JP5210822B2 - 交流電動機の制御装置およびそれを搭載した電動車両 - Google Patents

交流電動機の制御装置およびそれを搭載した電動車両 Download PDF

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Description

本発明は、交流電動機の制御装置および当該制御装置を搭載した電動車両に関し、より特定的には、矩形波電圧制御およびパルス幅変調(PWM(Pulse Width Modulation))制御が適用される交流電動機の制御に関する。
直流電源を用いて交流電動機を駆動制御するために、インバータを用いた駆動方法が一般的に採用されている。インバータは、インバータ駆動回路によりスイッチング制御されており、たとえばPWM制御に従ってスイッチングされた電圧が交流電動機に印加される。
また、電圧利用率を向上させてモータ回転数の高い領域で高出力を得るために、正弦波PWM制御よりもモータ印加電圧の基本波成分が大きい変調方式による交流電動機制御として、過変調PWM制御および矩形波電圧制御が適用されている。
特開2005−218299号公報(特許文献1)には、矩形波電圧制御で動作している場合に、交流電動機に供給される実電流位相の絶対値|φi|が所定の切替電流位相の絶対値|φ0|未満になると、矩形波電圧制御からPWM制御への切替を行う制御が記載されている。
また、特開2006−320039号公報(特許文献2)によれば、矩形波電圧制御あるいは過変調PWM制御の適用時にモータ回転数が急変した場合には、フィードバック制御の応答性低下をカバーするように、モータ回転数の変化比に応じてコンバータの出力電圧(すなわちインバータの入力電圧)の電圧指令値を変化させる制御が記載されている。
特開2005−218299号公報 特開2006−320039号公報
過変調PWM制御では、d軸およびq軸の電流偏差を補償するための電流フィードバック制御において、モータ電流の波形が歪むため電流の高調波成分に適切に対処して制御性を向上する必要がある。また、矩形波電圧制御およびPWM制御を交流電動機の状態に応じて切替える制御構成では、矩形波電圧制御からPWM制御への切替時には、過変調PWM制御が用いられることが一般的であるため、制御モードの切替時点での電流偏差を小さくすることが望ましい。
電圧位相を制御する矩形波電圧制御では電流を直接フィードバック制御しないため、電流フィードバック制御であるPWM制御に制御モードが切替ったときに、電流指令に対してモータ電流の電流偏差が生じやすい。矩形波電圧制御はモータ回転数が高速の領域で用いられるため、制御モードの切替要否の判定についても、短い制御周期で処理することが必要とされる。
しかしながら、制御装置の能力により制御周期には限界があるため、切替要否の判定に用いるモータ電流として、フィルター処理等がなく遅れのないモータ電流を用いたとしても制御モードの切替が遅れる場合が発生する。
このような制御モードの切替の遅れが発生すると、電流偏差が大きい状態で矩形波電圧制御からPWM制御に制御モードに切替ってしまうことにより、PWM制御においてモータ電流が乱れて電流追従性が悪化してしまう可能性がある。したがって、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の際には、モータ電流の乱れを抑制するように考慮して、適切なタイミングで制御モードが切替るように切替要否判定を行う必要がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、交流電動機の制御装置において、矩形波電圧制御からPWM制御への切替遅れを防止することによって、制御安定性を高めることである。
本発明の交流電動機の制御装置は、インバータによって印加電圧が制御される交流電動機の制御装置であって、電流検出器と、矩形波電圧制御部と、パルス幅変調制御部と、制御モード選択部とを備えている。電流検出器は、インバータおよび前記交流電動機の間を流れるモータ電流を検出する。そして、矩形波電圧制御部は、交流電動機をトルク指令に従って動作させるように位相制御された矩形波電圧が交流電動機に印加されるように、インバータの制御指令を発生する。また、パルス幅変調制御部は、搬送波と交流電動機をトルク指令に従って動作させるための交流電圧指令との比較に基づくパルス幅変調制御によって、インバータの制御指令を発生する。また、制御モード選択部は、交流電動機の動作状態に応じて、矩形波電圧制御部による矩形波電圧制御およびパルス幅変調制御部によるパルス幅変調制御のいずれか一方を選択するように構成されている。さらに、矩形波電圧制御部は、モータ電流の振幅および位相が基本波成分である基本波電流と比較して振幅が大きくかつ位相が遅れ側となる第1の所定のタイミングにおいて、上記電流検出器により検出されたモータ電流をサンプリングするように構成された電流抽出部と、第1の所定のタイミングでサンプリングされた第1の電流に基づいて、矩形波電圧制御部による矩形波電圧制御からパルス幅変調制御部によるパルス幅変調制御への切替要否を判定するように構成された切替判定部とを含んでいる。
上記交流電動機の制御装置によれば、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否を、モータ電流の振幅および位相が基本波電流と比較して振幅が大きくかつ位相が遅れ側となるようなタイミングでの電流を用いて判定できる。このような矩形波電圧制御からPWM制御への切替が必要と判定されやすくなる振幅および位相となる電流を用いて切替要否を判定することで、矩形波電圧制御からPWM制御への切替が早期に実施できる。この結果、制御モード切替時点での電流偏差が大きくなることを抑制できるので、切替後のPWM制御においてモータ電流の乱れが抑制される。これにより、矩形波電圧制御からPWM制御への切替時の制御安定性を高めることが可能となる。
好ましくは、切替判定部は、インバータへのトルク指令値が所定の第1のトルク基準値以上のときに、第1の電流に基づいて、矩形波電圧制御からパルス幅変調制御への切替要否の判定を行う。
このような構成とすることで、モータ電流が相対的に大きくなる高トルクの領域において、第1の電流を用いて切替要否の判定を行うことにより、制御モードの切替遅れを防止できる。これにより、モータ電流が大きくなるために電流の乱れが発生しやすく、また電流の乱れが発生した場合のモータ等の電気機器に与える影響も大きくなる高トルクの領域において、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の際の制御安定性を高めることができる。
あるいは好ましくは、電流抽出部は、モータ電流の振幅および位相が基本波電流と比較して振幅が小さくかつ位相が進み側となる第2の所定のタイミングにおいて、モータ電流をさらにサンプリングするように構成され、切替判定部は、トルク指令値が所定の第2のトルク基準値未満のときには、第1の電流に基づく切替要否の判定に代えて、第2の所定のタイミングでサンプリングされた第2の電流に基づいて、矩形波電圧制御からパルス幅変調制御への切替要否の判定を行う。
このような構成とすることで、低トルクの領域においては、モータ電流の振幅および位相が基本波電流と比較して振幅が小さくかつ位相が進み側となるようなタイミングでの第2の電流を用いて切替要否の判定を行うことができる。モータ電流が比較的小さい低トルクの領域では、上記の第1の電流を用いた場合、矩形波電圧制御とPWM制御との切替が頻繁に繰り返されるチャタリングが発生する可能性がある。したがって、矩形波電圧制御からPWM制御への切替が必要と判定されにくくなる電流を用いて切替要否を判定することで、チャタリングの発生を抑制することができる。
好ましくは、切替判定部は、第1の電流の大きさに基づいて、矩形波電圧制御からパルス幅変調制御への切替要否の判定を行う。また好ましくは、切替判定部は、第1の電流の位相に基づいて、矩形波電圧制御からパルス幅変調制御への切替要否の判定を行う。
このような構成とすることで、第1の電流の大きさまたは位相によって、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行うことができるので、制御モードの切替遅れを防止して矩形波電圧制御からPWM制御への切替の際の制御安定性を高めることができる。
また好ましくは、インバータは、制御指令に従って電力変換を行う複数のスイッチング素子を含んでおり、第1の電流は、インバータの複数のスイッチング素子のそれぞれの駆動切替タイミングに対応するタイミングでのモータ電流である。
このような構成によれば、誘導負荷である交流電動機への印加電圧がステップ状に変化するタイミングである、インバータのスイッチング素子の駆動切替タイミングに対応して、モータ電流を第1の電流としてサンプリングすることができる。したがって、第1の電流として、モータ電流の振幅および位相が基本波電流よりも相対的に振幅が大きくかつ位相が遅れ側となるような電流を得ることができる。
また好ましくは、切替判定部は、インバータのトルク指令値が第1のトルク基準値以上のときは、第1の電流の大きさに基づいて切替要否の判定を行い、トルク指令値が第2のトルク基準値未満のときは、第2の電流の大きさに基づいて切替要否の判定を行う。
このような構成とすることで、インバータへのトルク指令値が高トルクの領域では、第1の電流の大きさにより矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行うとともに、低トルクの領域では、第2の電流の大きさにより矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行うことが可能となる。第1の電流は、電流振幅が基本波電流と比較して相対的に大きいため、矩形波電圧制御からPWM制御への切替を必要と判定されやすくなる電流である。それに対し、第2の電流は、電流振幅が基本波電流と比較して相対的に小さいため、矩形波電圧制御からPWM制御への切替が必要と判定されにくくなるような電流である。したがって、高トルク領域では制御モードの切替を早期に行うとともに、一方で低トルク領域では制御モードの切替が助長されて発生するチャタリングを抑制することにより、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の際の制御安定性を高めることができる。
あるいは好ましくは、切替判定部は、インバータへのトルク指令値が第1のトルク基準値以上となったときは、第1の電流の位相に基づいて切替要否の判定を行い、トルク指令値が第2のトルク基準値未満のときは、第2の電流の位相に基づいて切替要否の判定を行う。
このような構成とすることで、高トルクの領域では第1の電流の位相により矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行うとともに、低トルク領域では第2の電流の位相により矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行うことができる。第1の電流は、電流位相が基準波電流と比較して相対的に遅れ側であるため、矩形波電圧制御からPWM制御への切替が必要と判定されやすくなる電流である。それに対し、第2の電流は、電流位相が基本波電流と比較して相対的に進み側であるため、矩形波電圧制御からPWM制御への切替が必要と判定されにくくなるような電流である。したがって、制御モードの切替要否判定にこのような電流の位相を用いることで、高トルク領域では制御モードの切替を早期に行うとともに、一方で低トルク領域では制御モードの切替が助長されて発生するチャタリングを抑制することにより、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の際の制御安定性を高めることができる。
あるいは好ましくは、インバータは、制御指令に従って電力変換を行う複数のスイッチング素子を含み、第1の電流は、インバータの複数のスイッチング素子のそれぞれの駆動切替タイミングに対応するタイミングでのモータ電流であり、第2の電流は、第1の電流のサンプリングタイミング間の中間のタイミングでのモータ電流である。
このような構成によれば、第1の電流として、誘導負荷である交流電動機への印加電圧がステップ状に変化するタイミングである、インバータのスイッチング素子の駆動切替タイミングに対応してモータ電流をサンプリングすることで、モータ電流の振幅および位相が基本波電流よりも相対的に振幅が大きくかつ位相が遅れ側となるような電流を得ることができる。また、第2の電流として、上記第1の電流のサンプリングタイミング間の中間タイミングでのモータ電流をサンプリングすることで、モータ電流の振幅および位相が基本波電流よりも相対的に振幅が小さくかつ位相が進み側となるような電流を得ることができる。
あるいは好ましくは、本発明の電動車両は、車両駆動力を発生するように構成された交流電動機と、上記のような交流電動機の制御装置とを搭載している。
このような構成とすることで、上記のような交流電動機の制御装置を搭載する電動車両において、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の際の制御安定性を高めることができる。
本発明によれば、矩形波電圧制御からPWM制御への切替遅れを防止することによって、制御安定性を高めることができる。
以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
(電動機制御の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御装置が適用されるモータ駆動制御システムの全体構成図である。
図1を参照して、モータ駆動制御システム100は、直流電圧発生部10♯と、平滑コンデンサC0と、インバータ14と、交流電動機M1と、制御装置30とを備える。
交流電動機M1は、たとえば、電動車両(ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車等の電気エネルギによって車両駆動力を発生する自動車をいうものとする)の駆動輪を駆動するためのトルクを発生するための駆動用電動機である。あるいは、この交流電動機M1は、エンジンにて駆動される発電機の機能を持つように構成されてもよく、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成されてもよい。さらに、交流電動機M1は、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。すなわち、本実施の形態において、「交流電動機」は、交流駆動の電動機、発電機および電動発電機(モータジェネレータ)を含むものである。
直流電圧発生部10♯は、直流電源Bと、システムリレーSR1,SR2と、平滑コンデンサC1と、コンバータ12とを含む。
直流電源Bは、代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電装置により構成される。直流電源Bが出力する直流電圧Vbおよび入出力される直流電流Ibは、電圧センサ10および電流センサ11によってそれぞれ検知される。
システムリレーSR1は、直流電源Bの正極端子および電力線6の間に接続され、システムリレーSR1は、直流電源Bの負極端子およびアース線5の間に接続される。システムリレーSR1,SR2は、制御装置30からの信号SEによりオン/オフされる。
コンバータ12は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線7およびアース線5の間に直列に接続される。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S1およびS2によって制御される。
この発明の実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電力線6の間に接続される。また、平滑コンデンサC0は、電力線7およびアース線5の間に接続される。
インバータ14は、電力線7およびアース線5の間に並列に設けられる、U相上下アーム15と、V相上下アーム16と、W相上下アーム17とから成る。各相上下アームは、電力線7およびアース線5の間に直列接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相上下アーム15は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、V相上下アーム16は、スイッチング素子Q5,Q6から成り、W相上下アーム17は、スイッチング素子Q7,Q8から成る。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8によって制御される。
代表的には、交流電動機M1は、3相の永久磁石型同期電動機であり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続されて構成される。さらに、各相コイルの他端は、各相上下アーム15〜17のスイッチング素子の中間点と接続されている。
コンバータ12は、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオン・オフするように制御される。コンバータ12は、昇圧動作時には、直流電源Bから供給された直流電圧Vbを直流電圧VH(インバータ14への入力電圧に相当するこの直流電圧を、以下「システム電圧」とも称する)に昇圧する。この昇圧動作は、スイッチング素子Q2のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q1および逆並列ダイオードD1を介して、電力線7へ供給することにより行なわれる。
また、コンバータ12は、降圧動作時には、直流電圧VHを直流電圧Vbに降圧する。この降圧動作は、スイッチング素子Q1のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q2および逆並列ダイオードD2を介して、電力線6へ供給することにより行なわれる。これらの昇圧動作および降圧動作における電圧変換比(VHおよびVbの比)は、上記スイッチング周期におけるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)により制御される。なお、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定すれば、VH=Vb(電圧変換比=1.0)とすることもできる。
平滑コンデンサC0は、コンバータ12からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をインバータ14へ供給する。電圧センサ13は、平滑コンデンサC0の両端の電圧、すなわち、システム電圧VHを検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。
インバータ14は、交流電動機M1のトルク指令値が正(Trqcom>0)の場合には、平滑コンデンサC0から直流電圧が供給されると制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8に応答した、スイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により直流電圧を交流電圧に変換して正のトルクを出力するように交流電動機M1を駆動する。また、インバータ14は、交流電動機M1のトルク指令値が零の場合(Trqcom=0)には、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換してトルクが零になるように交流電動機M1を駆動する。これにより、交流電動機M1は、トルク指令値Trqcomによって指定された零または正のトルクを発生するように駆動される。
さらに、モータ駆動制御システム100が搭載された電動車両の回生制動時には、交流電動機M1のトルク指令値Trqcomは負に設定される(Trqcom<0)。この場合には、インバータ14は、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、交流電動機M1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧(システム電圧)を平滑コンデンサC0を介してコンバータ12へ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
電流センサ24は、交流電動機M1に流れるモータ電流MCRTを検出し、その検出したモータ電流を制御装置30へ出力する。なお、三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ24は2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配置すれば足りる。
回転角センサ(レゾルバ)25は、交流電動機M1の回転角θを検出し、その検出した回転角θを制御装置30へ送出する。制御装置30では、回転角θに基づき交流電動機M1の回転数(回転速度)および角速度ω(rad/s)を算出できる。なお、回転角センサ25については、回転角θを制御装置30にてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置を省略してもよい。
制御装置30は、電子制御ユニット(制御装置)により構成され、予め記憶されたプログラムを図示しないCPUで実行することによるソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、モータ駆動制御システム100の動作を制御する。
代表的な機能として、制御装置30は、入力されたトルク指令値Trqcom、電圧センサ10によって検出された直流電圧Vb、電流センサ11によって検出された直流電流Ib、電圧センサ13によって検出されたシステム電圧VHおよび電流センサ24からのモータ電流iv,iw、回転角センサ25からの回転角θ等に基づいて、後述する制御方式により交流電動機M1がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように、コンバータ12およびインバータ14の動作を制御する。すなわち、コンバータ12およびインバータ14を上記のように制御するためのスイッチング制御信号S1〜S8を生成して、コンバータ12およびインバータ14へ出力する。
コンバータ12の昇圧動作時には、制御装置30は、システム電圧VHをフィードバック制御し、システム電圧VHが電圧指令値に一致するようにスイッチング制御信号S1,S2を生成する。
また、制御装置30は、電動車両が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを外部制御装置から受けると、交流電動機M1で発電された交流電圧を直流電圧に変換するようにスイッチング制御信号S3〜S8を生成してインバータ14へ出力する。これにより、インバータ14は、交流電動機M1で発電された交流電圧を直流電圧に変換してコンバータ12へ供給する。
さらに、制御装置30は、電動車両が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを外部制御装置から受けると、インバータ14から供給された直流電圧を降圧するようにスイッチング制御信号S1,S2を生成し、コンバータ12へ出力する。これにより、交流電動機M1が発電した交流電圧は、直流電圧に変換され、降圧されて直流電源Bに供給される。
(制御モードの説明)
制御装置30による交流電動機M1の制御についてさらに詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態によるモータ駆動システムにおける交流電動機M1の制御モードを概略的に説明する図である。
図2に示すように、本発明の実施の形態によるモータ駆動制御システム100では、交流電動機M1の制御、すなわち、インバータ14における電力変換について、3つの制御モードを切替えて使用する。
正弦波PWM制御は、一般的なPWM制御として用いられるものであり、各相上下アーム素子のオン・オフを、正弦波状の電圧指令と搬送波(代表的には三角波)との電圧比較に従って制御する。この結果、上アーム素子のオン期間に対応するハイレベル期間と、下アーム素子のオン期間に対応するローレベル期間との集合について、一定期間内でその基本波成分が正弦波となるようにデューティが制御される。周知のように、正弦波状の電圧指令の振幅が搬送波振幅以下の範囲に制限される正弦波PWM制御では、交流電動機M1への印加電圧(以下、単に「モータ印加電圧」とも称する)の基本波成分をインバータの直流リンク電圧の約0.61倍程度までしか高めることができない。以下、本明細書では、インバータ14の直流リンク電圧(すなわち、システム電圧VH)に対するモータ印加電圧(線間電圧)の基本波成分(実効値)の比を「変調率」と称することとする。
正弦波PWM制御では、正弦波の電圧指令の振幅が搬送波振幅以下の範囲であるため、交流電動機M1に印加される線間電圧が正弦波となる。また、搬送波振幅以下の範囲の正弦波成分に3n次高調波成分(n:自然数、代表的には、n=1の3次高調波)を重畳させて電圧指令を生成する制御方式も提案されている。
一方、矩形波電圧制御では、上記一定期間内で、ハイレベル期間およびローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分を交流電動機に印加する。これにより、変調率は0.78まで高められる。
過変調PWM制御は、電圧指令(正弦波成分)の振幅が搬送波振幅より大きい範囲で上記正弦波PWM制御と同様のPWM制御を行なうものである。特に、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませること(振幅補正)によって基本波成分を高めることができ、変調率を正弦波PWM制御モードでの最高変調率から0.78の範囲まで高めることができる。過変調PWM制御では、電圧指令(正弦波成分)の振幅が搬送波振幅より大きいため、交流電動機M1に印加される線間電圧は、正弦波ではなく歪んだ電圧となる。
交流電動機M1では、回転数や出力トルクが増加すると誘起電圧が高くなるため、必要となる駆動電圧(モータ必要電圧)が高くなる。コンバータ12による昇圧電圧すなわち、システム電圧VHはこのモータ必要電圧よりも高く設定する必要がある。その一方で、コンバータ12による昇圧電圧すなわち、システム電圧VHには限界値(VH最大電圧)が存在する。
したがって、交流電動機M1の動作状態に応じて、モータ電流のフィードバックによってモータ印加電圧(交流)の振幅および位相を制御する、正弦波PWM制御または過変調PWM制御によるPWM制御モード、および、矩形波電圧制御モードのいずれかが選択的に適用される。なお、矩形波電圧制御では、モータ印加電圧の振幅が固定されるため、トルク実績値とトルク指令値との偏差に基づく、矩形波電圧パルスの位相制御によってトルク制御が実行される。
図3には、交流電動機M1の動作状態と上述の制御モードとの対応関係が示される。
図3を参照して、概略的には、低回転数域A1ではトルク変動を小さくするために正弦波PWM制御が用いられ、中回転数域A2では過変調PWM制御、高回転数域A3では、矩形波電圧制御が適用される。特に、過変調PWM制御および矩形波電圧制御の適用により、交流電動機M1の出力向上が実現される。このように、図2に示した制御モードのいずれを用いるかについては、基本的には、実現可能な変調率の範囲内で決定される。
(制御装置の構成)
図4は、本実施の形態の交流電動機の制御装置30の制御構成を示す機能ブロック図である。図4を始めとして、以下で説明されるブロック図に記載された各機能ブロックは、制御装置30によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
図4を参照して、制御装置30は、PWM制御部280と、矩形波電圧制御部400と、制御モード選択部490とを含む。また、PWM制御部280は、正弦波PWM制御部200と、過変調PWM制御部201とを含む。
正弦波PWM制御部200は、トルク指令値Trqcomと、電流センサ24によって検出されたモータ電流ivおよびiwと、回転角センサ25により検出された回転角θとが入力される。そして、正弦波PWM制御部200は、トルク指令値Trqcomから算出されるd軸,q軸の電流指令値と電流センサ24によって検出されたモータ電流をd軸、q軸に変換した電流検出値との偏差を算出する。この電流偏差をPI演算することにより、インバータ14に印加する電圧指令値Vd#,Vq#が生成される。
そして、正弦波PWM制御部200は、電圧指令値Vd#,Vq#をU,V,Wの3相変換し、得られた各相の電圧指令値に基づいて、インバータ14を駆動するスイッチング制御指令値S3〜S8を生成する。また、生成した電圧指令値Vd#,Vq#は制御モード選択部490に出力される。このように、正弦波PWM制御部200は、電流センサ24によって検出されたモータ電流をフィードバック制御することにより、交流電動機M1が目標トルクを発生するように制御する。
過変調PWM制御部201は、トルク指令値Trqcomと、電流センサ24によって検出されたモータ電流ivおよびiwと、回転角センサ25により検出された回転角θとの入力を受けて、正弦波PWM制御部200と同様の電流フィードバック制御により、インバータ14を駆動するスイッチング制御指令値S3〜S8を生成する。また、過変調PWM制御部201は、生成した電圧指令値Vd#,Vq#を制御モード選択部490に出力する。なお、過変調PWM制御部201は、上述のように、上記の正弦波PWMに電圧振幅補正を行う機能が追加されており、電圧指令値の基本波成分を高めることができる。
矩形波電圧制御部400は、トルク指令値Trqcomと、電流センサ24によって検出されたモータ電流ivおよびiwと、回転角センサ25により検出された回転角θとの入力を受け、検出した各相のモータ電流と交流電動機M1の各相への印加電圧からトルク推定値を演算する。そして、矩形波電圧制御部400は、このトルク推定値とトルク指令値Trqcomとの偏差よりインバータ14に印加する電圧位相を設定し、この電圧位相によりインバータ14を駆動するスイッチング制御指令値S3〜S8を生成する。このように、矩形波電圧制御部400は、トルクフィードバックによって交流電動機M1に印加する矩形波電圧の位相を制御することにより、交流電動機M1が目標トルクを発生するように制御する。
また、矩形波電圧制御部400は、電流センサ24によって検出されたモータ電流ivおよびiwと、回転角センサ25により検出された回転角θに基づいて、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行い、その判定にしたがって制御モード切替フラグFLGを制御モード選択部490へ出力する。これらの機能の詳細は後述する。
制御モード選択部490には、システム電圧VHと、PWM制御部280からの電圧指令値Vd#,Vq#と、電流センサ24によって検出されたモータ電流ivおよびiwと、回転角センサ25により検出された回転角θと、矩形波電圧制御部400からの制御モード切替フラグFLGが入力される。そして、制御モード選択部490は、システム電圧VHと電圧指令値Vd#,Vq#とから算出される変調率に基づいてPWM制御モードから矩形波電圧制御モードへの切替要否の判定を行うとともに、矩形波電圧制御部400からの制御モード切替フラグFLGに従って、矩形波電圧制御モードからPWM制御モードへの切替を行う。
(矩形波電圧制御の制御構成)
図5は、矩形波電圧制御モードが適用された場合に実行される矩形波電圧制御によるモータ制御構成を説明するブロック図である。
図5を参照して、矩形波電圧制御部400は、電力演算部410と、トルク演算部420と、PI演算部430と、矩形波発生器440と、信号発生部450と、電流抽出部460と、記憶部470と、切替判定部480とを含む。
電力演算部410は、電流センサ24の出力から求められる各相電流と、各相(U相,V相、W相)電圧Vu,Vv,Vwとにより、下記(1)式に従ってモータへの供給電力(モータ電力)Pmtを算出する。
Pmt=iu・Vu+iv・Vv+iw・Vw …(1)
トルク演算部420は、電力演算部410によって求められたモータ電力Pmtおよび回転角センサ25によって検出される交流電動機M1の回転角θから算出される角速度ωを用いて、下記(2)式に従ってトルク推定値Tqを算出する。
Tq=Pmt/ω …(2)
PI演算部430へは、トルク指令値Trqcomに対するトルク偏差ΔTq(ΔTq=Trqcom−Tq)が入力される。PI演算部430は、トルク偏差ΔTqについて所定ゲインによるPI演算を行なって制御偏差を求め、求められた制御偏差に応じて矩形波電圧の位相φvを設定する。具体的には、PI演算部430は、正トルク発生(Trqcom>0)時には、トルク不足時には電圧位相を進める一方で、トルク過剰時には電圧位相を遅らせるとともに、負トルク発生(Trqcom<0)時には、トルク不足時には電圧位相を遅らせる一方で、トルク過剰時には電圧位相を進める。
なお、PI演算部430は、後述する切替判定部480から入力された位相変更禁止信号CSTPがオンの場合は、電圧位相φvの変更を禁止して直前の制御周期で設定した電圧位相φvを保持する。
矩形波発生器440は、PI演算部430によって設定された電圧位相φvに従って、各相電圧指令値(矩形波パルス)Vu,Vv,Vwを発生する。信号発生部450は、各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに従ってスイッチング制御信号S3〜S8を発生する。インバータ14がスイッチング制御信号S3〜S8に従ったスイッチング動作を行なうことにより、電圧位相φvに従った矩形波パルスが、モータの各相電圧として印加される。
このように、矩形波電圧制御方式時には、トルク(電力)のフィードバック制御により、モータトルク制御を行なうことができる。ただし、矩形波電圧制御ではモータ印加電圧の操作量が位相のみとなるので、モータ印加電圧の振幅および位相を操作量とできるPWM制御方式と比較して、その制御応答性は低下する。
また、電力演算部410における電力演算(式(1))の際には、検出されたモータ電流(iv,iw)から歪み成分を除去するためのフィルタ処理が併せて実行される。
なお、電力演算部410およびトルク演算部420に代えてトルクセンサを配置することによって、当該トルクセンサの検出値に基づいて、トルク偏差ΔTqを求めてもよい。
電流抽出部460は、電流センサ24によるV相電流ivおよびW相電流iwから求められる各相電流と、回転角センサ25による交流電動機M1の回転角θとから、インバータ14のスイッチング制御指令S3〜S8に対する、後述するスイッチングタイミング500(図6)のモータ電流Iswをサンプリングする。
また、電流抽出部460は、同様に上記スイッチングタイミングの中間のタイミングのモータ電流Imidをサンプリングするとともに、これらサンプリングされたモータ電流Isw,Imidを切替判定部480に出力する。
記憶部470には、切替判定部480での判定に用いる電流基準値、切替位相基準値およびトルク基準値などが予め記憶される。上記の基準値は、ある固定値としてもよいし、サンプリングされた電流値に応じた可変値となる様に、予め実験等で設定したマップの参照によって設定してもよい。
切替判定部480は、電流抽出部460においてサンプリングされたモータ電流Isw,Imidを、回転角センサ25による交流電動機M1の回転角θを用いてd−q軸変換を行う。そして、切替判定部480は、モータ電流Iswのd軸電流値に基づいて、記憶部470に記憶されている切替要否判定用のq軸電流基準値を設定する。そして、切替判定部480は、モータ電流Iswのq軸電流値と上記q軸電流基準値とを比較してq軸電流値が基準値以上となるか否かを判定することにより、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の必要があるか否かを判定する。
q軸電流値が基準値以上となる場合は、切替判定部480は、制御モード選択部490に制御モード切替フラグFLGをオンとして出力するとともに、PI演算部430に位相変更禁止信号CSTPをオンとして出力する。この位相変更禁止信号CSTPにより、PI演算部430は、前回の制御周期で用いた電圧位相φvを保持する。これにより、矩形波電圧制御モードからPWM制御モードへの切替が完了するまでの間、電圧位相φvを変更しないようにする。
一方、q軸電流値が基準値未満となる場合は、切替判定部480は、制御モード切替フラグFLGおよび位相変更禁止信号CSTPをオフとして出力する。これにより、矩形波電圧制御部400は、トルク演算部420で推定したトルク推定値Tqを用いてトルクフィードバック制御を行う。
ここで、制御モード選択部490の動作は、交流電動機制御全体を統括するメインループの一環として行われる。これに対して矩形波電圧制御モードは、交流電動機M1の高回転速度領域で実行されるため、矩形波電圧制御部400による矩形波電圧位相の制御周期は、必然的にメインループの制御周期より短くなる。また、このような高回転速度領域で十分な制御応答性を得るために、電気角の1周期(360(deg))を細分化して矩形波電圧位相制御が実行される。このため、矩形波電圧制御部400によって矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行ってから、制御モード選択部490によって実際に制御モードの切替が完了するまでに、矩形波電圧制御部400による制御が複数回実行されることになる。
そのため、矩形波電圧制御部400によって矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否の判定を行ってから、制御モード選択部490によって実際に制御モードの切替が完了するまでの間に電圧位相φvの変更があると、実際に制御モードが切り替わったタイミングで、交流電動機M1に必要以上の電圧が印加されたり、瞬間的に電流が乱れてしまう可能性がある。これらを防止するために、矩形波電圧制御部400は、制御モードの切替完了まで電圧位相φvの変更を禁止する。
(サンプリング電流についての説明)
次に、図6,7を用いて、電流抽出部460におけるサンプリング電流について説明する。
図6を用いて、矩形波電圧制御中のサンプリングタイミングの違いによる、モータ電流の性質の違いについて説明する。
図6の下段は、インバータ14のUVW各相のスイッチング素子のオン・オフの駆動状態を示す図であり、たとえば電気角60(deg)毎に、UVW相いずれかのスイッチング素子がオンまたはオフされる。このスイッチング素子のオン・オフが切り替わるタイミングをスイッチングタイミング500とし、スイッチングタイミング間の中間のタイミングを中間タイミング510とする。
図6の上段および中段の符号W10の波形は、一相(たとえばU相)のモータ電流波形の例を示している。
図6の上段には、スイッチングタイミング500での電流サンプリングの例が示される。スイッチングタイミング500においては、スイッチング素子のオンまたはオフの際に発生するサージ電流によって、モータ電流の基本波電流に対して振幅が相対的に大きくなる傾向が強い。また、電流の位相は基本波電流の位相に対して相対的に遅れ側となる傾向がある。これらのサンプリング電流値による電流波形がW11となる。
一方、図6中段には、中間タイミング510での電流のサンプリング例が示される。符号W12の電流波形は、中間タイミング510でサンプリングしたモータ電流値による電流波形である。中間タイミング510においては、スイッチングタイミング500でのようなサージ電流の発生がないため、一周期分の基本波電流と比較すると、中間タイミング510での電流の振幅は小さくなる。また、電流の位相については、スイッチングタイミング500での電流の位相とは対照的に進み側となる傾向がある。
なお、スイッチングタイミング500は、スイッチング素子がオンまたはオフとなる時点のみを厳密に示すものではなく、基本波電流に対して相対的に振幅が大きくかつ位相が遅れ側の傾向となる範囲のタイミングを含むものとする。また、中間タイミング510についても、スイッチングタイミング500間の正確な中間点には限定されず、基本波電流に対して相対的に振幅が小さくかつ位相が進み側の傾向となる範囲のタイミングを含むものとする。
また、以降では、上記スイッチングタイミング500でサンプリングされたモータ電流を「スイッチング電流」と称することとする。また、中間タイミング510でのモータ電流を、「中間タイミング電流」と称することとする。
次に、図7を用いて、上記のサンプリングされたモータ電流をd−q軸変換したときの状態について説明する。
図7を参照して、DM1〜DM3はそれぞれ高トルク域(DM1),中トルク域(DM2),低トルク域(DM3)での、モータ電流の分布の例を示している。この電流分布は、高トルク域では長軸がq軸方向となるような楕円状に分布し、トルクが低下するにしたがって長軸がd軸方向となるように分布する。
この電流分布DM1〜DM3において、a1〜a3はそれぞれのトルク域でのスイッチング電流のサンプリング値の分布を示しており、またb1〜b3は中間タイミング電流のサンプリング値の分布を示している。また、I1〜I3はそれぞれのトルク域での平均電流を示している。この平均電流I1〜I3は、モータ電流の基本波電流(波形W1)に近似した値となる。
これらより、スイッチング電流のサンプリング値a1〜a3は、モータ電流の基本波電流(W1)に対して、振幅が大きくかつ位相が遅れ側となる電流になる。また、中間タイミング電流のサンプリング値b1〜b3は、基本波電流(W1)に対して、振幅が小さくかつ位相が進み側となる電流になる。
なお、一般的に、矩形波電圧制御からPWM制御への切替を行う際には、矩形波電圧制御とPWM制御との境界となる基準電流ベクトルに対し、電流位相が遅れ側となる側がPWM制御となる。一方、基準電流ベクトルに対して、電流位相が進み側となる側が矩形波電圧制御となる。
また、電流の大きさで見ると、図7のようなd軸電流が負でq軸電流が正である象限においては、ある電流のq軸電流が、基準電流ベクトルのq軸電流より正の方向に大きくなる側、すなわち電流振幅が大きくなる側がPWM制御となる。それに対して、q軸電流が小さくなる側、すなわち振幅が小さくなる側が矩形波電圧制御となる。
なお、d−q軸平面のその他の象限においても同様に、制御モードの境界となる電流ベクトルに対して、電流位相が遅れる側および振幅が大きくなる側がPWM制御となり、電流位相が進む側および振幅が小さくなる側が矩形波電圧制御となる。
したがって、スイッチング電流のサンプリング値a1〜a3は、平均電流I1〜I3と比較して振幅が大きくかつ位相が遅れ側であるので、矩形波電圧制御からPWM制御への切替を助長するような電流となる。そのため、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定にスイッチング電流を用いることにより、矩形波電圧制御からPWM制御への切替を早期に行うことができる。
これに対し、中間タイミング電流のサンプリング値b1〜b3は、平均電流I1〜I3と比較すると振幅が小さくかつ位相が進み側であるので、矩形波電圧制御からPWM制御への切替がされにくくなるような電流となる。したがって、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定に中間タイミング電流を用いることにより、制御モードの切替を遅らせることができる。
(矩形波電圧制御からPWM制御への切替時における問題点)
次に、矩形波電圧制御からPWM制御への切替時におけるモータ制御構成の問題点について、図8を用いて説明する。特に、交流電動機M1が高出力領域から出力低下することによって、制御モードが矩形波電圧制御〜過変調PWM制御〜正弦波PWM制御と移行する際における、制御安定性上の問題点について説明する。
図8を参照して、矩形波電圧制御では、各相電圧の振幅は、インバータ入力電圧VHに固定される。したがって、d−q軸平面上において、電圧指令値Vd♯,Vq♯の組み合わせで示される電圧指令ベクトルは、原点を中心とする円周上に位置することになる。この円の半径は、インバータ入力電圧(システム電圧VH)に対応したものとなる。そして、電圧指令ベクトルの位相φvが、図5に示した構成に従って、トルク偏差に応じて制御される。図8中の電圧指令ベクトルV1は、矩形波電圧制御から過変調PWM制御への切替時における、矩形波電圧制御による交流電圧指令の最終値に対応する。
そして、矩形波電圧制御から過変調PWM制御へ制御モードが切替ると、過変調PWM制御部201による制御演算によって、電圧指令ベクトルV2に対応する交流電圧指令が生成される。ここで、電圧指令ベクトルV2は、振幅補正処理がされた後の電圧指令値Vd♯,Vq♯に対応する。
矩形波電圧制御から過変調PWM制御への切替によって、電圧位相制御から電流フィードバック制御へ制御演算の内容が変更される。矩形波電圧制御では電流フィードバック制御を行っていないため、制御モードの切替の際に、電圧指令ベクトルV1が電圧指令ベクトルV2に変化がするときに電流偏差が発生しやすい。特に、矩形波電圧制御モードは、高回転の領域で使用されるため、制御モードの切替時点での電流偏差を小さくするには、切替要否の判定に用いるモータ電流を非常に短い周期でサンプリングし、切替要否の判定処理をする必要がある。しかしながら、制御装置の制御周期には限界があるため、遅れのないモータ電流によって切りか要否判定を行っても、制御モードの切替遅れが発生する。そして、この制御モードの切替遅れによって、電流偏差が大きい状態でPWM制御にモードが切替ってしまうと、PWM制御においてモータ電流が乱れて電流追従性が悪くなってしまう。
(実施の形態1の制御モード選択手法の説明)
次に、図4に示した制御ブロック図の制御モード選択部490における、PWM制御と矩形波電圧制御との間の制御モード選択について、図9を用いて詳細に説明する。図9を始めとして、以降に示すフローチャート中の各ステップについては、制御装置30に予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
図9を参照して、制御装置30は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)10により、現在の制御モードがPWM制御モードであるかどうかを判定する。そして、制御装置30は、現在の制御モードがPWM制御モードであるとき(S10にてYES)には、S11により、PWM制御モードに従う電圧指令値Vd♯,Vq♯、およびシステム電圧VHに基づいて、インバータ14の入力電圧VHを、交流電動機M1へのモータ印加電圧に変換する際の変調率を演算する。
たとえば、下記(3)式によって、変調率FMは算出される。
FM=(Vd♯2+Vq♯21/2/VH ・・・(3)
そして、制御装置30は、S12により、S11で求めた変調率が0.78以上であるかどうかを判定する。変調率≧0.78のとき(S12にてYES)には、PWM制御モードでは適切な交流電圧を発生することができないため、制御装置30は、処理をS15に進めて、矩形波電圧制御モードを選択するように制御モードを切替える。
一方、S12にてNOの場合、すなわち、S11で求めた変調率が0.78未満であるときには、制御装置30は、S14により、PWM制御モードを継続的に選択する。
一方、制御装置30は、現在の制御モードが矩形波電圧制御モードであるとき(S10にてNO)には、S13により、矩形波電圧制御部400の切替判定部480によって生成された制御モード切替フラグFLGの状態を判定する。
モード切替フラグFLGがオンである場合(S13にてYES)は、制御装置30は、制御モードを矩形波電圧制御モードからPWM制御モードへ切替が必要と判定する。この際には、制御装置30は、S14によりPWM制御モードを選択する。
一方、制御装置30は、S11にてNOのとき、すなわち制御モード切替フラグFLGがオフであるときには、S15により、矩形波電圧制御モードを継続的に選択する。
PWM制御モードの選択時(S14)には、制御装置30は、さらにS16により、正弦波PWM制御および過変調PWM制御のいずれを適用するかを判定する。この判定は、変調率FMを所定の閾値(たとえば、正弦波PWM制御適の変調率の理論最大値である0.61)と比較することにより実行できる。
変調率が閾値以下であるときには、正弦波PWM制御が適用される。これに対して、変調率が閾値より大きいときには、過変調PWM制御が適用される。
このように、電流センサ24によって検出されたモータ電流MCRT(iv,iw)、電圧センサ13によって検出されたインバータ14の入力電圧(システム電圧)VH、正弦波PWM制御部200もしくは過変調PWM制御部201によって生成された電圧指令値Vd♯,Vq♯、そして切替判定部480によって生成された制御モード切替フラグFLGに基づいて、制御モード選択が実行できる。
次に、図5で示した矩形波制御部400における、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定について、図10のフローチャートを用いて詳細に説明する。
図10を参照して、制御装置30は、S700において、交流電動機M1に設置された回転角センサ25より回転角θを検出する。そして、制御装置30は、この回転角θより、切替要否判定用のモータ電流として、インバータのスイッチング電流Iswと、中間タイミング電流Imidをサンプリングする(S710)。また、制御装置30は、矩形電圧制御用のモータ電流として、サンプリングしたこれらのモータ電流の平均値を算出する(S720)。
その後、制御装置30は、S730にて、スイッチング電流Iswおよび中間タイミング電流Imidの、d−q軸変換処理を行う。
次に、制御装置30は、記憶部470に予め記憶された切替要否を判定するための基準値から、スイッチング電流Iswのd軸電流値に対応するq軸電流基準値を算出する(S740)。なお、この基準値は、実験等に基づくマップの参照により設定してもよいし、所定の関係式によって算出してもよい。
そして、制御装置30は、S750にて、スイッチング電流Iswのq軸電流値が、S740にて算出した電流基準値未満であるか否かを判定する。
スイッチング電流Iswのq軸電流値が電流基準値以上である場合(S750にてNO)、すなわち、矩形波電圧制御からPWM制御への切替の兆候がある場合には、制御装置30は、緊急的に矩形波電流制御モードからPWM制御モードへの切替が必要と判定し、次にS820に処理が移される。そして、制御装置30は、図9で示した制御モード選択の処理ステップS13で用いる制御モード切替フラグFLGを出力する(S820)。
そして、制御装置30は、S830において、電圧位相φvを変更しないように位相変更禁止処理を行う。その後、制御装置30は、S800にて、前回の制御周期で設定した電圧位相指令φvを出力する。そして、制御装置30は、この電圧位相指令φvに従ってインバータ14のスイッチング素子の駆動出力指令S3〜S8を生成して、インバータ14に出力する(S810)。
一方、スイッチング電流Iswのq軸電流値が電流基準値未満である場合(S750にてYES)は、制御装置30は、緊急的な制御モードの切替の必要はないと判定してS760〜S810の通常の矩形波電圧制御の処理を行う。
具体的には、まず制御装置30は、S760において、S720で算出した制御用の平均電流の歪み成分を除去するために、制御用の平均電流に対し時間軸方向に平滑化するフィルター処理を行う。そして、制御装置30は、フィルター処理後の平均電流の電流位相φiの絶対値が、所定の切替電流位相φ0の絶対値より小さくなるか否かを判定する(S770)。なお、切替位相電流φ0は、交流電動機M1の力行時および回生時で異なる値に設定されてもよい。
制御装置30は、平均電流の電流位相φiの絶対値が切替位相基準値φ0の絶対値以上となる(すなわち、基準電流ベクトルに対して進み側となる)場合(S770にてNO)は、矩形波電圧制御モードを維持して、S780にて、上記平均電流の各相の電流、各相の電圧および回転角センサ25にて検出される回転角θから算出される角速度ωより、トルク推定値Tqを演算する。そして、制御装置30は、演算されたトルク推定値Tqとトルク指令値Trqcomとからトルクフィードバック演算を行い電圧位相指令φvを算出する(S790)。その後、制御装置30は、S800にて、S790で算出した電圧位相指令φvを出力し、その電圧位相指令φvに基づいてインバータ14への駆動出力指令S3〜S8を生成して出力する(S810)。
一方、制御装置30は、平均電流の電流位相φiの絶対値が切替位相基準値φ0の絶対値より小さくなる(すなわち、基準電流ベクトルに対して遅れ側となる)場合(S770にてYES)は、制御装置30は、矩形波電圧制御モードからPWM制御モードへの切替が必要と判定し、その後S820へ処理が移される。
そして、上記の緊急的な制御モード切替時と同様に、制御装置30は、制御モード切替フラグFLGをオンとして出力するとともに(S820)、電圧位相指令φvの変更を禁止する(S830)。その後、制御装置30は、上述のようにS800〜S810の処理によって、インバータ14への駆動出力指令S3〜S8を生成して出力する。
このような処理を行うことで、モータ電流の基本波電流より電流振幅が大きくかつ電流位相が遅れ側となる電流であるスイッチング電流を用いて、矩形波電圧制御からPWM制御への制御モードの切替要否判定を行うことが可能となる。この結果、交流電動機M1の駆動状態が急変等した場合であっても、制御モードの切替を早期に行うことによって、制御モード切替時点の電流偏差が大きくなることを抑制することができる。その結果、矩形波電圧制御からPWM制御への制御モード切替時の制御安定化を図ることが可能となる。
[実施の形態1の変形例]
上記の実施の形態1においては、矩形波電圧制御モードからPWM制御モードへの緊急的な切替要否判定に、スイッチング電流を使用した。実施の形態1の変形例では、トルク指令値Trqcomの大きさに応じて、切替要否判定に用いる電流を切替える手法について説明する。
図7でのサンプリング電流の説明でも述べたように、低トルク域においては、モータ電流は長軸がd軸方向となるような楕円状の分布に近づく。そのため、スイッチング電流のq軸電流値と平均電流のq軸電流値との偏差が小さくなり、スイッチング電流を用いることにより矩形波電圧制御からPWM制御への切替を助長するように判定した場合に、制御モードの変更が頻繁に繰り返される、いわゆるチャタリングが発生する可能性がある。
そこで、変形例においては、このチャタリングの発生を抑制するために、トルク指令値Trqcomが所定の第1のトルク基準値以上である高トルク域の場合は、実施の形態1と同様にスイッチング電流に基づいて切替要否判定を行うとともに、トルク指令値Trqcomが所定の第2のトルク基準値未満である低トルク域の場合には、切替要否判定に使用するモータ電流として、図7の説明で述べたように、制御モードの切替を遅らせる方向である中間タイミング電流に基づいて切替要否判定を行うことにより、チャタリングの発生を抑制する。低トルク域においては、モータ電流の大きさがもともと小さいため、電流の乱れによる過電流等の発生は少ない。なお、上記の切替要否判定の際に用いるスイッチング電流または中間タイミング電流を、以下では包括的に「判定用電流」とも称することとする。
なお、上記第1のトルク基準値と第2のトルク基準値は同じ値であってもよく、以下の変形例においては、第1のトルク基準値と第2のトルク基準値が同じ値の場合について説明する。また、第1のトルク基準値と第2のトルク基準値が異なる場合は、中トルク域(すなわち、トルク指令値Trqcomが第2のトルク基準値以上かつ第1のトルク基準値未満の場合)では、たとえばスイッチング電流と中間タイミング電流の平均電流を用いて切替要否判定をおこなうこととしてもよい。
図11のフローチャートを用いて、図4に示した制御ブロック図の制御モード選択部490における、実施の形態1の変形例による、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定について説明する。
図11を参照して、図11においては、図10での処理にS731,S732,S733のステップが追加される。なお、図10と同じステップについての説明は繰り返さない。
制御装置30は、S730にて、サンプリングしたスイッチング電流と中間タイミング電流のd−q軸変換を行った後、S731にてトルク指令値Trqcomが所定のトルク基準値よりも小さいか否かを判定する。
そして、トルク指令値Trqcomが所定のトルク基準値よりも小さい場合(S731にてYES)は、S732にて、制御装置30は、判定用電流として中間タイミング電流を設定し、S740に処理が移される。
一方、トルク指令値Trqcomが所定のトルク基準値以上の場合(S731にてNO)は、制御装置30は、判定用電流としてスイッチング電流を設定し、S740に処理が移される。
その後、図10での処理の説明と同様に、制御装置30は、S740にて判定用電流のd軸電流値に対応したq軸電流基準値を設定する。そして、S750において当該q軸電流基準値と制御モードの判定用電流のq軸電流値とを比較することで制御モードの切替要否判定を行う。以降の処理は、実施の形態1と同様である。
このような構成とすることによって、低トルク域では制御モード切替時のチャタリング発生を抑制しつつ、高トルク域では矩形波電圧制御からPWM制御への切替を早期に行うことが可能となるので、矩形波電圧制御からPWM制御への制御モード切替時の制御安定化を図ることができる。
[実施の形態2]
上記の実施の形態1およびその変形例では、判定用電流のq軸電流値を用い、このq軸電流値と基準値との比較によって制御モードの切替要否を判定した。実施の形態2では、これに代えて、判定用電流の位相を用いて制御モードの切替を判定する手法について説明する。
実施の形態1およびその変形例においては、制御モードの判定用電流のq軸電流基準値は、サンプリングした判定用電流のd軸電流値に対応して設定したが、この基準値については、電流の位相としても表現することができる。すなわち、上記の判定用電流のd軸電流値より、制御装置30は、判定用電流のq軸電流基準値に対応する電流位相基準φ0#を算出する。また、制御装置30は、判定用電流のd軸,q軸電流値より、判定用電流の位相φi#を算出する。
そして、判定用電流の位相φi#の絶対値が上記の電流位相基準φ0#の絶対値より小さいか否かによって、制御モードを矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否を判定する。これにより、制御装置30は、実施の形態1およびその変形例と同様の判定を行うことが可能となる。
なお、図10および図11で示したフローチャートのステップS770の処理では、フィルター処理を施した平均値電流を用いているが、ここではフィルター処理を行っていない、サンプリング電流の生値を用いている。
次に、図12のフローチャートを用いて、図4に示した制御ブロック図の制御モード選択部490における、実施の形態2による、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定の手法について説明する。
図12を参照して、図12においては、図10での実施の形態1の処理におけるS740およびS750のステップが、それぞれS741およびS751に置き換えられたものとなっている。なお、図10と同じステップの説明については繰り返さない。
制御装置30は、S730でd−q軸変換された判定用電流(ここでは、スイッチング電流Isw)のd軸電流値に対応した位相基準値φ0#を算出する(S741)。
その後、制御装置30は、S751にて、S741で算出した電流位相基準値φ0#の絶対値と、判定用電流の位相φi#の絶対値とを比較することにより、判定用電流の位相φi#の絶対値が電流位相基準値φ0#の絶対値より小さいか否かを判定する。
判定用電流の位相φi#の絶対値が電流位相基準値φ0#の絶対値以上となる(すなわち、進み側となる)場合(S751にてNO)は、制御装置30は、矩形波電圧制御モードを継続的に選択し、S760に処理が移される。
一方、判定用電流の位相φi#の絶対値が電流位相基準値φ0#の絶対値より小さくなる(すなわち、遅れ側となる)場合(S751にてYES)は、制御装置30は、矩形波電圧制御モードからPWM制御モードへの切替が必要と判定し、S820に処理が移される。以降の処理は、実施の形態1と同様である。
このような構成とすることによって、判定用電流の位相によって、実施の形態1と同様に、矩形波電圧制御からPWM制御への切替を早期に行うことが可能となる。その結果、矩形波電圧制御からPWM制御への制御モード切替時の制御安定化を図ることができる。
また、実施の形態1の変形例についても、上記と同様に、図11のフローチャートのS740およびS750のステップを、それぞれS741およびS751に置き換えた処理を行うことによって、トルク指令値Trqcomの大きさに応じて設定された判定用電流の位相を用いて、制御モードの切替要否判定を行うことができる。なお、各ステップの詳細についての説明は繰り返さない。
その結果、実施の形態1の変形例と同様に、低トルク域では制御モード切替時のチャタリング発生を抑制しつつ、高トルク域では矩形波電圧制御からPWM制御への切替を早期に行うことが可能となるので、矩形波電圧制御からPWM制御への制御モード切替時の制御安定化を図ることができる。
なお、本実施の形態では、好ましい構成例として、インバータ14への入力電圧(システム電圧VH)を可変制御可能なように、モータ駆動システムの直流電圧発生部10♯がコンバータ12を含む構成を示したが、インバータ14への入力電圧を可変制御可能であれば、直流電圧発生部10♯は本実施の形態に例示した構成には限定されない。また、インバータ入力電圧が可変であることは必須ではなく、直流電源Bの出力電圧がそのままインバータ14へ入力される構成(たとえば、コンバータ12の配置を省略した構成)に対しても本発明を適用可能である。
さらに、モータ駆動システムの負荷となる交流電動機についても、本実施の形態では、電動車両(ハイブリッド自動車、電気自動車等)に車両駆動用として搭載された永久磁石モータを想定したが、それ以外の機器に用いられる任意の交流電動機を負荷とする構成についても、本願発明を適用可能である。
なお、スイッチング電流Iswは、本発明の「第1の電流」に対応し、中間タイミング電流Imidは、本発明の「第2の電流」に対応する。また、電流センサ24は、本発明における「電流検出器」に対応する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御装置が適用されるモータ駆動制御システムの全体構成図である。 本発明の実施の形態によるモータ駆動システムにおける交流電動機M1の制御モードを概略的に説明する図である。 交流電動機M1の動作状態と各制御モードとの対応関係を示す図である。 本実施の形態の交流電動機の制御装置の制御構成を示す機能ブロック図である。 本実施の形態の矩形波電圧制御によるモータ制御構成を説明するブロック図である。 本実施の形態の電流抽出部におけるサンプリング電流について説明するための図である。 本実施の形態の電流抽出部におけるサンプリング電流の、d−q軸平面での分布の例を説明するための図である。 矩形波電圧制御からPWM制御への切替時における交流電圧指令の変化の例を説明する図である。 本実施の形態による、PWM制御と矩形波電圧制御との間の制御モード選択処理を説明するフローチャートである。 本実施の形態1による、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定処理を説明するフローチャートである。 本実施の形態1の変形例による、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定処理について説明するフローチャートである。 本実施の形態2による、矩形波電圧制御からPWM制御への切替要否判定処理を説明するフローチャートである。
符号の説明
5 アース線、6,7 電力線、10# 直流電圧発生部、10,13 電圧センサ、11,24 電流センサ、12 コンバータ、14 インバータ、15 U相上下アーム、16 V相上下アーム、17 W相上下アーム、25 回転角センサ、30 制御装置、100 モータ駆動制御システム、200 正弦波PWM制御部、201 過変調PWM制御部、280 PWM制御部、400 矩形波電圧制御部、410 電力演算部、420 トルク演算部、430 演算部、440 矩形波発生器、450 信号発生部、460 電流抽出部、470 記憶部、480 切替判定部、490 制御モード選択部、500 スイッチングタイミング、510 中間タイミング、B 直流電源、C0,C1 平滑コンデンサ、D1〜D8 逆並列ダイオード、FLG 制御モード切替フラグ、FM 変調率、Ib 直流電流、CSTP 位相変更禁止信号、Isw,Imid モータサンプリング電流、L1 リアクトル、M1 交流電動機、MCRT(iu,iv,iw) モータ電流、、Pmt モータ電力、Q1〜Q8 電力用半導体スイッチング素子、RGE 回生制動モード信号、S1〜S8 スイッチング制御信号、SE システムリレー駆動信号、SR1,SR2 システムリレー、Tq トルク推定値、Trqcom トルク指令値、V1,V2 電圧指令ベクトル、Vb 直流電圧、Vd#,Vq# 電圧指令値(d,q軸)、VH インバータ入力電圧、Vu,Vv,Vw モータ各相電圧指令値、ΔTq トルク偏差、θ 回転角、φ0 切替位相基準値、φ0# 電流位相基準値、φi,φi# 電流位相、φv 電圧位相、ω 角速度。

Claims (8)

  1. インバータによって印加電圧が制御される交流電動機の制御装置であって、
    前記インバータおよび前記交流電動機の間を流れるモータ電流を検出する電流検出器と、
    前記交流電動機をトルク指令に従って動作させるように位相制御された矩形波電圧が前記交流電動機に印加されるように、前記インバータの制御指令を発生する矩形波電圧制御部と、
    搬送波と、前記交流電動機をトルク指令に従って動作させるための交流電圧指令との比較に基づくパルス幅変調制御によって、前記インバータの制御指令を発生するパルス幅変調制御部と、
    前記交流電動機の動作状態に応じて、前記矩形波電圧制御部による矩形波電圧制御および前記パルス幅変調制御部による前記パルス幅変調制御のいずれか一方を選択するように構成された制御モード選択部とを備え、
    前記矩形波電圧制御部は、
    前記モータ電流の振幅および位相が基本波成分である基本波電流と比較して振幅が大きくかつ位相が遅れ側となる第1の所定のタイミングにおいて、前記電流検出器により検出された前記モータ電流をサンプリングするように構成された電流抽出部と、
    前記第1の所定のタイミングでサンプリングされた第1の電流に基づいて、前記矩形波電圧制御から前記パルス幅変調制御への切替要否を判定するように構成された切替判定部とを含み、
    前記電流抽出部は、前記モータ電流の振幅および位相が前記基本波電流と比較して振幅が小さくかつ位相が進み側となる第2の所定のタイミングにおいて、前記モータ電流をさらにサンプリングするように構成され、
    前記切替判定部は、前記トルク指令値が所定の第1のトルク基準値以上のときには、前記第1の電流に基づいて前記切替要否を判定し、前記トルク指令値が前記第1のトルク基準値以下の所定の第2のトルク基準値未満のときには、前記第1の電流に基づく前記切替要否の判定に代えて、前記第2の所定のタイミングでサンプリングされた第2の電流に基づいて前記切替要否を判定する、交流電動機の制御装置。
  2. 前記切替判定部は、前記第1の電流の大きさに基づいて前記切替要否を判定する、請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記切替判定部は、前記第1の電流の位相に基づいて前記切替要否を判定する、請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記インバータは、
    前記制御指令に従って電力変換を行う複数のスイッチング素子を含み、
    前記第1の電流は、前記インバータの前記複数のスイッチング素子のそれぞれの駆動切替タイミングに対応するタイミングでサンプリングされた前記モータ電流である、請求項1〜のいずれか1項に記載の交流電動機の制御装置。
  5. 前記切替判定部は、前記トルク指令値が前記第1のトルク基準値以上のときには、前記第1の電流の大きさに基づいて前記切替要否を判定し、前記トルク指令値が前記第2のトルク基準値未満のときには、前記第2の電流の大きさに基づいて前記切替要否を判定する、請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  6. 前記切替判定部は、前記トルク指令値が前記第1のトルク基準値以上のときには、前記第1の電流の位相に基づいて前記切替要否を判定し、前記トルク指令値が前記第2のトルク基準値未満のときには、前記第2の電流の位相に基づいて前記切替要否を判定する、請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  7. 前記インバータは、
    前記制御指令に従って電力変換を行う複数のスイッチング素子を含み、
    前記第1の電流は、前記インバータへの前記複数のスイッチング素子のそれぞれの駆動切替タイミングに対応するタイミングでの前記モータ電流であり、前記第2の電流は、前記第1の電流のサンプリングタイミング間の中間のタイミングでサンプリングされた前記モータ電流である、請求項1,5または6に記載の交流電動機の制御装置。
  8. 車両駆動力を発生するように構成された前記交流電動機と、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の前記交流電動機の前記制御装置とを搭載した電動車両。
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