JP5204019B2 - 覆工コンクリートの養生装置 - Google Patents
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Description
すなわち、(1)トンネルによっては、天部と底部との高低差が約10mにもなるが、このように高低差が大きいと、天部に位置する覆工コンクリートと底部に位置する覆工コンクリートとで温度差が10℃以上にもなり、積極的に加湿・加温しても、密閉空間内の湿度・温度を均一化することができない。(2)底部に位置する密閉空間の密閉性保持が困難で密閉空間内に外気が流入すること、膜の断熱性が劣化することなどによって、覆工コンクリート表面に結露が生じる。結果、覆工コンクリート表面を大量のドレンが流下することになり、覆工コンクリート表面の温度ムラが大きくなる。(3)断熱性・気密性を有する密閉空間を作るために、大がかりな膜構造を構築する必要があり、しかも加湿器や加温器を懸架するために、大がかりで丈夫な専用の鋼製架台が必要になる。結果、設置(組立)・解体・移動・再設置に時間がかかり、また、コストが嵩む。(4)トンネルの断面プロフィール寸法は施工現場ごとに異なるが、密閉方式は、転用性が乏しいため、コストが嵩む。例えば、トンネルの断面積が65m2の場合、スパン33mで2000万円程度にもなる。(5)加湿・加温し続けるため、電力(通常、15kW〜22kW。)などのランニングコストが嵩む。
すなわち、(1)トンネルの断面曲率が一定ではない場合(多芯円形状)は、覆工コンクリートの内壁面とアーチ状バルーンの外周面との曲率が一致しなくなるため、例えば、天部において、密着シートを覆工コンクリートに密着させることができない。(2)アーチ状バルーンは、トンネル延長方向に関して、適宜の間隔をおいて支持されるところ、この支持をされない部分においては、特に天部に位置する部分が下方に垂れ下がり易いため、密着シートを覆工コンクリート表面に隙間なく密着させるには、バルーンの天部に位置する部分が下方に垂れ下がらないようバルーン内の空気圧を100Pa以上にする必要がある。そして、このバルーンからの反力(荷重)は、例えば、空気圧100Pa×周長20m×スパン(養生長)33mm÷9.8で6734kgfにもなる。したがって、この反力に、バルーン自体や密着シートの荷重を加えた大きな荷重を、坑内側から鋼製架台で受けることになり、密閉方式ほどではないが、大がかりな鋼製架台が必要になる。結果、設置(組立)・解体・移動・再設置に時間がかかり、また、コストが嵩む。(3)密着シート、バルーン、鋼製架台等は、他の施工現場への転用が困難で、トンネル断面プロフィールごと(施工現場ごと)に製作する必要があるため、密閉方式ほどではないが、コストが嵩む。例えば、トンネルの断面積が65m2の場合、スパン33mで1200万円程度になる。(4)養生装置の移動は、バルーンの圧力を解放し、覆工コンクリート表面からのクリアランスを確保してから行う。そして、このクリアランスの確保にあたっては、バルーンが自然排気収縮するのを待つ必要があるため、かなりの時間を要する。例えば、バルーンの収縮、移動、再密着には、2〜3時間かかり、この間、覆工コンクリート表面が坑内環境に曝露されるため、覆工コンクリートの品質に影響が生じる。(5)停電等によってバルーンに空気を注入するブロワ等が停止するとバルーンが収縮してしまい、密着性が損なわれる。(6)1つの養生長33mを1つの養生装置(鋼製架台長も33m)で施工すると施工コストが削減されるが、バルーンを収縮させても覆工コンクリート表面からのクリアランスが大きなものとはならないため、急曲線トンネル等では、1つの養生長33mを1つの養生装置で施工することができない場合が多い。
その結果、円筒状のバルーンをトンネルアーチ方向に並列配置(各バルーンはトンネル延長方向に延びる。)し、かつ相互に隣接するバルーン同士を連結した形態を、着想するに至った。また、その後、この思想は、特許文献3においても提案されていることを知見した。
〔請求項1記載の発明〕
トンネルの覆工コンクリートに密着させる密着体を有する、覆工コンクリートの養生装置であって、
前記密着体は、前記覆工コンクリート側に配置される外側シートと、この外側シートの坑内側に配置される内側シートと、を有し、
これら外側シート及び内側シートは、トンネル延長方向に沿う複数の接合部において、接合されており、
相互に隣接する前記接合部間のシート長が、前記外側シートよりも前記内側シートの方が長くなるようにされて、前記外側シートと前記内側シートとの間に流体を注入すると、当該内側シートが膨らむ構成とされている、
ことを特徴とする覆工コンクリートの養生装置。
前記外側シート及び前記内側シートの少なくともいずれか一方の両側端部に連結可能とされ、かつ、当該連結状態において連結部から前記トンネルの床面に向かって垂れ下がる側部シートを有する、
請求項1記載の覆工コンクリートの養生装置。
トンネル周長方向に延び、かつ前記密着体を坑内側から支持する周長ロッドと、
上下方向に延び、かつ前記周長ロッドの上下方向の支持をする、トンネル幅方向に離間して配置された一対の縦ロッドと、
トンネル幅方向に延び、かつ前記周長ロッドのトンネル幅方向の支持をする横ロッドと、
前記縦ロッドに連結され、かつこの連結部から内上方に延びる部位が前記横ロッドに連結される斜ロッドと、
上下方向に伸縮して前記縦ロッドを上下に移動させる伸縮機構と、を有する、
請求項1又は請求項2記載の覆工コンクリートの養生装置。
前記周長ロッドは、トンネル延長方向に間隔をおいて複数配置され、
この複数の周長ロッドの少なくとも一方の端部は、それぞれトンネル延長方向に延びる延長ロッドに連結され、
この延長ロッドが、前記トンネルの坑内側に引寄せ可能とされている、
請求項3記載の覆工コンクリートの養生装置。
図1及び図2に示すように、本形態の養生装置10は、トンネルの内壁面を覆う覆工コンクリート2を養生する際に使用する。
この覆工コンクリートが打設されたトンネル自体の種類は、特に限定されず、例えば、山岳トンネル、シールドトンネル、TBMトンネル等を対象にすることができる。そして、本形態の養生装置10は、さまざまな断面プロフィール(例えば、断面積など。)、周長方向プロフィール(例えば、曲率など。)、延長方向プロフィール(例えば、曲率など。)を有するトンネルに、設計変更等することなく適応(フィット)させることができ、以上で列記したトンネルの種類ごとに装置を使い分け、あるいは設計変更をする必要がない。以下、詳細に説明する。なお、本形態では、図1に示すように、トンネル断面に関して、覆工コンクリート2の内壁面(表面)に沿う方向(アーチ方向)を「トンネル周長方向」といい、トンネル断面に関して、例えば、走行レール4等が敷設されるトンネル床面3に沿う方向を「トンネル幅方向」という。また、図2に示すように、トンネルの進行方向(延びる方向)を「トンネル延長方向」という。
次に、密着体20の支持構造について、説明する。
(周長ロッド)
図1に示すように、本形態の支持構造30は、トンネル周長方向に延び(沿い)、かつ密着体20を坑内側から支持する周長ロッド31を有する。この周長ロッド31によって、密着体20の覆工コンクリート2への圧着が図られる。
本形態の支持構造30は、図1に示すように、上下方向に延び、かつ周長ロッド31の上下方向の支持をする、トンネル幅方向に離間して配置された一対の縦ロッド32を有する。この一対の縦ロッド32のトンネル幅方向の配置間隔(離間距離)は、特に限定されず、トンネルの断面プロフィール等によって適宜決定することができる。ただし、本形態においては、トンネル床面3上にトンネル延長方向に延びる(沿う)一対のレール4が敷設されており、このレール4上に後述する伸縮機構40を介して縦ロッド32が配置されている。このトンネル幅方向の配置間隔は、トンネルの断面プロフィール等にもよるが、できる限り長い方が好ましい。これは、養生装置10の組立や解体は、騒音対策などのために、防音扉等を設置した後、トンネル坑内で施工することもあり、各種機材等の運搬搬入や、組立、解体を容易とするためである。当該トンネル幅方向の配置間隔は、例えば、3〜5mとすることができる。
さらに、本形態の支持構造30は、図1に示すように、トンネル幅方向に延び、かつ周長ロッド31のトンネル幅方向の支持をする横ロッド33を有する。この横ロッド33による周長ロッド31の幅方向支持構造は、特に限定されないが、本形態では、図4に示すように、横ロッド33の両端部33Xが周長ロッド31とパイプクランプ等によって連結され、もって周長ロッド31のトンネル幅方向への移動が抑制されている。
さらに、本形態の支持構造30は、図4に示すように、縦ロッド32に直交クランプ等によって連結され、かつこの連結部34Xから内上方に延びる部位が連結部34Yにおいて横ロッド33に直交クランプ等によって連結される斜ロッド34を有する。
本形態の養生装置10は、図1に示すように、上下方向に伸縮して縦ロッド32を上下に移動させるエアジャッキ等が備わる伸縮機構40を有する。この伸縮機構40は、図5に示すように、縦ロッド32の下端部が出し入れされる本体44と、この本体44内に配置され、かつ上面に縦ロッド32の下端部32Yが載せられるエアジャッキ41と、このエアジャッキ41にコンプレッサー94(図2参照)から送られてきたエアを供給するためのエア供給チューブ42と、本体44の下端面に取り付けられ、H型鋼、I型鋼等からなるレール4上を転がるキャスター43と、から主になる。
すなわち、伸縮機構40を収縮させ、縦ロッド32を降下させることにより、密着体20の覆工コンクリート2内壁面からのクリアランスを大きくとることができるため、養生装置10の移動に際して、密着体20が覆工コンクリート2内壁面と接触し破損するといったおそれを防止することができる。また、このようにクリアランスを大きくとることができるため、急曲線トンネルや高低差のあるトンネル等であっても、1つの養生長33mを1つの養生装置10で施工することができる。
本形態の支持構造30においては、前述したように周長ロッド31がトンネル延長方向に間隔をおいて複数配置されているが、図4に示すように、この複数の周長ロッド31の一方又は両方の端部31Xは、それぞれトンネル延長方向に延びる(沿う)延長ロッド38に連結されると好適である。また、この延長ロッド38は、例えば、紐状部材39等によってトンネルの坑内側に引寄せ可能とされているとより好適である。この点、前述したように、本形態においては、伸縮機構40の収縮及び養生バルーン50の収縮によって、覆工コンクリート2内壁面と密着体20とのクリアランスを大きくとることができるが、このクリアランスは、トンネル天部に比較して、トンネル側部においては小さなものとなる。しかしながら、以上のように、複数の周長ロッド31の端部31Xが、それぞれトンネル延長方向に延びる延長ロッド38に連結され、この延長ロッド38が紐状部材39等によってトンネルの坑内側に引寄せ可能とされていると、紐状部材39等を引くことのみによって、トンネル側部におけるクリアランスも大きなものとすることができる。
本形態においては、図2に示すように、密着体20のトンネル延長方向への剛性を向上させるために、トンネル延長方向に延びる(沿う)補助ロッド35を配置することもできる。この補助ロッド35は、例えば、図3に示すように、周長ロッド31にトンネル延長方向に開口する補助クランプ35Aをあらかじめ設けておき、この補助クランプ35Aの開口に補助ロッド35を挿通させることにより、周長ロッド31に連結することができる。この形態によると、補助ロッド35を極めて容易に配置することができ、また、補助ロッド35が必要ない場合においても、負担がかからない。
以上のように、本形態の支持構造30は、各種ロッドの組合せでなり、しかも部材(品)点数が少ないため、坑内空間を広く確保することができる。例えば、トンネル坑内における双方通行を実現することもできる。また、同様の理由により、極めて軽量化することができ、設置(組立)・解体・移動・再設置等を容易に行うことができる。ちなみに、養生長33m(3スパン)とした場合の養生装置10全体の重量は、約3000kgと、従来の1/2〜1/3にすることができる。もちろん、養生長を、例えば、10.5m(1スパン)とし、より軽量化することもできるが、設置等にかかるコストを考慮すると、3スパンとする方が好ましい。
Claims (4)
- トンネルの覆工コンクリートに密着させる密着体を有する、覆工コンクリートの養生装置であって、
前記密着体は、前記覆工コンクリート側に配置される外側シートと、この外側シートの坑内側に配置される内側シートと、を有し、
これら外側シート及び内側シートは、トンネル延長方向に沿う複数の接合部において、接合されており、
相互に隣接する前記接合部間のシート長が、前記外側シートよりも前記内側シートの方が長くなるようにされて、前記外側シートと前記内側シートとの間に流体を注入すると、当該内側シートが膨らむ構成とされている、
ことを特徴とする覆工コンクリートの養生装置。 - 前記外側シート及び前記内側シートの少なくともいずれか一方の両側端部に連結可能とされ、かつ、当該連結状態において連結部から前記トンネルの床面に向かって垂れ下がる側部シートを有する、
請求項1記載の覆工コンクリートの養生装置。 - トンネル周長方向に延び、かつ前記密着体を坑内側から支持する周長ロッドと、
上下方向に延び、かつ前記周長ロッドの上下方向の支持をする、トンネル幅方向に離間して配置された一対の縦ロッドと、
トンネル幅方向に延び、かつ前記周長ロッドのトンネル幅方向の支持をする横ロッドと、
前記縦ロッドに連結され、かつこの連結部から内上方に延びる部位が前記横ロッドに連結される斜ロッドと、
上下方向に伸縮して前記縦ロッドを上下に移動させる伸縮機構と、を有する、
請求項1又は請求項2記載の覆工コンクリートの養生装置。 - 前記周長ロッドは、トンネル延長方向に間隔をおいて複数配置され、
この複数の周長ロッドの少なくとも一方の端部は、それぞれトンネル延長方向に延びる延長ロッドに連結され、
この延長ロッドが、前記トンネルの坑内側に引寄せ可能とされている、
請求項3記載の覆工コンクリートの養生装置。
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