従来から、燃料電池スタックの冷却のための冷媒経路を構成する配管を、ステンレス鋼等の金属製の金属配管により構成することが考えられている。また、車両の下側の地面と直接対向する部分や、強度の低い材料により造った材料製のカバーを介して地面と対向する部分に、冷媒経路を構成する金属配管を設けることも考えられている。このような構成を有する燃料電池搭載車両では、車両が地面の段差を乗り越えたり、縁石に乗り上げる等により、地面側から車両の下部に衝撃が加わった場合に、金属配管からその上側の他の部品、例えばラジエータに力が加わる可能性がある。このように他の部品に力が加わると、他の部品が金属配管を構成する材料よりも強度の低い材料、例えばアルミニウム合金により造られている場合に、金属配管により他の部品が大きく変形したり、破損する可能性がないとはいえない。
これに対して、特許文献1に記載された燃料電池システム搭載車両の場合には、配管から上側の他の部品に加わる力を小さく抑えて、他の部品が大きく変形するのを防止するための手段は開示されていない。
本発明の目的は、燃料電池搭載車両において、車両の下部に地面側から力が加わった場合でも、燃料電池冷却用の冷媒を流す配管から上側の他の部品に加わる力を小さく抑えて、他の部品が大きく変形したり、破損することを有効に防止することを目的とする。
本発明に係る燃料電池搭載車両は、燃料電池と、燃料電池を冷却するための冷媒を流す冷媒経路と、冷媒経路に設けられ、冷媒を冷却するラジエータと、を備える燃料電池搭載車両であって、冷媒経路は、ラジエータの下端に上下方向に対向し、かつ、地面と直接対向する部分、または地面とカバー相当部材のみを介して対向する部分に、少なくとも一部が設けられた弾性配管を有することを特徴とする燃料電池搭載車両である。
また、好ましくは、カバー相当部材は、金属よりも変形しやすい材料製とする。
また、より好ましくは、車体を構成するフロアパネルの下側に、燃料電池を搭載する。
また、より好ましくは、弾性配管の少なくとも一部は、冷媒経路を構成する配管のうちの最も下端に位置する。
また、より好ましくは、冷媒経路は、燃料電池から送り出された冷媒を、ラジエータに通過させた後、冷媒ポンプに送り出すための本経路と、燃料電池と冷媒ポンプとの間に、冷媒の流れに関して本経路と並列に接続されたバイパス経路と、を備え、弾性配管は、バイパス経路の少なくとも一部を構成する。
また、より好ましくは、冷媒経路は、弾性配管の片側に接続した金属配管を備え、金属配管において、弾性配管と接続する側である、下端寄り部分に、冷媒抜き取り用のドレンプラグを取り付ける。
また、好ましくは、ラジエータは、主ラジエータと、主ラジエータ用の冷媒経路に接続され、冷媒の流れに関して主ラジエータと並列に設けて、主ラジエータの下側に配置した副ラジエータと、により構成し、弾性配管の少なくとも一部は、副ラジエータの下端に上下方向に対向するように配置する。
また、好ましくは、ラジエータは、主ラジエータと、主ラジエータ用の冷媒経路に接続され、冷媒の流れに関して主ラジエータと並列に設けて、主ラジエータの下側に配置した副ラジエータと、により構成しており、弾性配管の少なくとも一部は、副ラジエータの下端に上下方向に対向するように配置しており、主ラジエータの車両前後方向後端に対向する部分に燃料電池を配置するとともに、上下方向に関して燃料電池の下端よりも下側に副ラジエータを配置する。
本発明に係る燃料電池搭載車両によれば、冷媒経路は、地面と直接対向する部分、または地面とカバー相当部材のみを介して対向する部分に設けられた弾性配管を有するため、車両が地面の段差を乗り越えたり、縁石に乗り上げる等により、地面側から車両の下部に衝撃が加わった場合でも、弾性配管が弾性変形することにより、地面からの力を弾性配管により吸収しやすくでき、地面側から燃料電池冷却用の冷媒を流す配管を介して、上側の他の部品に加わる力を小さく抑えて、他の部品が大きく変形したり、破損することを有効に防止できる。この結果、燃料電池搭載車両の耐久性の向上を図れる。
また、弾性配管の少なくとも一部は、冷媒経路を構成する配管のうちの最も下端に位置する構成によれば、冷媒経路を構成する配管のうち、最も地面側から力が加わりやすくなる部分が弾性配管となるため、冷媒経路は、地面と直接またはカバー相当部材のみを介して対向する部分に設けられた弾性配管を有するという本発明の構成を採用することにより得られる効果が、より顕著になる。
また、冷媒経路は、燃料電池から送り出された冷媒を、ラジエータに通過させた後、冷媒ポンプに送り出すための本経路と、燃料電池と冷媒ポンプとの間に、冷媒の流れに関して本経路と並列に接続されたバイパス経路と、を備え、弾性配管は、バイパス経路の少なくとも一部を構成する構成によれば、本経路を構成する配管を長くして、ラジエータ下側に配置することなく、地面側から配管に力が加わった場合でも、配管上側のラジエータが大きく変形するのをより有効に防止できる。また、本経路を構成する配管をラジエータ下側に配置する場合よりも、バイパス経路を構成する配管をラジエータ下側に配置する方が、配管の取り回し性の向上を図れる。
また、冷媒経路は、弾性配管の片側に接続した金属配管を備え、金属配管において、弾性配管と接続する側である、下端寄り部分に、冷媒抜き取り用のドレンプラグを取り付ける構成によれば、燃料電池の交換時や、冷媒経路を構成する部品のメインテナンス時等において、冷媒経路内から冷媒を抜き取る場合に、弾性配管を弾性変形させつつ持ち上げることにより、ドレンプラグから弾性配管内の冷媒を抜き取りやすくできる。このため、弾性配管に冷媒取り出し口を設けることなく、弾性配管内に存在する冷媒を含め冷媒経路から多くの冷媒を抜き取りやすくできる。したがって、メインテナンス時の作業性向上を図れる。
また、ラジエータは、主ラジエータと、冷媒の流れに関して主ラジエータと並列に設けて、主ラジエータの下側に配置した副ラジエータと、により構成し、弾性配管の少なくとも一部は、副ラジエータの下端に上下方向に対向するように配置する構成によれば、ラジエータ全体の熱交換面積を大きくでき、しかもラジエータが主ラジエータと副ラジエータとに分離されるため、レイアウトの自由度を高くできる。また、弾性配管を副ラジエータの下端よりも下側に配置するので、地面側から弾性配管に力が加わった場合でも、地面側から副ラジエータに加わる力を小さくできて、副ラジエータが大きく変形するのを防止でき、主ラジエータを含むラジエータ全体が大きく変形するのをより有効に防止できる。さらに、副ラジエータの下側に弾性配管が位置する構成によれば、副ラジエータの取り外し時や、取り付け時に、弾性配管を弾性変形させつつ押し下げる等により、副ラジエータ配置周辺部の空間を広く確保しやすくでき、メインテナンス作業の作業性向上を図れる。
また、ラジエータは、主ラジエータと、冷媒の流れに関して主ラジエータと並列に設けて、主ラジエータの下側に配置した副ラジエータと、により構成し、弾性配管の少なくとも一部は、副ラジエータの下端に上下方向に対向するように配置し、主ラジエータの車両前後方向後端に対向する部分に燃料電池を配置するとともに、上下方向に関して燃料電池の下端よりも下側に副ラジエータを配置する構成によれば、副ラジエータ後側の空間を主ラジエータ後側の空間よりも広くしやすくできる。このため、主ラジエータを前後方向に通過した走行風等の空気流を、主ラジエータ後側から副ラジエータ後側に流しやすくでき、副ラジエータの後側に副ラジエータ冷却用のファンを配置することなく、副ラジエータの冷却性能をより有効に高くできる。
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図4は、本実施の形態を示している。図1は、燃料電池冷却システムを含む本実施の形態の燃料電池搭載車両の模式図である。図2は、図1の燃料電池冷却システムの構成図である。図3は、一部を省略して示す、本実施の形態の燃料電池搭載車両の前側下部を後方に見た図である。図4は、一部を省略して示す、本実施の形態の燃料電池搭載車両の図3のA−A断面相当図である。
図1に示すように、本実施の形態の燃料電池搭載車両10は、前側部分(図1の左側部分)に、燃料電池スタック12を搭載している。なお、本明細書及び特許請求の範囲全体で、前側、後側は、それぞれ車両前後方向の前側、後側をいう。燃料電池スタック12は、アノード側に水素ガス等の燃料ガスを供給し、カソード側に酸素を含む酸化ガス、例えば空気を供給し、酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電し、必要な電力を取り出す。
また、燃料電池搭載車両10は、燃料電池スタック12を冷却するための燃料電池冷却システム14を備える。燃料電池冷却システム14は、燃料電池スタック12を冷却するための冷媒である、冷却水を流す冷媒経路16と、冷媒経路16に設けられ、冷却水を冷却するラジエータ18とを備える。ラジエータ18は、主ラジエータ20と、副ラジエータ22とにより構成する。また、冷媒経路16は、燃料電池スタック12から送り出された冷却水を、主ラジエータ20または副ラジエータ22に通過させるための本経路24と、燃料電池スタック12から送り出された冷却水を、主ラジエータ20及び副ラジエータ22のいずれも介さずに、燃料電池スタック12に還流させるためのバイパス経路26とを備える。冷却水は、例えば、エチレングリコール系の不凍液である、LLCの着色しないものである。なお、図1に示した燃料電池冷却システム14の構成要素の前後方向(図1の左右方向)に関する配置関係は、実際の配置関係を表すものではない。
次に、図2を用いて、燃料電池冷却システム14の構成をより詳しく説明する。すなわち、燃料電池冷却システム14は、燃料電池スタック12を冷却するための冷却水を流すための冷媒経路16と、冷媒経路16に設けられ、冷却水を冷却するラジエータ18とを備える。ラジエータ18は、主ラジエータ20と、副ラジエータ22とにより構成する。また、冷媒経路16は、燃料電池スタック12から送り出された冷却水を主ラジエータ20または副ラジエータ22に通過させた後、冷媒ポンプである冷却水ポンプ28に送り出すための本経路24と、燃料電池スタック12と冷却水ポンプ28との間に、冷却水の流れに関して本経路24と並列に接続されたバイパス経路26とを備える。
本経路24は、燃料電池スタック12の冷媒出口(図1の点A)と、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の冷媒入口との間に接続した本経路上流側配管30と、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の冷媒出口とロータリバルブ32との間に接続した本経路中間配管34と、ロータリバルブ32と燃料電池スタック12の冷媒入口(図1の点B)との間に接続した本経路下流側配管36とを備える。主ラジエータ20と副ラジエータ22とは、冷却水の流れに関して並列に設けている。
また、バイパス経路26は、本経路上流側配管30の上流側部分に設けた分岐部38と、ロータリバルブ32との間に接続している。分岐部38は、切り替え弁を備えていない単なる分岐流路である。また、バイパス経路26の冷却水流れに関して中間部から、第2冷却水経路40の上流側部分を分岐させており、第2冷却水経路40を流れた冷却水が、エアコンプレッサ(ACP)42とインタークーラ(IC)44とを順に通過するようにしている。第2冷却水経路40の下流端は、本経路下流側配管36において、ロータリバルブ32と冷却水ポンプ28との間部分に接続している。
また、本経路下流側配管36において、ロータリバルブ32と燃料電池スタック12の冷媒入口(図1の点B)との間から、第3冷却水経路46の上流側部分を分岐させており、第3冷却水経路46を流れた冷却水が、イオン交換器48を通過するようにしている。第3冷却水経路46の下流端は、第2冷却水経路40のうち、インタークーラ44よりも冷媒の流れに関して下流側部分に接続している。
このような燃料電池冷却システム14は、冷却水ポンプ28を駆動させることにより、冷却水が図2の矢印方向に流れて、主ラジエータ20と副ラジエータ22とを通過する。両ラジエータ20,22を通過した冷却水は、それぞれのラジエータ20,22を厚さ方向に通過する空気との間で熱交換を行って温度低下する、すなわち冷却される。このため、各ラジエータ20,22を通過した冷却水が燃料電池スタック12の内部を流れることで、燃料電池スタック12の温度が過度に上昇することが防止される。また、燃料電池スタック12の冷媒出口(図1の点A)からバイパス経路26の上流側に送られた低温の冷却水は、第2冷却水経路40を通じてエアコンプレッサ42とインタークーラ44とに流れるため、エアコンプレッサ42及びインタークーラ44の過度の温度上昇が防止される。エアコンプレッサ42は、図示しないモータにより駆動し、燃料電池スタック12に送る酸化ガス、例えば空気を容積圧縮してその圧力を高める気体昇圧機である。また、インタークーラ44は、エアコンプレッサ42で圧縮された酸化ガスを冷却する機能を有する。
一方、冷却水ポンプ28の出口から本経路下流側配管36の下流側に送られた低温の冷却水は、第3冷却水経路46を通じてイオン交換器48に流れるため、イオン交換器48の過度の温度上昇が防止される。イオン交換器48は、例えば、図示しない本体部の内部に、冷却水中の導電性イオンである金属イオンを吸着する図示しないイオン交換樹脂を収容している。イオン交換樹脂は、イオン交換器48に送られた冷却水が通過することにより、冷却水中に含まれる金属イオンの少なくとも一部を除去する機能を有する。このようなイオン交換器48は、燃料電池スタック12を流れる冷媒中に金属イオンが多く含まれることを防止して、冷却水が接触する金属製の部分を介して周辺の部品に漏電するのを有効に防止するために利用する。
さらに、ロータリバルブ32は、三方式の冷却水流れ切り替え弁であり、冷却水を主ラジエータ20または副ラジエータ22に流す場合と、冷却水をバイパス経路26の下流側部分に流す場合とを切り替え可能としている。ロータリバルブ32の切り替えは、図示しない制御部で制御する。制御部には、燃料電池スタック12の温度等、運転状態を検知する検知手段からの信号が入力され、この信号に基づいて、冷却水ポンプ28の回転数、ロータリバルブ32の切り替え等を制御する。ロータリバルブ32の切り替えは、冷却水を主ラジエータ20及び副ラジエータ22に流す場合と、冷却水をバイパス経路26の下流側部分に流す場合とを切り替え可能とするだけでなく、冷却水を主ラジエータ20及び副ラジエータ22と、バイパス経路26の下流側部分とに流す場合において、両ラジエータ20,22とバイパス経路26とのそれぞれを流れる冷媒の流量を調節可能とする機能も有する。
特に、本実施の形態では、バイパス経路26の、第2冷却水経路40の上流端との接続部よりも下流側部分(図2の破線αで囲んだ部分)は、ゴム等の弾性材製の弾性配管を有する。
すなわち、図3に示すように、燃料電池搭載車両10の前側下部に配置した副ラジエータ22の下面よりも下側に、バイパス経路26の下流側部分を構成する配管50の一部を配置し、配管50の副ラジエータ22の下側に配置した部分を、ゴム等の弾性材製の弾性配管52により構成している。より具体的には、副ラジエータ22の下側に、バイパス経路26を構成する、略U字形に形成した配管50の下端部、すなわち長さ方向中間部を配置している。また、配管50の下端部を含む部分を、略U字形の弾性配管52により構成している。また、副ラジエータ22の下面に、弾性配管52の長さ方向中間部外周面を、隙間を介して対向させている。弾性配管52の両側には、配管50を構成する金属配管54a,54bを接続している。
また、図4に示すように、燃料電池搭載車両10を幅方向に見た場合に、副ラジエータ22の上側に、主ラジエータ20を配置している。逆に言えば、主ラジエータ20の下側に副ラジエータ22を配置している。また、主ラジエータ20の後側(図4の右側)に、ラジエータ冷却用ファン56を設けている。また、図示は省略するが、主ラジエータ20の前側(図4の左側)に、ボンネット下側部材、フロントバンパー等の前側車体構成部材に設けた開口である、ラジエータグリルを設けている。
主ラジエータ20の下部は、燃料電池搭載車両10の前部に設けて、車体を構成するラジエータサポートメンバー58により支持している。また、ラジエータサポートメンバー58の後側の、下側に、副ラジエータ22の上部を直接または図示しない他の部材を介して支持している。
また、ラジエータ冷却用ファン56の後側に燃料電池スタック12を設けている。このため、主ラジエータ20の後端に、燃料電池スタック12が、ラジエータ冷却用ファン56を介して対向する。燃料電池スタック12は、車体を構成する部材の上側に支持している。また、副ラジエータ22は、上下方向に関して燃料電池スタック12の下端よりも下側に配置している。副ラジエータ22は、アルミニウム合金等の金属製である。
また、車体の前部で、ラジエータグリルを設けた前側車体構成部材の下側に、カバー相当部材である、アンダーカバー60を設けるとともに、アンダーカバー60の後端部(図4の右端部)に副ラジエータ22の下部を結合または支持している。また、副ラジエータ22の後側に、車体を構成するサスペンションメンバー62を設けている。図示しないフロントサスペンションを構成する部品は、サスペンションメンバー62により支持される。サスペンションメンバー62の高さ及び前後方向(図4の左右方向)の寸法は、それぞれ燃料電池スタック12の高さ及び前後方向の寸法に比べて十分に小さい。
また、主ラジエータ20及び副ラジエータ22のそれぞれの下端部に、冷却水抜き取り用のラジエータ側ドレンプラグ(図示せず)を取り付けている。ラジエータ側ドレンプラグは、運転時を含む通常時には使用せず、すなわち閉鎖したままとして、メインテナンス時にのみ使用する、すなわち開放する場合がある。
また、アンダーカバー60の前面部に複数の開口を有する格子部64を設けており、図4に矢印βで示すように、格子部64を通じてアンダーカバー60内に送られた走行風等の空気流が、副ラジエータ22を通過した後、下側に抜けるようにしている。すなわち、アンダーカバー60の内側は、主ラジエータ20の前側に、図4に矢印γで示すように送られる空気流とは独立して、副ラジエータ22の前側に空気を送るダクト状になっている。
このような燃料電池搭載車両10において、副ラジエータ22の下端よりも下側に弾性配管52の長さ方向中間部を配置し、弾性配管52の長さ方向中間部の前側及び下側を、アンダーカバー60の下端寄り部分により覆っている。弾性配管52の中間部外周面の下端部は、アンダーカバー60の下端部を構成する板状の下側突出部66のみを介して地面68と対向している。また、地面68から弾性配管52の下端までの距離Dは、好ましくは、150〜200mm、より好ましくは、約170mmとする。また、弾性配管52の下端部である、長さ方向中間部は、冷媒経路16を構成する配管のうちで最も下端に位置する。なお、弾性配管52は、車輪を除く燃料電池搭載車両10の構成部材のうちで最下部に配置される部材とすることもできる。
また、アンダーカバー60は、金属よりも変形しやすい材料、例えば樹脂等により造っている。副ラジエータ22を前後方向に通過した空気の少なくとも一部は、副ラジエータ22の後側からアンダーカバー60の下側突出部66の後端縁(図4の右端縁)と、サスペンションメンバー62の前側面との間部分を通じて下側に送られるようにしている。副ラジエータ22後側には、副ラジエータ22冷却用の冷却用ファンは設けていない。
図3に戻り、弾性配管52の両端部は、副ラジエータ22の幅方向(図3の左右方向)両側面よりも幅方向外側に位置させて、弾性配管52の両端部のそれぞれを、金属配管54a,54bの下端部に接続している。また、弾性配管52の片側(図3の左側)に接続した金属配管54aにおいて、弾性配管52と接続する側である、下端寄り部分に、冷却水抜き取り用のバイパス経路側ドレンプラグ70を接続している。また、バイパス経路側ドレンプラグ70は、弾性配管52の最下端からH分(図3)、すなわち60mm上方に離れた位置までの範囲内に設けている。バイパス経路側ドレンプラグ70は、運転時を含む通常時には使用せず、すなわち閉鎖したままとして、メインテナンス時にのみ使用する、すなわち開放する場合がある。
上記のような燃料電池搭載車両10によれば、冷媒経路16は、地面とアンダーカバー60(図4)のみを介して対向する部分に設けられた、弾性材製の弾性配管52を有するため、車両が地面68の段差を乗り越えたり、縁石に乗り上げる等により、地面68側からアンダーカバー60を介して、弾性配管52を含む、車両の下部に衝撃が加わった場合でも、弾性配管52が弾性変形することにより、地面からの力を弾性配管52により吸収しやすくできる。このため、地面68側から燃料電池スタック12冷却用の冷却水を流す配管である、弾性配管52を介して、上側の他の部品である、副ラジエータ22に加わる力を小さく抑えて、副ラジエータ22が大きく変形したり、破損することを有効に防止できる。この結果、燃料電池搭載車両10の耐久性の向上を図れる。
これに対して、本実施の形態の場合と異なり、冷媒経路16のうち、地面68とアンダーカバー60のみを介して対向する部分を、金属製の下側金属配管とした場合には、下側金属配管を弾性材製の弾性配管52とする場合に比べて、軽量化の面等から配管の肉厚が小さくなりやすくなるとともに、放熱係数が高くなりやすくなる。すなわち、この場合には、下側金属配管内から下側金属配管を通じて放熱しやすくなる。また、車輪を除く燃料電池搭載車両10の構成部材のうちの最下部等、低い位置に下側金属配管が配置される場合には、下側金属配管に風が当たりやすくなり、下側金属配管内からさらに放熱しやすくなる。例えば、地面68と直接対向する部分、または、地面68とアンダーカバー60のみを介して対向する部分を、金属製の下側金属配管とした場合には、単位時間当たり、すなわち毎秒で、約400W等の大きさの熱量が下側金属配管内から失われる可能性があり、暖機時間が長くなったり、燃料電池スタック12の保温運転が難しくなる原因となる。
これに対して、本実施の形態では、冷媒経路16は、地面68とアンダーカバー60のみを介して対向する部分に、ゴム等の弾性材製の弾性配管52を有するものとしているため、弾性配管52部分の肉厚を重量を抑えつつ大きくしやすくできるとともに、放熱係数を低くしやすくできる。このため、弾性配管52が低い位置に配置されることに伴い、弾性配管52に風が当たりやすくなっても、弾性配管52内部から放熱されにくくなる。したがって、暖機時間を短くできるとともに、燃料電池スタック12の保温運転を行いやすくできる。例えば、実験等により、本実施の形態では、弾性配管52を金属配管とする場合に比べて、配管内からの単位時間当たり、すなわち毎秒の放熱量を約420W減少できることを確認できた。
また、弾性配管52の長さ方向中間部は、冷媒経路16を構成する配管のうちの最も下端に位置するので、冷媒経路16を構成する配管のうち、最も地面68側から力が加わりやすくなる部分が、弾性配管52となる。このため、冷媒経路16は、地面68とアンダーカバー60のみを介して対向する部分に設けられた、弾性材製の弾性配管52を有するという本実施の形態の構成を採用することにより得られる効果が、より顕著になる。
また、冷媒経路16は、燃料電池スタック12から送り出された冷却水を、主ラジエータ20及び副ラジエータ22に通過させた後、冷却水ポンプ28に送り出すための本経路24と、燃料電池スタック12と冷却水ポンプ28との間に、冷却水の流れに関して本経路24と並列に接続されたバイパス経路26とを備える。また、弾性配管52は、バイパス経路26の一部を構成している。このため、本経路24を構成する配管を長くして、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の下側に配置することなく、地面68側から配管に力が加わった場合でも、配管上側の主ラジエータ20及び副ラジエータ22が大きく変形するのをより有効に防止できる。また、本経路24を構成する配管を主ラジエータ20及び副ラジエータ22の下側に配置する場合よりも、バイパス経路26を構成する配管50を主ラジエータ20及び副ラジエータ22の下側に配置する方が、配管50の取り回し性の向上を図れる。
また、冷媒経路16は、弾性配管52の片側に接続した金属配管54aを備え、金属配管54aにおいて、弾性配管52と接続する側である、下端寄り部分に、冷却水抜き取り用のバイパス経路側ドレンプラグ70を取り付けている。このため、燃料電池スタック12の交換時や、冷媒経路16を構成する部品のメインテナンス時等において、冷媒経路16内から冷却水を抜き取る場合に、弾性配管52を弾性変形させつつ持ち上げることにより、バイパス経路側ドレンプラグ70から弾性配管52内の冷媒を抜き取りやすくできる。したがって、弾性配管52に冷媒取り出し口を設けることなく、弾性配管52内に存在する冷却水を含め冷媒経路16から多くの冷却水を抜き取りやすくできる。この結果、メインテナンス時の作業性向上を図れる。例えば、バイパス経路側ドレンプラグ70を、弾性配管52の最下端から上方へ60mm離れた位置までの範囲内に設けることにより、バイパス経路側ドレンプラグ70による冷却水抜き取り後に、弾性配管52内に残留する残冷却水量を、約200ccと十分に少なくできる。この程度の残冷却水量であれば、弾性配管52を取り外す場合に作業者に冷却水がかかるのを有効に防止できるか、または作業者に冷却水がかかるのを実用上問題ないレベルに抑えることができる。
特に、本実施の形態では、上記のように、冷媒経路16は、燃料電池スタック12から送り出された冷却水を、主ラジエータ20及び副ラジエータ22に通過させた後、冷却水ポンプ28に送り出すための本経路24と、燃料電池スタック12と冷却水ポンプ28との間に、冷却水の流れに関して本経路24と並列に接続されたバイパス経路26とを備える。このため、バイパス経路26を構成する金属配管54aにバイパス経路側ドレンプラグ70を取り付けたことと相まって、冷媒経路16全体から多くの冷却水を抜き取りしやすくできる。例えば、冷却水の抜き取り作業は、燃料電池スタック12を含む燃料電池システムの運転停止状態で行い、この場合には、ロータリバルブ32により、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の冷却水出口と冷却水ポンプ28の入口とが連通するが、バイパス経路26の下流側部分と冷却水ポンプ28の入口とがロータリバルブ32を介しては連通しない状態となる。この場合に、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の一方または両方に設けたラジエータ側ドレンバルブからだけでは、冷媒経路16全体から多くの冷却水を抜き取ることは難しい。これに対して、上記のような本実施の形態の構成によれば、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の一方または両方に設けたラジエータ側ドレンバルブからと、バイパス経路側ドレンプラグ70からとにより、冷媒経路16全体から多くの冷却水を抜き取ることを容易に行える。
また、弾性配管52の長さ方向中間部は、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の下端よりも下側に配置している。このため、弾性配管52を主ラジエータ20及び副ラジエータ22の後側に対向する部分に配置せずに済む。したがって、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の後側に対向する部分に弾性配管52を配置する場合と異なり、主ラジエータ20及び副ラジエータ22を車両前後方向に通過する走行風等の空気流が流れにくくなることを防止して、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の冷却性能をより有効に高くすることができる。これに対して、本実施の形態の場合と異なり、図4にδで示す位置に弾性配管52等の配管を配置すると、主ラジエータ20及び副ラジエータ22を通過する空気流が大きく妨げられ、主ラジエータ20及び副ラジエータ22の冷却性能が大きく低下する可能性がある。本実施の形態では、図4のδ位置に配管を配置せずに済むため、このような不都合をなくせる。
また、本実施の形態の場合と異なり、副ラジエータ22の上側に、弾性配管52及びバイパス経路側ドレンプラグ70を配置する場合には、弾性配管52が、バイパス経路26を構成する配管のうちで最も低い位置には配置されにくくなる。このため、弾性配管52よりも上側のバイパス経路側ドレンプラグ70を通じての、バイパス経路26内部の冷却水の抜き取り可能量を多くすることが難しくなる。また、この場合には、バイパス経路26から冷却水を抜き取る場合に、副ラジエータ22等、取り外しに時間を要する周辺部品を取り外す必要が生じて、作業性が低下する可能性がある。また、この場合には、弾性配管52を含むバイパス経路26を構成する配管50の配置空間を確保することが困難になる。本実施の形態では、弾性配管52及びバイパス経路側ドレンプラグ70を低い位置に配置しやすくできるため、このような不都合をいずれもなくせる。
また、ラジエータ18は、主ラジエータ20と、冷媒の流れに関して主ラジエータ20と並列に設けて、主ラジエータ20の下側に配置した副ラジエータ22とにより構成し、弾性配管52の長さ方向中間部は、副ラジエータ22の下端よりも下側に配置している。このため、ラジエータ18全体の熱交換面積を大きくでき、しかもラジエータ18が主ラジエータ20と副ラジエータ22とに分離されるため、レイアウト、すなわち部品配置の自由度を高くできる。また、弾性配管52を副ラジエータ22の下端よりも下側に配置するので、地面68側から弾性配管52に力が加わった場合でも、地面68側から副ラジエータ22に加わる力を小さくできて、副ラジエータ22が大きく変形するのを防止でき、主ラジエータ20を含むラジエータ18全体が大きく変形するのをより有効に防止できる。さらに、副ラジエータ22の下側に弾性配管52が位置するため、副ラジエータ22の取り外し時や、取り付け時に、弾性配管52を弾性変形させつつ押し下げる等により、副ラジエータ22配置周辺部の空間を広く確保しやすくでき、メインテナンス作業の作業性向上を図れる。
さらに、主ラジエータ20の後端に対向する部分に燃料電池スタック12を配置するとともに、上下方向に関して燃料電池スタック12の下端よりも下側に副ラジエータ22を配置している。このため、副ラジエータ22後側の空間を主ラジエータ20後側の空間よりも広くしやすくできる。したがって、主ラジエータ20後側を流れる空気流に対する抵抗、または空気流の圧力よりも、副ラジエータ22後側を流れる空気流に対する抵抗、または空気流の圧力を小さくしやすくでき、主ラジエータ20を前後方向に通過した走行風等の空気流を、図4の矢印ηで示すように、主ラジエータ20後側から副ラジエータ22後側に流しやすくでき、副ラジエータ22の後側に副ラジエータ22冷却用のファンを配置することなく、副ラジエータ22の冷却性能をより有効に高くできる。
なお、図示は省略するが、冷媒経路16は、地面68と直接に、すなわちアンダーカバー60を介さずに対向する部分に、弾性配管52を有する構成とすることもできる。また、弾性配管52をアンダーカバー60以外のカバー相当部材を介して地面68と対向させる構成とすることもできる。カバー相当部材は、例えば、金属よりも変形しやすい樹脂等の材料製とする。
また、バイパス経路26を構成する配管50のうち、燃料電池搭載車両10を前側から後方に見た場合の、弾性配管52に対して右左いずれの側に接続する金属配管54a,54bに対しても、バイパス経路側ドレンプラグ70を取り付けることができる。すなわち、図3の弾性配管52に対して左右両側に位置する金属配管54a,54bのうち、図3の右側に位置する金属配管54bの下端寄り部分にバイパス経路側ドレンプラグ70を取り付けることもできる。
また、本実施の形態では、燃料電池搭載車両10の前部に燃料電池スタック12を搭載しているが、本発明はこのような構成に限定するものではない。例えば、本実施の形態は、燃料電池搭載車両10の車体を構成するフロアパネルの下側に、燃料電池スタック12を搭載した構成と組み合わせる、すなわちこのような構成で本発明を実施することもできる。
10 燃料電池搭載車両、12 燃料電池スタック、14 燃料電池冷却システム、16 冷媒経路、18 ラジエータ、20 主ラジエータ、22 副ラジエータ、24 本経路、26 バイパス経路、28 冷却水ポンプ、30 本経路上流側配管、32 ロータリバルブ、34 本経路中間配管、36 本経路下流側配管、38 分岐部、40 第2冷却水経路、42 エアコンプレッサ(ACP)、44 インタークーラ(IC)、46 第3冷却水経路、48 イオン交換器、50 配管、52 弾性配管、54a,54b 金属配管、56 ラジエータ冷却用ファン、58 ラジエータサポートメンバー、60 アンダーカバー、62 サスペンションメンバー、64 格子部、66 下側突出部、68 地面、70 バイパス経路側ドレンプラグ。