JP2004501365A - ポンペ病および他のグリコーゲン貯蔵病のため診断方法 - Google Patents

ポンペ病および他のグリコーゲン貯蔵病のため診断方法 Download PDF

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Abstract

四糖を生物マーカーとして使用して、リソソーム貯蔵病、好ましくは、グリコーゲン貯蔵病に関して、被験者をスクリーニングする方法を提供する。さらに好ましい実施形態では、ポンペ病(すなわち、II型グリコーゲン貯蔵病)に関して、被験者をスクリーニングする。新生児スクリーニングアッセイも提供する。本発明は、さらに、罹患被験者における臨床状態および治療の有効性をモニタリングする方法を提供する。さらに、好ましくは、ポンペ病に関する新生児スクリーニングアッセイの一部として、四糖生物マーカーをタンデム型質量分析法で測定する方法を提供する。

Description

【0001】
[関連出願情報]
本出願は、2000年6月7日提出の合衆国仮出願第60/209,920号(その全部を、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)の利益を主張するものである。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、リソソーム性貯蔵疾患に罹患した患者を診断およびモニタリングする方法に関する。特に、本発明は、体液中または組織中に生物マーカーが存在することに基づいて、ポンペ病(すなわち、II型グリコーゲン貯蔵病)および他のグリコーゲン貯蔵病に罹患した患者を診断およびモニタリングする方法に関する。
【0003】
[発明の背景]
ポンペ病は、II型グリコーゲン貯蔵病(GSD−II)または酸性マルターゼ欠損症としても知られ、グリコーゲン分解酵素であるリソソーム酸性α−グルコシダーゼ(GAA)の活性不足に起因するグリコーゲン代謝の遺伝性疾患である(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease、第7版、第2巻(Scriver,C.R.,Beaudet,A.L.,W.S.,and Valle,D編)、2443〜2464ページ、McGraw−Hill,New York)のHirschhorn,R.(1995))。その最も重症の形態では、本疾患は、過度の心肥大、巨舌、進行性筋衰弱および早期幼児の著明な低血圧を特徴とする。たいていの患児は、3〜6月齢で診断され、1才以前に死亡する。
【0004】
最近、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養(Van Hove JLK,et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.93:65−70)、およびトランスジェニックマウスおよびウサギ・ミルク(Bijvoet AGA,et al.(1998)Hum Mol Genet.7:1815−24;Bijvoet AGA,et al.(1999)Hum Mol Genet 8:2145−53)で産生されるリコンビナント・ヒト前駆体、rhGAAが産生された。このrhGAAは、動物モデルおよび患者細胞における欠陥を修正することが証明されており(Kikuchi T,et al.(1998)J Clin Invest 101,827−833;Bijvoet AGA,et al.(1999)Hum Mol Genet;8,2145−53)、マウスモデルにおける全ての冒された筋肉を直すために遺伝子療法ベクターが適用されてきた(Amalfitano,A.et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96,8861−8866)。ヒトポンペ病患者の予備試験で、rhGAAは、これらの患者における心筋機能および骨格筋機能を改善できることが証明された(Amalfitano A,et al.(2001)Genet.Med.3:132)。これらの有望な新しい治療方法は、早期診断にも治療モニタリングにも適した生物マーカーアッセイの必要性を刺激してきた。
【0005】
今のところ、ポンペ病の診断で使用できる利用しやすい(且つ非侵襲的な)生物マーカーはない。ポンペ病向けのスクリーニングアッセイの開発は、幼児型疾患において特に有益であろう。ポンペ病に罹患した新生児または幼児の早期予後判定および治療によって、これらの患者の予後を改善することが可能である。さらに、モニタリング療法は、ポンペ病患者の治療効果および予後を改良することが可能である。
【0006】
Hallgren et al.((1974)Eur.J.Clin.Invest.4,429−433)は、クロマトグラフ法を使用して、推定構造であるGlcα1−6Glcα1−4Glcα1−4Glc(Glc)を有するグルコース四量体(10才のポンペ病患者の尿中で上昇した)を同定し、特性決定した。
【0007】
尿性(Glc)は、III型およびVI型グリコーゲン貯蔵病(Lennartson,G.,et al.(1976)Biomed.MassSpectrom.3,51−54;Oberholzer,K.andSewell,A.C.(1990)Clin.Chem.36,1381)、デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー(Lennartson,G.,et al.(1976)Biomed.MassSpectrom.3,51−54;KikuchiT,et al.(1998)J ClinInvest 101,827−833)、急性膵炎(Kumlien et al.,(1988)Clin.Chim.Acta 176:39;Kumlien et al.,(1989)Int.J.Pancreatol.4:139;Wang,W.T.,et al(1989)Anal.Biochem.182,48−53)、ある種の悪性腫瘍(Kumlien et al.,(1988)Clin.Chim.Acta 176:39)で、また、妊娠中(Zopf,D.A.,et al(1982)J.Immunol.Methods 48,109−119;Hallgren,P.,et al.(1977)J.Biol.Chem.252,1034−1040)に、上昇していることも証明されている。
【0008】
Lennartsonら((1978)Eur.J.Biochem.83:325)は、II型またはIII型GSD患児の2例が排泄した尿性オリゴ糖類を、ガスクロマトグラフィ(GC)/質量分析法(MS)で特性決定した。両病態で分泌された主なオリゴ糖は(Glc)であった。より大きいオリゴ糖類も存在していた。同様に、Chesterら((1983)Lancet 1:994)は、II型およびIII型GSD患者では、尿性(Glc)排泄物が4〜60倍上昇することを記述している。これらの研究者は、臨床的に正常なヘテロ接合体では、尿性(Glc)が緩やかに上昇することも報告している。ラジオイムノアッセイおよびガスクロマトグラフィ/質量分析法で、オリゴ糖の同定および定量化を実施した。Peelen et al.,(1994)Clin.Chem.40:914、およびKlein et al.,(11998)Clin.Chemistry 44:2422も参照されたい。
【0009】
Oberholzerら((1990)Clin.Chem.36:1381)は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用して、GSD患者における尿性(Glc)排泄物を分析した。この報告書から、GSD患者では、尿中の(Glc)排泄物は、肝臓の症状と相関関係があるが、筋症状とは全く相関関係がないことが理解される。
【0010】
前述の研究の中で、GSD患者における(Glc)血漿濃度を評価した研究はない。さらに、これらの研究は、新生児期の間に、健常被験者と比較して、(Glc)濃度が評価されるかどうかについて述べていない。さらに、たとえば、治療計画の有効性を評価するために、(Glc)を、ポンペ病の診断、疾患の重症度の評価、またはポンペ病患者の臨床状態のモニタリングを行うための生物マーカーとして使用できるかどうかは、これらの参考文献では示唆されていない。
【0011】
分画した尿性オリゴ糖類の過メチル化に続くガスクロマトグラフィー質量分析法、(Lennartson,G.,et al.(11976)Biomed.Mass Spectrom.3,51−54.)、ラジオイムノアッセイ(Zopf,D.A.,et al,(11982)J.ImmunoL Methods 48,109−119)、酵素結合免疫吸着検定法(Kumlien,J.et al.(1986)Glycoconjugate J.3,85−94)、(Glc)に対するモノクローナル抗体を使用したHPLC(Wang,W.T.,et al.(1989)Anal.Biochem.182,48−53)、および過ベンゾイル化オリゴの分析を含むHPLC法(Oberholzer,K.and Sewell,A.C.(1990)Clin.Chem.36,1381)、またはイオン交換とパルス電流測定検出またはポストカラム誘導体化の使用(Peelen,G.O.H.,et al.(1994)Clin.Chem.40,914−921)を含む(Glc)を分析するための様々な方法が開発された。本発明者が知る限り、タンデム型質量分析法を使用した(Glc)の検出および定量化はこれまでに記載されていない。さらに、ポンペ病患者における(Glc)の血漿濃度は、これまでに報告されていない。さらに、(Glc)を新生児期中のポンペ病に関する生物マーカーとして使用するためのプロトコールは、これまで提案されていない。
【0012】
Meikleら((1997)Clin.Chem.43:1325)およびWO97/44668号には、リソソーム性貯蔵障害に関する一般的な診断用マーカーとしての、リソソーム膜タンパク質、LAMP−1の使用について記載されている。時間分解蛍光イムノアッセイを使用して、健常被験者ならびに25のリソソーム性貯蔵障害の1つに罹患した被験者で、血漿サンプル中のLAMP−1濃度を測定した。評価した25の障害のうち17に罹患した患者の血漿サンプルで、LAMP−1が上昇していた。しかし、スクリーニングしたポンペ病患者4例のうち1例が、血漿LAMP−1濃度の上昇を示しただけであったが、被験者4例全てが、重度の臨床症状を呈していた。ポンペ病患者から確定された線維芽細胞系細胞系におけるLAMP−1およびリソソーム酵素活性も特性決定した。
【0013】
Huaら((1998)Clin.Chemistry 44:2094)は、第2のリソソーム膜タンパク質、LAMP−2を、リソソーム貯蔵障害をスクリーニングするための生物マーカーとして使用した。蛍光−免疫定量法を使用して、健常者および罹患者からの血漿中LAMP−2を測定した。評価した25例中14例のリソソーム性貯蔵障害患者が血漿LAMP−2濃度の上昇を示した。しかし、ポンペ病患者4例の中で、LAMP−2の上昇を示したものはなかった。「未区分」の新生児集団からの新生児血液スポットで、LAMP−1濃度およびLAMP−2濃度も測定した。新生児のLAMP−1およびLAMP−2濃度は、年長被験者のレベルと比較して、高かった。このレポートから、これらのリソソーム膜生物マーカーを用いた一次スクリーニングは、高率の擬陽性をもたらす可能性があることがわかる。これらの研究者は、新生児集団のトップ1〜5%を、第二段階の診断法でさらに検査することを提唱している。
【0014】
従って、特に、新生児期中に、ポンペ病患者を同定する方法が、当技術分野で必要である。ポンペ病患者を同定およびモニタリングする非侵襲的方法も、当技術分野で必要である。さらに、他の遺伝性代謝障害をスクリーニングするための既存の方法論と矛盾しない、ポンペ病用の新生児スクリーニング方法が、当技術分野で必要である。
【0015】
[発明の概要]
以下に、さらに詳しく述べる通り、本発明は、罹患者から採取した生物学的サンプル中に、(Glc)と呼ばれるヘキソース四量体生物マーカーが、蓄積すること(すなわち、濃度上昇)を特徴とする障害を、スクリーニングおよびモニタリングする方法を提供する。この(Glc)四量体は、グリコーゲン貯蔵病、たとえば、GSD−11(ポンペ病)をスクリーニングおよびモニタリングするための生物マーカーとして特に有用である。好ましい実施形態において、本発明の方法は、乾燥した血液スポット(たとえば、新生児のスクリーニング用カード上の)における(Glc)濃度を分析することによって、新生児のスクリーニングに使用することができる。
【0016】
ヘキソース四糖(Glc)の推定構造は、以下の通りに決定されている。α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glc。
【0017】
本発明は、高レベルの(Glc)生物マーカーを分析するための迅速且つ信頼できる方法(たとえば、HPLCまたはタンデム型質量分析法(TMS))を使用して、客観的な様式でポンペ病を診断し、検出し、且つ/またはモニタリングできる力を提供する。本発明は、感度、再現性、高分解能、簡便性、および低経費の点で前述の方法より有利である。さらに、本明細書に開示の新生児スクリーニング分析法は、他の遺伝性代謝障害のための最新の新生児スクリーニング方法論と矛盾しない。
【0018】
従って、第1の態様として、本発明は、グリコーゲン貯蔵病に関して被験者をスクリーニングする方法であって、被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)の濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、基準値より高い濃度で生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることにより、被験者をグリコーゲン貯蔵病に罹患していると認定することを特徴とするスクリーニング方法を提供する。この(Glc)四糖は、推定構造α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有することが好ましい。グリコーゲン貯蔵病は、II型グリコーゲン貯蔵病(GSD−IIすなわちポンペ病)、GSDIII、またはGSDVIであることがさらに好ましく、さらに好ましくは、GSD−IIである。
【0019】
さらなる態様として、本発明は、ポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)に関して新生児被験者をスクリーニングする方法であって、新生児被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、基準値より高い濃度で生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることにより、新生児被験者をポンペ病に罹患していると認定することを特徴とするスクリーニング方法を提供する。(Glc)は、推定構造α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有することが好ましい。生物学的サンプルは、血液、血清、血漿または尿サンプル(さらに好ましくは、乾燥した血液、血清、血漿または尿サンプル)であることがさらに好ましい。
【0020】
さらなる態様として、本発明は、ポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)患者の臨床状態をモニタリングする方法であって、被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)の濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、基準値より高い濃度で生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることが、被験者の臨床状態を示すことを特徴とするモニタリング方法を提供する。この(Glc)生物マーカーは、推定構造α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有することが好ましい。ある特定の実施形態では、被験者における治療計画の有効性を評価するためにこの方法が実行される。
【0021】
もう1つのさらなる態様として、本発明は、ポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)に関して新生児被験者をスクリーニングする方法であって、新生児被験者からの乾燥血液スポットにおけるヘキソース四糖(Glc)濃度をタンデム型質量分析法で決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、基準値より高い濃度で生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることによって、新生児被験者をポンペ病に罹患していると認定することを特徴とするスクリーニング方法を提供する。(Glc)生物マーカーは、推定構造α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有することが好ましい。
【0022】
この(Glc)四糖は、当技術分野で周知の任意の方法、たとえば、タンデム型質量分析法、質量分析法、HPLC、免疫精製法、液体クロマトグラフィ等々で、定量化または決定することができる。HPLCおよびタンデム型質量分析法が好ましく、タンデム型質量分析法が最も好ましい。
【0023】
本発明のさらなる態様は、被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)濃度を、タンデム型質量分析法で定量化または決定するステップを含む、生物学的サンプル中のオリゴ糖濃度を定量化または決定する方法を提供する。(Glc)は、推定構造α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有することが好ましい。[U−13C]グルコース標識されたヘキソース四量体をTMSプロトコール用の内部標準として使用することも好ましい。
【0024】
本発明の方法は、GSD−II患者に蓄積する他のオリゴ糖類(たとえば、限界デキストリン)を生物マーカーとして使用して、実施することも可能である。
【0025】
本発明のこれらの態様およびその他の態様を、以下の本発明の説明にさらに詳しく記載する。
【0026】
[発明の詳細な説明]
本発明は、II型グリコーゲン貯蔵病(GSD−II)を検出するスクリーニング方法のための生物マーカーとして、ヘキソース四量体{以下、(Glc)}を使用することができるという発見に、ある程度基づく。(Glc)は、推定的に、グルコース四糖と認定されていた。さらに、証拠から、(Glc)オリゴ糖は、構造α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有することがわかる(Hallgren et al.(1974)EurJ.Clin.Invest.4:429;図12参照)。
【0027】
本研究は、(Glc)濃度、特に血漿(Glc)濃度を使用して、ポンペ病患者をモニタリングできること(たとえば、治療計画の有効性を評価するため)、また、(Glc)濃度と、罹患者における疾患の臨床経過との良好な相関関係を証明できることを発見した。
【0028】
本明細書において、本発明の説明で使用される専門用語は、個々の実施形態を説明するためであって、本発明を限定する意図はない。本発明の説明および添付のクレームで使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上、異なることを明らかに示さない限り複数形をも含むことを意図する。
【0029】
用語「ポンペ病」および「II型グリコーゲン貯蔵病」(すなわち、GSD−II)は、本明細書では互換可能に使用されるが、「ポンペ病」は、従来、本障害の幼児型を示するために、より頻繁に使用されている。
【0030】
本明細書で使用される用語(Glc)は、ポンペ病患者の体液(たとえば、尿および血漿)中に蓄積するヘキソース四量体{(hex)}生物マーカーを指す。(Glc)は、推定的に、GAA酵素の欠損による不完全なグリコーゲン分解の結果として蓄積するグルコース四糖(たとえば、限界デキストリン)と認定された。(Glc)の推定構造は、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcである。(図12)。
【0031】
当業者は、(Glc)のアミノ安息香酸ブチル誘導体のタンデム型質量分析によって決定される(Glc)の推定構造は、ヘキソース四量体のものであることを理解するであろう。ヘキソース成分およびその間の結合の同一性は、TMS分析で決定できない。従って、当業者は、(Glc)は、可能なグルコシド結合(たとえば、1→2、1→3、1→4、1→6)のいずれかによって、間が結合されたヘキソースモノマー(たとえば、グルコース、ガラクトース、マンノース)の組み合わせを含んでもよいことを理解するであろう。
【0032】
(Glc)とポンペ病との間の連関、ならびに文献に報告された今までの観察結果から、グルコース四糖は、(Glc)の重要な成分であることが強く示唆される。
【0033】
本明細書で使用される「スクリーニング」は、上述の(Glc)の蓄積を特徴とする障害の存在に関して、被験者を評価するのに使用される手法を指す。このスクリーニング手法が、個体群または個体集団内の各個体のうちどれが、ある特定の障害に罹患しているかを決定する際に有用且つ有益であれば、スクリーニング手法は、擬陽性または擬陰性が皆無である必要はない。本明細書に開示のスクリーニング方法は、診断用および/または予後判定用の方法であってもよく、且つ/または患者治療効果のモニタリングに使用してもよい。
【0034】
本明細書で使用される「診断方法」は、ある特定の障害に罹患している被験者を同定するために実行されるスクリーニング手法を指す。
【0035】
「予後判定方法」は、疾患経過の予測を、少なくともある程度、助けるために使用される方法を指す。言い換えれば、予後判定方法を使用して、疾患の重症度を評価することが可能である。たとえば、本明細書に開示のスクリーニング手法を実行して、罹患者を同定することも、疾患の重症度を評価することもでき、且つ/またはさらに先の疾患経過を予測することもできる。このような方法は、治療処置の必要性およびどのタイプの処置を実施するか等々を評価する際に有用な可能性がある。加えて、特定の被験者について、どのように疾患が進行するかを深く洞察することが望ましいとき(たとえば、ある特定の患者が、ある特定の薬剤治療に対して好都合に応答する公算、または臨床治験を実施するために、患者を、明確な異なる小集団に分類または分割することが望ましいとき)、ある特定の障害を有すると以前に診断された被験者に対して、予後判定方法を実行してもよい。
【0036】
本明細書で使用される用語「濃度の定量化」または「濃度の決定」は、指示されたサンプル中の被分析物の濃度またはレベルの測定を指す。一般に、定量化ステップまたは決定ステップの結果として、絶対的数値または相対的数値が、サンプル中の被分析物の濃度に割当てられる。以下にさらに詳細に説明する通り、当技術分野で既知の適当な方法を使用して、本発明による生物学的サンプル中の(Glc)濃度を定量化または決定することが可能である。(Glc)濃度を「定量化」または「決定」する方法は、やはり以下にさらに詳細に説明する、定量的方法論およびまたは準定量的方法論の両者を含む。
【0037】
「定量的」方法は、絶対的数値または相対的数値を、生物学的サンプル中の被分析物の濃度に割当てる方法である。
【0038】
「準定量的」方法は、被分析物の濃度が閾値 レベルより上であることを示すが、絶対的数値または相対的数値を割当てない方法である。「ディップスティック」法として一般に知られている分析方法は、準定量的分析法の例である。
【0039】
以下の本発明の説明は、(Glc)オリゴ糖に関する。ポンペ病を検出するための、より長いオリゴ糖(すなわち、GAA酵素の欠損に起因する不完全なグリコーゲン分解によって生じる限界デキストリン)の使用にも、本発明の方法を適用することが可能である。
【0040】
たとえば、ポンペ病患者の尿中の、(Glc)、(Glc)および(Glc)について記述されている(Lennartson et al.,(1978)Eur.J.Biochem.83:325;Kumlien et al.,(1989)Arch.Biochem.Biophys.269:678)。推定構造:α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glc、α−D−Glc(l→4)−α−D−Glc(1→6)−α−D−Glc(1→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcおよびα−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcを有する、少なくとも3種の(Glc)異性体が存在する。(Glc)異性体の推定構造は、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)(α−D−Glc(1→6))−α−D−Glc(1→4)−D−Glc−α−D−Glc(1→4)−D−Glcおよびα−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→6)−α−D−Glc(1→4)−D−Glc−α−D−Glc(1→4)−D−Glcであると決定されている。(Glc)オリゴ糖の推定構造は、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcであると決定されている。ポンペ病患者および対照の尿中および血漿中で、未知の構造を有する(hex)オリゴ糖が、TMSによって検出されており、グリコーゲンの限界デキストリンである可能性が高い。ポンペ病患者の尿中で、11までの残基を有するヘキソースオリゴマーが、飛行質量分析法のマトリックス支援レーザー脱離時間によって検出されている(Klein et al.,(1998)Clin.Chem.44:2422)。
【0041】
α−(1→6)グルコシド結合を非残基末端に有するオリゴ糖は、より安定で好ましいことを当業者は理解するであろう。同様に、長いオリゴ糖は、短いオリゴ糖より安定性が低い傾向がある。ポンペ病患者と比べて、健常者の生物学的サンプル中に特定のオリゴ糖が蓄積する程度をさらに考慮しなければならない。最後に、妨害物質が存在することから、本発明による生物マーカーとして使用するためのオリゴ糖の選択に関する情報が得られる。
【0042】
一般に、(Glc)の代替としては、特に、新生児被験者の場合、(Glc)、(Glc)、(Glc)、(Glc)およびそれより長鎖のヘキソースオリゴ糖類が好ましい生物マーカーである。あるいは、たとえば、(Glc)アッセイを使用して擬陽性を同定するために、こうしたより長い鎖のオリゴ糖類を二次生物マーカーとして利用してもよい。類似した、(Glc)を検出するためのプロトコールを使用して、より長いヘキソースオリゴマーを測定することができる。たとえば、タンデム型質量分析法に関して、同じ誘導体化およびスキャン機能を使用しても、異なる質量(m/z)を検出することが可能である。
【0043】
[(Glc):ポンペ病および他の代謝障害のための生物マーカー]
(Glc)四糖はグリコーゲンに由来し、ポンペ病患者における酸性リソソームのα−グルコシダーゼ(GAA)欠損の結果としての不完全なグリコーゲン分解(すなわち、限界デキストリン)の副生成物を代表すると考えられる。この限界デキストリンは、おそらく、グリコーゲンがリソソーム内に蓄積することによって引き起こされる細胞溶解の結果として、グリコーゲンが循環内に放出されるときに形成されることが、証拠から示唆される。循環中で、グリコーゲンは、αアミラーゼおよび中性のα1−4グルコシダーゼによる作用を受け、結果として限界デキストリンを生じる(Ugorski,(1983)J.Exp.PathoL 1:27)。(Glc)は、体液(たとえば、血液、血漿、血清、尿、唾液、羊水、等々)中で、高濃度で検出される可能性がある。
【0044】
尿中の(Glc)四糖の蓄積は、その他のグリコーゲン貯蔵病および障害、たとえば、GSD−IIIおよびGSD−VI、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、急性膵炎、およびある種の悪性腫瘍の場合と関連していた。GSD−II1は、グリコーゲン脱分枝酵素活性の欠損によって引き起こされる。GSD−VIは、肝ホスホリラーゼ系の欠損によって引き起こされる雑多な疾患群である。この欠損は、肝ホスホリラーゼ酵素それ自体のこともあり、ホスホリラーゼキナーゼのこともある。
【0045】
従って、本発明は、被験者から採取した生物学的サンプル中に(Glc)が蓄積すること(すなわち、濃度上昇)を特徴とする障害に関して、被験者をスクリーニングする方法を提供する。この方法に従えば、生物学的サンプルが被験者から採取され、サンプル中の(Glc)の有無が決定され、(Glc)がサンプル中に存在する場合、被験者は、推定的に、障害に罹患していると認定される。
【0046】
あるいは、また、好ましくは、本方法は、本質的に定量的であってもよく、準定量的であってもよい。この実施形態に従えば、生物学的サンプルを被験者から入手し、生物学的サンプル中の(Glc)濃度を定量化するかまたは決定する。基準値(すなわち、基準濃度)を上回る、生物学的サンプル中の(Glc)レベルにより、被験者は、推定的に、障害に罹患していると認定される。一般に、基準値は、スクリーニングする被験者に応じた健常集団および罹患集団における既知の(Glc)濃度に基づく(たとえば、新生児被験者は、一般に健常および/または罹患した新生児集団と比較する)。たとえば、被験者を、対応する任意抽出の集団と比較してもよい。あるいは、被験者を罹患していない(すなわち、健常な)被験者の対応集団および/または罹患被験者の対応集団と比較してもよい。
【0047】
健常被験者では、年齢と共に(Glc)レベルが減少する傾向があるため、被験者を、年齢対応集団と比較することが好ましい(表4および5を参照)。早発性ポンペ病患者では、遅発型疾患と比較して、(Glc)レベルが高い可能性があることを、当業者は理解するであろう。
【0048】
基準値は、当技術分野で周知の方法に従って選択することが可能である。特定の実施形態では、基準値は所定の値であってもよい。あるいは、基準値は、アッセイの過程で決定してもよい。たとえば、既知の非罹患被験者および/または罹患被験者からのサンプルを、被験サンプルと同時に分析し、それから基準値を決定してもよい。さらなる代替法として、混合集団からの被験サンプルを分析し、たとえば、当技術分野で周知の統計学的方法を使用し、結果の分布に基づいて、基準値を決定してもよい。
【0049】
従って、この基準値は、罹患被験者を同定するための閾値を示す。基準値の選択は絶対的ではない。たとえば、比較的低い値は、擬陰性の出現率を有利に低下させることができるが、擬陽性の公算を高める可能性もある。従って、他のスクリーニング技術については、基準値は、経費、早期診断および治療の利益、擬陽性成績を有する者に対するフォローアップ診断方法の侵襲性、およびスクリーニングアッセイをデザインする際に決まって考慮される他の因子を含むがその限りではない、多数の因子を基にしてもよい。
【0050】
当技術分野で周知の方法を使用して、推定的に、罹患していると、被験者を認定してもよい。たとえば、適切な対応する対照集団と比較して、約70パーセンタイル以上、80パーセンタイル、90パーセンタイル、95パーセンタイル、96パーセンタイル、97パーセンタイル、98パーセンタイル、99パーセンタイル、またはそれより高い(Glc)値を有する被験者は、推定的に、罹患していると認定してもよい。あるいは、適切な非罹患集団の平均値(あるいは、中間値または中央値)より、約2、3、4、5、8、10または20倍以上高い(Glc)濃度を有する被験者は、推定的に、罹患していると認定してもよい。
【0051】
二次的な生物マーカーを任意に使用して、(Glc)アッセイでありそうな擬陽性を同定することが可能である。代表的な二次生物マーカーとしては、ポンペ病患者の体液中に認められる長鎖オリゴ糖類(上述)などがある。その他のあり得る二次生物マーカーとしては、LAMP−1およびLAMP−2マーカーなどがある(Meikle et al.,(1997)Clin.Chem.43:1325およびWO97/44668号;Hua et al.,(1998)Clin.Chemistry 44:2094)。
【0052】
好ましい実施形態では、リソソーム貯蔵病(たとえば、グリコーゲン貯蔵病)またはデュシェンヌ型筋ジストロフィーに関して、さらに好ましくは、グリコーゲン貯蔵病(GSD−I以外)、なおいっそう好ましくは、GSD−II(ポンペ病)、GSD−IIIまたはGSD−VIに関して、被験者をスクリーニングするために、前述の方法を実行する。最も好ましい実施形態では、ポンペ病(GSD−II)に関して被験者をスクリーニングするために、本方法が使用される。
【0053】
当技術分野で周知のリソソーム貯蔵病は多数ある。代表的なリソソーム貯蔵病としては、GM1ガングリオシドーシス、テイ・サックス(Tay−Sachs)病、GM2ガングリオシドーシス(AB異形)、サンドホフ(Sandhoff)病、ファブリ(Fabry)病、ゴーシェ(Gaucher)病、異染性白質萎縮症、クラッベ(Krabbe)病、ニーマン・ピック(Niemann−Pick)病(A〜D型)、ファーバー(Farber)病、ウォルマン(Wolman)病、フルラー(Hurler)症候群(MPS III)、シャイエ(Scheie)症候群(MPS IS)、フルラー・シャイエ(Hurler−Scheie)症候群(MPS IH/S)、ハンター(Hunter)症候群(MPS II)、サンフィリポ(Sanfilippo)A症候群(MPS IIIA)、サンフィリポB症候群(MPS IIIB)、サンフィリポC症候群(MPS IIIC)、サンフィリポD症候群(MPS IIID)、モルキオ(Morquio)A病(MPSIVA)、モルキオB病(MPS IVB)、マロトー・ラミー病(MPS VI)、スライ(Sly)症候群(MPS VII)、α−マンノシドーシス、β−マンノシドーシス、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、シアリドーシス(ムコリピドーシス 1)、ガラクトシアリドーシス(ゴールドバーグ(Goldberg)症候群)、シンドラー(Schindler)病、ムコリピドーシス II(I−細胞病)、ムコリピドーシス III(偽フルラー多発性ジストロフィー)、シスチン蓄積症、サラ(Salla)病、幼児シアリン酸貯蔵病、バッテン(Batten)病(若年性ニューロンセロイド脂褐素症)、幼児ニューロンセロイド脂褐素症、ムコリピドーシスIV、およびプロサポシンなどがあるが、その限りではない。
【0054】
本発明に従って、リソソーム貯蔵病と関連づけられる酵素欠損としては、β−ガラクトシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼA、β−ヘキソサミニダーゼB、GM2アクティベータータンパク質、グルコセレブロシダーゼ、アリールスルファターゼA、ガラクトシルセラミダーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、酸性リパーゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランN−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼアセチル−CoA、グルコサミニド アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ、アリールスルファターゼB、β−グルクロニダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、α−L−フコダーゼ、N−アスパルチル−β−グルコサミニダーゼ、α−ノイラミニダーゼ、リソソーム保護タンパク質、α−N−アセチル−ガラクトサミニダーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−ホスホトランスフェラーゼ、シスチン輸送タンパク質、シアリン酸輸送タンパク質、CLN3遺伝子産物、パルミトイル−タンパク質チオエステラーゼ、サポシンA、サポシンB、サポシンC、またはサポシンDの欠損などがあるが、その限りではない。
【0055】
既知のグリコーゲン貯蔵病は多数あり、たとえば、C.R.Scriverら(編).The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease、第7版、New York: McGraw−Hill.1995,pp.935−965の、Y.T.Chen & A.Burchell,Glycogen storage diseasesを参照されたい。代表的なグリコーゲン貯蔵病としては、1a型GSD(フォン・ギールケ(von Gierke)病)、1b型GSD、1c型GSD、1d型GSD、II型 GSD(ポンペ病または幼児II型GSDを含む)、IIIa型GSD、IIIb型GSD、IV型GSD、V型GSD(マックアードル(McArdle)病)、VI型GSD、VII型GSD、グリコーゲンシンターゼ欠損症、腎ファンコーニ(Fanconi)症候群を伴う肝糖原病、ホスホグルコイソメラーゼ欠損症、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、および乳酸脱水素酵素欠損症などがあえるが、その限りではない。
【0056】
グリコーゲン貯蔵病と関連づけられる酵素欠損としては、グルコース6−ホスファターゼ、リソソーム酸性αグルコシダーゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、分枝酵素、筋ホスホリラーゼ、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、筋ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼ、ホスホグルコイソメラーゼ、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、または乳酸脱水素酵素の欠損などがあるが、その限りではない。
【0057】
本発明を使用して、リソソーム酸性α−グルコシダーゼ(GAA)欠損症(ポンペ病(すなわち、GSD−II)における代謝障害)を有する被験者を検出することが好ましい。
【0058】
さらなる態様として、本発明は、ポンペ病に関して被験者をスクリーニングする方法であって、被験者から得た生物学的サンプル中の(Glc)濃度を定量化または決定することを含むスクリーニング方法を提供する。被験者から採取した生物学的サンプル中の(Glc)濃度を基準値(この用語については、上述の通り)と比較する。この基準値(所定の値であってもよい)より高い濃度で、生物学的サンプル中に、(Glc)が検出されるとき、推定的に被験者をポンペ病に罹患していると認定する。
【0059】
一般に、本明細書に開示の方法は、獣医学的用途および医学的用途の両者を有する。従って、被験者は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、囓歯類、トリ等々であってもよい。しかし、一般には、本発明による被験者は、ヒト被験者、たとえば、新生児被験者(すなわち、出生時から生後約1週まで)、幼児被験者、若年被験者、青年被験者または成人被験者である。新生児被験者が好ましい。本明細書で使用される「新生児」被験者は、当技術分野で使用される早産児を含む。
【0060】
被験者は、たとえば、ブロードベーススクリーニングアッセイのための、一般住民の一部であってもよい。あるいは、被験者は、上述した、(Glc)の蓄積を特徴とする代謝障害(たとえば、グリコーゲン貯蔵病、さらに詳細には、GSD−II)を有する疑いのある(たとえば、被験者が臨床症状を有する)被験者であってもよい。その他の特定の実施形態では、被験者は、(Glc)の蓄積を特徴とする障害を有すると既に診断されている(たとえば、患者の臨床状態、または治療の有効性をモニタリングするため)。この実施形態によれば、被験者は、グリコーゲン貯蔵障害(さらに好ましくは、GSD−II)を有すると診断されていることが好ましい。
【0061】
本明細書で使用される、「生物学的サンプル」は、本明細書に記載の障害(たとえば、GSD−II、GSD−III、およびGSD−VI等の、グリコーゲン貯蔵障害)で(Glc)蓄積が検出される可能性がある、適当な体液、細胞、または組織(培養細胞および組織を含む)を含んでもよい。生物学的サンプルは、被験者に対する外傷が少なく、ブロードベーススクリーニングアッセイにより適した、比較的非侵襲的な方法(すなわち、外科的方法または生検を含まない方法)で得られることが好ましい。生物学的サンプルが、体液サンプルであることも好ましい。代表的な体液サンプルとしては、血漿、血清、血液(臍帯血を含む)、尿、唾液、羊水等々があるが、その限りではない。血液、血漿、血清、および尿サンプルが、より好ましい。
【0062】
あるいは、生物学的サンプルは、培養細胞(たとえば、線維芽細胞)または組織を含む細胞サンプルまたは組織サンプル、および細胞または組織から採取した条件培地または浸出液である。代表的な細胞または組織としては、筋(たとえば、骨格筋、平滑筋、心筋および横隔膜)、肝、皮膚、包皮、臍帯の細胞または組織等々がある。肝および筋の細胞および組織が好ましい。
【0063】
さらなる代替法として、生物学的サンプルを、固体媒体、たとえば、濾紙、スワブ、コットン等々の上に提供してもよい。特に好ましい実施形態では、生物学的サンプルは、新生児被験者からの乾燥した血液サンプル、たとえば、新生児のスクリーニングカード(すなわち、「ガスリー(Guthrie)」カード)上の乾燥した血液スポットである。さらなる好ましい例として、生物学的サンプルは、乾燥した尿サンプル(たとえば、濾紙上またはおむつの内層)であってもよい。
【0064】
本明細書に記載の本発明のスクリーニング方法によって、被験者は、推定的に、ある特定の障害(たとえば、ポンペ病)に罹患していると認定される。特定の実施形態では、これらの被験者における診断を裏付けるために、さらなる、第2段階の診断試験を実行する。一般に、このような第2段階の方法論(たとえば、組織生検に対する酵素アッセイ)は、本明細書に開示のスクリーニング方法より高価で、多くの時間を必要とし、且つ侵襲的である。たとえば、基準濃度より高い(Glc)レベルを有する被験者を、推定的に、ポンペ病に罹患していると認定し、この診断を裏付けるためのさらなる診断テスト用に選択し、被験者が別の障害(たとえば、GSD−II1)に罹患しているか、またはスクリーニングアッセイで擬陽性成績を示す健常被験者であるかを評価することが可能である。
【0065】
本発明は、さらに、(Glc)の蓄積を特徴とする障害に罹患していると、既に陽性に診断されている被験者の臨床経過をモニタリングする方法に用途があり、これについては、上述の通りである。本研究では、罹患被験者からの生物学的サンプル(特に、血漿、血液および血清)中の高い(Glc)濃度は、罹患被験者の臨床状態と相関関係があることを発見した。事実、罹患被験者では、他の症候が悪化する前に、(Glc)濃度が上昇している可能性があり、軽減の早期指標として使用することが可能である。従って、(Glc)を、治療有効性および患者の臨床状態の指標として使用することが可能である。
【0066】
従って、本発明はさらに、(Glc)の蓄積を特徴とする障害を有する被験者の臨床状態をモニタリングする方法を含む。被験者は、グリコーゲン貯蔵障害、さらに好ましくは、GSD−IIを有すると、既に診断されていることが好ましい。被験者の臨床状態をモニタリングして、治療計画、たとえば、酵素置換療法、遺伝子療法、および/または食事療法の有効性を決定することが可能である。たとえば、生物マーカーのレベルから、現行の治療計画が有効でないことが示唆される場合、変更した治療コースを開始することを決定してもよい。あるいは、被験者の状態をモニタリングして、被験者の治療を開始または再開始するかどうかを決定してもよい。
【0067】
本明細書に開示の創意に富むスクリーニング方法は、(Glc)の有無を検出する(好ましくは、上述の生物学的サンプル中の(Glc)濃度を決定する)適当な方法論を使用して、実行することが可能である。具体的な方法としては、クロマトグラフィ法(たとえば、高速液体クロマトグラフィ)、イムノアッセイ(たとえば、免疫親和性クロマトグラフィ、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光分析法、免疫細胞化学分析法、免疫ブロット、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等々)、液体クロマトグラフィ質量分析法、ガスクロマトグラフィ質量分析法、飛行時間質量分析法、タンデム型質量分析法、およびこれらの質量分析技術と免疫精製法との組み合わせなどがあるが、その限りではない。
【0068】
好ましい方法は、簡単で、迅速で、正確で、比較的非侵襲的(たとえば、非外科的)で、高感度であり、且つ好ましくは、(Glc)以外の、分子からの妨害シグナルを最小限に抑える。新生児のスクリーニング方法として使用するとき、この方法論が既存のスクリーニングアッセイと矛盾せず、また、自動化およびサンプルの高スループットスクリーニングに適応できることは、さらに好ましい。
【0069】
本発明の方法は、完全に手動であってもよく、あるいは、また好ましくは、部分的に、または完全に、自動化されている。サンプルの高スループットを容易にするために、多数のサンプルを評価するためのスクリーニングプログラム(たとえば、新生児のスクリーニングプログラム)は、一般に、少なくとも部分的に自動化されている。一般に、自動システムを使用して、たとえば、データを獲得して分析する。その他の好ましい高スループット方法では、スポットした生物学的サンプル(たとえば、血液、血漿、血清、尿等々)のアレイまたはマイクロアレイを同時に分析することが可能である。このようなアレイまたはマイクロアレイは、約10、50、100、200、300、500、800、1000、2000、5000サンプルまたはそれより多いサンプルを含むことが可能である。
【0070】
HPLC、飛行時間質量分析法、およびタンデム型質量分析法(TMS)を使用する方法が好ましく、TMSが最も好ましい。
【0071】
生物学的サンプル中の(Glc)およびその他のグルカン類を分析するのに好ましいHPLC法は、C18逆相カラムを使用する。この方法によれば、パラアミノ安息香酸(PABA)の誘導体および紫外検出器を用いた波長304nmにおけるモニタリングを使用して、単量体(グルコース)から七量体(マルトヘプタオース)までの標準物質のベースライン分離を容易に実行することができる。
【0072】
TMSを使用して、生物学的サンプル中の(Glc)およびその他のグルカン類を定量化または決定する好ましい方法を以下に、もっと詳しく説明する。
【0073】
(Glc)被分析物の濃度が、その技術の検出限界に比して低い生物学的サンプルでは、サンプル中の(Glc)を検出する(あるいは、定量化する)ステップの前に、濃縮ステップを使用することが好ましい。説明に役立つ、好ましい濃縮技術の1例として、検出/定量化ステップの前に、免疫親和性法を使用して、サンプル中の(Glc)濃度を上昇させることが可能である。たとえば、磁化ビーズに結合した(Glc)を特異的に認識する抗体を用いて、免疫沈降を実施することが可能である。特異的抗(Glc)抗体は当技術分野で周知である(たとえば、Zopf et al.,(1982)J.Immunological Methods 18:109;Lundblad et al.,(1984)J.Immunological Methods 68:217;Lundblad et al.,(1984)J.Immunological Methods 68:227を参照)。 サイズ排除クロマトグラフィを使用して、サンプル中の(Glc)を濃縮することも可能である。
【0074】
これらの濃縮方法を使用して、(Glc)被分析物を汚染物質または妨害物質から分離することも可能である。
【0075】
本発明のさらなる態様は、特異的に認識して(Glc)に結合する抗体である。本明細書で使用される、用語「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む、あらゆるタイプの免疫グロブリンを指す。この中で、IgMおよびIgGが特に好ましい。抗体はモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよく、また、(たとえば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、またはヒトを含む、任意の種が起源であってもよく、あるいは、キメラ抗体であってもよい。たとえば、M.Walker et al.,Molec.Immunol.26,403−11(1989)を参照されたい。抗体は、Readingに付与された米国特許第4,474,893号、またはCabillyらに付与された米国特許第4,816,567号に開示の方法に従って作られる組換えモノクローナル抗体であってもよい。抗体はSegAlらに付与された米国特許第4,676,980号に開示の方法に従って作られる特異的抗体によって化学的に構築することも可能である。
【0076】
(Glc)に対する特異的結合部位を含む抗体断片を作製することも可能である。たとえば、このような断片としては、抗体分子のペプシン消化によって作ることができるF(ab′)断片、およびF(ab′)断片のジスルフィド架橋を還元することによって作成することができるFab断片などがあるが、その限りではない。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することができるように、Fab発現ライブラリーを作成してもよい(W.D.Huse et al.,Science 254,1275−1281(1989))。
【0077】
抗体を作成するために、免疫原特性を有する(Glc)、たとえば、ハプテンまたはオプソニンに結合せた(Glc)またはその誘導体を注射することによって、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト等々を含む様々な宿主を、免疫化することができる。宿主種に応じて、免疫学的応答を高めるために、様々なアジュバントを使用することができる。このようなアジュバントとしては、フロイント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、およびリゾレシチン、プルロニックポリオール類、ポリアニオン類、ペプチド、油乳濁液、キーホールリムペット・ヘモシアニン、およびジニトロフェノール等の表面活性物質などがあるが、その限りではない。ヒトに使用されるアジュバントの中で、BCG(bacilli Calmette−Guerin)およびCorynebacteriurn parvumが特に好ましい。
【0078】
培養中の連続細胞系による抗体分子の産生をもたらす技術を使用して、(Glc)に対するモノクローナル抗体を作成することが可能である。こうした技術としては、ハイブリドーマ技術、ヒトB−細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV−ハイブリドーマ技術などがあるが、その限りではない(Kohler,G.et al.(1975)Nature256:495−497;Kozbor,D.et al.(1985)J.Immunol Methods 81:31−42;Cote,R.J.et al(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:2026−2030;Cole,S.P.et al.(1984)Mol Cell Biol 62:109−120)。簡単に記載すると、この方法は、以下の通りである。動物を、(Glc)または免疫原性誘導体、または(たとえば、ハプテンまたはオプソニンに結合した)その複合体で、動物を免疫化する。次いで、リンパ系細胞(たとえば脾臓リンパ球)を免疫化動物から獲得し、不死化細胞(たとえば、骨髄腫またはヘテロ骨髄腫)と融合させ、ハイブリッド細胞を作る。所望の抗体を産生するものを同定するために、このハイブリッド細胞をスクリーニングする。
【0079】
ヒト抗体を分泌するヒトハイブリドーマは、Kohler and Milsteinの技法によって作成することができる。ヒトの治療には、ヒト抗体が特に好ましいが、一般に、ヒトモノクローナル抗体の長期産生に向いた安定したヒト−ヒトハイブリドーマの作成は困難であろう。囓歯類(特にマウス)におけるハイブリドーマ産生は、十分に確立された手法であり、従って、安定したネズミハイブリドーマは、精選された特性を持つ抗体の無限のソースを提供する。ヒト抗体の代替物として、遺伝子工学技術で、マウス抗体をキメラネズミ/ヒト抗体に転換することができる。たとえば、V.T.Oi et al,Bio Techniques 4(4):214−221(1986);L.K.Sun et al,Hybridoma 5(1986)を参照されたい。
【0080】
(Glc)に特異的なモノクローナル抗体を使用して、抗−イディオタイプ(パラトープ特異的)抗体を作成することができる。たとえば、McNamara et al.,Science 220,1325−26(1984),R.C.Kennedy,et al.,Science 232,220(1986)を参照されたい。
【0081】
さらに、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るために、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングする、「キメラ抗体」を作成するために開発された技術を使用することができる(S.L.Morrison,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.81,6851−6855(1984);M.S.Neuberger et al.,Nature 312:604−608(1984);S.Takeda,S.et al.,Nature 314:452−454(1985))。あるいは、当技術分野で周知の方法を使用して、単鎖抗体を作成するために記述された技術を、(Glc)−特異的単鎖抗体を作成するように改変することが可能である。関連の特異性を有するが、全く異なるイディオタイプの組成物の抗体を、ランダム組み合わせイムノグロブリンライブラリーから、鎖シャッフリングによって作成することができる(D.R.Burton,Proc.Natt.Acad.Sci.88,11120−3(1991))。
【0082】
リンパ球集団でin vivoでの産生を誘導することによって、または免疫グロブリンライブラリーまたは文献に開示されている極めて特異的な結合試薬集団をスクリーニングすることによって、抗体を産生することができる(R.Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86,3833−3837(1989));G.Winter et al.,Nature 349,293−299(1991))。
【0083】
[新生児のスクリーニング]
本明細書に開示の方法は、早期医学的介入を可能にするために、新生児期における罹患者を同定するための、新生児スクリーニングプログラムの一部として、都合よく使用することができる。多くの新生児スクリーニングプログラムは、踵の穿刺による血液を、新生児スクリーニングカード(たとえば、綿繊維濾紙)上に吸収させる、独特の検体収集法に依存する。フェニルケトン尿症(PKU)を引き起こすフェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損、およびメープルシロップ尿症(MSUD)を引き起こす分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ欠損等の、アミノ酸代謝欠陥が原因で起こる死亡および罹患の防止は、これらの乾燥した新生児血液スポットにおける高いアミノ酸レベル用の簡単な生化学検査の開発に負うている。
【0084】
本明細書に開示のスクリーニング方法は、さらに、他の新生児スクリーニングアッセイと同時に、または平行して(すなわち、同一サンプルからであるが、必ずしも同一アッセイでなくてもよい)、たとえば、新生児の血液サンプルまたは新生児スクリーニングカード上の乾燥した血液スポットを用いて、有利に実施することが可能である。
【0085】
新生児のスクリーニングカードは、コットン、セルロース、アセテート、およびそれらの組み合わせを含む、適当な天然材料のものであってもよく、合成材料のものであってもよい。
【0086】
あるいは、新生児スクリーニングプログラムは、上述のような、他の生物学的サンプル中の(Glc)の測定に基づいてもよい。たとえば、血液(たとえば、臍帯血)、血漿、血清、または尿中の(Glc)を測定してもよい。特定の実施形態では、おむつ材料から尿を抽出してもよい。
【0087】
従って、本発明のさらなる態様は、(上述の)(Glc)の蓄積を特徴とする障害に関して新生児被験者をスクリーニングする方法であって、新生児被験者から採取した生物学的サンプル中の(Glc)濃度を定量化または決定するステップ を含み、基準値より高い濃度で、生物学的サンプル中に、(Glc)が検出されるとき、新生児被験者を障害に罹患していると認定する、スクリーニング方法である。
【0088】
ポンペ病に関して、新生児被験者をスクリーニングする好ましい方法は、新生児被験者から採取した血液サンプル中の(Glc)濃度を定量化または決定するステップを含み、基準値より高い濃度で、生物学的サンプル中に、(Glc)が検出されるとき、新生児被験者をポンペ病に罹患していると認定する。血液サンプルは、新生児のスクリーニングカードから採取されることが好ましい。上述の通り、この方法は、GSD−IIIおよび他のグリコーゲン貯蔵病等の、他の障害を有する新生児被験者を同定することができる。本発明の方法のこの特徴は、これらのスクリーニング方法論の用途を減じることはなく、それどころか、有益な利点であると考えられる。あるいは、新生児被験者からの他の生物学的サンプル、たとえば、尿(たとえば、おむつ材料上に回収された)を使用することが可能である。
【0089】
以下にもっと詳しく説明する、さらなる好ましい実施形態では、(Glc)を、疾患が存在する生物マーカーとして使用し、GSD−II(および/または他のグリコーゲン貯蔵病)に関する新生児スクリーニングプログラムの一部として、タンデム型質量分析法を含む方法論を使用する。
【0090】
上述の通り、新生児のスクリーニング方法を少なくとも部分的に自動化することが好ましい(上述の通り)。たとえば、一度、HPLCカラム上またはタンデム型質量分析計内にサンプルを置いたら、その後は、自動システムを使用して、データを獲得して分析することが好ましい。
【0091】
[タンデム型質量分析法(TMS)に基づく方法論]
TMSは、上述した本発明の方法を実行するのに好ましい方法論である。三連四重極質量分析計を使用して混合物を分析するためのTMSの概念は、Yost and Enke,Tandem Mass Spectrometty,F.W.McLafferty(Ed.),Wiley & Sons,New York,(1983),pp.175−195のTandem quadrupole mass spectrometryによって考え出された。類似した構造型の化合物を選択的に検出するために、共通のプロダクトイオンに断片化する、分子種を同定するための前駆体イオンスキャン機能、または共通の断片をなくすイオンを同定するためのコンスタント・ニュートラル・ロス・スキャン機能、または選択された前駆体およびプロダクトイオンのみを検出するマルチ反応モニタリングのいずれかを使用する。ワークアップおよび分析の前に、安定した同位元素で標識された類縁体等の適切な内部標準を生物マトリックスに加えることによって、標的被分析物の正確な定量化が容易になる。
【0092】
三連の四重極型質量分析法および四重極型および飛行時間型質量分析計を組み合わせたハイブリッド質量分析法を含むが、その限りではない、当技術分野で周知の適当なTMS方法論を使用することが可能である。イオントラップおよびイオンサイクロトロン共鳴型質量分析計を使用することもできる。
【0093】
TMSは、新生児スクリーニングプログラムに特に適する。アミノ酸およびアシルカルニチンのみを定量化できることにより、20より多くの代謝障害を評価することが可能になる。PKU(Chace et al.,(1993)Clin.Chem.39:66)、MSUD(Chace et al.,(1995)Clin.Chem.41:62)、高メチオニン血症(Chace et al.,(1996)Clin.Chem.43:2106)、および中鎖アシル−coAデヒドロゲナーゼ欠損(MCAD)(Chace et al.,(1997)Clin.Chem.43:2106)は全て、新生児期に、TMSで確実に検出されることが遡及的共同研究で確認された(Sweetman,(1996)Clin.Chem.42:345も参照)。サンプル混合物を流動溶媒に注入したとき、インターレーススキャン機能を使用して、TMSで同時に被分析物が定量化される。バッチ法は、96ウェル形式でサンプルを準備して分析し、自動化コンピューターアルゴリズムを使用して結果を分析し、1日に1000サンプルを分析できる能力を証明したと報告されている(Rashed et al.,(1997)Clin.Chem.43:1129)。TMSを使用した新生児のスクリーニングは、様々な管轄で実施されている。
【0094】
本発明者が知る限り、本明細書に記載のHPLC試験およびTMS試験が、ポンペ病に罹患している被験者からの血漿(または、他の血液由来)サンプル中の、高い(Glc)濃度を報告する、第1号である。さらに、(Glc)を生物マーカーとして使用して、ポンペ病に関してスクリーニングするための最初のTMSプロトコール、特に、最初のこのような新生児スクリーニングプログラムを、本明細書に開示する。
【0095】
従って、本発明は、生物学的サンプル中の(Glc)濃度を、TMSで定量化または決定する方法を、さらに提供する。当技術分野で周知の方法で、好ましくは、パラ−アミノ安息香酸(PABA)誘導体(たとえば、ブチル−PABA)または2−アミノアクリドンを用いて、分析前に、サンプル中のオリゴ糖類を誘導体化することが可能である。TMSに最も特異的で且つ高感度のスキャン機能を決定するために、誘導体の断片化を調査した。たとえば、m/z866からm/z509への遷移後、エレクトロスプレーイオン化TMS(ESI−TMS)と共に三連四重極質量分析計を使用したマルチ反応モニタリングによって、(Glc)のブチルPABA誘導体を検出できることを、本研究者は確認した。他の誘導体化方法を使用できること、また、適切なスキャン機能を使用して、これらの代替(Glc)誘導体を検出できることを、当業者は理解するであろう。同様に、ESIに代わるものとして、多数の代替イオン化方法が当技術分野で知られている(たとえば、マトリックス支援レーザー脱着イオン化;MALDI)。
【0096】
特定の実施形態では、上述した通り、TMS分析の前に、被分析物を濃縮する。(Glc)を特異的に認識する抗体を結合させた常磁性ビーズを用いた免疫沈降によって、(Glc)を濃縮することが特に好ましい。次いで、適切な溶媒を使用して、この(Glc)をビーズから溶離することができる。一般に(しかし、必ずしもそうではないが)、濃縮ステップは、誘導体化の前に実行される。他の特に好ましい実施形態では、同一サンプルから、関心のある他の被分析物を免疫精製することが可能である。たとえば、代謝障害に特有の異なる被分析物に特異的な抗体をそれぞれ担持する、ビーズの混合集団をサンプルに加えてもよい。この方式では、同一サンプルを使用して、多種多様な遺伝性代謝障害に関してスクリーニングすることが可能である。
【0097】
あるいは、サイズ排除に基づく方法を使用して、(Glc)を濃縮してもよい。
【0098】
さらに、妨害物質または別の望ましくない物質を減少させるために、「浄化」ステップまたは前処理ステップを使用してもよい。たとえば、生物学的サンプル中のグルコースと(Glc)との比率が比較的高い(たとえば、2:1またはそれより高い)場合、TMSで分析する前に、サンプル中のグルコース濃度を下げることが好ましい。サンプル中のグルコース濃度は、当技術分野で周知の方法で下げることができる。1つの代表的且つ好ましい方法は、一般に、誘導体化前に、サンプルを酵素処理に供してグルコースを除去する方法である。たとえば、生物学的サンプルからグルコースを減少させるかまたは除去するために、サンプルをグルコースオキシダーゼで消化する。酵素処理は、(Glc)四糖を分解しないか、または微々たる程度まで分解するに過ぎないことが好ましい。あるいは、一般に、誘導体化ステップ後に、分離(たとえば、クロマトグラフィ)技術を使用して、グルコースを(Glc)四糖と分離してもよい。例を挙げて説明するために、誘導体化ステップ後に、液体クロマトグラフィ(たとえば、逆相)を使用して、誘導体化したグルコースを、誘導体化した(Glc)と分離することができる。
【0099】
内部標準は、被分析物と同一の条件に付すために、一般に、操作前にサンプルに加える。適当な内部標準を使用してもよい。+6Daの質量シフトを与えるために、グルコース残基の1つを[U−13C]標識されたグルコースで置き換えた(Glc)ホモログ(実施例に記載の通り)が適当であり、また好ましい。既知量の内部標準をサンプルに加える。サンプル中の(Glc)および内部標準によって生成されるシグナルの比率によって、サンプル中の(Glc)の出発量を、較正曲線を使用して決定することが可能になる。較正曲線は、同一定量の内部標準を使用した、異なる既知濃度のGlc標準に対する、シグナル比((Glc)と内部標準)のプロットである。
【0100】
好ましい代替内部標準は、重水素標識したグルコース四量体である。
【0101】
生物学的サンプル中の(Glc)を定量化または決定するための本発明の好ましい方法は、(1)生物学的サンプルを採取するステップと、(2)既知量の、適当な安定な同位元素で標識された標準をサンプルに加えるステップと、(3)任意に、磁化ビーズで免疫沈降し、続いて適当な溶媒でビーズから溶離することにより、サンプル中の(Glc)を濃縮するステップと、(4)たとえば、ブチルPABAまたは2−アミノアクリドンでグルカン類を誘導体化するステップと、(5)TMSを使用して、(Glc)を定量化するステップとを含む。上述の通り、任意に、ステップ4より前の酵素処理、またはステップ5より前のクロマトグラフィ分離によって、妨害するグルコースシグナルを減少させてもよい。
【0102】
[U−13C]標識されたグルコース四量体を、TMS分析用内部標準として使用することが好ましい。
【0103】
前述の方法論を、本発明のスクリーニングおよびモニタリングアッセイの好ましい実施形態で、使用することが可能である。さらに上述した通り、本発明の方法を、部分的にまたは完全に自動化することが好ましい。
【0104】
TMSに基づく方法論は、新生児のスクリーニングカードからの乾燥した血液スポットで、(Glc)を定量化または決定するのに特に適当する。この実施形態によれば、上記の方法は、適当な溶媒(たとえば、水性溶媒または水性溶媒と有機溶媒との混合物)を使用して、乾燥した血液スポットからオリゴ糖類を抽出するステップをさらに含む。あるいは、TMSを使用して、(たとえば、濾紙またはおむつ材料上の)乾燥した尿サンプル中の(Glc)の存在を、定量化または決定することが可能である。
【0105】
従って、特に好ましい実施形態として、本発明は、ポンペ病に関して、新生児被験者をスクリーニングする方法であって、(1)一般的に、新生児のスクリーニングカード(たとえば、濾紙)上の乾燥した血液スポットの形態の、血液サンプルを提供するステップと、(2)溶媒を使用して、この乾燥した血液スポットからオリゴ糖類を抽出するステップと、(3)既知量の、適当な安定した同位元素で標識された内部標準を、各サンプルに加えるステップと、(4)オリゴ糖類を(たとえば、ブチル−PABAで)誘導体化するステップと、(5)特異的スキャン機能を使用して、TMSで、(Glc)誘導体を分析するステップと、(6)誘導体化された(Glc)によって生成されるシグナルと、誘導体化された内部標準シグナルとを比較することによって、サンプル中の(Glc)を定量化または決定するステップと、(6)(上述の通り)基準値より大きい、サンプル中の(Glc)濃度に基づいて、これらの被験者を、ポンペ病に罹患していると、推定的に認定するステップとを含む方法を提供する。
【0106】
上述の通り、この方法は、任意に、被分析物濃縮ステップおよびグルコース除去ステップをさらに含む。
【0107】
これまで本発明を説明してきたが、本発明を制限するためではなく、例を挙げて説明するために限って本明細書に含まれる、実施例を参照しながら、本発明を説明する。
【0108】
[実施例1 材料および装置]
α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glc{(Glc)}、マルトテトラオース(M)、マルトペンタオース(M)、マルトヘキサオース(M)、マルトヘプタオース(M)、セロペンタオース(C5)、シアノボロ水素化ナトリウム(NaBHCN)、無水安息香酸、ブチル−4−アミノ安息香酸(BAB)、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(PMP)、および2′−フコシルラクトースは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。2−アミノアクリドン(AMAC)は、Molecular Probes,Inc.(Eugene,OR)から購入した。メタノール、アセトニトリル(HPLC用等級)、酢酸および塩酸は、VWR Scientific products(Atlanta,GA)から購入した。他の試薬は全て、分析用等級のものであり、市販されていた。
【0109】
全てのHPLC溶媒を濾過し(0.2μm膜)、使用直前に脱気した。使用前に、PMPをメタノールから再結晶化した。Sep−Pak(登録商標)Vac C18カートリッジ(100mg)およびYMC−Pack Pro C18カラム(内径250×4.6mm、5μm)をWaters(Franklin,MA)から購入した。HPLCシステムは、Waters 626ポンプ、486波長可変吸光度検知機、717プラス・オートサンプラー、および600Sコントローラー(Waters,Milford,MA)を備えていた。
【0110】
質量スペクトル分析を実施した。Quattro−LCエレクトロスプレーイオン化三連四重極タンデム質量分析計(ESI−MS/MS)、(Micromass Inc.,Beverly,MA))は、Hewlett−PackardバイナリポンプおよびGilson215液体取扱い装置を備えていた。内部標準の合成に使用した凍結乾燥した組換えTVAIIは、Dr.Takashi Tonozuka(応用生物科学部、東京農業大学、東京)の惜しみない贈物であった。
【0111】
[実施例2 (Glc)のHPLCアッセイ]
<HPLC分析用サンプル調製>
酵素置換療法を受けている患者から単離するサンプルの場合、治療開始前、および治療中、2週間ごとに、血漿および6時間尿サンプルを採集した。(Glc)レベルの試験前に、尿サンプルおよび血漿サンプルの両者を、−20℃で凍結した。
【0112】
尿サンプルを遠心分離し、50μlの上澄を、10μgの内部標準(脱イオン水10μl中のセロペンタオース(C5))と混合した。脱イオン水10μl中に含まれる既知量の(Glc)を、10μgのC5を含有する対照尿のアリコート50μlに加えることによって、尿標準を調製した。
【0113】
ガラス製の円錐形試験管内で、血漿または血清(200μl)を、1μgの内部標準(C5)および500μのメタノールと混合し、6,000rpmにて4分間遠心分離し、変性タンパク質をペレット化させた。N条件で上澄を乾燥させ、60μlの脱イオン水で再構成した。既知量の(Glc)を、血漿対照サンプルのアリコート200μlに加えることによって、血漿標準を調製した。
【0114】
<(Glc)をHPLC分析するためのオリゴ糖類の誘導体化>
Poulter and Burlingame((1990)Methods Enzymol 193,661−689)の方法の変法を使用して、ブチル−p−アミノ安息香酸(BAB)でオリゴ糖類を誘導体化した。必要に応じて用時調製した誘導体化試薬は、BAB(54mg)、NaBHCN(47mg)、酢酸(0.11ml)、およびメタノール(1.76ml)を含んでいた。上述の通りに調製した各サンプルに、試薬140μlを加えた。サンプル混合物を80℃にて45分間インキュベートし、次いで、温度まで冷却した。15%アセトニトリル0.9mlを加え、この混合物を10秒間、渦巻攪拌した。固相抽出を使用して、未反応の試薬を誘導体化オリゴ糖類から除去した。サンプルをC18カートリッジに充填し、1mlのメタノールに続いて、1mlの脱イオン水で前処理し、15%(v/v)のアセトニトリル/水 1mlで洗浄した。次いで、BAB標識されたオリゴ糖類を30%(v/v)のアセトニトリル/水 1mlで溶離した。尿サンプルの場合、溶離液をHPLCで直接分析した。血漿サンプルの場合、溶離液をN下で乾燥させ、分析前に、30%(v/v)のアセトニトリル/水150μlで再構成した。
【0115】
2−アミノアクリドン(AMAC)、PMP、およびオリゴ糖類の過ベンゾイル(PB)誘導体を、公表されている手順に従って調製した(Okafo,G.,et al.(1996)Anal.Chem.68,4424−4430;Zopf,D.,and Fu,D.,(1999)Anal.Biochem.269,113−123;Daniel,P.F.,et al.(1981)Carbohydr.
Res.97,161−180)。
【0116】
<HPLC分析および定量>
BAB標識されたオリゴ糖類を、YMC−Pack Pro C18カラムで、流量0.5ml/分にて分離し、溶出液のUV吸光度を304nmでモニタリングした。HPLC溶離は、30分間、6NのHClを使用してpH4〜6に調節したアセトニトリル30%および0.01mMテトラブチルアンモニウムクロリド70%を用いた定組成溶離であった。32分にアセトニトリルを50%に上昇させ、38分に初期条件に戻すことによって、余分の未反応のBABおよび他の不純物を、カラムから洗い流した。総分析時間は、サンプル当たり45分であった。適切な場合にはベースライン補正を用いて、(Glc)および内部標準(C5)のピーク面積を自動的に計算し、これらの面積の比率を使用して、(Glc)を定量化した。
【0117】
<標準およびHPLC分画のESI−MSIMS分析>
サンプル全部か、またはHPLC分離後に、分画として採集したサンプルのいずれかの、BABオリゴ糖誘導体を、タンデム質量分析計を用いたESI−MSおよびESIMS/MSで分析した。アセトニトリル:水(1:1;v/v)の担体溶媒への注入は、20μlのRheodyneループで、15μl/分の流量にて行った。キャピラリおよびコーン環境は、それぞれ、3.50kVおよび78〜95Vであり、ソースブロック温度および脱溶媒和温度は、それぞれ、80℃および150℃であった。45〜77eVの衝突エネルギーおよび3.5×10−3mBarの気体セル圧を、衝突誘起解離実験に使用した。陽イオンモード、走査速度100amu/sで、質量スペクトルを入手した。
【0118】
[実施例3 HPLCによる(Glc)の分離および分析]
実施例2に上述した、同一の高解像度液体クロマトグラフィカラムを使用したHPLCによるオリゴ糖類の定量化における適性について、4つの誘導体を比較した。これらの誘導体は、ブチル−p−アミノ安息香酸(BAB)、2−アミノアクリドン(AMAC)、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(PMP)、および無水安息香酸であった。BAB誘導体化は、感度、再現性、高分解能、簡便性、および低価格であるという利点に基づいて、この用途のために、最終的に選択された。この比較において、AMAC誘導体化は高い感度を有していたが、(Glc)を、尿中に多量に認められる乳糖と分離することができず、また、PMP誘導体化は、優れた分解能を有していたが、感度は比較的低かった。過ベンゾイル化は優れた分解能およびかなりの感度を有していたが、時間がかかりすぎた。アノマーの還元および完全な過ベンゾイル化を含む、全手順に30時間以上を要したのに対して、BAB方法では、わずか2時間であった。さらに、BAB誘導体は、40℃で数週間安定していたが、PMP誘導体およびAMAC誘導体は、はるかに不安定であった。
【0119】
BAB標識された(Glc)と、尿中および血漿中に存在する他のオリゴ糖類との分離は、溶離溶媒および流量を慎重に選択し、疾患が存在しないことが分かっている、様々な年齢の幼児(対照)からの多数のサンプルを分析することによって、達成される。選択された患者サンプルからの分画を、ESI−MS/MSで分析することによって決定するとき、本発明の方法の特徴は、(Glc)の保持時間に既知の妨害シグナルが存在しないことによって、実質的に保証される。(Glc)と他のオリゴ糖類との分離を示す正常な尿クロマトグラムの1例を、図1(パネルA)に示す。はるかに大きい(Glc)のシグナルを示すGSD−II患者の尿を比較のために含める(図1、パネルB)。その他の、同定された尿性オリゴ糖類を、図1(パネルAおよびB)に示す。患者の尿で、グルコースシグナルが比較的低いことがポンペ病における低血糖症という表現型と一致することは、注目に値する((Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,第7版、第2巻(Scriver,C.R.,Beaudet,A.L.,Sly,W.S.,and Valle,D.編),pp.935−965,McGraw−Hill,New Yorkの、Chen,Y.T.and Burchell,A.,(1995))。正常な対照(図2、パネルA)およびGSD−II患者(図2、パネルB)における血漿(Glc)レベルの比較も実施した。明確にするために、大きいグルコースシグナルは排除した。
【0120】
BAB法は、(Glc)と、マルトテトラオース(M)とを分離できないことに留意すべきである。図3の例から分かる通り、PMP誘導体(Mと(Glc)とを完全に分離することができる)の分析によって、選択された対照および患者にMが存在しないことを、本発明者は確認した。この方法に基づいて、尿中のM含量は、BAB法の検出限界より低い、<1μg/mlであると推定され、従って、無視できると考えられる。
【0121】
[実施例4 (Glc)に対するHPLC方の感度および特異性]
シグナル対ノイズ比が3より大きいと定義されている、(Glc)に対する本方法の絶対感度は、1回のHPLC注入について、3ng(4.5pmol)であった。尿サンプルの場合、検出限界は、サンプル総量1mlから50μl注入に基づいて、1.2μg/mlであり、血漿の場合、総量150μlから100μ注入に基づいて、検出限界は0.02μg/mlであった。この感度は、正常な対照値の範囲に基づいて、十分である(表1参照)。
【0122】
【表1】
Figure 2004501365
【0123】
[実施例5 (Glc)に対するHPLCアッセイの確度および精度]
サンプル調製中および分析中に生じる損失を評価するために、内部標準(C5)を導入した。添加した(Glc)濃度に対する、(Glc)とC5のピーク面積比の尿標準曲線は、15μg/mlまで直線状であり、これは、尿サンプルでは、300μg/mlに相当する。血漿標準曲線は、1μg/mlまで直線状であり、これは、血漿サンプルでは、7.5μg/mlに相当する。直線回帰のr値は、>0.999であった。キャリブレータの反復分析によれば、本発明の方法の確度および精度は、十分に、臨床アッセイの許容範囲内であった(表2)。週1回の頻度で、同一品質の対照サンプルを分析することによって、本方法の再現性を決定した。表2に示す通り、尿対照サンプルでも、血漿対照サンプルでも、結果は10%以内で一致した。
【0124】
【表2】
Figure 2004501365
【0125】
[実施例6 HPLC単離されたオリゴ糖類の、ESI/MS/MSによる同定]
HPLCクロマトグラフ分離が適当であると考えたとき、ESI−MSを使用して、選択された患者尿サンプル中の(Glc)の同一性を確認した。患者および対照サンプルのHPLC分析中に回収された、(Glc)に対応する分画を、ESI−MSで分析した。BAB標識されたグルコース四量体のナトリウム付加物に対応する、m/z866のイオン質量の優性で決定するとき、ほとんどが、テトラグルコースに関して一様であった。HPLCで分析するとき、多数の幼児対照尿サンプル中の(Glc)の量が、予想より高いことが、方法の開発中に観察された。ESI−MSによる(Glc)分画の分析で、(Glc)がm/z688の化合物と共溶離することが明白になった。ESI−MS/MS分析を使用して、この化合物は、デオキシヘキソース−ヘキソース−ヘキソースPAB誘導体のナトリウム付加物であることが分かった。この化合物は、ヒト母乳の成分である2′−フコシルラクテートであるという仮定(Chaturvedi,P,et al(1997)Anal Biochem.251,89−97)が、確実な検体のHPLCおよびESI−MS/MS分析で裏付けられた。次いで、この化合物と(Glc)とを分離するために、HPLC方法を適当に修正した。この方法は、分子的に特異的でない検出器に頼る臨床用HPLCアッセイの開発における質量分析法の価値を強く示すものである。
【0126】
(Glc)と異性体マルトテトラオース(M)とを区別するために、ESI−MS/MSも使用したが、これらの化合物は、アッセイ条件で、HPLCによって分離しないためである。(Glc)およびMのNa付加物の衝突誘起解離(CID)は、結果として、図4に示す断片化パターンを示した。m/z704および542におけるイオンは、PAB修飾グルコース残基上にナトリウムカチオンを保持して、非還元末端からグルコース残基を連続的に喪失することによって生じ、m/z509におけるイオンは、非還元末端上にナトリウムカチオンを保持して、PABグルコース残基を喪失することによって生じる。断片m/z509と、m/z542の平均(±2標準偏差(SD))強度比は、(Glc)スペクトルでは1.57(±0.11)(図4、パネルA)であり、Mスペクトルでは0.65(±0.05)(図4、パネルB)であると決定された。この比率の誤差は、3週間にわたって7回繰返した分析で、(Glc)では3.6%であり、Mでは4.3%であった。これらのデータから、(Glc)の場合には、非還元末端からの喪失より還元末端からの残基喪失が好ましいが、Mの場合には、その逆が当てはまることが示唆される。異なる患者6例の尿中のヘキソース四量体からのm/z509断片イオンとm/z542断片イオンとの比率は、(Glc)標準のそれと類似した1.64±0.44(平均値±2)であり、四量体は、確かに、主に(Glc)であったことがわかる。1例を図4(パネルC)に示す。
【0127】
GSD−II患者の一部の尿に見られる大きいオリゴ糖類を特性決定するために、ESI−MS/MSをさらに適用した。このような患者からの全BAB誘導体化尿のESI−MS分析の1例を図5に示す。m/z866、1028、1190および1352のイオンに割当てられる正体は、それぞれ、4、5、6および7単位を有するヘキソースオリゴマーのナトリウム付加物である。これらのイオンに関するシグナルは、対照尿サンプルでははるかに低いか存在せず、全て、グリコーゲンに由来することが推測される。ESI/MS/MSを使用した、これらの付加物の分析で、標準的なM、MおよびMに由来するものと同一質量を有するプロダクトイオンが明白になり、これらの付加物は、キソースオリゴマーであることが確認された。しかし、(Glc)およびM4の場合と同様、ある種のイオンの強度に違いがあり、これらを表3にまとめる。尿性ヘキソースオリゴマーと、M、M、およびMとの間の主な違いは、それぞれ、m/z509とm/z542、m/z671とm/z704およびm/z833とm/z866の比率である。非還元末端に由来する生成物イオンに比べて、この断片化経路からのプロダクトイオン強度が高いことによって決定するとき、尿性ヘキソースオリゴマーでは、還元末端からの喪失が有利であることが、以上のデータからわかる。GSD−II患者およびGSD−III患者の尿中で同定された、6〜8個の残基を含む、グルコースオリゴマーについて先に報告した通り、患者尿中のヘキソースオリゴマーは、少なくとも1つのα−1→6結合を含むことが、以上の結果から分かる。(Lennartson,et al.(1978)Eur.J.Biochem.83,325−334)。
【0128】
【表3】
Figure 2004501365
【0129】
[実施例7 尿中および血漿中の(Glc)濃度]
年齢範囲で分けた正常対照の、尿中および血漿中の(Glc)濃度を表1にまとめる。(Glc)排泄物と年齢上昇との反比例が確認され、これは、血漿より尿で、量的に明白であった。表4および表5から分かるように、GSD−II患者の尿中および血漿中(Glc)濃度も、年齢依存的のようであった。
【0130】
【表4】
Figure 2004501365
【0131】
【表5】
Figure 2004501365
【0132】
(Glc)の尿中排泄物は、食事、空腹状態、および身体活性に影響されることが、以前に報告されている(Walker,G.J.and Whelan,W.J.(1960),Biochem.J.76,257−263)。表1の尿(Glc)レベルを、尿クレアチニン濃度に標準化した。サンプル採集中、食事および身体活性因子に関して、管理しようとしなかった。しかし、GSD−II患者21例(幼児、小児、および成人型)から、血漿中および尿中の(Glc)濃度は共に、年齢が対応する正常対照のものより、少なくとも係数2で、一貫して高いことが分かる。表4は、若干のGSD−I患者およびGSD−II1患者の尿(Glc)濃度も示す。GSD−II1患者は、グリコーゲンを蓄積し、高レベルの(Glc)を排泄する。(Glc)は、グリコーゲンのα−アミラーゼ分解によって生じる限界デキストリンであることが、in vitroで証明されている(Walker,G.J.and Whelan,W.J.(1960),Biochem.J.76,257−263,Ugorski,M.,et al.(1983)J.Exp.Pathol.1,27−38)。アカゲザルにグリコーゲンを静脈内投与すると、(Glc)排泄物が増加することが証明されている(Kumlien,J.,et al.(1988)Clin.Chim.Acta 176,39−48)。酸性α−グルコシダーゼ(GAA)は、1→4結合でも1→6結合(分枝部位)でも、グリコーゲンを分解することが報告されている(Brown,B.I.et al(1970)Biochem.9,1423−1428)。従って、GAA欠損(GSD−II)および脱分枝酵素欠損(GSD−III)によって蓄積されるグリコーゲンは、類似した立体配置を有する可能性がある。グリコーゲンの多い組織の分解およびターンオーバーによる、循環内へのグリコーゲン放出の増加によって、血漿および尿中の(Glc)濃度が上昇するであろうと予測される。GSD−I患者の尿中(Glc)濃度は、対照の範囲内である。これは、GSD−Iでは、主として貯蔵される物質が、グリコーゲンよりむしろ脂肪であることによる公算が高い(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,第7版、第2巻(Scriver,C.R.,Beaudet,A.L.,Sly,W.S.,and Valle,D.編),pp.935−965,McGraw−Hill,New York)の、Chen,Y.T.and Burchell,A.(1995))。
【0133】
[実施例8 臨床診断のためのHPLC法の利用]
GSDII患者における血漿(Glc)レベルを、本明細書にはじめて報告する。幼児発症患者および若年発症患者は、全例が著明に高いレベルを有するが、成人発症GSDII患者2例は、正常範囲内であった。この研究所で、GSDII患者について測定された尿(Glc)濃度は、19〜821nmol/mgクレアチニン(2.2〜92.8mmol/molクレアチニン)の範囲であり、これは、Oberholzerand Sewell((1990)Clin.Chem.36,1381)によって報告された、GSD−II患者5例の値の範囲と類似している(6.8〜908nmol/mgクレアチニン)。Peelen et al((1994)Clin.Chem.40,914−921)によって報告された値(78−324mmol/molクレアチニン)は、はるかに高い。Lundbladらは、(Glc)濃度を、排泄速度として、mg/24時間で報告している((1976)Biomed.Mass Spectrom.3,51−54)。これは、おそらく間違いなく、(Glc)蓄積状態に関する最も正確なデータであるが、24時間尿サンプル採集は、通常、臨床診断状況では実施できない。適切な対照年齢範囲を比較に使用すれば、この研究で得られる研究に基づいて、サンプルを受け取ってから24時間以内に、推定上の診断を行うのに、ポンペ病を有する臨床的疑いまたはリスクが高い患者からのスポット尿サンプル(既知のクレアチニンレベルを有する)で十分であろう。その後、古典的酵素学で疾患診断を確認するために、筋生検または皮膚線維芽細胞が推奨される。
【0134】
[実施例9 生物マーカーとしての(Glc)の使用]
<試験被験者>
皮膚線維芽細胞および/または筋において、正常の1%未満に低下したGAA活性によって実証される、幼児GSD−IIに罹患している幼児3例を、酵素置換療法のフェーズI/II臨床治験のための研究に登録した。酵素ソースは、rhGAA分泌CHO細胞の培地から精製した、組換えヒトGAA(rhGAA)であった。この研究は、施設内治験審査委員会によって認可された、また、親の文書によるインフォームド・コンセントを得た。詳細な患者の特徴および心機能、肺機能、神経機能および運動機能の臨床評価を、臨床結果を報告するの紙に記載した(Amalfitano A,et al.(2001)Genet Med.3:132)。これらの患者3例は、治療開始時の重症度に関して、異なる臨床徴候を有していた。患者1(Ptl)は、4ヶ月齢で治療を受け、過度の心肥大、重度運動遅延、および成長障害を伴う摂食困難を呈する、疾患の最も進行したステージであった。Pt2は、3ヶ月齢で治療を開始し、重度心筋症、中等度運動遅延および摂食困難を呈していた。Pt3は、2 1/2ヶ月齢に治療を開始したとき、疾患の早期であった。この患児は、重大な運動遅延を呈したが、心筋症は認めらなかった。
【0135】
<(Glc)測定>
治療開始前、および治療中、2週間ごとに、血漿および6時間尿を採集した。試験前に、尿および血漿サンプルの両者を、−20℃で凍結した。実施例2に上述した通り、BABを誘導体として使用して、HPLCで尿中および血漿中の(Glc)レベルを測定した。定性分析の場合、C5を各被験サンプルに内部標準として加え、および2つの対照サンプル(低(Glc)含量および高(Glc)含量)を毎日測定した。
【0136】
<HPLC法を使用した、疾患進行および治療応答のモニタリング>
患者3例に関する、治療前および治療中の、尿の(Glc)レベルを図6に示す。血漿中の(Glc)のレベルを図7に示す。(Glc)レベルは、治療開始時の臨床重症度と良好な相関関係を示した。最も進行したステージの疾患を有していたPt1は、血漿でも、尿でも、最も高い(Glc)レベルを有していたが、Pt2は、中等度の疾患および中程度に上昇したレベルの(Glc)含量を有していた。Pt3は、最も穏やかな疾患症状を有し、また、血漿のみで(Glc)上昇を示し、尿では正常であった。ポンペ病に関する生物マーカーとして、血漿中の(Glc)測定は、その尿中レベルよりも敏感なようである。これは、血漿中の(Glc)上昇の大きさが、尿レベルより大きいことおよびPt3における正常な尿レベルによって現れる。
【0137】
治療の最初の2〜3ヶ月の間に、患者3例全てで、尿中および血漿中(Glc)レベルが共に低下した(図6および7)。また、低下は、尿より血漿で顕著であった。しかし、Pts1および2の(Glc)レベルはその後上昇し、付随して、臨床的に衰退し、また、rhGAAに対する抗体が産生された。血漿分離法、IVIG、サイトキサン(cytoxan)および毎日の酵素注入を10日間用いて、抗体を除去し、耐性を誘導しようとする試みは、一時的に臨床改善をもたらしたが、その後、再び臨床的に衰退し、Pt1では、第2の免疫寛容療法が必要であった。Pt1では、(Glc)レベルと、臨床経過および免疫寛容療法に対する応答の間に、相関関係があった(図6および7)。臨床経過および免疫寛容療法に対する応答の類似した相関関係が、Pt2でみられた。抗rhGAA抗体が発生していなかったPt3は、引き続いて、正常な心評価、神経学的評価および運動評価を有している。Pt3の(Glc)レベルは、治療の最初の2ヶ月間で正常化し、それ以来、概ね正常なままである。患者3例全てにおける臨床経過および(Glc)レベルの相関関係は、また、尿より血漿で顕著であった。(Glc)レベル、特にポンペ病患者の血漿(Glc)レベルは、疾患の臨床状態を示すことが、上述の結果から強く示唆される。血液中の(Glc)の測定は、ポンペ病における総合的疾患状態および治療に対する治療応答を評価する非侵襲的方法を提供し、その結果、筋生検を回避すると考えられる。
【0138】
[実施例10 タンデム型質量分析法による(Glc)分析のための、安定な同位元素で標識された内部標準の合成]
Tonozukaらの方法(Tonozuka et al.,(1994)Carbohydrate Research 261:157;Tonozuka et al.,(1996)J.Appli.Glycosci.43:95)を使用して、安定な同位元素で標識された内部標準を合成した。この方法では、[U−13C]グルコースの存在下で、三糖類パノース(Glcα1−6Glcα1−4Glc)のポリマーであるプルランを、α−アミラーゼ、TVA IIで消化する。TVA IIは、[U−13C]グルコースを、α1−4およびα1−6結合で付加し、その結果として、還元末端に標識された残基を有するグルコース四量体を形成して、パノース生成物のトランスグリコシル化を触媒する。
【0139】
プルラン100mgおよび[U−13]グルコース100mgを、2mlの50mMのクエン酸ナトリウム、pH6.0に溶解し、100μlのNaHPO緩衝液、pH6.9中の8mgのTVAIIと混合し、40℃で5.5時間インキュベートした。この混合物を氷で冷却し、Amicon Centrifree 30kDa分子量カットオフフィルターを通して、2000gで2時間遠心分離した。この濾液を、30μm粒子サイズのToyopearl HW−40S(Sulpeco,Bellefonte,PA)を詰めたゲル濾過カラム(170×15cm)で分画し、dHOで、流量0.5ml/分にて溶離した。分画のアリコートを、65:35 アセトニトリル:HO中の15mM酢酸アンモニウムと混合し、3.5kVキャピラリおよび31Vコーン環境と共に、流動相としてアセトニトリル:HO(1:1、v/v)を使用して、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)で分析した。[U−13]標識されたヘキソース四量体を含む分画をプールし、Centrivap(Labconco)を使用して、真空下、40℃にて6時間乾燥した。[U−13]標識されたヘキソース四量体をHOで再構成した。ESI−MSを使用し、BAB誘導体化内部標準(m/z872)の[M+Na]の強度を、非標識BAB誘導体化Glc標準(m/z866)のそれとを比較することによって、合併した[U−13]標識されたヘキソース四量体濃度を決定した。HPLCと共にUV検出を使用したBAB誘導体の分析によって、ISの純度を決定した。YMC−Pack Pro C18カラム(内径250×4.6mm、5μm)と、36分間にわる、5:22:73(v/v/v)0.05mol/リットルの酢酸アンモニウム:アセトニトリル:HOから5:60:35(v/v/v)0.05mol/リットルの酢酸アンモニウム:アセトニトリル:HO(v/v)までの勾配溶離で、誘導体化オリゴ糖類を分離した。可能な限り、保持時間を、確実な標準と比較することによって、オリゴ糖類を同定した。HPLC分離でも分画を回収し、N下で乾燥させ、血漿サンプルについて後述するものと同一条件を使用して、ESI−MSおよびESI−MS/MSで[M+Na]イオンを分析した。
【0140】
反応混合物からゲル濾過で単離した、テトラヘキソース分画のHPLC分析で、多数の成分が存在することが証明された(図8参照)。HPLC分析によって回収された分画を、ESI−MSおよびESI−MS/MSを使用して分析した。BAB誘導体化[13]テトラヘキソースに関して予想したm/z値および断片化パターンを有する4成分を同定した(図8のピーク1〜4)。これらの成分の1つ(図8のピーク4)を、その保持時間、およびナトリウム化(sodiated)B3およびY2断片イオン(それぞれ、m/z509および548)の比率から、[13]Glcと同定した。上述の通り(実施例6:An et al.,(2000)Anal Biochem.287:136も参照)、Glcおよびマルトテトラオース(全てα1−4結合を有する)に関する、これらの2つのプロダクトイオンの比率の差。この内部標準成分に関する、m/z509と548の比率(平均値±2SD)は1.33±0.24(n=10)であった。Glc標準の場合、ofm/z509と542(m/z548に相当する非標識物)の比率(平均値±2SD)は、1.41±0.09(n=5)であった。ピーク2は、存在する主な異性体であって、Tonozukaらによって、トランスグリコシル化反応の主要生成物の1つであると同定された、IMIMである公算が高い。この異性体に関する、m/z509と548の比率は、マルトテトラオース(0.48±0.16(n=5))に類似した、0.34±0.10(n=10)であった。ピーク1に関するこの比率は、1.34±0.32(n=8)であった。ピーク1とピーク3の構造的同一性は分かっておらず、ピーク3は、四量体および五量体の混合物であった。パノース(ピーク5)およびグルコース(ピーク6)も、調製物の中に存在していた。HPLCおよびMS分析の両者で決定したとき、3つの主な異性体、ピーク1、2および4は、全部で、内部標準混合物の84%を構成していた。ピーク1:ピーク2:ピーク4の比率は、0.2:1.7:1.0であった。
【0141】
[実施例11 血漿および尿中のGlcをタンデム型質量分析する方法]
−70℃または−20℃で最高1年保存した貯蔵した、対照および患者の尿サンプルおよび血漿サンプルを使用した。正常なヒト血清(#1101)は、Biocell Laboratories,Rancho Dominguez,CAから入手した。尿、尿スポットおよび血漿サンプルは、上述の通りに、BABで誘導体化した。
【0142】
<尿> 尿50μlを、100μmol/リットルの内部標準25μlと、10秒間、渦巻混合し、試薬(149mmol/リットルのBAB、400mmol/リットルのNaBHCNおよびメタノール中6%の氷酢酸を含む)140μlで、80℃にて45分間、誘導体化した。GSDII患者からの尿サンプルの一部は、分析前に、尿200μlを1.8mlのdHOと混合することによって、希釈することが必要であった。
【0143】
<尿スポット> 尿を、14000rpmで5分間遠心分離し、その上澄をきれいな試験管に移した。反復した30μlアリコートをリンター紙(等級903、Schleicher & Schuell,Keene社製,NH)上にスポットし、室温で一晩乾燥させた。残りの尿は、−70℃で保存した。2×1/4インチの尿スポットを、室温で1時間振盪することによって、300μlのdHO中に抽出した。抽出物100μlを、2μMのIS、50μlと混合し、N下で乾燥させ、20μlのdHOで再構成し、上述の通りに誘導体化した。
【0144】
<血漿および血清> 血漿または血清100μlおよび2μmol/リットルの内部標準50μlをメタノール500μlと渦巻混合し、14000gで5分間遠心分離した。この上澄をN下で乾燥させ、dHO 20μlで再構成し、試薬(400mMのBAB、2.0mol/リットルのNaBHCNおよびメタノール中7.5%の氷酢酸を含む)100μlを使用して、80℃で45分間、誘導体化した。
【0145】
誘導体化した尿、尿スポット抽出物および血漿サンプルを、上述のC18カートリッジ(実施例2;An et al.,Anal.Biochem.287:136も参照)を用いた固相抽出を使用して精製した。溶出液を、N下、40℃で乾燥させ、80:20 メタノール:HO(v/v)で再構成し、96ウェル・マイクロタイタープレートに移した。
【0146】
<キャリブレータ> 対照成人の尿を使用し、2.5〜200μmol/リットルの範囲のGlc標準を加えて、尿キャリブレータを作成した。dHOおよび0.1〜10μmol/リットルの範囲で、尿スポットキャリブレータを作成した。Biocellの正常なヒト血清を使用し、0.1〜10μmol/リットルの範囲のGlc標準を加えて、血漿キャリブレータおよび品質管理サンプルを作成した。
【0147】
<質量分析および定量> 尿および血漿サンプルは、マルチ反応モニタリングを使用して、エレクトロスプレーイオン化−タンデム型質量分析法(ESI−MS/MS)で分析し、(Glc)および内部標準は、それぞれ、m/z866からm/z509およびm/z872からm/z509への遷移を追跡することによって検出した。尿由来のオリゴ糖誘導体類を、40μl/分の流量で、80:20 メタノール:HO(v/v)流動相に注入した。サンプルを濃縮するために、2×100mm C18カラム(Keystone Scientific Inc.)と共に、200μl/分の流量で、80:20 メタノール:HO(v/v)を流動相として使用した、さらなる液体クロマトグラフィステップを含む同じ方法で、血漿および尿スポットサンプルを分析した。総分析時間は、尿サンプルの場合には2.5分であり、血漿および尿スポットサンプルの場合には3.0分であった。コーン電圧90V、キャピラリ電圧3.5kV、衝突エネルギー40eVおよびアルゴン衝突ガス圧3.1×10−3mBarを使用した。(Glc)標準に関するMRMシグナルと内部標準に関するMRMシグナルの比率を、添加した(Glc)濃度に対してプロッティングすることによって導いた外部較正曲線を使用して、サンプルを定量化した。
【0148】
クレアチニン測定。尿中および尿スポット抽出物中のGlc濃度を、クレアチニン濃度と関連づけた。尿中のクレアチニンを、ピクリン酸法(Jaffe et al.,(1886)Physiol.Chem.10:391)を使用して測定し、尿サンプルと尿スポット抽出物サンプル対のクレアチニンを、他所で発表する、安定な同位元素希釈法を使用して、ESI−MS/MSで測定した。
【0149】
<ESI−MS/MSによる、尿分析および血漿分析の検証>
尿分析および血漿分析を、キャリブレータおよび品質管理(QC)サンプルの繰返し分析によって検証した。さらに、ESI−MS/MSで決定した患者サンプル中および対照サンプル中のGlc濃度を、HPLC−UVで決定した結果と比較した。尿較正曲線およびQCを、4週間にわたって分析し、血漿較正曲線sおよびQCを、8週間にわたって分析した。
【0150】
<尿に関する較正曲線およびQCの日間変動>
Glc濃度が1桁または2桁違う可能性がある対照サンプルおよび患者サンプルの両者を定量化するために、尿較正曲線を2つの濃度範囲に分けた。較正曲線勾配の日間変動は、2.5〜70μMの低い範囲では1.3%であり、40〜200μmol/リットルの高い範囲では2.3%であった(n=5)。4週間にわたる、低い範囲および高い範囲に関する、較正曲線の決定の平均値±SD係数(r)は、それぞれ、0.998±0.001および0.998±0.001であった(n=5)。キャリブレータの日間精度および平均確度を表6に示す。31.6mmol/molクレアチニンという平均Glc濃度を有する患者サンプルの繰返し分析で決定された日内のおよび日間の精度(cv)は、それぞれ、2.6%(n=5)および5.0%(n=4)であった。0.4mmol/molクレアチニンという平均Glcを有する対照サンプルの場合、日内および日間精度は、それぞれ、4.6%(n=5)および24.2%(n=4)であった。
【0151】
【表6】
Figure 2004501365
【0152】
血漿に関する較正曲線およびQCの日間変動。0.1〜2.5μmol/リットルおよび1.0〜10μmol/リットルに関して血漿を定量化したところ、8週間にわたる曲線勾配の日間変動は、それぞれ、20.3%および20.6%(n=7)であった。平均値±SDr値は、低い範囲では0.998±0.001であり、高い範囲では0.994±0.009(n=7)であった。キャリブレータの日間精度および平均確度を表7に示す。キャリブレータの作成に使用した、同一の正常なヒト血漿プールを使用して、血漿QCを作成した。この血漿中に少量の内因性のGlcが検出および決定され、計算の際に計上した。血漿QCの日内および日間での繰返し分析に関する結果を、それぞれ、表8および表9に示す。
【0153】
【表7】
Figure 2004501365
【0154】
【表8】
Figure 2004501365
【0155】
【表9】
Figure 2004501365
【0156】
[実施例12 ESI−MS/MS分析とHPLC分析との比較]
HPLC法で分析した尿サンプル24検体および血漿サンプル29検体(患者および対照)の結果を、ESI−MS/MS法による結果と比較した(図9および図10)。尿サンプルの場合、y=0.97x−4.0、Sy/x=6.5およびr=0.82であった。血漿サンプルの場合、y=0.62x+0.16、Sy/x=0.31、r=0.502であった。データのBland−Altman解析(Bland et al.,(1986)Lancet 1:307)を使用したとき、尿および血漿に関する一致限界[平均差(HPLC−ESI−MS/MS)±差の2SD]は、それぞれ、3±12.4および0.1±0.72であった。
【0157】
[実施例13 液体尿サンプルおよびスポットした尿サンプル中のGlc分析の比較]
37対の液体尿サンプルとスポット尿サンプルの、Glc濃度を決定した。濃度の比較を図11に示す。y=0.99x−0.38、Sy/x=5.36およびr =0.954であった。Bland Altman解析の一致限界[平均差(液体−スポット)±差の2SD]は、0.55±10.4であった。
【0158】
[実施例14 起こり得る分析妨害の究明]
[M+Na]イオンの強度を最適化するために、高いコーン電圧(90Vが使用される。この電圧では、インソース断片化が起こり、従って、断片にしてm/z866プロダクトイオンを与える、より高質量のヘキソースオリゴマーからのGlc分析を妨害する可能性がある。これを究明するために、マルトペンタオースおよびマルトヘキサオースの異なるコーン電圧におけるインソース断片化の程度を決定した。さらに、GSDII患者サンプル中の、より高質量のヘキソースオリゴマーの、m/z866への寄与を推定した。シリンジポンプ(モデル)を10μl/分の流量で使用して、80:20メタノール:HO(v/v)中、12μmol/リットルのマルトペンタオースおよびマルトヘキサオースBAB誘導体を、質量分析計に注入した。コーン電圧を、30Vから100Vに上げ、m/z866および[M+Na]の相対強度を決定した。マルトペンタオースの場合、m/z866の相対強度は、30Vでm/z1028の強度の2.5%から、100Vで4.6%まで、コーン電圧と共に増加した。マルトヘキサオースの場合、m/z866の相対強度は、コーン電圧と共に増加しなかった。90Vで、両標準の[M+Na]の相対強度は、類似していた(4%)。m/z830〜1400を100amu.sec−1の速度で走査することによって、GSDII患者の尿サンプル12検体のBAB−誘導体を、MS1モードで分析した。存在するヘキソース五量体、ヘキソース六量体およびヘキソース七量体の、[(M+Na]のm/z866に対する平均相対強度は、それぞれ、5.2、2.8および3.6%であると決定された。従って、これらのヘキソースオリゴマーオリゴ糖類の、m/z866シグナルへの複合寄与は、0.46%であると決定された。
【0159】
[実施例15 TMSを使用した新生児スクリーニングアッセイ]
TMSに基づくアッセイを使用し、(Glc)を生物マーカーとして使用して、ポンペ病に関して、新生児をスクリーニングした。乾燥した血液スポット(一般に、踵穿刺による)を含む新生児スクリーニングカードを入手する。血液スポットから円板を打ち抜き、オリゴ糖類を抽出するための溶媒が入っているバイアルに入れる。内部標準を各バイアルに既知量で加える(たとえば、モノマーの1つがU13C−グルコースホモログで置き換えられた(Glc)四量体)。次いで、ブチル−PABAを使用して、サンプル中のオリゴ糖類を誘導体化する。この誘導体化されたサンプルを、実施例11に記載の通り、TMSで分析する。データをコンピューターで得て分析し、各サンプル中の(Glc)濃度を決定する(すなわち、内部標準および被分析物によって生成されたシグナルの比率を比較することによる)。基準値より高い値は、ポンペ病を示す。
【0160】
抗(Glc)Abを化学的結合させた常磁化ポリスチレン球(Dynabeads(登録商標))と共にインキュベートすることによって、サンプルを誘導体化する前に、任意選択的に、被分析物を濃縮する。このビーズを磁気的に回収し、適切な溶媒を使用して、被分析物をビーズから溶離する。
【0161】
さらなる任意のステップとして、TMS分析前に、サンプル中のグルコースモノマーの濃度を低下させる。1つのプロトコールでは、誘導体化の前に、グルコースオキシダーゼをサンプルに加える。代替プロトコールでは、TMSの前に、液体クロマトグラフィステップ(逆相)で誘導体化グルコースモノマーを分離する。
【0162】
前述の実施例は、本発明を例証するものであって、本発明を限定するものと考えてはならない。本発明は、クレームに説明されており、クレームの均等物は、その中に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
尿サンプル中のBAB標識された(Glc)のHPLC分離のクロマトグラムを示す図である。Y軸は、304nmにおけるUV吸光度である。X軸は、分で示した溶離時間である。I.S.は、10mg/mlのセロペントース(C5)の内部標準である。パネルAは、正常者からの尿の溶離プロフィールである。パネルBは、GSDII患者からの尿の溶離プロフィールである。
【図2】
血漿サンプル中のBAB標識された(Glc)のHPLC分離のクロマトグラムを示す図である。Y軸は、304nmにおけるUV吸光度である。X軸は、分で示した溶離時間である。I.S.は、1mg/mlのセロペントース(C5)の内部標準である。パネルAは、正常者からの尿の溶離プロフィールである。パネルBは、GSDII患者からの尿の溶離プロフィールである。
【図3】
PMP標識されたオリゴ糖類、マルトヘキソース(M)、マルトペントース(M)、マルトテトラオース(M)、(Glc)、マルトトリオース(M)、マルトース(Mlt)、およびグルコース(Glc)のHPLC分析のクロマトグラムを示す図である。Y軸は、304nmにおけるUV吸光度である。X軸は、分で示した溶離時間である。パネルAは、(Glc)およびマルト−オリゴ糖標準の溶離プロフィールである。パネルBは、GSDII患者の尿中(Glc)の溶離プロフィールである。
【図4】
BAB標識されたマルトテトラオース・ナトリウム付加物イオン(M−BAB)Na、m/z866.4(パネルA);BAB標識(Glc)・ナトリウム付加物イオン(Glc−BAB)Na、m/z866.4(パネルB);およびGSDII患者の尿サンプル中に存在するヘキソース四量体、m/z866.4(パネルC)のプロダクトイオンスペクトルを示す図である。プロダクトイオンm/z704.4、m/z542.3、およびm/z509.2は、それぞれ、ヘキソース1個、ヘキソース2個、およびBAB標識されたグルコースの喪失に相当する。Y軸は、断片の%強度である。X軸は、m/z値である。
【図5】
II型グリコーゲン貯蔵病患者の尿中BAB標識されたオリゴ糖類のESI−MS−MSスペクトルを示す図である。C18カートリッジ精製後、この誘導体サンプルを、ESI−MS−MSに直接注入した。イオンを四重極質量分析計で走査した(実験の詳細については、テキスト参照)。Y軸は、断片の%強度である。X軸は、m/z値である。
【図6】
患者1(パネルA)、患者2(パネルB)、および患者3(パネルC)からの尿中(Glc)レベルを示す図である。(Glc)レベルは、mmol/molクレアチニン(Cr)で示す。破線は、正常対照(<1才)20例における主な(Glc)レベル+標準偏差値を示す。中白の矢印は、酵素療法の開始を示す。破線が付いた中黒の矢印は、2倍量の酵素投与開始を示す。実線が付いた中黒の矢印は、免疫療法の開始を示す。
【図7】
患者 1 (パネル A)、 患者 2 (パネル B)、 および 患者 3 (パネル C)からの血漿中(Glc)レベルを示す図である。(Glc)レベルは、mmol/molで示す。破線は、正常対照(<1才)20例における主な(Glc)レベル+標準偏差値を示す。中白の矢印は、酵素療法の開始を示す。破線が付いた中黒の矢印は、2倍量の酵素投与開始を示す。実線が付いた中黒の矢印は、免疫療法の開始を示す。
【図8】
HPLCで分離した内部標準反応混合物の四糖分画のBAB−誘導体を示すグラフである。
【図9】
HPLCまたはESI−MS/MSのいずれかによる、対照および患者尿サンプル中のGlc分析の比較を示す図である。
【図10】
HPLCまたはESI−MS/MSのいずれかによる、対照および患者血漿サンプル中のGlc分析の比較を示す図である。
【図11】
ESI−MS/MSによる、液体およびスポット尿サンプル対におけるGlc分析の比較を示す図である。
【図12】
Glc四糖の推定構造を示す図である。

Claims (54)

  1. 被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)の濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、
    前記基準値より高い濃度で前記生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることにより、前記被験者がグリコーゲン貯蔵病に罹患していると認定することを特徴とする、グリコーゲン貯蔵病に関して被験者をスクリーニングする方法。
  2. (Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記(Glc)濃度が、定量的方法を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
  4. タンデム型質量分析法、質量分析法、液体クロマトグラフィ、および免疫精製からなる群から選択される方法で(Glc)が定量化される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記(Glc)濃度が、準定量的方法を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記グリコーゲン貯蔵病が、ポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)、III型グリコーゲン貯蔵病、およびVI型グリコーゲン貯蔵病からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記被験者がヒト被験者である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記ヒト被験者が新生児被験者である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記生物学的サンプルが体液サンプルである、請求項1に記載の方法。
  10. 前記体液サンプルが、血液、血漿、血清、尿、唾液、および羊水からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記体液サンプルが新生児血液サンプルである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記新生児血液サンプルが乾燥した血液スポットである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記体液サンプルが乾燥した尿サンプルである、請求項9に記載の方法。
  14. 前記生物学的サンプルが細胞または組織サンプルである、請求項1に記載の方法。
  15. 前記基準値が所定の値である、請求項1に記載の方法。
  16. 前記基準値が、対応する被験者集団で確認される(Glc)濃度に基づく、請求項1に記載の方法。
  17. 前記対応する被験者集団が、非罹患被験者集団である、請求項16に記載の方法。
  18. グリコーゲン貯蔵病に罹患していると認定されている被験者に対して、さらなる診断テストを実施するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  19. 被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)の濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、
    前記基準値より高い濃度で前記生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることにより、前記被験者がポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)に罹患していると認定することを特徴とする、ポンペ病に関して被験者をスクリーニングする方法。
  20. (Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する、請求項19に記載の方法。
  21. 前記(Glc)の濃度が、定量的方法を使用して決定される、請求項19に記載の方法。
  22. (Glc)がタンデム型質量分析法で定量化される、請求項20に記載の方法。
  23. 前記タンデム型質量分析法による定量化前に、前記生物学的サンプル中の前記オリゴ糖類が、ブチルパラアミノ安息香酸で誘導体化される、請求項22に記載の方法。
  24. [U−13C]グルコース標識されたヘキソース四量体を内部標準として使用して、前記タンデム型質量分析法による定量化が標準化される、請求項22に記載の方法。
  25. 前記内部標準が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する[U−13C]標識されたヘキソース四量体を含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記(Glc)の濃度が、準定量的方法を使用して決定される、請求項19に記載の方法。
  27. 前記基準値が所定の値である、請求項19に記載の方法。
  28. 前記所定の基準値が、対応する被験者集団で確認される(Glc)濃度に基づく、請求項27に記載の方法。
  29. 前記対応する被験者集団が、非罹患被験者集団である、請求項28に記載の方法。
  30. ポンペ病に罹患していると認定されている被験者に対して、さらなる診断テストを実施するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  31. 新生児被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)濃度を決定するステップであって、(Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有することを特徴とするステップと、前記濃度を基準値と比較するステップとを含み、
    前記基準値より高い濃度で前記生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることにより、前記新生児被験者がポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)に罹患していると認定することを特徴とする、ポンペ病に関して新生児被験者をスクリーニングする方法。
  32. 被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、
    前記基準値より高い濃度で前記生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることが、前記被験者の臨床状態を示すことを特徴とする、ポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)を有する被験者の臨床状態をモニタリングする方法。
  33. (Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する、請求項32に記載の方法。
  34. 前記被験者が、ポンペ病のための治療を受けている、請求項32に記載の方法。
  35. 前記治療が、酵素置換療法、遺伝子療法、または食事療法からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
  36. ポンペ病のための前記被験者の治療を開始または再開始するかどうかを決定するために前記モニタリングが実施される、請求項34に記載の方法。
  37. 被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)濃度を決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、
    前記基準値より高い濃度で前記生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることが、前記被験者における治療計画の有効性を示すことを特徴とする、ポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)を有する被験者における治療計画の有効性を評価する方法。
  38. (Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する、請求項37に記載の方法。
  39. 新生児被験者からの乾燥した血液スポットにおけるヘキソース四糖(Glc)の濃度をタンデム型質量分析法で決定するステップと、該濃度を基準値と比較するステップとを含み、
    前記基準値より高い濃度で前記生物学的サンプル中に(Glc)が検出されることにより、前記新生児被験者をポンペ病(II型グリコーゲン貯蔵病)に罹患していると認定することを特徴とする、ポンペ病に関して新生児被験者をスクリーニングする方法。
  40. (Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する、請求項39に記載の方法。
  41. [U−13C]グルコース標識されたヘキソース四量体を内部標準として使用して、前記タンデム型質量分析法による定量化が標準化される、請求項39に記載の方法。
  42. 前記内部標準が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する[U−13C]グルコース標識されたヘキソース四量体を含む、請求項41に記載の方法。
  43. 被験者から採取した生物学的サンプル中のヘキソース四糖(Glc)の濃度を前記タンデム型質量分析法で決定するステップを含む、生物学的サンプル中のオリゴ糖の濃度を決定する方法。
  44. (Glc)が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する、請求項43に記載の方法。
  45. タンデム型質量分析法による定量化の前に、前記生物学的サンプル中の前記オリゴ糖類が、ブチルパラアミノ安息香酸で誘導体化される、請求項43に記載の方法。
  46. 前記定量化ステップの前に濃縮ステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
  47. 前記濃縮ステップが、免疫沈降を含む、請求項46に記載の方法。
  48. 前記生物学的サンプルが、血液、血漿、血清、尿、唾液、および羊水からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
  49. 前記生物学的サンプルが、血液、血漿、および血清からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
  50. 前記生物学的サンプルが、新生児の血液サンプルである、請求項43に記載の方法。
  51. 前記生物学的サンプルが、新生児の尿サンプルである、請求項43に記載の方法。
  52. 前記定量化ステップの前に、前記生物学的サンプル中のグルコース濃度を低下させるステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
  53. [U−13C]グルコース標識されたヘキソース四量体を内部標準として使用して、前記タンデム型質量分析法による定量化が標準化される、請求項43に記載の方法。
  54. 前記内部標準が、α−D−Glc(l→6)−α−D−Glc(1→4)−α−D−Glc(1→4)−D−Glcの構造を有する[U−13C]標識されたヘキソース四量体を含む、請求項52に記載の方法。
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