近年、携帯電話のような無線通信機能を備えた携帯端末は、非常に数多くのユーザに広く利用されている。最近の携帯電話は、端末本体に、例えばデジタルカメラやGPS(Global Positioning System)による位置検出機能などの様々な機能部およびアプリケーションが搭載され、ますます多機能化している。このような携帯電話により、ユーザにとっての利便性は格段に向上している。
特に、最近は、携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス(以下、ワンセグ放送という)による地上デジタルテレビジョン放送(以下、デジタル放送という)の受信機能を搭載した携帯電話が急速に普及しつつある。このような、ワンセグ放送を受信してデジタル放送を再生できる携帯端末を用いることにより、放送波の届くエリア内であれば、ユーザは、視聴する場所に関らずデジタル放送を視聴できる。
デジタル放送においては、画面上に重畳表示される各種の字幕を表示することが標準機能として規格化され、特別な機器を用いることなく字幕を用いた放送を視聴できる。デジタル放送の字幕放送は、アナログ放送の字幕放送とは異なり、放送を受信する端末側で、字幕の表示/非表示の設定や、複数提供される字幕から所望の字幕を選択することが可能である。字幕管理データを用いることにより、送信側にて、受信端末側における個々の字幕の表示形態を操作することもできる。
デジタル放送における字幕放送では、従来のアナログ放送のように、例えば、英語の発言内容が日本語に翻訳された字幕を表示するような番組だけでなく、例えば日本語で話される発言内容に対して日本語の字幕が提供される番組も多い。このような母国語の字幕の提供により、聴力に障害を持つユーザでも番組内容を把握することができる。それだけでなく、字幕放送により、例えば公共の場所など音を出すことが望ましくないような場所でも、イヤホンなどを使用せずに画面の目視のみで番組内容を充分に把握することが可能になる。
さらに、デジタル放送の字幕放送においては、1つのチャンネルに付与される周波数帯域幅のうち、12セグメント(ハイビジョン放送)を使用する据置型の受信機向けと、1セグメントを使用する携帯受信端末向けとで異なる字幕が提供される。これらの字幕放送では、それぞれに字幕の内容および表現形式などが異なるものが提供される。
このデジタル放送の字幕機能においては、大きく分けて、表示態様に関する機能と、表示制御に関する機能とがある。表示態様に関する機能には、書式(縦書き、横書き、混在)、文字種(漢字、仮名など)、フォント指定、外字、文字サイズ、文字色(文字単位で256色の着色可能)、文字属性(反転、フラッシング、アンダーラインなど)などがある。また、表示制御に関する機能には、表示タイミング、消去タイミング、カット、ディゾルブなどがある。さらに、1ES(Elementary Stream)あたり、最大8言語まで拡張させて字幕を扱うことが可能である。
地上デジタル放送の字幕放送の仕様は、ARIB(Association of Radio Industries and Broadcast:社団法人電波産業会)による標準規格STD−B24「デジタル放送におけるデータ放送符号化方法と伝送方式」の技術報告書TR−B14に規定されている。このため、より詳細な説明は省略する。
また、最近では、受信したワンセグ放送によるデジタル放送を、本体に内蔵したメモリ(またはメモリカードなど)に録画できる携帯端末も既に市販されている。このような携帯端末を用いれば、ユーザは、デジタル放送の放送時には番組を視聴できない状態であっても、録画した番組を後から再生して視聴できる。
デジタル放送を携帯端末にて録画したものを再生したり、または映像や音楽などのコンテンツを携帯端末にてダウンロードしたものを再生することは、最近では一般的になりつつある。このように、近年の携帯電話に代表される携帯端末では、電話機能などの本来の機能に加えて、コンテンツ再生装置としての機能も主要な機能の1つになっている。
さらに、受信したデジタル放送の番組を、例えばハードディスクなどのランダムアクセス可能な記録メディアに、デジタル信号のまま記録することが可能なコンテンツ再生装置も既に市販されている。このようなコンテンツ再生装置には、まだ番組の録画が終了していない録画中でも、メディアから既に記録済みの部分を読み出して再生して、録画中の(現在放送中の)番組を後から追いかけて再生する「追っかけ再生」ができるものもある。追っかけ再生の機能が搭載されたコンテンツ再生装置では、現在放送中の番組を時々刻々と順次録画しながら、既に録画が完了している部分は、追っかけ再生をしたり、一時停止をしたり、早送り再生や巻き戻し再生などもできる。
このように、録画中の(現在放送中の)番組を追っかけ再生する際に、その再生速度を通常の速度よりも若干速くすることで、現在放送中の番組に追いつくように再生する「追いつき再生」ができるものもある。このような追いつき再生の機能を搭載した再生装置では、既に録画済みの部分については、通常の再生速度よりも速い速度で映像および音声を再生する。このように再生している最中に、現在録画中(放送中)の番組の放送時点に追いついた場合には、現在録画している番組の再生、即ち、現在放送中の番組の再生に切り換える。
このような追いつき再生の機能により、録画中の番組の放送が終了(録画終了)するのを待たずして録画した番組が再生できる。さらに、追いつき再生が現在放送中の番組に追いついた場合には、録画した番組の再生を終了して、現在放送中の番組をリアルタイムで再生できる。したがって、追いつき再生機能により、ユーザは、時間的に効率良く番組を視聴することができる。なお、この追いつき再生では、再生速度を通常より速くした際でも、再生する内容をユーザが理解できるようにする各種の措置が提案されている。例えば、追いつき再生中の音声については、再生速度を上げてもピッチ(音程)があまり変わらないようにしたり、または無音の部分を省略する(詰める)ことにより有音部分の再生速度をあまり上げないようにできる。
上述した携帯端末を再生装置として用いて、録画したデジタル放送などの番組やダウンロードした映像コンテンツなどを再生する場合、従来のアナログ放送をビデオカセットレコーダ(VCR)に録画して再生する場合とほぼ同様の再生制御ができる。すなわち、映像コンテンツなどの通常の再生に加えて、再生の一時停止や、早送り再生、巻き戻し再生など各種の再生をユーザの任意に行うことができる。
このような再生装置にて、以前視聴していたコンテンツなどの再生を途中で中断し、その再生中断箇所から再生を再開する場合に、ユーザは、再生中断箇所より少し前の番組内容を知りたい場合がある。また、現在録画中で再生していなかった番組を途中から再生して視聴した場合にも、同じ要請が生じ得る。その場合、ユーザの操作に基づいて、コンテンツの内容を必要量だけ巻き戻してから再生(録画中の場合は追っかけ再生)を行うのが一般的である。
例えば、図8に示すように、ある映像コンテンツが、場面A、場面B、場面C、場面Dの順に再生されるのが通常の再生方向とする。前回の再生が場面Cの直前で停止された場合、再生を再開すると場面Cから再生が開始される。場面Cの再生が開始された時点で、この場面Cと、その直前の場面とのつながりをユーザが把握できない場合、ユーザは、少し前まで巻き戻し再生(図8の1.巻き戻し再生)を行う。なお、録画中で再生していなかった番組を途中から追っかけ再生した際に、その再生が場面Cから開始された場合も同じである。
場面Cから場面Aまで遡って巻き戻し再生をする場合、その間は、映像が通常の再生よりも速い速度で逆再生され、音声は無音になるのが一般的である。この巻き戻し再生を行っている間、ユーザは、時間的に逆方向に高速再生される映像により、コンテンツの内容のうち、映像部分の概略はつかめる場合もある。しかしながら、通常とは逆の再生であるため、番組内容の流れを把握するのは困難である。さらに、場面の描写や登場人物のセリフなど細かい部分を把握することは不可能である。
ユーザにとって、この巻き戻し再生の意義は、巻き戻し再生を終了する箇所、即ち、視聴したい場面から通常の再生を再開する箇所を見出すための参照として利用するに過ぎない。したがって、巻き戻し再生を終了して再生を再開(図8の2.再生)した時点から初めて、ユーザにとって意味のある再生となる。ユーザは、巻き戻し再生を終了した場面Aから再生を再開し、場面Aから通常の再生を行い、場面Cまで視聴した時点で初めて、巻き戻し再生を開始した時点との内容的なつながりを把握できる。ユーザは、それまでの番組内容の流れがスムーズに把握できれば、その後場面D以降へと違和感を覚えることなく視聴を継続できる。
このような巻き戻し再生を行う際、上述した字幕が含まれるコンテンツの場合、字幕を表示して巻き戻し再生することで、ユーザは、番組の流れを追うことができ、番組によってはその内容の詳細まで充分に把握できる。例えば、番組やコンテンツの内容を急いで把握したい場合や、番組の重要部分を中心とする概略のみを知りたいような場合には、番組内で表示される字幕情報は特に有効である。このように字幕を利用すれば、番組を巻き戻し再生してから再生再開し、巻き戻し再生開始時点まで映像と音声で視聴する場合に比べて、視聴する時間および番組の内容を把握するのに必要な時間が著しく低減される。
デジタル放送の字幕表示を制御する技術については、既にいくつかの提案がされている。例えば、字幕表示の巻き戻しを指示した回数分だけ現在から遡った過去の字幕を字幕記憶手段から読み出し、字幕巻き戻しを指示した時点で再生される映像の静止画と合成して表示する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の再生装置によれば、巻き戻した字幕を表示部に表示する際には、通常の再生時よりも長い時間字幕を表示するため、通常再生時に字幕を読み切れなかった場合に、見逃した字幕を再表示できる。
また、映像信号から映像データと字幕データとを分離して字幕データをメモリに格納し、操作手段からの操作信号に従って表示すべき字幕を選択して、字幕データと映像データとを合わせて表示する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の映像表示装置によれば、デジタル放送に含まれる字幕部分を、映像と独立して操作できる。したがって、通常の再生速度で進行する映像および音声とは関係なく、字幕の表示のみを一時停止させたり、字幕のみを巻き戻して以前の字幕を表示できる。
さらに、画面上に表示される字幕の表示を、映像と共に静止画として取り込み、字幕の表示が更新されるごとに、このような静止画を順次保存できる技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載の映像処理装置によれば、番組内の登場人物が発言するセリフ等の文字情報を含む複数の静止画を作成することにより、「読むコンテンツ」を生成することで、番組内容を時間的に効率良く把握できる。
特開2004−213832号公報
特開2007−243292号公報
特開2004−350167号公報
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各実施の形態においては、本発明の再生装置の一例として、例えばワンセグ放送を受信可能な携帯電話のような携帯端末を想定して説明するが、本発明の再生装置は携帯電話に限定されるものではなく、例えばPDAなどの任意の携帯型デジタル放送受信装置および据置型のテレビジョン受信機に適用することも可能である。また、本発明は、放送受信装置が受信するデジタル放送についてもワンセグ放送に限定されるものではなく、フルセグ放送(HDTV)を受信する放送受信装置に適用することもできる。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る再生装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
再生装置100は、ワンセグ放送によるデジタル放送を再生するテレビジョン受信機能を搭載しており、全体を制御する制御部10と、地上デジタル放送の放送波を受信する受信部を構成する放送受信用のアンテナ部11およびチューナ部12とを有する。再生装置100は、アンテナ部11で、デジタル放送の放送波を受信する。チューナ部12は、アンテナ部11で受信された受信信号(RF信号)を、制御部10からの周波数(チャンネル)指定命令に基づいてチューニングする。
復調部13は、チューナ部12でチューニングされた放送波を、トランスポートストリーム(TS)信号に復調して分離部14に供給する。分離部14は、復調されたTS信号を、パケットIDに応じて、音声パケット、映像パケット、字幕パケット、データ放送パケットに分離する。分離部14でTS信号から分離された音声パケットは音声デコード部15に、映像パケットは映像デコード部16に、字幕パケットは字幕デコード部17に、データ放送パケットはデータ放送デコード部18に入力される。
音声デコード部15は、入力された音声パケット内の音声データをデコードしてスピーカ19に出力し、スピーカ19は音声デコード部15から出力される音声を出力する。映像デコード部16、字幕デコード部17は、それぞれ入力された映像パケット内の映像データ、字幕パケット内の字幕データをデコードして表示制御部20に出力する。データ放送デコード部18は、入力されたデータ放送パケット内のBML(Broadcast Markup Language)を基に画面イメージを作成して表示制御部20に出力する。
表示制御部20は、制御部10からの命令に基づいて、映像デコード部16、字幕デコード部17、データ放送デコード部18よりそれぞれ出力される映像、字幕テキスト、BMLに基づく画面イメージを映像表示部21に表示する。このようにして、ワンセグ放送の字幕付き映像、データ放送および音声を再生する。したがって、本実施の形態では、制御部10と表示制御部20とを含めて再生制御部を構成する。なお、ワンセグ放送による字幕放送およびデータ放送を再生する際の受信装置の通常動作は公知技術であるため、より詳細な説明は省略する。
再生装置100はさらに、各種の情報を記憶する記憶部22を備えている。記憶部22は、入力した情報および各種アプリケーション等を記憶する他、ワークメモリとしても機能するランダムアクセス可能なメモリで構成する。記憶部22はさらに、バッファ23と記録蓄積部24とを有する。
再生装置100が録画動作を開始すると、制御部10は、復調部13から出力されるTSパケットのデータを記憶部22に記憶するよう制御する。TSパケットのデータが記憶部22に格納される際には、まず一時記憶領域であるバッファ23に格納され、次に記録蓄積部24に格納される。録画した番組を再生する場合は、記憶部22内のバッファ23または記録蓄積部24のいずれかの領域から映像および音声データを読み出す。字幕データを伴う場合には字幕データも共に読み出す。デジタル放送の通常の録画および再生の動作も公知技術であるため、より詳細な説明は省略する。
再生装置100はまた、記憶部22内の領域であるバッファ23または記録蓄積部24の中に格納されている各種データの中に字幕データが含まれているか否かを検出する字幕データ検出部25を備えている。さらに、再生装置100は、外部からの入力を受け付ける入力部26も備え、ユーザによるキー操作を受け付ける。この入力部26は、各種操作キーやタッチパネルなどの任意の入力装置で構成できる。
次に、図2のフローチャートを参照しながら、本実施の形態の再生装置100による、字幕による巻き戻し再生の動作を説明する。なお、以下の説明では、番組などを録画した映像コンテンツのデータを、予め記憶部22の記録蓄積部24に記憶しておく場合について説明する。
本実施の形態では、まず、制御部10は、記録蓄積部24に記憶された映像コンテンツのデータを読み出してデコードし、映像および音声を映像表示部21およびスピーカ19から出力するよう制御して、当該映像コンテンツを再生している。
このようにして映像コンテンツを再生中に、ユーザによる入力部26からの入力により巻き戻し再生の開始が指示された時点から、図2に示す巻き戻し再生の動作が開始する。したがって、本実施の形態では、入力部26が指示部を構成する。
入力部26から巻き戻し再生の指示がされると、制御部10は、指示された巻き戻し再生が字幕による巻き戻し再生か否かを判定する(ステップS11)。字幕による巻き戻し再生の指示は、通常の巻き戻し再生とは異なる専用のキーを入力部26に設けて行ったり、または通常の巻き戻し再生を行った後に、所定の追加の操作により字幕による巻き戻し再生が選択されるようにするなど種々の態様が考えられる。
字幕による巻き戻し再生が選択された場合(ステップS11のYes)、字幕データ検出部25は、記録蓄積部24に記憶されたTSパケットに字幕データが含まれているか否かを判定する(ステップS12)。なお、TSパケットに字幕データが含まれているか否かは、例えば、番組配列情報におけるPMT(Program Map Table)内のストリーム形式識別を参照することで判定できる。
記録蓄積部24に記憶されたTSパケットに字幕データが含まれている場合(ステップS12のYes)、制御部10は、記録蓄積部24のTSパケットから字幕データのみをデコードするよう制御する。それと共に、制御部10は、字幕データのみを出力して巻き戻し再生する。この時、制御部10は、映像や音声は出力せずに、TSパケットのデータの巻き戻し再生によるタイミングに基づいて、デコードされた字幕データのみを字幕の表示単位で出力する。表示制御部20は、この巻き戻し再生により出力された字幕データに基づく字幕を、映像表示部21に表示する(ステップS13)。なお、制御部10は、字幕による巻き戻し再生を開始したら、その巻き戻し再生を開始した時点のコンテンツの位置に関する情報を、記憶部22に記憶する。
映像表示部21に字幕を表示する際には、表示制御部20は、通常の再生による順序でユーザが各字幕を読むことができるように、映像表示部21の下方から上方に向かう順序で各字幕を表示する。映像表示部21の上端まで表示が埋まってしまった場合には、最上行に字幕を追加表示するにつれて全体の字幕表示を一行ずつ下方にスクロールするのが好適である。他の態様として、映像表示部21の上端まで表示が埋まると、字幕表示を一旦全てクリアし、また新たに最下方から表示する態様も考えられる。この際の字幕表示のクリアも、巻き戻し再生される字幕の表示タイミングに基づいて自動で行うようにも、また入力部26からの、ユーザによる字幕表示クリアの入力に基づくようにもできる。
また、字幕データを映像表示部21に表示する際には、通常の字幕として通常通りに映像表示部21に表示するだけでなく、ユーザが番組内容を一層把握し易くするための処理を施すこともできる。例えば、拡大や背景色、文字色、書体、文字の太さ、陰影、ブライトネス、コントラスト、シャープネス、その他の文字表示形態に関する種々のパラメータを一部または複合的に変更させる各種処理を行って表示するようにできる。
続いて、制御部10は、字幕による巻き戻し再生が終了したか否かを判定する(ステップS14)。字幕による巻き戻し再生の終了は、ユーザによる入力部26からの字幕巻き戻し再生終了の入力に基づく場合と、映像コンテンツの最初まで巻き戻しが完了するなど表示すべき字幕が無くなった場合などが想定される。まだ字幕による巻き戻し再生が終了していない場合にはステップS13に戻り、字幕による巻き戻し再生を続行する。
ステップS14にて、字幕による巻き戻し再生が終了したと判定された場合、制御部10は、ステップS13にて記憶部22に記憶した、巻き戻し再生を開始した時点のコンテンツの位置情報を読み出す。さらに、制御部10は、読み出した巻き戻し再生開始位置から、映像および音声を出力する通常の再生を開始する(ステップS15)。これにより、本実施の形態による字幕による巻き戻し再生の動作は終了する。
なお、ステップS11にてユーザが字幕による巻き戻し再生を選択しなかった場合、制御部10は、記録蓄積部24に格納されたTSパケットの音声データおよび映像データをデコードするよう音声および映像デコード部15,16を制御する。各データのデコードが完了したら、制御部10は、デコードされた音声データに基づく音声をスピーカ19に出力し、デコードされた映像データを表示制御部21に出力する。デコードされた映像データを受信した表示制御部21は、映像データに基づく映像を映像表示部21に表示する(ステップS16)。このように、映像および音声による通常の巻き戻し再生をユーザが所望する場合には、従来式の映像および音声を用いた巻き戻し再生を行う。
また、番組によっては、字幕放送を提供していない場合もある。そこで、ステップS12にて、記録蓄積部24に記憶されたTSパケットに字幕データが含まれていないと判定された場合も、ステップS16に移行する。
このようにすることで、字幕による巻き戻し再生を開始すると、映像および音声のない字幕のみによる巻き戻し再生が行われる。また、字幕による巻き戻し再生を終了すると、字幕による巻き戻し再生を開始した位置から、映像および音声を伴う通常の再生が行われる。
例えば、図3に示すように、ある映像コンテンツが、場面A、場面B、場面C、場面Dの順に再生されるのが通常の再生方向とする。再生装置100にて、このような映像コンテンツを通常再生中に、場面Cにおいて、ユーザによる入力に基づいて、字幕による巻き戻し再生が指示されたとする。すると、通常の再生方向とは逆の(過去の)方向に、字幕のみの巻き戻し再生が開始する(図3の1.巻き戻し再生)。まず、場面Cから場面Bに向かって、字幕を表示単位ごとに映像表示部21の下方から上方に向けて順に表示する。すなわち、例えば図4(A)のような字幕が画面下から上に向けて順次表示される。
次に、図3の場面Bから場面Aに向かって、字幕を表示単位ごとに映像表示部21の先ほどの字幕に続けて下方から上方に向けて順に表示する。すなわち、例えば図4(B)のような字幕が、先の字幕に続けて画面下から上に向けて順次表示される。
この後、図3の場面Aに到達した際に、ユーザによる入力に基づいて、字幕による巻き戻し再生の終了が指示されたとする。すると、その巻き戻し再生の終了時点からではなく、巻き戻し再生の開始時点から再生が開始される(図3の2.再生)。すなわち、例えば図4(C)に示すように、場面Cから場面Dに向けてのコンテンツの内容が、映像および音声により、通常の再生方向で再生される。なおのこの通常の再生時に字幕を表示するか否かは、再生装置100の設定に依存する。
したがって、映像コンテンツを巻き戻し再生中する際に、字幕による巻き戻し再生を選択することで、ユーザは番組などの映像コンテンツの内容を字幕で順方向に把握できる。この字幕による巻き戻し再生に必要な処理は文字データの処理のみであるため、再生装置100に課される処理負荷は極めて少ない。また、巻き戻し再生が終了すると、巻き戻し再生を開始した位置から通常の再生を開始するので、ユーザが既に把握した番組の内容が再び再生されることはない。さらに、巻き戻し再生を開始した時点の位置をユーザが覚えておく必要もない。そのため、ユーザは手間をかけずに時間的に効率良く映像コンテンツの内容を把握できる。
なお、字幕による巻き戻し再生時には、映像表示部21の下方から上方に向けて字幕が表示されるが、巻き戻し再生の速度を速めることにより、より自然に(通常の再生方向における字幕表示のように)ユーザが把握し易い態様で字幕を表示できる。
(第2実施の形態)
次に、第2実施の形態に係る、字幕による巻き戻し再生の動作を説明する。第2実施の形態は、上述した第1実施の形態において、字幕による巻き戻し再生時の字幕の表示態様を変更する。
本実施の形態は、図1にて説明した、第1実施の形態と同じ再生装置100により実施できる。また、本実施の形態による再生装置100の動作についても、第1実施の形態とほぼ同じであるが、字幕による巻き戻し再生時の字幕を出力する方法が異なる。
本実施の形態では、字幕表示しながらコンテンツを再生する際に、ある表示単位の字幕の表示を消去する時点から、次の表示単位の字幕を表示する時点までの時間間隔を「字幕表示間隔」として測定する。測定した字幕表示間隔が予め定めた所定の閾値内となる連続する字幕は、ひとまとまりの同じ「字幕群」として出力する。
一般的に、字幕表示間隔が短い、すなわち各字幕が短い時間間隔で連続して表示される場合は、それぞれの字幕は連続して意味のあるまとまりになることが多い。一方、ある字幕と次の字幕との字幕表示間間隔が比較的長くなる場合は、番組の場面が変更されたり、番組内でテーマや話題が変更されたりというように、意味的な区切りになることが多い。そこで、再生装置100にて、字幕表示間隔についての所定の閾値を適切に設定し、予め記憶部22に記憶する。この字幕表示間隔に基づいて、意味的にまとまりのある「字幕群」を単位として字幕データを処理する。
次に、図5のフローチャートを参照しながら、本実施の形態の再生装置100による、字幕による巻き戻し再生の動作を、第1実施の形態とは異なる動作を中心に説明する。なお、第1実施の形態と同様に、番組などを録画した映像コンテンツのデータを、予め記憶部22の記録蓄積部24に記憶しておく場合について説明する。
まず、第1実施形態と同じ状況で映像コンテンツを再生中に、ユーザによる入力部26からの入力により巻き戻し再生の開始が指示されたら、制御部10は、指示された巻き戻し再生が字幕による巻き戻し再生か否かを判定する(ステップS11)。ステップS11にて字幕による巻き戻し再生の指示と判定された場合、字幕データ検出部25は、記録蓄積部24に記憶されたTSパケットに字幕データが含まれているか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12にて、記録蓄積部24に記憶されたTSパケットに字幕データが含まれている場合、制御部10は、記録蓄積部24のTSパケットから字幕データのみをデコードするよう制御する。字幕データがデコードされたら、制御部10は、各表示単位の字幕について、通常の再生における、直前の字幕が消去される時点から、次の表示単位の字幕が表示される時点までの間の時間(字幕表示間隔)を測定して取得する(ステップS21)。
次に、制御部10は、取得した各字幕間の字幕表示間隔を、記憶部22に記憶した所定の閾値と順次比較する(ステップS22)。取得した字幕表示間隔が所定の閾値以内であれば、字幕表示間隔を測定した表示単位の字幕を直前の字幕と同じ字幕群として出力し、バッファ23に蓄積する(ステップS23)。また、取得した字幕表示間隔が所定の閾値を超える場合は、字幕表示間隔を測定した表示単位の字幕を、直前の字幕とは異なる新たな字幕群としてバッファ23に蓄積する(ステップS24)。なお、この新たな字幕群を構成する字幕をバッファ23に蓄積する際、既に蓄積されたひとまとまりの字幕群が存在する場合、制御部10は、当該既に蓄積された字幕群をバッファ23から読み出して表示制御部20に出力する。
このようにして字幕群を出力した後のステップS14以降の動作および他の動作は第1実施の形態と同様になる。しかしながら、出力される字幕は字幕群単位となるため、表示制御部20は、映像表示部21に字幕を表示する際にも、字幕群ごとにまとまりとして表示する。このように、字幕表示間隔が所定の閾値以内の字幕を同じ字幕群としてグループ化して表示するため、映像コンテンツの内容をユーザが一層把握し易い態様で字幕を表示する巻き戻し再生ができる。
例えば、図6に示すように、再生装置100にて、字幕a1〜字幕a3、字幕b1〜字幕b2、および字幕c1〜字幕c3を含む映像コンテンツを、字幕による巻き戻し再生する場合について説明する。この映像コンテンツは、通常の再生においては、各字幕は、字幕a1、字幕a2、字幕a3、字幕b1、字幕b2、字幕c1、字幕c2、字幕c3の順に表示される。
このような映像コンテンツを通常再生中に、図6に示す巻き戻し再生開始時点にて、ユーザによる入力に基づいて、字幕による巻き戻し再生が指示されたとする。すると、制御部10は、通常の再生方向とは逆の(過去の)方向に、字幕のみの巻き戻し再生を開始する。ここで、制御部10は、デコードされた字幕を、字幕c3、字幕c2、字幕c1、字幕b2、字幕b1、字幕a3、字幕a2、字幕a1の順に、直前の字幕との字幕表示間隔を測定し、それぞれ取得する。
例えば、字幕c3〜字幕c2間、および字幕c2〜字幕c1間の字幕表示間隔は予め定めた所定の閾値内であるが、字幕c1〜字幕b2間の字幕表示間隔は、所定の閾値を超えたとする。この場合、制御部10は、字幕c3、字幕c2、字幕c1をひとまとめの「字幕群C」として出力し、例えば図7(A)に示すように、字幕群Cのグループとして画面下から上に向けて映像表示部21に順次表示する。なお、字幕群Cはまとまりとして出力されるため、実際には図7(A)のような字幕を一斉に表示しても良い。
次に、例えば、字幕b2〜字幕b1間の字幕表示間隔は予め定めた所定の閾値内であるが、字幕b1〜字幕a3間の字幕表示間隔は、所定の閾値を超えたとする。この場合、制御部10は、字幕b2、字幕b1をひとまとめの「字幕群B」として出力し、例えば図7(B)に示すように、字幕群Bのグループとして表示する。
同様に、例えば、字幕a3〜字幕a2間、および字幕a2〜字幕a1間の字幕表示間隔は予め定めた所定の閾値内である場合、制御部10は、字幕a3、字幕a2、字幕a1をひとまとめの「字幕群A」として出力する。この場合、例えば図7(C)に示すように、字幕群Aのグループとして表示する。
本実施の形態でも、第1実施の形態と同様に、映像表示部21の上端まで表示が埋まってしまった場合には、最上行に字幕を追加表示するにつれて全体の字幕表示を一行ずつ下方にスクロールできる。しかしながら、本実施の形態では、字幕群の字幕がまとめて表示されるため、このスクロールは、ユーザの操作入力に基づいて行うのが好適である。また他の態様として、映像表示部21の上端まで表示が埋まると、字幕表示を一旦全てクリアし、また新たに最下方から表示する態様も考えられる。この際の字幕表示のクリアも、巻き戻し再生される字幕の表示タイミングに基づいて自動で行うようにも、また入力部26からの、ユーザによる字幕表示クリアの入力に基づくようにもできる。
このように、本実施の形態では、字幕群ごとに、複数の表示画面(例えば図7(A)〜(C))が構成されることになる。この場合、これらの各表示画面は、字幕による巻き戻し再生の速度に基づいて自動で切り替わるようにも、またユーザによる入力部26への入力に基づいて切り替えるようにもできる。
このようにすることで、第1実施の形態で得られる利点に加えて、より一層、字幕による巻き戻し再生を行う際に、ユーザは番組などの映像コンテンツの内容を字幕で順方向に把握するのが一層容易になる。そのため、ユーザは手間をかけずに時間的に効率の良く、一層容易に映像コンテンツの内容を把握できる。
なお、本発明は、上述した各実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上述した各実施の形態では、番組などを録画した映像コンテンツのデータを、予め記憶部22の記録蓄積部24に記憶しておく場合の字幕による巻き戻し再生について説明した。この場合のみならず、現在録画中で再生していなかった番組を途中から視聴するためリアルタイム再生を開始した場合、または現在録画中の番組を既に録画が完了している任意の箇所から追っかけ再生を開始した場合にも同様に適用できる。
この場合、録画途中のデータから字幕を抽出する必要があるため、録画している間に受信するTSパケットを、記憶部22の記録蓄積部24ではなくバッファ23に蓄積する。番組の既に録画が完了した部分については、バッファ23からTSパケットを読み出し、その中から字幕データを抽出することで、字幕による巻き戻し再生を開始できる。字幕による巻き戻し再生を終了する場合には、やはりバッファ23のTSパケットを読み出すことにより、字幕による巻き戻し再生を開始した時点(位置)から、映像および音声によるコンテンツの追っかけ再生を行う。
また、上述した各実施の形態においては、ユーザが字幕を読む速度を考慮して、字幕による巻き戻し再生を行う際の巻き戻しの速度を、ユーザによる入力部26への入力に基づいて調節可能にするのが好適である。巻き戻し再生の速度を可変にすることで、ユーザは自分ペースで字幕を読むことができ、番組などの内容を一層把握し易くなる。
さらに、上述した各実施の形態では、再生する番組などの映像コンテンツは、映像および音声(さらに字幕)のデータを含むコンテンツを想定して説明した。しかしながら、例えば音声と字幕を含み、映像を含まないようなコンテンツなどに対しても、本発明を適用できる。