JP5199893B2 - 圧縮打錠機 - Google Patents

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Description

本発明は、一次圧縮成形物を一次圧縮とは異なる方向から二次圧縮成形することにより多層構造を有する錠剤を製造することができる圧縮打錠機に関する。
多層構造を有する錠剤としては、略円柱状であり、その柱状方向(該円柱の中心軸方向)に層をなすものが知られている。この種の錠剤は、柱状方向からの圧縮成形により製造される。このような錠剤は、複数の薬物をひとつの錠剤に保持する合剤用錠剤として有用であるが、上述の製造法からくる制限のため、錠剤の形状が柱状に限定される等の問題がある。
また、このような構造の錠剤を同種の薬物の分割錠として用いることも考えられるが、分割溝付与の困難性や形状が柱状に制限されることに由来する分割の困難性の点から、適用が困難である。
多層構造を有する別の錠剤としては錠剤内部に核を有する有核錠が知られており、合剤用錠剤あるいは割線錠として有用であるが、核を挿入しなければならないことに由来する錠剤の厚みの制約や打錠装置の複雑性等の問題がある。なお、この種の錠剤の製造は、国際公開WO03/026560号パンフレットに開示されているように異なる方向からの圧縮は行われていない。
多層構造を有する錠剤の特殊なものとしては、特開平6−9375号公報に成形物の断片を物理的あるいは化学的に結合させた錠剤が開示されている。これは合剤用錠剤あるいは分割錠として使い得るが、結合のための物理的形状の付与あるいは接着層の添加を要することや、結合のための装置および工程を要すること等の問題がある。そして成形は圧縮によらず接着である。
また、圧縮打錠において複数回圧縮することはしばしば行われるが、これは同じ方向であり、その主な目的は粒子間に存在する空気を追い出し圧縮成形後の錠剤の強度を増すためである。
一般に、一次圧縮成形物に対してその形状を変えるようなさらなる圧縮をすることは、成形物の不可逆的な破壊を引き起こすことが知られており、異なる方向からの圧縮は行われていない。
すなわち、従来は多層構造を有するものを含む圧縮成形物を、その圧縮方向とは異なる方向から再度圧縮成形して錠剤を製造することは行われておらず、したがってそのための圧縮打錠機は知られていなかった。それゆえ、合剤用錠剤や分割錠はその形状が制限されており、またそれらの製造のためには複雑な装置や工程を要するという問題があった。
本発明の課題は、一次圧縮成形の方向とは異なる方向から二次圧縮成形することで、多層構造を有しながら円柱状に制限されない形状の多層錠を製造することができる、複雑な構造を有せず、複雑な工程を必要としない圧縮打錠機を提供することである。
かかる課題は、複数の層からなり、その二つの底面が膨らみを有していてもよい円柱状の一次圧縮成形物を二次圧縮成形することにより複数の層をもつ錠剤を製造できる圧縮打錠機であって、少なくとも臼、上杵、および下杵を有し、前記臼は、概ね、平板の一部を閉曲線により平板の平面と垂直な方向に打ち抜いた形状をしており、前記上杵および下杵は前記臼の内面に適合する形状をしており、かつ二次圧縮成形時における前記臼の内面、上杵の下面、および下杵の上面のなす空間が目的とする錠剤の形状となっており、前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみが前記一次圧縮成形物を受け入れるのに適した形状を構成することができ、かつ前記二次圧縮成形の方向が一次圧縮成形物の圧縮成形方向と異なっている、圧縮打錠機により解決される。
上記課題は、前記下杵の上面の形状が、外縁部が上になるように湾曲させた形状を含んだものであり、かかる下杵およびそれに適合する臼が回転盤に取り付けられた回転式圧縮打錠機であって、湾曲させてできる谷部の方向が前記回転盤の回転運動の接線方向である圧縮打錠機により、特に好適に解決される。
本発明の圧縮打錠機によれば、複雑な装置や工程を要さずに、形状が制限されない合剤用錠剤や分割錠などの多層錠を製造することができる。
図1は、本発明の圧縮打錠機に供される一次圧縮成形物の一例を示す断面図である。
図2は、本発明の圧縮打錠機で製造される錠剤(すなわち二次圧縮成形物)の一例を示す断面図である。
図3は、本発明の圧縮打錠機における、臼の形状の一例を示す平面図である。一次圧縮成形物と併せて示されている。
図4は、本発明の圧縮打錠機の臼および下杵の一例を、柱状方向と垂直な水平方向からみた断面図である。一次圧縮成形物と併せて示されている。
図5は、本発明の圧縮打錠機の臼および下杵の一例を、柱状方向からみた断面図である。一次圧縮成形物と併せて示されている。
図6は、本発明の回転式圧縮打錠機が回転盤に設置されている状態の平面図である。
図7は、実施例1の圧縮打錠機に供される一次圧縮成形物(柱状方向の長さ6.62mm)の断面図である。
図8は、実施例1の圧縮打錠機に供される一次圧縮成形物(柱状方向の長さ6.90mm)の断面図である。
図9は、実施例1の圧縮打錠機に供される一次圧縮成形物(柱状方向の長さ7.10mm)の断面図である。
図10は、実施例1の圧縮打錠機に供される一次圧縮成形物(柱状方向の長さ7.20mm)の断面図である。
図11は、実施例1の本発明圧縮打錠機における臼の水平面による断面図である。
図12は、実施例1における判定基準で判定Aとされた錠剤の断面図である。
図13は、実施例1における判定基準で判定Bとされた錠剤の断面図である。
図14は、実施例1における判定基準で判定Cとされた錠剤の断面図である。
図15は、実施例3における比較例たる回転式圧縮打錠機の平面図である。
図16は、実施例3の本発明たる回転式圧縮打錠機の平面図である。
符号の説明
1 一次圧縮成形物
2 薬物含有層
3 添加物層
4 薬物含有層
5 円柱上の、投影した長方形に対応する点
6 円柱上の、投影した長方形に対応する点
7 円柱上の、投影した長方形に対応する点
8 円柱上の、投影した長方形に対応する点
9 円柱部の高さ
10 円柱部の直径
11 一次圧縮の方向
12 二次圧縮の方向
13 内面が楕円柱の臼
14 一次圧縮成形物の円柱上の投影した長方形に対応する点から臼または下杵の最も近い部分までの間隙
15 一次圧縮成形物の円柱上の投影した長方形に対応する点から臼または下杵の最も近い部分までの間隙
16 一次圧縮成形物の円柱上の投影した長方形に対応する点から臼または下杵の最も近い部分までの間隙
17 一次圧縮成形物の円柱上の投影した長方形に対応する点から臼または下杵の最も近い部分までの間隙
18 下杵
19 臼の高さが一次圧縮成形物の高さを越える部分
20 突起
21 回転盤
22 下杵上面の谷部の方向
23 回転盤の回転運動の接線方向
24 割線
25 第一層と第二層の境界面と割線との距離
26 第三層と第二層の境界面と割線との距離
本発明の圧縮打錠機による打錠すなわち二次圧縮成形の対象となる一次圧縮成形物は、概略、二つの底面が膨らみを有していてもよい円柱の形をなしている。
具体的には、薬物を含有する、あるいは含有しない円柱状の層が複数重なってできる円柱状の形状を基本とするが、さらにその一つまたは二つの底面が外側に膨らみを有していてもよい。かかる膨らみとしては、典型的には球面の一部をなす形状の膨らみが挙げられるが、一次圧縮成形の際に使用する下杵の上面や上杵の下面のくぼみによってつけることのできるものであれば、他の形状であってもよい。なお、ここで「円柱状」と述べたが、これは幾何学的に厳密に円柱である必要はなく、例えば円柱に近い楕円柱状のものも、本発明の圧縮打錠機の対象となる一次圧縮成形物たりうる。
一次圧縮成形物がもつ薬物は、その目的により一種類でも数種類でもよい。薬物の種類は、本発明の圧縮打錠機が行う二次圧縮成形を不可能にするものでないかぎり、その種類や含有量を問わない。
具体的には、薬物を含有する層が薬物を含まない添加物層で区切られたものが挙げられる。特に、目的の錠剤が合剤用錠剤の場合には異なる薬物が異なる層に含有され、目的の錠剤が分割錠の場合には同じ薬物が異なる層に含有される。そのようなものの好ましい例としては、目的の錠剤が合剤用錠剤の場合には、物理的な接触が好ましくない異なる2種の薬物をそれぞれ含有する2つの薬物含有層(図1の2および4)が薬物を含まないひとつの添加物層(図1の3)で区切られた3層の柱状物が挙げられる。また、目的の錠剤が分割錠の場合には、同じ薬物を含有する2つの薬物含有層(図1の2および4)が薬物を含まないひとつの添加物層(図1の3)で区切られた3層の柱状物が挙げられる。なおこれら一次圧縮は柱状方向(図1の11)になされる。
本発明の圧縮打錠機は、少なくとも臼、上杵、および下杵を有している。そのうち臼の内面および下杵の上面からなるくぼみが前記一次圧縮成形物を受け入れる。すなわち、本発明の圧縮打錠機の形態的特徴は、ひとつには臼の内面および下杵の上面からなるくぼみが、例えば本発明の圧縮打錠機に取り付けた転送盤から供給される前記一次圧縮成形物を受け入れるのに適した形状をなしている点にある。ここで、受け入れるのに適した形状とは、単に一次圧縮成形物がそのくぼみに入りうるというのみならず、最終的に意図した二次圧縮成形物の形状になるよう、くぼみの中で所定の位置に保持される確率が実用上十分に高いことを意味する。なお、下杵は臼内で上下に移動することができるから、かかるくぼみの深さは変動させることができる。通常、一次圧縮成形物の受け入れ時には浅く、打錠時には深く設定する。本発明における前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみの形状は、一次圧縮成形物の受け入れ時において受け入れに適した形状を構成できればよい。
一方、二次圧縮成形時においては、前記臼の内面、上杵の下面、および下杵の上面のなす空間が目的とする錠剤の最終形状となる。すなわち、意図する錠剤の形状から逆算して臼、上杵、下杵の形状を決定することになる。例えば、高さの低い楕円柱状の形状、ラグビーボールの形状が挙げられる。もっとも、上述したように臼の内面および下杵の上面からなるくぼみの形状は、前記一次圧縮成形物を受け入れるのに適した形状を構成することができる、という制限もあり、これと両立するものでなければならない。また、臼の内面の形状は、上杵や下杵が接した状態で上下に運動できるものでなければならない。
このことから、前記臼は、概ね、平板の二部を閉曲線により平板の平面と垂直な方向に打ち抜いた形状をしている必要があるが、臼内面以外の部分の形状は本質的でなく、例えば製造の容易性、回転盤への取り付けのしやすさ、必要な部材のコスト等を考慮して適宜定めることができる。
かかる閉曲線としては、平面上にのる閉曲線であることが好ましい。その場合には、当該閉曲線を、打ち抜くべき平板と平行な状態におき、平板に垂直な方向に閉曲線で打ち抜くことを意味する。もっとも、「打ち抜く」といってもこれは臼の形状を説明するための便宜的表現であって、現実に打ち抜いて製作されなければならないわけではない。臼の製造法は何ら限定されるものではない。
その中でも、かかる閉曲線としては左右対称のものが好ましく、上下左右が対称であるものが特に好ましい。例えば楕円(図3の13)や、長方形の短辺を外側に円弧状に膨らませた形状が挙げられる。
また、本発明における臼は、その内面上部の開口部が広がるよう、斜面状に削られた傾斜部分があってもよい(図4の13の上部参照)。
前記二次圧縮成形の方向は、意図する形状の二次圧縮成形物が得られるかぎり限定されないが、前記一次圧縮成形物の圧縮成形方向と垂直であることが好ましい。すなわち、上杵による圧縮方向と、前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみが前記一次圧縮成形物を受け入れて保持しているときの一次圧縮成形物の柱状方向とが垂直であるよう、臼、上杵、および下杵の構造を設計することが好ましい(図1の12)。その中でも、前記二次圧縮成形の方向が鉛直方向下向きであるものが特に好ましく、その場合には、前記一次圧縮成形物の柱状方向は水平方向に固定されることになる。もっとも、前記二次圧縮成形の方向が前記一次圧縮成形物の圧縮成形方向と垂直でない場合でも、前記一次圧縮成形物の柱状方向が水平方向に固定されるよう、前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみの構造が設計されているものが好ましい。
一次圧縮成形物の柱状方向が水平方向に固定されるよう設計されているものの中でも、前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみの形状としては、前記一次圧縮成形物を受け入れたとき、その一次圧縮成形物の円柱部分を水平面に投影してできる長方形の4つの頂点に対応する円柱上の4点それぞれから前記臼または下杵の最も近い部分までの間隙が−1mm〜1mmであるものが好ましい。すなわち、一次圧縮成形物を受け入れた状態で、仮に平行光線を鉛直下向きに投射した場合、仮想的水平面に投影されるであろう長方形の4つの頂点に対応する円柱上の4点(図1の5、6、7、8)それぞれから、臼の内面および下杵の上面からなるくぼみのなかで、最も近い部分までの間隙が−1mm〜1mmであると、該くぼみ内で一次圧縮成形物が意図する向きに固定され、意図するように成形される確率が高くなるので好ましい(図3の14、15、16、17)。さらに好ましくは、この間隙が−0.5mm〜0.5mmのものである。
ここで、当該間隙がマイナスの数値であるものの意味するところは、実際には大きすぎてそのままでは下杵の上面に置くことはできないものの、立体図面上、下杵や臼の内面にめり込む形で下杵の上面に置いた状態の図を敢えて描いたときの、上記4点から下杵や臼の内面までの最短距離である。実際には、臼の上に一次圧縮成形物を載せてもその大きさが大きすぎて下杵の上面までは到達せず、臼の縁の上に乗った状態になっているのであるが、この数値が上記の範囲であれば、上杵による打錠を行うと、最終的に意図する二次圧縮成形物が得られる確率が高いのである。
一方、二次圧縮成形時には前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみの深さは、前記一次圧縮成形物の高さ(すなわち円柱状部分の直径)より大きな値であるものが好ましい。なお、前述したように臼の内面上部の開口部に傾斜部がある場合には、そのような傾斜部がないものとして計算する。また、かかる深さは下杵の上面に一次圧縮成形物を置いたとき、その最も低い部分から計算する(上述のように、実際には一次圧縮成形物が大きすぎて置けないが、置けたと仮定する場合を含む)。すなわち、該くぼみに一次圧縮成形物が固定された状態で、その上端部が、くぼみの縁より低いところに位置することになる(図4および図5の19)。こうすることで、やはり意図する二次圧縮成形物が得られる確率が高くなるのである。このくぼみの深さの好適範囲は、これまでに述べてきたいずれの臼内面および下杵の上面からなるくぼみの形状についても当てはまる。
また、前記下杵の上面の形状は、外縁部が上になるように湾曲させた形状を含んだものが好ましい。例えば、楕円形の外縁部を上に湾曲させた形状や、長方形の向かい合う2辺を両端が上になるように湾曲させた形状が挙げられる。楕円形の外縁部を上に湾曲させた形状の場合は、例えば楕円の短径方向の2点が上になるように湾曲させた形状が挙げられる。この場合には、その長径方向に谷部が形成されることになる。また、長方形の向かい合う2辺を両端が上になるように湾曲させた形状の場合、長方形の向かい合う2辺は平行状態を保ち、該長方形の当該2辺の間に、それらと平行な谷を形成することになる。かかる谷部が底になり、当該2辺が同じ高さになるように下杵上面の形状が決められる。そしてこれらの谷部の方向に一次圧縮成形物の柱状方向が一致する形でこれを受け入れることになる。もっとも、ここで楕円形や長方形を湾曲させた形状に言及したのは、専ら下杵上面の形状を説明するためであり、湾曲させた楕円形や長方形の部材を取り付ける必要があるわけではない。かかる湾曲のしかたは、当該谷部の方向に垂直な面と交わる曲線が、例えば円弧、楕円弧、放物線であるものが考えられるが、一次圧縮成形物を適切に受け入れられるものである限り、これらに限定されることはない。また、この湾曲の最適化は、当業者であれば適宜なしうるものである。
この中でも、湾曲させてできる谷部の長さが、前記一次圧縮成形物の円柱状部分の長さに比べて−1〜1mmであるものが好ましく、この値が−0.5mm〜0.5mmであるものがさらに好ましい。この範囲外であると、一次圧縮成形物の柱状方向と同じ方向に二次圧縮されるなど、目的とする錠剤が適切に成形されない場合がある。なお、この値がマイナスのものは一次圧縮成形物の円柱状部分側面が前記谷部より長く、浮き上がった状態になるが(上述のように、大きすぎてそもそも下杵の上面に置けないが、置けたと仮想する場合を含む)、最終的に意図する二次圧縮成形物が得られる確率が高いのである。
また、前記下杵の上面の形状は、例えば楕円形の外縁部や長方形の向かい合う2辺を両端が上になるように湾曲させた形状を「含んだ」ものであるから、下杵の上面はこれに連続する別の形状の面が加わっていてもよい。特に、前記楕円形の長径方向や前記長方形の向かい合う2辺の延長方向に、臼内面となだらかに接するような面を有することが好ましい(例えば図4の18の左右上部)。
ここで述べた下杵の上面の形状は、これまでに述べてきたいずれの臼内面および下杵の上面からなるくぼみの形状についても当てはまる。
また、例えば分割錠とするため、割線もしくは分割のための溝を錠剤に付与するために、二次圧縮に用いる上下両方もしくは片方の杵に突起を設けてもよい。かかる突起は、好ましくは前記短径方向の外縁部が上になるように湾曲させた楕円形状の外縁部の向かい合うところや、湾曲させた長方形の向かい合う2辺のところに設けられる。
かかる突起は、上記目的の他に、一次圧縮成形物を適切な位置で二次圧縮成形するための一次圧縮成形物の位置決めとしても有効である。この突起の位置は、割線もしくは分割のための溝を入れることを主な目的とする場合は、分割位置に合うように決められる。例えば、3層からなる2分割錠で中間層に分割溝を入れたい場合には、前記短径方向の外縁部が上になるように湾曲させた楕円形状の最も高い部分や、長方形の向かい合う2辺の中央部に一つずつ、計2個の突起を有するものが好ましい。位置決めの観点からも同様である(図3および図5の20)。これら突起の形状、幅、長さは、錠剤成形を妨げるものでないかぎり特に制限はなく、例えば通常の分割錠を製造する際に用いられるものでよい。
本発明の圧縮打錠機は、通常、回転盤を有する回転式圧縮打錠機として適用される。この場合、前記臼は回転盤(図6の21)に取り付けられ、上下の杵によって圧縮成形される。この回転式圧縮打錠機においても、前述した臼、上杵、および下杵の好ましい形態はそのまま当てはまるが、さらに本発明の圧縮打錠機における下杵の上面の形状が、外縁部が上になるように湾曲させた形状を含んだものである場合、湾曲させてできる谷部の方向が前記回転盤の回転運動の接線方向(図6の23)であるよう臼を取り付けたものが好ましい(図6の22)。この方向でないと、一次圧縮成形物の柱状方向と同じ方向に二次圧縮される等、錠剤が適切に成形されない場合がある。
なお、前記臼は回転盤に取り付けるのでなく、回転盤との一体成形により製造してもよい。
本発明の圧縮打錠機で製造された錠剤の代表的な例を図2に示す。図2は一次圧縮成形物が3層の柱状であって(図1)、二次圧縮を柱状方向に対して直角方向(図1の12)とした場合に製造される錠剤である(図1の層2、3、4は、該二次圧縮によって、それぞれ図2の層2、3、4となる)。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
柱状方向に3層をなし、該柱状方向に圧縮打錠して調製した一次圧縮成形物において、円柱状部分の直径一定(4.50mm)で種々の柱状方向の長さ(6.62mm〜7.20mm)を有するもの(図7〜図10)を、大きさ一定の楕円形の臼(図11)内下杵上に、柱状方向が水平方向になるよう置き、上下の杵で圧縮打錠して二次圧縮成形物を製造した。この際、上杵として割線付与用の突起を有するものを使用し、該錠剤の中心線に割線(図12の24)が付与されるようにした。また、該割線の位置に対する中間層(図12の3)のずれを指標(表1参照)として、二次圧縮打錠の精度を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005199893
Figure 0005199893
一次圧縮成形物の長軸が6.90mmの場合、判定Aが最も多くなり、二次圧縮打錠の精度が最も高かった。このとき、一次圧縮成形物と臼の大きさを比較すると、一次圧縮成形物における上述の4点(図9の5〜8)が、臼の4点とちょうど接している(図11)。そして臼が一次圧縮成形物を柱状方向が水平方向になるよう置いたときの該一次圧縮成形物の当該4点となす該間隙が0mmより小さくても(−0.2mm:図9、−0.4mm:図10)、大きくても(+0.1mm:図7)二次圧縮打錠精度が低下した。ここで、間隙がマイナスの数値は、前述したように仮想的に臼内に一次圧縮成形物をめり込ませたと仮定した場合の数値である。
[実施例2]
柱状方向に3層をなし、該柱状方向に圧縮打錠して調製した一次圧縮成形物において円柱状部分の直径一定(4.50mm)で、柱状方向の長さがそれぞれ4.90mm(図7)、5.20mm、5.38mm、5.48mmのものを、大きさ一定の楕円形の臼内下杵上に、柱状方向が水平方向になるよう置き、上下の杵で圧縮打錠して二次圧縮成形物を製造した。下杵上面の形状は、その外縁部が上になるように湾曲させた形状を含んだものであり、その湾曲させてできる谷部の長さが5.20mmのものを使用した。この際、上杵として割線付与用の突起を有するものを使用し、該錠剤の中心線に割線(図12の24)が付与されるようにした。また、該割線の位置に対する中間層(図12の3)のずれを指標(表1参照)として、判定Aとなる百分率で二次圧縮打錠の精度を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005199893
下杵の湾曲させてできる谷部の長さが、一次圧縮成形物の円柱部分の長さに比べて、短くても(−0.30mm:図7)、長くても(+0.18mm、+0.28mm)二次圧縮打錠精度が低下した。
[実施例3]
本発明の臼が回転盤に取り付けられた回転式圧縮打錠機を用いて、該回転盤の回転運動の接線方向(図15および図16の23)に対して、前記下杵の谷部の方向(図15および図16の22)を変えて二次圧縮打錠の精度を検討した。精度の評価は実施例1と同じである。
結果を表4に示す。
Figure 0005199893
本発明で用いられる臼が回転盤に取り付けられた回転式圧縮打錠機である場合、前記下杵の谷部の方向を回転盤の回転運動の接線方向とすることで二次圧縮打錠の精度が向上した。
本発明の圧縮打錠機は、医薬品たる多層錠の製造に用いられる。

Claims (11)

  1. 複数の層からなり、円柱状の、もしくはその一つまたは二つの底面が膨らみを有する円柱状の一次圧縮成形物を二次圧縮成形することにより複数の層をもつ錠剤を製造できる圧縮打錠機であって、
    少なくとも臼、上杵、および下杵を有し、
    前記臼は、平板の一部を閉曲線により平板の平面と垂直な方向に打ち抜いた形状をしており、
    前記上杵および下杵は前記臼の内面に適合する形状をしており、かつ二次圧縮成形時における前記臼の内面、上杵の下面、および下杵の上面のなす空間が目的とする錠剤の形状となっており、
    前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみが前記一次圧縮成形物を受け入れるのに適した形状を構成することができ、
    前記下杵の上面の形状が、短径方向の外縁部が上になるように湾曲させた楕円形状を含んだものであり、かつ
    前記二次圧縮成形の方向が一次圧縮成形物の圧縮成形方向と異なっている、
    圧縮打錠機。
  2. 閉曲線が平面上にのる上下左右対称な形状である、請求項1に記載の圧縮打錠機。
  3. 前記二次圧縮成形の方向が前記一次圧縮成形物の圧縮成形方向と垂直である請求項1または2に記載の圧縮打錠機。
  4. 前記二次圧縮成形の方向が鉛直方向下向きである、請求項1から3のいずれかに記載の圧縮打錠機。
  5. 前記下杵の上面が、前記一次圧縮成形物を水平方向に受け入れることができる形状を構成することができる、請求項1から4のいずれかに記載の圧縮打錠機。
  6. 前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみが前記一次圧縮成形物を受け入れたとき、前記一次圧縮成形物の円柱部分を水平面に投影してできる長方形の4つの頂点に対応する円柱上の4点それぞれから前記臼または下杵の最も近い部分までの間隙が−1mm〜1mmである、請求項5に記載の圧縮打錠機。
  7. 前記臼の内面および下杵の上面からなるくぼみの深さが、前記一次圧縮成形物の受け入れ時には0mm以上、かつ前記一次圧縮成形物の円柱状部分の半径以下であり、二次圧縮成形時には前記一次圧縮成形物の高さより大きな値となるよう変化する、請求項1から6のいずれかに記載の圧縮打錠機。
  8. 前記下杵の上面を湾曲させてできる谷部の長さが前記一次圧縮成形物の円柱状部分の長さに比べて−1〜1mmである請求項1から7のいずれかに記載の圧縮打錠機。
  9. 前記下杵の上面が、短径方向の外縁部が上になるように湾曲させた楕円形状を含んだ形状であるところ、その外縁部の向かい合うのところに、さらに突起を備えた請求項8に記載の圧縮打錠機。
  10. 前記突起が二つである請求項に記載の圧縮打錠機。
  11. 前記下杵およびそれに適合する臼が回転盤に取り付けられた回転式圧縮打錠機であって、前記下杵の上面を湾曲させてできる谷部の方向が前記回転盤の回転運動の接線方向である請求項から10のいずれかに記載の圧縮打錠機。
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