JP2013223459A - Hmgb1コンディショナルノックアウト非ヒト動物 - Google Patents

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Abstract

【課題】致死でないHmgb1遺伝子欠損非ヒト動物の作製を可能とする非ヒト動物、及び、致死でないHmgb1遺伝子欠損非ヒト動物を提供する。
【解決手段】ゲノム上のHigh mobility group box 1(Hmgb1)遺伝子の一部又は全部をはさむ位置に、2つのリコンビナーゼ標的配列を有する、コンディショナルノックアウト非ヒト動物、及び、上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物から誘導され、体の一部又は全部のHmgb1遺伝子の一部又は全部が欠損した、非ヒト動物。
【選択図】なし

Description

本発明は、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物に関する。
発明者らは、これまでの研究において、DNA、RNAを問わず、核酸を認識し、免疫系の活性化に関与する分子として、HMGB(high mobility group box)タンパク質を同定した(非特許文献1を参照)。HMGBタンパク質はファミリーを形成しており(HMGB1、HMGB2、HMGB3)、互いにアミノ酸配列において高い相同性を示す分子である。その分子構造は高等真核生物において保存されており、N末端側に2つのDNA結合ドメイン(HMG box A、B)とC末端側に酸性アミノ酸に富む領域を有している。HMGBタンパク質は、核タンパク質として機能する一方、一部は細胞質に存在し、TLR(Toll like receptor)9シグナル伝達経路に関与することが報告されている。HMGBタンパク質を欠損した細胞では、核酸刺激による転写因子の活性化やI型IFN(インターフェロン)や炎症性サイトカインの誘導が起こらない。このことから、核酸と結合するHMGBタンパク質は細胞質内核酸認識受容体によるリガンド認識に不可欠な分子であると考えられている(非特許文献1を参照)。
上述のように、HMGBタンパク質が、DNA、RNAを問わず核酸と結合し、免疫応答の活性化に関与することが明らかとなった。一方、HMGBタンパク質が、核酸認識機構における役割のみならず、様々な免疫応答に関与することが多数報告されている。中でも、HMGB1(HMGB1タンパク質)は、その多彩な機能から近年注目を浴びている。
HMGB1は核内で恒常的に発現しており、HMG boxを介して塩基配列非依存的にDNAに結合し、DNA及びクロマチン構造の変化に関与することで、遺伝子の転写制御を調節していることが報告されている。さらに、T細胞受容体や抗体の遺伝子組換えに必須の役割を果たすことが知られている、RAG1(recombination activating gene 1)及びRAG2とも相互作用することが報告されており、T細胞受容体、抗体遺伝子の組換えを促進すると考えられている。
HMGB1は、上述のような核内における機能に加え、細胞外に放出されることにより炎症性サイトカイン様の活性を示すことが報告されている。細胞外へのHMGB1の放出には、受動的放出と能動的放出の2つの様式があることが知られている。細胞傷害やネクローシスによって細胞内容物が流出する際、核内に存在するHMGB1が細胞外へ受動的に拡散し、炎症性サイトカインとしての活性を示す。一方、マクロファージ、単核球、樹状細胞では、炎症性サイトカインであるTNF−α(tumor necrosis factor−α)、IL(インターロイキン)−1、IFN−γや、PAMPs(pathogen−associated molecular pattern)の一種であるLPS(lipopolysaccharide)刺激により、HMGB1を細胞外へ積極的に分泌することが報告されている。このように放出されたHMGB1はさまざまな受容体に結合する。
RAGE(Receptor for advanced glycation end products)は、HMGB1の受容体として最初に同定された分子であり、HMGB1がRAGEに結合することで、炎症性サイトカインが誘導されるだけでなく、樹状細胞の成熟が促進されることが知られている。また、HMGB1はTLR4にも結合し、IL−6やTNF−α等、炎症性サイトカイン産生を誘導することも報告されている。そして、LPS誘導性ショック死モデルにおいて、HMGB1はサイトカインストーム等のその病態の増悪に関与していると考えられている。
これらの受容体によるHMGB1の認識に加え、HMGB1は種々のリガンドとも結合することが知られている。HMGB1はLPSと結合することでLPSの凝集を阻害してCD14との会合を促進し、TLR4を介した免疫応答を増強すると考えられている。また、IL1−βとも結合し、HMGB1−IL−1β複合体による刺激はIL−1βのみの刺激に比べて炎症性サイトカインの産生を増強することが知られている。
上記のように、HMGB1は細胞質内における機能、核内における役割に加え、死細胞や免疫担当細胞から分泌され、受容体による認識を介し、サイトカイン産生の誘導に関与するなど、様々な免疫応答の活性化に関与していると考えられる。HMGB1は、このような多彩な機能を有しており、敗血症や自己免疫疾患等の病態の増悪に関与することが多数報告されている。
例えば、1999年にWangらにより、TLR4のリガンドであるLPS刺激に応じ、細胞外にHMGB1が放出され、HMGB1の中和抗体を投与することで、LPS誘導性ショック死が減弱することから、HMGB1はエンドトキシンショックにおける致死性を決める重要な分子であると報告されている(非特許文献2を参照)。実際、敗血症の患者では血中のHMGB1の量が多く、さらに重篤な患者ではそれが顕著であることも知られている。
病態の増悪におけるHMGB1の増加は、肝臓移植、心筋梗塞の患者においても報告されている。肝臓虚血再還流のモデル実験では、再還流後1時間で血中に放出されるHMGB1の量が増加し、そのHMGB1は高濃度の状態で24時間維持され、その際にHMGB1中和抗体を投与することで肝傷害が軽減することが報告されている。
また、HMGB1は自己免疫疾患への関与も示唆されている。関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis; RA)では滑膜炎を起こしている部位においてHMGB1の増加が見られることが報告されている。また、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)において、ヌクレオソームと結合したHMGB1が患者の血漿中で増加していることも報告されている。SLEでは、核酸を含む自己抗原に対する抗体により免疫複合体が構成され、それを樹状細胞、マクロファージ等が認識し、免疫応答を活性化して過度な免疫応答を誘導することが、病態の増悪に関与していると考えられている。実際、HMGB1−DNA複合体によりpDC(plasmacytoid DC; 形質細胞様樹状細胞)においてIFN−α(インターフェロンα)が大量に産生され、自己応答性のB細胞の増殖が促進されることが知られている。また、SLEやRA患者ではHMGB1抗体の産生が健常者に比べて高くなっていることから、HMGB1が、自己免疫疾患の増悪や炎症反応の増幅に関与していると考えられている。
Yanai, H. et al. Nature 462,99−103,(2009). Wang, H. et al. Science 285,248−251,(1999). Calogero, S. et al. Nat.Genet.22,276−280,(1999).
このように、HMGB1は免疫応答に様々に関与し、SLE等の病態の増悪にも寄与することが報告されている。したがって、核酸による免疫応答の活性化におけるHMGB1の役割に加え、自己免疫疾患や炎症に関与するHMGB1の役割を明らかにすることは重要であると考えられる。しかしながら、Hmgb1遺伝子欠損マウスは致死であることが報告されており、Hmgb1を欠損したマウスは生まれてくるものの、低血糖症状を示し生後1日以内に死に至ってしまう(非特許文献3を参照)。そのため、Hmgb1遺伝子欠損マウス用いたin vivoにおける核酸認識機構の解析、及び病態における役割の解析はなされていない。
そこで本発明は、致死でないHmgb1遺伝子欠損非ヒト動物の作製を可能とする非ヒト動物を提供することを目的とする。本発明はまた、致死でないHmgb1遺伝子欠損非ヒト動物を提供することを目的とする。
本発明は、ゲノム上のHmgb1遺伝子の一部又は全部をはさむ位置に、2つのリコンビナーゼ標的配列を有する、コンディショナルノックアウト非ヒト動物を提供する。このコンディショナルノックアウト非ヒト動物において、上記のリコンビナーゼ標的配列に、これを標的とするリコンビナーゼを時期・組織特異的に反応させることにより、Hmgb1遺伝子の一部又は全部を欠損させ、致死でないHmgb1遺伝子欠損非ヒト動物を作製することができる。このHmgb1遺伝子欠損非ヒト動物により、in vivoにおけるHMGB1の核酸認識機構、及び、免疫応答、免疫疾患、癌等の病態におけるHMGB1の役割を解析することが可能となる。
上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物は、ゲノム上のHmgb1遺伝子の一部をはさむ位置に、2つのリコンビナーゼ標的配列を有しているものであってもよく、ゲノム上のHmgb1遺伝子の第2エキソンの5’側及び第4エキソンの3’側にリコンビナーゼ標的配列を有しているものであってもよい。また、リコンビナーゼ標的配列は、loxP配列であってもよい。後述するように、発明者らは、このような遺伝子構造を有するコンディショナルノックアウト非ヒト動物は、時期・組織特異的にHmgb1遺伝子を欠損させることができることを証明した。
上記の非ヒト動物は、マウスであってもよい。マウスは、取り扱いが容易で、様々な実験系が確立されている点で好ましい。
上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物は、T細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合のT細胞集団の存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物と同等であることが好ましい。また、上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物は、B細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合のB細胞集団の存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物と比較して減少することが好ましい。
また、上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物は、骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合に、次のような性質を示すことが好ましい。
(1)Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物と比較して、LPS投与に対する抵抗性が低下する。
(2)LPS投与後の血中IL−6の存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物のLPS投与後の血中IL−6の存在量と同等である。
(3)LPS投与後の血中TNF−αの存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物のLPS投与後の血中TNF−αの存在量と比較して増加する。
このようなコンディショナルノックアウト非ヒト動物は、時期・組織特異的にHmgb1遺伝子を欠損した非ヒト動物を作製し、in vivoでHMGB1の免疫応答、免疫疾患、癌等における役割について解析する実験系として適している。
本発明はまた、上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物から誘導され、体の一部又は全部のHmgb1遺伝子の一部又は全部が欠損した、非ヒト動物を提供する。このような非ヒト動物は、致死でないため、in vivoにおける核酸認識機構、及び、免疫応答、免疫疾患、癌等の病態におけるHMGB1の役割を解析する実験系として適している。
上記の誘導は、上記のコンディショナルノックアウト非ヒト動物の体の一部又は全部でリコンビナーゼを反応させることにより行われるものであってもよい。また、上記のリコンビナーゼは、Creリコンビナーゼであってもよい。後述するように、このような方法で体の一部又は全部のHmgb1遺伝子が欠損した非ヒト動物を用いて、HMGB1の免疫応答、免疫疾患、癌等における役割について解析することができる。
図1(A)〜(D)は、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製について説明する図である。 図2(A)〜(C)は、Cre−ERT2マウスを用いたHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製について説明する図である。 図3(A)及び(B)は、HMGB1の免疫細胞群への影響を検討した結果を示すグラフである。 図4(A)〜(E)は、T細胞及びB細胞分化におけるHMGB1の関与を検討した結果を示す図である。 図5(A)〜(G)は、Lys−CreマウスのLPSによる免疫応答を検討した結果を示す図である。 図6(A)〜(D)は、HMGB1欠損マクロファージにおけるTLRsを介したサイトカイン誘導を検討した結果を示す図である。
コンディショナルノックアウト非ヒト動物とは、標的遺伝子の一部又は全部を、時期・組織特異的に(コンディショナルに)欠損させることが可能なように遺伝子操作した非ヒト動物をいう。コンディショナルノックアウト非ヒト動物の作製に利用し得るシステムとしては、例えば、リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムが挙げられる。リコンビナーゼ標的配列とは、リコンビナーゼが認識し、相同組換えを起こす配列である。リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムとしては、例えば、P1バクテリオファージに由来するCreリコンビナーゼ及び34bpからなるloxP配列を利用したCre/loxPシステムが挙げられる。リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムを用いる場合、ゲノム上の標的遺伝子の一部又は全部をはさむ位置に、2つのリコンビナーゼ標的配列を導入することにより、コンディショナルノックアウト非ヒト動物を得ることができる。
Cre/loxPシステムにおいては、Creリコンビナーゼが、同じ方向の2つのloxP配列を認識し、それらのloxP配列間で相同組換えを起こすことにより、その間に存在していたDNA配列が切り出されて欠損する。したがって、標的遺伝子を2つのloxP配列ではさむように遺伝子操作することにより、コンディショナルノックアウト非ヒト動物を作製することができる。そして、そのようなコンディショナルノックアウト非ヒト動物において、Creリコンビナーゼを時期・組織特異的に発現させることにより、Creリコンビナーゼが発現した細胞内で標的遺伝子を欠損させることができる。
標的遺伝子を2つのloxP配列ではさむとは、ゲノム上の欠損させる対象のDNA配列の5’側及び3’側に同じ方向の2つのloxP配列を導入することをいう。
Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物とは、標的遺伝子がHmgb1である上記の非ヒト動物を意味する。非ヒト動物は、ヒト以外の哺乳動物であることが好ましく、マウス、ラット、ヤギ、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ等が例示できる。このなかでも、取り扱いが容易で、実験系が確立されていることから、マウスであることが好ましい。
本明細書において、致死とは、生後数日以内に死亡することをいう。Hmgb1遺伝子欠損マウスは致死であるが、Hmgb1遺伝子を時期・組織特異的に欠損させた非ヒト動物は致死ではないため、この非ヒト動物を用いて、in vivoにおける、HMGB1タンパクによる核酸認識機構、及び、免疫応答、免疫疾患、癌等の病態におけるHMGB1の役割を解析することができる。
リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムを利用してHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物を作製する方法としては、特に限定されないが、Hmgb1遺伝子座において、Hmgb1遺伝子の第2エキソンの5’側及び第4エキソンの3’側にリコンビナーゼ標的配列を有するように遺伝子操作することが好ましい。より具体的には、リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムは、Cre/loxPシステムであってよく、Hmgb1遺伝子の第2エキソンの5’側第56〜89塩基、及び、第4エキソンの3’側第57〜90塩基の位置にloxP配列を有するように遺伝子操作することが好ましい。実施例において後述するように、発明者らは、この方法により得られたコンディショナルノックアウト非ヒト動物が、時期・組織特異的にHmGb1遺伝子を欠損させることができることを証明した。loxPの塩基配列は、5’−ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT−3’(配列番号1)である。
リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムを利用して作製したHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物において、時期・組織特異的にHmGb1遺伝子の欠損を誘導するためには、HmGb1遺伝子を欠損させたい時期・組織において、リコンビナーゼを発現させるとよい。より詳細には、リコンビナーゼをリコンビナーゼ標的配列に反応させて相同組換えを起こさせるとよい。
リコンビナーゼ/リコンビナーゼ標的配列システムがCre/loxPシステムである場合には、リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである。より具体的には、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物を、時期・組織特異的プロモータの下流に連結したCreリコンビナーゼ遺伝子を導入した、トランスジェニック非ヒト動物と交配させることにより、その子孫動物において、時期・組織特異的にHmGb1遺伝子の欠損を誘導する方法が挙げられる。その他の方法としては、例えば、アデノウイルスベクター等を用いて、Creリコンビナーゼ遺伝子をHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物に導入することにより、Creリコンビナーゼが発現した部位においてHmGb1遺伝子の欠損を誘導することができる。時期・組織特異的にHmGb1遺伝子が欠損することにより、時期・組織特異的にHMGB1タンパクが欠損する。
T細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させる方法としては、例えば、T細胞特異的にCreを発現する非ヒト動物とHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物とを交配させることが挙げられる。この方法により得られた子孫動物は、T細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損する。より具体的には、例えば、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスと、T細胞特異的にCreを発現するLck−Creマウスとを交配することにより、子孫マウスにおいてT細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させることができる。
B細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させる方法としては、例えば、B細胞特異的にCreを発現する非ヒト動物とHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物とを交配させることが挙げられる。この方法により得られた子孫動物は、B細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損する。より具体的には、例えば、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスと、B細胞特異的にCreを発現するmb.1−Creマウスとを交配することにより、子孫マウスにおいてB細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させることができる。
骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させる方法としては、例えば、骨髄系細胞特異的にCreを発現する非ヒト動物とHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物とを交配させることが挙げられる。この方法により得られた子孫動物は、骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損する。より具体的には、例えば、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスと、骨髄系細胞特異的にCreを発現するLys−Creマウスとを交配することにより、子孫マウスにおいて骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させることができる。Lys−Creマウスとは、Lysozymeプロモータ制御下でCreリコンビナーゼを発現する遺伝子(Lys−Cre)を有するマウスである。Lys−Creマウスは、骨髄系の細胞、特にマクロファージや好中球でCreリコンビナーゼを発現し、それらの細胞群において高頻度でloxPに挟まれた遺伝子を欠損させることが知られている。
T細胞集団の存在量が同等であるとは、試験動物の胸腺、脾臓、血液等に含まれるT細胞集団の存在量(存在割合)を、対照動物のそれと比較した場合に、差が認められないことを意味する。より詳細には、T細胞集団の存在量に統計学的に有意な差が存在しないことを意味する。T細胞集団としては、CD4細胞、CD8細胞、TCRαβCD4細胞、TCRαβCD8細胞、CD3εNK1.1細胞等が挙げられる。細胞のT細胞関連抗原の発現パターンを解析する方法としては、細胞をT細胞関連抗原に対する蛍光色素結合抗体で染色し、フローサイトメトリーによって解析する方法等が挙げられる。
B細胞集団の存在量が減少するとは、試験動物の脾臓、血液等に含まれるB細胞集団の存在量(存在割合)を、対照動物のそれと比較した場合に、B細胞集団の存在量が減少することを意味する。より詳細には、試験動物のB細胞集団の存在量が統計学的に有意な差を伴って減少することを意味する。B細胞集団としては、B220CD3ε細胞、B220IgMCD3ε細胞等が挙げられる。細胞集団のB細胞関連抗原の発現パターンを解析する方法としては、細胞集団を、B細胞関連抗原に対する蛍光色素結合抗体で染色し、フローサイトメトリーによって解析する方法が挙げられる。
LPS投与に対する抵抗性が低下するとは、試験動物及び対照動物に同量のLPSを投与した場合に、対照動物の生存率と比較して、試験動物の生存率が低下することを意味する。LPSは腹腔内投与されることが好ましい。
試験動物及び対照動物の血中IL−6及び血中TNF−αの存在量は、例えばELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法によって測定することができる。血中IL−6の存在量が同等であるとは、試験動物及び対照動物の血中IL−6の存在量に差が認められないことを意味する。より詳細には、血中IL−6の存在量に統計学的に有意な差が存在しないことを意味する。また、血中TNF−αの存在量が増加するとは、対照動物の血中TNF−αの存在量と比較して、試験動物の血中TNF−αの存在量が増加することを意味する。より詳細には、試験動物の血中TNF−αの存在量が、統計学的に有意な差を伴って増加することを意味する。
Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製
(Hmgb1ターゲッティングベクターの作製)
Hmgb1遺伝子座のゲノム断片は129/Ola系マウス由来ES細胞(E14.1)のゲノムDNAをテンプレートとして、A senseプライマー:5’−GGTACCAAAGTCCTCATCTAGCCTGGCA−3’(配列番号2)、A reverseプライマー:5’−AATCGATTCAAACTGCTCAGGGTGGC−3’(配列番号3)、B senseプライマー:5’−ACTAGTGCTTGTCTGTTTCACAGTTTTCGTTAC−3’(配列番号4)、B reverseプライマー:5’−GTCGACAGTTATCAAGTATAATCCCCTAACACTGG−3’(配列番号5)、C senseプライマー:5’−GCGGCCGCGTCTTATTTCCTCTTTGTTTGCAG−3’(配列番号6)、C reverseプライマー:5’−CCGCGGCTCGAGCTTTCAGTTGTTTATACTATAAGGCAC−3’(配列番号7)、を用いてPCR(polymerase chain reaction)法によって得た。
この遺伝子断片を、それぞれ、コンディショナルノックアウト用のベクターである、pKSTKNEOloxPベクターのKpnI−ClaI、XbaI−SalI、NotI−SacIIサイト間に挿入した。そのベクターに、更にpMc1DTpAプラスミドより切り出したジフテリアトキシンAサブユニットcDNAをXhoIサイト間に挿入し、Hmgb1ターゲッティングベクターとした。Hmgb1ターゲッティングベクターの一部の塩基配列を配列番号8に示す。配列番号8において、第5755〜5892塩基がHmgb1遺伝子の第1エキソンであり、第5893〜7990塩基が第1イントロンの途中までであり、第8033〜8066塩基が1つ目のLoxP配列であり、第8581〜9384塩基がネオマイシン耐性遺伝子であり、第10011〜10044塩基が2つ目のLoxP配列であり、第10050〜10099塩基が第1イントロンの途中からであり、第10100〜10263塩基が第2エキソンであり、第10264〜10410塩基が第2イントロンであり、第10411〜10556塩基が第3エキソンであり、第10557〜10949塩基が第3イントロンであり、第10950〜11124塩基が第4エキソンであり、第11125〜11174塩基が第4イントロンの途中までであり、第11181〜11214塩基が3つ目のLoxP配列であり、第11228〜11990塩基が第4イントロンの途中からであり、第11991〜13677塩基が第5エキソンである。なお、Hmgb1遺伝子の開始コドンの位置は配列番号8の第10114−10116塩基のATGであり、これは第2エキソンの途中に位置する。また、1つ目のLoxP配列は第1エキソンの3’側第2141〜2174塩基に位置する。
Hmgb1ターゲッティングベクターをKpnIで制限酵素処理を行い直鎖状にし、20μgのベクターを用いてエレクトロポレーション法によりES細胞に導入し、あらかじめマイトマイシンC(Sigma社製)で処理したマウス繊維芽細胞上に播種した。エレクトロポレーションから24時間後、400μg/mLのG418(Invitrogen社製)を含む培地に変え、8日間セレクションを行った。G418耐性を示したコロニーの一部からゲノムDNAを抽出し、PCR法、サザンブロット解析により、目的のクローン(以下、「HRクローン」という。)を選抜した。
PCR法によるHRクローンのスクリーニングには、senseプライマー:5’−ACGAAGTTATAAGCTTGCGG−3’(配列番号9)、reverseプライマー:5’−TTAAAAGGAGTGAGTTGTGTACAGG−3’(配列番号10)を用いた。また、サザンブロット解析では、プローブA senseプライマー:5’−CGTAATGAAACGCCCTTCCTG−3’(配列番号11)、プローブA reverseプライマー:5’−GCCACTGTGTAGGTGTTGGAAGC−3’(配列番号12)、プローブB senseプライマー:5’−GAATGGGAACAGTTTGCCTTGC−3’(配列番号13)、プローブB reverseプライマー:5’−TACTGGGTGGCAGTGCTTGG−3’(配列番号14)を用いてPCR法により得たDNA断片をプローブの作製に使用した。
HRクローンに、更にCreリコンビナーゼ発現ベクター(pIC−Creベクター)10μgをエレクトロポレーション法で導入して、あらかじめマイトマイシンCで処理したマウス線維芽細胞上に播種し、1週間の培養によりコロニーを形成させた。そのコロニーを、G418を含む培地と含まない培地中に分けて培養を行い、G418に感受性を示したコロニーに対してPCR法及びサザンブロット解析により目的のクローンを選抜した。PCR法によるスクリーニングでは、senseプライマー:5’−TGTCATGCCACCCTGAGCAGTT−3’(配列番号15)、reverseプライマー:5’−TGTGCTCCTCCCGGCAAGTT−3’(配列番号16)を用いた。これによって得られたクローンを胚盤胞期の卵内に挿入し、その卵を仮親のマウスに移植した後、生まれてきたキメラマウスを掛け合わせてF1マウスを得た。
(サザンブロット解析)
F1マウスのゲノムDNAをEcoRV又はHindIIIで一晩制限酵素処理した後、フェノール抽出、エタノール沈殿、洗浄、乾燥し、適量の滅菌水に溶解した。各サンプルを1レーン当たり2μgになるように調製し、1.0%アガロースゲルで電気泳動した。ゲルを0.25M HCl溶液中で20分間振とうした後、蒸留水でゲルをすすぎ、さらに0.4M NaOH溶液中で更に30分間振とうした。その後、ナイロン・メンブレン(hybond N、GE Healthcare社製)をのせて16時間放置し、ゲノムDNAをメンブレンにトランスファーした。
メンブレンを2xSSC(0.3M NaCl、30mMクエン酸ナトリウム)中で15分間振とうして中和、風乾し、UVクロスリンカーを用いて120,000μJのUVを照射した。UVによってDNAを固定したメンブレンを、5〜10mLのハイブリダイゼーションバッファー(ULTRAhyb、ABI社製)中でプレハイブリダイゼーション(42℃、1時間)し、DNAプローブを加えて42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
DNAプローブの作製にはBcaBEST ラベリングキット(TaKaRa社製)を用いた。20ngのDNAをテンプレートにしてキットに添付のランダムプライマー2μLを加え95℃で3分間加熱した後、氷上で急冷した。そこに10xバッファー、dNTP Mixtureを各2.5μL、標識dCTP[32P]−dCTP(PerkinElmer社製、NEG−513Z)(1.85Bq、50μCi)を5μL加えた。さらに、BcaBEST DNAポリメラーゼ1μLを加え、50℃で10分間インキュベートした。ラベルしたDNAをProbe Quant G−50 Micro Columns(GE Healthcare社製)を用いて精製した。ハイブリダイゼーション後、2xSSC、0.1%SDS及び0.1xSSC、0.1%SDSを用いて42℃、15分間の振とう洗浄をそれぞれ2回ずつ行った。洗浄後、メンブレンの水分を拭き取って、ハイブリバックに包み、これを−80℃でX線フィルムに露光し現像した。
(タモキシフェン投与)
マウスに、1個体あたり9.0mg/40g(マウス)となるように、コーンオイル(sigma社製)に懸濁したタモキシフェン(Sigma社製)を、腹腔内注射により3日ごとに2週間投与した。
(LPS誘導性ショック)
マウスに、1個体あたり1.0mg/20g(マウス)又は1.25mg/20g(マウス)となるように、PBSに懸濁したLPS(Sigma社製)を、腹腔内注射により投与した。LPS投与後2時間、6時間、12時間後にマウスの尾静脈より血清を回収した。また、マウスの生存について経過観察を行った。
(Cre/loxPシステムを利用できる変異マウスの作製)
まず、Cre/loxPシステムを用いて特定の条件でHMGB1を欠損させるための変異マウスの作製を行った。CreリコンビナーゼはI型トポイソメラーゼ、loxPは34bpからなる特定のDNA配列であり、両方ともP1バクテリオファージに由来する。Creリコンビナーゼが同じ方向の2つのloxP配列を認識することで、loxP同士で相同組換えが起こり認識配列間に位置していたDNA配列が切り出される。
このシステムを適用するために、まず、図1(A)に示すように、Hmgb1遺伝子の開始コドンを含んでいる第2エキソンの上流と第4エキソンの下流のそれぞれ直近にloxP配列を持つHmgb1遺伝子座のターゲッティングベクターを構築した。このターゲッティングベクターは、ポジィティブ選択マーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子(アミノグリコシドリン酸転移酵素をコードする;neo)を、また相同でない部位での遺伝子挿入や組換えを起こした細胞を死滅させるために、毒素であるジフテリアトキシンAサブユニットの遺伝子(DTA)を有している。
エレクトロポレーション法を用いて胚性幹細胞にターゲッティングベクターを導入した後、G418を含む培地で培養し、G418耐性クローンを選抜した。G418はアミノグリコシド系抗生物質であり、真核生物の80Sリボソームによるタンパク質合成を阻害する。その結果得られたG418耐性クローンから、288個のコロニーを選択して、PCR及びサザンブロット法によりHmgb1遺伝子座で相同組換えを起こしたクローン(HRクローン)を探索した。その結果、PCR法によりG418耐性であったクローンから8クローンが選抜された。続いて、その8クローンに対するサザンブロット解析によって、7クローンはHmgb1遺伝子の近傍に設計したプローブ(プローブA、B)及びneoプローブに対して、期待される長さで遺伝子断片が検出されたため、目的のHRクローンであることが判明した。なお、図1(B)に示すように、他の1クローン(clone 65)では予想される遺伝子断片の長さではなかったことから非特異な挿入が起こったと考えられた。
HRクローンは、Hmgb1遺伝子座にloxP配列を持つクローンであるが、相同組換えの過程で同遺伝子座内にネオマイシン耐性遺伝子が挿入されている。コンディショナル欠損では特定の組織や細胞での遺伝子欠損を目的としているため、意図しない組織や細胞では遺伝子発現が正常でなければならない。しかしながら、遺伝子座にプロモータを有する他の遺伝子が挿入されると、元の遺伝子のプロモータへ干渉が起こり、遺伝子発現パターンが変動する危険性がある。そこで、可能な限り野生型の遺伝子配列と一致させるために、ネオマイシン耐性遺伝子の除去を行った。
ネオマイシン耐性遺伝子はloxPに挟まれているため、Cre/loxPシステムを用いることで切り出すことができる。そこで、エレクトロポレーションによりHRクローンにCreリコンビナーゼ発現ベクター(pIC−Creベクター)を導入し一過的にCreリコンビナーゼを発現させたのち、コロニーを拾い、それらに対してG418への感受性を試験して選抜を行い、サザンブロット法により確認した。図1(C)に示すように、3つのHRクローン(clone133、192、217)に対して全部で約2,000クローンを試験した結果、HRクローン由来であり、かつネオマイシン耐性遺伝子を持たずにHmgb1遺伝子座に2つのloxPが挿入されているクローン(以下「floxクローン」という。)をそれぞれ3種類単離することに成功した。さらに、このようにして選抜したfloxクローンを胚盤胞期の卵内に挿入し、その卵を仮親のマウスに移植した後に生まれてきたキメラマウスを掛け合わせてF1マウスを得た。図1(D)に示すように、これらのマウスの遺伝子型を解析したところ、clone133と192由来のキメラマウスにおいて、それぞれ生殖系列移行(Germline transmission)が起きていることを確認した。なお、以下の解析はclone133由来マウスを用いて行った。
図1は、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス(Hmgb1floxマウス)の作製について説明する図である。図1(A)にHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス作製の概略図を示す。開始コドンを含む第2エキソンの直前と第4エキソンの直後にloxPを挿入したHmgb1遺伝子ターゲッティングベクターを構築した。ターゲッティングベクターはネオマイシン耐性遺伝子(neo)とジフテリアトキシンAサブユニット遺伝子(DTA)を持つ。プローブA、BによってEcoRVで制限酵素処理されたゲノムDNAに対するサザンブロット解析により、野生型のHmgb1遺伝子座(WT)は16.5kb、ターゲッティングベクターと相同組換えをしたHmgb1遺伝子座(HR)は、それぞれ10.7kb及び6.2kbのバンドとして検出される。さらに、BamHIで制限酵素処理されたゲノムDNAに対するサザンブロット解析では、HR、HRからneoを取り除いたHmgb1遺伝子座(flox)及び第2エキソンから第4エキソンを除いたHmgb1遺伝子座(null)は、プローブBを用いて、それぞれ8.0、6.0、5.0kbのバンドとして検出される。
図1(B)に、エレクトロポレーション法を用いて胚性幹細胞にターゲッティングベクターを導入後、G418耐性かつHRに特異的なプライマーを用いたPCR解析で陽性を示した8クローンに対するサザンプロット解析を行った結果を示す。ゲノムDNAはEcoRV又はBamHIで制限酵素処理を行い、図に示したプローブを用いてDNA断片を検出した。
図1(C)は、図1(B)で単離したクローンのうち3クローンに対して、CreリコンビナーゼcDNAを組込んだベクター(10μg)をエレクトロポレーション法によって一過的に導入し、G418感受性を示した細胞に対して、図1(B)と同様の条件でサザンプロット解析を行った結果を示す。
図1(D)は、図1(C)で得たfloxクローン由来のキメラマウスとそのF1マウスにおける生殖系列移行の有無を示す。
Cre−エストロゲン受容体遺伝子を導入したHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製と解析
上記の方法により作製されたマウスを用いて、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作製した。まず、様々な臓器においてHMGB1を欠損させた際にマウス個体、又は細胞集団に異常がみられるかどうか検討した。
Cre−エストロゲン受容体(Cre−ERT2)マウスにはエストロゲン受容体の変異体であるERT2がCreとの融合タンパク質として発現しており、エストロゲン投与には反応しないが、エストロゲンの類似体であるタモキシフェンと強く結合し、Cre−ERT2融合タンパク質が核内移行し、核内においてCreリコンビナーゼが機能することで組換えが全身の細胞で起きるシステムである。
このCre−エストロゲン受容体マウスとHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを交配し、Hmgb1+/+/Cre−ERT2+及び、Hmgb1fl/fl/Cre−ERT2+マウスを得た。ここで、「fl」は、上記のfloxクローンが有する、Hmgb1遺伝子座に2つのloxPが挿入された遺伝子座を表す。
生後5週齢及び14週齢のこれらのマウスにタモキシフェンを3日おきに2週間投与し続けた。興味深いことに、図2(A)に示すように、非特許文献3に記載されたHmgb1−/−マウスと異なり、タモキシフェン投与後のマウスは致死性を示さず、対照のHmgb1+/+/Cre−ERT2+マウスと比較し、外見では何らの異常を示さず、体重等にも変化は確認されなかった。
図2(B)に示すように、Hmgb1fl/fl/Cre−ERT2+マウスにタモキシフェン投与後、骨髄細胞由来のゲノムDNAを用いてサザンブロッティング法により解析したところ、Hmgb1遺伝子のターゲットされた領域において、効率よく遺伝子の組換えが起き、遺伝子の欠失が起きていることが確認された。また、図2(C)に示すように、HMGB1タンパク質の発現について、抗HMGB1抗体を用いて確認したところ、様々な臓器及び細胞群においてHMGB1の発現が顕著に減弱していることが示された。
さらに、図3(A)及び(B)に示すように、胸腺及び脾臓において、免疫担当細胞の細胞集団についてフローサイトメトリーを用いて解析したところ、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ等、様々な細胞集団においてそれらの数に大きな異常は見られなかった。これらのことから、今回作製したHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを用いることで、HMGB1の発現を欠失させることができることが判明した。このマウスでは特段の異常は現在のところ見いだされていないが、今回の実験ではHMGB1の発現が残存していることから、今後は更なる工夫や詳細な解析を行うことが必要と考えている。
図2は、Cre−ERT2マウスを用いたHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製について説明する図である。図2(A)に、Hmgb1+/+/Cre−ERT2+及びHmgb1fl/fl/Cre−ERT2+マウスにタモキシフェン(9mg/20g体重)を2週間投与した後、マウスの体重変化を検討した結果を示す。
図2(B)及び(C)に、図2(A)のマウスを用いて、骨髄細胞におけるHmgb1遺伝子の組換え及び各臓器におけるHMGB1の発現量をそれぞれサザンブロット、ウェスタンブロットにより解析した結果を示す。図2(A)では生後5週齢及び14週齢のマウスを、図2(B)及び(C)では、14週齢のマウスを用いた。
図3は、HMGB1の免疫細胞群への影響を検討した結果を示すグラフである。生後14週齢(A)及び5週齢(B)のHmgb1+/+/Cre−ERT2+マウス及びHmgb1fl/fl/Cre−ERT2+マウスに、タモキシフェン(9mg/20g体重)を2週間投与した後、胸腺細胞又は脾臓細胞群の割合を図に示した蛍光色素結合抗体により染色し、フローサイトメトリーによって解析した。
(3)変異マウスを用いたT細胞、B細胞におけるHMGB1の役割
上記のように、発明者らが作製したHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを用いることで、HMGB1の発現を欠失させることができることが明らかとなった。そこで、これまで報告されているHMGB1の機能について検討した。
HMGB1はRAG1及びRAG2と結合し、T細胞受容体、B細胞受容体の遺伝子組換えを促進することが報告されていた。そこで、T細胞特異的、又はB細胞特異的にHMGB1の発現を欠失できるよう、T細胞特異的にCreを発現するLck−Creマウス、又はB細胞特異的にCreを発現するmb.1−CreマウスとHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスとの交配を行った。得られたHmgb1fl/fl/Lck−Creマウス及びHmgb1fl/fl/mb.1−Creマウスについて、脾臓又は胸腺を用いて細胞集団の解析を行った。
まず、Hmgb1+/+/Lck−Creマウス及びHmgb1fl/fl/Lck−Creマウスについて、胸腺細胞及び脾細胞をフローサイトメトリーにて解析した。その結果、図4(A)及び(B)に示すように、胸腺におけるT細胞群には両者において差異は認められなかった。また、図4(C)に示すように、Hmgb1fl/fl/Lck−Creマウスの脾臓において、TCR発現CD8T細胞に若干の減弱を認めたものの、CD4T細胞の割合は変化せず、大きな差異は見られなかった。
次に、Hmgb1+/+/mb.1−Creマウス及びHmgb1fl/fl/mb.1−Creマウスについて解析を行った。興味深いことに、図4(D)に示すように、Hmgb1fl/fl/mb.1−Creマウス由来の脾臓はHmgb1+/+/mb.1−Creマウス由来、又はHmgb1+/f/mb.1−Creマウス由来の脾臓と比較し、明らかに大きさが異なり、Hmgb1fl/fl/mb.1−Creマウス由来の脾臓は小さくなっていた。これらのマウス由来の脾細胞を用いてB細胞マーカーであるB220とT細胞マーカーであるCD3ε及びIgMに対して染色を行い、フローサイトメトリーにて細胞集団の解析を行った。その結果、図4(E)に示すように、B220CD3ε細胞数についてHmgb1fl/fl/mb.1−Creマウス由来脾細胞に著明な減弱を認めた。同時に、B220IgMCD3εについても染色を行ったが、同様に細胞集団に顕著な差異が認められ、Hmgb1fl/fl/mb.1−CreマウスではB細胞集団に異常を来すことが明らかとなった。RAG欠損マウスにおいては、T細胞、B細胞ともに異常が認められることが報告されている。HMGB1がどのように、特にB細胞の分化過程に寄与しているのか、今後明らかにしていきたい課題であると考えている。
図4は、T細胞及びB細胞分化におけるHMGB1の関与を検討した結果を示す図である。図4(A)は、脾臓細胞におけるHMGB1の発現量をウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。図4(B)は、Hmgb1+/+/Lck−Cre及びHmgb1fl/fl/Lck−Creマウスについて、胸腺細胞群の割合を、CD4及びCD8に対する蛍光色素結合抗体により染色し、フローサイトメトリーによって解析した結果を示すグラフである。
図4(C)は、Hmgb1+/+/Lck−Cre及びHmgb1fl/fl/Lck−Creマウスについて、脾臓細胞群の割合を、CD4、CD8、TCRαβ、CD3ε又はNK1.1に対する蛍光色素結合抗体により染色し、フローサイトメトリーによって解析した結果を示すグラフである。図4(D)は、Hmgb1+/+/mb.1−Cre、Hmgb1+/fl/mb.1−Cre及びHmgb1fl/fl/mb.1−Creマウスの脾臓の写真を示す。
図4(E)は、Hmgb1+/+/mb.1−Cre及びHmgb1fl/fl/mb.1−Creマウスにおける脾臓細胞群の割合を、CD3ε、B220又はIgMに対する蛍光色素結合抗体により染色し、フローサイトメトリーによって解析した結果を示すグラフである。
(4)LPS誘導性敗血症モデルにおけるHMGB1の役割
上述のように、HMGB1はさまざまな病態の増悪に働く、炎症性サイトカインとして機能することも示唆されている。実際に敗血症、RA、SLEの患者において、分泌されたHMGB1量が増加していることが報告されている。敗血症のモデルとして用いられるマウスへのLPS投与では、血中における炎症性サイトカインであるTNF−α、IL−6の濃度が投与後間もなく上昇し、これら炎症性サイトカインの過剰生産により、過度の炎症反応が惹起され致死性になると考えられている。この際、これらサイトカインの持続的産生に関与する因子としてHMGB1の作用が示唆されている。血中でのHMGB1濃度は投与後8時間後から上昇し始めて、16〜36時間後まで高濃度で維持されるが、この際にHMGB1中和抗体を投与することでマウスの生存率が改善する。またin vitroでのLPS刺激によりマクロファージ等の細胞において、HMGB1が能動的に分泌されることが知られており、LPS投与によりこれらの細胞から分泌されたHMGB1が敗血症の致死性に作用していると考えられている。
そこで、マクロファージ等によって産生されるHMGB1の、敗血症モデルとして知られるLPS誘導性ショックにおける役割について検討するため、HMGB1を能動的に放出するマクロファージや単球等の細胞でHmgb1遺伝子を欠損したマウスを作製し、敗血症モデルにおいてLPSに対する感受性について検討を行った。
マクロファージや単球を含む細胞群でHmgb1遺伝子を欠損したマウス作製するために、Lysozymeプロモータ制御下でCreリコンビナーゼを発現する遺伝子(Lys−Cre)を有するマウスとHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスとの交配を行った。Lys−Creマウスは骨髄系の細胞、特にマクロファージや好中球でCreリコンビナーゼを発現し、それらの細胞群において高頻度でloxPに挟まれた遺伝子を切り出すことが知られている。この交配によって得られたマウスでのHMGB1の欠損について検討するため、Hmgb1+/+/Lys−Cre、Hmgb1+/fl/Lys−Cre、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスにおけるチオグリコレート誘導性マクロファージを単離し、サザンブロット法及び抗HMGB1抗体を用いて解析を行った。図5(A)及び(B)に示すように、サザンブロットによる解析では、Hmgb1遺伝子の欠失が確認され、また、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre細胞ではHMGB1タンパク質はほとんどその発現が認められなかった。
Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスにおいても、マクロファージ等の細胞群においてHmgb1遺伝子が欠失することが確認されたので、このマウスにLPS投与し、その生存率について検討を行った。Hmgb1+/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウスに致死量のLPSを腹腔内投与した。その結果、図5(C)に示すように、予想に反し、興味深いことに、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスの全ての個体がLPS投与により死亡した一方、Hmgb1+/fl/Lys−Creマウスでは7個体中2個体が生き残った。このことから、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスでは、HMGB1がLPS誘導性致死に対して増悪にはたらくのではなく、逆に耐性を付与しているのではないかと考えられた。
このことをさらに検討するため、致死量以下の濃度のLPSをマウスの腹腔に投与し、LPS投与による致死性について検討を行った。その結果、図5(D)に示すように、HMGB1を正常に発現しているHmgb1+/+/Lys−Creマウスは、全ての個体がLPS投与に対して抵抗性を示したのに対し、Hmgb1+/fl/Lys−Creマウスの80%、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスの全ての個体が死に至ることが明らかとなった。また、図5(E)に示すように、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスにおいては、Hmgb1+/+/Lys−Creマウスと比較し、LPS投与後の血中におけるIL−6の産生にはほとんど差異が認められないものの、TNF−αの誘導が顕著に増加していることが判明した。
図5(G)に示すように、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウス及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の常在性腹腔マクロファージにLPS刺激を行うと、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来のマクロファージでは、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre由来のマクロファージと比較し、TNF−α mRNAの誘導が有意に増加していた。一つの可能性として、LPS誘導性ショックにおけるHmgb1fl/fl/Lys−Creマウスの脆弱性は、HMGB1を欠損したマクロファージからの多量のTNF−α産生が関与している可能性が考えられた。
上記の解析から、Hmgb1fl/fl/Lys−CreマウスはLPS誘導性ショックに対し、脆弱性を示すことが明らかとなった。また、その際、血中のTNF−αの産生が増強していることが判明した。何故、HMGB1欠損マクロファージにおいて、LPS刺激時のTNF−αの産生が亢進するのか、このTNF−αの増加のみが致死性の理由なのかどうか、更に、LPS投与により放出されるHMGB1と脆弱性との関連等については不明であり、今後明らかにすべき課題であると考えている。
図5は、Lys−CreマウスのLPSによる免疫応答を検討した結果を示す図である。図5(A)及び(B)は、Hmgb1+/+/Lys−Cre、Hmgb1+/fl/Lys−Cre、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来のチオグリコレート誘導マクロファージにおけるHmgb1遺伝子の組換え及びHMGB1の発現量をそれぞれサザンブロット及びウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。
図5(C)は、Hmgb1+/fl/Lys−Cre(n=7)、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre(n=8)マウスのLPS(1.25mg/20g体重)の腹腔内投与後の生存曲線を示すグラフである。生後12〜14週齢のマウスを用いた。図5(D)は、Hmgb1+/+/Lys−Cre(n=4)、Hmgb1+/fl/Lys−Cre(n=5)、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre(n=5)マウスのLPS(1.0mg/20g体重)の腹腔内投与後の生存曲線を示すグラフである。生後8〜10週齢のマウスを用いた。
図5(E)は、図5(D)のマウスの血中におけるTNF−α及びIL−6の濃度を、ELISA法を用いて計測した結果を示すグラフである。値は平均値±標準誤差であり、NDは検出不可であったことを示す。アステリスク(*)は、Hmgb1+/+/Lys−Creマウスと比較して、値がP<0.01で有意差があることを示す。図5(F)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の常在性マクロファージにおけるHMGB1の発現量をウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。
図5(G)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の常在性マクロファージを、LPS(200ng/ml)で刺激し、TNF−α及びIL−6遺伝子についてmRNAの相対発現量(Relative expression)をqRT−PCRで解析した結果を示すグラフである。値は平均値±標準誤差であり(n=3)、アステリスク(*)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスと比較して、値がP<0.05で有意差があることを示す。
(5)HMGB1欠損マクロファージにおける核酸刺激に対する応答
上述のように、発明者らの先行研究から、HMGBタンパク質は核酸による免疫応答に必須であることが明らかとなった(非特許文献1を参照)。HMGB1、3はDNA及びRNAに、HMGB2はDNAに結合する分子であるが、HMGBタンパク質がどのように核酸を認識しているか、またその下流のシグナル伝達の活性化における役割の詳細については不明である。さらに、Hmgb1遺伝子欠損マウスが生後早期に致死を示すため、生体での免疫担当細胞におけるHMGB1の核酸刺激による免疫応答への関与や、核酸認識受容体としてのHMGB1の生体内における役割については検討がなされてこなかった。そこで、上記において作製したHmgb1fl/fl/Lys−Creマウスを用いて、核酸による免疫応答機構の解析を行った。
Hmgb1−/−MEFs(mouse embryonic fibroblast、マウス胎児繊維芽細胞)では、DNAやRNA刺激によるサイトカインの誘導が野生型に比べて減弱する一方で、LPS等の非核酸による刺激では核酸刺激時のような減弱は見られない。また同様の結果が、分化誘導した樹状細胞においても確認されている(非特許文献1を参照)。そこで、他の免疫担当細胞であるマクロファージにおけるDNA刺激によるサイトカイン遺伝子誘導に対するHMGB1の関与を検討した。
Hmgb1fl/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウスから常在性マクロファージを単離し、それぞれCpG−Β DNA(以下「CpG−B」という。)5’−TCCATGACGTTCCTGATGCT−3’(配列番号17)やLPSを用いて刺激を行い、TNF−α及びIL−6のmRNAの誘導についてqRT−PCR(定量的RT−PCR)を行った。その結果、図6(A)及び(B)に示すように、HMGB1を欠損することでCpG−B刺激によるTNF−α mRNAの誘導は減弱されず、むしろ増強し、LPS刺激においても同様の傾向を示した。一方、図6(A)及び(B)に示すように、CpG−B刺激によるIL−6 mRNAの誘導は、対照細胞と比較し、HMGB1を欠失したマクロファージにおいて増強が認められたものの、LPS刺激によるHMGB1を欠失したマクロファージにおけるIL−6 mRNAの誘導は、対照細胞と比較し差異は認められなかった。また、図6(C)及び(D)に示すように、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の骨髄細胞からM−CSF(Macrophage−colony stimulating factor、マクロファージコロニー刺激因子)により分化誘導したマクロファージ(M−CSFマクロファージ)を用いて同様の検討を行ったところ、対照細胞と比較し、HMGB1を欠損した細胞では、CpG−B刺激によるTNF−α及びIL−6のmRNAの誘導が増強される結果が得られた。さらに興味深いことに、図6(C)及び(D)に示すように、M−CSFマクロファージでは、常在性マクロファージとは異なり、HMGB1欠損細胞におけるLPS刺激により、TNF−α mRNAと同様にIL−6 mRNAも増強されていた。
図6は、HMGB1欠損マクロファージにおけるTLRsを介したサイトカイン誘導を検討した結果を示す図である。図6(A)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の常在性マクロファージにおけるHMGB1の発現量をウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。
図6(B)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の常在性マクロファージを、CpG−B(1μM)又はLPS(200ng/ml)で刺激し、TNF−α及びIL−6遺伝子のmRNAの相対発現量(Relative expression)を、qRT−PCRで解析した結果を示すグラフである。
図6(C)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の骨髄細胞よりM−CSFを用いて分化誘導したマクロファージにおけるHMGB1の発現量をウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。
図6(D)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Cre及びHmgb1fl/fl/Lys−Creマウス由来の骨髄細胞よりM−CSFを用いて分化誘導したマクロファージを、CpG−B(1μM)又はLPS(200ng/ml)で刺激しTNF−α及びIL−6遺伝子のmRNAの相対発現量(Relative expression)をqRT−PCRで解析した結果を示すグラフである。
図6(B)及び(D)において、値は平均値±標準誤差であり(n=3)、アステリスク(*)は、Hmgb1fl/fl/Lys−Creマウスと比較して、値がP<0.05で有意差があることを示す。また、図6のデータは1度の試験結果である。
本発明において作製したHmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物により、様々な病態発症における役割をより詳細に理解でき、それらの克服に新しい戦略を提供できることが期待される。実際、HMGB1は、核酸認識受容体としての機能に加え、SLE等の自己免疫疾患や虚血・再還流等の炎症の病態、更には癌細胞の増殖等にも密接な関連があることが示唆されている多彩な機能を有する分子である。本発明により、Hmgb1遺伝子のコンディショナルノックアウト非ヒト動物が提供されたことから、今後、これらの機能・病態について検討を行い、HMGB1の免疫応答における役割について、その詳細を明らかにできる。また、HMGB1の作用を明らかにしていくことは、阻害剤や治療法の開発に道を拓くことに繋がることから、本発明は極めて有用である。

Claims (12)

  1. ゲノム上のHigh mobility group box 1(Hmgb1)遺伝子の一部又は全部をはさむ位置に、2つのリコンビナーゼ標的配列を有する、コンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  2. ゲノム上のHmgb1遺伝子の一部をはさむ位置に、2つのリコンビナーゼ標的配列を有しており、前記位置は、Hmgb1遺伝子の第2エキソンの5’側及び第4エキソンの3’側である、請求項1に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  3. 前記リコンビナーゼ標的配列は、loxP配列である、請求項1又は2に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  4. 前記非ヒト動物は、マウスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  5. T細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合のT細胞集団の存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物と同等である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  6. B細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合のB細胞集団の存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物と比較して減少する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  7. 骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合に、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物と比較して、LPS投与に対する抵抗性が低下する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  8. 骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合に、LPS投与後の血中IL−6の存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物のLPS投与後の血中IL−6の存在量と同等である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  9. 骨髄系細胞特異的にHmgb1遺伝子を欠損させた場合に、LPS投与後の血中TNF−αの存在量が、Hmgb1遺伝子を欠損させていない対照動物のLPS投与後の血中TNF−αの存在量と比較して増加する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のコンディショナルノックアウト非ヒト動物から誘導され、体の一部又は全部のHmgb1遺伝子の一部又は全部が欠損した、非ヒト動物。
  11. 前記コンディショナルノックアウト非ヒト動物の体の一部又は全部でリコンビナーゼを反応させて誘導される、請求項10に記載の非ヒト動物。
  12. 前記リコンビナーゼが、Creリコンビナーゼである、請求項11に記載の非ヒト動物。
JP2012097620A 2012-04-23 2012-04-23 Hmgb1コンディショナルノックアウト非ヒト動物 Pending JP2013223459A (ja)

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