JP5210358B2 - 電池用外装フィルムおよびそれを用いた電池 - Google Patents
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Description
外装フィルムには、電池の製造年月日および推奨使用期限のような製品の出荷時期に応じて変わる管理データが印刷される。管理データは、電池が完成した時点で決まるデータである。よって、管理データは、完成した電池に外装フィルムを装着する直前に、外装フィルムに印刷される。
管理データは保護層の上に印刷され難いため、本発明では、印刷層の一部に、管理データを印刷する領域として印刷層で覆われない部分を設ける。しかし、従来のように網点数が170lpi程度の印刷層の上に管理データを表示する印刷部を設ける場合、その印刷部はある程度定着するが、電池製造時に高速で搬送される電池同士の衝突等のような大きな摩擦がその印刷部で生じると、管理データが消えてしまう場合がある。
そこで、本発明者らは、さらに、上記のような大きな摩擦に耐え得る管理データを表示する印刷部の定着性の改善を目的として様々な検討を行った。その結果、印刷層を第1の印刷部および第2の印刷部で構成し、第1の印刷部を保護層で覆い、第2の印刷部を、網点数が15〜140lpiの網点で印刷された網点印刷部とし、その網点印刷部に重畳して管理データを印刷すると、管理データを表示する印刷部の耐摩耗性が大幅に向上することを見出した。
網点印刷部は、管理データを印刷した際、印刷した管理データが容易に視認できるような色調および階調に設定しておくことが望ましい。
図1に示すように、外装フィルム7は、熱収縮性樹脂フィルムからなる基材層1、基材層1の一方の面に形成された第1の印刷部2aおよび第2の印刷部2b、ならびに第1の印刷部2aを覆う、耐摩耗性を有する保護層3を含む。印刷部2bは、保護層3で覆われない領域である。第2の印刷部2bは、網点数が15〜140lpi(lines per inch)
の網点で印刷された網点印刷部4、および網点印刷部4に重畳して印刷された管理データを表示する印刷部5を有する。上記の網点数は、1インチあたりにドットで描かれる線の数(スクリーン線数)、すなわち1インチあたりのドットの数を示す。第2の印刷部2bが占める領域は、例えば、3〜6mm×10〜19mmである。
すなわち、網点印刷部4の網点数が15〜140lpiである場合、基材層の露出による管理データを表示する印刷部の定着性の改善効果と、網点印刷部4によるアンカー効果とが相乗的に得られる。従って、摩擦などにより管理データの印刷が消え難い。
上記の耐薬品性をさらに向上するには、網点印刷部4の網点数は、好ましくは85lpi以下、より好ましくは50lpi以下、さらに好ましくは20lpi以下である。
網点数を容易に制御することができるため、第1の印刷部2aおよび網点印刷部4で採用される印刷方式は、レタープレス印刷、フレキソ印刷が好ましい。
第1の印刷部および網点印刷部の基材層への密着性を高めるために、基材層と第1の印刷部および第2の印刷部との間に、さらにアンカーコート層を形成してもよい。管理データを表示する印刷部は、アンカーコート層の上に安定して定着させることができる。アンカーコート層の材料には、例えば、ポリエステル等の樹脂材料が用いられる。
大量生産、および管理データの視認性の観点から、管理データの印刷方式は、インクジェット方式、転写方式、捺印方式が好ましい。
管理データを表示する印刷部の網点印刷部への定着性および管理データの視認性の観点から、管理データを表示する印刷部の厚さは、0.5〜50.0μmが好ましい。
従来では、基材層を45μm以下に薄くすると、衝撃に対する抵抗(クッション性)が低下し、摩擦等により管理データの表示が著しく擦れる場合があった。これに対して、本発明では、管理データを表示する印刷部を外装フィルムに強固に保持させることができるため、基材層の厚さを45μm以下に薄くしても管理データが消えることがない。
管理データの視認性の観点から、第2の印刷部2bの厚さ(網点印刷部4の厚さおよび管理データを表示する印刷部5の厚さの合計)が、第1の印刷部2aの厚さおよび保護層3の厚さの合計よりも大きいのが好ましい。すなわち、第1の印刷部2aおよび網点印刷部4の厚みが同じである場合、管理データを表示する印刷部5の厚さ(網点印刷部4からの高さ寸法)は、保護層3の厚さ(第1の印刷部2aからの高さ寸法)よりも大きいのが好ましい。管理データを表示する印刷部が保護層よりはみ出し、外部に晒される場合でも、外装フィルムに強固に保持される。管理データを印刷する領域が小さくても、小さい文字をはっきりと表記することが可能である。管理データを表示する印刷部の厚さを、保護層の厚さの20倍程度まで大きくしても、摩擦等により管理データが消えることがない。
《実施例1》
(1)外装フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートを溶融し、厚さ100μmの膜状に成型した。この膜状成型物に250℃の熱風を供給しながら、膜状成型物を一軸延伸した。このようにして、ポリエチレンテレフタレートのフィルムからなる基材層1(長さ51.0mm、幅52.0mm、厚さ65μm)を得た。
第1の印刷部2aの表面にニス(東洋インキ製造(株)製、FD−BT−OP)を塗布し、保護層3(厚さ3μm)を設けた。
網点印刷部4に、管理データ(製造年月日および推奨使用期限)を印刷した。管理データの印刷方式は、インクジェット方式とした。管理データの印刷用のインクには、キーエンス(株)製のMK−12を用いた。管理データを表示する印刷部5の厚さは2μmとした。
網点印刷部4の網点数を85lpiとした以外は、実施例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
網点印刷部4の網点数を50lpiとした以外は、実施例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
網点印刷部4の網点数を20lpiとした以外は、実施例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
網点印刷部4の網点数を、第1の印刷部2aの網点数と同一の170lpiとした以外は、実施例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
[評価]
(1)耐摩耗性の評価方法
電池を1000個準備し、電池の製造ライン(搬送工程)にて、これらの電池を高速で搬送した。すなわち、1分間に電池を1000個搬送した。その後、目視にて、管理データの印刷が擦れて、管理データが読み取れない電池の個数をカウントした。
当業者にとって、管理データの印刷が消える事象は摩擦だけとは限らない。電池の製造ラインの不慮のトラブルによって、電池の内容物や設備に用いる油脂類によって完成品の電池の外面が汚染される場合がある。この場合、速乾性の高いイソプロピルアルコール(IPA)やエタノール等の有機溶媒を完成品の電池の汚染箇所に噴霧してウエス等で拭き取ることが行われる(エタノールは、イソプロピルアルコールと比べて、洗浄能力が高い)。この際、外装フィルムに印刷した管理データが消えてしまう事象が発生する。
これらの評価結果を表1に示す。
本発明の実施例1〜4の外装フィルムは、耐摩耗性および耐薬品性に優れていることが認められた。
《実施例5》
基材層の厚さを45μmとした。基材層の厚さは、ポリエチレンテレフタレートの膜状成型物を一軸延伸する際に調整した。これ以外は、実施例2と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
基材層の厚さを25μmとした。基材層の厚さは、ポリエチレンテレフタレートの膜状成型物を一軸延伸する際に調整した。これ以外は、実施例2と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
基材層の厚さを45μmとした。基材層の厚さは、ポリエチレンテレフタレートの膜状成型物を一軸延伸する際に調整した。これ以外は、比較例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
基材層の厚さを25μmとした。基材層の厚さは、ポリエチレンテレフタレートの膜状成型物を一軸延伸する際に調整した。これ以外は、比較例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
実施例5および6ならびに比較例2および3の電池について、上記と同じ方法により外装フィルムの耐摩耗性を評価した。耐摩耗性の評価結果を、実施例2および比較例1の評価結果とともに、表2に示す。
比較例1〜3では、耐摩耗性が低下し、基材層の厚さが薄いほど、耐摩耗性の低下が顕在化した。特に、基材層の厚さが45μm未満である比較例3では、摩擦に対するクッション性が大に低下したため、耐摩耗性が著しく低下した。
《実施例7》
管理データを表示する印刷部の厚さを4μmとした。印刷部の厚さは、管理データを印刷するインクの吐出量を変えることにより調整した。これ以外は、実施例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
管理データを表示する印刷部の厚さを10μmとした。これ以外は、実施例1と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
管理データを表示する印刷部の厚さを4μmに設定した。これ以外は、比較例2と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
管理データを表示する印刷部の厚さを10μmとした。これ以外は、比較例2と同様の方法により外装フィルムを作製し、電池に装着した。
実施例7および8ならびに比較例4および5の電池について、上記と同じ方法により外装フィルムの耐摩耗性を評価した。耐摩耗性の評価結果を、実施例2および比較例2の評価結果とともに、表3に示す。
一方、本発明の実施例2、7、および8では、優れた耐摩耗性が得られた。管理データを表示する印刷部の外装フィルムへの保持性が向上したため、管理データを表示する印刷部5の厚さが保護層の厚さより大きい、すなわち管理データを表示する印刷部が保護層より上方にはみ出している実施例7および8においても、優れた耐摩耗性が得られた。
2a 第1の印刷部
2b 第2の印刷部
3 保護層
4 網点印刷部
5 管理データを表示する印刷部
6a 金属層
6b 接着層
7 外装フィルム
8 電池
Claims (10)
- 熱収縮性樹脂フィルムからなる基材層、前記基材層の一方の面に形成された第1の印刷部および第2の印刷部、ならびに前記第1の印刷部を覆う耐摩耗性の保護層を含む電池用外装フィルムであって、
前記第2の印刷部は、網点数が15〜140lpiの網点で印刷された網点印刷部、および前記網点印刷部に重畳して印刷された管理データを表示する印刷部を有することを特徴とする電池用外装フィルム。 - 前記第1の印刷部は、前記第2の印刷部の前記網点印刷部よりも多い網点で印刷されている請求項1に記載の電池用外装フィルム。
- 前記第1の印刷部の網点数Aと、前記第2の印刷部の前記網点印刷部の網点数Bとの比:B/Aは、0.1〜0.8である請求項2に記載の電池用外装フィルム。
- 前記第2の印刷部の前記網点印刷部の網点数が、85lpi以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池用外装フィルム。
- 前記第2の印刷部の前記網点印刷部の網点数が、50lpi以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池用外装フィルム。
- 前記第2の印刷部の前記網点印刷部の網点数が、20lpi以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池用外装フィルム。
- 前記基材層の厚さが、25〜45μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の電池用外装フィルム。
- 前記第2の印刷部の厚さが、前記第1の印刷部の厚さおよび前記保護層の厚さの合計よりも大きい請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池用外装フィルム。
- さらに、前記基材と前記第1印刷部および前記第2印刷部との間にアンカーコート層を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電池用外装フィルム。
- 電池本体、および前記電池本体の外表面に装着された外装フィルムを含み、
前記外装フィルムに、請求項1〜9のいずれか1項に記載の外装フィルムを用いた電池。
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