JP5197535B2 - リソソーム病の検出方法 - Google Patents
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Description
GAG:グリコサミノグリカン
KS:ケラタン硫酸
HS:ヘパラン硫酸
CS:コンドロイチン硫酸
CS−4S:コンドロイチン−4−硫酸
CS−6S:コンドロイチン−6−硫酸
DS:デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸Bともいう)
GSD I:グリコーゲン蓄積疾患1型
GSD II:グリコーゲン蓄積疾患2型(ポンペ病)
Hep:ヘパリン
HA:ヒアルロン酸
LIPO:リポフシノーシス
MPS:ムコ多糖症
ML:ムコリピドーシス
MLD:メタクロマティック・ロイコジストロフィー
NP:ニーマン・ピック病
TS:タイ・サックス病
ムコ多糖症(mucopolysaccharidoses)は、リソソーム病の一種であり、GAGの分解代謝に関係する酵素の障害(活性低下)によって起こる一連の遺伝病の総称である。障害される酵素の種類に応じて特異的なGAGが組織中に蓄積し、体液中に分泌されることが知られている。ムコ多糖症の臨床症状は多様だが、多くは、粗な顔貌、多発性骨異常や内臓腫大を伴う。また聴力低下、心血管障害や精神発達の遅れを伴う場合もある。
ムコ多糖症の型とこれに対応して蓄積されるGAGとの関係は、表1−1の通りであることが知られている(非特許文献1等参照)。
メタクロマティック・ロイコジストロフィー(Metachromatic Leukodystrophy)は、アリールスルファターゼA(arylsulfatase A)の障害によって、スルファチド(sulphatides)が蓄積する疾患である。
ニーマン・ピック(Niemann−Pick)病は、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)が蓄積する疾患である。
タイ・サックス(Tay−Sachs)病は、N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼA(N−acetyl−β−D−glucosaminidase A)のα−サブユニットの障害によって、GM2ガングリオシド(GM2 ganglioside)が蓄積する疾患である。
クラッベ(Krabbe)病は、β−D−ガラクトセレブロシダーゼ(β−D−galactocerebrosidase)の障害によって、ガラクトセレブロシド(galactocerebroside)が蓄積する疾患である。
これらの疾患についても、GAGが体液中に多量に排出されていることは知られていなかった。
さらに、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、メタクロマティック・ロイコジストロフィー、ニーマン・ピック病、タイ・サックス病、サンドホッフ病、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病、ファブリー病、ガウチャー病、グリコーゲン蓄積疾患及びリポフシノーシスなどのリソソーム病についてもGAGが体液中に多量に排出されている事実を発見した。そして、これに基づいてリソソーム病についての高精度、高感度、簡便、効率的かつ安価な検出方法及びキットを提供するに至り、本発明を完成した。
本発明方法における「リソソーム病」は、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、メタクロマティック・ロイコジストロフィー、ニーマン・ピック病、タイ・サックス病、サンドホッフ病、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病、ファブリー病、ガウチャー病、グリコーゲン蓄積疾患及びリポフシノーシスから選ばれる1以上の疾患であることが好ましい。
本発明方法における検体は、体液であることが好ましく、尿又は血液であることがより好ましい。
また本発明方法における単一種類のGAGの測定は、GAG含有分子に特異的に結合するポリペプチドを用いて行われることが好ましい。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」、「検体」及び「GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチド」を接触させ、「固相に固着された前記第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子−第2のポリペプチド」からなるサンドイッチ状複合体を形成させる工程。
(2)工程(1)において形成されたサンドイッチ状複合体を検出する工程。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」に「検体」を接触させて、「固相に固着された第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子」からなる複合体を形成させる工程。
(2)前記固相に、「GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチド」を接触させ、「固相に固着された前記第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子−第2のポリペプチド」からなるサンドイッチ状複合体を形成させる工程。
(3)工程(2)において形成されたサンドイッチ状複合体を検出する工程。
前記の「第2のポリペプチド」は、標識物質で標識されているか又は標識されることが好ましい。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド」、「検体」及び「GAG含有分子が固着された固相」を接触させ、「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第1の複合体及び「検体中のGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体を形成させる工程。
(2)工程(1)において形成された「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第1の複合体及び「検体中のGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体の少なくとも一方の複合体を検出する工程。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド」と「検体」とを接触させて、「第3のポリペプチド−検体中のGAG含有分子」からなる第1の複合体を形成させる工程。
(2)「GAG含有分子が固着された固相」に、工程(1)によって得られた「『第1の複合体』と『第1の複合体を形成しなかった第3のポリペプチド』とを含有する混合物」を接触させ、「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体を形成させる工程。
(3)工程(2)において形成された第2の複合体を検出する工程。
(A)GAG含有分子に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相、及び、
(B)GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの。
(A)GAG含有分子が固着された固相、
(B)GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド、及び、
(C)第3のポリペプチドに特異的に結合する第4のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの
これらのポリペプチドは、抗体又はその抗原結合部位を有するポリペプチドであることが好ましい。
<1>本発明方法
本発明方法は、検体中の単一種類のGAGを測定し、その測定結果とリソソーム病とを関連づけるステップを少なくとも含む、リソソーム病の検出方法である。
本発明方法は、好ましくは、検体中の単一種類のGAGを測定し、その測定結果とムコ多糖症、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、メタクロマティック・ロイコジストロフィー、ニーマン・ピック病、タイ・サックス病、サンドホッフ病、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病、ファブリー病、ガウチャー病、グリコーゲン蓄積疾患及びリポフシノーシスから選ばれる1以上の疾患とを関連づけるステップを少なくとも含む、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、メタクロマティック・ロイコジストロフィー、ニーマン・ピック病、タイ・サックス病、サンドホッフ病、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病、ファブリー病、ガウチャー病、グリコーゲン蓄積疾患及びリポフシノーシスから選ばれる1以上の疾患の検出方法である。
これに対し、本発明方法は「単一種類のGAG」の測定のみをもってムコ多糖症との関連づけを可能とするものである。さらにムコ多糖症に止まらず、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、メタクロマティック・ロイコジストロフィー、ニーマン・ピック病、タイ・サックス病、サンドホッフ病、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病、ファブリー病、ガウチャー病、グリコーゲン蓄積疾患及びリポフシノーシスから選ばれる1以上の疾患との関連づけをも可能とするものである。
「体液」が採取される対象も、リソソーム病に罹患する可能性がある動物である限りにおいて特に限定されないが、リソソーム病に罹患する可能性がある哺乳動物が好ましく、なかでもヒトが好ましい。ヒトのなかでも特に出生直後〜6ヶ月程度の新生児が好ましい。
「GAG」としては、KS、HS、CS、DS(コンドロイチン硫酸Bと呼ばれる場合もある)、Hep、HA等が例示されるが、硫酸基を有するGAGであることが好ましい。なかでもKS、HS、CS又はDSであることが好ましく、KS又はHSであることがより好ましく、KSであることが特に好ましい。
そして、このようなGAGにタンパク質が結合した「プロテオグリカン」としては、例えばデコリン(コアタンパク質にDSが結合している)、アグリカン(コアタンパク質にCS及びKSが結合している)、バーシカン(コアタンパク質にDSが結合している)、ケラトカン(コアタンパク質にKSが結合している)、シンデカン(コアタンパク質にCS及びHSが結合している)、パールカン(コアタンパク質にHSが結合している)等を例示することができる。
単一種類のGAGの測定(特定種類のGAGの測定)は、例えば以下の方法で行うことができる。
i) GAGに特異的に結合するポリペプチドを用いる方法。
ii) 各種クロマトグラフィーを用いて分析する方法。クロマトグラフィーの方法は特に限定されず、ガスクロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー法をはじめとする各種のクロマトグラフィー法を用いることができる。例えば、特定種類のGAGに特異的な分解酵素を検体中のGAGに作用させ、これによって生ずる分解産物(二糖)のイオン交換カラムからの溶出時間を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析する方法(二糖分析)が例示される。
iii)特定種類のGAGに特異的な分解酵素を検体中のGAGに作用させ、GAGの分解の有無及び程度を、GAGに反応する色素を用いて分析する方法。
iv) 特定種類のGAGに特異的な分解酵素を検体中のGAGに作用させ、GAGの分解の有無及び程度を、当該GAGに特異的に結合するポリペプチドを用いて分析する方法。
このiv)の方法は、後述の実施例1にも記載されている。
v) マススペクトロメトリーによって分析する方法。マススペクトロメトリーの方法は特に限定されず、タンデムマススペクトロメトリー法(MS/MS)、MALDI−TOFMS法等をはじめとする各種マススペクトロメトリー法を用いることができる。
これらのなかでも、GAGに特異的に結合するポリペプチドを用いて行われることが好ましい。
また「抗体のFabを有するポリペプチド」としては、例えば、目的とするFabを有するキメラ抗体を挙げることができる。抗体をコードする遺伝子の塩基配列や抗体のアミノ酸配列が決定されれば、目的とするFab部位を有するキメラ抗体や、目的とするFab部位を含むフラグメント等を遺伝子工学的に製造することができる。
ここで用いる「抗体」は、「単一種類のGAG」に特異的に結合する抗体である限りにおいて特に限定されず、ポリクローナル、モノクローナルのいずれであってもよいが、特異性、均質性、再現性、大量かつ永続的な生産性等の観点からモノクローナル抗体であることが好ましい。
1)ポリクローナル抗体の製造方法:
抗原を、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ニワトリ等の被免疫動物の皮下、腹腔内、足蹠(footpad)等に投与する。
被免疫動物を免疫する際に、補助剤(アジュバント)を併用することは、抗体産生細胞を賦活するので望ましい。また初回免疫後、2〜3週目に常法によって追加免疫を行うと力価の高い抗血清が得られる。最終免疫から約1週間後に血液を採取し、血清を分離する。この血清を熱処理して補体を失活させた後、通常の抗体の精製方法によって免疫グロブリン画分を精製してもよい。
2)モノクローナル抗体の製造方法:
モノクローナル抗体は、KohlerとMilsteinの方法(Nature 256,495−497(1975))によって作製することができる。
被免疫動物から脾臓細胞、リンパ細胞、末梢血液等を採取し、これらと腫瘍細胞株であるミエローマ細胞とを細胞融合させてハイブリドーマを調製する。なお細胞融合に用いるミエローマ細胞は、種々の哺乳動物の細胞株を利用することができるが、被免疫動物と同種の動物の細胞株を用いることが好ましい。またミエローマ細胞は、細胞融合の後に未融合細胞と融合細胞とを区別できるようにするために、未融合のミエローマ細胞が生存できずハイブリドーマだけが増殖できるように、マーカーを有するものを用いることが好ましい。またミエローマ細胞は、固有の免疫グロブリンを分泌しない株を使用することが、ハイブリドーマの培養上清から目的の抗体を取得することが容易となる点で好ましい。
得られたハイブリドーマを連続増殖させ、抗原に対して特異的に結合する抗体を継続的に産生するハイブリドーマ株を選別する。
抗体の免疫グロブリンクラスは特に限定されないが、IgGであることが好ましい。免疫グロブリンクラスがIgGである抗体は、抗IgG抗体を用いたスクリーニングによって取得することができる。
以上の抗体はいずれも公知であり、またJM403以外については生化学工業株式会社(東京)から市販されていることから、当業者が適宜作製し又は入手することができる。
i) 第1のポリペプチドが固着された固相に検体を接触させ、次いでこれに第2のポリペプチドを接触させることによって、サンドイッチ状複合体を形成させ、この複合体を検出する方法(いわゆるサンドイッチ法)。
ii)固相に固着させたGAG含有分子、検体及びポリペプチド(検体及びポリペプチドは、予め接触させておいてもよい)の共存下で、固相に固着させたGAG含有分子と検体中のGAG含有分子とを競合させ、固相に結合したポリペプチドを検出することによって検体中のGAG量を求める方法(いわゆる阻害法)。
iii)ポリペプチドを固着させた微粒子に検体を接触させ、次いでこれにポリペプチドを接触させることによって微粒子を凝集させて、この凝集物(または沈殿物)を検出する方法(いわゆる凝集法)。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」、「検体」及び「GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチド」を接触させ、「固相に固着された前記第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子−第2のポリペプチド」からなるサンドイッチ状複合体を形成させる工程。
(2)工程(1)において形成されたサンドイッチ状複合体を検出する工程。
この工程(1)は、「GAG含有分子に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」、「検体」及び「GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチド」の3者を同時に接触させてもよく、前2者を接触させた後にこれを後1者に接触させてもよく、また、後2者を接触させた後に前1者に接触させてもよい。この本発明方法は、なかでも前2者を接触させた後にこれを後1者に接触させることが好ましい。すなわち、下記(1)〜(3)の工程を少なくとも含む工程によって行われることがより好ましい。
(2)前記固相に、「GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチド」を接触させ、「固相に固着された前記第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子−第2のポリペプチド」からなるサンドイッチ状複合体を形成させる工程。
(3)工程(2)において形成されたサンドイッチ状複合体を検出する工程。
工程(1)
工程(1)は、「GAG含有分子に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」に「検体」を接触させて、「固相に固着された第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子」からなる複合体を形成させる工程である。
本明細書において「GAG含有分子」とは、GAGを成分として含有する分子を意味する。このような分子としては、GAG分子自体(他の成分を含まない)のほか、プロテオグリカン分子等が例示される。
第1のポリペプチドを固着する固相は、ポリペプチドを固着させることができ、かつ、水、検体または測定反応液に不溶性である限りにおいて特に限定されない。固相の形状としては、プレート(例えばマイクロプレートのウエル等)、チューブ、ビーズ、メンブレン、ゲル、微粒子状固相担体(ゼラチン粒子、カオリン粒子、ラテックス等の合成ポリマー粒子等)等を例示することができる。なかでも、正確な定量性と使用上の簡便性の点から、マイクロプレートが望ましい。
物理的吸着の具体的方法を例示すると以下の通りである。ここでは、第1のポリペプチドとして「抗KS抗体」を用いた場合の例を示す。
前記の説明と同様である。
(1)−4 固相と検体との接触
固相と検体との接触方法は、当該固相に固着された第1のポリペプチド分子と、検体中に存在するGAG含有分子とが接触する状態となる限りにおいて特に限定されない。例えば、固相に検体を添加して接触させても良く、また検体に固相を添加して接触させても良く、別体の容器に両者を同時に添加しても良い。接触の方法はこれらに限定されるものではなく、固相の形状や材質等に応じて当業者が適宜決定することができる。
工程(2)は、工程(1)を経た前記固相に、GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチドを接触させ、「固相に固着された第1のポリペプチド−検体中のGAG含有分子−第2のポリペプチド」からなるサンドイッチ状複合体を形成させる工程である。
前記の「第1のポリペプチド」の説明と同様である。
この第2のポリペプチドは、検出を容易とするために標識物質で標識されているか又は標識されることが好ましい。標識に用いることができる標識物質は、通常のタンパク質の標識に使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性同位元素(125I、131I、3Hなど)、蛍光色素(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リスアミンローダミンB(Lissamine Rhodamine B)、テキサスレッド(Texas Red)、フィコエリスリン(Phycoerythrin;PE)、ウンベリフェロン、ユーロピウム、フィコシアニン、トリカラー、シアニンなど)、化学発光物質(ルミノールなど)、ハプテン(ジニトロフルオロベンゼン、アデノシン一リン酸(AMP)、2,4−ジニトロアニリンなど)、特異的結合対(ビオチンとアビジン類(ストレプトアビジンなど)、レクチンと糖鎖、アゴニストとアゴニストの受容体、ヘパリンとアンチトロンビンIII(ATIII)、多糖類とその結合タンパク質(ヒアルロン酸とヒアルロン酸結合性タンパク質(HABP)など)のいずれか一方の物質等が例示される。
この第2のポリペプチドは、標識物質で予め標識されていることが好ましい。
前記(1)−4と同様に行うことができる。反応後に固相と液相を分離する点、及び必要に応じて固相の表面を洗浄液で洗浄して非特異的吸着物や反応しなかった検体中の成分を除去することが好ましい点についても(1)−4と同様である。また、用いることができる洗浄液についても(1)−4と同様である。
工程(3)は、工程(2)において形成されたサンドイッチ状複合体を検出する工程である。
サンドイッチ状複合体の検出方法は特に限定されない。例えば第2のポリペプチドが標識物質で標識されている場合には、当該標識物質を検出することによって、当該複合体を検出することができる。
次いで、これに該酵素の基質(例えば過酸化水素(酵素がペルオキシダーゼの場合))及び発色物質(例えば3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)や、ジアミノベンチジン等)を添加して、酵素反応による生成物の発色の度合いを吸光度で測定することによって、標識物質を検出することができる。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド」、「検体」及び「GAG含有分子が固着された固相」を接触させ、「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第1の複合体及び「検体中のGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体を形成させる工程。
(2)工程(1)において形成された「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第1の複合体及び「検体中のGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体の少なくとも一方の複合体を検出する工程。
(1)「GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド」と「検体」とを接触させて、「第3のポリペプチド−検体中のGAG含有分子」からなる第1の複合体を形成させる工程。
(2)GAG含有分子が固着された固相に、工程(1)によって得られた「『第1の複合体』と『第1の複合体を形成しなかった第3のポリペプチド』とを含有する混合物」を接触させ、「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体を形成させる工程。
(3)工程(2)において形成された第2の複合体を検出する工程。
この第2の複合体の検出は、「第3のポリペプチドに特異的に結合する第4のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの」を用いて行われることが好ましい。
工程(1)
工程(1)は、「GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド」と「検体」とを接触させて、「第3のポリペプチド−検体中のGAG含有分子」からなる第1の複合体を形成させる工程である。
工程(2)は、GAG含有分子が固着された固相に、工程(1)によって得られた「『第1の複合体』と『第1の複合体を形成しなかった第3のポリペプチド』とを含有する混合物」を接触させ、「固相に固着されたGAG含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体を形成させる工程である。
工程(3)は、工程(2)において形成された第2の複合体を検出する工程である。
この第2の複合体の検出方法も特に限定されないが、「第3のポリペプチドに特異的に結合する第4のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの」を用いて行われることが好ましい。
前記の通り、リソソーム病の動物の検体中ではGAGが有意に増加する。よって単一種類のGAGの測定結果(GAGの量)が、健常動物(リソソーム病でない動物)における測定結果(GAGの量)に比して高い場合には、「リソソーム病である」又は「リソソーム病である可能性が高い」と関連づけることができる。
本発明キットは、下記の構成成分を少なくとも含み、検体中の単一種類のGAGの測定結果に基づいてムコ多糖症、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、メタクロマティック・ロイコジストロフィー、ニーマン・ピック病、タイ・サックス病、サンドホッフ病、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病、ファブリー病、ガウチャー病、グリコーゲン蓄積疾患及びリポフシノーシスから選ばれる1以上の疾患を検出するためのキットである。
(B)GAG含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの
(A)GAG含有分子が固着された固相、
(B)GAG含有分子に特異的に結合する第3のポリペプチド、及び、
(C)第3のポリペプチドに特異的に結合する第4のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの
これらの本発明キットを用いたムコ多糖症等の検出は、前記の「<1>本発明方法」に従って行うことができる。
(1)本実施例において用いた検体、試薬等は以下の通りである。
(検体及び標準品)
I、II、III、IV又はVI型のムコ多糖症のヒト(各1名)、及び健常なヒト(ムコ多糖症ではないヒト)(2名)の尿を検体とした。
またGAGの標準品としては、以下のものを用いた。
このHSは、生化学工業株式会社の試薬カタログコード番号400700として同社から販売されているものであり、以下の性質を有する。
窒素含量:2.6〜3.2%(Z.Anal.Chem.,22,p366(1883)に記載の方法で測定)
硫黄含量:5.0〜6.0%(Mikrochim.Acta.,123(1955)に記載の方法で測定)
ウロン酸含量:28.0〜30.0%(オルシノール反応)
36.0〜40.0%(カルバゾール反応)
グルコサミン含量:30.0〜35.0%(アミノ酸自動分析器)
ガラクトサミン含量:<0.01%
このKSは、生化学工業株式会社の試薬カタログコード番号400610として同社から販売されているキットに含まれているものであり、以下の性質を有する。
窒素含量:2.58%(Z.Anal.Chem.,22,p366(1883)に記載の方法で測定)硫黄含量:9.70%(Mikrochim.Acta.,123(1955)に記載の方法で測定)グルコサミン含量:23.51%(アミノ酸自動分析器)ガラクトサミン含量:0.11%(アミノ酸自動分析器)ガラクトース含量:26.26%(Biochem.J.,50,298(1952))
このCSは、生化学工業株式会社の試薬カタログコード番号400676として同社から販売されているものであり、以下の性質を有する。
窒素含量:2.2〜2.6%(Z.Anal.Chem.,22,p366(1883)に記載の方法で測定)硫黄含量:7.1〜7.7%(Mikrochim.Acta.,123(1955)に記載の方法で測定)ガラクトサミン含量:30〜35%(アミノ酸自動分析器)グルクロン酸含量:32〜35%(カルバゾール反応)
コンドロイチン硫酸Dは、「グルクロン酸残基とN−アセチルガラクトサミン残基とがβ1,3グリコシド結合した二糖単位」が連続して結合されてなる分子であって、「2位が硫酸化されたグルクロン酸残基−6位が硫酸化されたN−アセチルガラクトサミン残基」からなる二糖単位を主たる構成成分とするCSである。
固相に固着させる抗KS抗体としては「5D4」(生化学工業株式会社製)を使用した。
また、ビオチン化された抗KS抗体としては「ビオチン化5D4」(生化学工業株式会社製)を使用した。
プロテオグリカン(デコリン)のコアタンパク質に対する抗体としては、「6−B−6」(生化学工業株式会社製)を使用した。
抗体固着プレート(5D4、F58−10E4、LY111又は6−B−6が固着されたプレート)は、以下の通り作製した;
抗体をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に溶解してタンパク質濃度を20μg/mlに調整した。これをイムノプレート(マキシソープ;ヌンク社製)に50μl/ウエルで添加して、37℃で1.5時間インキュベートした。
インキュベート後、ウエルをPBSで2回洗浄し、ブロッキング剤(イムノアッセイスタビライザー;アプライド・バイオシステムズ社製)を200μl/ウエルで添加して、37℃にて1時間インキュベートした。
このようにして作製された抗体固着プレートは、洗浄液で3回洗浄してすぐに使用することができる。またプレートを乾燥して数ヶ月間保存した後でも使用することができる。
洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)
検体希釈液(1% ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS(−))
各検体を検体希釈液で希釈して、希釈済の検体(0.5ml)を2セットずつ用意した。一方には2.5mUのケラタナーゼII(生化学工業株式会社製)を添加し、他方にはこれを添加せずに、それぞれ室温で3時間インキュベートした。
処理後の検体を「測定用検体」とし、5D4固着プレートとビオチン化5D4を用いて、以下の方法でGAGの測定を行った。
測定用検体を50μl/ウエルで上記の抗体結合プレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
検体希釈液で0.5μg/mlに調整したビオチン化5D4を50μl/ウエルでプレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
検体希釈液で1000倍に希釈したアビジン−ペルオキシダーゼ(Vector社製)を50μl/ウエルでプレートに添加して、37℃で30分間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
TMB溶液(基質)(Moss Inc)を50μl/ウエルでプレートに添加して、室温で5分間インキュベートした。その後、1M HClを50μl/ウエルで添加して酵素反応を停止させた。その後、吸光光度計を用いて450−630nmの吸光度を測定した。
したがって、体液(尿)中の単一種類のGAG(KS)の測定結果とムコ多糖症とを関連づけることによって、ムコ多糖症を検出できることが示された。
各検体を検体希釈液で希釈して、希釈済の検体(0.5ml)を2セットずつ用意した。一方には10mUのヘパリチナーゼI(生化学工業株式会社製)を添加し、他方にはこれを添加せずに、それぞれ室温で1時間インキュベートした。また、標準品(HS)についても検体と同様に処理した。
処理後の検体を「測定用検体」とし、F58−10E4固着プレートとビオチン化F58−10E4を用いて、以下の方法でGAGの測定を行った。
測定用検体を50μl/ウエルで上記の抗体結合プレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
4℃の検体希釈液で1000倍に希釈したアビジン−ペルオキシダーゼ(Vector社製)、及び、4℃の検体希釈液で1.0μg/mlに調整したビオチン化F58−10E4をそれぞれ25μl/ウエルでプレートに添加して、4℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
TMB溶液(基質)の添加から吸光度の測定までのステップは、前記(2)と同様に行った。
したがって、体液(尿)中の単一種類のGAG(HS)の測定結果とムコ多糖症とを関連づけることによって、ムコ多糖症を検出できることが示された。
各検体を検体希釈液で希釈して、希釈済の検体(0.5ml)を用意した。
この検体を「測定用検体」とし、LY111固着プレートとビオチン化LY111を用いて、以下の方法でGAGの測定を行った。
測定用検体を50μl/ウエルで上記の抗体結合プレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
4℃の検体希釈液で1000倍に希釈したアビジン−ペルオキシダーゼ(Vector社製)、及び、4℃の検体希釈液で1.0μg/mlに調整したビオチン化LY111をそれぞれ25μl/ウエルでプレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
図3から、I型〜VI型のいずれのムコ多糖症患者の尿も、健常者に比して顕著に高い吸光度を示した。この結果から、I型〜VI型のいずれのムコ多糖症患者の尿においてもCSの量が顕著に増加していることが示された。特に、I型、II型、III型、IV型及びVI型のムコ多糖症患者の尿においてもCS量が増加しているとの知見は、驚くべきものである。
したがって、体液(尿)中の単一種類のGAG(CS)の測定結果とムコ多糖症とを関連づけることによって、ムコ多糖症を検出できることが示された。
各検体を検体希釈液で希釈して、希釈済の検体(0.5ml)を用意した。
この検体を「測定用検体」とし、6−B−6固着プレートとビオチン化LY111を用いて、以下の方法でGAGの測定を行った。なお、6−B−6はプロテオグリカン(デコリン)のコアタンパク質に特異的に結合する抗体である。よって、ここでの測定対象となるGAGは、プロテオグリカン(デコリン)分子中に存在するDSである。
測定用検体を50μl/ウエルで上記の抗体結合プレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
4℃の検体希釈液で1000倍に希釈したアビジン−ペルオキシダーゼ(Vector社製)、及び、4℃の検体希釈液で1.0μg/mlに調整したビオチン化LY111をそれぞれ25μl/ウエルでプレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液を200μl/ウエルで添加して4回洗浄した。
図4から、I型〜VI型のいずれのムコ多糖症患者の尿も、健常者に比して顕著に高い吸光度を示した。この結果から、I型〜VI型のいずれのムコ多糖症患者の尿においてもDSの量が顕著に増加していることが示された。特に、III型及びIV型のムコ多糖症患者の尿においてもDS量が増加しているとの知見は、驚くべきものである。
したがって、体液(尿)中の単一種類のGAG(DS)の測定結果とムコ多糖症とを関連づけることによって、ムコ多糖症を検出できることが示された。
(1)本実施例において用いた検体、試薬等は以下の通りである。
(検体)
IIIB又はVII型のムコ多糖症のモデル動物(イヌ)、I、VI又はVII型のムコ多糖症のモデル動物(ネコ)及び健常な動物(ムコ多糖症ではないイヌ及びネコ)の血清及び尿を検体とした。
またGAGの標準品としては、ウシ角膜由来のKS(シグマ社)を用いた。
一次抗体として抗KS抗体「5D4」(1/20/5D4;ICN イムノバイオロジカルズ)を使用した。また、二次抗体としてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(H+L)(ピアス社)を使用した。
抗原固着プレート(KSが固着されたプレート)は、以下の通り作製した;
1mgのKS(ウシ角膜由来;シグマ社)溶液あたり0.2UのコンドロイチナーゼABC(生化学工業株式会社製)を添加して、振とうしながら37℃で2時間インキュベートして、夾雑するCS等を分解した。コンドロイチナーゼABC処理後、KSを希釈し、イムノプレート(ヌンク社製)に200μl/ウエルで添加して、室温で2時間インキュベートした。
このようにして作製された抗原固着プレートは、洗浄してすぐに使用することもでき、少なくとも4℃で1ヶ月間程度保存した後でも使用することができる。
洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS(pH5.3))
検体希釈液(1% BSA及び0.05% Tween20を含有するPBS(pH5.3))
イムノプレート(抗原は固着されていない)に検体(血清又は尿)を入れ、検体希釈液で希釈して140μl/ウエルとした。これに、検体希釈液で18,000倍に希釈した一次抗体を140μl/ウエル添加し、4℃で一晩インキュベートした。
抗原固着プレートのウエルを洗浄液で3回洗浄した後、これにインキュベート後の検体混合液(一次抗体と反応済)を200μl/ウエルで添加して、4℃で1時間インキュベートした。その後、ウエルを洗浄液で3回洗浄した。
検体希釈液で1000倍に希釈した二次抗体を200μl/ウエルで添加して、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。その後、ウエルを洗浄液で3回洗浄した。
TMB溶液(基質)(Moss Inc)を200μl/ウエルでプレートに添加して、室温で発色の程度を見ながらインキュベートした。2M HClを50μl/ウエルで添加して酵素反応を停止させ、吸光光度計を用いて490nmの吸光度を測定した。吸光度の測定結果と、標準品を用いて予め作成しておいた検量線とを用いて、KS濃度を求めた。検体として尿を用いた結果を以下に示す。カッコ内の数値は、クレアチニン(Cre)濃度に対して補正した値である。
健常イヌ 121.38ng/ml(132.49ng/mgCre)
MPS IIIB型イヌ 380.52ng/ml(345.85ng/mgCre)
MPS VII型イヌ 1988.28ng/ml(435.07ng/mgCre)
MPS I型ネコ 3150.90ng/ml(1057.34ng/mgCre)
MPS VI型ネコ 1812.78ng/ml(1066.34ng/mgCre)
MPS VII型ネコ 3224.61ng/ml(1258.63ng/mgCre)
(血清)
健常イヌ 89.1ng/ml
MPS IIIB型イヌ 186.2ng/ml
MPS VII型イヌ 457ng/ml
健常ネコ 120ng/ml
MPS I型ネコ 396ng/ml
MPS VI型ネコ 554.4ng/ml
MPS VII型ネコ 483.3ng/ml
したがって、この結果からも、体液(尿や血液)中の単一種類のGAG(KS)の測定結果とムコ多糖症とを関連づけることによって、ムコ多糖症を検出できることが示された。
ヒトの尿又は血漿を検体とし、サンドイッチ法によってマススケールでのムコ多糖症の検出を試みた。その方法は、実施例1の「(2)KS測定によるムコ多糖症の検出」と同様である。
検体として尿を用いた結果(クレアチニン(Cre)濃度に対して補正した値)を図5に、血漿を用いた結果を図6及び図7に示す。
なお、図5中の「コントロール」は健常なヒト(n=67)の結果を、「全MPS IVA」はムコ多糖症 IVA型ヒト(年齢を問わない;n=78)の全サンプルについての結果を、「重症」はムコ多糖症 IVA型(重症型)ヒト(n=54)の結果を、「軽症」はムコ多糖症 IVA型(軽症型)ヒト(n=11)の結果を、「コントロール 0−5」は健常なヒト(0歳以上5歳未満;n=21)の結果を、「IVA 0−5」はムコ多糖症 IVA型ヒト(0歳以上5歳未満;n=12)の結果を、「コントロール 5−10」は健常なヒト(5歳以上10歳未満;n=21)の結果を、「IVA 5−10」はムコ多糖症 IVA型ヒト(5歳以上10歳未満;n=28)の結果を、「コントロール 10−15」は健常なヒト(10歳以上15歳未満;n=10)の結果を、「IVA 10−15」はムコ多糖症 IVA型ヒト(10歳以上15歳未満;n=9)の結果を、「コントロール 15以上」は健常なヒト(15歳以上;n=29)の結果を、「IVA 15以上」はムコ多糖症 IVA型ヒト(15歳以上;n=18)の結果をそれぞれ示す。
ヒトの血清又は尿を検体とし、サンドイッチ法によってムコリピドーシスの検出を試みた。その方法は、実施例1の「(2)KS測定によるムコ多糖症の検出」と同様である。
検体として尿を用いた結果(クレアチニン(Cre)濃度に対して補正した値)を以下に示す。「健常なヒト」については「平均値±SD」で示した。
(尿)
健常なヒト 0.208±0.142ng/mgCre
ML II型ヒト 0.92ng/mgCre
ML II型ヒト 0.615ng/mgCre
ML III型ヒト 1.25ng/mgCre
ML III型ヒト 0.75ng/mgCre
ML(型は不明)ヒト 0.614ng/mgCre
また、検体として血清を用いた結果を以下に示す。「健常なヒト」については「平均値±SD」で示した。
健常なヒト(臍帯血) 44.2±27.87ng/ml
健常なヒト(1〜3歳) 127±23.18ng/ml
健常なヒト(4〜14歳) 237±58ng/ml
健常なヒト(18歳以上) 137±51.7ng/ml
ML II型ヒト(0.9歳)263ng/ml
ML III型ヒト(12歳)1147ng/ml
ML III型ヒト(10歳)743ng/ml
ML III型ヒト(40歳)340ng/ml
したがって、この結果から、体液(尿や血液)中の単一種類のGAG(KS)の測定結果とムコリピドーシスとを関連づけることによって、ムコリピドーシスを検出できることが示された。
ヒトの血清又は尿を検体とし、サンドイッチ法によってGM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス及びガラクトシアリドーシスの検出を試みた。その方法は、実施例1の「(2)KS測定によるムコ多糖症の検出」と同様である。
検体として尿を用いた結果(クレアチニン(Cre)濃度に対して補正した値)を以下に示す。「健常なヒト」については「平均値±SD」で示した。
(尿)
健常なヒト 0.215±0.14ng/mgCre
GM1ガングリオシドーシス ヒト 3.406ng/mgCre
フコシドーシス ヒト 1.44ng/mgCre
フコシドーシス ヒト 1.37ng/mgCre
ガラクトシアリドーシス ヒト 1.18ng/mgCre
以上の結果から、ムコ多糖症、ムコリピドーシスのみならず、ガラクトシアリドーシスの動物においてもKSの量が顕著に増加していることが確認された。
したがって、この結果から、体液(尿や血液)中の単一種類のGAG(KS)の測定結果とGM1ガングリオシドーシス、フコシドーシス又はガラクトシアリドーシスとを関連づけることによって、これらの疾患を検出できることが示された。
ヒトの尿を検体とし、HPLCを用いる方法(二糖分析)によってGAGの検出を行った。結果を表2に示す。
なお、表2中の「全−CS」は全コンドロイチン硫酸を、「DS−4S」は4位硫酸化デルマタン硫酸を、「Cre」はクレアチニンを示す。
ヒトの血清又は尿を検体とし、サンドイッチ法によって各種リソソーム病の検出を試みた。その方法は、実施例1の「(3)HS測定によるムコ多糖症の検出」と同様である。
検体として血清を用いた結果を以下に示す。数値は「平均値」である。
(血清)
健常なヒト(n=51) 4.89U/ml
MPS I型ヒト(n=16) 38.0U/ml
MPS II型ヒト(n=25) 82.1U/ml
MPS IIIA型ヒト(n=6) 22.0U/ml
MPS IIIB型ヒト(n=6) 26.8U/ml
MPS IIIC型ヒト(n=3) 13.4U/ml
MPS IVA型ヒト(n=29) 7.51U/ml
MPS IVB型ヒト(n=2) 9.43U/ml
MPS VI型ヒト(n=3) 12.0U/ml
MPS VII型ヒト(n=5) 18.9U/ml
MLDヒト(n=4) 9.82U/ml
LIPOヒト(n=1) 103U/ml
TSヒト(n=7) 13.0U/ml
GSD I型ヒト(n=1) 19.1U/ml
GSD II型ヒト(n=1) 7.57U/ml
サンドホッフ病(SAN) ヒト(n=3) 7.59U/ml
ML II型ヒト(n=2) 54.1U/ml
ML III型ヒト(n=3) 12.2U/ml
NP B型ヒト(n=5) 8.67U/ml
NP C型ヒト(n=4) 6.06U/ml
GM2ガングリオシドーシス ヒト(n=1) 10.7U/ml
クラッベ病 ヒト(n=3) 6.68U/ml
ファブリー病 ヒト(n=5) 10.6U/ml
ガウチャー病 I型(GCI)ヒト(n=5) 8.18U/ml
ガウチャー病 III型(GCIII)ヒト(n=2) 11.7U/ml
したがって、この結果から、体液(尿や血液)中の単一種類のGAG(HS)の測定結果と以上のようなリソソーム病とを関連づけることによって、リソソーム病を検出できることが示された。
以下の構成からなる本発明キットを作製した。このキットは、サンドイッチ法によるGAGの測定を通じて、ムコ多糖症等の検出に用いることができる。
1.5D4が固着された96ウェルのイムノプレート 1枚
2.ビオチン化5D4 1本
3.アビジン−ペルオキシダーゼ 1本
4.TMB溶液 1本
5.反応停止液(1N HCl) 1本
6.洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)
7.検体希釈液(1% ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS(−))
8.KS標準溶液 1セット
このキットにはHS標準溶液を添付した。
さらに、上記のイムノプレート及びビオチン化5D4を、それぞれ6−B−6が固着された96ウェルのイムノプレート及びビオチン化LY111に置換した本発明キットを作製した。このキットにはデコリン標準溶液を添付した。
以下の構成からなる本発明キットを作製した。このキットは、阻害法によるGAGの測定を通じて、ムコ多糖症等の検出に用いることができる。
1.KSが固着された96ウェルのイムノプレート 1枚
2.5D4 1本
3.ペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(H+L) 1本
4.TMB溶液 1本
5.反応停止液(1N HCl) 1本
6.洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS(pH5.3))
7.検体希釈液(1% BSA及び0.05% Tween20を含有するPBS(pH5.3))
8.KS標準溶液 1セット
なお本発明は、リソソーム病の検出のみならず、状態の把握、治療方針の決定、治療効果の確認、経過観察、モニタリング、医薬品開発の評価等へも応用することができ、極めて有用である。
Claims (14)
- ムコ多糖症IV型に罹患している可能性のある動物由来の血液検体中におけるケラタン硫酸を測定し、その測定結果とムコ多糖症IV型とを関連づけるステップを少なくとも含む、ムコ多糖症IV型の検出方法であって、ケラタン硫酸の測定結果が健常動物と比して高い場合は、ムコ多糖症IV型に罹患している可能性が高いと関連づけ、ケラタン硫酸の測定結果が健常動物における測定結果と同等である場合は、ムコ多糖症IV型ではないと関連付ける、ムコ多糖症IV型の検出方法。
- 血液検体中のケラタン硫酸が他の成分と結合して複合体を形成している、請求項1に記載の検出方法。
- ムコ多糖症IV型に罹患している可能性のある動物が新生児である、請求項1または2に記載の検出方法。
- ケラタン硫酸の測定が、ケラタン硫酸に特異的に結合するポリペプチドを用いて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出方法。
- ポリペプチドが、ケラタン硫酸に特異的に結合する抗体または該抗体の抗原結合部位を有するポリペプチドである、請求項4に記載の検出方法。
- ケラタン硫酸の測定が、下記(1)及び(2)の工程を少なくとも含む工程によって行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出方法。
(1)「ケラタン硫酸に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」に「血液検体」を接触させて、「固相に固着された第1のポリペプチド−血液検体中のケラタン硫酸含有分子」からなる複合体を形成させる工程。
(2)工程(1)において形成された複合体を検出する工程。 - ケラタン硫酸の測定が、下記(1)〜(3)の工程を少なくとも含む工程によって行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出方法。
(1)「ケラタン硫酸に特異的に結合する第1のポリペプチドが固着された固相」に「血液検体」を接触させて、「固相に固着された第1のポリペプチド−血液検体中のケラタン硫酸含有分子」からなる複合体を形成させる工程。
(2)前記固相に、「ケラタン硫酸含有分子に特異的に結合する第2のポリペプチド」を接触させて、「固相に固着された前記第1のポリペプチド−血液検体中のケラタン硫酸含有分子−第2のポリペプチド」からなるサンドイッチ状複合体を形成させる工程。
(3)工程(2)において形成されたサンドイッチ状複合体を検出する工程。 - 第1のポリペプチドおよび/または第2のポリペプチドが、ケラタン硫酸に特異的に結合する抗体または該抗体の抗原結合部位を有するポリペプチドである、請求項7に記載の検出方法。
- 抗体が抗ケラタン硫酸抗体5D4である、請求項8に記載の検出方法。
- 第2のポリペプチドが、標識物質で標識されているか又は標識されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の検出方法。
- ケラタン硫酸の測定が、下記(1)〜(3)の工程を少なくとも含む工程によって行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出方法。
(1)「ケラタン硫酸に特異的に結合する第3のポリペプチド」と「ケラタン硫酸含有分子が固着された固相」を接触させて、「第3のポリペプチド−固相に固着されたケラタン硫酸含有分子」からなる第1の複合体を形成させる工程。
(2)血液検体中のケラタン硫酸と工程(1)によって得られた『第1の複合体』との結合に適した条件下で、血液検体に「『第1の複合体』と『第1の複合体を形成しなかった第3のポリペプチドとを含有する混合物』」を接触させて、「血液検体中のケラタン硫酸含有分子−第3のポリペプチド」からなる第2の複合体を形成させる工程。
(3)工程(2)において形成された第2の複合体を検出する工程。 - 第3のポリペプチドが、ケラタン硫酸に特異的に結合する抗体または該抗体の抗原結合部位を有するポリペプチドである、請求項11に記載の検出方法。
- 第2の複合体の検出が、「第3のポリペプチドに特異的に結合する第4のポリペプチドであって、標識物質で標識されているもの又は標識されるもの」を用いて行われる、請求項11または12に記載の検出方法。
- 第4のポリペプチドが、抗体又はその抗原結合部位を有するポリペプチドである請求項13に記載の検出方法。
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