以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ピックアップ装置10における受光素子16および回折素子17を光軸方向Zに見た平面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る光ピックアップ装置10の構成を表す側面図である。本実施形態に係る光ピックアップ装置10は、たとえばCD、DVD、BDなどの光学記録媒体11に対して、光の出射および受光を行う装置で、情報処理装置に搭載される。情報処理装置は、光学記録媒体11に対して、情報の記録、再生、消去、および書換えの少なくともいずれか1つの処理を行う。
光ピックアップ装置10は、光源12と、対物レンズ13と、回折素子17と、受光素子16とを含んで構成される。光源12は、たとえば半導体レーザ素子によって実現され、光ピックアップ装置10に搭載されて、光学記録媒体11に対する情報処理に用いられる光の出射を行う。対物レンズ13は、光源12から発せられる光を光学記録媒体11の表面上に集光するレンズである。光学記録媒体11の記録面上の、対物レンズ13によって集光された光が入射する位置を「集光位置」と称することがある。
回折素子17には、光学記録媒体11で反射された光が入射する。受光素子16は、回折素子17で回折した光線束が入射し、受光素子16には、複数の受光領域20が形成される。受光領域20は、入射した光線束の光量に応じた出力信号を出力する。光ピックアップ装置10は、制御駆動部に接続される。制御駆動部は、複数の受光領域20から出力される出力信号の差異を算出することによって、プッシュプル信号を求め、プッシュプル信号に基づいて、対物レンズ13を制御駆動する。これによって制御駆動部は、ラジアルエラーを補正する。
制御駆動部(図示外)は、対物レンズ13を駆動するアクチュエータを含み、アクチュエータによって対物レンズ13のフォーカスサーボ制御およびラジアルサーボ制御を行う。具体的には、アクチュエータは、フォーカスサーボ制御を行うことによって対物レンズ13透過後の往路光を光記録媒体11の記録表面上に集光させる。また対物レンズ13のラジアルサーボ制御を行うことによって、対物レンズ13透過後、集光された往路光を、所定のトラックに追従させる。
光源12から発せられた往路光27は、光学記録媒体11で反射された後、反射復路光28として回折素子17に到達する。回折素子17は、大略的に平板状かつ円板状に形成される。光学記録媒体11から回折素子17に到達する光の進行方向は、ほぼ回折素子17に垂直に入射する。
回折素子17には、順領域22と逆領域24とが形成される。順領域22は、複数の受光領域20のうち、プッシュプル信号に同符号に対応する出力信号を出力する受光領域に、光線束を入射させる領域である。逆領域24は、複数の受光領域20のうち、プッシュプル信号に逆符号に対応する出力信号を出力する受光領域に、光線束を入射させる領域である。順領域22と逆領域24とは、回折素子17上のいずれか1つの方向において、複数かつ交互に配置される。具体的には、順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるタンジェンシャル方向Xに垂直なラジアル方向Yに対して角度を成すいずれか1つの方向において、複数かつ交互に配置される。特に本実施形態では、順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるタンジェンシャル方向Xに複数かつ交互に配置される。本実施形態において、回折素子17に平行な方向のうち、光学記録媒体11の表面上のトラックの、集光位置における接線方向を「タンジェンシャル方向」Xと称し、回折素子17に平行かつタンジェンシャル方向Xに垂直な方向を「ラジアル方向」Yと称する。
受光領域20には、回折素子17で回折した後の±1次回折光のうち、少なくともいずれか一方が入射する。受光素子16には、さらにフォーカスエラー検出領域21が形成され、回折素子17には、フォーカスエラー用回折領域がさらに形成される。受光素子16に形成されるフォーカスエラー検出領域21は、フォーカスエラーを検出するための領域であり、回折素子17に形成されるフォーカスエラー用回折領域は、入光する光をフォーカスエラー検出領域21に向けて回折させる。制御駆動部は、フォーカスエラー検出領域21からの出力信号に基づいて、ナイフエッジ法によってフォーカスエラー信号を生成する。光源12と、回折素子17と、受光素子16とは、一体に形成される。
光ピックアップ装置10は、さらにコリメートレンズ26を含んで構成され、コリメートレンズ26は、光源12からの光を光学記録媒体11に向けて平行光にして透過させるレンズである。光源12から出射された光は、コリメートレンズ26を透過した後、対物レンズ13によって光学記録媒体11の記録面上に集光される。光学記録媒体11の記録面は、光学記録媒体11の表面のうち、情報が記録される表面である。光源12から出射されてから光学記録媒体11の記録面に到達するまでの光を「往路光」27と称し、光学記録媒体11の記録面で反射されて以降の光を「反射復路光」28と称する。反射復路光28は、受光素子16に到達することで光以外の、たとえば電気信号、熱などのエネルギーに変換される。
光学記録媒体11の記録面で反射された後の反射復路光28は、対物レンズ13を透過し、その後回折素子17で回折し、その後受光素子16に入射する。光ピックアップ装置10は、たとえば、λ/4板、λ/2板などの偏光素子を含んで構成されることもあり、またビームスプリッタを備える場合もあり、往路光27および復路光の少なくともいずれかが、これらの光学部品を透過する構成であってもよい。
図2に示す本実施形態における光ピックアップ装置10では、対物レンズ13を透過した反射復路光28は、コリメートレンズ26を透過した後、回折素子17に入射する。光ピックアップ装置10は、対物レンズ13を駆動するフォーカシングサーボおよびアクチュエータ(いずれも図示外)を備え、これらによって対物レンズ13の位置調整を行うことによって、対物レンズ13の光学記録媒体11に対する相対位置を調整する。図2に示す本実施形態における光ピックアップ装置10において、少なくとも光源12、回折素子17、コリメートレンズ26および対物レンズ13は、光軸上に配置される。回折素子17は、光学記録媒体11にほぼ平行に配置され、光軸に沿って回折素子17に入射した反射復路光28は、光軸からずれて、受光素子16に向かう。
光軸は、光学記録媒体11および回折素子17に垂直で、光軸が延びる方向を「光軸方向」Zと称する。光学記録媒体11のトラックのうち、往路光27が照射される位置におけるトラックに対する接線方向がタンジェンシャル方向Xである。回折素子17に入射する光線束は、光学記録媒体11のタンジェンシャル方向Xに対応した向きの変化を回折素子17にもたらす。すなわち回折素子17には、光学記録媒体11のタンジェンシャル方向Xに対応した向きが定められ、本実施形態においては、光学記録媒体11の記録面上におけるタンジェンシャル方向Xと、回折素子17において光学記録媒体11の記録面におけるタンジェンシャル方向Xに対応した方向とは、一致している。
タンジェンシャル方向Xと光軸方向Zとに垂直な方向はラジアル方向Yである。ラジアル方向Yは、たとえば光学記録媒体11がCDの場合において、CDの回転の中心軸に対して半径方向となる。本実施形態において、光学記録媒体11の記録面における半径方向と、回折素子17において光学記録媒体11の記録面におけるラジアル方向Yとは一致する。
図1(a)には、受光素子16を光軸方向Zに見た平面図を示しており、図1(b)には、回折素子17を光軸方向Zの光学記録媒体11側から見た平面図を示している。受光素子16には、第1〜第6受光領域20a,20b,…,20fの6つの受光領域20が形成される。各受光領域20は、フォトダイオードなどの光電変換を行う素子によって実現され、入射した光の光量に応じて出力信号を出力する。具体的には、単位時間当たりに受光した光量を電圧として出力する。各受光領域20から出力される出力信号は、制御駆動部に入力され、フォーカスエラーの補正およびラジアルエラーの補正のための情報として用いられる。実施形態によっては、受光領域20からの出力信号は、光電倍増管などを介して制御駆動部に入力されてもよい。
図1(b)に示すように、第1実施形態における回折素子17は、光軸方向Zに見て円形に形成され、複数の分割線によって複数の回折領域32に分割されている。分割線のうち第1分割線s1は、回折素子17の円の中心点を通りラジアル方向Yに延び、回折素子17の円の直径を成す。第2分割線s2は、中心点からタンジェンシャル方向一方X1に延びる。第2分割線s2は、中心点よりもタンジェンシャル方向他方X2には形成されていない。第2分割線s2は、そのタンジェンシャル方向一方X1の端において、回折素子17の外形を成す円に交わる。
図1(b)のように、光学記録媒体11側から光軸方向Zに回折素子17を見て、第1分割線s1、すなわちラジアル方向Yを上下方向とし、第2分割線s2すなわちタンジェンシャル方向一方X1を右方としたときに、上方に向かう向きを「ラジアル方向一方」Y1とし、下方に向かう向きを「ラジアル方向他方」Y2とする。
第3分割線s3は、中心点からタンジェンシャル方向一方X1に半径の半分程度の距離離れた点で第2分割線s2と直交し、ラジアル方向Yに延びる弦を成す。第4分割線s4は、第3分割線s3よりもわずかにタンジェンシャル方向一方X1に位置し、第3分割線s3に平行に形成される。換言すれば第4分割線s4は、第3分割線s3に平行に、第3分割線s3よりも中心点から同じ向きかつ外方に形成される弦である。
第5分割線s5は、第4分割線s4よりもさらにタンジェンシャル方向一方X1に、第4分割線s4に平行な弦として形成される。第3〜第5分割線s3,s4,s5は、いずれもラジアル方向Yに延びるその長手方向の中央で、第2分割線s2に垂直に交わる。第6分割線s6は、第1分割線s1と第3分割線s3との間に位置し、矩形の領域を切り取る形状に形成される。すなわち、第6分割線s6はラジアル方向Yに延びる長辺を有する長方形の形状に形成され、この長方形は、第2分割線s2をラジアル方向Y両側にまたがる。第2分割線s2は、第6分割線s6によって形成される長方形のラジアル方向Y中央を横切り、この長方形を2つの領域に分割する。この長方形は、第1分割線s1と第3分割線s3とのタンジェンシャル方向Xおよそ中央に配置される。
回折素子17のうち、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第1受光領域20aと第2受光領域20bとに対応する。この回折領域32を領域M1とする。すなわち、回折領域32のうち領域M1で回折した反射復路光28は、回折によってその進行方向が第1および第2受光領域20a,20bに向けられ、第1および第2受光領域20a,20bに入射する。
第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2で、かつ第6分割線s6の外方に位置する回折領域32は、第3受光領域20cに対応する。この回折領域32を領域M2cとする。第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2で、かつ第6分割線s6の外方に位置する回折領域32は、第4受光領域20dに対応する。この回折領域32を領域M3dとする。
第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M4eとする。第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M5fとする。
第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32は、第3受光領域20cに対応する。この回折領域32を領域M6cとする。第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32は、第4受光領域20dに対応する。この回折領域32を領域M7dとする。
第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1かつ第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2に位置する回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M8eとする。第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1かつ第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1に位置する回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M9fとする。
第6分割線s6よりも内側の回折領域32のうち、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M10fとする。第6分割線s6よりも内側の回折領域32のうち、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M11eとする。
回折素子17には、明暗領域35と単純領域37とが形成される。明暗領域35は、光学記録媒体11で反射された光のうち、光学記録媒体11の表面上のトラックからの回折反射光が入射する領域である。単純領域37は、光学記録媒体11で反射された光のうち、回折反射光が入射することなく、光学記録媒体11からの単純反射光が入射する領域である。受光領域20には、プッシュプル受光領域と、オフセット受光領域とが形成される。回折素子17には、第1回折領域31と第2回折領域34とが形成される。第1回折領域31は、入射する光をプッシュプル受光領域に向けて回折させ、第2回折領域34は、入射する光をオフセット受光領域に向けて回折させる。第1回折領域31と第2回折領域34とは、回折素子17上のいずれか1つの方向において複数かつ交互に配置される。
光学記録媒体11で反射された後の反射復路光28は、回折素子17よりも小さい円形の断面を有する光線束として、回折素子17に入射する。回折素子17のうち、反射復路光28の光線束によって照射される領域、換言すれば、反射復路光28の光線束が回折素子17に投影される範囲は、第6分割線s6によって形成される長方形の回折領域32を内包し、第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32の一部をも内包する。反射復路光28の光線束によって照射される領域を「照射領域」と称すると、照射領域は、円形に形成され、その円の中心は、回折素子17の円の中心点に一致する。照射領域の半径は、タンジェンシャル方向Xに離れる第1分割線s1と第5分割線s5との距離よりも大きく設定される。
照射領域のうち、最もラジアル方向一方Y1および最もラジアル方向他方Y2に位置する位置には、光学記録媒体11に入射する往路光27がトラックをラジアル方向に横断したときに、大きな明暗の変化を示す領域が位置する。この領域を「明暗領域」35と称すると、明暗領域35はラジアル方向Yに離れる2つの領域として形成され、それぞれの明暗領域35は、およそ楕円形に形成される。明暗領域35とは、対物レンズ13がラジアル方向に変位することによってラジアルエラーを生じたときに、照射領域のうちで、単位面積当たりの光量の変化が最も大きい部分である。
回折素子17に入射する反射復路光28は、単純反射光と回折反射光とを含む。回折素子17上において円形に形成される照射領域には、その全体に単純反射光が入射する。これに対し、回折反射光は、ラジアル方向Yに離れる2つの領域として形成される明暗領域35に入射する。照射領域のうち、明暗領域35を除く領域を「単純領域」と称すると、回折反射光は、単純領域には入射しない。したがって、対物レンズ13透過後の往路光が光学記録媒体11の記録面上のトラックを横切ると、明暗領域35においては大きな明暗の変化を示すけれども、単純反射光に入射する光の光量の変化は、明暗領域35における変化に比べて小さい変化となる。
図1(b)において明暗領域35は、二点鎖線で囲うことによって表している。照射領域のうち、明暗領域35を除く残余の領域においては、往路光27が仮にトラックをラジアル方向に横断したとしても、単位面積当たりの光量すなわち光強度の変化は、明暗領域35における変化に比べて小さい。これによって、光強度の変化の大きな領域と、光強度の変化の小さな領域とに入射する光線束の光量の差をとることで、プッシュプル信号を生成することができる。生成したプッシュプル信号に応じて対物レンズ13を制御駆動することによって、光学記録媒体11に入射する往路光27のラジアル方向のずれ、すなわちラジアルエラーを補正することができる。
2つの明暗領域35のうち、ラジアル方向一方Y1に位置する明暗領域35は、第1分割線s1を越えて第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2の領域と、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第6分割線s6よりも外方の領域とにまたがる。したがって、2つのうちラジアル方向一方Y1の明暗領域35のおよそ半分は第1および第2受光領域20a,20bに対応し、残るおよそ半分は第4受光領域20dに対応する。
2つの明暗領域35のうち、ラジアル方向他方Y2に位置する明暗領域35は、第1分割線s1を越えて第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2の領域と、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第6分割線s6よりも外方の領域とにまたがる。したがって、2つのうちラジアル方向他方Y2の明暗領域35のおよそ半分は第1および第2受光領域20a,bに対応し、残るおよそ半分は第3受光領域20cに対応する。2つの領域に「またがる」とは、光線束または陰影が、2つの領域間の境界を越えて、または他の領域を含めて、2つの領域の両方に入射または投影されることを意味する。
本実施形態においてラジアルエラーは、差動プッシュプル(differential push pull,
略称「DPP」)法を用いて補正される。差動プッシュプル法によって得られる出力信号の信号強度をDPPと表し、第1受光領域20aからの信号強度をA、第2受光領域20bからの信号強度をB、第3受光領域20cからの信号強度をC、第4受光領域20dからの信号強度をD、第5受光領域20eからの信号強度をE、第6受光領域20fからの信号強度をFで表すと、プッシュプル信号DPPは、次の式(2)で表される。
DPP=(C−D)−k×(E−F)
=MPP−k×SPP …(2)
式(2)において各項は全てスカラー量であり、MPPは(C−D)を、SPPは(E−F)を表す。第1および第2受光領域20a,20bは、フォーカスエラーの補正に用いるので、それらの受光素子16からの信号強度AおよびBは、プッシュプル信号を算出する式(2)には現れない。本実施形態においてラジアルエラー補正のためのプッシュプル信号は、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32に対応する出力信号によって求められる。これらのうち、明暗領域35からの信号強度が反映されるCおよびDを含む項を、MPPとし、明暗領域35からの信号強度が反映されることのないEおよびFを含む項を、SPPとする。
MPPに含まれるCおよびDを出力する第3および第4受光領域20c,20Dには、明暗領域35からの光が入射するので、第3および第4受光領域20c,20Dには、反射復路光28のうちの回折反射光が入射する。回折反射光は、プッシュプル信号に如実に反映されるので、CおよびDを出力する第3および第4受光領域20c,20Dを、「プッシュプル受光領域」と称する。これに対し、EおよびFを出力する第5および第6受光領域20e,20fには、単純領域からの光は入射するけれども、明暗領域35からの光は入射しない。したがって、第5および第6受光領域20e,20fには、単純反射光は入射するけれども、回折反射光は入射しない。第5および第6受光領域20e,20fに入射する光の光量は、トラックに対する対物レンズ13のずれ量、すなわちオフセット量に、およそ比例するので、第5および第6受光領域20e,20fを「オフセット受光領域」と称する。
第3および第4受光領域20c,20dからの出力信号CおよびDは、明暗領域35で回折した光線束の光量を反映するので、交流成分のプッシュプル出力信号が得られる。第5および第6受光領域20e,20fからの出力信号EおよびFは、制御駆動部による対物レンズ13の変位で、回折素子17上の照射領域が回折素子17の中心点からずれることによって、変化を示す。このEおよびFの信号強度の変化は、ラジアルエラーの大きさの変化に対するCおよびDの変化の割合よりも、小さな変化の割合を示す。
式(2)に現れる各項のうち、CとFとは、プッシュプル信号DPPに対して同符号に対応する。換言すれば、CとFとは、大きくなることによってDPPの値も大きくなる。このCとFとを、互いに「同極性」と称することとする。式(2)に現れる各項のうち、DとEとは、プッシュプル信号DPPに対して逆符号に対応する。換言すれば、DとEとは、大きくなることによって、DPPの値は小さくなる。DとEとは、互いに同極性である。同様に、CとFとを出力する第3受光領域20cと第6受光領域20fとは、互いに同極性であり、DとEとを出力する第4受光領域20dと第5受光領域20eとは、互いに同極性である。
式(2)に現れる項のうち、プッシュプル信号DPPに同符号に対応するCおよびFに、対応する回折領域32を「順領域」22と称する。これに対し、式(2)に現れる項のうち、プッシュプル信号DPPに逆符号に対応するDおよびEに、対応する回折領域32を「逆領域」24と称する。
受光領域20のうち、プッシュプル受光領域に対応する回折素子17上の領域を第1回折領域31とし、オフセット受光領域に対応する回折素子17上の領域を第2回折領域34とすると、第3受光領域20cは、プッシュプル受光領域であり、これに対応する回折素子17上の領域M2cおよび領域M6cは、第1回折領域31である。第4受光領域20dは、プッシュプル受光領域であり、これに対応する回折素子17上の領域M3dおよび領域M7dは、第1回折領域31である。第5受光領域20eは、オフセット受光領域であり、これに対応する回折素子17上の領域M4e、領域M8eおよび領域M10eは、第2回折領域34である。第6受光領域20fは、オフセット領域であり、これに対応する回折素子17上の領域M5f、領域M9fおよび領域M11fは、第2回折領域34である。
回折素子17上の領域M2cおよび領域M6cは、第1回折領域31であるとともに、順領域22である。回折素子17上の領域M3dおよび領域M7dは、第1回折領域31であるとともに、逆領域24である。回折素子17上の領域M4e、領域M8eおよび領域M10eは、第2回折領域34であるとともに、逆領域24である。回折素子17上の領域M5f、領域M9fおよび領域M11fは、第2回折領域34であるとともに、順領域22である。
回折素子17において、たとえば第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1かつ第2分割線s2近傍に形成される回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1から他方に順次見ていくと、出力信号Fを出力する第6受光領域20fに対応した回折領域32と、出力信号Dを出力する第4受光領域20dに対応した回折領域32とが、交互に繰返される。出力信号Fに対応する回折領域32は、順領域22であり、出力信号Dに対応する回折領域32は、逆領域24であるので、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1では、複数の順領域22と複数の逆領域24とが、タンジェンシャル方向Xに交互に繰返されて配置される。
また出力信号Fに対応する回折領域32は、第2回折領域34であり、出力信号Dに対応する回折領域32は、第1回折領域31であるので、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1では、複数の第1回折領域31と複数の第2回折領域34とが、タンジェンシャル方向Xに交互に繰返されて配置される。第1回折領域31には、明暗領域35で回折された光が入射するので、回折反射光は、第1回折領域31に対応するプッシュプル受光領域に入射する。第2回折領域34には、明暗領域35で回折された光が入射しないので、第2回折領域34に対応するオフセット受光領域には、単純反射光のみが入射する。
図3は、本発明の第1実施形態における回折素子17と、これに投影される異物の陰影33とを光軸方向Zに見て表す平面図である。図3には、異物の陰影33が回折素子17のタンジェンシャル方向一方X1から他方に向けて移動する場合について示しており、異物の陰影33が円形であり、この円の直径が第1分割線s1と第5分割線s5との距離にほぼ等しい場合について示している。
回折素子17において、たとえば第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2かつ第2分割線s2近傍に形成される回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1から他方に順次見ていくと、出力信号Eを出力する第5受光領域20eに対応した回折領域32と、出力信号Cを出力する第3受光領域20cに対応した回折領域32とが、交互に繰返される。出力信号Cに対応する回折領域32は、順領域22であり、出力信号Eに対応する回折領域32は、逆領域24であるので、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2では、複数の順領域22と複数の逆領域24とが、タンジェンシャル方向Xに交互に繰返されて配置される。
回折素子17に形成される複数の回折領域32と、それぞれの回折領域32に入射した光の光量に応じて出力される出力信号の演算とについて、前述のように設定することによって、光学記録媒体11のトラック上に付着する異物の陰影33が回折素子17に投影されても、順領域22と逆領域24とに、同時に投影される可能性を高くすることができる。仮に異物の陰影33が順領域22と逆領域24とに時間的な差異を伴って入射しても、順領域22および逆領域24のそれぞれは、複数かつ交互に配置されるので、出力信号が演算されるときには、時間的な差が平均化され、順領域22に対応する信号の増減と、逆領域24に対応する信号の増減とを同期させ、かつ互いに相殺させることができる。
図4は、本発明の第1実施形態において回折素子17上で異物の陰影33が移動するときの、各受光領域20からの信号強度およびプッシュプル信号DPPの変化を表す図である。図4(a)には、出力信号CおよびEを示し、図4(b)には、出力信号DおよびFを示している。図4において、横軸は異物のタンジェンシャル方向Xの位置を表しており、異物の中心が回折素子17の中心点に一致するときの位置を零としている。縦軸は、信号強度を表す。出力信号Cは、順領域22に対応した出力信号であり、出力信号Eは、逆領域24に対応した出力信号である。
図4(a)に示すように、異物の移動に応じて出力信号CおよびEは、変動するけれども、出力信号CとEとは互いによく同期している。これによって、異物の陰影33が回折素子17の第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2を移動しても、出力信号CとEとの変動は互いに相殺され、プッシュプル信号DPPへの影響は小さなものとなる。この様子を図4(c)に示している。図4(c)において、MPPの値とk×SPPの値とは、異物の陰影33の移動に伴って変動するけれども、演算結果として出力されるプッシュプル信号DPPには、変動が押えられている。
第1〜第4受光領域20a,20b,…,24dに対応して形成される明暗領域35に入射する光のうち、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32に到達する光は、逆領域24には入射せず、順領域22に入射する。明暗領域35に入射する光のうち、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32に到達する光は、順領域22には入射せず、逆領域24に入射する。したがって、ラジアルエラーが生じて光量にラジアル方向Yの偏りが生じた場合には、この光量の偏りが相殺されることはなく、ラジアルエラーの補正を行うことに支障はない。
具体的に、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1に異物の陰影33が影響せず、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2に異物の陰影33が影響した場合を考えると、出力信号Cに対する異物の陰影33の影響は、出力信号Eにも影響するので、出力信号Cに対応する順領域22と出力信号Eに対応する逆領域24とで、異物の陰影33の影響は相殺される。異物の陰影33は、プッシュプル受光領域に入射する第1受光領域31に影響することで、対物レンズ13透過後の往路光のトラックからのずれ量は、出力信号Cおよび出力信号Dのうちでは、出力信号Cにのみ影響するけれども、異物の陰影33は、オフセット受光領域に入射する第2受光領域34に影響することで、対物レンズ13透過後の往路光のトラックからのずれ量は、出力信号Eおよび出力信号Fのうちでは、出力信号Eにのみ影響する。出力信号Cへの異物の影響は、出力信号Fによって相殺される。
仮に、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2に、第1回折領域31で順領域22でかつ出力信号Cに対応する領域と、第2回折領域34で順領域22でかつ出力信号Fに対応する領域とをタンジェンシャル方向に、複数かつ交互に並べると、式(2)を参照しても分かるように、異物の陰影33による影響を相殺することができない。
式(2)に従って算出されたプッシュプル信号DPPの値は、制御駆動部に入力され、制御駆動部は、プッシュプル信号DPPに基づいて対物レンズ13を制御駆動する。これによって、対物レンズ13はラジアル方向Yに調整、変位駆動され、ラジアルエラーが補正される。
受光素子16には、フォーカスエラーを検出するためのフォーカスエラー検出領域21がさらに形成され、回折素子17には、入射する光を前記フォーカスエラー検出領域21に向けて回折するフォーカスエラー用回折領域が形成される。フォーカスエラー検出領域21は、第1実施形態において第1および第2受光領域20a,20bであり、フォーカスエラー用回折領域は、回折素子17において到達する光を第1および第2受光領域20a,20bに向けて回折する領域、すなわち第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2の領域である。
フォーカスエラーは、第1および第2受光領域20a,20bからの信号AおよびBを用いて補正する。第1および第2受光領域20a,20bは、受光素子16において互いに隣接して配置されている。フォーカシングエラー信号FESは、次の式(3)によって算出される。
FES=A−B …(3)
これは、回折素子17における第1分割線s1を境界としたナイフエッジを利用して、ナイフエッジ法によってフォーカスエラーの補正を行うものである。
再生信号RFは、次の式(4)によって算出される。
RF=A+B+C+D+E+F …(4)
ラジアルエラーを、高効率高精度に補正することができるので、再生信号RFの安定化も図ることができる。
第1実施形態によれば、回折素子17には、順領域22と逆領域24とが形成される。順領域22は、受光領域20のうち、プッシュプル信号に同符号に対応する出力信号を出力する受光領域20に反射復路光28を入射させる領域である。逆領域24は、受光領域20のうち、プッシュプル信号に逆符号に対応する出力信号を出力する受光領域20に反射復路光28を入射させる領域である。順領域22と逆領域24とは、回折素子17上のいずれか1つの方向において、複数かつ交互に配置される。順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるタンジェンシャル方向Xに垂直なラジアル方向Yに対して角度を成すいずれか1つの方向において、複数かつ交互に配置される。
これによって、順領域22と逆領域24とは、回折素子17上のいずれか1つの方向において、複数かつ交互に配置されるので、順領域22と逆領域24とが交互に複数配置されない場合に比べて、異物の陰影33が、隣合う順領域22と逆領域24とにまたがる可能性を高くすることができる。これによって、プッシュプル信号に対する異物の陰影33の影響について、順領域22に対応した出力信号と逆領域24に対応した出力信号とで生じる時間的なずれを低減することができる。したがって、順領域22への異物の陰影33の影響と、逆領域24への異物の陰影33の影響とを、プッシュプル信号の算出において互いに相殺することができる。したがって、回折素子17に投影される異物の陰影33が、回折素子17を移動することに伴うプッシュプル信号の変動を抑制することができる。またプッシュプル信号を算出してラジアルエラーを補正するので、光学記録媒体11に記録される信号を読み取るための受光素子16を、対物レンズ13の制御駆動にも共用ことができ、共用をしない場合に比べて小形化することができる。
また第1実施形態によれば、回折素子17には第1回折領域31と第2回折領域34とが形成される。第1回折領域31は、入射する光をプッシュプル受光領域に向けて回折させ、第2回折領域34は、入射する光をオフセット受光領域に向けて回折させる。第1回折領域31と第2回折領域34とは、回折素子17上のいずれか1つの方向において複数かつ交互に配置される。これによって、異物の陰影33が回折素子17上の第1回折領域31および第2回折領域34のいずれか一方にのみ影響する可能性を低減することができる。したがって、異物の陰影33が受光素子16のプッシュプル受光領域およびオフセット受光領域のいずれか一方にのみ影響する可能性を低減することができる。これによって、回折素子17上の明暗領域35に入射する光の光量から単純領域に入射する単純回折光の影響を除去するとともに、異物の陰影33による影響をも相殺することが可能となり、従来技術に比べてプッシュプル信号の精度を高くすることができる。
また第1実施形態によれば、順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるタンジェンシャル方向Xに複数かつ交互に配置される。これによって、光学記録媒体の表面上に付着する異物の陰影33が回折素子17においてタンジェンシャル方向Xに移動する場合、少なくとも一部の異物の陰影33は、順領域22と逆領域24とを交互に複数回、通過する。これによって、プッシュプル信号に対する異物の陰影33の影響について、順領域22に対応した出力信号と逆領域24に対応した出力信号とで生じる時間的なずれを低減することができる。したがって、回折素子17に投影される異物の陰影33が、回折素子17を移動することに伴うプッシュプル信号の変動を抑制することができる。また、異物の陰影33が順領域22と逆領域24とのいずれか一方に偏って投影される可能性を低減することができるので、順領域22と逆領域24とに投影された異物の陰影33による影響を、互いに相殺することができ、異物の陰影33が、回折素子17を移動することに伴うプッシュプル信号の変動を抑制することができる。
また第1実施形態によれば、受光領域20には、回折素子17で回折した後の±1次回折光のうち、少なくともいずれか一方が入射する。これによって、0次回折光を用い、±1次回折光を利用しない場合に比べて、回折素子17と受光素子16との距離を短く設定することができる。複数の受光領域20を、受光素子16において明確に区別するために、互いに離して形成するには、回折素子17と受光素子16との距離を大きく取る必要が生じる。±1次回折光を利用すれば、回折素子17と受光素子16との距離を短く設定し、かつ複数の受光領域20を互いに離して形成することができる。
また第1実施形態によれば、受光素子16には、さらにフォーカスエラー検出領域21が形成され、回折素子17には、フォーカスエラー用回折領域がさらに形成される。受光素子16に形成されるフォーカスエラー検出領域21は、フォーカスエラーを検出するための領域であり、回折素子17に形成されるフォーカスエラー用回折領域は、入光する光をフォーカスエラー検出領域21に向けて回折する。
これによって、フォーカスエラーの検出とラジアルエラーの検出とについて、回折素子17および受光素子16を共通化することができる。したがって、フォーカスエラーの検出とラジアルエラーの検出とに対して、回折素子17および受光素子16のいずれかを別体に設ける場合に比べて、光ピックアップ装置10を小形化することができる。
また第1実施形態によれば、制御駆動部は、フォーカスエラー検出領域21からの出力信号に基づいて、ナイフエッジ法によってフォーカスエラー信号を生成する。これによって、フォーカスエラーを差動プッシュプル法によって検出する場合に比べて、フォーカスエラーを検出するための受光領域20を小さく設定することが可能となる。したがって、光ピックアップ装置10を小形化することが可能となる。
また第1実施形態によれば、光源12と、回折素子17と、受光素子16とは、一体に形成される。これによって、他の部品と組合わせて実装するときに、光源12と回折素子17と受光素子16とを、互いの相対位置が固定された状態で、取扱うことが可能となる。したがって、実装を容易にすることができる。
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る光ピックアップ装置10における受光素子16および回折素子17を光軸方向Zに見た平面図である。第2実施形態に係る光ピックアップ装置10は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。
図5(a)は、受光素子16を光軸方向Zに見た平面図であり、図5(b)は、回折素子17を光軸方向Zに、光学記録媒体11側から見た平面図である。第2実施形態において受光素子16には、図5(a)に示すように、第1〜第7受光領域20a,20b,…,20gの7つの受光領域20が形成される。回折素子17は、図5(b)に示すように、光軸方向Zに見て円形に形成され、複数の分割線によって複数の回折領域32に分割されている。分割線のうち第1分割線s1は、回折素子17の円の中心点を通りラジアル方向Yに延び、回折素子17の円の直径を成す。
回折素子17に入射する反射復路光28は、回折素子17上において複数の回折素子17にまたがる照射領域を円形に形成する。照射領域のうちでは、回折素子17の円の中心点付近で最も光強度が強く、明るい。第2および第3分割線s2,s3は、照射領域のうちで最も明るい回折素子17の円の中心点付近を避けて配置される。第2分割線s2は、第1分割線s1上の、中心点よりも少しラジアル方向一方Y1の点から、タンジェンシャル方向一方X1に延びて形成される。
第3分割線s3は、第1分割線s1上の、中心点よりも少しラジアル方向他方Y2の点から、タンジェンシャル方向一方X1に延びて形成される。第2および第3分割線s2,s3は、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2には形成されていない。第2および第3分割線s2,s3は、それらのタンジェンシャル方向一方X1の端において、回折素子17の外形を成す円に交わる。
第4分割線s4は、第2分割線s2をタンジェンシャル方向Xにおよそ2等分する点から、ラジアル方向一方Y1に延びて形成される。第5分割線s5は、第2分割線s2と第4分割線s4との交点よりも、わずかにタンジェンシャル方向一方X1側の点から、ラジアル方向一方Y1に延びて形成される。第6分割線s6は、第5分割線s5と第2分割線s2との交点よりも、わずかにタンジェンシャル方向一方X1側の点から、ラジアル方向一方Y1に延びて形成される。第4〜第6分割線s4,s5,s6は、互いに平行に形成され、ラジアル方向他方Y2では第2分割線s2に交わり、ラジアル方向一方Y1では、回折素子17の外形を成す円に交わる。
第7分割線s7は、第3分割線s3をタンジェンシャル方向Xにおよそ2等分する点から、ラジアル方向他方Y2に延びて形成される。第8分割線s8は、第3分割線s3と第7分割線s7との交点よりも、わずかにタンジェンシャル方向一方X1側の点から、ラジアル方向他方Y2に延びて形成される。第9分割線s9は、第8分割線s8と第3分割線s3との交点よりも、わずかにタンジェンシャル方向一方X1側の点から、ラジアル方向他方Y2に延びて形成される。第7〜第9分割線s7,s8,s9は、互いに平行に形成され、ラジアル方向一方Y1では第3分割線s3に交わり、ラジアル方向他方Y2では、回折素子17の外形を成す円に交わる。
第10分割線s10は、コの字形に形成され、第2分割線s2の一部と共に、矩形の形状の回折領域32を外囲する。この矩形の形状の領域は、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1に、第2分割線s2に接して配置され、第1分割線s1と第4分割線s4との間のタンジェンシャル方向Xほぼ中央に位置する。この矩形の形状の領域は、2つの明暗領域35のうちラジアル方向一方Y1の明暗領域35よりもラジアル方向他方Y2に位置する。
第11分割線s11は、コの字形に形成され、第3分割線s3の一部と共に、矩形の形状の回折領域32を外囲する。この矩形の形状の領域は、第3分割線s3よりもラジアル方向一方Y1に、第3分割線s3に接して配置され、第1分割線s1と第7分割線s7との間のタンジェンシャル方向Xほぼ中央に位置する。この矩形の形状の領域は、2つの明暗領域35のうちラジアル方向他方Y2の明暗領域35よりもラジアル方向一方Y1に位置する。
光学記録媒体11から回折素子17に到達する反射復路光28のうち、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2に位置する回折領域32で回折した光線束は、第1および第2受光領域20a,20bに入射する。この回折領域32を領域M12とする。この状態を、この回折領域32が第1および第2受光領域20a,20bに対応する、と表現することにする。第1および第2受光領域20a,20bからは、それぞれ出力信号AおよびBが出力される。
第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第10分割線s10の外方に位置する回折領域32は、第4受光領域20dに対応する。この回折領域32を領域M13dとする。第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M14fとする。
第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第6分割線s6よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第4受光領域20dに対応する。この回折領域32を領域M15dとする。第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第6分割線s6よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M16fとする。第2分割線s2の一部と第10分割線s10とによって外囲される矩形の形状の回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M17fとする。
第3分割線s3よりもラジアル方向他方Y2、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第7分割線s7よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第11分割線s11の外方に位置する回折領域32は、第3受光領域20cに対応する。この回折領域32を領域M18cとする。第3分割線s3よりもラジアル方向他方Y2、第7分割線s7よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第8分割線s8よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M19eとする。
第3分割線s3よりもラジアル方向他方Y2、第8分割線s8よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第3受光領域20cに対応する。この回折領域32を領域M20cとする。第3分割線s3よりもラジアル方向他方Y2、第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M21eとする。第3分割線s3の一部と第11分割線s11とによって外囲される矩形の形状の回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M22eとする。
第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、かつ第3分割線s3よりもラジアル方向一方Y1の領域は、第7受光領域20gに対応する。第1受光領域20aから出力される信号をA、第2受光領域20bから出力される信号をB、第3受光領域20cから出力される信号をC、第4受光領域20dから出力される信号をD、第5受光領域20eから出力される信号をE、第6受光領域20fから出力される信号をFおよび第7受光領域20gから出力される信号をGとすると、第2実施形態においてプッシュプル信号DPPは、第1実施形態と同様の、式(2)によって算出される。
したがって、第3受光領域20cおよびCに対応する回折領域32は順領域22であり、第4受光領域20dおよびDに対応する回折領域32は逆領域24であり、第5受光領域20eおよびEに対応する回折領域32は逆領域24であり、第6受光領域20fおよびFに対応する回折領域32は順領域22である。
したがって、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、かつ第2分割線s2近傍の回折領域32をタンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に順次見ていくと、第6受光領域20fおよびFに対応する順領域22と、第4受光領域20dおよびDに対応する逆領域24とが交互に繰返して配置される。
第3分割線s3よりもラジアル方向他方Y2、かつ第3分割線s3近傍の回折領域32をタンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に順次見ていくと、第5受光領域20eおよびEに対応する逆領域24と、第3受光領域20cおよびCに対応する順領域22とが交互に繰返して配置される。
第2実施形態において回折素子17は、第2回折領域34を含み、第2回折領域34は、ラジアル方向Yを長手方向として長手形状に形成される。ラジアル方向Yは、回折素子17上においてタンジェンシャル方向Xに垂直な方向である。第2回折領域34の形状は、第2回折領域34に入射する光の光量と、ラジアル方向Yに対応する方向への対物レンズ13のトラックからのずれ量とが比例関係となる形状に定められる。
受光素子16には、独立受光領域が形成され、独立受光領域の出力信号は、プッシュプル信号の算出には用いられない。回折素子17は、独立回折領域36と、第2回折領域34とをさらに含み、独立回折領域36は、回折素子17におけるラジアル方向Y中央に形成される。独立回折領域36は、入射する光を独立受光領域に向けて回折させる。第2回折領域34は、独立回折領域36よりもラジアル方向Y外方に形成される。第2回折領域34は、タンジェンシャル方向Xに長い長手形状に形成される。タンジェンシャル方向Xに互いに離れる複数の第2回折領域34のラジアル方向Yの長さは、互いに異なる。
第2回折領域34は、図5(b)を参照して示すと、第2分割線s2の一部と第10分割線s10とに外囲された矩形の形状の回折領域32と、第3分割線s3の一部と第11分割線s11とに外囲された矩形の形状の回折領域32と、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1および第6分割線s6よりもタンジェンシャル方向他方X2に形成される各回折領域32と、第7分割線s7よりもタンジェンシャル方向一方X1および第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向他方X2に形成される各回折領域32とによって実現される。
独立回折領域36は、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、かつ第3分割線s3よりもラジアル方向一方Y1に位置する回折領域32である。この独立回折領域36に対応する第7受光領域20gからの出力信号Gは、ラジアルエラーの補正のためのプッシュプル信号の算出には利用しない。したがって、独立回折領域36からの出力信号Gは、プッシュプル信号DPPとは独立している。この第7受光領域20gを独立受光領域とする。受光素子16上に、独立受光領域を形成せず、独立回折領域36で回折した光は、プッシュプル信号の算出に利用しない受光素子16以外の部分に入射させてもよく、また独立回折領域36からは、出力信号を出力しなくてもよい。
前記複数の第2回折領域34は、本実施形態では順領域22および逆領域24の両方の一部によって実現される。複数の第2回折領域34の形状およびラジアル方向Yの長さは、予め定められる。複数の第2回折領域34からの出力信号を合計すると、対物レンズ13のトラッキングからのラジアル方向Yのずれ量に対して比例関係となる。これは、回折素子17上に形成される照射領域の直径にも対応して予め定められる。
独立回折領域36は、照射領域のうち最も反射復路光28の光強度の大きい領域を含むので、第2回折領域34を独立回折領域36とは異なる回折領域32として定めることによって、第2回折領域34を、光強度の比較的小さい領域に限定することができ、対物レンズ13のトラッキングからのずれ量と、複数の第2回折領域34からの出力信号の合計とが比例する構成にすることができる。
第2回折領域34は、回折素子17の中心点よりもラジアル方向一方Y1側に配置される複数の第2回折領域34と、回折素子17の中心点よりもラジアル方向他方Y2側に配置される複数の第2回折領域34とに分類される。ラジアル方向一方Y1側およびラジアル方向他方Y2側のそれぞれ複数の第2回折領域34は、タンジェンシャル方向Xに区分され、ラジアル方向Yを長手方向とする形状に形成される。ラジアル方向一方Y1側またはラジアル方向他方Y2側で各第2回折領域34のラジアル方向Yの長さを比較すると、それぞれ異なる。
ラジアル方向一方Y1側の複数の第2回折領域34の、ラジアル方向他方Y2の端は、同一のラジアル方向Yの位置に設定され、ラジアル方向他方Y2側の複数の第2回折領域34の、ラジアル方向一方Y1の端は、同一のラジアル方向Yの位置に設定される。したがって、第2回折領域34の面積について、ラジアル方向Yに分布をとれば、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1では、ラジアル方向一方Y1に向かうにつれて減少し、第3分割線s3よりもラジアル方向他方Y2では、ラジアル方向他方Y2に向かうにつれて減少する。このような構成とすることによって、各第2回折領域34からの出力信号の合計を、図6(a)に示すように、対物レンズ13のラジアルエラーの量に比例させることができる。
図6は、本発明の第2実施形態における受光素子16、回折素子17および制御駆動部を用いたときのプッシュプル信号DPPに関係する値を表す図である。図6(a)に示すように、MPPの対物レンズ13のラジアルエラーの量に対する変化割合は、SPPのそれに比べて大きい。第2回折領域34を前述のように設定することによって、図6(a)に示すように、SPPも対物レンズ13のラジアルエラーの量に比例させることができる。これによって、MPPと定数k倍のSPPとの差を取ることによって、DPPを高精度に求めることができる。
図6(b)には、第2実施形態における回折素子17上を、異物の陰影33がタンジェンシャル方向Xに移動したときのMPP、k×SPP、およびDPPの大きさを異物の陰影33の移動量に対して表した図である。図6(b)から、MPPとk×SPPとが、互いによく同期することが分かる。
第2実施形態によれば、第2回折領域34の形状は、第2回折領域34に入射する光の光量と、ラジアル方向Yに対応する方向への対物レンズ13のトラックからのずれ量とが比例関係となる形状に定められる。これによって、第2回折領域34に入射する光の光量が対物レンズ13のトラックからのずれ量に対して非線形の関係にある場合に比べて、プッシュプル信号を算出する計算式を簡単化することができる。したがって、プッシュプル信号を算出するときの演算コストを低減することができる。これによって、ラジアルエラーを短時間にかつ高い精度で求めることが容易となり、またラジアルエラーの補正にかかる時間を可及的に短くすることができる。したがって、時間の経過とともに最適位置が変化する対物レンズ13の位置を、高い精度で制御駆動することができる。
第2実施形態によれば、独立回折領域36は、回折素子17におけるラジアル方向Y中央に、入射する光の光量の増減がプッシュプル信号の増減に対して独立する。第2回折領域34は、独立回折領域36よりもラジアル方向Y外方に、タンジェンシャル方向Xおよびラジアル方向Yに延びる辺を有する長手形状に形成される。各第2回折領域34の形状およびラジアル方向Yの寸法は、予め定められる。これによって、回折素子17のうちラジアル方向Y中央の、単位面積当たりに入射する光強度が比較的大きい部分に入射する光量を、プッシュプル信号の算出に用いる光量からは除外することができる。これによって、第2回折領域34の形状を、第2回折領域34における光量と、対物レンズ13のトラックからのずれ量とが、比例関係となる形状に定めることが容易となる。
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る光ピックアップ装置10における受光素子16および回折素子17を光軸方向Zに見た平面図である。第3実施形態に係る光ピックアップ装置10は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第3実施形態の相違点を中心に説明する。
第3実施形態において回折素子17は、順領域22または逆領域24のいずれか一方の、少なくとも一部を成す領域39を含み、この領域39の少なくとも一部は、タンジェンシャル方向Xを長手方向として長手形状に形成される。この領域39を、「タンジェンシャル方向所定領域」39と称する。順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるラジアル方向Yに複数かつ交互に配置される。また回折領域32には、第1配列群と第2配列群とが形成される。第1配列群には、順領域22および逆領域24が、タンジェンシャル方向Xに複数かつ交互に形成される。第2配列群には、順領域22および逆領域24が、ラジアル方向Yに複数かつ交互に形成される。
第3実施形態における受光素子16は、図7(a)に示すように、第1実施形態の受光素子と同様である。回折素子17は図7(b)に示すように、光軸方向Zに見て円形に形成され、複数の分割線によって複数の回折領域32に分割される。分割線のうち第1分割線s1は回折素子17の円の中心を通りラジアル方向Yに延び、回折素子17の円の直径を成す。第2分割線s2は、中心点からタンジェンシャル方向一方X1に延びる。第2分割線s2は、中心点よりもタンジェンシャル方向他方X2には形成されていない。第2分割線s2は、そのタンジェンシャル方向一方X1の端において、回折素子17の外形を成す円に交わる。
第3分割線s3は、中心点からタンジェンシャル方向一方X1に半径の半分程度の距離離れた点で第2分割線s2と直交し、ラジアル方向Yに延びる弦を成す。第4分割線s4は、第3分割線s3よりもわずかにタンジェンシャル方向一方X1に位置し、第3分割線s3に平行に形成される。換言すれば第4分割線s4は、第3分割線s3に平行に、第3分割線s3よりも中心点から同じ向きかつ外方に形成される弦である。
第5分割線s5は、第4分割線s4よりもさらにタンジェンシャル方向一方X1に、第4分割線s4に平行な弦として形成される。第3〜第5分割線s3,s4,s5は、いずれもラジアル方向Yに延びるその長手方向の中央で、第2分割線s2に垂直に交わる。第6分割線s6は、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2に配置され、タンジェンシャル方向Xに延びる矩形の領域を切り取る形状に形成される。第7分割線s7は、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2に配置され、タンジェンシャル方向Xに延びる矩形の領域を切り取る形状に形成される。
回折素子17のうち、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第1受光領域20aと第2受光領域20bとに対応する。この回折領域32を領域M23とする。第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2で、かつ第7分割線s7の外方に位置する回折領域32は、第3受光領域20cに対応する。この回折領域32を領域M24cとする。第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向一方X1、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2で、かつ第6分割線s6の外方に位置する回折領域32は、第4受光領域20dに対応する。この回折領域32を領域M25dとする。
第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M26eとする。第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M27fとする。
第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32は、第3受光領域20cに対応する。この回折領域32を領域M28cとする。第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2かつ第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32は、第4受光領域20dに対応する。この回折領域32を領域M29dとする。
第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1かつ第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2に位置する回折領域32は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M30eとする。第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1かつ第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1に位置する回折領域32は、第6受光領域20fに対応する。この回折領域32を領域M31fとする。第6分割線s6に外囲される矩形の領域は、第6受光領域20fに対応し、この回折領域32を領域M32fとする。第7分割線s7に外囲される矩形の領域は、第5受光領域20eに対応する。この回折領域32を領域M33eとする。本実施形態において領域M32fと領域M33eとがタンジェンシャル方向所定領域39であり、これらは第2回折領域34でもある。
第3実施形態における複数の回折領域32は、第1配列群として形成される回折領域32の配列群と、第2配列群として形成される回折領域32の配列群とを含む。第1配列群と第2配列群とは、第3分割線s3によってタンジェンシャル方向Xに分割され、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1には第1配列群が、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2には、第2配列群が形成される。第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第1および第2配列群のいずれにも属さない。
第1受光領域20aからの信号強度をA、第2受光領域20bからの信号強度をB、第3受光領域20cからの信号強度をC、第4受光領域20dからの信号領域をD、第5受光領域20eからの信号強度をE、第6受光領域20fからの信号強度をFで表すと、プッシュプル信号DPPは、第1実施形態と同様に、式(2)で表される。第3受光領域20cおよびCに対応する回折領域32は順領域22であり、第4受光領域20dおよびDに対応する回折領域32は逆領域24であり、第5受光領域20eおよびEに対応する回折領域32は逆領域24であり、第6受光領域20fおよびFに対応する回折領域32は順領域22である。
したがって、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1において、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の複数の回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に見ると、第6受光領域20fおよびFに対応する順領域22と、第4受光領域20dおよびDに対応する逆領域24とがタンジェンシャル方向Xに繰返される。第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1において、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の複数の回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に見ると、第5受光領域20eおよびEに対応する逆領域24と、第3受光領域20cおよびCに対応する順領域22とがタンジェンシャル方向Xに繰返される。第1配列群には、図7(b)に示した順領域22および逆領域24よりもさらに多くの順領域22および逆領域24が、タンジェンシャル方向Xに交互に繰返して配置されていてもよい。
第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2において、第1分割線s1と第3分割線s3とのタンジェンシャル方向Xおよそ中央をラジアル方向一方Y1からラジアル方向他方Y2に見ていくと、第4受光領域20dおよびDに対応する逆領域24、第6受光領域20fおよびFに対応する順領域22、再び第4受光領域20dおよびDに対応する逆領域24が配置され、そのさらにラジアル方向他方Y2には、第3受光領域20cおよびCに対応する順領域22、第5受光領域20eおよびEに対応する逆領域24、再び第3受光領域20cおよびCに対応する順領域22が配置される。これによって、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2には、第2配列群として、順領域22と逆領域24とが、ラジアル方向Yに複数、交互に繰返して配置される。
第3実施形態によれば、第6分割線s6によって外囲される、タンジェンシャル方向Xに長い矩形の回折領域32と、第7分割線s7によって外囲される、タンジェンシャル方向Xに長い矩形の回折領域32とが、タンジェンシャル方向所定領域39として形成される。タンジェンシャル方向所定領域39は、タンジェンシャル方向Xを長手方向として長手形状に形成される。これによって、回折素子17において異物の陰影33が、ラジアル方向Yに隣合う順領域22および逆領域24にまたがる可能性を高くすることができる。異物の陰影33が、隣合う順領域22と逆領域24とにまたがる場合に、プッシュプル信号における異物の陰影33による影響を、順領域22からの信号と逆領域24からの信号とを同期させることができる。したがって、回折素子17に投影される異物の陰影33が、回折素子17を移動することに伴うプッシュプル信号の変動を抑制することができる。
また第3実施形態によれば、順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるラジアル方向Yに複数かつ交互に配置される。これによって、順領域22と逆領域24とが、回折素子17におけるタンジェンシャル方向Xに複数かつ交互に配置される場合に比べて、異物の陰影33が順領域22に位置する時刻と逆領域24に位置する時刻とを同じにすることが容易となる。順領域22と逆領域24とがタンジェンシャル方向Xに交互に配置される場合には、異物の陰影33が順領域22と逆領域24とのいずれか一方に偏って投影される可能性を低減できるという利点があり、これに対し順領域22と逆領域24とがラジアル方向Yに交互に配置される場合には、隣合う順領域22と逆領域24とをまたいで投影された異物の陰影33による、順領域22と逆領域24とに対する影響を、完全に同期させることができる。これによって、順領域22への異物の影響と逆領域24への異物の影響とを互いに相殺することができる。
また第3実施形態によれば、回折領域32には、第1配列群と第2配列群とが形成される。第1配列群には、順領域22および逆領域24が、タンジェンシャル方向Xに複数かつ交互に形成される。第2配列群には、順領域22および逆領域24が、ラジアル方向Yに複数かつ交互に形成される。これによって、回折素子17のうち、順領域22に対応する出力信号の波形と逆領域24に対応する出力信号の波形とで、位相差が生じる部分には第1配列群を形成し、回折素子17のうち、順領域22に対応する出力信号の波形と逆領域24に対応する出力信号の波形とで、同位相となる部分には第2配列群を形成することも可能となる。したがって、順領域22と逆領域24とを、回折素子17で1つの方向にのみ複数かつ交互に配置する構成に比べて、プッシュプル信号に対する異物の陰影33の影響について、順領域22に対応する出力信号と逆領域24に対応する出力信号との同期の精度を、高くすることができる。これによって、プッシュプル信号DPPを、さらに安定化することができる。
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係る光ピックアップ装置10における受光素子16および回折素子17を光軸方向Zに見た平面図である。第4実施形態に係る光ピックアップ装置10は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第4実施形態の相違点を中心に説明する。
第4実施形態において、回折素子17に形成される第1〜第6分割線s1,s2,…,s6は、第1実施形態における第1〜第6分割線s1,s2,…,s6と同様である。第4実施形態では、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2に、さらに4つの分割線、第7〜10分割線s7,s8,s9,s10が形成される。回折素子17を光軸方向Zに見たときの中心点を通りタンジェンシャル方向Xに延びる直線を「所定直線」38と称し、第1分割線s1よりもタンジェンシャル方向他方X2において、所定直線38と回折素子17の外形の円とが交わる交点を「第1交点」42と称し、所定直線38上、中心点と第1交点42とのおよそ中央付近に、第7分割線s7と第8分割線s8との交点が配置される。この交点を「第2交点」44と称する。第7分割線s7は、第2交点44から第1交点42までの位置に配置される。
第8分割線s8は、第2交点44を通りラジアル方向Yに延びて形成される。第8分割線s8よりもわずかにタンジェンシャル方向他方X2には、第9分割線s9がラジアル方向Yに延びて配置される。第9分割線s9よりもわずかにタンジェンシャル方向他方X2には、第10分割線s10がラジアル方向Yに延びて配置される。第8〜第10分割線s8,s9,s10は、いずれもそれらのラジアル方向Y両端において、回折素子17の外形を成す円に交わる。回折素子17を光軸方向Zに見て、第3〜第5分割線s3,s4,s5と、第8〜第10分割線s8,s9,s10とは、中心点Oを通りタンジェンシャル方向Xに垂直な平面に関して対称に形成される。
第7分割線s7よりもラジアル方向一方Y1、第8分割線s8よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第6受光領域20fおよびFに対応して形成される。この回折領域32を領域M34fとする。第7分割線s7よりもラジアル方向一方Y1、第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第10分割線s10よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第4受光領域20dおよびDに対応して形成される。この回折領域32を領域M35dとする。第7分割線s7よりもラジアル方向一方Y1、かつ第10分割線s10よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第6受光領域20fおよびFに対応して形成される。この回折領域32を領域M36fとする。
第7分割線s7よりもラジアル方向他方Y2、第8分割線s8よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第5受光領域20eおよびEに対応して形成される。この回折領域32を領域M37eとする。第7分割線s7よりもラジアル方向他方Y2、第9分割線s9よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第10分割線s10よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第3受光領域20cおよびCに対応して形成される。この回折領域32を領域M38cとする。第7分割線s7よりもラジアル方向他方Y2、かつ第10分割線s10よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第5受光領域20eおよびEに対応して形成される。この回折領域32を領域M39eとする。
これによって、第7分割線s7よりもラジアル方向一方Y1、第8分割線s8よりもタンジェンシャル方向一方X2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第6分割線s6の外方の回折領域32は、Dに対応する。この回折領域32を領域M40dとする。同様に、第7分割線s7よりもラジアル方向一方Y1、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32には、Fに対応する順領域22と、Dに対応する逆領域24とが、タンジェンシャル方向Xに繰返して交互に配置される。タンジェンシャル方向Xに繰返されるこれら順領域22および逆領域24の個数は、さらに多く設定されてもよい。第6分割線s6の内方に形成される矩形の領域は、第2分割線s2をラジアル方向にまたいで形成され、第6分割線s6の内方、第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1の回折領域32は、Fに対応する。
第7分割線s7よりもラジアル方向他方Y2、第8分割線s8よりもタンジェンシャル方向一方X1、タンジェンシャル方向他方X2、かつ第6分割線s6の外方の回折領域32は、Cに対応する。この回折領域をM41cとする。同様に、第7分割線s7よりもラジアル方向他方Y2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32には、Eに対応する逆領域24と、Cに対応する順領域22とが、タンジェンシャル方向Xに繰返して交互に配置される。タンジェンシャル方向Xに繰返されるこれら順領域22および逆領域24の個数は、さらに多く設定されてもよい。第6分割線s6の内方、第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2の回折領域32は、Eに対応する。
これによって、第1実施形態に比べて、第5および第6受光領域20e,20fに入射する光の光量を増大することができる。したがって、プッシュプル信号DPPを算出する式(2)において、kの値を低減することができる。これによって、光学記録媒体11に異物、疵などがある場合に、プッシュプル信号DPPに対する異物、疵などの陰影の影響を、第1実施形態よりもさらに低減することができる。
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態に係る光ピックアップ装置10における受光素子16および回折素子17を光軸方向Zに見た平面図である。第5実施形態に係る光ピックアップ装置10は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第5実施形態の相違点を中心に説明する。
図9(a)は、受光素子16の平面図であり、図9(b)は、回折素子17を光軸方向Zに光学記録媒体11側から見た平面図である。第5実施形態において受光素子16には、8つの受光領域20、第1〜第8受光領域20A,20B,…,20Hが形成される。これらのうち第2、第4、第6および第8受光領域20B,20D,20F,20Hのそれぞれは、さらに3つの小領域に分割され、それぞれが受光した光の光量に応じた出力信号を、互いに独立して出力することができる。
第5実施形態において、回折素子17に形成される第2〜第6分割線s2,s3,…,s6は、第1実施形態における第2〜第6分割線s2,s3,…,s6と同様である。第5実施形態では、第1実施形態における第1分割線s1に類似するものは形成されない。回折素子17の中心点を通り、タンジェンシャル方向Xに垂直な平面を「仮想平面」46と称すると、第5実施形態では、仮想平面46よりもタンジェンシャル方向他方X2には、仮想平面46よりもタンジェンシャル方向一方X1と同様に、複数の分割線が形成される。回折素子17に形成される複数の分割線は、光軸方向Zに回折素子17を見て、仮想平面46に関して対称に形成される。
第2分割線s2と対称な分割線を第12分割線s12、第3分割線s3と対称な分割線を第13分割線s13、第4分割線s4と対称な分割線を第14分割線s14、第5分割線s5と対称な分割線を第15分割線s15、第6分割線s6と対称な分割線を第16分割線s16とする。第2分割線s2と第12分割線s12とは、同一直線上に位置する。
第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2、第13分割線z13よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第6および第16分割線s6,s16よりも外方の回折領域32は、第4および第6受光領域20D,20Fに対応する。第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する。
第2および第12分割線s2,s12よりもラジアル方向一方Y1、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第4および第6受光領域20D,20Fに対応する。第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、かつ第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する。第2分割線s2よりもラジアル方向一方Y1、かつ第6分割線s6の内方に位置する回折領域32は、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する。第12分割線s12よりもラジアル方向一方Y1、かつ第16分割線s16の内方に位置する回折領域32は、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する。
第2および第12分割線s2,s12よりもラジアル方向他方Y2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向他方X2、第13分割線s13よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第6および第16分割線s6,s16よりも外方の回折領域32は、第2および第8受光領域20B,20Hに対応する。第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、第3分割線s3よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する。第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、第4分割線s4よりもタンジェンシャル方向一方X1、かつ第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第2および第8受光領域20B,20Hに対応する。
第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、かつ第5分割線s5よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する。第2分割線s2よりもラジアル方向他方Y2、かつ第6分割線s6の内方に位置する回折領域32は、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する。第12分割線s12よりもラジアル方向他方Y2、かつ第16分割線s16の内方に位置する回折領域32は、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する。
前記仮想平面46よりもタンジェンシャル方向他方X2は、タンジェンシャル方向一方X1に形成される領域に対し、仮想平面46に関して対称に設定される。第12分割線s12よりもラジアル方向一方Y1、第13分割線s13よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第14分割線s14よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する。
第12分割線s12よりもラジアル方向一方Y1、第14分割線s14よりもタンジェンシャル方向他方、かつ第15分割線s15よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第4および第6受光領域20D,20Fに対応する。第12分割線s12よりもラジアル方向一方Y1、かつ第15分割線s15よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する。
第12分割線s12よりもラジアル方向他方Y2、第13分割線s13よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第14分割線s14よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する。第12分割線s12よりもラジアル方向他方Y2、第14分割線s14よりもタンジェンシャル方向他方X2、かつ第15分割線s15よりもタンジェンシャル方向一方X1の回折領域32は、第2および第8受光領域20B,20Hに対応する。第12分割線s12よりもラジアル方向他方Y2、かつ第15分割線s15よりもタンジェンシャル方向他方X2の回折領域32は、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する。
第4および第6受光領域20D,20Fに到達する光線束は、受光素子16に向かうにつれて集光され、これが1つの点で集光されるはずの点から回折素子17までの距離は、回折素子17から受光素子16までの距離よりも長く設定される。第2および第8受光領域20B,20Hに到達する光線束は、受光素子16に向かうにつれて集光され、これが1つの点で集光する点から回折素子17までの距離は、回折素子17から受光素子16までの距離よりも短い。第1、第3、第5および第7受光領域20A,20C,20E,20Gに到達する光は、受光素子16に向かうにつれて集光され、これが1つの点で集光する点から回折素子17までの距離は、回折素子17から受光素子16までの距離に等しく設定される。
第1受光領域20Aに光が入射されることによって出力される出力信号をR1とする。第2受光領域20Bに光が入射されることによって出力される出力信号をR2とする。第3〜第8受光領域20C,20D,20E,20F,20G,20Hについても同様に、光が入射されることによって出力される出力信号を、それぞれR3〜R8とする。
これによって、第2および第12分割線s2,s12よりもラジアル方向一方Y1で、第2および第12分割線s2,s12に近い回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に向かって見ていくと、2種類の回折領域32が複数、交互に繰り返して配置されていることが分かる。2種類の回折領域32のうちの一つは、第1および第5受光領域20A,20Eと、R1およびR5とに対応する回折領域32であり、2種類の回折領域32のうちの他の一つは、第4および第6受光領域20D,20Fと、R4およびR6とに対応する回折領域32である。
同様に、第2および第12分割線s2,s12よりもラジアル方向他方Y2で、第2および第12分割線s2,s12に近い回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に向かって見ていくと、2種類の回折領域32が複数、交互に繰り返して配置されていることが分かる。2種類の回折領域32のうちの一つは、第3および第7受光領域20C,20Gと、R3およびR7とに対応する回折領域32であり、2種類の回折領域32のうちの他の一つは、第2および第8受光領域20B,20Hと、R2およびR8とに対応する回折領域32である。
第5実施形態において、ラジアルエラーを補正するためのプッシュプル信号DPPは、次の式(5)を用いて算出される。
DPP={(R4all+R6all)−(R2all+R8all)}
−k×{(R1+R5)−(R3+R7)}
=MPP−k×SPP …(5)
第1〜第8領域のうち、第2、第4、第6および第8領域は、それぞれさらに3つの小領域に分割されているけれども、式(5)において、R2all、R4all、R6allおよびR8allは、第2、第4、第6および第8領域のそれぞれに入射した光線束の光量を表しており、言わば3つの小領域に入射した光線束の光量の合計である。受光素子16の各領域に入射した光線束の光量は、受光素子から出力される信号の信号強度として表される。
式(5)から、(R4all+R6all)と(R3+R7)とは増大することによってDPPの値も増大するので、プッシュプル信号DPPに対して同符号に対応する。したがって、回折素子17のうち、第4および第6受光領域20D,20Fに対応する回折領域32と、第3および第7受光領域20C,20Gに対応する回折領域32とは、順領域22である。式(5)から、(R2all+R8all)と(R1+R5)とは増大することによってDPPの値が減少するので、プッシュプル信号DPPに対して逆符号に対応する。したがって、回折素子17のうち、第2および第8受光領域20B,20Hに対応する回折領域32と、第1および第5受光領域20A,20Eに対応する回折領域32とは、逆領域24である。
再度、第2および第12分割線s2,s12よりもラジアル方向一方Y1で、第2および第12分割線s2,s12に近い回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に向かって見ていくと、R1およびR5とに対応する逆領域24と、R4およびR6とに対応する順領域22とが、複数、交互に繰り返して配置されていることが分かる。同様に、第2および第12分割線s2,s12よりもラジアル方向他方Y2で、第2および第12分割線s2,s12に近い回折領域32を、タンジェンシャル方向一方X1からタンジェンシャル方向他方X2に向かって見ていくと、R3およびR7とに対応する順領域22と、R2およびR8とに対応する逆領域24とが、複数、交互に繰り返して配置されていることが分かる。
第5実施形態において、フォーカスエラー信号FESは、第2、第4、第6および第8受光領域20B,20D,20F,20Hを利用し、次の式(6)によって求められる。第2、第4、第6および第8受光領域20B,20D,20F,20Hは、それぞれ3つの小領域に分割されており、それぞれの小領域から出力される信号を20Ba,20Bb,20Bc,20Da,20Db,20Dc,…,20Ha,20Hb,20Hcと表すこととし、各小領域a,b,cのうち、bがタンジェンシャル方向中央に位置するものとする。
FES=(20Db+20Hb+20Ba+20Bc+20Fa+20Fc)
−(20Bb+20Fb+20Da+20Dc+20Ha+20Hc)
…(6)
これは、回折素子17の第2および第12分割線s2,s12を境界とし、ラジアル方向一方Y1側の回折領域32で回折して、受光領域20に入射する光線束の各受光領域20でのスポット径と、ラジアル方向他方Y2側の回折領域32で回折して、受光領域20に入射する光線束の各受光領域20でのスポット径とを比較することによって、フォーカシングサーボの駆動制御を行うものである。
さらに、全受光素子16の出力信号を合計することによって、第1の実施形態と同様に、RF信号を再生する。順領域22と逆領域24とは、回折素子17におけるタンジェンシャル方向Xに複数かつ交互に配置されるので、光記録媒体のトラック上に異物、傷などがある場合、少なくとも一部の異物の陰影33は、順領域22と逆領域24とを交互に複数回、通過する。これによって、プッシュプル信号に対する異物の陰影33の影響について、順領域22に対応した出力信号と逆領域24に対応した出力信号とで生じる時間的なずれを低減することができる。したがって、回折素子17に投影される異物の陰影33が、回折素子17を移動することに伴って、プッシュプル信号にノイズが含まれることを抑制することができる。また、異物の陰影33が順領域22と逆領域24とのいずれか一方に偏って投影される可能性を低減することができるので、順領域22と逆領域24とに投影された異物の陰影33による影響を、互いに相殺することができ、異物の陰影33が、回折素子17を移動することに伴うプッシュプル信号の変動を抑制することができる。
図10は、本発明の第5実施形態における光ピックアップ装置10の構成を表す図である。図11は、本発明の第5実施形態における光源12と、回折素子17と、受光素子16とを含む光源ユニットを、その側方から見た断面図である。本実施形態において、光源12と、回折素子17と、受光素子16とは、一体に形成される。光源12は、半導体レーザ素子である。光源12と受光素子16とは、金属および樹脂の少なくともいずれか一方からなるフレーム48に搭載され、フレーム48には、光軸を中心として孔が形成されるキャップが設けられる。フレーム48のキャップの孔には、回折格子パターンが形成された樹脂またはガラス製の回折素子17が配置される。受光素子16は、回折素子17の光軸上にその中心が配置され、回折素子17と光軸を一致させて配置される。
このように、回折素子17、光源12および受光素子16を一体化したものを、光ピックアップ装置10の組立調整に導入することによって、他の部品と組合わせて実装するときに、光源12と回折素子17と受光素子16とを、互いの相対位置が固定された状態で、取扱うことが可能となる。したがって光ピックアップ装置10の製造を容易にすることができる。
(変形例)
図12は、本発明の他の実施形態における光源12と、回折素子17と、受光素子16とを含む光源ユニットを、その側方から見た断面図である。本実施形態では、たとえば第5実施形態に係る光ピックアップ装置10とは異なり、受光素子は、光源12を中心とした光軸からは、ずれて配置される。フレーム48に、孔が形成されるキャップを設け、これに回折素子17を配置することなどは、図11に示す光源ユニットと同様でよい。
第1〜第5実施形態は、順領域22と逆領域24とが直線を境にして互いに隣接する構成としたけれども、他の実施形態において順領域22と逆領域24とは、曲線に形成される境界で互いに隣接して配置されてもよい。また順領域22と逆領域24とが1つの方向に、あるいは複数の方向に交互に繰り返して配置されるときの、順領域22と逆領域24との数は、第1〜第5実施形態よりもさらに多くすることもできる。
さらに、第1〜第5実施形態では、回折素子17に形成される複数の回折領域32は、回折素子17の中心点を通りタンジェンシャル方向Xに延びる直線を境に対称な形状に形成されるものとした。ただし他の実施形態において、回折素子17に形成される複数の回折領域32は、線対称、面対称、または点対称などの形状でなくてもよい。
他の実施形態において、制御駆動部は、フォーカスエラー検出領域21からの出力信号に基づいて、ビームサイズ法によってフォーカスエラー信号を生成する構成とすることもできる。これによって、フォーカスエラーをたとえば差動プッシュプル法によって検出する場合に比べて、フォーカスエラーを検出するための受光領域20を小さく設定することが可能となる。したがって、光ピックアップ装置10を小形化することが可能となる。
回折素子17において、1つの方向または複数の所定方向に繰り返される。順領域22および逆領域24の所定方向の寸法を「幅寸法」と称すると、幅寸法が前記範囲を超えて大きければ大きいほど、異物の陰影33が回折素子17に投影されたときの同極性の領域の同期の精度が低くなる。
また、たとえば所定方向がラジアル方向Yに一致する場合などには、異物が順領域22と逆領域24との両方にまたがる可能性が低減する場合もある。前記幅寸法が前記範囲よりも小さく、小さくなれば小さくなるほど、回折素子17の製造が困難になる。また回折素子17によって集光するときの集光の精度が低下する場合もある。
本発明において回折素子17に形成される複数の分割線は、交互に配置される順領域22または逆領域24を形成する。回折素子17に形成される複数の分割線およびこれによって形成される複数の回折領域32は、第1〜第5実施形態に示した形状に限定されるものではない。たとえば第3実施形態に類似する他の実施形態として、第6および第7分割線s6,s7のそれぞれによって形成される矩形の形状は、さらにタンジェンシャル方向Xに長く形成され、第1および第3分割線s1,s3の少なくともいずれか一方に到達する形状に定められてもよい。
差動プッシュプル法によって対物レンズ13を制御および駆動し、ラジアルエラーを補正するには、受光素子16に、互いに独立して信号を出力することのできる複数の受光領域20が必要となる。複数の受光領域20に光を入射させるときに、回折素子17に複数の回折領域32を形成することによって、受光素子16における受光領域20の設計の自由度を高くすることができ、これによって±1次回折光を利用することもできる。したがって、光ピックアップ装置10の小形化を図ることができる。
しかし、受光素子16において受光領域20の個数が多くなれば多くなるほど、またこれに対応して回折素子17において回折領域32の個数が多くなれば多くなるほど、異物の陰影33が影響する領域と影響しない領域とが現れる。すなわち、異物の陰影33の回折素子17上における位置の差異が、互いに異なる回折領域32による光の回折を介して、異なる複数の受光領域20に反映されることとなる。したがって異物の陰影33が経時的に変位する場合に、複数の受光領域20によって検出される検出信号にも、経時的な変化が生じる。
このように、プッシュプル信号DPPとして算出される信号に振動が生じてしまうという現象は、差動プッシュプル法を利用することによる光ピックアップ装置10の小型化に付随して生じるものであり、受光素子16における受光領域20の設計の自由度を高くすることに付随する現象でもある。前述した複数の実施形態によってプッシュプル信号DPPの振動を防止することは、光ピックアップ装置10の小型化に貢献するものである。