JP5212717B2 - 燃料電池用電解質材料 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用電解質材料に関する。
従来から、様々な電解質材料が研究されてきた。このような電解質材料は、固体中をイオンが移動することによりイオン伝導性が発現するものと考えられている。このような電解質材料としては、例えば、WO2002/37506号パンフレット(特許文献1)において、中心細孔直径1〜30nmの細孔を有し且つ金属原子、前記金属原子に結合した酸素原子、並びに前記金属原子又は前記酸素原子に結合した炭素原子を1以上有する有機基からなる骨格と、前記細孔内において前記有機基と結合したイオン交換能を有する官能基とを有する有機無機複合材料からなる電解質材料が開示されている。また、特開2006−117873号公報(特許文献2)においては、式:(HOS−CH−CH−CH−SiO3/2(HS−CH−CH−CH−SiO3/2(SiO1−n−m[式中、n=0.30〜0.63、m=0.03〜0.40、n+m=0.33〜0.70である。)で表されるシリカ系メソ多孔体からなる電解質材料が開示されている。さらに、特開2003−263999号公報(特許文献3)においては、シリケート骨格中のケイ素原子にフェニル基等のアリール基が結合しており、前記アリール基にスルホン酸等のイオン交換能を有する官能基が結合しているシリカ系メソ多孔体からなる電解質材料が開示されている。また、特開2006−196290号公報(特許文献4)においては、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とするメソ多孔体薄膜からなり、その細孔の内壁が修飾基で被覆されている電解質材料が開示されている。しかしながら、このような特許文献1〜4に記載のような従来の電解質材料は、低湿度条件下でのプロトン伝導度が必ずしも十分なものではなかった。
WO2002/37506号パンフレット 特開2006−117873号公報 特開2003−263999号公報 特開2006−196290号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低湿度条件下でのプロトン伝導度が十分に高く、低湿度条件下における発電効率が十分に向上した燃料電池用電解質材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、細孔入口径と細孔内部径とが下記条件(A)〜(B):
[条件(A)]細孔内部径が1.5〜30nmであること、
[条件(B)]細孔内部径に対する細孔入口径の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95であること。
を満たすボトルネック型の細孔を有し、且つ、前記細孔内にイオン交換能官能基を有する有機基が導入されているボトルネック型シリカ系メソ多孔体を含有することにより、燃料電池用電解質材料の低湿度条件下でのプロトン伝導度が十分に向上し、これにより燃料電池用電解質材料の低湿度条件下における発電効率が十分に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の燃料電池用電解質材料は、細孔入口径と細孔内部径とが下記条件(A)〜(B):
[条件(A)]細孔内部径が1.5〜30nmであること、
[条件(B)]細孔内部径に対する細孔入口径の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95であること。
を満たすボトルネック型の細孔を有し、且つ、前記細孔内にイオン交換能官能基を有する有機基が導入されているボトルネック型シリカ系メソ多孔体を含有することを特徴とするものである。
上記本発明の燃料電池用電解質材料においては、前記イオン交換能官能基がスルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
また、上記本発明の燃料電池用電解質材料においては、前記イオン交換能官能基を有する有機基が、炭素数が6以下の鎖式炭化水素基及び炭素数が10以下の環式炭化水素基からなる群から選択される少なくとも一つの炭化水素基に前記イオン交換能官能基が結合した基を含有することが好ましい。
なお、本発明の燃料電池用電解質材料によって、低湿度条件下でのプロトン伝導度が十分に高くなり、低湿度条件下における発電効率が十分に向上する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、シリカ系メソ多孔体を含有する電解質材料は、水の毛管凝縮現象を利用してシリカ系メソ多孔体の細孔内に水を満たし、これによりプロトン伝導を発現するものと推察される。本発明の燃料電池用電解質材料においては、このようなシリカ系メソ多孔体として、細孔内部の細孔径が1.5〜30nmであり且つ細孔の入口側の細孔径と細孔内部の細孔径との比が0.05〜0.95に縮小されているボトルネック型の細孔を有するシリカ系メソ多孔体を用いる。このような条件を満たす細孔を有するシリカ系メソ多孔体においては、従来のシリカ系メソ多孔体と比較して低湿度条件下においても細孔内に十分な量の水が存在する。これは、ボトルネック型の細孔における水の毛管凝縮が、水の吸着は細孔内部の細孔径に依存し、水の脱離が細孔入口の細孔径に依存するためである。また、本発明においては、前記細孔内にイオン交換能官能基を有する有機基が導入されている。このようなイオン交換能官能基は、イオン交換が可能なものであるため水中においてプロトン伝導を効率よく発現させることが可能なものである。本発明においては、上述のように低湿度条件下においても毛管凝縮現象により細孔内に水が十分に存在するため、その細孔内に導入されているイオン交換能官能基によって、低湿度条件下でのプロトン伝導性が十分なものとなる。すなわち、本発明においては、細孔のボトルネック型の形状と細孔内に導入されたイオン交換能官能基とによって、低湿度条件下におけるプロトン伝導性が十分に向上する。そのため、本発明の燃料電池用電解質材料においては、低湿度条件下における発電効率が十分に向上するものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、低湿度条件下でのプロトン伝導度が十分に高く、低湿度条件下における発電効率が十分に向上した燃料電池用電解質材料を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の燃料電池用電解質材料は、細孔入口径と細孔内部径とが下記条件(A)〜(B):
[条件(A)]細孔内部径が1.5〜30nmであること、
[条件(B)]細孔内部径に対する細孔入口径の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95であること、
を満たすボトルネック型の細孔を有し、且つ、前記細孔内にイオン交換能官能基を有する有機基が導入されているボトルネック型シリカ系メソ多孔体を含有することを特徴とするものである。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体の細孔の縦断面の模式図を示す。図1中の符号1は細孔の細孔壁を示し、符号d1はボトルネック型の細孔の内部の細孔径(細孔内部径)を示し、符号d2はボトルネック型の細孔の入り口の細孔径(細孔入口径)を示す。
このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体の細孔は、細孔内部径d1が1.5〜30nmである(条件(A))。このような細孔内部径d1は1.5〜30nmであることがより好ましく、1.6〜5.0nmであることが特に好ましい。このような細孔内部径d1が前記下限未満では細孔内に水を出し入れすることが困難となり、十分なプロトン伝導が発現しなくなる。他方、細孔内部径d1が前記上限を超えると、低湿度(例えば相対湿度40%以下)で高いプロトン伝導性を示さなくなる。
また、前記ボトルネック型シリカ系メソ多孔体の細孔は、細孔内部径d1に対する細孔入口径d2の比率(d2/d1)が0.05〜0.95である(条件(B))。このような比率(d2/d1)が0.05〜0.95であることがより好ましく、0.5〜0.95であることが特に好ましい。このような比率が前記下限未満では低湿度で水吸着時において高い伝導度を示さなくなる。
さらに、このような細孔入口径d2としては、1.5〜4.5nmであることが好ましく、1.5〜4.0nmであることがより好ましい。このような細孔入口径が前記下限未満では細孔内に水を出し入れすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると水脱着時において低湿度で高い伝導度を示さない傾向にある。
また、このような「細孔内部径(d1)」及び「細孔入口径(d2)」は以下のようにして測定する。すなわち、先ず、シリカ系メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。次に、この吸着等温線を用い、BJH法により計算して細孔径分布曲線(全細孔容積(V)に細孔直径の対数(logD)を乗じた値(単位:cc/g)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線)を求める。
また、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体は、細孔内にイオン交換能官能基を有する有機基が導入されている。このような細孔内に導入された前記有機基は、細孔壁表面のケイ素原子に結合しているものである。また、このような有機基が有する「イオン交換能官能基」とは、イオン交換能を有する官能基であり、かかるイオン交換能官能基によってより高度なイオン伝導性を付与することが可能となる。このようなイオン交換能官能基としては、イオン交換能を有する官能基であればよく、特に制限されず、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、スルホンイミド基等が挙げられ、中でも、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基がより好ましく、スルホン酸基、スルホンイミド基が特に好ましい。
また、このようなイオン交換能官能基を有する有機基としては、鎖式炭化水素基(i)及び環式炭化水素基(ii)からなる群から選択される少なくとも一つの炭化水素基に前記イオン交換能官能基が結合した基を含有するものが好ましく、炭素数が6以下(更に好ましくは1〜3)の鎖式炭化水素基(i)及び炭素数が10以下(更に好ましくは6〜10)の環式炭化水素基(ii)からなる群から選択される少なくとも一つの炭化水素基に前記イオン交換能官能基が結合した基を含有するものがより好ましい。このような鎖式炭化水素基(i)又は環式炭化水素基(ii)の炭素数が前記上限を超えると、細孔容量が少なくなり、あるいは製造時に規則的な細孔構造を形成しなくなる傾向にある。なお、本発明においては、鎖式炭化水素基(i)又は環式炭化水素基(ii)に前記イオン交換能官能基が結合した基をそのまま前記イオン交換能官能基を有する有機基としてもよく、あるいは、鎖式炭化水素基(i)又は環式炭化水素基(ii)に前記イオン交換能官能基が結合した基と他の2価の炭化水素基等とを結合させた基を前記イオン交換能官能基を有する有機基としてもよい。また、前記イオン交換能官能基を有する有機基が、上記他の2価の炭化水素基を含有する場合には、前記他の2価の炭化水素基を介して細孔壁表面のケイ素原子に結合していることが好ましい。
また、このような鎖式炭化水素基(i)としては、直鎖又は分岐鎖状のものであってもよく、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐鎖状のプロピル基、直鎖又は分岐鎖状のブチル基、直鎖又は分岐鎖状のペンチル基、直鎖又は分岐鎖状のヘキシル基、直鎖又は分岐鎖状のヘプチル基、直鎖又は分岐鎖状のオクチル基、直鎖又は分岐鎖状のノニル基、直鎖又は分岐鎖状のデシル基、直鎖又は分岐鎖状のウンデシル基、直鎖又は分岐鎖状のドデシル基、直鎖又は分岐鎖状のテトラデシル基、直鎖又は分岐鎖状のヘキサデシル基、直鎖又は分岐鎖状のオクタデシル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐鎖状のプロピル基が好ましい。
さらに、このような環式炭化水素基(ii)としては特に制限されないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(ii−1)、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、テトラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クワドロフェニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ピレニル基及びトリフェニレニル基等の芳香環を少なくとも1つ含有する芳香環含有基(ii−2)等が挙げられ、中でも芳香環含有基(ii−2)がより好ましい。また、このような鎖式炭化水素基(i)及び環式炭化水素基(ii)は他の置換基を有していてもよく、このような他の置換基としてはスルホ基、ホスホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
また、このような細孔内に導入されている有機基としては、より高度なプロトン伝導性が得られるという観点から、前記イオン交換能官能基が結合した芳香環含有基(ii−2)と、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基からなる群から選択される少なくとも1種の2価の炭化水素基とを含有する有機基がより好ましい。すなわち、本発明にかかるシリカ系メソ多孔体としては、前記細孔の細孔壁表面のケイ素原子に、前記2価の炭化水素基を介して、イオン交換能官能基を有する芳香環含有基(ii−2)が結合したものが好ましい。なお、このような細孔の細孔壁表面のケイ素原子に前記2価の炭化水素基を介してイオン交換能官能基を有する芳香環含有基(ii−2)が結合したシリカ系メソ多孔体によって、より高度なプロトン伝導性が得られる理由は必ずしも定かではないが本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、前記シリカ系メソ多孔体においては、細孔に導入された前記有機基の嵩高さによって、低湿度条件下において細孔壁の表面のシラノール基(Si−OH)とイオン交換能官能基(例えば−SOH)とが水素結合してしまう場合がある。しかしながら、イオン交換能官能基を有する芳香環含有基(ii−2)を前記2価の炭化水素基を介して細孔壁中のケイ素原子に結合させると、細孔壁の表面にあるシラノール基(Si−OH)と細孔内のイオン交換能官能基との間に嵩高い前記芳香環含有基(ii−2)が存在することとなり、シラノール基(Si−OH)とイオン交換能官能基との間の水素結合を十分に効率的に抑制できる。また、芳香環含有基(ii−2)と前記ケイ素原子との間に炭化水素基が存在すると、製造時に芳香環含有基(ii−2)のπ電子密度の減少が十分に抑制され、芳香環含有基(ii−2)にイオン交換能官能基を容易に導入することが可能となるため、十分な量のイオン交換能官能基を導入することが容易となる。そのため、イオン交換能官能基を有する芳香環含有基(ii−2)が前記2価の炭化水素基を介して導入されたシリカ系メソ多孔体においては、より高度なプロトン伝導性が得られるようになるものと本発明者らは推察する。
また、前記2価の炭化水素基は、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基からなる群から選択される少なくとも1種である。このようなアルキレン基としては、炭素数が1〜6のものが好ましく、1〜3のものがより好ましい。また、このようなアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状のものであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられ、中でも、製造時に芳香環含有基のπ電子密度の減少を十分に抑制できるという観点から、エチレン基(−CH−CH−)、トリメチレン基が特に好ましい。また、前記アルケニレン基としては、炭素数が2〜6のものが好ましく、2〜4のものがより好ましい。また、このようなアルケニレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のものであってもよく、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基が特に好ましい。さらに、前記アルキニレン基としては、炭素数が2〜6のものが好ましく、2〜4のものがより好ましい。このようなアルキニレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のものであってもよく、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基が特に好ましい。
前記芳香環含有基(ii−2)としては、上述のように芳香環を少なくとも1つ有する基であればよく特に制限されないが、芳香環の数が1〜4のものが好ましく、芳香環の数が1〜3のものがより好ましい。このような芳香環の数が前記上限を超えると、規則的なメソ細孔が形成されない傾向にある。
また、前記芳香環含有基(ii−2)としては、低湿度条件下において、細孔壁の表面にあるシラノール基(Si−OH)とスルホ基(−SOH)とが結合することを十分に抑制でき、しかも規則的な細孔を効率よく形成できるという観点から、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、テトラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クワドロフェニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ピレニル基及びトリフェニレニル基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、中でも、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基が更に好ましく、製造効率等の観点から、フェニル基が特に好ましい。
また、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体としては、前記有機基が結合している細孔の細孔壁表面のケイ素原子の含有比率が、前記シリカ系メソ多孔体中のケイ素原子の総量に対して2モル%以上30モル%未満の範囲にあることが好ましく、10モル%以上30モル%未満の範囲にあることがより好ましい。このような有機基が結合しているケイ素原子の含有比率が、前記範囲にある場合には、シリカ系メソ多孔体中において3次元架橋形成に寄与するケイ素原子の比率が高くなるため、シリカ系メソ多孔体がより高度な耐水性を示す傾向にある。一方、前記ケイ素原子の含有比率が前記下限未満では、プロトン伝導性が十分なものとならない傾向にある。なお、このようなケイ素原子の含有比率は、シリカ系メソ多孔体の製造時のシリカ原料(モノマー)の仕込み量から、前記モノマーが過不足なく反応したと仮定した場合の組成式:
[A−SiO3/2[SiO
[式中、Aは前記有機基を示し、mとnはそれぞれm+n=1となる数値を示す。]
を求めた後、前記組成式中のmとnの数値から、式:{m/(m+n)}×100(モル%)を計算することにより求めることができる。
また、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体としては、細孔内に導入されたイオン交換能官能基中のHの量が、0.1mmol/g以上1.5mmol/g未満であることが好ましく、1.0mmol/g以上1.5mmol/g未満であることがより好ましい。このようなHの量が前記下限未満では、得られる燃料電池用電解質材料のプロトン伝導性が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる燃料電池用電解質材料の親水性が増し、水に溶解する傾向にある。なお、このようなHの量は、酸−塩基滴定法により測定することができる。
さらに、前記ボトルネック型シリカ系メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、100〜1000m2/g(より好ましくは300〜1000m2/g)の範囲であることが好ましい。なお、「比表面積」は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
さらに、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体としては、そのX線回折パターンにおいて1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
また、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成される。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,etal.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449,1996、Q.Huo,et al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
また、このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体の形状としては特に制限されないが、薄膜状又は粒子状であることが好ましく、そのまま燃料電池用の電解質膜として利用可能であるという観点から、薄膜状であることがより好ましい。なお、ここにいう「粒子状」とは球状の他、円柱状、針状等の形状であってもよい。
さらに、本発明の燃料電池用電解質材料は、上述のようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体を含有していればよく、他の電解質等を含有していてもよい。このような他の電解質としては公知の電解質の材料を適宜用いることができる。
また、このような燃料電池用電解質材料においては、前記ボトルネック型シリカ系メソ多孔体の形状が薄膜状である場合には、これをそのまま燃料電池用の電解質膜として利用することができる。また、ボトルネック型シリカ系メソ多孔体の形状が粉末状である場合には、これを単独であるいは前記他の電解質との混合物として用い、膜状に成型することで燃料電池用の電解質膜として利用することも可能である。
次に、上述のようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体を製造する方法を説明する。このようなボトルネック型シリカ系メソ多孔体を製造する方法としては、上記条件(A)及び(B)を満たし且つ前記イオン交換能官能基を有する有機基が導入されている細孔を有するシリカ系メソ多孔体を製造することが可能な方法であればよく特に制限されないが、下記工程(A)〜(E)を含む方法を好適に採用することができる。すなわち、溶媒中において、界面活性剤と、下記一般式(1):
(RSi−Y (1)
(式中、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ低級アルコキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、アリル基(CH=CH−CH−)、エステル基(好ましくは炭素数1〜5のエステル基(RCOO−))及びハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)からなる群から選択されるいずれかの基を示し、Yはイオン交換能官能基の前駆体を有する有機基を示す。)
で表される第一のシリカ原料及び第二のシリカ原料を含むシリカ原料の混合物とを混合し、シリカ中に前記界面活性剤が導入された第一多孔体前駆体を析出させる工程(A)と、
前記第一多孔体前駆体の細孔の入口近傍の前記界面活性剤を除去し、第二多孔体前駆体を得る工程(B)と
前記第二多孔体前駆体にCVD処理を施し、前記細孔の入口近傍に無機酸化物を積層せしめ、細孔入口径を縮小させて第三多孔体前駆体を得る工程(C)と、
前記第三多孔体前駆体中に導入されている前記界面活性剤を除去し、多孔体を得る工程(D)と、
前記多孔体中のシリカに導入された有機基中のイオン交換能官能基の前駆体を、イオン交換能官能基に変換する処理を施して、ボトルネック型シリカ系メソ多孔体を得る工程(E)と、
を含む方法を好適に採用することができる。以下において、工程(A)〜(E)を分けて説明する。
工程(A)は、溶媒中において、前記界面活性剤と、前記一般式(1)で表される第一のシリカ原料及び第二のシリカ原料を含むシリカ原料の混合物とを混合し、前記界面活性剤が導入された第一多孔体前駆体を析出させる工程である。ここにいう「析出」という用語は、反応溶液のX線回折測定により、細孔の回折ピークが出現し始めた時を析出の開始時期とし、前記回折ピークが徐々に増加して一定値になった時を析出の終了時期として定義する。
前記一般式(1)中のRは、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、アリル基(CH=CH−CH−)、エステル基(好ましくは炭素数1〜5のエステル基(RCOO−))及びハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)からなる群から選択される少なくとも一つの基である。このようなRとしては、低級アルコキシ基が好ましく、反応性の観点から、炭素数が1〜4程度のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)がより好ましい。
また、前記一般式(1)中のYは、イオン交換能官能基の前駆体を有する有機基であり、前記鎖式炭化水素基(i)又は前記環式炭化水素基(ii)とイオン交換能官能基の前駆体とを含有する基が好ましい。このようなY(有機基)として、下記一般式(2):
−R−X−Q (2)
(式中、Rは、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基からなる群から選択される少なくとも1種の2価の炭化水素基を示し、Xは前記芳香環含有基(ii−2)を示し、Qはイオン交換能官能基の前駆体を示す。)
で表される有機基を用いた場合には、前記シリカ系メソ多孔体として好適な、細孔の細孔壁表面のケイ素原子に、前記2価の炭化水素基を介して、イオン交換能官能基を有する芳香環含有基(ii−2)が結合したシリカ系メソ多孔体を製造することが可能となる。
さらに、このようなイオン交換能官能基の前駆体としては、前記イオン交換能官能基に変換させることが可能な基を有していればよく、例えば、クロロサルフォニル基、メルカプト基、シアノ基、フルオロサルフォニル基等が挙げられる。
また、このような一般式(1)で表される第一のシリカ原料としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノエチルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)−エチルトリエトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)−エチルトリメトキシシラン、2−(4−メルカプトフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−メルカプトフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−フルオロスルフォニルフェニル)−エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、前記第二のシリカ原料は、アルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシラン、アルコキシ基を3個有するトリアルコキシシラン、アルコキシ基を2個有するジアルコキシシラン等を用いることができる。このようなアルコキシシランが有するアルコキシ基が3又は2個である場合は、アルコキシシラン中のケイ素原子には、水酸基等が結合していてもよい。このような第二のシリカ原料としては特に制限されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。このような第二のシリカ原料は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記第一のシリカ原料及び前記第二のシリカ原料を加水分解させた場合には、シラノール基が生じ、生じたシラノール基同士が縮合してケイ素酸化物が形成される。ここで、ケイ素酸化物を形成させる際に、分子中のアルコキシ基の数が多いアルコキシシランを用いると、加水分解及び縮合で生じる結合が多くなる傾向にある。従って、前記第二のシリカ原料としては、アルコキシ基の多いテトラアルコキシシランを用いることが好ましい。このようなテトラアルコキシシランとしては、反応速度の観点からテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いることが特に好ましい。
また、前記第一のシリカ原料及び第二のシリカ原料を含むシリカ原料の混合物としては、前記混合物中における第一のシリカ原料の含有比率が、前記混合物の全量に対して2モル%以上30モル%未満であることが好ましく、10モル%以上30モル%未満であることがより好ましい。このような第一のシリカ原料の含有比率が前記下限未満では、得られる多孔体に十分な量のイオン交換能官能基を配置させることができず、十分なイオン伝導性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、規則的な細孔が形成されない傾向にあるばかりか、メソ多孔体の3次元架橋形成に寄与するシリカ原子の割合が低下して耐水性が低下する傾向にある。なお、混合物中の第一のシリカ原料の含有比率を前記範囲とすることで、得られるシリカ系メソ多孔体中のイオン交換能官能基を有する有機基が結合したケイ素原子の含有比率を、その多孔体中のケイ素原子の総量に対して2モル%以上30モル%未満の範囲とすることが可能となるため、得られるシリカ系メソ多孔体により高い耐水性を発揮させることが可能となる。また、このような混合物の製造方法は特に制限されず、例えば、乾燥窒素気流中で第一のシリカ原料及び第二のシリカ原料を混合する方法を採用することができる。
また、工程(A)において用いられる界面活性剤は特に制限されず、細孔径が1.5〜30nmの細孔を有する多孔体を製造する際に用いることが可能な公知の界面活性剤を適宜用いることができ、例えば、下記一般式(3):
2n+1N(CH・Z (3)
(式中、nは2以上の整数であり、Zは塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化イオン、HSO又は酢酸イオン等の有機アニオンを示す。)
で表されるアルキルトリメチルアンモニウムハライド、アルキルアルコール、脂肪酸等が挙げられる。また、このような界面活性剤としては、炭素数が10〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましく、中でも、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライドがより好ましい。
このような界面活性剤は、前記シリカ原料の混合物と共に溶媒中で複合体を形成する。複合体中のシリカ原料は反応によりケイ素酸化物へと変化するが、界面活性剤が存在している部分ではケイ素酸化物が生成しないため、界面活性剤が存在している部分に孔が形成されることになる。すなわち、このような界面活性剤はシリカ原料中に導入されて孔形成のためのテンプレートとして機能する。また、このような界面活性剤は1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることが可能であるが、上記のように界面活性剤はシリカ原料の反応生成物に孔を形成させる際のテンプレートとして働き、その種類は多孔体の孔の形状に大きな影響を与えるため、より均一な細孔径を有する多孔体を得るという観点からは、界面活性剤は1種類のみを用いることが好ましい。なお、前記界面活性剤は、粉末のままで添加してもよいが、少量の水に溶解させて添加してもよい。
また、前記溶媒としては、シリカ系メソ多孔体を製造する際に用いることが可能な公知の溶媒を適宜用いることができる。このような溶媒としては、アルコールの含有量が80容量%以下の水系溶媒を用いることが好ましい。また、前記第一多孔体前駆体を薄膜状とする場合には、前記シリカ原料中に前記水系溶媒を添加し、室温で数分ないし3時間程度攪拌した後に界面活性剤を添加することが好ましい。また、第一多孔体前駆体を薄膜状とする場合には、溶媒にpH調整剤として少量の酸を添加することが好ましく、pH値は1〜4の範囲に調整することが好ましい。このようにして酸を添加することで各成分が溶解し、均一な溶液が調製できる傾向にある。また、前記酸としては希塩酸(例えば2規定)、硝酸、硫酸等が挙げられ、希塩酸(例えば2規定)を好適に用いることができる。
また、前記第一多孔体前駆体を粒子状とする場合には、前記水系溶媒中の水とアルコールとの比率を変化させることにより、粒径の均一性を高水準に保持しつつ、得られるシリカ系メソ多孔体の粒径を容易に制御することができる。例えば、水の比率が高い場合は多孔体が析出し易くなるために粒径が小さくなり、逆にアルコールの比率が高い場合は大きい粒径の多孔体を得ることができる。なお、粒子状の多孔体を形成させる場合には、塩基性条件下でシリカ原料等を混合することが好ましい。このような塩基性条件下で反応させた場合には、酸性条件で反応させる場合と比較して、ケイ素原子の反応点が増加し、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができる傾向にある。このような塩基性条件としては、溶媒のpH値が7.5〜13であることが好ましい。
さらに、前記シリカ原料の混合物及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合して第一多孔体前駆体を得る際には、界面活性剤の含有量を、前記混合物中のシリカ原料1モルに対して、0.1〜3モルとすることが好ましい。界面活性剤の含有量が前記上限を超えるとメソ多孔体の形成に寄与しない余剰の界面活性剤が試料中に混在する傾向にあり、他方、前記下限未満では、メソ多孔体の形成に寄与しない余剰のSiが混在し、また、シリカ層が厚くなり細孔容積が減少する傾向にある。
また、工程(A)における反応条件(反応温度、反応時間等)は特に制限されず、反応温度としては、例えば−20℃〜90℃とすることが好ましい。また、前記多孔体前駆体を薄膜状とする場合には、10℃〜40℃とすることが好ましく、粒子状とする場合には0℃〜80℃(更に好ましくは10℃〜40℃)とすることがより好ましい。なお、具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類や目的とする多孔体の形状等に基づいて適宜決定することが好ましい。
また、前記第一多孔体前駆体を薄膜状とする場合には、前記シリカ原料の混合物及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合して得られた溶液を基板上にコートして反応させることにより、全体を均一なまま固化させることができ、薄膜状の多孔体前駆体を得ることが可能となる。このような溶液を基板にコートする方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、スピンコート法、キャステイング法、ディップコート法等を採用することができる。
一方、前記第一多孔体前駆体を粒子状とする場合には、前記シリカ原料の混合物および前記界面活性剤を前記溶媒中で混合して得られた溶液を用いて、前記シリカ原料をそのまま反応させればよい。また、前記第一多孔体前駆体を粒子状とする場合には、反応は撹拌状態で進行させることが好ましい。
また、このようにして得られた第一多孔体前駆体は乾燥処理を施すことが好ましい。このような乾燥処理の条件としては、大気圧下、30〜200℃で1〜24時間程度とすることが好ましい。
次に、工程(B)について説明する。工程(B)は、前記第一多孔体前駆体の細孔の入口近傍の前記界面活性剤を除去し、第二多孔体前駆体を得る工程である。図2に、このような第二多孔体前駆体の細孔の縦断面の模式図を示す。図2中、符号1は細孔壁を示し、符号2は界面活性剤を示し、符号3は細孔の入口を概念的に示す。
また、このような第一多孔体前駆体の細孔入口近傍の界面活性剤を除去する方法としては、例えば、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法を利用する方法等を挙げることができる。このような有機溶媒で処理する方法を採用する場合においては、細孔入口近傍の界面活性剤のみを除去するように目的とする細孔の設計に応じて条件を適宜変更しながら、界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に第一多孔体前駆体を浸漬して界面活性剤を抽出する。このような有機溶媒としてはエタノール、メタノール、アセトン、ヘキサン等が挙げられる。
また、第一多孔体前駆体を有機溶媒に浸漬して細孔入口近傍の界面活性剤を除去するための条件としては、目的とする細孔の設計、界面活性剤の種類等に応じて適宜変更できるものではあるが、大気圧下、温度30〜100℃(より好ましくは40〜80℃)、浸漬時間30〜360分(より好ましくは30〜180分)の条件とすることが好ましい。
また、第一多孔体前駆体の細孔入口近傍の界面活性剤を除去する方法としてイオン交換法を採用する場合においては、細孔入口近傍の界面活性剤のみを除去するように目的とする細孔の設計に応じて条件を適宜変更しながら、多孔体前駆体を酸性溶液(少量の酢酸を含むエタノール等)に浸漬して界面活性剤を抽出する。これにより、多孔体前駆体の細孔入口近傍に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。このような酸性溶液としては、溶媒としてエタノール、メタノール等を用い、その溶媒中に少量の酸を含有させた溶液が好ましい。また、このような酸としては、酢酸、塩酸、硫酸等が好ましい。また、酸性溶液中の酸の含有量としては0.5〜20質量%程度であることが好ましい。
また、第一多孔体前駆体を前記酸性溶液に浸漬して細孔入口近傍の界面活性剤を除去するための条件としては、目的とする細孔の設計、界面活性剤の種類等に応じて適宜変更できるものではあるが、大気圧下、温度30〜100℃(より好ましくは40〜80℃)、浸漬時間30〜360分(より好ましくは30〜180分)の条件とすることが好ましい。
次に、工程(C)について説明する。工程(C)は前記第二多孔体前駆体にCVD処理を施して、前記細孔の入口近傍に無機酸化物を積層せしめて細孔入口径を縮小させて、第三多孔体前駆体を得る工程である。図3に、このような第三多孔体前駆体の細孔の縦断面の模式図を示す。図3中、符号1は細孔壁を示し、符号2は界面活性剤を示し、符号4は細孔入口近傍に積層した無機酸化物の層を概念的に示す。
このようなCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着法)としては、前記無機酸化物を積層させることが可能な方法であればよく特に制限されず、熱CVD、光CVD、プラズマCVD法等の公知のCVD法が挙げられる。このようなCVD法を実施する際に用いる装置も特に制限されず、公知のCVD装置を適宜用いることができる。
このようなCVD法において採用する反応雰囲気は、酸化雰囲気にすると採用する温度条件によって第二多孔体前駆体の細孔内に導入されている界面活性剤及び有機基の燃焼が生じ得るため、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気とすることが好ましい。
このようなCVD法において採用する温度条件は特に制限されないが、第二多孔体前駆体の温度を250℃以下(より好ましくは100〜200℃)とすることが好ましい。このような温度条件が前記下限未満の場合には、無機酸化物の積層速度が遅くなってしまい、反応時間及びエネルギー消費が大きくなる傾向があり、他方、前記上限を超えると第二多孔体前駆体の細孔内に導入された界面活性剤及び有機基が分解される傾向にある。
このようなCVD法により積層される無機酸化物としては特に制限されず、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ、P等が挙げられる。このような無機酸化物の中でも、親水性の観点から、シリカがより好ましい。
また、前記無機酸化物を積層させるために用いる原料化合物としては、CVD法により前記無機酸化物を形成させることが可能なものであればよく特に制限されないが、例えば、トリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン等が挙げられる。また、このような原料化合物の中でも、工業用原料であり且つコストの低減が図れるという観点から、トリメトキシシラン、トリエトキシシランがより好ましい。
また、このような工程(C)においては、細孔の入口近傍に無機酸化物を積層させることで、細孔内部径d1に対する細孔入口径d2の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95となるように、その細孔の入口の細孔径を縮小させる。このようにして細孔内部径d1に対する細孔入口径d2の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95となるように細孔入口径d2を縮小させることにより、得られる多孔体は水の毛管凝縮を効率よく利用できるものとなり、例えば相対湿度40%以下となるような低相対湿度条件下においても、十分に高いプロトン伝導性を有する燃料電池用電解質材料を得ることが可能となる。このような比率となるように細孔入口径d2を縮小させるための条件は特に制限されず、CVD反応温度や用いる原料化合物の種類、原料化合物を導入する際の流量等によっても変化するものではあるため、採用するCVD法に応じて、その条件を適宜調整する必要がある。なお、CVD法として熱CVD法を採用する場合、無機酸化物層4の厚みは特にCVD反応時間と相関関係があるため、CVD反応時間を調整することによって、その厚みをある程度制御することが可能であり、これによって細孔入口径d2を所望の大きさに制御することができる。このようにして、条件を適宜調整することにより、細孔内部径d1に対する細孔入口径d2の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95となるようにして細孔入口径d2を縮小させることが可能となる。なお、工程(C)においては、第二多孔体前駆体の細孔の内部に界面活性剤が残存しているため、上記CVD処理により細孔の入口近傍にのみ無機酸化物層4が形成され、得られる第三多孔体前駆体の細孔の規則構造や細孔内部の細孔径を変化させることなく、細孔入口径のみを縮小させることが可能である。
次に、工程(D)について説明する。工程(D)は、前記第三多孔体前駆体中に導入されている前記界面活性剤を除去し、多孔体を得る工程である。
このような第三多孔体前駆体中に導入されている界面活性剤を除去する方法としては特に制限されず、界面活性剤が導入されたシリカ系メソ多孔体から界面活性剤を除去することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等が挙げられる。このような有機溶媒で処理する方法を採用する場合においては、界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に第三多孔体前駆体を浸漬して界面活性剤を抽出する。イオン交換法を採用する場合においては、第三多孔体前駆体を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱して界面活性剤を抽出する。なお、かかる酸性溶液に用いる酸としては塩酸、硫酸が好ましい。これにより、第三多孔体前駆体の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。
次に、工程(E)について説明する。工程(E)は、前記多孔体中のシリカに導入された有機基中のイオン交換能官能基の前駆体をイオン交換能官能基に変換する処理を施して、ボトルネック型シリカ系メソ多孔体を得る工程である。
このようなイオン交換能官能基の前駆体をイオン交換能官能基に変換する方法としては、前記イオン交換能官能基の前駆体をイオン交換能官能基に変換することが可能な方法であればよく、特に制限されず、イオン交換能官能基の前駆体の種類及び変換するイオン交換能官能基の種類等に応じて様々な方法を採用することができ、前記前駆体を、スルホン酸、カルボン酸基等のイオン交換能官能基に変換させることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。
このようなイオン交換能官能基に変換する処理としては、例えば、イオン交換能官能基の前駆体の官能基がメルカプト基であり、これをスルホン酸基に変換する場合には、酸化剤を用いて酸化せしめる方法を採用することができる。このような酸化剤を用いて酸化する方法としては特に制限されず、酸化剤を用いてメルカプト基を酸化してスルホン酸基に変換することが可能な方法であればよい。また、前記酸化剤としては、メルカプト基を酸化してスルホン酸基に変換することが可能なものであればよく、特に制限されず、例えば、過酸化水素、硝酸、硫酸、クラウンエーテル等が挙げられる。このような酸化剤の中でも、反応性の高さ、細孔の保持等の観点から、過酸化水素が好ましい。また、このような酸化剤を用いて酸化する方法における反応温度、反応時間等の条件は特に制限されるものではないが、反応温度は100℃以下(より好ましくは10〜80℃)であることが好ましく、反応時間は30分〜6時間以内であることが好ましい。このような反応温度及び反応時間が前記下限未満では、メルカプト基の酸化が起こりにくく、メルカプト基を酸化してスルホン酸基に変換することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、シリカ系メソ多孔体の細孔が一部崩壊する傾向にある。
また、このようなイオン交換能官能基に変換する処理としては、イオン交換能官能基の前駆体の官能基がシアノ基であり、これをカルボン酸基に変換する場合においては、酸化剤を用いて酸化せしめる方法を採用することができる。このような酸化剤としては、シアノ基を酸化してカルボン酸基に変換することが可能なものであればよく、特に制限されず、例えば、硫酸、塩酸、酢酸、ギ酸等の酸や過酸化水素、クラウンエーテル等が挙げられる。このような酸化剤の中でも、反応性の高さ、細孔の保持等の観点から、硫酸が好ましい。また、このような酸化剤を用いて酸化する方法における反応温度、反応時間等の条件は特に制限されるものではないが、濃度が1mol/L以上の硫酸を用いる場合は、25〜150℃(より好ましくは50〜130℃)の温度条件で1〜24時間程度、加熱還流することが好ましい。
また、イオン交換能官能基の前駆体の官能基がクロロスルフォニル基であり、これをスルホン酸基に変換する場合には、前述の工程(D)において界面活性剤を抽出する際に、用いる酸性溶液により、併せてクロロスルフォニル基をスルホン酸基に交換する方法を採用してもよい。このように、工程(A)〜(E)を含むシリカ系メソ多孔体を製造する方法においては、前記酸性溶液により工程(D)と工程(E)とを同時に実施してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、下記一般式(4):
Figure 0005212717
で表される2−(4−クロロサルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン(CSPETMS)0.68gと、テトラメトキシシラン(TMOS)0.60gとを乾燥窒素気流中で予め混合して得られたシリカ原料(TMOSとCSPETMSのモル比:TMOS/CSPETMS=0.53)に、エタノール(5.0ml)を添加した後、更に、HO(993μl)と2規定のHCl(7μl)とを混合し、室温(25℃)条件下、200rpmの条件で1時間撹拌して、TMOS/CSPETMSゾル溶液を得た。次に、得られたTMOS/CSPETMSゾル溶液に対して、界面活性剤であるオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(C18TMACl)0.81gと、エタノール(10ml)と、HO(0.1ml)と、2規定のHCl(10μl)との混合物を添加し、300rpmの条件で2時間撹拌し、混合溶液を得た。
次に、図4に示す4端子電極基板(縦40mm、横20mm、電極の種類:白金電極、電極12(c)と電極12(d)との間隔X:5mm、電極12(a)と電極12(b)との間隔Y:2mm、電極12(a)と電極12(d)との間隔Z:1mm、電極12(b)と電極12(c)との間隔W:1mm、電極12(c)の幅V:5mm、電極12(d)の幅U:5mm)に対して、ディップコート法により膜厚が300nmとなるようにして、前記混合溶液をコートし、コート膜積層基板を得た。次いで、前記コート膜積層基板をオートクレーブに入れた後、コート膜に対してTMOS(150μl)を添加し、120℃の温度条件で2時間処理した。次いで、前記コート膜に対して、28容量%のNH水溶液(100μl)を添加し、100℃で2時間処理した後、薄膜を100℃の温度条件で1時間乾燥させて、界面活性剤が導入された第一多孔体前駆体からなる薄膜を得た。その後、エタノールで希釈した1質量%の酢酸溶液を用いて、室温(25℃)条件下において、前記第一多孔体前駆体の細孔の細孔入口近傍に存在する界面活性剤を除去し、細孔の内部に界面活性剤が残存する第二多孔体前駆体からなる薄膜を得た。なお、図4は、薄膜が形成された4端子電極基板を示す模式図である。
次いで、このようにして得られた第二多孔体前駆体の薄膜に対して、CVD処理を施し、第二多孔体前駆体の細孔入口近傍にシリカを積層せしめ、第三多孔体前駆体を得た。このようなCVD法による処理に際しては、図5に模式的に示すCVD装置を用いた。図5に示すCVD装置は、基本的に、ロータリーポンプ20と、トラップ溶液21を導入するための容器R1と、水22を導入するための容器R2と、第二多孔体前駆体の薄膜が形成された基板23を導入するための容器R3と、無機酸化物の原料化合物24を導入するための容器R4と、圧力計25と、配管26とを備える。また、このようなCVD装置においては、各容器中へのガスの流入及び放出を、容器R1〜R4と接続された配管に設けられた弁を開け閉めすることにより制御できる。さらに、本実施例においては、容器R2に水を導入し、容器R3に上述のようにして得られた第二多孔体前駆体の薄膜が形成された基板を導入し、容器R4に前記無機酸化物の原料化合物24としてトリメトキシシラン(TMOS)を導入し、トラップ溶液21は用いず、トラップ溶液21を導入するための容器R1は空の状態にした。
また、このようなCVD装置を用いたシリカの積層工程(CVD処理)は、以下に示す第1〜第4工程を30回繰り返す工程とした。
〈第1工程〉ロータリーポンプ20により系内を減圧し、減圧条件(10−3Pa程度)下において薄膜23を200℃の温度条件で2時間加熱する。
〈第2工程〉原料化合物24(トリメトキシシラン)を室温下で蒸発せしめ、減圧(10−3Pa程度)、200℃の条件下で薄膜23をトリメトキシシラン気相下に3分間曝す。
〈第3工程〉水22を室温下で蒸発せしめ、減圧(10−3Pa程度)、200℃の条件下で薄膜23を水蒸気雰囲気下に3分間曝す。
〈第4工程〉減圧(10−3Pa程度)条件下において薄膜23を200℃の温度条件で2時間加熱する。
次いで、第三多孔体前駆体の薄膜が形成された基板をCVD装置から取り出した。そして、第三多孔体前駆体の薄膜が形成された基板を、1質量%濃度の塩酸溶液(エタノール希釈)中に浸漬し、60℃の温度条件下において、前記第三多孔体前駆体の薄膜から界面活性剤を除去するとともに、細孔中に導入されているクロロサルフォニル基をスルホン酸基に変換せしめ、スルホン酸基を有する有機基が導入された薄膜状のボルトネック型シリカ系メソ多孔体からなる燃料電池用電解質材料を得た。なお、このようなボルトネック型シリカ系メソ多孔体のスルホン酸基中のH量を、酸−塩基滴定法により測定したところ、細孔内に導入されたスルホン酸基中のH量は1.3mmol/gであることが確認された。
(比較例1)
先ず、実施例1で採用されている方法と同様の方法を採用し、第二多孔体前駆体からなる薄膜が形成された基板を得た。次に、第二多孔体前駆体からなる薄膜が形成された基板を、1質量%濃度の塩酸溶液(エタノール希釈)中に浸漬し、60℃の温度条件下において、前記第三多孔体前駆体の薄膜から界面活性剤を除去した。このようにして細孔中に導入されているクロロサルフォニル基をスルホン酸基に変換せしめ、スルホン酸基を有する有機基が導入された薄膜状のシリカ系メソ多孔体からなる比較のための燃料電池用電極材料を得た。
[実施例1及び比較例1で得られた燃料電池用電極材料の評価]
〈シリカ系メソ多孔体の特性評価〉
実施例1及び比較例1で得られた薄膜状のシリカ系メソ多孔体の細孔分布曲線をそれぞれ求めた。すなわち、各シリカ系メソ多孔体に対して液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、窒素吸着等温線を求めた。その後、前記窒素吸着等温線に基いてBJH法により計算して、細孔径分布曲線を得た。得られた細孔径分布曲線を図6に示す。また、参考のために、CVD処理の回数を15回とした以外は実施例1と同様にして得られたシリカメソ多孔体(参考例1)についても細孔径分布曲線を求めた。得られた細孔径分布曲線を図6に示す。更に、このような細孔分布曲線から求められる各シリカ系メソ多孔体の細孔径を表1に示し、上述の窒素吸着等温線に基いて算出される各シリカ系メソ多孔体の比表面積(BET法)及び細孔容量を、それぞれ表1に示す。
Figure 0005212717
表1及び図6に示す結果からも明らかなように、CVD処理を施したシリカ系メソ多孔体(実施例1及び参考例1)においては、細孔分布曲線において2箇所にピークが確認され、細孔の入口径が縮小されていることが分かる。一方、CVD処理を施すことなしに得られたシリカ系メソ多孔体(比較例1)においては細孔分布曲線に1つのピークしか観測されなかった。このような結果から、上述のような製造方法を採用した実施例1及び参考例1においては、細孔の入口径のみが縮小したシリカ系メソ多孔体が得られることが分かる。また、実施例1で得られたシリカ系メソ多孔体においては、細孔の細孔内部径に対する細孔入口径の比率は0.9(2.6/2.9)であった。他方、15回のCVD処理を施したシリカ系メソ多孔体(参考例1)の細孔の細孔内部径に対する細孔入口径の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])は0.93(2.7nm/2.9nm)であった。このような結果から、本実施例で採用するCVD法の処理条件下では、前記比率を0.9以下とする場合に30回程度以上のCVD処理を施す必要があることが分かった。
〈プロトン伝導度の測定〉
実施例1及び比較例1で得られた燃料電池用電極材料(薄膜)のプロトン伝導度を4端子直流法により測定した。このようなプロトン伝導度の測定に用いた装置の模式図を図7に示す。このようなプロトン伝導度の測定に際しては、実施例1及び比較例1で得られた燃料電池用電極材料(薄膜)が積層した4端子電極基板11をそれぞれ用いて、基板11の両端の電極12(c)及び電極12(d)にピコアンメータ30を取り付け、0.5Vを印加した際の電流値を測定した。また、中央の2本の電極12(a)及び電極12(b)に電圧計31を取り付けて電圧を測定した。そして、測定された電流と電圧から抵抗値を算出し、プロトン伝導度を求めた。なお、このようなプロトン伝導度の測定は、4端子電極基板をガス流通管32中に配置し、25℃の温度条件下で1容量%のHを含むガス(窒素希釈)を流通させ、相対湿度を10〜90%の範囲で変更しながら行った。また、このような測定に際しては、先ず、相対湿度を10〜90%まで上げていき、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の各相対湿度条件下においてプロトン伝導度を測定した(吸着)。次に、相対湿度を90〜10%まで下げ、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%の各相対湿度条件下においてプロトン伝導度を測定した(脱着)。また、各相対湿度におけるプロトン伝導度の測定の際には、各設定相対湿度において湿度が安定した後、更に5分経過させた後にプロトン伝導度を測定した。このような測定により得られた、相対湿度(単位:%)とプロトン伝導度(単位:S/cm)との関係を示すグラフを図8に示す。
図8に示す結果からも明らかなように、CVD処理を施したボトルネック型シリカ系メソ多孔体からなる本発明の燃料電池用電極材料(実施例1)は、CVD処理を施すことなしに得られたシリカ系メソ多孔体からなる比較のための燃料電池用電極材料(比較例1)よりも、低湿度条件下において吸着時及び脱着時のプロトン伝導度が十分に高いものとなっていることが確認された。このような結果は、細孔の入口径を縮小されたことに起因するものであることが分かる。また、比較のための燃料電池用電極材料(比較例1)においては、プロトン伝導度が吸着時及び脱着時で同様の挙動を示すのに対し、ボトルネック型シリカ系メソ多孔体からなる本発明の燃料電池用電極材料(実施例1)は脱着時の伝導度がより高く維持され、ヒステリシスを示していることが確認された。このような結果から、本発明の燃料電池用電極材料(実施例1)は、細孔入口にシリカが積層され、入口近傍の細孔径が小さくなっているボトルネック型の構造であることが分かった。また、このように、本発明の燃料電池用電極材料(実施例1)は低湿度条件下においてもプロトン伝導度が十分に高いことから、本発明の燃料電池用電極材料を用いることにより低湿度条件下における発電効率が十分に向上することが分かった。
以上説明したように、本発明によれば、低湿度条件下でのプロトン伝導度が十分に高く、低湿度条件下における発電効率が十分に向上した燃料電池用電解質材料を提供することが可能となる。したがって、本発明の燃料電池用電解質材料は、燃料電池の電解質膜の材料等として特に有用である。
ボトルネック型シリカ系メソ多孔体の細孔の縦断面を示す模式図である。 第二多孔体前駆体の細孔の縦断面を示す模式図である。 第三多孔体前駆体の細孔の縦断面を示す模式図である。 実施例1で得られた燃料電池用電解質材料の薄膜が積層した4端子電極基板の模式図である。 実施例1で利用したCVD装置を模式的に示す概略縦断面図である。 実施例1、比較例1及び参考例1で得られたシリカ系メソ多孔体の細孔分布曲線のグラフである。 プロトン伝導度の測定に用いた装置の模式図である。 実施例1及び比較例1で得られた燃料電池用電解質材料のプロトン伝導度(単位:S/cm)と、相対湿度(単位:%)との関係を示すグラフである。
符号の説明
1…細孔壁、2…界面活性剤、3…細孔入口を概念的に示す線、4…無機酸化物層、11…4端子電極基板、12(a)〜(d)…白金電極、13…燃料電池用電解質材料の薄膜、20…ロータリーポンプ、21…トラップ溶液、22…水、23…シリカ系メソ多孔体、24…無機酸化物の原料化合物、25…圧力計、26…配管、30…ピコアンメータ、31…電圧計、32…ガス流通管、d1…細孔内部径、d2…細孔入口径、R1〜4…容器、A…ガスの流通方向、X…電極12(c)と電極12(d)との間隔、Y…電極12(a)と電極12(b)との間隔、Z…電極12(a)と電極12(d)との間隔、W…電極12(b)と電極12(c)との間隔、V…電極12(c)の幅、U…電極12(d)の幅。

Claims (3)

  1. 細孔入口径と細孔内部径とが下記条件(A)〜(B):
    [条件(A)]細孔内部径が1.5〜30nmであること、
    [条件(B)]細孔内部径に対する細孔入口径の比率([細孔入口径]/[細孔内部径])が0.05〜0.95であること。
    を満たすボトルネック型の細孔を有し、且つ、前記細孔内にイオン交換能官能基を有する有機基が導入されているボトルネック型シリカ系メソ多孔体を含有することを特徴とする燃料電池用電解質材料。
  2. 前記イオン交換能官能基が、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電解質材料。
  3. 前記イオン交換能官能基を有する有機基が、炭素数が6以下の鎖式炭化水素基及び炭素数が10以下の環式炭化水素基からなる群から選択される少なくとも一つの炭化水素基に前記イオン交換能官能基が結合した基を含有することを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用電解質材料。
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