JP5191838B2 - 管状ワークの引抜加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、管状ワークの外表面を高平滑面に加工することができる管状ワークの引抜加工方法及び管状ワーク用引抜加工装置に関する。
なお本明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、特に示さない限り純アルミニウム及びアルミニウム合金の両方を含む意味で用いる。また、「上流側」及び「下流側」とは、それぞれワークの引抜方向の上流側及び下流側を意味している。
従来、外表面の表面粗さRyが1.0〜3.0μm程度のアルミニウム管は、例えば、アルミニウム素材(例:アルミニウムビレット)を順次、押出加工及び引抜加工することにより製造されていた。このような引抜管は「ED(Extrusion Drawing)管」と呼ばれている。この引抜管は、例えば電子写真装置(複写機、レーザビームプリンタ等)の感光ドラム基体に用いられている。
而して、特開2005−118799号公報には、管状ワークとしての金属管の外径を縮径加工する引抜ダイスを具備した引抜加工装置(縮径加工装置)が開示されている(特許文献1参照)。この引抜加工装置は、管の内表面を加工するための引抜プラグを具備しておらず、すなわち空引き方式を採用したものであり、そのため引抜加工によって管の肉厚が増大するという特徴を有している。この引抜加工装置の目的は、引抜プラグを用いないで管の肉厚の増大を抑制するとともに、引抜加工時に管の外表面に発生するチャタリングマークを防止することにある。
特開平8−66715号公報には、管を製造する方法でなく中実な線材又は棒材を引抜加工により製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。この方法で用いられるワークは、管状のものではなく中実なものである。したがって、この方法に用いられる引抜加工装置は、引抜プラグを具備する必要のないものである。
特開2005−118799号公報 特開平8−66715号公報
而して、引抜管は様々な用途に用いられるものであるが、例えば上述した感光ドラム基体に用いられる引抜管は、その外表面が鏡面状態であることが望ましい。そこで従来では、管の外表面を切削加工することにより、管の外表面を鏡面状態にしていた。このように外表面が切削加工された引抜管は「切削管」と呼ばれている。一方、外表面が切削加工されていない引抜管は「無切削管」と呼ばれている。
切削管は、管の外表面を切削加工する必要があるため、製造コストが高くつくという問題があった。したがって、製造コストを低くするためには、切削管ではなく無切削管を用いることが望ましい。
しかしながら、無切削管は、その外表面に引抜加工時に生じた凹状欠陥としてのオイルピットが多数存在している。そのため、表面粗さRyが例えば1.0μm以下といった高平滑な外表面を有する無切削管を得ることは非常に困難であった。
そこで本発明者らは、引抜加工においてオイルピットが生じる原因について鋭意研究したところ、次のような知見を得た。この知見について図4及び5を参照して以下に説明する。
図4において、110は管状ワーク用引抜加工装置である。この引抜加工装置110は、引抜ダイス120と引抜プラグ130とを含む引抜加工工具111を具備している。引抜ダイス120はワーク40の外表面40a側を加工するものである。引抜プラグ130はワーク40の内表面40b側を加工するものである。引抜プラグ130の形状は略玉形又は略球状である。そして、引抜プラグ130は、支持棒131の先端部に設けられるとともに、ワーク40の中空部40c内に配置されている。また、図5に示すように、引抜ダイス120のダイス孔121の周面において、ダイスアプローチ部101Aの下流端に縦断面円弧状の曲面部101Cが滑らかに連なって形成されており、さらに、ダイスベアリング部101Bの上流端Fにこの曲面部101Cが滑らかに連なって形成されている。ダイスアプローチ部101Aと曲面部101Cは、ワーク40の引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されている。また、引抜ダイス120のダイス軸Xを含む断面において、引抜ダイス120のダイス軸Xに対する曲面部101Cの接線の傾きは、ワーク40の引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。ダイスベアリング部101Bは、引抜ダイス120のダイス軸Xと略平行に形成されている。102Eは、引抜ダイス120のリリーフ部である。なお図4及び5では、ワーク40は他の部材と区別し易くするためドットハッチングで示している。
この引抜ダイス120は、第1縮径加工部1Yとして、ダイスアプローチ部101Aと曲面部101Cとを備えている。さらに、この引抜ダイス120は、第2縮径加工部2Yとしてダイスベアリング部101Bを備えている。
この引抜加工装置110を用いて管状ワーク40を引抜加工する場合、ワーク40は、引抜ダイス120のダイスアプローチ部101A又は曲面部101Cに接触して曲面部101Cにより縮径加工されながら曲面部101Cからダイスベアリング部101Bへ案内される。そして、該ワーク40がダイスベアリング部101Bと引抜プラグ130のプラグベアリング部103Bとの間をダイスベアリング部101Bとプラグベアリング部103Bとに接触した状態で通過することにより、ワーク40の外表面40aび内表面40bがダイスベアリング部101B及びプラグベアリング部103Bによって同時に仕上げ加工される。この仕上げ加工のとき、ワーク40はダイスベアリング部101Bとプラグベアリング部103Bとにより加圧されて、ワーク40の肉厚が減少する。このようなワーク40の材料流動を経て引抜管41が得られる。
このようなワーク40の材料流動において、従来では、一般に、引抜加工の教科書に記載されているように、引抜ダイス120の曲面部101Cに接触したワーク40は、曲面部101Cに接触した状態のままで曲面部101Cからダイスベアリング部101Bへ案内されるものと考えられていた。しかしながら、実際の引抜加工ではそうようなワーク40の材料流動は生じず、すなわち、図5に示すように、曲面部101Cに接触したワーク40は、曲面部101Cからダイスベアリング部101Bへ案内される際に曲面部101Cから一旦離れ、そしてダイスベアリング部101Bに再接触していた。そのため、ワーク40が曲面部101Cからダイスベアリング部101Bへ移動する途中で、ワーク40が過度に縮径加工される。これにより、ワーク40の外表面40aが縦断面円弧状に凹んで該外表面40aに激しい微細な凹凸(図示せず)が多数発生する。この激しい凹凸の凹部に引抜加工用潤滑油が溜まる。そしてこの状態のままでワーク40がダイスベアリング部101Bとプラグベアリング部103Bとの間を通過することにより、ワーク40の外表面40a及び内表面40bがダイスベアリング部101B及びプラグベアリング部103Bにより加圧され、その結果、引抜管41の外表面41aに多数の微細なオイルピット(図示せず)が発生する。このような多数のオイルピットが原因で引抜管41の外表面41aが粗くなる。以上のような知見を発明者らは得ることができた。
本発明は、上記技術背景と発明者らが得た上記知見とに基づいてなされたもので、その目的は、管状ワークの外表面を高平滑面に加工することができる管状ワークの引抜加工方法、該方法に好適に用いられる管状ワーク用引抜加工装置を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。
[1] 管状ワークの外表面側を加工する引抜ダイスと、ワークの中空部内に配置されるとともにワークの内表面側を加工する引抜プラグとを用いた管状ワークの引抜加工方法において、
ワークが前記引抜ダイスから離れたのち前記引抜ダイスに再接触する材料流動を示し、
ワークが前記引抜ダイスから離れるワーク離れ位置とワークが前記引抜ダイスに再接触するワーク再接触位置との間におけるワークの最小外径をd1、
引抜加工後のワークの外径をd3とするとき、
次式(1)
0.95<d1/d3<1.1 …(1)
を満足するようにワークを引抜加工することを特徴とする管状ワークの引抜加工方法。
[2] ワーク再接触位置でのワークの外径をd2とするとき、
次式(2)
1.0<d2/d3<1.1 …(2)
を満足するようにワークを引抜加工する前項1記載の管状ワークの引抜加工方法。
[3] 引抜加工前のワークの外径をd0とするとき、
次式(3)
−0.25<(d3−d1)/(d0−d3)<0.15 …(3)
を満足するようにワークを引抜加工する前項1又は2記載の管状ワークの引抜加工方法。
[4] 引抜加工前のワークの外径をd0、
ワーク再接触位置でのワークの外径をd2とするとき、
次式(4)
d0>d1≧d2>d3 …(4)
を満足するようにワークを引抜加工する前項1〜3のいずれかに記載の管状ワークの引抜加工方法。
[5] 管状ワークの外表面側を加工する引抜ダイスと、ワークの中空部内に配置されるとともにワークの内表面側を加工する引抜プラグとを用いた管状ワークの引抜加工方法において、
ワークが前記引抜ダイスから離れたのち前記引抜ダイスに再接触する材料流動を示し、
引抜加工前のワークの外径をd0、
ワークが前記引抜ダイスから離れるワーク離れ位置とワークが前記引抜ダイスに再接触するワーク再接触位置との間におけるワークの最小外径をd1、
ワーク再接触位置でのワークの外径をd2、
引抜加工後のワークの外径をd3とするとき、
次式(4)
d0>d1≧d2>d3 …(4)
を満足するようにワークを引抜加工することを特徴とする管状ワークの引抜加工方法。
[6] 前記材料流動は、ワークが前記引抜ダイスの第1縮径加工部により縮径加工されながら第1縮径加工部から離れたのち、前記引抜ダイスの第2縮径加工部と前記引抜プラグのプラグベアリング部との間をワークが第2縮径加工部に再接触した状態で通過するものであり、
前記引抜ダイスは、
前記第1縮径加工部として第1曲面部と、
前記第2縮径加工部としてダイスベアリング部及び案内部と、
を備えており、
前記ダイスベアリング部は、前記第1曲面部におけるワーク離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されており、
前記案内部は、前記ダイスベアリング部の上流端に滑らかに連なる第2曲面部を有するとともに、前記第1曲面部から離れたワークと再接触して該ワークを縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内するものであり、
前記引抜プラグのプラグベアリング部は、前記ダイスベアリング部に対応する位置に配置されている前項1〜5のいずれかに記載の管状ワークの引抜加工方法。
[7] 管状ワークの外表面側を加工する引抜ダイスと、ワークの中空部内に配置されるとともにワークの内表面側を加工する引抜プラグとを具備し、
前記引抜ダイスは、
ワークが縮径加工されながら離れる第1縮径加工部として第1曲面部と、
第1縮径加工部から離れたワークを縮径加工する第2縮径加工部としてダイスベアリング部及び案内部と、
を備えており、
前記ダイスベアリング部は、前記第1曲面部におけるワーク離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されており、
前記案内部は、前記ダイスベアリング部の上流端に滑らかに連なる第2曲面部を有するとともに、前記第1曲面部から離れたワークと再接触して該ワークを縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内するものであり、
前記引抜プラグのプラグベアリング部は、前記ダイスベアリング部に対応する位置に配置されており、
ワークが前記引抜ダイスから離れるワーク離れ位置とワークが前記引抜ダイスに再接触するワーク再接触位置との間におけるワークの最小外径をd1、
引抜加工後のワークの外径をd3とするとき、
次式(1)
0.95<d1/d3<1.1 …(1)
を満足するようにワークが引抜加工されるように構成されていることを特徴とする管状ワーク用引抜加工装置。
[8] 管状ワークの外表面側を加工する引抜ダイスと、ワークの中空部内に配置されるとともにワークの内表面側を加工する引抜プラグとを具備し、
前記引抜ダイスは、
ワークが縮径加工されながら離れる第1縮径加工部として第1曲面部と、
第1縮径加工部から離れたワークを縮径加工する第2縮径加工部としてダイスベアリング部及び案内部と、
を備えており、
前記ダイスベアリング部は、前記第1曲面部におけるワーク離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されており、
前記案内部は、前記ダイスベアリング部の上流端に滑らかに連なる第2曲面部を有するとともに、前記第1曲面部から離れたワークと再接触して該ワークを縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内するものであり、
前記引抜プラグのプラグベアリング部は、前記ダイスベアリング部に対応する位置に配置されており、
引抜加工前のワークの外径をd0、
ワークが前記第1縮径加工部から離れるワーク離れ位置とワークが前記第2縮径加工部に再接触するワーク再接触位置との間におけるワークの最小外径をd1、
ワーク再接触位置でのワークの外径をd2、
引抜加工後のワークの外径をd3とするとき、
次式(4)
d0>d1≧d2>d3 …(4)
を満足するようにワークが引抜加工されるように構成されていることを特徴とする管状ワーク用引抜加工装置。
本発明は以下の効果を奏する。
[1]の発明では、上記式(1)を満足するようにワークを引抜加工することにより、ワークの外表面を高平滑面に加工することができるし、ワークの外表面と引抜ダイスの縮径加工部(ダイスベアリング部等)との間で発生するワークの外表面の焼付きを防止することができる。その理由は次のとおりである。
d1/d3が0.95を超える場合(即ち0.95<d1/d3の場合)、引抜ダイスのワーク離れ位置とワーク再接触位置との間におけるワークの過度の縮径が抑制され、これに伴い、ワークの外表面に激しい凹凸が発生するのが抑制される。これにより、ワークの外表面に潤滑油が溜まり難くなる。その結果、オイルピットの発生が抑制される。そのため、ワークの外表面を高平滑面に加工することができる。
d1/d3が1.1以上の場合(即ち1.1≦d1/d3の場合)、引抜ダイスの縮径加工部によるワークの縮径加工量及び減肉加工量が大きすぎるため、縮径加工部からワークの外表面に与える面圧が大きくなり、その結果、ワークの外表面と縮径加工部との間で焼付きがしばしば発生する。一方、d1/d3が1.1未満の場合(即ちd1/d3<1.1の場合)、そのような焼付きを防止することができる。
[2]の発明では、上記式(2)を満足するようにワークを引抜加工することにより、次の効果を奏する。
d2/d3が1.0を超える場合(即ち1.0<d2/d3の場合)、引抜ダイスの縮径加工部(ダイスベアリング部等)によりワークの外表面を確実に加圧することができ、もってワークの外表面を確実に高平滑面に加工することができる。
d2/d3が1.1未満の場合(即ちd2/d3<1.1の場合)、ワークの外表面と引抜ダイスの縮径加工部との間で発生するワークの外表面の焼付きを確実に防止することができる。
[3]の発明では、上記式(3)を満足するようにワークを引抜加工することにより、次の効果を奏する。
(d3−d1)/(d0−d3)が−0.25を超える場合(即ち−0.25<(d3−d1)/(d0−d3)の場合)、引抜ダイスの縮径加工部(ダイスベアリング部等)によるワークの縮径加工量及び減肉加工量が増大することで引抜抵抗が増加する不具合を抑制することができる。
(d3−d1)/(d0−d3)が0.15未満の場合(即ち(d3−d1)/(d0−d3)<0.15の場合)、ワーク離れ位置とワーク再接触位置との間におけるワークの過度の縮径を確実に抑制することができる。そのため、ワークの外表面を確実に高平滑面に加工することができる。
[4]の発明では、上記式(4)を満足するようにワークを引抜加工することにより、ワークの外径が単調に減少するようにワークを引抜加工することができる。これにより、ワーク離れ位置とワーク再接触位置との間でワークが過度に縮径されることがなくなり、もってワークの外表面をより確実に高平滑面に加工することができる。
[5]の発明では、上記[4]の発明と同様の理由により、ワークの外表面をより確実に高平滑面に加工することができる。
[6]の発明では、所定の引抜ダイス及び引抜プラグを用いてワークを引抜加工することにより、ワークの外表面をより確実に高平滑面に加工することができる。
[7]及び[8]の発明では、管状ワークの外表面を確実に高平滑面に加工することができる管状ワーク用引抜加工装置を提供することができる。
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る管状ワークの引抜加工方法を説明する図である。これらの図において、10は本実施形態の引抜加工装置である。
この引抜加工装置10は、図1及び2に示すように、管状ワーク40を引抜加工するものである。この引抜加工装置10によって管状ワーク40が引抜加工されることにより、引抜管41が製造される。この引抜管41は、外表面41aが高平滑面であることを要求される管に用いられるものであり、例えば電子写真装置(複写機、レーザビームプリンタ等)の感光ドラム基体に好適に用いられるものである。なお、感光ドラム基体の外表面にはOPC(有機光導電体)膜等の所定の膜が塗工される。したがって、ワーク40は、感光ドラム基体製造用素管として捉えることができる。
ワーク40は、例えば、素材としての金属ビレット(例:アルミニウムビレット)を押出加工することにより得られた金属押出管(例:アルミニウム押出管)からなるものである。ワーク40の断面形状は円環状である。ワーク40の外径は例えば15〜50mm、、その肉厚は例えば0.5〜2mmに設定されている。
ワーク40の材質は、鉄、鋼、銅、マグネシウム(その合金を含む)、アルミニウム(その合金を含む)等の金属であり、特にアルミニウムであることが望ましい。
本実施形態では、ワーク40の縮径率を例えば10〜20%に設定してワーク40を引抜加工装置10により引抜加工し、これにより断面円環状の引抜管41が製造される。このとき、引抜管41の肉厚は、ワーク40の肉厚に対して例えば60〜90%に減少する。
なお、ワーク40の縮径率(詳述するとワーク40の外径の縮径率)Qは、引抜加工前のワーク40の外径をd0、引抜加工後のワーク40(即ち引抜管41)の外径をd3としたとき、次式(5)により算出される。
Q={1−(d3/d0)}×100% …(5)
本実施形態の引抜加工装置10は、図1及び2に示すように、空引き方式ではなくプラグ引き方式を採用したものである。したがって、この引抜加工装置10は、引抜ダイス20と引抜プラグ30とを含む引抜加工工具11を具備しており、更に、牽引装置12、潤滑油供給装置13などを具備している。
引抜ダイス20は、ワーク40の外表面40a側を加工するものであり、具体的には例えばワーク40の外表面40aとその内部近傍とを加工するものである。この引抜ダイス20はダイスホルダ(図示せず)により固定状態に保持されている。引抜ダイス20の材質は、超硬、ダイス鋼、高速度工具鋼、セラミック等である。この引抜ダイス20の詳細な構成は後述する。
引抜プラグ30は、ワーク40の中空部40c内に配置されるとともにワーク40の内表面40b側を加工するものであり、具体的には例えばワーク40の内表面40bとその内部近傍とを加工するものである。この引抜プラグ30は、引抜プラグ30を支持する支持棒31の先端部に固定状態に設けられている。引抜プラグ30の形状は略玉形又は略球状である。引抜プラグ30の材質は、超硬、ダイス鋼、高速度工具鋼、セラミック等である。この引抜プラグ30の詳細な構成は後述する。
図1に示すように、牽引装置12は、ワーク40を引抜方向Nに牽引するためのものであり、チャック部12aと、チャック部12aに引抜方向Nの牽引力を付与する駆動源12bとを備えている。チャック部12aは、ワーク40の先端部に形成された口付け部40dをチャックするものである。駆動源12としては油圧シリンダ等が用いられている。なお、ワーク40の引抜方向Nは、引抜ダイス20のダイス軸Xに沿う方向である。
潤滑油供給装置13は、ワーク40の外表面40aに引抜加工用潤滑油14を供給付着するものであり、潤滑油14をワーク40の外表面40aに向けて噴出するノズル13aを備えている。ノズル13aは引抜ダイス20の上流側に配置されている。
潤滑油14としては、特に限定されるものではなく、具体的に例示すると、出光興産(株)製の商品名「ダフニーマスタードロー」、スギムラ化学工業(株)製の商品名「サンドロー」、共栄油化(株)製の商品名「ストロール」等が用いられる。また、潤滑油14の動粘度は、特に限定されるものではないが、例えば、40℃での動粘度が300〜500mm2/sであることが望ましい。
引抜ダイス20の構成は次のとおりである。
引抜ダイス20は、図2及び3に示すように、そのダイス孔21の内側に配置される引抜プラグ30と組み合わされて用いられるものであり、ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cと繋ぎ部1Bと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとリリーフ部2Eとを備えている。これらの部位(1A、1C、1B、2D、2B、2E)は、引抜ダイス20のダイス孔21の周面に、ワーク40の引抜方向Nに順に設けられている。さらに、これらの部位は、個別に分割されているのではなく、一体形成されている。また、これらの部位の表面は全て鏡面状に研磨加工されている。
この引抜ダイス20は、ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cとを含む第1縮径加工部1Yを具備している。さらに、この引抜ダイス20は、繋ぎ部1Bと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとを含む第2縮径加工部2Yを具備している。本実施形態では、第1縮径加工部1Yはダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cとから構成されており、第2縮径加工部2Yは繋ぎ部1Bと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとから構成されている。また、第2縮径加工部2Yは第1縮径加工部1Yよりも下流側に配置されている。
さらに、この引抜ダイス20は、ワーク40が引抜ダイス20から離れたのち引抜ダイス20に再接触する材料流動を示すように構成されたものである。詳述すると、この引抜ダイス20は、ワーク40が第1縮径加工部1Yにより縮径加工されながら第1縮径加工部1Yから離れたのち、第2縮径加工部2Yと引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bとの間を該ワーク40が第2縮径加工部2Yに接触した状態で通過するという材料流動を示すように構成されている。
ダイスアプローチ部1Aは、ワーク40の引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されており、詳述すると円錐テーパ状に形成されている。
引抜ダイス20のダイス軸Xに対するダイスアプローチ部1Aの傾斜角、すなわちダイスアプローチ半角θ1は、例えば20〜40°に設定されている(図2参照)。
第1曲面部1Cは、ダイスアプローチ部1Aの下流端にダイスアプローチ部1Aに対して滑らかに連なって形成されており、すなわち第1曲面部1Cはダイスアプローチ部1Aの下流端に段差及び角が生じないように連なって形成されている。さらに、第1曲面部1Cは、ワーク40の引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されている。また、引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、引抜ダイス20のダイス軸Xに対する第1曲面部1Cの接線の傾きは、ワーク40の引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。第1曲面部1Cの縦断面形状は円弧状である。なお本明細書では、縦断面とは引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面であり、即ち図2及び3に示した断面である。
第1曲面部1Cの曲率半径R1は、例えば1〜10mmに設定されている。
ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cは、最初にワーク40を縮径加工(詳述するとワーク40の外表面40aを縮径加工)する部位である。さらに、第1曲面部1Cは、ワーク40が縮径加工されながら離れる部位である。
ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cとを合計したダイス軸Xと平行な方向の長さL1は、例えば10〜50mmに設定されている。この長さL1は、第1縮径加工部1Yのダイス軸Xと平行な方向の長さに相当している。
ここで、ワーク40(詳述するとワーク40の外表面40a)が引抜ダイス20の第1縮径加工部1Yに最初に接触する位置、すなわち第1縮径加工部1Yにおけるワーク初接触位置を「J」とする。また、ワーク40が縮径加工されながら第1縮径加工部1Yから離れる位置、すなわち第1縮径加工部1Yにおけるワーク離れ位置を「K」とする。本実施形態では、ワーク40は、ダイスアプローチ部1Aではなく第1曲面部1Cに最初に接触しており、そしてワーク40が第1曲面部1Cから離れている。なお本発明では、ワーク40はダイスアプローチ部1Aに最初に接触しても良い。
ダイスベアリング部2Bは、第1曲面部1Cにおけるワーク離れ位置Kよりも内側(即ちダイス軸X側)且つ下流側に第1曲面部1Cに対して離間して配置されている。このダイスベアリング部2Bは、ワーク40の外表面40a及び外径寸法を仕上げ加工する部位であり、ダイス軸Xと略平行に形成されている。
ダイス軸Xに対するダイスベアリング部2Bの平行度は、±3°以内に設定されている。
ダイスベアリング部2Bの長さL4、詳述するとダイスベアリング部2Bのダイス軸Xと平行な方向の長さL4は、例えば3〜15mmに設定されており、好ましくは5mm以上に設定されるのが良い。
引抜ダイス20の半径方向rにおいて、第1曲面部1Cにおけるワーク離れ位置Kとダイスベアリング部2Bとの間の段差H1は、様々に設定されるものであるが、好ましくは0.3mm以上3mm未満に設定されるのが良い。
案内部2Dは、第1曲面部1Cから離れたワーク40(詳述するとワーク40の外表面40a)と再接触して該ワーク40を縮径加工しながらダイスベアリング部2Bへ案内する部位である。この案内部2Dは、ワーク40の引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されている。
ここで、ワーク40(詳述するとワーク40の外表面40a)が引抜ダイス20の案内部2Dに再接触する位置、すなわち第2縮径加工部2Yにおけるワーク再接触位置を「M」とする。
案内部2Dは、ダイスベアリング部2Bの上流端Fにダイスベアリング部2Bに対して滑らかに連なる縦断面円弧状の第2曲面部2Cを有しており、更に、第2曲面部2Cの上流端に第2曲面部2Cに対して滑らかに連なる縦断面円弧状の補助曲面部2Aを有している。
引抜ダイス20のダイズ軸Xと含む断面において、引抜ダイス20のダイス軸Xに対する第2曲面部2Cの接線の傾きは、ワーク40の引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。一方、補助曲面部2Aは、第2曲面部2Cの曲がり方向とは反対方向に曲がっている。したがって、引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、引抜ダイス20のダイス軸Xに対する補助曲面部2Aの接線の傾きは、ワーク40の引抜方向Nに進むにつれて漸次大きくなっている。
案内部2Dのダイス軸Xと平行な方向の長さL3は、例えば2〜5mmに設定されている。第2曲面部2Cの曲率半径R21は、例えば1〜10mmに設定されている。補助曲面部2Aの曲率半径R22は、例えば1〜10mmに設定されている。さらに、第2曲面部2Cの曲率半径R21は、第1曲面部1Cの曲率半径R1に対して等しいか又は小さく設定されている(即ち、R21≦R1)。
繋ぎ部1Bは、第1曲面部1Cと案内部2Dとの間に配置され、第1曲面部1Cと案内部Dとを繋ぐ部位である。本実施形態では、繋ぎ部1Bは、第1曲面部1Cと案内部2Dとを一体に繋いでいる。したがって、第1曲面部1Cと案内部2Dとは繋ぎ部1Bを介して一体形成されている。さらに、繋ぎ部1Bは、引抜加工時にワーク40と接触しないようにするため、ダイス軸Xと略平行に形成されている。さらに、繋ぎ部1Bの上流端が第1曲面部1Cの下流端に滑らかに連なっている。また、繋ぎ部1Bの下流端が案内部2D(詳述すると案内部2Dの補助曲面部2A)の上流端に滑らかに連なっている。
繋ぎ部1Bのダイス軸Xと平行な方向の長さL2は、例えば3〜10mmに設定されている。
繋ぎ部1Bと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとを合計したダイス軸Xと平行な方向の長さL7(即ち、L7=L2+L3+L4)は、第2縮径加工部2Yのダイス軸Xと平行な方向の長さに相当している。
引抜ダイス20の半径方向rにおいて、繋ぎ部1Bとダイスベアリング部2Bとの間の段差H2は、上記の段差H1と等しいか又は僅かに小さく設定されている(即ちH2≦H1)。しかるに、H2とH1との差は一般的に非常に小さい。したがって、H2とH1は、厳密には異なっているが、通常、等しいと捉えても良い。
リリーフ部2Eは、引抜ダイス20のワーク出口部を形成する部位であり、ワーク40(詳述すると引抜41)と接触しなようにするため、ワーク40の引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次増大するように形成されている。ダイス軸Xに対するリリーフ部2Eの傾斜角、すなわちリリーフ部2Eの逃げ半角θ2は、例えば20〜40°に設定されている(図2参照)。
リリーフ部2Eのダイス軸Xと平行な方向の長さL5は、例えば3〜10mmに設定されている。
引抜プラグ30の構成は次のとおりである。
引抜プラグ30は、その軸が引抜ダイス20のダイス軸Xと一致して配置されており、プラグアプローチ部3Aと第3曲面部3Cとプラグベアリング部3Bとを備えている。これらの部位(3A、3C、3B)は、引抜プラグ30の周面に、ワーク40の引抜方向Nに順に設けられている。さらに、これらの部位は、個別に分割されているのではなく、一体形成されている。また、これらの部位の表面は全て鏡面状に研磨加工されている。
プラグベアリング部3Bは、ワーク40の内表面40b及び内径寸法を仕上げ加工する部位であり、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bに対応した位置に配置されており、詳述するとダイスベアリング部2Bに対向して且つダイス軸Xと略平行に配置されている。さらに、プラグベアリング部3Bの上流端Gの位置は、ワーク40の引抜方向Nにおいて、ダイスベアリング2Bの上流端Fの位置に対して同じ位置か又は下流側に配置されている。図3において、Sは、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対するプラグベアリング部3Bの上流端Gの位置の下流側へのずれ量を示している。したがって、図3に示すように、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対してプラグベアリング部3Bの上流端Gの位置が下流側にずれている場合、ずれ量Sの符号は「+(正)」である。これとは逆に、プラグベアリング部3Bの上流端Gの位置が上流側にずれている場合、ずれ量Sの符号は「−(負)」である。このずれ量Sは、例えば−5〜5mmの範囲に設定されており、好ましくは−1〜3mmの範囲に設定されるのが良く、特に0〜2mmの範囲に設定されるのが非常に良い。
ダイス軸Xに対するプラグベアリング部3Bの平行度は、±3°以内に設定されている。
プラグベアリング部3Bの長さL6、詳述するとプラグベアリング部3Bのダイス軸Xと平行な方向の長さL6は、ダイスベアリング部2Bの長さL4よりも短く設定されている(即ち、L6<L4)。さらに、この長さL6は、ダイスベアリング部2Bの長さL4に対して5〜70%の範囲に設定されるのが望ましく、特に6〜30%の範囲に設定されるのが良い。なお、Dpは引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの直径である。
プラグアプローチ部3Aは、ワーク40の引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次増大するように形成されており、詳述すると円錐テーパ状に形成されている。
ダイス軸Xに対するプラグアプローチ部3Aの傾斜角、すなわちプラグアプローチ半角θ3は、例えば5〜30°に設定されている(図2参照)。
第3曲面部3Cは、プラグアプローチ部3Aとプラグベアリング部3Bとの間に配置されており、プラグアプローチ部3Aとプラグベアリング部3Bとを滑らかに繋いでいる。すなわち、この第3曲面部3Cは、プラグベアリング部3Bの上流端Gにプラグベアリング部3Bに対して滑らかに連なって形成されている。さらに、この第3曲面部3Cの上流端にプラグアプローチ部3Aが滑らかに連なって形成されている。引抜プラグ30のダイス軸Xを含む断面において、ダイス軸Xに対する第3曲面部3Cの接線の傾きは、ワーク40の引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。詳述すると、第3曲面部3Cの縦断面形状は円弧状である。
第3曲面部3Cの曲率半径R3は、例えば10〜60mmに設定されている。
プラグアプローチ部3Aと第3曲面部3Cは、ワーク40(詳述するとワーク40の内表面40b)と接触して該ワーク40を減肉加工しながら第3曲面部3Cからプラグベアリング部3Bへ案内する部位である。本実施形態では、ワーク40の内表面40bは、プラグアプローチ部3Aではなく第3曲面部3Cに最初に接触している。なお本発明では、ワーク40の内表面40bはプラグアプローチ部3Aに最初に接触しても良い。
本実施形態では、管状ワーク40を引抜加工する方法は次のとおりである。
まず、管状ワーク40の先端部にスエージング加工等によってワーク40よりも小径の口付け部40dを形成する。そして、ワーク40の中空部40c内に引抜プラグ30を挿入配置するとともに、ワーク40の先端部(即ち口付け部40d)を引抜ダイス20のダイス孔21内に挿入する。このとき、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bは、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bに対応する位置に配置されている。
次いで、ワーク40の先端部の口付け部40dを牽引装置12のチャック部12aによりチャックする。そして、図1に示すように、潤滑油供給装置13のノズル13aから潤滑油14をワーク40の外表面40aに供給付着しながら、所定の引抜速度でワーク40を牽引装置12により引抜方向Nに牽引する。これにより、ワーク40を引抜加工する。引抜速度は例えば10〜100m/minの範囲に設定される。
この引抜加工では、図2及び3に示すように、ワーク40は引抜ダイス20の第1曲面部1Cに接触して第1曲面部1Cにより縮径加工されながら、案内部2Dに向かって誘導されるように第1曲面部1Cから離れる。次いで、該ワーク40が引抜ダイス20の案内部2Dに再接触して案内部2Dにより縮径加工されながら案内部2Dからその第2曲面部2Cを通ってダイスベアリング部2Bへ案内される。このとき、ワーク40の内表面40bは、引抜プラグ30の第3曲面部3Cに接触して第3曲面部3Cからプラグベアリング部3Bへ案内される。
そして、該ワーク40がダイスベアリング部2Bとプラグベアリング部3Bとの間を通過することにより、ワーク40の肉厚が減少するようにワーク40の外表面40a及び内表面40bがそれぞれダイスベアリング部2B及びプラグベアリング部3Bにより加圧される。その結果、ワーク40の外径寸法がダイスベアリング部2Bにより目標寸法に仕上げ加工されると同時に、ワーク40の外表面40aがダイスベアリング部2Bにより高平滑面に仕上げ加工され、さらに、ワーク40の内径寸法がプラグベアリング部3Bにより目標寸法に仕上げ加工されると同時に、ワーク40の内表面40bがプラグベアリング部3Bにより目標面粗さに仕上げ加工される。
以上の引抜加工工程において、ワーク40は次式(1)を満足するように引抜加工される。
0.95<d1/d3<1.1 …(1)
さらに、次式(2)〜(4)のうち少なくとも一つを満足するようにワーク40を引抜加工することが望ましく、特にこれらの式のうち二つ以上を満足するようにワーク40を引抜加工することが望ましい。
1.0<d2/d3<1.1 …(2)
−0.25<(d3−d1)/(d0−d3)<0.15 …(3)
d0>d1≧d2>d3 …(4)
また、上記式(1)〜(4)のうち式(4)だけを満足するようにワーク40を引抜加工することも推奨される。
ここで、d0、d1、d2、d3は、次のことを示している。
d0は、引抜加工前のワーク40の外径である(図2参照)。
d1は、ワーク40が引抜ダイス20の第1縮径加工部1Yから離れるワーク離れ位置Kとワーク40が引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yに再接触するワーク再接触位置Mとの間におけるワーク40の最小外径である(図3参照)。
d2は、ワーク再接触位置Mでのワーク40の外径である(図3参照)。
d3は、引抜加工後のワーク40の外径、すなわち引抜管41の外径である(図2及び3参照)。
上記式(1)を満足するようにワーク40を引抜加工することにより、ワーク40の外表面40aを高平滑面に加工することができるし、ワーク40の外表面40aと引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yとの間で発生するワーク40の外表面40aの焼付きを防止することができる。その理由は次のとおりである。
d1/d3が0.95を超える場合(即ち0.95<d1/d3の場合)、引抜ダイス20のワーク離れ位置Kとワーク再接触位置Mとの間におけるワーク40の過度の縮径が抑制され、これに伴い、ワーク40の外表面40aに激しい凹凸が発生するのが抑制される。これにより、ワーク40の外表面40aに潤滑油14が溜まり難くなる。その結果、オイルピットの発生が抑制される。そのため、ワーク40の外表面40aを高平滑面に加工することができる。
d1/d3が1.1以上の場合(即ち1.1≦d1/d3の場合)、引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yによるワーク40の縮径加工量及び減肉加工量が大きすぎるため、第2縮径加工部2Yからワーク40の外表面40aに与える面圧が大きくなり、その結果、ワーク40の外表面40aと第2縮径加工部2Yとの間で焼付きがしばしば発生する。一方、d1/d3が1.1未満の場合(即ちd1/d3<1.1の場合)、そのような焼付きを防止することができ、すなわちワーク40の外表面40aと引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yとの間で発生するワーク40の外表面40aの焼付きを防止することができる。
上記式(1)において、特に次式(1a)を満足するのが望ましい。
0.98<d1/d3<1.02 …(1a)
その理由は次のとおりである。
d1/d3が0.98を超える場合(即ち0.98<d1/d2の場合)、ワーク40の内表面40aとプラグ30との接触面積及び接触圧力が増大することにより発生するワーク40の内表面40bの焼付きを確実に防止することができる。
d1/d3が1.02未満の場合(即ちd1/d2<1.02の場合)、ワーク40の外表面40aと引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yとの間で発生するワーク40の外表面40aの焼付きを確実に防止することができる。
また、上記式(2)を満足するようにワーク40を引抜加工する場合には、次の利点がある。
d2/d3が1.0を超える場合(即ち1.0<d2/d3の場合)、引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yによりワーク40の外表面40aを確実に加圧することができ、もってワーク40の外表面40aを確実に高平滑面に加工することができる。
d2/d3が1.1未満の場合(即ちd2/d3<1.1の場合)、ワーク40の外表面40aと引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yとの間で発生するワーク40の外表面40aの焼付きを確実に防止することができる。
上記式(2)において、このような効果を確実に奏しうるようにするため、特に次式(2a)を満足するのが望ましい。
1.0<d2/d3<1.02 …(2a)
また、上記式(3)を満足するようにワーク40を引抜加工する場合には、次の利点がある。
(d3−d1)/(d0−d3)が−0.25を超える場合(即ち−0.25<(d3−d1)/(d0−d3)の場合)、引抜ダイス20の第2縮径加工部2Yによるワーク40の縮径加工量及び減肉加工量が増大することで引抜抵抗が増加する不具合を抑制することができる。
(d3−d1)/(d0−d3)が0.15未満の場合(即ち(d3−d1)/(d0−d3)<0.15の場合)、ワーク離れ位置Kとワーク再接触位置Mとの間におけるワーク40の過度の縮径を確実に抑制することができる。そのため、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
上記式(3)において、このような効果を確実に奏しうるようにするため、特に次式(3a)を満足するのが望ましい。
−0.15<(d3−d1)/(d0−d3)<0.10 …(3a)
ここで、d3−d1の値は、ワーク離れ位置Kとワーク再接触位置Mとの間に生じる過度のワーク縮径量を意味している。d0−d3の値は、ワーク40の引抜加工の開始時から終了時までの間におけるワーク縮径量を意味している。そして、(d3−d1)/(d0−d3)の値が上記所定範囲内であることにより、上述した効果を確実に奏し得ることを本発明者らは見出すことができた。
また、上記式(4)を満足するようにワーク40を引抜加工する場合には、次の利点がある。
すなわち、この場合には、図3に二点鎖線で示すようにワーク40の外径が単調に減少するようにワーク40を引抜加工することができる。これにより、ワーク離れ位置Kとワーク再接触位置Mとの間でワーク40が過度に縮径されることがなくなり、もってワーク40の外表面40aをより確実に高平滑面に加工することができる。
なお本発明では、少なくとも上記式(1)又は(4)を満足するように引抜加工を行うことができるのであれば、図4及び5に示した引抜加工装置110と図1〜図3に示した本実施形態の引抜加工装置10とのうちどちらを用いても良いし、その他の引抜加工装置を用いても良い。しかるに、上記式(1)〜(4)を確実に満足させるためには、図4及び5に示した引抜加工装置110を用いて引抜加工を行うよりも、図1〜3に示した本実施形態の引抜加工装置10を用いて引抜加工を行うことが望ましく、こうすることにより、ワーク40の外表面40aをより確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、本実施形態の引抜加工装置10には次の利点がある。
引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bは第1曲面部1Cにおけるワーク離れ位置Kよりも内側に配置されているので、ワーク40が第1曲面部1Cからダイスベアリング部2Bへと移動する間にワーク40が過度に縮径加工されるのを確実に防止することができる[効果1]。
さらに、ダイスベアリング部2Bの上流端Fに案内部2Dの第2曲面部2Cが滑らかに連なっているので、案内部2Dに再接触したワーク40はこの第2曲面部2Cを通ってダイスベアリング部2Bに向かって円滑に移動することができる[効果2]。
さらに、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの長さL6が引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bの長さL4よりも短く設定されることにより、プラグベアリング部3Bとダイスベアリング部2Bとの両部位からワーク40にその外表面40aを高平滑面に加工するのに必要な圧力を確実に与えることができる[効果3]。
以上の効果1〜3が相乗的に作用することにより、ワーク40の外表面40aを確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの上流端Gの位置が、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対して同じ位置か又は下流側に配置している。これにより、引抜ダイス20の案内部2Dに再接触したワーク40が案内部2Dからダイスベアリング部2Bへと移動する間にワーク40が過度に縮径加工されるのを確実に防止できるとともに、プラグベアリング部3Bとダイスベアリング部2Bとの両部位からワーク40にその外表面40aを高平滑面に加工するのに必要な圧力を更に確実に与えることができる。これにより、ワーク40の外表面40aを確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、引抜ダイス20のダイス軸Xに対する第1曲面部1Cの接線の傾きと第2曲面部2Cの接線の傾きとは、それぞれ、ワーク40の引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。これにより、ワーク40を第1曲面部1Cによって確実に縮径加工することができるし、案内部2Dに再接触したワーク40を第2曲面部2Cによってダイスベアリング部2Bへ確実に案内することができる。
さらに、引抜ダイス20の第2曲面部2Cの曲率半径R21は、第1曲面部1Cの曲率半径R1に対して等しいか又は小さく設定されている。これにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。その理由は、次のとおりである。すなわち、第1曲面部1Cの曲率半径R1を大きくすることにより、ワーク40の外表面40aと引抜ダイス20との間に引き込まれる潤滑油14の引込み量を十分に確保することができる。さらに、第2曲面部2Cの曲率半径R21を小さくすることにより、第2曲面部2Cからワーク40の外表面40aに与える面圧を高めることができる。これによりオイルピットの発生を更に抑制することができる。その結果、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、案内部2Dは、第2曲面部2Cの上流端に滑らかに連なり且つ第2曲面部2Cの曲がり方向とは反対方向に曲がった補助曲面部2Aを有しているので、第1曲面部1Cから離れたワーク40を案内部2Dで確実に受けることができ、もってワーク40を案内部2Dからダイスベアリング部2Bへ確実に案内することができる。
さらに、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの長さL6が、ダイスベアリング部2Bの長さL4に対して5%以上に設定されることにより、プラグベアリング部3Bとダイスベアリング部2Bとの両部位からワーク40にその外表面40aを高平滑面に加工するのに必要な圧力を更に確実に与えることができる。これにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。また、プラグベアリング部3Bの長さL6がダイスベアリング部2Bの長さL4に対して70%以下に設定されることにより、ワーク40とプラグベアリング部3Bとの間の接触摩擦力に起因して生じるワーク40の断管を確実に防止することができる。
さらに、引抜ダイス20のダイス軸Xに対するダイスベアリング部2Bの平行度が±3°以内に設定されることにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜ダイス20のダイス軸Xに対するプラグベアリング部3Bの平行度が±3°以内に設定されることにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bの長さL4が5mm以上であることにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜ダイス20の半径方向rにおいて、引抜ダイス20の第1曲面部1Cにおけるワーク離れ位置Kとダイスベアリング部2Bとの間の段差H1が、0.3mm以上に設定されることにより、ワーク40が第1曲面部1Cからダイスベアリング部2Bへと移動する間にワーク40が過度に縮径加工されるのを確実に防止することができる。また、この段差H1が3mm未満に設定されることにより、案内部2Dに再接触したワーク40がダイスベアリング部2Bに案内される際にワーク40がダイスベアリング部2Bから離れるのを確実に防止することができる。これにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜ダイス20の第1曲面部1Cと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとが一体形成されているので、第1曲面部1Cの軸とダイスベアリング部2Bの軸との間の軸ずれを防止することができる。これにより、引抜ダイス20の同軸度が高められている。したがって、この引抜ダイス20を用いてワーク40を引抜加工することにより、引抜管41の外径及び内径の寸法精度を確実に向上させることができる。
さらに、引抜プラグ30は、プラグベアリング部3Bの上流端Gに滑らかに連なる第3曲面部3Cを備えているので、第3曲面部3Cに接触したワーク40はプラグベアリング部3Bに向かって円滑に移動することができる。これにより、ワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
さらに、引抜管41の引抜速度が10m/min以上になるようにワーク40を牽引装置12によって牽引することにより、引抜加工能率を向上させることができる。また、引抜速度が100m/min以下になるようにワーク40を牽引装置12によって牽引することにより、ワーク40の外表面40aと引抜ダイス20との間に引き込まれる潤滑油14の引込み量が過剰に増えるのを防止することができる。これにより、オイルピットの発生を更に確実に防止することができ、もってワーク40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。
以上で、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものに限定されるものではなく、様々に変更可能である。
また本発明では、引抜ダイス20の第1曲面部1Cと案内部2Dとの間に、ワーク40の材料流動をサポートする1個又は複数個の補助的なベアリング部や縮径加工部が配置されていても良い。また本発明では、引抜ダイス20の第1曲面部1Cよりも上流側に、ワーク40の材料流動をサポートする1個又は複数個の補助的なベアリング部や縮径加工部が配置されていても良い。
また本発明では、本発明に係る引抜加工装置によって引抜加工されて得られる引抜管は、感光ドラム基体に用いられるものに限定されるものではなく、様々な用途に用いることができる。
また本発明では、上述したように、少なくとも上記式(1)を満足するように引抜加工を行うことができるのであれば、図4及び5に示した引抜加工装置110と図1〜図3に示した本実施形態の引抜加工装置10とのうちどちらを用いても良いし、その他の引抜加工装置を用いても良い。
ここで、図4及び5に示した引抜加工装置110について簡単に説明すると、次のとおりである。図5において、Jは、ワーク40が引抜ダイス120の第1縮径加工部1Yに最初に接触する位置、即ちワーク初接触位置である。Kは、ワーク40が引抜ダイス120の第1縮径加工部1Yから離れる位置、即ちワーク離れ位置である。Mは、ワーク40が引抜ダイス120の第2縮径加工部2Yに再接触する位置、即ちワーク再接触位置である。L1は、引抜ダイス120のダイスアプローチ部101Aと曲面部101Cとを合計したダイス軸Xと平行な方向の長さである。この長さL1は、第1縮径加工部1Yのダイス軸Xと平行な方向の長さに相当している。L4は、ダイスベアリング部101Bの長さである。この長さL4は、第2縮径加工部2Yの長さL7に相当している。L5は、リリーフ部102Eのダイス軸Xと平行な方向の長さである。θ1はダイスアプローチ半角である。θ2はリリーフ部2Eの逃げ半角である。L6は、引抜プラグ130のプラグベアリング部103Bの長さである。Dpは、プラグベアリング部103Bの直径である。103Aはプラグアプローチ部である。103Cは、プラグベアリング部103Bとプラグアプローチ部103Aとの間の縦断面円弧状の曲面部である。R3は曲面部103Cの曲率半径である。θ3はプラグベアリング半角である。
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。
<実施例1〜10、参考例1及び比較例1、2>
引抜加工用ワークとして、アルミニウム製管状ワーク40を準備した。このワーク40の断面形状は円環状である。ワーク40の材質は、引抜加工用ワークの材料としてよく用いられる材料の一つであるJIS(日本工業規格) A3003相当のアルミニウム合金である。このワーク40は、アルミニウムビレットを押出加工することにより得られたアルミニウム押出管からなるものである。引抜加工前のワーク40の外径d0は20mm、その内径は17mm、その肉厚は1.5mmである。
図1〜3に示した引抜加工装置10(実施例1〜10)又は図4及び5に示した引抜加工装置110(参考例1、比較例1、2)を用いて、引抜ダイスの各部位の寸法(θ1、L2、R1、R21、H2)を様々に変えて、上記ワーク40を一回だけ引抜加工し、これにより引抜管41を製造した。引抜加工後のワーク40の外径d3すなわち引抜管41の外径d3は16mm、その内径は14.4mm、その肉厚は0.8mmである。したがって、この引抜加工では、ワーク40の縮径率Qは20%である。また、引抜速度は30m/minである。
この引抜加工の際に使用した潤滑油14は、出光興産(株)製の商品名「ダフニーマスタードロー2594」である。この潤滑油14の40℃での動粘度は382.5mm2/sである。そして、引抜管41の外表面41aの表面粗さRyを測定し、外表面41aの表面粗さを評価した。
表1は、実施例1〜10、参考例1及び比較例1、2で用いた引抜加工装置の種類、及び引抜ダイスの各部位の寸法(θ1、L2、R1、R21、H2)を示している。表1中の「装置の種類」欄において、符号「10」は図1〜3に示した引抜加工装置10を意味しており、符号「110」は図4及び5に示した引抜加工装置110を意味している。
表2は、実施例1〜10、参考例1及び比較例1、2におけるd1、d2、d1/d3、d2/d3、(d3−d1)/(d0−d3)を示している。なお、d1及びd2は次のようにして測定した。すなわち、ワーク40を引抜加工している途中でワーク40の引抜方向Nへの移動を強制的に停止し、そのワーク40を引抜ダイス及び引抜プラグから取り外した。そして、このワーク40についてd1とd2を測定した。
表2中の「単調減少」欄において、○はワーク40が単調に減少したことを示しており、すなわち上記式(4)を満足するようにワーク40が引抜加工されたことを示している。
また、表2中の「表面粗さ」欄の記号の意味は次のとおりである。
◎:Ryが1.0μm以下(即ちRy≦1.0μm)
○:Ryが1.0μmを超え2.0μm未満(即ち1.0μm<Ry<2.0μm)
△:Ryが2.0μm以上(即ちRy≧2.0μm)
実施例1〜10で用いた引抜加工装置10の引抜ダイス20及び引抜プラグ30のその他の各部位の寸法は次のとおりである。
引抜ダイス20において、θ2=20°、L1=10mm、L3=2mm、L4=9mm、L5=2mm、R22=2mmである。
引抜プラグ30において、Dp=14.4mm、R3=50mm、θ3=20°、S=1mm、L6=1mmである。なお、L6がこの長さの場合、L4に対するL6の割合は11%である。
参考例1及び比較例1、2で用いた引抜加工装置110の引抜ダイス120及び引抜プラグ130のその他の各部位の寸法は次のとおりである。
引抜ダイス120において、θ2=20°、L1=10mm、L4(=L7)=20mm、L5=2mmである。
引抜プラグ130において、Dp=14.4mm、R3=50mm、θ3=20°、S=1mm、L6=1mmである。
引抜管41の外表面41aの表面粗さRyは、レーザ表面粗さ計(レーザのプローブ:2μm)により、引抜管41の外表面41aの周方向と長さ方向とのそれぞれ5箇所を測定し、これらの平均値を表面粗さRyとした。またその測定は、JIS B 0601:1994に準拠して行った。
Figure 0005191838
Figure 0005191838
表2に示すように、実施例1〜10及び参考例1の場合には、比較例1、2の場合よりもワーク40の外表面40aを高平滑面に加工することができた。
<実施例12〜19、参考例2及び比較例3>
引抜加工用ワークとして、アルミニウム製管状ワーク40を準備した。このワーク40の断面形状は円環状である。ワーク40の材質は、引抜加工用ワークの材料としてよく用いられる材料の一つであるJIS(日本工業規格) A3003相当のアルミニウム合金である。このワーク40は、アルミニウムビレットを押出加工することにより得られたアルミニウム押出管からなるものである。引抜加工前のワーク40の外径d0は33mm、その内径は30mm、その肉厚は1.5mmである。
図1〜3に示した引抜加工装置10(実施例12〜19)又は図4及び5に示した引抜加工装置110(参考例2、比較例3)を用いて、引抜ダイスの各部位の寸法(θ1、L2、R1、R21、H2)を様々に変えて、上記ワーク40を一回だけ引抜加工し、これにより引抜管41を製造した。引抜加工後のワーク40の外径d3すなわち引抜管41の外径d3は30mm、その内径は28mm、その肉厚は1.0mmである。したがって、この引抜加工では、ワーク40の縮径率Qは9%である。また、引抜速度は30m/minである。
この引抜加工の際に使用した潤滑油14は、出光興産(株)製の商品名「ダフニーマスタードロー2594」である。そして、引抜管41の外表面41aの表面粗さRyを測定し、外表面41aの表面粗さを評価した。
表3は、実施例12〜19、参考例2及び比較例3で用いた引抜加工装置の種類、及び引抜ダイスの各部位の寸法(θ1、L2、R1、R21、H2)を示している。表3中の「装置の種類」欄において、符号「10」は図1〜3に示した引抜加工装置10を意味しており、符号「110」は図4及び5に示した引抜加工装置110を意味している。
表4は、実施例12〜19、参考例2及び比較例3におけるd1、d2、d1/d3、d2/d3、(d3−d1)/(d0−d3)を示している。なお、d1及びd2は次のようにして測定した。すなわち、ワーク40を引抜加工している途中でワーク40の引抜方向Nへの移動を強制的に停止し、そのワーク40を引抜ダイス及び引抜プラグから取り外した。そして、このワーク40についてd1とd2を測定した。
表4中の「単調減少」欄の記号の意味は表2と同じである。また、表4中の「表面粗さ」欄の記号の意味も表2と同じである。
実施例12〜19で用いた引抜加工装置10の引抜ダイス20及び引抜プラグ30のその他の各部位の寸法は次のとおりである。
引抜ダイス20において、θ2=20°、L1=10mm、L3=2mm、L4=9mm、L5=2mm、R22=2mmである。
引抜プラグ30において、Dp=28mm、R3=50mm、θ3=20°、S=1mm、L6=1mmである。なお、L6がこの長さの場合、L4に対するL6の割合は11%である。
参考例2及び比較例3で用いた引抜加工装置110の引抜ダイス120及び引抜プラグ130のその他の各部位の寸法は次のとおりである。
引抜ダイス120において、θ2=20°、L1=10mm、L4(=L7)=20mm、L5=2mmである。
引抜プラグ130において、Dp=28mm、R3=50mm、θ3=20°、S=1mm、L6=1mmである。
引抜管41の外表面41aの表面粗さRyは、レーザ表面粗さ計(レーザのプローブ:2μm)により、引抜管41の外表面41aの周方向と長さ方向とのそれぞれ5箇所を測定し、これらの平均値を表面粗さRyとした。またその測定は、JIS B 0601:1994に準拠して行った。
Figure 0005191838
Figure 0005191838
表4に示すように、実施例12〜19、参考例2の場合には、比較例3の場合よりもワーク40の外表面40aを高平滑面に加工することができた。
本発明は、管状ワークの外表面を高平滑面に加工することができる管状ワークの引抜加工方法、該方法に好適に用いられる管状ワーク用引抜加工装置に利用可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る管状ワークの引抜加工方法に好適に用いられる管状ワーク用引抜加工装置の概略全体図である。 図2は、同引抜加工装置を用いてワークを引抜加工している途中の状態における引抜ダイス及び引抜プラグの断面図である。 図3は、図2の拡大図である。 図4は、従来の管状ワークの引抜加工方法によりワークを引抜加工している途中の状態における引抜ダイス及び引抜プラグの断面図である。 図5は、図4の拡大図である。
符号の説明
10:引抜加工装置
12:牽引装置
20:引抜ダイス
1A:ダイスアプローチ部
1B:繋ぎ部
1C:第1曲面部
1Y:第1縮径加工部
2A:補助曲面部
2B:ダイスベアリング部
2C:第2曲面部
2D:案内部
2Y:第2縮径加工部
30:引抜プラグ
3A:プラグアプローチ部
3B:プラグベアリング部
3C:第3曲面部
40:ワーク
40a:外表面
41:引抜管
41a:外表面
X:引抜ダイスのダイス軸
N:ワークの引抜方向

Claims (7)

  1. 管状ワークの外表面側を加工する引抜ダイスと、ワークの中空部内に配置されるとともにワークの内表面側を加工する引抜プラグとを用いた管状ワークの引抜加工方法において、
    ワークが前記引抜ダイスの第1縮径加工部により縮径加工されながら第1縮径加工部から離れたのち、前記引抜ダイスの第2縮径加工部と前記引抜プラグのプラグベアリング部との間をワークが第2縮径加工部に再接触した状態で通過する材料流動を示し、
    前記引抜ダイスは、
    前記第2縮径加工部としてダイスベアリング部及び案内部を備えており、
    前記ダイスベアリング部は、ワークが前記第1縮径加工部から離れるワーク離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されており、
    前記案内部は、前記ダイスベアリング部の上流端に滑らかに連なる第2曲面部を有するとともに、前記第1縮径加工部から離れたワークと再接触して該ワークを縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内するものであり、
    前記引抜プラグのプラグベアリング部は、前記ダイスベアリング部に対応する位置に配置されるとともに、更に、プラグベアリング部の上流端の位置が、ワークの引抜方向において、前記ダイスベアリング部の上流端の位置に対して同じ位置か又は下流側に配置されており、
    ーク離れ位置とワークが前記引抜ダイスの前記第2縮径加工部に再接触するワーク再接触位置との間におけるワークの最小外径をd1、
    ワーク再接触位置でのワークの外径をd2、
    引抜加工後のワークの外径をd3とするとき、
    次式(1)及び(2)
    0.95<d1/d3<1.1 …(1)
    1.0<d2/d3<1.1 …(2)
    を満足するようにワークを引抜加工することを特徴とする管状ワークの引抜加工方法。
  2. 引抜加工前のワークの外径をd0とするとき、
    次式(3)
    −0.25<(d3−d1)/(d0−d3)<0.15 …(3)
    を満足するようにワークを引抜加工する請求項記載の管状ワークの引抜加工方法。
  3. 引抜加工前のワークの外径をd0するとき、
    次式(4)
    d0>d1≧d2>d3 …(4)
    を満足するようにワークを引抜加工する請求項1又は2記載の管状ワークの引抜加工方法。
  4. 前記引抜ダイスは、
    前記第1縮径加工部として第1曲面部備えており、
    前記ダイスベアリング部は、前記第1曲面部における前記ワーク離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されており、
    前記案内部は、前記第1曲面部から離れたワークと再接触して該ワークを縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内するものであ請求項1〜3のいずれかに記載の管状ワークの引抜加工方法。
  5. 管状ワークの外表面側を加工する引抜ダイスと、ワークの中空部内に配置されるとともにワークの内表面側を加工する引抜プラグとを具備し、
    前記引抜ダイスは、
    ワークが縮径加工されながら離れる第1縮径加工部として第1曲面部と、
    第1縮径加工部から離れたワークを縮径加工する第2縮径加工部としてダイスベアリング部及び案内部と、
    を備えており、
    前記ダイスベアリング部は、前記第1曲面部におけるワーク離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されており、
    前記案内部は、前記ダイスベアリング部の上流端に滑らかに連なる第2曲面部を有するとともに、前記第1曲面部から離れたワークと再接触して該ワークを縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内するものであり、
    前記引抜プラグのプラグベアリング部は、前記ダイスベアリング部に対応する位置に配置されるとともに、更に、プラグベアリング部の上流端の位置が、ワークの引抜方向において、前記ダイスベアリング部の上流端の位置に対して同じ位置か又は下流側に配置されており、
    ワークが前記第1縮径加工部から離れるワーク離れ位置とワークが前記第2縮径加工部に再接触するワーク再接触位置との間におけるワークの最小外径をd1、
    ワーク再接触位置でのワークの外径をd2
    引抜加工後のワークの外径をd3とするとき、
    次式(1)及び(2)
    0.95<d1/d3<1.1 …(1)
    1.0<d2/d3<1.1 …(2)
    を満足するようにワークが引抜加工されるように構成されていることを特徴とする管状ワーク用引抜加工装置。
  6. 引抜加工前のワークの外径をd0とするとき、
    次式(3)
    −0.25<(d3−d1)/(d0−d3)<0.15 …(3)
    を満足するようにワークが引抜加工されるように構成されている請求項5記載の管状ワーク用引抜加工装置。
  7. 引抜加工前のワークの外径をd0とするとき、
    次式(4)
    d0>d1≧d2>d3 …(4)
    を満足するようにワークが引抜加工されるように構成されている請求項5又は6記載の管状ワーク用引抜加工装置。
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