JP2001069871A - ヒスタミン欠如動物 - Google Patents

ヒスタミン欠如動物

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JP2001069871A
JP2001069871A JP24631599A JP24631599A JP2001069871A JP 2001069871 A JP2001069871 A JP 2001069871A JP 24631599 A JP24631599 A JP 24631599A JP 24631599 A JP24631599 A JP 24631599A JP 2001069871 A JP2001069871 A JP 2001069871A
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浩 大津
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヒスタミン合成酵素HDCの遺伝子に変異を
有する非ヒト哺乳動物と、この動物を用いた各種試験方
法を提供する。 【解決手段】 染色体のヒスチジン脱炭素酵素遺伝子が
その機能欠失型変異遺伝子に置換されている全能性細胞
を個体発生して得られる非ヒト動物およびその子孫動物
であって、ヒスタミン合成能を持たないことを特徴とす
るヒスタミン欠如動物と、この動物を用いてヒスタミン
関連疾患の治療薬剤をスクリーニングする方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ヒスタミ
ン欠如動物に関するものである。さらに詳しくは、この
出願の発明は、体細胞染色体のヒスタミン合成酵素遺伝
子がその機能欠失型変異遺伝子に置換された遺伝子ノッ
クアウト動物であって、体内においてヒスタミンを合成
する能力を持たないヒスタミン欠如動物と、この動物を
用いた各種試験方法に関するものである。これらの動物
および試験方法は、医薬品開発等の分野において有用で
ある。
【0002】
【従来の技術とその課題】ヒスタミン(histamine)
は、生体内にて作用する生体内活性物質(オータコイ
ド:autacoids)の一種であり、生体内では皮膚、肺、
消化管等に多く分布し、アレルギーやアナフィラキシー
時に放出され、じんま疹や炎症等の発症、血液変化など
に関係している。また胃粘膜ではエンテロクロマフィン
細胞中に存在して胃液の分泌促進に重要な役割を果たし
ていることから、胃潰瘍の発症に関係していることも知
られている。
【0003】このように、ヒスタミンはヒトの様々な疾
患や体調変化に関係しており、その作用メカニズムを解
明することは、ヒスタミン関連疾患等の治療法や治療薬
剤の開発に必須である。そしてそれらの疾患や体調変化
は、生体内の様々な組織、器官の相互作用によって顕在
化することから、モデル動物を用いたin vivo系におけ
るヒスタミン作用の検討が不可欠である。
【0004】従来、動物個体を用いてヒスタミンの作用
を検討するためには、例えば、ヒスタミンの作用する受
容体の阻害剤やヒスタミン合成酵素阻害剤等を動物に投
与する方法が用いられてきた。しかしながら、これらの
薬剤は抗ヒスタミン作用が不十分であり、しかも副作用
があるため、純粋にヒスタミンの作用を判定することが
困難であるといった問題を有していた。
【0005】このため、ヒスタミンの作用を正確に判定
することのできるモデル動物系の開発が強く望まれてい
た。またこのようなモデル動物は、ヒスタミンが関係す
る各種疾患に対する治療薬剤等の開発のための強力なツ
ールとなるものと期待されていた。
【0006】この出願は、以上のとおりの事情に鑑みて
なされたものであって、体内においてヒスタミンを合成
する能力を持たないヒスタミン欠如動物を提供すること
を課題としている。
【0007】また、この出願は、このヒスタミン欠如動
物を用いた各種の試験方法と、この試験方法を実施する
のに必要な動物飼育用飼料を提供することを課題として
もいる。
【0008】
【課題を解決するための手段】この出願は、前記の課題
を解決するための発明として、以下の(1)〜(6)の発明を
提供する。 (1) 染色体のヒスチジン脱炭素酵素遺伝子がその機能欠
失型変異遺伝子に置換されている全能性細胞を個体発生
して得られる非ヒト動物およびその子孫動物であって、
ヒスタミン合成能を持たないことを特徴とするヒスタミ
ン欠如動物。 (2) 非ヒト動物が、マウスである前記(1)のヒスタミン
欠如動物。 (3) ヒスタミン関連疾患におけるヒスタミンの作用を試
験する方法であって、ヒスタミン低含量飼料により飼育
した前記(1)または(2)の動物に疾患原因を提示し、動物
の症状の変化を指標としてヒスタミンの作用を試験する
ことを特徴とする方法。 (4) ヒスタミン関連疾患に対する治療薬剤をスクリーニ
ングする方法であって、ヒスタミン低含量飼料により飼
育した前記(1)または(2)の動物にヒスタミンを投与する
と共に疾患原因を提示し、さらにこの提示前または提示
後もしくは提示前後に候補薬剤を動物に投与し、動物の
症状の変化を指標として治療薬剤の効果を判定すること
を特徴とする方法。 (5) ヒスタミン低含量飼料が、ヒスタミン含量0.5〜2.0
nmol/gの動物用飼料である前記(4)または(5)の方法。 (6) ヒスタミン含量が0.5〜2.0 nmol/gである動物用飼
料。
【0009】以下、上記の各発明について実施の形態を
詳しく説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】この出願によって提供される前記
発明(1)のヒスタミン欠如動物は、ヒスタミン合成酵素
であるヒスチジン脱炭素酵素(L-Histidine decarboxyl
ase:HDC)遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置
換されている全能性細胞を個体発生して得られる遺伝子
ノックアウト非ヒト動物である。さらに詳しくは、この
発明(1)のヒスタミン欠如動物は、体細胞染色体のHD
C遺伝子がその変異配列に置換されているヘテロ接合体
あるいはホモ接合体子孫動物同士の交配によって得られ
るHDC遺伝子変異ホモ接合体動物として提供される。
【0011】この発明(1)のヒスタミン欠如動物は、公
知の標的遺伝子組換え法(ジーンターゲティング法:Sc
ience 244:1288-1292, 1989)により作製することがで
きる。この標的遺伝子組換え法では、分化全能性細胞と
してES(embryonic stem)細胞等を使用する。ES細胞
は、マウス(Nature 292:154-156, 1981)、ラット(De
v. Biol. 163(1):288-292, 1994)、サル(Proc. Natl.
Acad. Sci. U.S.A. 92(17):7844-7848, 1995)、ウサ
ギ(Mol. Reprod. Dev. 45(4):439-443, 1996)で確立
している。また、ブタについてはEG(embryonic ger
m)細胞が確立している(Biol. Reprod 57(5):1089-109
5, 1997)。従ってこの発明(1)のヒスタミン欠如動物
は、これらの動物種を対象に作製することができるが、
特に遺伝子ノックアウト動物の作製に関して技術が整っ
ているマウスが最適である。作製の具体的手続を、前記
発明(2)のマウスを例にとって説明すれば以下のとおり
である。
【0012】先ず、HDC遺伝子のゲノムDNA断片を
単離し、そのDNA断片を試験管内にて遺伝子操作し、
HDC遺伝子の開始コドンを含むDNA断片に対して改
変を施すなどの、HDC遺伝子の機能を欠失させるよう
な変異DNA断片を作製する。HDCゲノムDNAの単
離は、例えば、公知のマウスHDCのcDNA配列(FEB
S Lett. 276:214-218, 1990)に基づいて合成されたオ
リゴヌクレオチドプローブを用いてマウスゲノムDNA
ライブラリーをスクリーニングすることにより得られ
る。また、このマウスHDCcDNAの一部または両端
に相当する合成オリゴヌクレオチドをプライマーとする
PCR法によっても目的とするゲノムDNAを得ること
ができる。なお、マウス以外の動物を対象とする場合に
も、マウスHDCcDNA配列に基づいて合成されたオ
リゴヌクレオチドをプローブまたはプライマーとする前
記の方法により、各動物のHDC遺伝子を単離すること
ができる。また、ラットについてはそのcDNA配列が
報告されている(Pro. Natl.Acad. Sci. U.S.A. 87:733
-737, 1990)ので、これを用いることができる。
【0013】上記のとおりの方法によって得られたマウ
スHDC遺伝子のゲノムDNAの一部を改変し、全能性
細胞(ES細胞)のHDC遺伝子に変異を導入するため
のターゲティングベクターを、公知の方法(例えば、Sc
ience 244:1288-1292, 1989)に準じて作製する。例え
ば、HDC遺伝子のゲノムDNAの一部をG418等の
細胞毒に対する耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性
遺伝子)に置換することにより、もしくは細胞毒に対す
る耐性遺伝子をHDC遺伝子のゲノムDNAの一部に挿
入することで、HDCゲノムDNAと相同な配列を両端
に有する変異遺伝子を保有する組換えプラスミドDN
A、すなわちターゲティングベクターを作製する。な
お、細胞毒に対する耐性遺伝子には、その発現を制御す
るためのPGK1プロモーター等の配列およびPGK1
ポリアデニレーションシグナル等を連結することもでき
る。また、細胞毒に対する耐性遺伝子により置換、また
は挿入されるHDC遺伝子のゲノムDNA部位は、開始
コドンを含んだエクソン領域を含むゲノムDNA領域で
あることが好ましい。
【0014】上記HDC遺伝子のゲノムDNAの一部に
変異を導入するためのターゲティングベクターには、H
DCゲノムDNAに相同な配列を有すること以外には特
に制限はなく、他の薬剤耐性遺伝子や、細胞選択用遺伝
子(例えば、ジフテリア毒素A遺伝子やヘルペスウイル
スのサイミジンキナーゼ遺伝子)、プロモーター、エン
ハンサー等の配列を適宜に組み合わせて使用することが
できる。
【0015】次に、このターゲティングベクターを、公
知の方法に準じてマウスES細胞に導入する。このよう
な遺伝子導入法としては、公知の電気パルス法、リポソ
ーム法、リン酸カルシウム法等も利用できるが、導入遺
伝子の相同遺伝子組換え効率を勘案した場合、ES細胞
への電気パルス法が好ましい。
【0016】遺伝子導入された各ES細胞のDNAを抽
出し、サザンブロット分析やPCRアッセイ等により、
染色体上に存在する野生型HDC遺伝子と導入したHD
C変異遺伝子断片の間で正しく相同遺伝子組換えが起こ
り、染色体上のHDC遺伝子に変異が移った細胞を選択
する。
【0017】こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を
野生型マウスのブラストシストに注入し、つづいてこの
キメラ胚を仮親の子宮に移植する。出生した動物を里親
につけて飼育させた後、HDC変異遺伝子が生殖系細胞
に入ったキメラ動物を選別する。選別は毛色の違い、ま
たは体の一部(例えば尾部先端)からDNAを抽出し、
サザンブロット分析やPCRアッセイ等により行う。H
DC変異遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ動物と野生
型動物の交配により得られる子孫について、さらに体の
一部(例えば尾部先端)からの抽出DNAを材料とし
た、サザンブロット分析やPCRアッセイ等を行い、H
DC変異遺伝子が導入されたヘテロ接合体を同定する。
さらにヘテロ接合体同士の交配により、HDC変異遺伝
子に関してホモ接合体となった個体動物を得る。作出さ
れたHDC変異遺伝子を保有するヘテロ接合体、あるい
はホモ接合体は生殖細胞および体細胞のすべてに安定的
にHDC遺伝子変異を保有しており、交配等により、効
率よくその変異を子孫動物に伝達することができる。
【0018】このようにして作製されたHDC遺伝子に
変異を有する動物は、例えばHDC遺伝子産物を全く持
たないホモ接合体(HDC null mutant:−/−)の場
合、自らは体内でヒスタミンをほとんど合成することが
できないため、ヒスタミンが関連する各種疾患の発症メ
カニズムの解明や、疾患治療薬剤スクリーニングのため
の最適のモデル動物となる。
【0019】この出願の前記発明(3)は、発明(1)のヒス
タミン欠如動物を用いて、各種ヒスタミン関連疾患おけ
るヒスタミン作用を試験する方法である。また、前記発
明(4)は、発明(1)の動物を用いて、ヒスタミン関連疾患
に対する治療薬剤をスクリーニングする方法である。こ
れらの方法においては、先ず第1に、ヒスタミン欠如動
物を「ヒスタミン低含量飼料」によって飼育することを
特徴としている。すなわち、発明の(1)のヒスタミン欠
如動物は、前記のとおり自らは体内でヒスタミンを合成
する能力を持たないが、通常の実験動物飼料は蛋白源と
して魚粉が多く含まれており、この魚粉は大量のヒスタ
ミンを含有しているために、ヒスタミン欠如の効果を判
定することができないからである。
【0020】ヒスタミン低含量飼料としては、発明(6)
のよって提供される「ヒスタミン含量が0.5〜2.0 nmol/
gである動物用飼料」を用いることができる。このよう
な動物用飼料は、蛋白源として植物性のタンパク質を配
合することによって調製することができる。
【0021】さらに、発明(3)および(4)の方法において
は、ヒスタミン低含量飼料によって飼育したヒスタミン
欠如動物に対して、ヒスタミン関連疾患の原因を提示す
る。このような原因提示は、例えばアレルギー反応の場
合には各種アレルゲンの投与等であり、あるいは胃潰瘍
の場合には毒物投与やストレス条件下への暴露等であ
る。そして、発明(3)の場合には、これらの疾患原因の
提示後、ヒスタミンの有無による症状の変化を観察する
ことによって、各種疾患に対するヒスタミン作用を判定
することができる。また。発明(4)の方法では、ヒスタ
ミンの投与とともに原因提示を行い、さらに治療薬剤の
候補物質を投与して症状の変化を観察することにより、
より有効な治療薬剤を特定することができる。
【0022】以下、実施例を示してこの発明についてさ
らに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例
に限定されるものではない。
【0023】
【実施例】実施例1:ヒスタミン欠如マウスの作成 公知の方法により、マウスcDNAライブラリーより得
られるHDCcDNA断片をプローブとして、マウスの
ゲノムDNAライブラリー(129/P1ファージミッド
ライブラリー)をスクリーニングし、HDC遺伝子の翻
訳開始コドンを含む約24kbのゲノムDNA断片を得た。
得られたDNA断片のエキソン、イントロン境界部およ
びHDC翻訳開始コドンを含む複数のエキソン領域のD
NA塩基配列を解析して、HDC遺伝子のゲノム構造を
決定した(図1)。試験管内遺伝子組換えにより、エク
ソン6から8の領域をネオマイシン耐性遺伝子を含むカ
セットで置換し、ターゲティングベクターを構築した。
詳しくは、このターゲティングベクターは、ネオマイシ
ン耐性遺伝子カセットの両端に、相同領域として2つの
HDCゲノムDNA断片10kbおよび5kbを有し、さらに
相同組換えを起こしたES細胞を濃縮するため、ヘルペ
スウイルスのサイミジンカイネース遺伝子を末端に付加
した(図2)。線状化したターゲティングベクターを、
公知のマウス129/J1ES細胞(Nature 379:168-171,
1996)に電気パルス法にて導入した後、G418の培
地添加により、遺伝子導入されたES細胞を選別、単離
した。単離された約300のクローンのうち、6クローン
について各ゲノムDNAを抽出しサザンブロット分析を
行い、染色体上に存在する野生型HDC遺伝子と、導入
した変異HDC遺伝子断片の間で正しく相同遺伝子組換
えが起こり、染色体上のHDC遺伝子に変異が移った細
胞を3クローン選択した。
【0024】こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を
野生型マウスのブラストシストに注入し、つづいてこの
キメラ胚を定法に従って仮親の子宮に移植し、個体へと
発生させ、出生させた。出生した動物を里親につけて飼
育させた後、HDC変異遺伝子が生殖系細胞に入ったキ
メラ動物を選別した。選別は毛色の違い、および尾部先
端からDNAを抽出し、サザンブロット分析およびPC
Rアッセイにより行った。HDC変異遺伝子が生殖系細
胞に入った雌のキメラ動物と野生型マウス雄ICRの交
配によりヘテロ接合体マウスを含む子孫マウスを得た。
【0025】得られたマウス個体の尾部先端からDNA
を抽出し、サザンブロット分析およびPCRアッセイを
行い、HDC変異遺伝子が導入されたヘテロ接合体を選
別した。
【0026】このようにして、HDC変異遺伝子に関す
るヘテロ接合体が得られ、さらに、C57BL/6への
戻し交配により、生殖細胞および体細胞染色体に安定的
にHDC遺伝子変異を保有するマウス系統が作成され
た。HDC変異遺伝子に関してホモ接合体となった個体
動物は、ヘテロ接合体同士の交配により得られ、その遺
伝子型の同定は上記と同様にして行った。 実施例2:ヒスタミン低含量飼料の作成 以下の組成からなる動物用飼料を調製した。
【0027】 トウモロコシ 8.0% 小麦 29.1% 小麦粉 15.0% 大豆粕 25.0% ミルク 12.0% 大豆外皮 4.5% 動物性油脂 3.0% 食塩 0.25% 炭酸カルシウム 0.9% リン酸カルシウム 1.65% 塩化コリン 0.1% ビタミン混合 0.25% ミネラル混合 0.25% この飼料のヒスタミン含量は、0.9 nmol/g〜1.2 nmol/g
であった。 実施例3:HDC遺伝子変異マウスのヒスタミン量の検
討 実施例1で作成したHDC遺伝子変異マウスを、実施例
2で作成したヒスタミン低含量飼料により1週間飼育し
たのち、各種臓器におけるヒスタミン量と、HDC活性
を測定した。
【0028】ヒスタミン量の測定は、高速液体クロマト
グラフィーと蛍光測定法を組み合わせた公知の方法(J.
Chromatogr. 344:115-123, 1985)に準拠して行った。
すなわち、各組織をホモジェナイザーで破砕後、過塩素
酸で処理し、遠心分離した後、その上清の一部を高速液
体クロマトグラフィーで分離し、アルカリ条件下で蛍光
色素o-phthalaldehydeを加えて反応させ、反応物の蛍光
強度を指標としてヒスタミン量を測定した。
【0029】またHDC活性は、公知の方法(J. Bioch
em. 107:834-839, 1990)に基づき、ヒスチジンを基質
としたヒスタミンの合成反応により測定した。すなわ
ち、各臓器をHDC反応用の緩衝液内で超音波処理によ
り破砕し、この破砕物を遠心処理後、上清を分離し、H
DC反応用の緩衝液で一晩透析した。透析後、L−ヒス
チジンを基質として加え、2時間、37℃で反応させて生
成されたヒスタミンを上記の方法により測定し、HDC
活性量とした。
【0030】結果は表1に示したとおりである。測定し
た全ての臓器において、ヒスタミン量およびHDC活性
とも、野生型マウス(+/+)、ヘテロ接合型マウス
(+/−)、ホモ接合型マウス(−/−)の順で低下し
た。この結果から、実施例1で作成したHDC遺伝子変
異マウスが、ヒスタミン欠如マウスであることが確認さ
れた。また、実施例2で作成した飼料が、ヒスタミン低
含有飼料として有効であることが確認された。
【0031】なお、ホモ接合型マウスの場合であって
も、ヒスタミンを添加した飼料によって飼育することに
より、野生型マウスと同定度のヒスタミン量を獲得する
ことが確認された。ただし、ヒスタミン添加飼料によっ
てもHDC活性はほとんど存在しなかった。
【0032】
【表1】
【0033】実施例3:皮膚アレルギーに対する感受性
の確認 ヒスタミン低含量飼料によって飼育した野生型マウス
(+/+)およびホモ接合型マウス(−/−)に肥満細
胞脱顆粒剤Compound 48/80を投与し、皮膚アレルギー
(背部皮膚血液漏洩反応)を観察した。Compound 48/80
は、肥満細胞から顆粒を放出させ、これによってヒスタ
ミン等が血管内に進入し、血液を漏出させる作用を有す
る。
【0034】結果は図3の写真図に示したとおりであ
る。野生型マウスもホモ接合型マウスも、ヒスタミンを
投与した場合には同程度に血液漏出反応を生じさせる
が、Compound 48/80を投与した場合、ホモ接合マウスで
は肥満細胞からのヒスタミン放出がないため、血液漏出
が全く観察されなかった。
【0035】また、受動感作皮膚反応PCA(Passive
Cutaneous Anaphylaxis)より野生型マウスおよびホモ
接合型マウスの耳介皮膚血液漏出反応も試験した。結果
は図4に示したとおりであり、野生型マウスではPCA
により血液漏出が観察されたのに対し、ヒスタミンを欠
如したホモ接合型マウスでは血液漏出は全く観察されな
かった。
【0036】以上の結果から、この発明のヒスタミン欠
如マウスがアレルギー等の各種ヒスタミン関連疾患につ
いて研究するための有効なモデル動物となりうることが
確認された。
【0037】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この発明に
よって、HDC遺伝子に機能的欠損を有するヒスタミン
欠如動物が提供される。これらの動物によって、ヒトの
各種ヒスタミン関連疾患の病因および病態解析、並びに
その治療技術、治療薬等の開発が促進される。
【図面の簡単な説明】
【図1】マウスHDC遺伝子の構造を示した模式図であ
る。
【図2】マウスHDC遺伝子の構造(上段)と、ターゲ
ティング・ベクターの構造(中段)、並びにターゲティ
ング・ベクターによる相同組換え後の遺伝子構造(下段
を示した模式図である。
【図3】野生型およびホモ接合型マウスにおけるヒスタ
ミン投与およびCompound 48/80投与による血液漏出反応
の状態を示した写真図である。
【図4】野生型およびホモ接合型マウスにおけるPCA
反応後の血管外への色素漏出量を示したグラフである。
左側の棒グラフは抗体処理していないコントロールであ
り、右側は抗DNP抗体で処理したマウスの結果であ
る。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染色体のヒスチジン脱炭素酵素遺伝子が
    その機能欠失型変異遺伝子に置換されている全能性細胞
    を個体発生して得られる非ヒト動物およびその子孫動物
    であって、ヒスタミン合成能を持たないことを特徴とす
    るヒスタミン欠如動物。
  2. 【請求項2】 非ヒト動物が、マウスである請求項1の
    ヒスタミン欠如動物。
  3. 【請求項3】 ヒスタミン関連疾患におけるヒスタミン
    の作用を試験する方法であって、ヒスタミン低含量飼料
    により飼育した請求項1または2の動物に疾患原因を提
    示し、動物の症状の変化を指標としてヒスタミンの作用
    を試験することを特徴とする方法。
  4. 【請求項4】 ヒスタミン関連疾患に対する治療薬剤を
    スクリーニングする方法であって、ヒスタミン低含量飼
    料により飼育した請求項1または2の動物にヒスタミン
    を投与すると共に疾患原因を提示し、さらにこの提示前
    または提示後もしくは提示前後に候補薬剤を動物に投与
    し、動物の症状の変化を指標として治療薬剤の効果を判
    定することを特徴とする方法。
  5. 【請求項5】 ヒスタミン低含量飼料が、ヒスタミン含
    量0.5〜2.0 nmol/gの動物用飼料である請求項4または
    5の方法。
  6. 【請求項6】 ヒスタミン含量が0.5〜2.0 nmol/gであ
    る動物用飼料。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005092090A1 (ja) * 2004-03-29 2005-10-06 Amato Pharmaceutical Products, Ltd. 肥満モデル動物及びそれを用いた薬剤評価方法
CN112368387A (zh) * 2018-04-20 2021-02-12 齐默尔根公司 通过发酵产生组胺的经改造的生物合成途径

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