以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施の形態における通信システムの概要を示す図である。図1を参照して、通信システム10は、携帯電話システム200と、無線LANシステム300とを含む。携帯電話システム200は、通信事業者が提供するシステムであり、ここではその一例として、通信網202と、その通信網202に接続された基地局装置201と、基地局装置201と無線通信する携帯電話機1とを含む。ここでは、説明のために1つの基地局装置201を示しているが、台数は1以上あればよく、台数を限定するものではない。基地局装置201は、通信網202の中継器として機能する無線局装置である。携帯電話機1は、基地局装置201の通信可能領域内に位置するときに、基地局装置201と無線通信して、通信網202に接続される。ここでは、通信事業者が提供する通信網202を第1のネットワークと呼ぶ。
無線LANシステム300は、携帯電話機1と、3台のアクセスポイント(AP)100〜102と、VoIP(Voice Internet Protocol)サーバ112と、ゲートウェイ(G/W)111とを含む。AP100〜102と、VoIPサーバ112と、G/W111とは、LANケーブル110にそれぞれ接続され、それらによって互いにデータの送受信が可能な第2のネットワークを構成する。ここでは、説明のために3台のアクセスポイント100〜102を示しているが、台数は1以上あればよく台数を限定するものではない。アクセスポイント100〜102は、LANの中継器として機能する無線局装置である。携帯電話機1は、アクセスポイント100〜102のいずれか1つと無線通信することが可能であり、アクセスポイント100〜102のいずれか1つと無線通信すると、携帯電話機1が第2のネットワークに接続され、VoIPサーバ112、G/W111と通信することが可能となる。
第2のネットワークは、G/W111を介して、インターネット115と接続される。このため、携帯電話機1は、第2のネットワークに接続されている間、インターネット115に接続されたコンピュータ116と通信することが可能となる。
アクセスポイント100〜102は、通常は地上に固定して設置され、それぞれ通信可能領域が定まる。携帯電話機1は、アクセスポイント100の通信可能領域100A内に位置するときに、アクセスポイント100と無線通信することができるが、通信可能領域100Aの外に位置するときにはアクセスポイント100と無線通信することができない。携帯電話機1は、アクセスポイント101の通信可能領域101A内に位置するときに、アクセスポイント101と無線通信することができるが、通信可能領域101Aの外に位置するときにはアクセスポイント101と無線通信することができない。携帯電話機1は、アクセスポイント102の通信可能領域102A内に位置するときに、アクセスポイント102と無線通信することができるが、通信可能領域102Aの外に位置するときにはアクセスポイント102と無線通信することができない。
アクセスポイント100の通信可能領域100Aと、アクセスポイント101の通信可能領域101Aと、アクセスポイント102の通信可能領域102Aとは、3つが重なっている領域と、2つが重なっている領域と、重なっていない領域とが存在する。携帯電話機1が図1に示す位置に存在するとき、その位置はアクセスポイント100〜102の通信可能領域100A〜102Aのすべてが重なる領域に含まれる。このため、携帯電話機1は、アクセスポイント100〜102のいずれとも無線通信することが可能である。携帯電話機1が、アクセスポイント100〜102のいずれかと通信する場合、例えば、SSID(Service Set Identifier)、ESSID(Extended SSID)等の識別子が用いられる。これにより、携帯電話機1は、通信可能領域100A〜102Aが重なる領域内に位置していてもアクセスポイント100〜102のうちから携帯電話機1が選択した1つと無線接続することができる。
VoIPサーバ112は、それぞれが第2のネットワークに接続された携帯電話機1と、相手方装置との間の通信を仲介する。相手方装置は、第2のネットワークに接続されたコンピュータ、IP電話機およびアクセスポイント100〜102のいずれかと通信する別の携帯電話機を含む。VoIPサーバ112は、予め携帯電話機1を識別するための装置識別情報と、その携帯電話機1に予め割当てられた内線番号とを関連付けたユーザテーブルを記憶しており、携帯電話機1が第2のネットワークに接続された段階で、その携帯電話機1に割当てられたIPアドレスと、携帯電話機1に割当てられた内線番号とを関連付ける。例えば、第1の携帯電話機に、第1の装置識別情報および第1の内線番号が割当てられており、第2の携帯電話機に第2の装置識別情報および第2の内線番号が割当てられている場合について説明する。第1の携帯電話機は、第2のネットワークに接続されると、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバにより第1のIPアドレスが割当てられ、DHCPサーバから第1のIPアドレスを取得する。その後、第1の携帯電話機が第1のIPアドレスをVoIPサーバ112に登録要求すると、VoIPサーバ112は、第1の内線番号と第1のIPアドレスとを関連付ける。同様に第2の携帯電話機は、第2のネットワークに接続されると、DHCPサーバにより第2のIPアドレスが割当てられ、DHCPサーバから第2のIPアドレスを取得する。その後、第2の携帯電話機が第2のIPアドレスをVoIPサーバ112に登録要求すると、VoIPサーバ112は、第2の内線番号と第2のIPアドレスとを関連付ける。第1の携帯電話機1は、第2の内線番号をVoIPサーバ112に送信すれば、VoIPサーバは、第1および第2の携帯電話機との間を仲介して、第1および第2の携帯電話機との間でIPパケットを送受信する通信を可能とする。これにより、第1および第2の携帯電話機それぞれがIP電話機として機能し、通話が可能となる。また、第1の携帯電話機が、第2の内線番号をVoIPサーバ112に送信して、VoIPサーバから第2の携帯電話機に割当てられた第2のIPアドレスを取得し、第1の携帯電話機と第2の携帯電話機との間で直接IPパケットを送受信するようにしてもよい。
図2は、本発明の実施の形態の一つにおける携帯電話機の外観を示す斜視図である。図2(A)は、オープンスタイルの携帯電話機の外観を示し、図2(B)はクローズスタイルの携帯電話機の外観を示す。図2(A)および図2(B)を参照して、携帯電話機1は、操作側部3と、表示側部2とを含む。操作側部3は、電源キー14A、テンキーおよび通話キー等を含む操作キー14と、マイク13とが内側面に配置され、マイク端子16およびイヤホン端子17が右側面に配置される。表示側部2は、液晶表示装置(LCD)15と、レシーバを構成する第1スピーカ11と、カメラ24とが内側面に配置され、カメラ24Aと、小型LCD15Aと、第2スピーカ12とが外側面に配置される。なお、ここでは携帯電話機1がLCD15を備える例を示すが、LCD15に代えて、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを用いてもよい。操作側部3と表示側部2とは、ヒンジ機構で回転可能に連結され、操作側部3と表示側部2とは開閉自在である。携帯電話機1を折りたたんで、操作側部3と表示側部2とが閉状態にあるときの携帯電話機1の状態がクローズスタイルであり、携帯電話機1を開いて、操作側部3と表示側部2とが開状態にあるときの携帯電話機1の状態がオープンスタイルである。
図3は、本実施の形態における携帯電話機の機能の一例を示す機能ブロック図である。図3を参照して、携帯電話機1は、携帯電話機1の全体を制御するための制御部21と、アンテナ22Aと接続された無線回路22と、アンテナ23Aと接続された無線LAN回路23と、音声データを処理するためのコーデック部28と、コーデック部28の入出力を切換えるための切換部29と、それぞれが切換部29に接続されたマイク13、第1スピーカ11、第2スピーカ12、マイク端子16およびイヤホン端子17と、カメラ24と、ユーザの操作の入力を受付ける操作キー14と、赤外線通信部19と、振動部26と、LCD15の表示を制御するための表示制御部30と、制御部21で実行するためのプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)31と、制御部21の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)32と、アドレス帳データ、電子メール等を不揮発的に記憶するEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)33と、カードインターフェース(I/F)27とを含む。
無線回路22は、通信網202に接続された基地局装置201と無線通信する。基地局装置201がアンテナから送信する無線信号は、アンテナ22Aにより受信される。無線回路22は、アンテナ22Aにより受信された無線信号が入力され、無線信号を復調した音声信号をコーデック部28に出力する。また、無線回路22は、コーデック部28から音声信号が入力され、音声信号を変調した無線信号をアンテナ22Aに出力する。アンテナ22Aから送信される無線信号は、基地局装置201のアンテナで受信され、基地局装置201に出力される。
無線LAN回路23は、アクセスポイント100〜102のいずれか1つと無線通信する。アクセスポイント100〜102のいずれかが送信する無線信号は、アンテナ23Aにより受信される。無線LAN回路23は、アンテナ23Aにより受信された無線信号が入力され、無線信号を復調した音声信号をコーデック部28に出力する。また、無線LAN回路23は、コーデック部28から音声信号が入力され、音声信号を変調した無線信号をアンテナ23Aに出力する。アンテナ23Aから送信される無線信号は、アクセスポイント100〜102のいずれかで受信される。
無線LAN回路23は、制御部21により制御され、スキャンを実行する。スキャンは、アクセスポイント100〜102のうちで周辺に存在するアクセスポイントの有無を問い合わせる動作である。具体的には、プローブ要求を送信し、周辺に存在するアクセスポイントからプローブ応答を受信する。プローブ要求は、予め定められた全てのチャンネル毎に、順に送信される。チャンネルは、周波数帯域を示す。ただし、ハンドオフの際には、現在通信に用いているチャンネルを除く他の全てのチャンネル毎に、プローブ要求を送信する。周辺に該当チャンネルで通信するアクセスポイントが存在すれば、プローブ要求に対応するプローブ応答を受信することができる。無線LAN回路23は、同時に複数のチャンネルで通信することができない。このため、無線LAN回路23は、例えば、アクセスポイント100と通信しているときに、スキャンを実行すると、スキャンを実行している間にアクセスポイント100と通信することができず、スキャンが終了した後にアクセスポイント100と再度通信することになる。
コーデック部28は、無線回路22または無線LAN回路23から入力される音声信号を復号し、復号したデジタルの音声信号をアナログに変換し、増幅し、そして切換部29に出力する。また、コーデック部28は、切換部29を介してマイク13またはマイク端子16からアナログの音声信号が入力され、音声信号をデジタルに変換し、符号化し、そして符号化した音声信号を無線回路22または無線LAN回路23に出力する。
切換部29は、制御部21により制御され、コーデック部28への音声信号の入出力を切換える。切換部29は、コーデック部28から受け付けた音声信号を、イヤホン端子17、第1スピーカ11および第2スピーカ12のいずれかに出力する。イヤホン端子17にイヤホンが接続されている場合には、コーデック部28から受け付けた音声信号をイヤホン端子17に出力する。イヤホン端子17にイヤホンが接続されていない場合、携帯電話機1がハンズフリーモードであれば、コーデック部28から受け付けた音声信号を第2スピーカ12に出力し、携帯電話機1がハンズフリーモードでなければ、コーデック部28から受け付けた音声信号を第1スピーカ11に出力する。ユーザが操作キー14を操作することにより、携帯電話機1がハンズフリーモードに設定される。また、携帯電話機1がオープンスタイルで通話状態のときハンズフリーモードに設定されていなくても、携帯電話機1の状態がクローズスタイルに変化すると、制御部21は、ハンズフリーモードに設定する。このため、切換部29は、携帯電話機1がオープンスタイルで通話状態のときハンズフリーモードに設定されていなければ、コーデック部28から受け付けた音声信号を第1スピーカ11に出力するが、携帯電話機1の状態がクローズスタイルに変化するとコーデック部28から受け付けた音声信号を第2スピーカ12に出力する。
切換部29は、マイク13またはマイク端子16のいずれかが出力する音声信号をコーデック部28に出力する。切換部29は、マイク端子16にマイクが接続されている場合は、マイク端子16から受け付けた音声信号をコーデック部28に出力し、マイク端子16にマイクが接続されていない場合は、マイク13から受け付けた音声信号をコーデック部28に出力する。
表示制御部30は、制御部21により制御され、制御部21から入力される指示に従っ
てLCD15を制御して、LCD15に操作画面または画像を表示させる。LCD15に表示させる画像は、動画像と静止画像とを含む。
カードI/F27には、着脱可能なフラッシュメモリ27Aが装着される。制御部21は、カードI/F27を介して、フラッシュメモリ27Aにアクセスが可能である。なお、ここでは制御部21が実行するためのプログラムをROM31に記憶しておく例を説明するが、プログラムをフラッシュメモリ27Aに記憶しておき、フラッシュメモリ27Aからプログラムを読み出して、制御部21が実行するようにしてもよい。プログラムを記憶する記録媒体としては、フラッシュメモリ27Aに限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc−ROM)/MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electronically EPROM)などの半導体メモリ等でもよい。また、携帯電話機1をインターネットに無線回路22または無線LAN回路23を介して接続し、インターネットに接続されたコンピュータからプログラムをダウンロードして、制御部21が実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、制御部21が直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
カメラ24は、レンズおよびCMOS(Complementary Metal O
xide Semiconductor)センサ等の光電変換素子を備え、レンズで集光した光をCMOSセンサに結像し、CMOSセンサは受光した光を光電変換して画像データを制御部21に出力する。カメラ24は、制御部21により制御され、制御部21からの指示により撮像を開始して、得られる静止画データまたは動画データを制御部21に出力する。カメラ24は、画像データの画質を向上させるための画像処理を実行する画像処理回路、画像データをアナログからデジタルに変換するA/D変換回路を備えている。制御部21は、カメラ24が出力する静止画データまたは動画データを表示制御部30に出力し、LCD15に表示させる、または、圧縮符号化方式で静止画データまたは動画データを符号化して、EEPROM34またはカードI/F27に装着されたフラッシュメモリ27Aに記憶する。カメラ24は、携帯電話機1がテレビ電話として機能する際に、携帯電話機1のユーザを撮像する。
赤外線通信部19は、赤外線を媒体としてデータを送受信する。例えば、IrDA(Infrared Data Association)規格に従って、外部の機器との間でデータを送受信する。なお、ここでは、赤外線を媒体としてデータを送受信する例を示したが、電磁波を用いた無線通信により外部の機器と通信するようにしてもよい。また、赤外線通信部19に代えて、またはそれに加えてシリアルインターフェースまたはパラレルインターフェースを備えるようにし、通信ケーブルで外部の機器と接続し、外部の機器とデータを送受信するようにしてもよい。
<ハンドオフ>
次に無線LANシステム300のハンドオフについて、図1を参照して説明する。図1を参照して、携帯電話機1が、例えばアクセスポイント100の通信可能領域100A内に位置する状態でアクセスポイント100と通信し、第2のネットワークに接続されている場合、携帯電話機1が通信可能領域100Aから通信可能領域100A外の位置に移動すると、アクセスポイント100と通信することができない。しかしながら、携帯電話機1は、移動後の位置がアクセスポイント101またはアクセスポイント102の通信可能領域101Aまたは102Aのいずれかに位置すれば、アクセスポイント101またはアクセスポイント102と通信が可能である。この場合、携帯電話機1は、アクセスポイン
ト101,102のうち通信が可能なアクセスポイントを選択して、そのアクセスポイントにリアソシエーション要求(再接続要求)を送信し、そのアクセスポイントと通信することにより、第2のネットワークへの接続を継続する。例えば、携帯電話機1がアクセスポイント101を選択した場合、携帯電話機1が通信していたアクセスポイント100と、リアソシエーション要求を送信したアクセスポイント101との間で、携帯電話機1を受け渡すハンドオフが実行される。リアソシエーション要求は、携帯電話機1を識別するための装置識別情報としてのMAC(Media Access Control)アドレスと、それまで通信していたアクセスポイント100を識別するための装置識別情報としてのMACアドレスとが含まれる。リアソシエーション要求を受信したアクセスポイント101は、ハンドオフ元のアクセスポイント100から携帯電話機1の接続を認めるのに必要な情報を取得して、接続を許可する場合には、携帯電話機1に対して、リアソシエーション応答を送信する。アクセスポイント101からリアソシエーション応答を受信した携帯電話機1は、アクセスポイント101と通信が可能となり、第2のネットワークに再接続される。このように、アクセスポイント100とアクセスポイント101との間でハンドオフが実行されることにより、携帯電話機1が通信する先がアクセスポイント100からアクセスポイント101に変更されるが、携帯電話機1は第2のネットワークに接続した状態を維持することができる。
携帯電話機1が、通信する先をアクセスポイント100からアクセスポイント101に変更した場合、アクセスポイント100とアクセスポイント101とが共に第2のネットワークに接続されている。このため、ハンドオフの前後で同一セグメントのネットワークに接続されるので、ハンドオフ前にアクセスポイント100と通信して第2のネットワークに接続された段階で割当てられたIPアドレスを、ハンドオフ後にそのまま使用することが可能である。しかしながら、携帯電話機1がハンドオフ後に通信するアクセスポイントが、ハンドオフ前に通信していたアクセスポイント100が接続された第2のネットワークと異なるセグメントのネットワークに接続されている場合、第2のネットワークに接続された段階で割当てられていたIPアドレスを、ハンドオフ後にそのまま使用することができない。このため、携帯電話機1は、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一であることを確認する。
具体的には、携帯電話機1は、ハンドオフ前にアクセスポイント100と通信してG/W111のIPアドレスを取得し、ハンドオフ後に通信するアクセスポイントを介して、取得したG/W111のIPアドレスが正しいか否かを判断する。携帯電話機1は、ハンドオフ後にアドレス解決プロトコル(ARP)に従って、先に取得したG/W111のIPアドレスのMACアドレスを要求し、MACアドレスを取得する。携帯電話機1は、取得したMACアドレスを先に取得したG/W111のMACアドレスと比較し、両者が一致すれば第2のネットワークに接続されたと判断し、両者が一致しない場合、またはMACアドレスを取得できない場合、第2のネットワークとは異なるネットワークに接続されたと判断する。
携帯電話機1は、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一であれば、ハンドオフ前に取得したIPアドレスをハンドオフ後にそのまま使用するが、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一でなければ、DHCPサーバに新たなIPアドレスの割り当てを要求する。
なお、ハンドオフ前後で同一セグメントのネットワークであることを確認するために、DHCPサーバからサブネットマスクを取得する方法があるが、DHCPサーバとの通信はUDPに従うため、ARPに従った通信に比較して通信に時間を要する。UDPに従った通信はOSI参照モデルのトランスポート層における通信であるのに対して、ARPに従った通信は、トランスポート層より下位のネットワーク層における通信だからである。
上述したように、無線LAN回路23は、制御部21による指示に従って、スキャンを開始する。携帯電話機1がアクセスポイント100と通信し、IP電話機として機能している場合、通信可能領域100Aの外に移動した後にスキャンを開始したのでは、携帯電話機1が第2のネットワークに接続されない期間が長くなってしまう。携帯電話機1がIP電話機として機能している場合には、第2のネットワークに接続されない期間が長くなると、通話が途切れてしまう。このため、本実施の形態における携帯電話機1は、このスキャンをアクセスポイント100と通信できなくなる以前に実行することにより、第2のネットワークに接続されない期間を短くする。
制御部21は、アクセスポイント100と通信している間に、アクセスポイント100が送信する電波の電波強度を所定の間隔で計測し、計測した電波強度に基づいて、スキャンを実行する時期を決定する。電波強度は、RSSI(Receive Signal Strength Indication)であり、単位はdBmである。なお、電波に影響を与える障害物が存在しなければ、アクセスポイント100と携帯電話機1との間の距離が遠くなるに従って、電波強度が低くなる。この電波の性質を利用して、スキャンを実行するタイミングを決定する。
また、制御部21は、第2のネットワークに接続されない期間を短くするため、アクセスポイント101にハンドオフを指示するためのリアソシエーション要求を送信するタイミングを、アクセスポイント100が送信する電波の電波強度に基づいて決定する。
図4は、アクセスポイントが送信する電波の電波強度とスキャンの開始タイミングおよびリアソシエーション要求の送信タイミングとの関係を説明するための模式図である。図では、電波に影響を与える障害物が存在しない場合を示している。図4を参照して、中心にアクセスポイント100の位置を示し、アクセスポイント100の位置を中心とする3つの同心円401,402,403と、通信可能領域100Aとを示す。同心円401は、アクセスポイント100の電波強度が第1のしきい値となる位置を示す。同心円401の内側の電波強度は、第1のしきい値よりも大きくなり、同心円401の外側の電波強度は第1のしきい値よりも小さくなる。同心円402は、アクセスポイント100の電波強度が第2のしきい値となる位置を示す。同心円402の内側の電波強度は、第2のしきい値よりも大きくなり、同心円401の外側の電波強度は第2のしきい値よりも小さくなる。したがって、第2のしきい値は、第1のしきい値よりも小さな値である。また、第2のしきい値は、通信可能領域100Aに近いほど良く、携帯電話機1がアクセスポイント100と通信可能な電波強度の最小値に設定するようにすればよい。同心円403は、アクセスポイント100の電波強度が、第3のしきい値となる位置を示す。同心円403の内側では電波強度は、第3のしきい値よりも大きくなり、同心円403の外側では電波強度は第3のしきい値よりも小さくなる。同心円403は、同心円401の内側となり、第3のしきい値は第1のしきい値よりも大きな値である。
制御部21は、通信中のアクセスポイント100の電波強度を予め定められた時間間隔で測定している。ここでは、通信中のアクセスポイント100の電波強度を測定する間隔を計測間隔という。制御部21は、アクセスポイント100の電波強度が第1のしきい値を下回ると、換言すれば、携帯電話機1が同心円401の外側に移動すると、無線LAN回路23に所定時間間隔(以下「スキャン間隔」という)でスキャンを実行する指示を出力する。無線LAN回路23は、スキャン間隔でスキャンを実行する。制御部21は、スキャンを実行する毎に、無線LAN回路23から受信するチャンネルごとの電波強度に基づいて、次に接続するアクセスポイントを決定する。ここでは、制御部21が、アクセスポイント101を次に接続するアクセスポイントに決定したとして説明する。
そして、制御部21は、アクセスポイント100の電波強度が第2のしきい値を下回ると、換言すれば、携帯電話機1が同心円402の外側に移動すると、次に接続することが決定されたアクセスポイント101にリアソシエーション要求を送信する。これにより、アクセスポイント100とアクセスポイント101とでハンドオフが実行される。したがって、アソシエーション要求は、アクセスポイント101に対してハンドオフを指示するための要求である。また、制御部21は、アクセスポイント100の電波強度が第2のしきい値を下回らなくても、スキャンにより次に接続することが決定されたアクセスポイント101の電波強度と、通信しているアクセスポイント100の電波強度との差が、第4のしきい値よりも大きければ、次に接続することが決定されたアクセスポイント101にリアソシエーション要求を送信する。
また、制御部21は、アクセスポイント100の電波強度が第1のしきい値を下回ると、無線LAN回路23にスキャン間隔でスキャンを実行する指示を出力するが、その後、アクセスポイント100の電波強度が第2のしきい値を下回ることなく、第3のしきい値を超えると、換言すれば、携帯電話機1が同心円403の内側に移動すると、無線LAN回路23にスキャン間隔でスキャンを実行するのを中止する指示を出力する。スキャンを実行するスキャン期間中は、アクセスポイント100と通信をすることができないため、アクセスポイント100の電波強度が十分に回復したならば、スキャンを実行するのを中止することにより、アクセスポイント100と通信する期間をできるだけ確保することができる。
図5(A)は、計測間隔を示す図であり、図5(B)は、スキャン間隔を示す図である。図5(A)および図5(B)を参照して、スキャン間隔Tは、計測間隔よりも長く設定される。スキャン間隔は、スキャン期間の終了時点から次のスキャン期間の開始時点までの期間である。スキャン間隔をできるだけ長くして、アクセスポイント101と通信できないスキャン期間の占める割合をできるだけ小さくするのが望ましい。
図6(A)は、スキャン実行中のデータ受信の状態を説明するための図である。図6(B)は、スキャン実行中のデータ送信の状態を説明するための図である。図6(A)を参照して、スキャン期間において、無線LAN回路23は、アクセスポイント100と通信するチャンネルとは別のチャンネルの電波強度を計測するため、スキャン期間中にアクセスポイント100が送信するデータを受信することができない。このため、アクセスポイント100は、送信したが無線LAN回路23により受信されなかったデータを、スキャン期間の終了後の短期間で連続して送信する。このため、無線LAN回路23は、スキャン期間の終了後に、本来はスキャン期間に受信するはずであったデータをスキャン期間の終了後に受信することになる。
図6(B)を参照して、スキャン期間において、無線LAN回路23は、アクセスポイント100と通信するチャンネルとは別のチャンネルの電波強度を計測するため、スキャン期間中にアクセスポイント100にデータを送信することができない。このため、無線LAN回路23は、コーデック部28がスキャン期間に出力するデータを、送信することなく破棄する。この結果、通話相手の装置では、スキャン期間中に無線LAN回路23により破棄されたデータを受信することができないため、無音になる。しかしながら、スキャン期間は、約200msec程度の短い期間であるため、無音状態が人の聴覚で検出されるが、音声が途切れるほどの期間ではない。また、無音状態が発生するのを防止するために、無線LAN回路23の前段にバッファメモリを設けて、無線LAN回路23がスキャン期間中にコーデック部28から入力されるデータをバッファメモリに記憶しておき、スキャン期間後にバッファメモリに記憶されたデータを連続して送信するようにしてもよい。
図7は、スキャン期間の詳細を説明するための図である。図7(A)は、スキャン期間とスキャン間隔を示す図であり、図7(B)は、スキャン期間の詳細を示す図であり、図7(C)は、1チャンネル当たりのスキャン期間を示す図である。図7(B)を参照して、1回当たりのスキャン期間は、チャンネルごとのスキャン期間を含む。図では、3チャンネルのスキャン期間を含む例を示している。3チャンネルは、無線LAN回路23がアクセスポイント100と通信しているチャンネルを除くチャンネルであって、予め定められたチャンネルである。
図7(C)を参照して、1チャンネル当たりのスキャン期間は、プローブ要求(ProbeRequest)送出までの時間δと、プローブ応答(ProbeResponse)受信までの待機時間とを含む。時間δは、チャンネル周波数を切り替える時間とトラフィックが空くまで待機する時間とを含む。無線LAN回路23は、時間δの経過後プローブ要求を送信する。プローブ応答(ProbeResponse)受信までの時間は、プローブ要求を送信した後の固定時間である。プローブ応答を受信できない場合があり、予め定めた時間待機することにより、プローブ応答を受信しないことを判断するためである。このため、プローブ応答受信までの待機時間は、プローブ応答を受信した場合であっても固定した時間とされる。
次に、スキャン回数を低減する原理を説明する。図8(A)は、電波強度と第1しきい値および第2しきい値との関係を示す図であり、図8(B)は、第3しきい値を用いた場合のスキャン回数を示す図であり、図8(C)は第3しきい値を用いない場合のスキャン回数を示す図である。図8(A)は、横軸に時間を示し、縦軸に電波強度を示している。電波強度が第1しきい値の近傍にあるとき、電波強度が第1しきい値を下回った後第1しきい値を越える現象が発生する。図では、T1〜T7までの期間に、電波強度が第1のしきい値を下回る回数が5回である。このため、第3しきい値を用いない場合には、時刻T1,T2,T3,T4,T6各々において、スキャンが開始されることになる。一方、第3のしきい値を用いる場合には、電波強度が最初に第1しきい値を下回った時刻T1において、1回目のスキャンが実行され、次にスキャンが実行されるのは、1回目のスキャンが終了してからスキャン間隔Tの時間が経過した時刻T5である。さらに次のスキャンが実行される前の時刻T7において、電波強度が第3しきい値を超えると、スキャンを実行するのが中止される。このため、第3しきい値を用いない場合には、図8(C)に示したように5回のスキャンが実行されるのに対して、第3しきい値を用いる場合には、2回のスキャンが実行される。スキャンを実行する回数を減らすことにより、無線LAN回路23がアクセスポイント100と通信可能な期間を長くすることができる。
図9は、無線LAN接続処理の流れの一例を示すフローチャートである。無線LAN接続処理は、制御部21がROM31に記憶された無線LAN接続プログラムを実行することにより、制御部21により実行される処理である。図9を参照して、制御部21は、電源がONになるまで待機状態となり(ステップS01でNO)、電源がONになると処理をステップS02に進める。ステップS02において、接続可能なアクセスポイントを検出するために無線LAN回路23にスキャンを開始させる。そして、スキャンにより検出された電波強度に基づいて、接続するアクセスポイントを決定し、そのアクセスポイントに接続要求(AssociationRequest)を送信する(ステップS03)。接続するアクセスポイントは、例えば、電波強度が最大のアクセスポイントに決定するようにすればよい。ここでは、アクセスポイント100に接続要求を送信する場合を例に説明する。アクセスポイント100は、接続要求を受信すると、携帯電話機1を認証するために、規格IEEE802.1Xで定められた認証処理を実行する。これに応じて、制御部21は、無線LAN回路23に認証処理に必要な情報をアクセスポイント100へ送信させる(ステップS04)。アクセスポイント100において認証が成功すれば、制御部21は、無線LAN回路23を制御して、アクセスポイント100との間で暗号鍵を含む
暗号化情報を交換する(ステップS05)。この暗号化情報の交換のためのプロトコルは、4ウェイ・ハンドシェークとして知られている。
そして、制御部21は、IPアドレスを取得する(ステップS06)。具体的には、無線LAN回路23を制御して、第2のネットワークに接続されたDHCPサーバからIPアドレスを取得する。そして、取得したIPアドレスをVoIPサーバ112に登録する(ステップS07)。制御部21は、無線LAN回路23を制御して、携帯電話機1に割当てられたMACアドレスと取得したIPアドレスとをVoIPサーバ112に送信させる。これにより、携帯電話機1が、VoIPサーバ112に登録され、第2のネットワークにおけるIP電話機として機能する。
そして、制御部21は、待ち受け状態となり(ステップS08)、発信または着信があると(ステップS09でYES)、処理をステップS10に進める。発信または着信がなければ(ステップS09でNO)、処理をステップS08に戻し、待ち受け状態となる。発信は、携帯電話機1のユーザが操作キーを操作して、内線番号を操作することにより制御部21が受け付ける。着信は、アクセスポイント100から着呼信号を受信することにより、制御部21が受け付ける。ステップS10においては、回線を接続して通話を開始する。制御部21は、ステップS06で取得したIPアドレスと、通話中にコーデック部28から入力される音声信号とを含むIPパケットを生成し、IPパケットを無線LAN回路23に出力して、送信させる。また、制御部21は、通話中に電波強度監視処理を実行する(ステップS11)。
ステップS12においては、電波強度監視処理を実行した結果、ステップS10において接続した回線が切断されたか否かを判断し、回線が切断されたならば処理をステップS06に戻し、回線が切断されなければ処理をステップS13に進める。ハンドオフにより回線が切断されなければ、ハンドオフ前にステップS06で取得したIPアドレスを含むIPパケットを生成し、IPパケットを無線LAN回路23に出力して、送信させる。このため、ハンドオフが実行された後にIPアドレスを取得する必要がないので、IPアドレスを取得するための時間を短縮することができる。
ステップS13においては、通話が終了したか否かを判断し、通話が終了したならば処理をステップS14に進め、終了しなければ処理をステップS11に戻す。通話の終了は、ユーザが操作キーの通話終了ボタンを押下することにより携帯電話機1に入力され、制御部21が受け付ける、または、無線LAN回路23がアクセスポイント100から通話の終了を示す信号を受信すると、制御部21が無線LAN回路23から受け付ける。ステップS14においては、電源がOFFにされたか否かを判断し、電源がOFFとされたならば処理を終了し、そうでなければ処理をステップS08に戻す。
図10は、電波強度監視処理の流れの一例を示すフローチャートである。電波強度監視処理は、図9のステップS11において実行される処理である。図10を参照して、制御部21は、接続中のアクセスポイント100の電波強度E1を取得する(ステップS21)。そして、アクセスポイント100の電波強度E1が第1しきい値より小さいか否かを判断する(ステップS22)。アクセスポイント100の電波強度E1が第1しきい値より小さいならば処理をステップS23に進め、そうでなければ処理をステップS27に進める。ステップS27においては、電波強度E1を計測してから計測間隔の時間が経過したか否かを判断する。計測間隔の時間が経過するまで待機状態となり(ステップS27でNO)、計測間隔の時間が経過したならば処理をステップS21に戻す。これにより、アクセスポイント100の電波強度が第1しきい値以上の間は、計測間隔の時間が経過する毎にアクセスポイント100の電波強度E1が計測される。
ステップS23においては、無線LAN回路23にスキャンを実行させる。これにより、無線LAN回路23において、接続中のアクセスポイント100と通信しているチャンネルを除く全てのチャンネルの電波強度が計測される。計測された電波強度の最大値を電波強度E2として取得する。アクセスポイント100との間の通信が可能な間に、スキャンを実行して、次に接続するべきアクセスポイントを決定しておくことができる。
そして、電波強度E1を計測してから計測間隔の時間が経過したか否かを判断する(ステップS24)。計測間隔の時間が経過するまで待機状態となり(ステップS24でNO)、計測間隔の時間が経過したならば処理をステップS25に進める。
ステップS25においては、接続中のアクセスポイント100の電波強度E1を取得する。そして、アクセスポイント100の電波強度E1が第3しきい値より大きいか否かを判断する(ステップS26)。アクセスポイント100の電波強度E1が第3しきい値より大きいならば処理をステップS27に進め、そうでなければ処理をステップS28に進める。アクセスポイント100の電波強度E1が第3しきい値より大きくなった場合は、アクセスポイント100との間で通信するのに十分な条件なので、スキャン間隔毎にスキャンを実行するのを中止して、接続しているアクセスポイント100との間で通信できなくなる期間を少なくするためである。
ステップS28においては、ステップS25で計測した電波強度E1が第2しきい値より小さいか否かを判断する。アクセスポイント100の電波強度E1が第2しきい値より小さいならば処理をステップS29に進め、そうでなければ処理をステップS31に進める。ステップS31においては、ステップS23において取得したアクセスポイント101の電波強度E2と、ステップS25において取得したアクセスポイント100の電波強度E1との差が、第4しきい値を超える否かを判断する。第4しきい値を超えるならば処理をステップS29に進め、そうでなければ処理をステップS41に進める。接続しているアクセスポイント100の電波強度E1が第2しきい値より小さくなくても、アクセスポイント100よりも電波強度の差が第2しきい値を超えるアクセスポイントが存在すれば、そのアクセスポイントと通信する方が、通信エラーが少なくなり、好ましいからである。
ステップS29においては、次に通信するアクセスポイントの候補となる候補アクセスポイントを決定する。候補アクセスポイントとなる条件は、ステップS23において取得した電波強度が第5しきい値よりも大きな電波強度のアクセスポイント、または、通信しているアクセスポイント100の電波強度E1に第4しきい値を加算した値よりも大きな電波強度のアクセスポイントである。第5しきい値は、電波強度が通信するのに十分な値であるかを電波強度のみから絶対的に判断するための値であり、予め定められた値である。第4しきい値は、電波強度が通信するのに十分な値であるかを、通信しているアクセスポイント100の電波強度E1と比較して相対的に判断するための値であり、予め定められた値である。
次のステップS30においては、ステップS29において候補アクセスポイントが決定されたか否かを判断する。候補アクセスポイントが決定されたならば処理をステップS32に進め、決定されなければ処理をステップS41に進める。候補アクセスポイントが決定されない場合があり、その場合には、ハンドオフは実行されない。
一方、ステップS41においては、スキャンタイミングか否かを判断する。スキャンタイミングならば処理をステップS23に戻し、スキャンタイミングでなければ処理をステップS24に戻す。スキャン間隔と、計測間隔とは別個に定められるため、スキャン間隔の時間が経過した後の時刻と、計測間隔の時間が経過した後の時刻とはずれがあるため、
いずれか早く到来する処理を実行する。
ステップS32においては、ステップS29において決定された候補アクセスポイントのうちから、ステップS23におけるスキャンにより取得された電波強度が最大のアクセスポイントを、次に接続するための接続アクセスポイントに決定する。そして、接続アクセスポイントにリアソシエーション要求を送信する(ステップS33)。ここでは、アクセスポイント101が接続アクセスポイントに決定されたとして説明する。アクセスポイント101は、リアソシエーション要求を受信すると、リアソシエーション要求に含まれるハンドオフ元のアクセスポイント100の装置識別情報に基づいて、アクセスポイント100から携帯電話機1の接続を認めるのに必要な情報を取得し、接続を許可する場合には、携帯電話機1に対して、リアソシエーション応答を送信する。アクセスポイント101からリアソシエーション応答を受信した携帯電話機1は、アクセスポイント101と通信が可能となり、第2のネットワークに再接続される。このように、アクセスポイント100とアクセスポイント101との間でハンドオフが実行されることにより、携帯電話機1が通信する先がアクセスポイント100からアクセスポイント101に変更されるが、携帯電話機1は第2のネットワークに接続した状態を維持することができる。なお、携帯電話機1は、リアソシエーション応答を受信しない場合には、アクセスポイント101と通信できないため、別の接続アクセスポイントを決定して、ステップS33を実行するようにすればよい。
次に、通信可能となったアクセスポイント101から認証要求を受信したか否かを判断する(ステップS34)。携帯電話機1がリアソシエーション要求を送信して、アクセスポイント101との間で通信可能となった場合に、認証処理を実行するか否かは、アクセスポイント101側に主導権がある。このため、アクセスポイント101から認証要求を受信したならば処理をステップS35に進め、認証要求を受信しなければ処理をステップS36に進める。が送信される場合には、その認証要求に従って、無線LAN回路23に認証処理に必要な情報をアクセスポイント100へ送信させる(ステップS35)。なお、アクセスポイント101が認証要求を送信しない場合には、認証処理を省略することができるので、認証処理に要する時間を短縮することができ、携帯電話機1が第2のネットワークに接続されない期間を短くすることができる。
次のステップS36においては、制御部21は、無線LAN回路23を制御して、アクセスポイント100との間で暗号鍵を含む暗号化情報を交換する。そして、G/Wを検出する(ステップS37)。携帯電話機1は、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一であることを確認する。具体的には、携帯電話機1は、ハンドオフ前にアクセスポイント100と通信して取得したG/W111のIPアドレスを用いて、アドレス解決プロトコル(ARP)に従ってハンドオフ後に通信するアクセスポイントに送信し、アクセスポイント102が接続されているネットワークにG/W111が接続されているか否かを確認する(ステップS38)。アクセスポイント102が接続されているネットワークにG/W111が接続されていれば、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一であると判断し、処理をステップS39に進め、アクセスポイント102が接続されているネットワークにG/W111が接続されていなければ、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一でないと判断し、処理をステップS40に進める。ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一であれば、ハンドオフ前に取得したIPアドレスをそのまま用いてIPパケットを生成することができるが、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一でなければ、ハンドオフ前に取得したIPアドレスをそのまま用いることはできず、新たに取得したIPアドレスを用いてIPパケットを生成する必要があるからである。ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一であれば、ハンドオフ前に取得したIPアドレスをそのまま用いてIPパケットを生成することができるので、新たにIPアドレスを取得する必要がなく
、IPアドレスを取得するまでの間第2のネットワークに接続できない状態を回避することができる。
ステップS39においては、通話継続で処理を図9のステップS12に戻し、ステップS40においては、回線切断で処理を図9のステップS12に戻す。
以上説明したように本実施の形態における携帯電話機1は、3つのアクセスポイント100〜102のうちの1つのアクセスポイント100と第1チャンネルで通信している最中に第1チャンネルの電波強度E1を検出し、第1チャンネルの電波強度E1が第1のしきい値を下回ることに応じて、別のアクセスポイント101,102が通信する第2チャンネルに一時的に切り換え、第2チャンネルの電波強度E2を検出するスキャンを実行する。そして、検出した第2チャンネルの電波強度E2に基づき、アクセスポイント101,102のうちから次に通信する接続アクセスポイント102を決定し、第1チャンネルの電波強度E1が第2のしきい値を下回ることに応じて、接続アクセスポイント102にハンドオフによる接続を要求するためのリアソシエーション要求(再接続要求)を送信する。第1チャンネルでアクセスポイント100と通信ができなくなる前に、接続アクセスポイント102を決定しておき、第1チャンネルで通信ができなくなる直前に接続アクセスポイント102と通信することができる。このため、アクセスポイント100と通信ができなくなる前に接続アクセスポイント101を決定しておくので、アクセスポイント100と通信ができなくなってから接続アクセスポイント102を決定するのに比べて、通信が途切れる期間を短くすることができる。また、第2のしきい値を第1の無線局装置と無線通信が可能な最小の値近くに設定するようにすれば、アクセスポイント100の性能を最大限に利用することがでる。
また、通信しているアクセスポイント100の電波強度E1が第1のしきい値を下回った後、電波強度E1が第3のしきい値を超えると、スキャンを実行しない。スキャンを実行している間は、アクセスポイント100と通信することができないので、通信しているアクセスポイント100の電波強度E1が十分に高くなった場合は、スキャンを中止することにより、通信することができない期間をなくすことができる。
また、通信しているアクセスポイント100の電波強度E1が第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値を下回らない場合であっても、別のアクセスポイント101,102の電波強度E2と電波強度E1との差が第4のしきい値より大きければ、再接続要求を送信する。これにより、ハンドオフが実行される。より電波強度の高いアクセスポイントとの通信に切り換えることにより、通信エラーの発生を少なくすることができる。
また、リアソシエーション要求を送出し、接続アクセスポイント102との間で無線通信が確立された後、ハンドオフ前に通信していたアクセスポイント100が接続されていたネットワークのゲートウェイ111にその存在を問い合わせる。ゲートウェイ111の存否により、ハンドオフ前後で携帯電話機1が接続されるネットワークが同一セグメントか否かを判断するので、DHCPサーバに問い合わせるのに比較して、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一か否かを速く判断することができる。
さらに、ハンドオフ前後で接続されるネットワークセグメントが同一ならば、アソシエーション要求を送出する前、換言すればハンドオフ前に使用していたIPアドレスを用いてIPパケットを生成して、アクセスポイント101に送信する。このため、IPアドレスを再度取得する必要がないので、IPアドレスを取得するための時間を短縮することができるとともに、第2のネットワークへの接続を維持して通話を継続することができる。
なお、上述した実施の形態においては、通信システム10、特に携帯電話機1について
説明したが、図9および図10に示した処理を携帯電話機1に実行させるための無線局装置切換方法または無線局装置切換プログラムとして発明を捉えることができるのは言うまでもない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<付記>
(1) 前記決定手段は、前記第2のチャンネルの電波強度が、第5のしきい値より大きいこと、または、前記第1チャンネルの電波強度との差が第4のしきい値より大きいことを条件に、前記第2の無線局装置を決定する、請求項1に記載の携帯譲歩端末。
(2) (1)において、前記決定手段は、前記第2の無線局装置が複数ある場合、前記第2のチャンネルの電波強度が最大の無線局装置を前記第2の無線局装置に決定する。