JP5198160B2 - 仮設用浄水風呂設備 - Google Patents

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Description

本発明は、地震等の災害を受けた被災者やキャンプをする者に仮設の浴場を提供するための仮設用浄水風呂設備に関するものである。
地震などの大規模災害が起きたときには、水道等のインフラ設備(インフラストラクチャー設備)が損傷しているため、一般家庭での入浴は困難となる。またインフラ設備のない(或いは乏しい)地域でキャンプする場合も、入浴することは困難となる。そこで仮設の風呂設備を当該地域に搬送、設置することが提案されている。
仮設の風呂設備としては、例えば特許文献1に、木やプラスチック製の側壁部及び天井部と床部を蝶番で連接することにより組立自在とした容器を構成し、この中に浴槽を備え付けたものが提案されている。またこれに濾過機能を備えた給水装置、使用後の排水を浄化する浄化設備、更に追い炊き機能を備えることも示されている。
また特許文献2には、2台のボイラーを備えた給湯器を移動可能な台車に搭載した野外入浴シャワー車が開示され、給湯器にシャワースタンドを接続したり、給湯器から浴槽に給湯することが示されている。
特開平11−76088号公報 特開2001−10400号公報
ところで震災等の場合には多人数が入浴できる設備が望まれるところ、多人数が一度に使用可能とするには設備を大きくする必要があり、この設備を運ぶための車輌等も大型のものが必要となる。
また風呂の使用にあたっては、浴槽の水が入浴により汚れることから一般に掛け流しとされるが、被災地等では水が極めて貴重であるので、斯様な使用状態は好ましくない。そこで、濾過器を備えた循環式風呂にすることが考えられるが、新たに濾過器が必要となるため、更に仮設風呂設備が大型化し、搬送車輌等もより大きいものが必要となる。
一方、被災地等に仮設の風呂設備を運ぶにあたっては、汎用性の観点等から、特別に大型のものを準備するよりも、救援物資等を運ぶための既存のヘリコプター等の輸送機や輸送車輌を利用できる方が望ましい。
そこで本発明は上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、多人数用でありながらも比較的コンパクトに構成され、濾過機能も備えた仮設用浄水風呂設備を提供することにある。
風呂設備を稼動するにあたっての条件としては、(1)浴槽への湯張り時は給湯器に高い給湯能力が求められること、(2)人が入浴している間は浴槽への給湯と、シャワー等の個別給水栓への給湯との両方が必要であること、(3)湯を循環利用するにあたっては浴槽の湯(水)を浄化し、追い炊きして供給する必要があることが挙げられる。
ところで人が入浴使用している間は浴槽への給湯量は少なくて済む。また浴槽の湯のみを循環させるのであれば、これを追い炊きする給湯器や、浄化する浄水機は比較的小型のもので済む。加えて、湯の使用容量に応じた1台の大型給湯器の場合では、サイズが大きすぎるために一般的な輸送用ヘリコプター等に積載できないが、小型の給湯器等を複数組み合わせた場合には、組合せ配置を工夫することで積層可能であり、且つこの複数の小型の給湯器により上記湯の使用容量を確保できる。
本発明者らはこれらの点に着目し、下記の本発明を完成した。なお、以下では本発明の理解を容易にする為に後述の図面で用いた符号を適宜付して説明するが、本発明は図示例に限定されるものではなく、また符号により発明特定事項が特定されるものでもない。
本発明に係る仮設用浄水風呂設備は、浴室テントと浴槽11と個別給水栓12を備えた仮設風呂設備であって、水の浄化装置14と、複数の給湯器15(15a,15b,15c)を備え、前記浄化装置14には、入側として、前記浴槽11中の水を戻し入れる浴槽水導入ライン16が設けられると共に、出側として、浄化された水を導出する浄水導出ライン17が設けられ、前記複数の給湯器のうちの一部の給湯器15aには、入側として、系外から供給される浄化水を導入する浄化水導入ライン19aと前記浄水導出ライン17が切替可能に接続されると共に、出側として、前記浴槽11中に温湯を供給する第1の給湯ライン18が接続され、残りの給湯器15b,15cには、入側として、系外から供給される浄化水を導入する浄化水導入ライン19b,19cが接続されると共に、出側として、前記浴槽11或いは前記個別給水栓12に温湯を切替可能に供給する第2の給湯ライン21が接続されたものであることを特徴とする。
上記の様に本発明では給湯器を複数設け、このうちの一部の給湯器についてのみ浴槽の水を浄化循環する循環ループに組み込み、残りの給湯器については個別給水栓側に給湯するか、或いは湯張り時に浴槽への給湯に用いる。この様に給湯器を複数としてそれぞれに役割分担させることで、風呂の稼動条件を確保しつつ、個々の給湯器や浄水機の小型化を図ることができ、その結果、汎用の輸送機等での輸送が可能となる。
なお、上記「一部の給湯器」の台数、上記「残りの給湯器」の台数に関しては、単数或いは複数のいずれであっても良い。因みに複数備える場合には、これらを並列に接続することとなる。
また、上記給湯器15a,15b,15cにそれぞれ接続される上記浄化水導入ライン19a,19b,19cとしては、上記系外から供給される浄化水を当該系外から1本の浄化水導入ライン19で導き、これを分岐させて上記複数の給湯器15a,15b,15cのそれぞれに導入するようにしても良いし、或いは当該系外からそれぞれ別の浄化水導入ラインで給湯器15a,15b,15cに導入するようにしても良い。
更に本発明に係る仮設用浄水風呂設備において、前記浄化装置14並びに前記複数の給湯器15は、それぞれ高さが1600mm以下、長さが2800mm以下、幅が1600mm以下、質量が1500kg以下であることが好ましい。
一般的な輸送ヘリコプターとして、例えば荷室の高さ1940mm、幅2400mm、長さ8000mmのものが知られているところ、浄化装置14や給湯器15が上記の様なサイズ,質量であれば、これを上記輸送ヘリコプターに搭載することができる。例えば1台の浄化装置と3台の給湯器を組み合わせた仮設用浄水風呂設備の場合では、上記輸送ヘリコプター2機で輸送できる。また斯様なサイズの給湯器3台を使用すれば例えば1時間あたり30〜40人程の多人数の入浴が可能である。
また本発明に係る仮設用浄水風呂設備においては、前記浴室テントの床面に連なって床面上の湯を排出するU字溝が、シート材をもって構成されたものであることが好ましい。
更にこのU字溝を備えた風呂設備において、前記浴室テントを構成するシートの壁面(壁面シート22)の下方部が、U字溝状に折り返されると共に、該U字溝27の底27cが前記浴室テント内の浴室の床面よりも低く位置し、前記U字溝27を構成するシートの浴室内側の溝壁23に、前記床面高さに合わせた排水口25が形成されてなることがより好ましい(例えば図3,4参照)。
或いはこのU字溝を備えた風呂設備において、前記浴室テントを構成するシートのうちの壁面シート22が、その下方部分において複数に分離したものであり、この複数の壁面シート22のうちの1つのシート22cが床面シート26に連通してU字溝27を構成し、このU字溝27の底27cが前記浴室テント内の浴室の床面よりも低く位置してなり、該シート22cと上記複数の壁面シート22のうちの他のシート22bとが隙間55を形成して配置されたものであることがより好ましい(例えば図6参照)。
仮設用浄水風呂設備は、例えば学校のグラウンドや駐車場等に設置されることが想定されるが、該風呂設備が下水に向かう側溝に隣接して設置されるとは限らない。このため、風呂設備の浴室から溢れ出た排水が設置場所周辺を水浸しにすることがある。
この点において本発明では、上記の如く、壁面シートの下方部が下をU字状にして折り返されて溝が形成され、この溝に向かって開口した排水口25や隙間55が設けられているので、この折り返されたシート部分によるU字溝27が排水溝となり、そして浴室の床面を流れる排水が、浴室内側の溝壁(浴室内側シート)23に設けられた上記排水口25、或いは上記隙間55を通して上記排水溝(U字溝27)に入る。こうして浴室からの排水が集められるので、風呂設備の設置場所周辺を水浸しにすることが防止される。なおこの様にして排水を集めると、ポンプで汲み上げて適切な場所に排水することが可能となる。或いは集めた排水について簡易な浄水等を行い、水洗トイレ用の流し水に用いることも可能である。
加えて本発明に係る仮設用浄水風呂設備において、前記浄化水導入ライン19の上流側に、限外濾過部33が接続され、この更に上流側に砂濾過部34が接続されていることが好ましい。なお限外濾過部とは、限外濾過膜(UF(Ultrafiltration)膜)による膜濾過を行うものである。
原水を上記砂濾過部34と上記限外濾過部33という2段階の濾過部を経由させることによって、たとえ原水が濁水であっても高品質な水(湯)を浴槽11や個別給水栓12に供給可能となる。また限外濾過部33は閉塞し易いが、先に砂濾過部34が或る程度汚染物質を補足するので、限外濾過部33への負荷が低減され、早期に閉塞することが防止される。
更に本発明に係る仮設用浄水風呂設備において、それぞれ前記限外濾過部33及び前記砂濾過部34には、逆洗用水導入ラインと殺菌剤注入ラインが接続されていることが好ましい。
これによれば、限外濾過部33や砂濾過部34が閉塞した場合に、逆洗用水導入ラインから水を供給すると共に殺菌剤注入ラインから殺菌剤を注入することにより、固体の汚染物質を押し出しつつ殺菌することができる。なお限外濾過部33と砂濾過部34は上述の通り直列に接続されているところ、仮に下流側の限外濾過部33のみに逆洗用水導入ラインと殺菌剤注入ラインを設け、限外濾過部33から砂濾過部34に向けて一度に両方を逆洗再生する様にすると、限外濾過部33を洗浄した汚染水により、砂濾過部34の下流側(砂濾過済み液が排出される側)が汚染される懸念がある。このため限外濾過部33にも逆洗水排出ラインを設け、限外濾過部33、砂濾過部34を、それぞれに設けられた逆洗用水導入ラインと殺菌剤注入ラインから別々に逆洗再生することが好ましい。
本発明の仮設用浄水風呂設備の使用法としては、系外から供給される浄化水を、並列に設けられた複数の給湯器15(15a,15b,15c)を介して浴槽11に給湯する湯張り手段と、前記浴槽11内の温湯を、浄化装置14及び前記複数の給湯器のうちの一部の給湯器15aを介して前記浴槽11内に循環させる循環手段と、前記系外から供給される浄化水を、前記複数の給湯器のうちの残りの給湯器15b,15cを介して個別給水栓12に給湯する個別給湯手段と、前記浴槽11内の温湯を、浄化装置14を介して系外に放出する放出手段とを備える様にすると良い。
始めに浴槽11に湯を張るときは、浴槽11の容量分の給湯を行うことになるので、給湯器の容量が小さいと、湯を張り終えるまでに時間が長くかかるが、上記の様に複数の給湯器15a,15b,15cの全てにより浴槽11に給湯することで(湯張り手段)、湯張りを短時間で終えることができる。
浴槽11に湯を張り終えた後の風呂使用時においては、上記複数の給湯器15a,15b,15cを振り分け、上記の如くその一部の給湯器15aを循環ループに組み入れ、浴槽11の湯を浄水装置14で浄化しつつ追い炊きする(循環手段)。これにより、浴槽11の湯温低下を防止できると共に、湯を清潔に保つことができ、且つ流し捨てせずに貴重な水の有効利用を図ることができる。湯張りを終えた後は、浴槽11に対して大きな給湯能力は必要ないので、上記の様に一部の給湯器15aのみであっても十分に追い炊きが可能である。一方、残りの給湯器15b,15cについては、シャワーやカランといった個別給水栓12に湯を供給するために用いることで(個別給湯手段)、十分な洗い湯が確保できる。
また風呂の使用を終えた後は、浴槽11内の温湯を浄化装置14を介して系外に放出可能とすることで(放出手段)、残り湯を例えば洗濯用水といった中水として用いることができ、水の有効利用を図ることができる。
この様に湯張り手段、循環手段及び個別給湯手段、放出手段を切り換え、必要なときに必要に応じた給湯を行うことにより、仮設用浄水風呂設備を比較的コンパクトにしつつも、多人数用の大型風呂として稼動することができ、また貴重な水を有効に利用することができる。
なお上述の様に「一部の給湯器」の台数、「残りの給湯器」の台数について特に制限はないが、「一部の給湯器」を1台とし、「残りの給湯器」を複数台とする態様がより好ましい。循環ループにより浴槽の湯を追い炊きする際にはあまり高い給湯能力は必要とされないことから、1台で賄うことができると考えられ、一方、個別給水栓への給湯量としては、利用者の湯の使用状況により大きく変動することから、これを許容できるようにする為、複数台とするのが望ましいのである。
本発明に係る仮設用浄水風呂設備によれば、小型の給湯器を複数使用し、それぞれの給湯器を役割分担させると共に、浄化装置に接続するのは特定の給湯器のみとしているので、浄化機能を備えた多人数用の風呂設備でありながらも、比較的コンパクトであり、既存の輸送機や輸送車輌を用いて輸送することが可能となる。
図1は本発明の一実施形態に係る仮設用浄水風呂設備10を示すブロック構成図である。図2はこの仮設用浄水風呂設備10に浄水装置30,50を付加した場合の全体構成図であり、付帯設備(貯水槽13、水源)も併せて示している。
仮設用浄水風呂設備10は浴室テントハウス200と給湯装置部分100を備える。
図1に示すように、給湯装置部分100には水の浄化装置14が1台と、3台の給湯器15a,15b,15c(図2ではこれら3台の給湯器を合わせて符号15で表している)が備えられている。浄化装置14には砂濾過器が備えられ、この砂濾過器は6m3/hの濾過能力を有する。給湯器15a,15b,15cはそれぞれ50,000kcal/hの給湯出力を有する。また給湯器15a,15b,15cには加熱燃料を供給するための灯油タンク45が接続されている。これら浄化装置14や給湯器15a,15b,15cの個々のサイズはいずれも高さが1600mm以下、長さが2800mm以下、幅が1600mm以下、質量が1500kg以下である。
系外には容量10m3の貯水槽13が備えられており、この貯水槽13に蓄えられた浄化水を浄化水導入ライン19(19a,19b,19c,19d)を通じ、送水ポンプ46によって各給湯器15a,15b,15cに供給できるようになっている。なお貯水槽13に接続された浄化水導入ライン19dは浄化水導入ライン19a,19b,19cに分岐し、それぞれ給湯器15a,15b,15cに接続されている。またこの分岐する上流側には更に分岐ライン19eが形成されており、貯水槽13の浄化水を飲料ヘッダーに供給できるようにもなっている。
3台の給湯器のうちの1台である給湯器15aの出側には第1の給湯ライン18が接続され、浴室テントハウス200の浴槽11に温湯を供給できるようになっている。残りの2台の給湯器15b,15cの出側には第2の給湯ライン21が接続され、浴室テントハウス200の浴槽11或いは個別給水栓12に切替可能に温湯を供給できるようになっている。この切替は浴槽11側への給湯を制御する手動ストップ弁21aによって行われる。なお個別給水栓12側においては手動三方弁21bによってシャワー12aとカラン12bに切替可能となっている。
浄化装置14の入側には浴槽11からの浴槽水導入ライン16が接続され、浴槽11内の湯(水)を循環ポンプ41によって浄化装置14に導入できるようになっている。なお浴槽水導入ライン16にはエアキャッチャ42が接続されており、湯に含有された気泡(空気)を除去できるようになっている。
浄化装置14の出側には浄水導出ライン17が接続され、上記3台の給湯器のうちの1台である給湯器15aに、浄化装置14で浄化された水を供給できるようになっている。なおこの浄水導出ライン17と上記浄化水導入ライン19aは給湯器15aの入側部近傍で合流して給湯器15aに接続される構成となっている。浄水導出ライン17と上記浄化水導入ライン19aのいずれのラインから水を給湯器15aに供給するかは、バルブ43a,43bで制御できるようになっている。
また浄水導出ライン17には放出ライン49が分岐して設けられており、浄化装置14で浄化した浴槽水を中水として洗濯等に用いることができるようになっている。
上述の様に給湯器15aからの湯は第1の給湯ライン18によって浴槽11に供給されるが、第1の給湯ライン18には薬液タンク44が接続され、次亜塩素酸ソーダ等の薬液を湯に添加できるようになっている。因みに厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」によって、公衆浴場での浴槽内の湯に所定量の塩素を含有させる旨が規定されているので、これに適合させるに際して上記薬液タンク44から適宜薬液を添加すると良い。
なお上述から分かるように3台の給湯器15a,15b,15cは並列に接続されて、浴槽11や個別給水栓12に給湯するようになっている。
また給湯装置部分100には発電機47が備えられており、上記の各種ポンプや給湯器15,浄化装置14の駆動のための電気を供給できるようになっている。なお発電機47には動力制御盤48が接続されている。また発電機47は浴室テントハウス200における照明等や、下述の浄水装置30への電源供給手段としても利用できるようになっている。
図2に示すように、貯水槽13には浄水装置30からの浄水を導く上流側浄化水導入ライン35が接続されている。なお浄水装置30からの浄水を、貯水槽13を経由させずに浄水導入ライン19から給湯器15に導入するようにしても良い。
浄水装置30には砂濾過部34と限外濾過部33が設けられており、河川や池、プール等の水(原水)を導入して浄化する様になっている。なお限外濾過部33は限外濾過膜(UF膜)を備え、これにより膜濾過を行うものである。浄水装置30では、上流側(原水側)から砂濾過部34、限外濾過部33の順に直列に接続されており、斯様に2段階で浄化することで高品質な水の提供ができるようになっている。
加えて浄水装置30には、逆洗用水導入ライン(図示せず)と殺菌剤注入ライン(図示せず)が接続されており、適宜逆洗再生及び殺菌ができるようになっている。
更に浄水装置30の下流側に、逆浸透膜(RO(Reverse Osmosis)膜)による浄水装置50を接続し、この浄水装置50で浄化した水を給湯器15に供給するようにしても良い。RO膜による浄水装置50によれば、例えば原水が海水の場合も淡水化した浄水を提供することができる。
なお図2に示すように灯油タンク45を除く給湯装置部分100を1つの台車に乗せ、容易に移動可能となるように構成しても良い。また浄水装置30,50もそれぞれ台車上に配置し、容易に移動可能となるようにしても良い。
次に、本実施形態の仮設用浄水風呂設備10における浴室テントハウス200の構成について説明する。
図3は仮設用浄水風呂設備10における浴室テントハウス200の一例を表す断面図であり、図4はこの浴室テントハウス200における側壁の下方部分を表す一部切り欠き斜視図であって、洗い場内から見た様子である。また図5の(a)は図4に示すD−D線断面の端面図である。
浴室テントハウス200は、その内部が洗い場と脱衣場に分けられており、洗い場には浴槽11(例えば容量3.7m3)と複数の個別給水栓12(シャワー12aやカラン12b)(図3においては図示せず、図1参照)が備えられている。浴槽11はパイプフレームに防水シートを張って浴槽形状としたものである。
図3に示すように、浴室テントハウス200における床部分にはパレット31が敷き詰められ、浴室の床面26aが地面(GL)より1段高くなっている。
浴室テントハウス200の外郭である浴室テントは、金属製の支柱32に浴室用テントシート20が張られたものである。この浴室用テントシート20は天井シート28と壁面シート22、及び床面シート26からなる。床面シート26はその端部26eで壁面シート22に隙間なく接続され、この接続部分から水漏れが生じないようになっている。
壁面シート22の端部にはフック24が取り付けられており、このフック24を横支柱32a(床面26aより上方に位置する)に引っ掛けて、壁面シート22の下方部を内側に向けてU字状に折り返し、U字溝27を形作る様になっている。このU字溝27はパレット31よりも外側に位置し、これにより浴室の床面26aよりもU字溝の底27cが低く位置するものとなっている。更に図4に示すように、U字溝27の底27cには横支柱32aに沿って傾斜が設けられている。なおこの傾斜はシートの折返し長さを調節することにより形成される。
U字溝27を構成するシート(壁面シート22の下方部)における浴室内側の溝壁23には、排水口25が設けられている。この排水口25はその開口下端が浴室の床面26aの高さとなるように形成されている。
次に上記仮設用浄水風呂設備10の使用時について説明する。
まず給湯装置部分100の動作について説明する。
始めに浴槽11に湯を張る際は、貯水槽13から供給された浄化水を用い、上記3台の給湯器15a,15b,15cの全て(第1,2の給湯ライン18,21)から浴槽11に給湯する(湯張り手段)。1つ1つの給湯器は容量が小さいものであるが、3台全てを用いて給湯することにより浴槽11への湯張りを短時間で終えることが可能となる。
浴槽11に湯を張り終えて人が入浴するときには、浴槽水導入ライン16,浄化装置14,給湯器15a,第1の給湯ライン18で形成される循環ループによって、浴槽11の湯を浄化、追い炊きしつつ循環させるので(循環手段)、貴重な水を無駄にすることなく利用できる。またこの循環においては、給湯能力は小さいもので良いから、1台の給湯器15aのみであっても十分に追い炊き給湯を果たし得る。なお浴槽11の湯が減ったときには、適宜浄化水導入ライン19aより浄化水を給湯器15aに導入して、浴槽11に供給すると良い。他方、洗い場でのシャワー12aやカラン12bへの給湯は、残りの給湯器15b,15c(第2の給湯ライン21)から行うことで(個別給湯手段)、洗い湯が確保される。
風呂の使用後は、浴槽11内の残り湯を浴槽水導入ライン16から浄化装置14を介して放出ライン14から系外に導出できるので(放出手段)、浄化装置14で浄化した浴槽水を洗濯用水等として利用することもできる。
また貯水槽13に十分な量の浄化水がない場合等においては、その上流側に配置された浄水装置30によって河川等の原水を浄化して、貯水槽13に供給すると良い。また貯水槽13を経由せずに、浄水装置30から浄化水導入ライン19より給湯器15a,15b,15cに供給するようにしても良い。
以上のように本実施形態の仮設用浄水風呂設備10によれば、全ての前記給湯器15a,15b,15cから前記第1,第2の給湯ラインを経て前記浴槽11に給湯する場合(湯張り手段)と、前記浴槽11内の水を前記浄化装置14及び前記一部の給湯器15aを経て循環させると共に、給湯器15b,15cから個別給水栓12に給湯する場合(循環手段、個別給湯手段)に切替可能であるので、場面に応じて切り替えて使用することにより、複数の給湯器15としてはそれぞれ比較的小型のものでありながらも、十分に多人数用の風呂に対応できる。例えば本実施形態では34人/時間程度の入浴人数が試算される。
次に、風呂使用時における浴室テントハウス200について、図3,4を参照しつつ述べる。
洗い場では、浴槽11から溢れた湯や、個別給水栓12(シャワー12a、カラン12b)からの湯が床面シート26上に流れることになるが、この余分な湯は、壁面シート22における浴室内側溝壁23の排水口25からU字溝27内に流れる(図4に示す矢印A)。そしてこのU字溝27内の排水(湯)はU字溝27の傾斜に沿って流れて集められ(図4に示す矢印B)、汲み上げポンプ等を用いて適切な排水場所に送水される。従って仮設用浄水風呂設備の浴室テントハウス200の設置場所周辺が水浸しにならない。
次に仮設用浄水風呂設備10の輸送時について述べる。
上述の様に給湯器15a,15b,15cはいずれも小型であるので、その配置を工夫することで、例えば荷室が高さ1940mm×幅2400mm×長さ8000mmの輸送ヘリコプターに搭載可能なサイズにすることができる。具体的には上記荷室サイズの輸送ヘリコプターを3機用い、このうちの1機には上記小型給湯器15b,15cの2台積み込み、他の1機に上記小型給湯器15aと浄化装置14を積み込み、残りの1機に浴室テントハウス200の各部材を積み込むと良い。
なお上記の様に輸送ヘリコプター1機に対し小型給湯器等を2台積み込んだ場合でも、輸送ヘリコプターの荷室に余裕スペースができるので、積み荷の固定スペース(積み荷をワイヤーで固定するためのスペース)や搭乗員の作業スペースが確保され、輸送作業が円滑に行える。また浴室テントハウス200の各部材については、支柱32や個別給水栓12を分解し、テントシート20や浴槽11を折り畳むことで、コンパクト化することができる。この浴室テントハウス200の各部材を、給湯器15a,15b,15cや浄化装置14を積み込む輸送ヘリコプターの空きスペースに積み込むようにしても良い。
因みに上記複数の小型給湯器15a,15b,15cを総合した給湯能力と同程度の給湯能力を有する1台の大型給湯器の場合では、サイズが大きすぎて、上記荷室サイズの輸送ヘリコプターに搭載することができない。これに対して本実施形態では上述の通り上記荷室サイズの輸送ヘリコプターに搭載できるので、風呂設備の被災地等への輸送において便利である。
以上のように本発明に係る仮設用浄水風呂設備に関して、例を示す図面を参照しつつ具体的に説明したが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
例えば図5(b)に示すように、壁面シート22の下方部を外側に向けてU字状に折り返してU字溝を形作っても良い。
或いは上記実施形態や図5(b)に示す例では、壁面シート22が一連のシートであったが、図5(c)に示すように、壁面シートの上方部61と下方部62を切り離して構成したものであっても良い。
また図5(d)に示すように、壁面シート22の下方部を内側に折り返してU字溝を形成し、更に折り返して袋状の浴室内側溝壁23としても良い。この場合は溝壁23に支柱通し孔を設けて、溝壁23における袋内に支柱32を通すようにできる。なおこの態様においては、排水口25の開口縁をしっかりと接合し、上記袋内に水が入らないようにする。
加えて上記実施形態では、浴室床面上の余分な湯を、壁面シートに形成された孔(排水口25)を通してU字溝27に排水する構成であったが、本発明はこれに限るものではなく、例えば図6に示すように、壁面のシート22cとシート22bとにより形成された隙間55を通してU字溝27に排水する様に構成したものであっても良い。
以下にこの態様について詳しく説明する。
図6の(a)はこの態様における浴室テントハウスの側壁の下方部分を表す切り欠き斜視図であり、(b)は(a)に示すE−E線断面の端面図である。
壁面シート22はその下方部分が、壁本体シート22a及び溝形成シート22c、溝覆いシート22bにより構成されている。床面シート26はその端部26eにて溝形成シート22cの一方端22c1に溶着され、床面シート26と溝形成シート22cが連通したものとなっている。この溝形成シート22cの他方端22c2にはフック24が取り付けられており、このフック24を横支柱32a(床面26aより上方に位置する)に引っ掛けることで、溝形成シート22cがU字状に折り返されてU字溝27を形作っている。このU字溝27はパレット31よりも外側に位置し、これにより浴室の床面26aよりもU字溝の底27cが低く位置するものとなっている。
一方、壁本体シート22aには溝覆いシート22bの上端部分22b1が溶着され(溶着部22d)、下側が分離した状態になっている。これら壁本体シート22aと溝覆いシート22bの間に、上記横支柱32a及び溝形成シート22cの他方端22c2側が位置し、上記U字溝27の内側に溝覆いシート22bの下端部分22b2が垂れ下がっている。こうして溝覆いシート22bと溝形成シート22cの間に隙間55が形成された状態となる。
床面シート26上を流れる余分な湯は、上記隙間55からU字溝27内に流れ(矢印A)、上記と同様に、U字溝27内の排水(湯)はU字溝27の傾斜に沿って流れて集められ(矢印B)、汲み上げポンプ等を用いて適切な排水場所に送水される。
本発明の一実施形態に係る仮設用浄水風呂設備を示すブロック構成図である。 図1に示す実施形態の仮設用浄水風呂設備に浄水装置を付加した場合の全体構成図である。 本発明の一実施形態に係る仮設用浄水風呂設備における浴室テントハウスの一例を表す断面図である。 図3に示す浴室テントハウスにおける側壁の下方部分を表す切り欠き斜視図である。 (a)は図4に示すD−D線断面の端面図であり、(b)〜(d)はU字溝の形成態様についての他の例を表す端面図(図4に示すD−D線断面に対応する箇所の端面図)である。 (a)は本発明の他の実施形態における浴室テントハウスの側壁の下方部分を表す切り欠き斜視図であり、(b)は(a)に示すE−E線断面の端面図である。
符号の説明
10 仮設用浄水風呂設備
11 浴槽
12 個別給水栓
12a シャワー
12b カラン
13 貯水槽
14 浄化装置
15,15a,15b,15c 給湯器
16 浴槽水導入ライン
17 浄水導出ライン
18 第1の給湯ライン
19,19a,19b,19c,19d 浄化水導入ライン
19e 分岐ライン
21 第2の給湯ライン
22 壁面シート
23 浴室内側の溝壁
24 フック
25 排水口
26a 床面
27 U字溝
27c 底
30,50 浄水装置
31 パレット
33 限外濾過部
34 砂濾過部
55 隙間
100 給湯装置部分
200 浴室テントハウス

Claims (5)

  1. 浴室テントと浴槽と個別給水栓を備えた仮設風呂設備であって、
    水の浄化装置と、複数の給湯器を備え、
    前記浄化装置には、入側として、前記浴槽中の水を戻し入れる浴槽水導入ラインが設けられると共に、出側として、浄化された水を導出する浄水導出ラインが設けられ、
    前記複数の給湯器のうちの一部の給湯器には、入側として、系外から供給される浄化水を導入する浄化水導入ラインと前記浄水導出ラインが切替可能に接続されると共に、出側として、前記浴槽中に温湯を供給する第1の給湯ラインが接続され、
    残りの給湯器には、入側として、系外から供給される浄化水を導入する浄化水導入ラインが接続されると共に、出側として、前記浴槽或いは前記個別給水栓に温湯を切替可能に供給する第2の給湯ラインが接続されたものであることを特徴とする仮設用浄水風呂設備。
  2. 前記浴室テントの床面に連なって床面上の湯を排出するU字溝が、シート材をもって構成されたものである請求項1に記載の仮設用浄水風呂設備。
  3. 前記浄化装置並びに前記複数の給湯器は、それぞれ高さが1600mm以下、長さが2800mm以下、幅が1600mm以下、質量が1500kg以下である請求項1または2に記載の仮設用浄水風呂設備。
  4. 前記浄化水導入ラインの上流側に、限外濾過部が接続され、この更に上流側に砂濾過部が接続されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の仮設用浄水風呂設備。
  5. 前記限外濾過部及び前記砂濾過部には、それぞれ逆洗用水導入ラインと殺菌剤注入ラインが接続されている請求項4に記載の仮設用浄水風呂設備。
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