JP5203048B2 - ロックボルト構造体及びその引張耐力試験方法 - Google Patents
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Description
このようなロックボルト92、ナット93及びプレート94からなるロックボルト構造体91は、通常全て鋼材からなり、プレート94に180kN程度の引張力が加わっても、各部材92、93、94が破損することがない。
また、ロックボルト構造体が設けられているまま施工面を掘削する場合は、掘削刃がロックボルト構造体と接触して大きく摩耗する。更に、ロックボルト構造体は鋼製であるため重量物であり、運搬時や施工時の作業性が悪い。また、鋼材を製造する際のCO2排出量が多いため地球温暖化を促進させる一因となる。
1.外周面に螺旋状の山部を具備するロックボルトと、該ロックボルトに螺合するナットと、該ロックボルトに挿通されるプレートと、を備えるロックボルト構造体であって、上記ロックボルトは熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製であり、上記ナットは熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製であり、上記ロックボルトがねじ込まれる螺合孔と、該螺合孔と同一軸であり且つ該螺合孔の一端面側が細くなるテーパ面を具備し、上記プレートに挿入される挿入部とを備え、上記プレートは熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製であり、上記ロックボルトを挿通し、且つ上記ナットの上記挿入部が挿入され且つ上記テーパ面と接するテーパ形状の挿通孔を備え、上記プレートは、板状のプレート本体と、該プレート本体の中央部に形成され、上記ナット側に盛り上がり、且つ中心に上記挿通孔を具備する把持部とを備え、上記把持部は、上記ナット側の面の径が上記プレート本体側の面の径より細い円錐台の中心に上記挿通孔が形成された形状であることを特徴とするロックボルト構造体。
2.上記ナットの挿入部は、上記先端側から上記ロックボルトの軸方向に沿って切り込まれているスリットを備える上記1.記載のロックボルト構造体。
3.上記ロックボルトは、上記熱硬化性樹脂を含浸し且つ長さ方向に連続する棒状の長繊維状繊維物の表面に、糸状繊維物を外周軸方向で間隔をおいて螺旋状に一体的に巻き付けて締め上げ、該締め上げた糸状繊維物部が螺旋状の凹状溝部を形成させ且つ隣合う該凹状溝部の間隔の間が凸状の上記山部を形成させ、その後該熱硬化性樹脂を硬化させて作製される上記2.記載のロックボルト構造体。
4.上記長繊維状繊維物がガラス繊維である上記3.記載のロックボルト構造体。
5.上記プレート及び上記ナットはガラス繊維強化樹脂製である上記2.乃至上記4.のいずれかに記載のロックボルト構造体。
6.引張耐力が180kN以上である上記2.乃至5のいずれかに記載のロックボルト構造体。
7.上記ロックボルトは、中実体又は中空体である上記2.乃至6のいずれかに記載のロックボルト構造体。
8.繊維強化樹脂製のロックボルトと、該ロックボルトに螺合するナットと、該ロックボルトに挿通されるプレートと、からなるロックボルト構造体のロックボルト構造体引張耐力試験方法であって、上記ロックボルトを挿通する装着孔を備え且つ上記プレートより大きな装着板、並びに該装着板に設けられる引張部材を具備するプレート支持治具と、上記ロックボルト構造体のロックボルトと螺合する螺合孔を備えるロックボルト支持治具とを備え、試験対象のロックボルト構造体のロックボルトを上記プレート支持治具に挿通し、且つ上記ロックボルト支持治具と螺合させ、次いで、上記プレート支持治具及び上記ロックボルト支持治具を把持して引張り、該引張りにより上記ロックボルト構造体が破損したときの引張力を引張耐力とすることを特徴とするロックボルト構造体引張耐力試験方法。
9.上記ロックボルト構造体は上記1.乃至7のいずれかに記載のロックボルト構造体である上記8.記載のロックボルト構造体引張耐力試験方法。
また、鋼製ロックボルトと同様に、プレート及びナットを用いた施工方法を用いることができる。更に、ナットの挿入部がプレートの挿通孔に挿入可能であるためナットがロックボルトを把持する長さを長くしても、ナット全体の長さが鋼製のロックボルト構造体と比べて多少長い程度の長さにすることができるため、施工後も施工面から著しく突出することがなく、作業時に引っ掛かる等の作業性の問題が生じない。
更に、ナットの挿入部にスリットを備える場合は、挿入部の先端側がしなりやすくなるため、ナットの挿入部をプレートに挿入したときに先端側がロックボルト側に押しつけられて、ナットとロックボルトとが接触する面積をより増すことができるため、より短い軸長で把持してもナット及びロックボルトの一部分に力が集中して破損することなく強固にロックボルトを把持することができる。
また、ロックボルトが棒状長繊維状繊維に糸状繊維物を巻き付けて山部を形成して作製される場合は、支保部材に必要な引張耐力を得ることができる。
更に、棒状長繊維状繊維がガラス繊維である場合は、より強固な引張耐力を得ることができる。
また、プレート及びナットがガラス繊維強化樹脂製である場合は、強固な引張耐力を得ることができる。
更に、引張耐力が180kN以上である場合は、通常の鋼製ロックボルト構造体と同様の強度を備え、鋼製ロックボルト構造体と同様の用途に適用することが容易となる。
また、ロックボルトが、中実体又は中空体である場合は、本ロックボルト構造体を中実体である通常の鋼製ロックボルトと同様の施工を行うことができるし、薬液を注入する施工方法に中空体のロックボルトを用いたロックボルト構造体を用いることができる。
1.ロックボルト構造体
本発明のロックボルト構造体は、ロックボルトと、ロックボルトに螺合するナットと、ロックボルトに挿通されるプレートと、を組み上げてなることを特徴とする。また、ロックボルト、ナット及びプレートは、熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製である。
上記「熱硬化性樹脂」は、繊維強化樹脂に用いられるものであれば任意に選択することができ、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド樹脂及びフェノール樹脂等を挙げることができる。また、上記「繊維強化樹脂」に用いる繊維も任意に選択することができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維及びケプラー繊維等を挙げることができる。
ロックボルトの直径は、任意に選択することができる。この例として鋼製ロックボルトの直径と同じ22mm及び25mmを挙げることができる。
上記「棒状の長繊維状繊維物」は、熱硬化性樹脂により棒状に硬化した長繊維の繊維物である。この長繊維は、上記の繊維強化樹脂として挙げた繊維を任意に選択することができる。このうち、ガラス繊維が特に好ましい。
上記「糸状繊維物」は、長繊維状繊維物に巻き付けて締め上げることによって凹状の溝部と凸状の山部とを形成するために用いられる繊維であり、例えば、ビニロン、テトロン、ケプラー、ナイロン、ガラスヤーン及びガラスロービング等を例示することができる。
このようなテーパ面の挿入部は、プレートの挿通孔に挿入されて嵌め込まれているときに、挿入孔のテーパにより軸心側に押しつけられ、ロックボルトの把持をより強固にする。
挿入部のテーパの角度、即ち図3(a)に例示する螺合孔31の軸線方向に対する傾斜度θは、任意に選択することができ、例えば10〜20°(特に好ましくは11〜19°、更に好ましくは12〜18°)とすることができる。このような範囲の傾斜度θとすることによって、ロックボルト構造体が破損することがなく強固に把持することができる。
ナットの螺合孔の長さは、施工時及び施工後ロックボルト及びナットが破損しない程度の力で把持可能な長さとすることができる。このような長さとして、30〜100mm(特に好ましくは40〜90mm、より好ましくは40〜85mm)を挙げることができる。100mmを越えると、施工後の施工面からの突出長さが特に長くなり、作業時に頻繁に引っ掛かる等の作業性に支障が生じ、利用が難しくなるため好ましくない。また、吹付けコンクリート面に施工する場合は、二次覆工時に施工する防水シートで覆うことがあるが、ナットが防水シートに接触して破損するため好ましくない。
また、プレートは、板状のプレート本体と、プレート本体の中央部に形成され、ナット側に盛り上がり、且つ中心に挿通孔を具備する把持部とを備えることができる。プレート本体の形状は特に問わず、円板状でもよいし、角板状でもよい。特に円板状の場合は、角がないため角部に接触してけが等をすることがなく取扱いが容易である。また、把持部の形状は図4に示すようにナット側の面の径がプレート本体41側の面の径より細い円錐台の中心に挿通孔42が形成された形状である。また、リブを周設して強度を確保することができる。
プレートの挿通孔の長さは、施工時及び施工後ロックボルト及びナットが破損しない程度の力で把持可能な長さとすることができる。このような長さとして、30〜80mm(特に好ましくは40〜60mm、より好ましくは40〜50mm)を挙げることができる。80mmを越えると、施工後の施工面からの突出長さが特に長くなり、作業時に頻繁に引っ掛かる等の作業性に支障が生じ、利用が難しくなるからである。
また、この短繊維、長繊維及び織布は、上記の繊維強化樹脂として挙げた繊維を任意に選択することができる。このうち、ガラス繊維が特に好ましい。このように繊維がガラス繊維である場合は、より強固な引張耐力を得ることができる。
本ロックボルト構造体を用いて施工面を補強する施工方法は、鋼製ロックボルトを用いた通常の施工方法と同様にして行うことができる。例えば、新オーストリアトンネルメソッド等の施工方法によって行うことができる。
本発明のロックボルト構造体の引張耐力試験方法は、上記ロックボルト構造体のロックボルト構造体引張耐力試験方法であって、ロックボルトを挿通する装着孔を備え且つプレートより大きな装着板、並びに該装着板に設けられる引張部材を具備するプレート支持治具と、上記ロックボルト構造体のロックボルトと螺合する螺合孔を備えるロックボルト支持治具とを備え、試験対象のロックボルト構造体のロックボルトをプレート支持治具に挿通し、且つロックボルト支持治具と螺合させ、次いで、プレート支持治具及びロックボルト支持治具を把持して引張り、引張りによりロックボルト構造体が破損したときの引張力を引張耐力とすることを特徴とする。
本引張耐力試験方法は、本発明のロックボルト構造体に対して特に好適に適用することができるが、これに限られず、他の繊維強化樹脂製ロックボルト及びその構造体の引張耐力試験に用いることができる。
プレート支持治具及びロックボルト支持治具は、引張耐力が少なくとも180kNで破損しないことが好ましい。また、ロックボルト支持治具は、前記引張耐力において、ロックボルトの周面を破損しないようにロックボルトとの接触面積を確保することが必要である。この例として雌ネジ部分の長さを180mm以上とすることを挙げることができる。
1.ロックボルト構造体の構成
本実施例1のロックボルト構造体1は図1に示すようにロックボルト2と、ロックボルト2に螺合するナット3と、ロックボルト2に挿通されるプレート4と、からなる。
ロックボルト2は、図2に示すように直径が鋼製ロックボルトの一種と同じ25mmであって中実の長尺棒状体であり、山岳トンネルの壁面や法面等の施工面に埋め込まれる鋭端形の先端21と、雄ネジとして機能する周面に設けられた螺旋状の山部22とを備える。
このようなロックボルト2は、熱硬化性樹脂を含浸し且つ長さ方向に連続する棒状であって、長繊維でガラス繊維の長繊維状繊維物の表面に、ビニロン等の糸状繊維物を外周軸方向で間隔をおいて螺旋状に一体的に巻き付けて締め上げて、螺旋状の溝部と山部22を形成させ、その後熱硬化性樹脂を硬化させて作製した。このように作製したロックボルト2は、約1kN/mm2程度の引張耐力が得られた。
尚、本ロックボルト2は上記製造方法に限られず、他の製造方法によって作製することができる。
このとき、ナット3の挿入部32が挿通孔42内に挿入され、くさびのようにテーパ面321が挿通孔42のテーパ面431によりロックボルト2に押しつけられることにより、ロックボルト2を強固に把持する。また、スリット322によって挿入部32がより柔軟にしなうことができ、テーパ面321と挿通孔42との接触面積、並びに螺合孔31とロックボルト2の山部22との接触面積を大きくすることができるため、容易に破損することなく強固に壁面等を保持することができる。
また、本ロックボルト構造体1を用いて施工したとき、図5(b)に示すナット3及びプレート4の施工面8からの突出長Hは、約85mmであり、鋼製のプレート及びナットを用いたときの突出長である約45mmよりも突出しているが、著しく突出していないためその後の作業時に支障が出ることがない。
更に、本ロックボルト構造体1は通常の鋼製ロックボルト構造体の1/4程度の質量であるため、軽量で取扱いが容易であり、且つ製造時のCO2排出量が少ないため地球温暖化の促進抑制を図ることができる。
本実施例のロックボルト構造体1の引張耐力を次に示す試験方法で試験した。
本試験方法は、図6に示すように、ロックボルト構造体1のプレート4を支持するプレート支持治具5と、ロックボルト構造体1のロックボルト2を支持するロックボルト支持治具6とを用い、プレート支持治具5及びロックボルト支持治具6を引張試験機の引張シャフト71、72で引っ張ることによって測定される。
ロックボルト支持治具6は金属製であり、円筒形で軸心にロックボルト2と螺合可能な雌ネジを切った螺合孔62を具備する治具本体61と、治具本体61と引張シャフト72とを接続する接続部63とを備える。
その結果、引張荷重が180kNのときでも、ロックボルト構造体1が破損することがなかった。また、引張耐力試験後、ロックボルト2をロックボルト支持治具6から取り外し、山部22を目視で確認したが、削れている等の破損は見られなかった。
また、プレート4は、把持部43が突出する円板状であるがこれに限られず、角板であってもよいし、全体に厚みのある板状であってもよい。
Claims (9)
- 外周面に螺旋状の山部を具備するロックボルトと、該ロックボルトに螺合するナットと、該ロックボルトに挿通されるプレートと、を備えるロックボルト構造体であって、
上記ロックボルトは熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製であり、
上記ナットは熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製であり、上記ロックボルトがねじ込まれる螺合孔と、該螺合孔と同一軸であり且つ該螺合孔の一端面側が細くなるテーパ面を具備し、上記プレートに挿入される挿入部とを備え、
上記プレートは熱硬化性樹脂を含浸後硬化させた繊維強化樹脂製であり、上記ロックボルトを挿通し、且つ上記ナットの上記挿入部が挿入され且つ上記テーパ面と接するテーパ形状の挿通孔を備え、
上記プレートは、板状のプレート本体と、該プレート本体の中央部に形成され、上記ナット側に盛り上がり、且つ中心に上記挿通孔を具備する把持部とを備え、
上記把持部は、上記ナット側の面の径が上記プレート本体側の面の径より細い円錐台の中心に上記挿通孔が形成された形状であることを特徴とするロックボルト構造体。 - 上記ナットの挿入部は、上記先端側から上記ロックボルトの軸方向に沿って切り込まれているスリットを備える請求項1記載のロックボルト構造体。
- 上記ロックボルトは、上記熱硬化性樹脂を含浸し且つ長さ方向に連続する棒状の長繊維状繊維物の表面に、糸状繊維物を外周軸方向で間隔をおいて螺旋状に一体的に巻き付けて締め上げ、該締め上げた糸状繊維物部が螺旋状の凹状溝部を形成させ且つ隣合う該凹状溝部の間隔の間が凸状の上記山部を形成させ、その後該熱硬化性樹脂を硬化させて作製される請求項2記載のロックボルト構造体。
- 上記長繊維状繊維物がガラス繊維である請求項3記載のロックボルト構造体。
- 上記プレート及び上記ナットはガラス繊維強化樹脂製である請求項2乃至4のいずれか1項に記載のロックボルト構造体。
- 引張耐力が180kN以上である請求項2乃至5のいずれか1項に記載のロックボルト構造体。
- 上記ロックボルトは、中実体又は中空体である請求項2乃至6のいずれか1項に記載のロックボルト構造体。
- 繊維強化樹脂製のロックボルトと、該ロックボルトに螺合するナットと、該ロックボルトに挿通されるプレートと、からなるロックボルト構造体のロックボルト構造体引張耐力試験方法であって、
上記ロックボルトを挿通する装着孔を備え且つ上記プレートより大きな装着板、並びに該装着板に設けられる引張部材を具備するプレート支持治具と、上記ロックボルト構造体のロックボルトと螺合する螺合孔を備えるロックボルト支持治具とを備え、
試験対象のロックボルト構造体のロックボルトを上記プレート支持治具に挿通し、且つ上記ロックボルト支持治具と螺合させ、
次いで、上記プレート支持治具及び上記ロックボルト支持治具を把持して引張り、該引張りにより上記ロックボルト構造体が破損したときの引張力を引張耐力とすることを特徴とするロックボルト構造体引張耐力試験方法。 - 上記ロックボルト構造体は請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロックボルト構造体である請求項8に記載のロックボルト構造体引張耐力試験方法。
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