増幅される約3-kbpのDNA断片(イントロン2からFut9ORF:エキソン3の一部までを含む領域を増幅した)を使用した。
その結果、3種類のゲノムクローン(IMFT9-11、IMFT9-25、IMFT9-31)を得た(図1)。これらを用いて、置換型ターゲティング用ベクターpFut9F[tkneo]を作製した。組み込むネオマイシン耐性遺伝子はpMC-Neo PolyAベクター(ストラタジーン社)から調製した。Positive-Negative選別のためにHerpes Simple Virus Thymidine kinase遺伝子をターゲティング用ベクターの3’-末端側に組み込んだ。v17-2 Embryonic stem (ES)細胞はDMEM培地(15%ウシ胎仔血清、1000 U/ml Leukemia inhibitory factor、100 μM 2-mercaptoethanol含有)を用いて、mouse embryonic fibroblast feeder細胞上に培養した。制限酵素Not Iで消化したターゲティングベクター、25μgをES細胞にエレクトロポレーション法(0.35kV、250 μF、0.2 cm electrode gap)により遺伝子導入した。
ネオマイシン耐性遺伝子のcassetteを、Fut9のORF(exon 3)を含むゲノムDNAの約3 kbpと相同組換えによって置換したES細胞はGeneticin(250μg、インビトロジェン社)およびGanciclovir(2 μM、Synex社)の存在下で培養(8〜10日程度)・選別し、相同組換えを起こしたES細胞クローンを得た。これらのクローンから正しく相同組換えを起こしているクローンを、PCRおよびサザンブロッティング法により選別した。
クローン選別のためのPCRには、プライマーDNAとして、Fut9遺伝子のゲノム(イントロン)領域に特異的な配列を有するCB-199 (5’末側-ACATTGGGTGGAAACATTCCAG-3’末側;配列番号3)、neo遺伝子に特異的な配列を有するCB-197 (5’末側-AAGCCTAATGCTTGCTCTCAGTCG-3’末側;配列番号1)、マウスFut9遺伝子に特異的な配列を有するCB-280(5’末側-TTTGCTACATCAATTAGCTCCCCT-3’末側;配列番号4)を使用した。CB-197とCB-280の組み合わせはFut9遺伝子に特異的なプライマーであり、野生型マウスのゲノムDNAからは3.5-kbpのバンドを増幅する。一方で、CB-197とCB-199の組み合わせはFut9遺伝子に特異的なプライマーであり、野生型マウスのゲノムDNAからは2.2-kbpのバンドを増幅する。PCRは一般的な方法・適切な条件下で行うことが可能であるが、本研究ではDNAポリメラーゼとして、LA Taq (タカラバイオ社)を使用して行った。PCRサイクル条件はまず94℃で1分加熱してゲノムDNAをdenatureし、その後、98℃で1秒、続き58℃で5分、の2ステップを50サイクル繰り返して増幅を行った。その生成物を1%アガロース電気泳動にて確認し、相同組換えの判定もしくは遺伝子型の判定などを行った。
クローン選別のためのサザンブロッティング法には、25 μgのゲノムDNAを制限酵素Sac Iで消化し、それを0.8%アガロース電気泳動にて分離し、常法(Molecular Cloning - A laboratory Manual、Sambrook and Russell社刊、などを参照)に従って解析を行った。プローブDNAは、Fut9遺伝子ゲノムDNAのうち、ターゲティングベクターに含まれていない領域の、(PCRにより得られた増幅)DNA断片を使用した(図1)。図1に示した位置の配列に相同なDNAプローブを用いて同定したSac I消化ゲノムのバンドとしては、野生型由来ゲノムDNAからは約8-kbのDNAバンドが、変異(Fut9欠損)マウス由来ゲノムDNAからは約15-kbのDNAバンドが、それぞれ確認される(ヘテロマウスはその両方が確認される)。
以上のように同定された、Fut9遺伝子をターゲットされたES細胞は、キメラマウスを作製するために、C57BL/6マウスの胚盤胞(blastocyst)にマイクロインジェクション法により導入した。germ line transmissionを得るために、キメリズムの高い雄マウス個体を毛色によって判定し、これを用いて、雌の野生型マウス(C57BL/6)と交配させ、その産仔を得た。ここから上記の判定用PCRを用いてヘテロマウスを同定した。雄のヘテロマウスおよび雌のヘテロマウスとを交配し、ホモマウス(Fut9欠損)個体を得た。ホモマウスは生殖能等には大きな支障は見られないため、繁殖可能である。そこで、目的や用途に合わせて、野生型(C57BL/6)マウスと戻し交配させ、遺伝的背景の統一を図るなどした。
実施例2
実施例1で得た48週齢のFut9欠損および野生型マウスの胃粘膜を採材してコルク板に貼付け、リン酸バッファー緩衝10%ホルマリンに一晩浸して進展固定した。胃粘膜を5mm幅で短冊状にカットした後、TP1050(LEICA社製)にサンプルをセットしてパラフィン置換して、EG1160(LEICA社製)を用いてパラフィンブロック標本とした。パラフィン標本用ミクロトームSM2000R(LEICA社製)を用いてパラフィンブロックを3μm厚で薄切し、スライドガラスに乗せて病理検査用標本を作成した。病理組織像の観察の為キシレンに浸してパラフィンを除いた後、100%エタノールで親水化してから、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行なった。HE染色の手順は以下の通りである。マイヤーのヘマトキシリン液(WAKO社製)に室温で10分間反応させた後、10分間水道水で流洗し、続いてエオジン液(WAKO社製)に10秒間反応させ、アルコール脱水およびキシレンによる透徹を経て、ENTELLAN (MERCK社)を用いて封入した。出来上がった標本は良く乾かした後、光学顕微鏡(DM3000, LEICA社製)を用いて観察、写真撮影を行なった。
増生する粘液細胞の検出は、HIK-1083 抗体を用いた免疫染色によって行なった。スライドガラスに乗せた病理検査用標本をキシレンに浸してパラフィンを除いた後、0.3%過酸化水素水を含むPBSバッファーで15分間処理した。PBSで洗浄した後、ABC ELITE KIT FOR MOUSE (VECTOR社)に添付されたhorse serumを20分間反応させ、ついでHIK-1083 抗体を一晩4度の条件で反応させた。HIK-1083抗体の反応は、ABC ELITE KIT FOR MOUSEによってDAB Tablet (WAKO社製)を用いて行ない、マイヤーのヘマトキシリン液(WAKO社製)に室温で1分間反応させた後、3分間水道水で流洗した後、アルコール脱水およびキシレンによる透徹を経て、ENTELLAN (MERCK社)を用いて封入した。結果を図2に示した。
マウスの胃粘膜病変について見ると、Mucous cell hyperplasiaを呈する個体頻度は、Fut9欠損マウスで最も高く、野生型マウスでは最も低い。Fut9欠損マウスでは野生型マウスに比較して、加齢とともに粘膜肥厚などの病変が見られるようになる。また、Fut9欠損マウスは、野生型マウスとの比較において、明確な炎症細胞浸潤があると判断できなかった。
胃粘膜病理組織標本を、病理形態学的に野生型マウスとFut9ノックアウトマウスを比較検討した。弱拡大で観察すると、胃体部前後壁の胃底腺粘膜領域で肥厚をみとめた。強拡大による観察で、肥厚は胃底腺腺底部における粘液産生細胞の出現によることが明らかとなった。なお、粘液細胞はHIK-1083に陽性で、副細胞特異的に存在するIII型粘液を産生するものであった。野生型マウスと比較するとFut9ノックアウトマウスでは、HIK-1083陽性細胞の増加が有為であり、この増生による粘膜肥厚が顕著であることが明らかとなった。
次に、実施例1で得た、12ヶ月齢以上24ヶ月齢以内の、野生型マウスおよびFut9ノックアウトマウスを合計159匹解剖した。採材から病理標本の作製とHE染色の実施は、実施例2に示す通りである。採材した胃は、コルクボードに伸展して張り付け、10%リン酸バッファー緩衝ホルマリンに浸潤させて固定した。胃粘膜を短冊状に裁断した後、自動パラフィン包埋標本作製機にかけ、パラフィン包埋標本を作製した。マイクロトームを用いて、作製したパラフィン包埋標本から3μm厚の切片を作製してガラススライドに伸展し、HE染色を行って病理組織像を解析した。細胞浸潤の度合いに合わせて、(浸潤無し)-/+/++(浸潤多い)の3段階に判定した。その結果、野生型マウスに比較して、Fut9ノックアウトマウスではmucous cell hyperplasiaが多く見られるようになっており(図3(a))、Fut9欠損マウスでは該病変を有する個体数の割合が増加していた。これは、単核球浸潤を伴った胃底腺領域の粘液細胞化成およびその過形成性の病変である。また、胃組織への炎症性細胞の浸潤には、野生型マウスとFut9欠損マウスでは明確な差は認められなかった(図3(b))。
Fut9欠損マウスに見られる病変は、ヒトの慢性胃炎に見られる胃粘膜病変に類似性を認めるものである。マウス胃粘膜下組織へエチルアルコールや酢酸と言った化学物質を局所注入した場合においても、粘膜に炎症を惹起できることがこれまでにも知られているが、慢性胃炎に見られる胃粘膜病変と言うよりはむしろ、急性胃炎としての組織学的特徴が目立つものである。
実施例3
胃炎で発現増強することが知られている、IL-1β, IL-6, CCL5等の各種サイトカインをC57BL/6マウス胃粘膜下に投与し、Fut9欠損マウスにみられる胃粘膜変化の再現を試みた。なお、TGF-β・IL6Rシグナルと胃粘膜病変の関連について文献にて報告されている(非特許文献:Nat Med. 2005 Aug;11(8):845-52. Epub 2005 Jul 24)。
具体的な方法は以下の通りである。野生型マウスの胃粘膜下に、各種薬剤および、リコンビナントサイトカインを投与することで出現する粘膜変化を検索した。8週齢のC57BL/6マウスを、イソフルランに依る麻酔を施して、安全キャビネット内でアルコールおよびイソジンを用いて切開部の滅菌を行った。次に、右側胸腹部より臍上部方向へ斜めに皮膚を1cm程度切開した。次いで腹膜を切開した後、術野に現れた胃壁の全景がよく見える様に小腸及び大腸をよけた。投与薬剤は、前胃・腺胃境界部より5mmの前壁中央部粘膜下組織に、ハミルトンシリンジを用いて、投与した。投与したサイトカインは、IL-1β 200ng/20μl PBS、IL-6 200ng/20μl PBS、CCL5 200ng/20μl PBSであり、コントロールとしてPBS 20μlを投与した。リコンビナントサイトカインは、全てR&Dsystem社から購入して使用した。
サイトカイン投与後2週間目に採材した胃をコルクボードに伸展し、10%リン酸バッファー緩衝ホルマリンに浸潤させて固定した。3μm厚の病理切片の作製は、実施例2と同様に行なった。ここでは、H.E染色の他に、武藤化学薬品より購入した各種粘液染色試薬(Muci-Carmin, Periodic acd Schiff(PAS), alucian blue)を用いて、試薬それぞれに添付されたプロトコールにしたがって染色した(図4)。なお、type III粘液はHIK-1083抗体を用いて検出し、type II 粘液としてsialyl Tn抗原を認識するB72.3抗体を用い、HIK-1083抗体を用いた場合と同様、実施例2に示した方法と同様にして免疫染色を実施した。
各組織染色は市販の試薬それぞれに添付されたプロトコールにしたがって染色したが、一連の染色方法を下記に示しておく。
ムチカルミン染色は、上皮性の粘液だけを観察する目的に便利な方法であることが知られている。ムチカルミン染色(mucicarmin)染色は、下記の方法に従って行った。2〜3μmのパラフィン切片を20%ホルマリンで固定した。キシロール3槽およびアルコール2槽で脱パラを行った。脱パラした切片を5分間水洗い後、蒸留水に通した。次にヘマトキシリン(カラッチ)で10分間、核染色し、染色後に流水中にて10分間色出しを行った。次にムチカルミン染色液(染色原液を蒸留水で10倍希釈して使用した)で粘液を20〜30分染色した。染色後に1分間水洗いを行い、脱水・透徹をして切片を封入した。その後、顕微鏡下にて観察・解析を行った。
PAS(periodic acid Schiff)染色は粘液の証明や血球の多糖類証明として応用されるようになった粘液染色法の一つである。PAS染色は、下記の方法に従って行った。2〜数μm位のパラフィン切片をカルノア、ホルマリン、中性緩衝ホルマリン、アルコール(アルコール9:ホルマリン1)もしくは20%ホルマリンで固定した。キシロール3槽・100~70%アルコールに各5分間通して脱パラを行った。脱パラした切片を水洗い後、蒸留水に通した。1%過ヨード酸液に10分間浸け酸化させる。酸化後に蒸留水で5分間水洗いを行った。染色はコールド・シップ試薬を用いて15分間染めた。次に亜硫酸水に2分間通しこれを3回繰り返す。さらに流水で5分間水洗いした後に、ヘマトキシリンで核の染色を3〜4分間行った。染色後に流水中にて5分間ほど色出しを行い70〜100%アルコールで脱水する。最後にキシロール3槽で各5分間透徹を行った。その後、顕微鏡下にて観察・解析を行った。
アルシアン青(alcian blue)染色は、下記の方法に従って行った。パラフィン切片を20%ホルマリンで固定した。キシロール・100〜60%アルコールにて脱パラをした。流水で5分間水洗いを行った後、蒸留水に3回通し洗浄した。3%醋酸にて1分間親和させた後に、室温にもどしたアルシアン青染色液(pH2.5)で粘液を15〜20分間染色した。次に3%醋酸で肉眼で青色がなくなるまで脱色し(5回)、流水で5分間水洗いした。さらにケルネヒトロート液で1〜2分間、核染色した。核染色後に1分間水洗いを行い、脱水・透徹をして切片を封入した。その後、顕微鏡下にて観察・解析を行った。
type III粘液染色は実施例2に記載の方法と同様にして行った。HIK-1083を一次抗体として使用した。薄切した切片で反応させた後、Vector LabのMOM kitによってその特異的結合を検出した。尚、III型粘液とはパラドックス染色によって検出される粘液で、胃の腺粘液細胞と十二指腸のブルンネル腺で特異的に産生される。単クローン抗体HIK-1083は糖鎖GlcNAcα1-4Galβ残基 を認識し、パラドックス染色と同様に胃粘膜の腺粘液細胞と特異的に反応する。
type II粘液染色は実施例2に記載の方法と同様にして行った。B72.3を一次抗体として使用した。薄切した切片で反応させた後、Vector LabのMOM kitによってその特異的結合を検出した。尚、シアリルTn抗原(STN)は、ヒトシアル酸転移酵素ST6GalNAc Iが合成する母核糖鎖抗原で、モノクローナル抗体B72.3やTKH2等がその構造を認識する。
その結果、IL-6を胃壁へ投与したマウスでは、粘膜下組織に強い炎症細胞浸潤を認めた(図4)。また、胃底腺粘膜腺上皮には粘液細胞の増生が確認された。増生する粘液細胞集団は、mucicarmin, PAS, alucian blue, type III 及びSTn抗原を含むtype II 粘液を有していた。これらの所見は、粘液上皮の増生が胃底腺領域に生じた炎症とそれによる上皮の障害によって生じた偽幽門線〜腸上皮化生と同義であることを意味する。この組織学的所見は、Fut9ノックアウトマウスで認められた病変と極めて類似する組織像を示していた。
当該病変はIL-6サイトカインの萎縮性サイトカイン過剰発現による胃粘膜病変の粘膜保護等の治療対象となる
実施例4
綿羊保存血(SHEEP WHOLE BLOOD ALSERERS STERILE:SRBC)を免疫して、免疫時の反応を確認した。免疫方法は、新鮮な綿羊保存血(SHEEP WHOLE BLOOD ALSERERS STERILE)を(株)日本生物材料センターより購入し、buffy coatを除去するようにしながらPBSで血球を2000rpm、10分で3回洗浄し、必要時まで、Alserer液で保存した。免疫時にPBSで2回洗浄し、血球計算盤で希釈血球の数を数えて2 x 109/ mlになるように調整した。これを、一匹あたり0.2 mlずつ、腹腔に注射した(4 x 108 / 200 ml)。免疫した日を0日とし、翌日を1日後と数えた。
SRBC免疫マウス4,7,10 後の脾臓を摘出し、単細胞にしてから、混入した赤血球をGueys solutionで溶解後洗浄し、リンパ球数を数えた。それぞれ1x106の細胞をFACSバッファー
(1%-BSA-0.1%-PBS)で洗浄後、抗CD16/32抗体(2.4G2)1mgと反応させ非特異的吸着を阻害した後、それぞれの抗体と最適希釈(0.1〜5mg/ml) 100ml中氷上で30分反応させ洗浄後0.5% paraformaldehideで固定後BD FACSCnto IIで解析した。T-B細胞比は、FITC-抗CD3e抗体(145-2C11, BD Biosciences社製)とPE-抗CD45R/B220抗体(RA3-6B2, eBioScience社製)で解析した。CD4-CD8比は、加齢に伴って出現するCD8+Gr1+細胞の同定もかねて、PE/Cy5-抗LY-6G/Ly-6C (Gr-1)抗体(RB6-8C5, BioLegend社製)とFITC-抗CD4抗体(GK1.5 BD Biosciences社製)とPE-抗CD8a抗体(53-6.7, BD Biosciences社製)で解析した。Marginal zoon B細胞は、B220+CD23-CD21highHSAlowIgMhighを細胞表面マーカーとして示している人も多いが、B220+IgMhighIgDlowの細胞集団の割合がほぼ一致するのでこちらを用い、APC-cy7-抗CD45R/B220抗体(RA3-6B2, BD Biosciences社製)とFITC-抗IgM抗体(eB121-15F9, eBioscience社製)とPE-抗IgD抗体(11-26, eBioscience社製)で解析した。Germinal cnter B細胞は、APC-cy7-抗CD45R/B220抗体(RA3-6B2, BD Biosciences社製)とPE-抗IgM抗体(eB121-15F9, eBioscience社製)とFITC-PNA(Vector社製)で解析した。Myeloid系の細胞の解析は、PE/Cy5-抗LY-6G/Ly-6C (Gr-1)抗体(RB6-8C5, BioLegend社製)とPE-抗F4/80(BM8, eBioscience社製)とFITC-CD11b(M1/70, BD Biosciences社製)で解析した。PNAは最適希釈(1〜10 mg/ml)で使用した。
marginal zoon (IgM+IgD-) B 細胞の免疫後の変化を細胞表面蛋白質の抗体による染色により解析した。野生型マウスならびにFut9欠損マウス由来の脾臓細胞を用いて、細胞表面蛋白質の抗体による染色解析を行った方法は下記の通りである。抗体による免疫学的染色法は下記に限定されるものではなく、一般的な方法により同様の解析が可能である。marginal zoon (IgM+IgD-) B 細胞の免疫後の変化。免疫後、4、7、10日に、脾臓を摘出し、リンパ球を蛍光標識抗体で染色後、BD FACSCanto IIフローサイトメーターで解析した。各細胞をFITC(フルオレセインイソチオシアネート)・Phycoerythrin(PE)・Peridinin chlorophyll protein(PerCP)などの適切な蛍光がコンジュゲート(conjugate)された抗体やレクチンを用いて蛍光抗体染色し、フルオレッセンス・アクティベーティド・セル・ソーター(FACS)/フローサイトメーターを用いて解析した。抗体あるいはレクチンはBD Biosicences社、eBioscience社、SIGMA社、 EY labpratories社、Vector社、生化学工業株式会社などから市販されているものを使用した。
具体的方法を以下に示す。単細胞に分離した各細胞(約1×106)をマイクロチューブ(15ml:エッペンドルフ社製)にとり、遠心分離(600×g、7分間)により細胞を集めた。該細胞を1mlの0.1%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液A-PBS(PBS:8g/lNaCl、0.2g/l KCl、1.15g/l Na2HPO4(無水)、0.2g/l KH2PO4、1.0% ウシアルブミン、0.1% アジ化ナトリウム)で洗浄した後、該洗浄細胞にA-PBSで約10μg/mlに希釈した上記抗体・レクチンを20μl加えて懸濁し、4℃で1時間反応させた。反応後、細胞を1mlのA-PBSで1回洗浄した後、各蛍光標識抗体・レクチンをA-PBSで100倍希釈した溶液を100μl加えて懸濁し、遮光下4℃で30分間反応させた。反応後、細胞を1mlのPBSで1回洗浄した後、1mlの0.5% paraformaldehideに懸濁し、固定した。これらの細胞をフローサイトメーター[FACSCalibur装置あるいはFACSCanto II装置;Beckton Dickinson社製]を用いて解析を行なった。また対照実験として、各抗体の代わりにisotype抗体を用いて同様の解析を行なった。このようにして細胞表面の抗原解析を行った。
SRBC免疫後の脾臓リンパ球の表面抗原を蛍光標識抗体で染色後、BDFACSCanto IIフローサイトメーターで解析したところ、T細胞とB細胞の比率、CD4細胞とCD8細胞の比率などにおいて、野生型マウスとFut9欠損マウスで大きな変化の傾向は見られなかった。しかし、marginal zoon B細胞の出現について、Fut9欠損マウスでは野生型マウスと比較して早まっているものがみられた(図5a)。上段は、全脾臓細胞に対するB220+PNA+細胞の割合(100分率)を示す。免疫後の変化を、黒丸はマウスの個体ごとのIgM+IgD-細胞の割合を、赤丸はその平均値を示している。Fut9欠損マウスのB細胞では、免疫初期(4日後)で、IgM+IgD-細胞の増加が異常に亢進しているものがみられた。図の下段には代表例を示した。B細胞マーカーB220陽性細胞(緑)のIgM+IgD-細胞(青)の全リンパ球(赤)に対する割合を計算した。
marginal zoon B細胞におけるIgM+IgD-細胞の細胞分率は、4日目では、野生型マウス:7.0%、Fut9欠損マウス:9.8%、7日目では野生型マウス:6.5%、Fut9欠損マウス:7.8%、10日目では野生型マウス:6.4%、Fut9欠損マウス:7.0%、であった(図5a)。
上記SRBC免疫後の脾臓リンパ球の表面抗原のフローサイトメーターによる解析を行い、germinal center B (B220+PNA+)細胞の免疫後の変化を解析した。SRBCで免疫後、4、7、10日に、脾臓を摘出し、リンパ球を蛍光標識抗体またはレクチンで染色後、BD FACSCanto IIフローサイトメーターで解析した。B細胞マーカーB220陽性細胞のPNAレクチン染色性のヒストグラムを示した。B220陽性細胞のPNA結合陽性細胞の割合とその下に全リンパ球数に対する割合を示した(図5b)。その結果、germinal center B細胞の出現について、Fut9欠損マウスでは野生型マウスと比較して早まっているものがみられた。野生型マウスならびにFut9欠損マウスの脾細胞中のgerminal center B細胞を解析すると、FUT9欠損マウスでは活性化細胞(B220+PNA+)の増加が見られた。特に、Fut9欠損マウスのB細胞では、免疫初期(7日後)で、B220+PNA+細胞の増加が異常に亢進しているものがみられた。全脾臓細胞における活性化細胞(B220+PNA+)の細胞分率は、4日目では、野生型マウス:2.1%、Fut9欠損マウス:2.8%、7日目では野生型マウス:3.3%、Fut9欠損マウス:6.7%、10日目では野生型マウス:5.6%、Fut9欠損マウス:5.9%、であった。B220(CD45R)はB細胞のマーカー、PNAは活性化のマーカーである。PNAレクチン陽性の細胞は、GL-7(同じくリンパ球細胞の活性化のマーカー)陽性の細胞と、同一の細胞集団であることが分かっている(Mol Cell Biol. 2007 Apr;27(8):3008-22.)。また、わずかにGr1+CD11b+細胞の増加がみられた。
加齢マウスのリンパ球解析でも、T細胞とB細胞の比率、CD4細胞とCD8細胞の比率には、大きな変化がみられなかった。一方、Gr1+CD11b+細胞の増加がみられた。野生型マウス計11匹、Fut9ヘテロマウス計25匹、Fut9ホモマウス(Fut9欠損マウス)計23匹の解析のうち、Gr1+CD11b+細胞の増加は、Wt3匹、ヘテロ13匹、ホモ17匹であった。強度のGr1+CD11b+細胞の増加があるものは、Wt 1匹、ヘテロ4匹、ホモ7匹であった。
Marginal zoonのB細胞は、myeloid系の細胞により提示された抗原と出会い活性化される。その後、B細胞瀘胞内に入り、抗原を認識できるT細胞と出会うと、germinal centerに入り、抗体のクラススイッチや体細胞突然変異をおこし親和性成熟する。通常免疫後3〜4日でmarginal zoon B細胞が増殖し、germinal center B細胞の増加は、10〜14日がピークと考えられている。Fut9欠損マウスでは、marginal zoonのB細胞が、免疫4日後で、野生型マウスと比べて異常に増加する個体が観察され、germinalcenterのB細胞が免疫7日後でピーク時と同じぐらいの数に増大するのがみられた。また、免疫時にわずかに出現するGr1+CD11b+細胞が、加齢マウスでは増加しているものが多くみられた。これらのリンパ球の細胞集団の変化は、Fut9が欠損したことによる直接の細胞の分化異常というよりは、免疫応答が鋭敏におこる機能を獲得したと考えられる。
SRBCで免疫すると野生型マウスでは、Gr-1+CD11b+細胞が7日目をピークとすることが確認された。野生型マウスと比較してFUT9欠損マウスではSRBC免疫後4日後以降で、Gr-1+CD11b+細胞の増加及びIgM+IgD-のmarginal zone B細胞の増加がみられた。多少なり個体差はあるが、いずれもFut9欠損マウスでは、PNAレクチン陽性のmarginal zone B細胞(B220+PNA+細胞)が7日目に大幅に増加していることが分かった(図5A、5B)。免疫反応が促進している結果が得られた。
実施例5
新鮮な綿羊保存血(SHEEP WHOLE BLOOD ALSERERS STERILE)は、(株)日本生物材料センターより購入した。遠心操作によってbuffy coatを除去した後、PBSで血球を2000 rpm、10分で3回洗浄し、必要時まで、アルゼバー氏液で保存した。投与時にはアルゼバー氏液を除去するためにPBSで2回洗浄し、血球計算盤で希釈血球の数を数えて2x 109 / mlになるように調整した。これを、一匹あたり0.2 mlずつ、腹腔に注射し(4 x 108 /200 ml)。免疫した日を0日とし、7日目に脾臓を採取した。野生型マウスおよびFut9欠損マウスより採取した脾臓は、液体窒素中ですみやかに凍結し、凍結ミクロトームCM305S(ライカ)を用いて10μm厚の薄切標本を作成してスライドガラスに貼付けた。薄切標本は十分に風乾した後、アセトンで固定してから免疫染色に供した。PNAの染色法は実施例2に従い、抗体の代わりにPNAレクチンを用い、ABC ELITE KIT FOR MOUSE (VECTOR社)に添付された試薬を用いて行った。
上記の方法にて解析した結果を図6(a)に示した。それぞれ4、7、10日後に採材し、PNAレクチン染色を行った。野生型マウス(図上段)に比較してFut9欠損マウス(図下段)では、PNA陽性細胞が非常に増加(亢進)している。
上記の方法にて解析した結果を図6(b)に示した。SRBCを免疫した後の、Fut9欠損マウス脾臓のPNAレクチン染色像は6、7、8日後に採材し、PNAレクチン染色を行った結果を示している。綿羊保存血(SHEEP WHOLE BLOOD ALSERERS STERILE:SRBC)投与(Stiumlation(+))と、ビークルコントロールとしてPBSを投与(Stimulation(-))したマウスより採材したものである。
実施例6
新鮮な綿羊保存血(SHEEP WHOLE BLOOD ALSERERS STERILE)は、(株)日本生物材料センターより購入した。遠心操作によってbuffy coatを除去した後、PBSで血球を2000rpm、10分で3回洗浄し、必要時まで、アルゼバー氏液で保存した。投与時にはアルゼバー氏液を除去するためにPBSで2回洗浄し、血球計算盤で希釈血球の数を数えて2x 109 / mlになるように調整した。これを、免疫のために一匹あたり0.2 mlずつ、腹腔に注射した(4 x 108/ 200 ml)。免疫した日を0日とし、7日目に脾臓を採取した。野生型マウスおよびFut9欠損マウスより採取した脾臓は、液体窒素中ですみやかに凍結し、凍結ミクロトームCM305S(ライカ)を用いて10μm厚の薄切標本を作成してスライドガラスに貼付けた。薄切標本は十分に風乾した後、アセトンで固定してから免疫染色に供した。
まずFcブロッカー(BD Pharmingen)を適量と5%ウシアルブミンを含むリン酸緩衝液(ブロッキングバッファー)を20分間反応させた。次いで、5%BSAを含むリン酸バッファー緩衝液を室温で1時間反応させた後、PBSで希釈したFITCラベル抗T cell receptor beta chain(bTCR)抗体(BDpharmingen社製。T細胞を検出し、本明細書の結果では緑色の信号で示される)もしくはAlexa488ラベル抗CD3echain抗体(BioLegend社製。T細胞を検出し、本明細書の結果では緑色の信号で示される)、PE/Cy5.5ラベル抗CD45R抗体(BioLegend社製。B220はB細胞を検出し、本明細書の結果では青色の信号で示される)、ビオチン標識抗Metallophillic Marophage抗体(MOMA-1:AbCAM社製)を同時に反応させた。次いで、PBS溶液中で5分間インキュベートすることを3回以上くり返して洗浄し、引き続いて標本中におけるMOMA-1の特異的検出の為に、1000倍希釈したAlexa564ラベルストレプトアビジン(Molecular Probe社製。本明細書の結果では赤色の信号で示される)を30分間室温で反応させた。カバーガラスをマウントする際、蛍光減衰の防止の為、Prolong Gold(Molecular Probe社)を封入剤として使用した。観察は、LSM510(ZEISS社製)を用いてを行ない、画像データとして取得した。尚、これらの解析はSRBCを免疫するものの他に、免疫を行わない無処置のマウス個体でも行った。
まず、無処置のマウスより採材した脾臓を用いて上記の方法により解析した結果を図7に示す。bTCR抗体でT細胞が検出され(緑色の信号)、B220抗体でB細胞が検出されている(青色の信号)。赤色で、MOMA-1抗体によってmarginal zoneの周囲に存在する metallophilic macrophageが検出されている。最下段にはこれらのマージイメージが示されている(図7)。脾臓を抗体により染色した結果、野生型マウスに比較してFut9欠損マウスでは、MOMA-1抗体により染色されるような、marginal zoneの周囲に存在するmarginal metallophilic macrophage(MOMA-1陽性細胞)が大幅に増加して存在していることが明らかとなった。
そして、SRBCを免疫した、刺激時の脾臓を用いて、同様の方法により解析した結果を図8に示す。CD3e抗体でT細胞が検出され(緑色の信号)、B220抗体でB細胞が検出されている(青色の信号)。赤色で、MOMA-1抗体によってmarginal zoneの周囲に存在する metallophilic macrophageが検出される。示した図はいずれもこれらシグナルのマージイメージである。上段は、Fut9欠損マウス、下段は野生型マウスである。それぞれのマウスに、ビークルコントロールとしてPBSの腹腔への投与(Stimulation(-))もしくは、洗浄綿羊赤血球の腹腔への投与(Stimulation(+))を行ない(4 x 108 / 200 ml)、免疫した日を0日とし、7日目に脾臓を採取した時の染色像である。野生型マウスに比較してFut9欠損マウスでは、MOMA-1陽性細胞/marginal metallophilic macrophageの増加とともに、その周囲で反応しているmarginal zone B細胞の反応性(増殖性)が大幅に亢進していることが明らかとなった(図8)。このように、Fut9欠損マウスでは免疫反応(炎症反応)が非常に亢進しやすくなっていることが明らかとなった。
実施例7
潰瘍性大腸炎誘導大腸癌発癌モデル試験(以下、Colitis試験)の系を用いて、発癌への糖鎖の影響を調べた。文献 [Tanaka T, Kohno H, Suzuki R, Yamada Y, Sugie S, Mori H.:A novel inflammation-related mouse colon carcinogenesis model induced by azoxymethane and dextran sodium sulfate.:Cancer Sci. 2003 Nov;94(11):965-73.] を参考に行った。具体的な方法を書きに示す。
実施例1で得た16〜24週齢のFut9欠損および野生型マウスを用いて解析を行った。Fut9欠損マウス(遺伝学的背景C57/BL6系統およびBLAB/c系統それぞれ4匹または7匹)と対象コントロールである野生型マウス(遺伝学的背景C57/BL6系統およびBLAB/c系統それぞれ4匹または7匹)を用いて、大腸炎モデルにより、発癌への影響を確認した。方法としては以下の通りである。
azoxymethane (AOM)を12.5mg/Kg/b.w PBS(500 ulとする) でマウス腹腔への注射を行った(1度のみ)。1週間後から、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate(DSS))の投与を行った。方法としては、DSSを2%含む水道水を調製して、5日間の飲水による投与で行った。その後(6日目)、通常の水道水(DSSを含まない)に戻し、16日間飼育(飲水)した(インターバル期間)。DSSの投与はこれを1クールとし、計3クール行った。3クール目が終了後、全ての個体について解剖して病理解析(haematoxylin-eosin染色)を行い、炎症の程度(血球細胞の浸潤や異型)や、異形成や発癌が起こっているかどうかの確認を行った結果を図9に示す。Fut9欠損マウス(上段)および野生型マウス(下段)を示してある。図の下部にはa〜iまでのそれぞれの部位の拡大図を示している。また、該実験で得られたマウス個体群において、polypの出現が見られた数(左側)、および個体あたりのpolyp数の平均値(右側)を棒グラフにて示している。
解析の結果、野生型マウスではあまり異形成ならびに発癌を起こしていないにも関わらず、Fut9欠損マウスでは、異形成ならびに発癌の数や程度が亢進していた。
以上のことから、Fut9欠損マウスでは免疫反応が非常に亢進していることが明らかとなり、これらを背景とする大腸の炎症・大腸癌発癌が亢進するということを明らかとした。AOM(発癌のinitiatortorしての作用を有する化合物)およびDSS(発癌のpromoterとしての作用を有する化合物)は大腸発癌を誘導する。(どちらかだけでは発癌までは至らない。)野生型マウスでは、発癌まで至っていない状況(AOM少量)で、Fut9 KOマウスでは、癌形性が非常に亢進している。これはFut9 KOマウスの応答が非常に高感受性のため、野生型では見られない感度で癌化が起こってくると考えられる。つまり、これを使用することによって少量での(高感度な)スクリーニングに応用(動物試験)が可能であると考えられる。また、逆に造腫瘍性作用に対する抑制剤のスクリーニングにも応用可能であり、非常に有用である。


マウスFut9遺伝子ゲノム構造(図1A)と、ターゲティングベクター構造、ならびにゲノム相同組換えの概略図(図1B)である。図1A中、ボックスは各エキソン構造を示している。線部分はイントロン構造である。Fut9 ORFは斜線で示してある。分離・同定した3つのゲノムクローンの相当する部分を示している。Bは制限酵素BamH Iの位置、Spは制限酵素Spe Iの位置、Saは制限酵素SacIの位置を示している。図1B中、3つの構造は、上から野生型マウスのFut9遺伝子ゲノム構造(Fut9wt)、ターゲティングベクターの構造(pFut9F[tkneo])、相同組換えの起こった後のFut9欠損(ノックアウト)マウスのゲノム構造(Fut9neo)を示している。黒く塗りつぶされた四角は、Fut9 ORFを含む、エキソン3を示している。線部分はイントロン構造などを含むエキソン以外の配列である。PCRによる組換え判定・遺伝子型判定などに用いる、DNAプライマーの相同位置を矢頭で示している。また、サザンブロッティング法に用いるプローブの位置を太線で示している。Bは制限酵素BamH Iの位置、Spは制限酵素Spe Iの位置、Saは制限酵素Sac Iの位置を示している。 Fut9欠損マウスの胃粘膜病変を示す図である。生型マウス、Fut9欠損マウス、ヘテロマウスにおけるmucous cell hyperplasiaの発症頻度を示す (図左)。KO:Fut9欠損マウス、hetero:ヘテロマウス、WT:野生型マウスを示す。図右は、野生型マウス、Fut9欠損マウス、ヘテロマウスにおける炎症性細胞浸潤の程度を示す。細胞浸潤の度合いに合わせて、(浸潤無し)-/+/++(浸潤多い)の3段階に判定した。 Aは、mucous cell hyperplasiaを起こしている個体数の解析結果を示し、Bは、マウス個体における炎症性細胞の浸潤の割合を示す図である。図中、KO:Fut9欠損マウス、hetero:ヘテロマウス、WT:野生型マウス。 各種遺伝子改変マウスにおける、胃粘膜病変の様子を示す図である。 図5(a)はSRBC免疫後の脾臓リンパ球の表面抗原のフローサイトメーターによる解析結果を、図5(b)はSRBC免疫後の脾臓リンパ球の表面抗原のフローサイトメーターによる解析結果を示す図である。 図6(a)はSRBCを免疫した後の脾臓のPNAレクチン染色像を、また図6(b)はSRBCを免疫した後の、Fut9欠損マウス脾臓のPNAレクチン染色像を示す図である。 無処置のマウス個体における、脾臓marginal zoneの蛍光染色像を示す図である。 SRBCを免疫した前後の、脾臓marginal zoneの蛍光染色像を示す図である。 潰瘍性大腸炎誘導大腸癌発癌モデル試験結果を示す図である

Claims (6)

  1. α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)の機能を欠損あるいは抑制されている非ヒトモデル動物に、被験物質を投与し、非ヒトモデル動物における炎症性疾患の発症、促進、予防、抑制あるいは治癒を指標にして、該被験物質を評価することを特徴とする、該被験物質の有用性あるいは有害性の評価方法。
  2. α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)がノックアウトあるいはノックダウンされていることを特徴とする、請求項に記載の評価方法。
  3. 炎症性疾患が、炎症に起因する癌であることを特徴とする請求項又はに記載の評価方法。
  4. 請求項のいずれかに記載の評価方法による評価に基づき、炎症性疾患の予防若しくは治療用物質、または炎症性疾患の発症若しくは促進物質をスクリーニングすることを特徴とする、炎症性疾患の予防剤、治療剤、又は炎症性疾患の誘発剤、促進剤のスクリーニング方法。
  5. α1,3-フコース転移酵素遺伝子(FUT9)の機能を欠損あるいは抑制され、粘膜免疫応答の亢進を伴っている非ヒトモデル動物に被験物質を投与し、粘膜免疫の亢進あるいは抑制を指標にして、該被験物質を評価することを特徴とする、被験物質の粘膜免疫制作用の評価方法。
  6. 請求項に記載の評価方法による評価に基づき、免疫賦活化作用を有する物質あるいは免疫抑制作用を有する物質をスクリーニングすることを特徴とする、免疫賦活化剤あるいは免疫抑制剤のスクリーニング方法。
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