しかしながら、上述の従来技術においては、以下のような問題点がある。拡管成形の際、成形管2に瞬発的な電磁力を作用させるとき、同時にコイル11の導線11aには、導線11a内に流れる電流とコイル11自身が形成する磁束密度との相互作用(フレミングの左手の法則)により、中立軸に向かう径方向(図7の矢印31で示す向き)の電磁力(向心力)が作用する。
コイル11の隣接する導線11aの間を例えば樹脂11bで絶縁していない場合、拡管成形の際に成形管2に瞬発的な電磁力を作用させると、図7の矢印31で示す向きの電磁力(向心力)によって導線11a同士が接触し、導通する虞がある。コイル11は、導通が起こると同時にスパークし、弾くように大きく変形し、破損する。
また、コイル11の隣接する導線11a間を樹脂11bで絶縁している場合でも、拡管成形の際に成形管2に瞬発的な電磁力を作用させると、図7の矢印31で示す向きの電磁力(向心力)によって樹脂が圧壊又は剥離を起こす等の原因で絶縁破壊することがある。この結果、導線11a同士が接触し、コイル11は、導通が起こると同時にスパークし、弾くように大きく変形し、破損することがある。また、コイル11が破損しなくても、変形すること等により成形管2の成形精度に影響する虞がある。更に、上記特許文献1及び2の電磁成形コイルは、導電体金属からなる芯材の周囲に樹脂で被覆された導線を巻回して構成され、芯材と導線との間には、これらに比して剛性が小さな絶縁性樹脂が挟み込まれる構成である。この場合、図8に示すように、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間の境界領域には、更に、剪断力(図8の矢印32で示す向き)が作用し、剪断力によって導線11aの周囲の絶縁性樹脂11bが圧壊又は剥離することもある。
本願発明者等は、上記従来技術の問題点を解決すべく、特許文献3において、成形管を拡管する場合には電磁コイルの内側に導電体を配置し、成形管を縮管する場合には電磁コイルの外側に筒状の導電体を配置した電磁成形コイルを提案した。図8は、本願発明者等が特許文献3で開示した電磁成形コイル1により、成形管2を拡管する場合を示す模式図である。図8に示すように、電磁コイル1の外側に導電体(芯材10)を配置することにより、本願発明者等は、電磁コイル1に電磁力(向心力)を打ち消す(図8の矢印34の)方向の電磁力(遠心力)を作用させ、電磁成形コイルの変形及び破損を防止する技術を提案した。
ところで、特許文献3に開示された技術は、電磁成形コイルの変形及び破損を構造面から改善するものであるが、瞬発的に大きな電磁力が作用する状態で繰り返し使用される電磁成形コイルにおいて、電磁成形コイルの寿命は成形管の加工コストに大きく影響する。しかしながら、上記特許文献1乃至3には、電磁成形コイルの寿命を定量的に把握する手法は開示されていない。
また、上述の如く、芯材と導線との間に樹脂が介在する構成の電磁成形コイルにおいては、変形及び破損は、芯材と絶縁性樹脂との境界領域に電磁力(向心力)及び剪断力が作用して、外部から視認できない領域に発生する。従って、電磁成形コイルの寿命を把握するためには、導線を被覆している絶縁性樹脂の損傷度合いを簡易X線計測又は磁場計測等によって計測する必要があり、計測方法が煩雑である。また、簡易X線計測又は磁場計測等による計測は、微小な損傷を直接的に計測する方法ではないため、計測結果に基づいて電磁成形コイルの寿命を十分高い精度で診断することができない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、導線周囲の絶縁性樹脂の損傷度合いを定量的に把握することができる電磁成形コイルを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、導線周囲の絶縁性樹脂の損傷度合いに基づいて電磁成形コイルの寿命を高い精度で診断し、成形管の加工に使用する電磁成形コイルの無駄な製造を減らして成形管の加工コストを低減することができる電磁成形コイルの成形可能寿命診断方法を提供することにある。
本発明に係る電磁成形コイルは、芯材と、この芯材に接してその周囲に設けられ隣接する導線間が樹脂で被覆されて絶縁された電磁コイルと、を有する電磁成形コイルにおいて、前記芯材と前記電磁コイルとの境界領域にセンサが設けられ、このセンサによって前記芯材と前記電磁コイルの樹脂との間に発生する剪断歪みを測定することを特徴とする。
この場合、筒状の被成形体を前記電磁コイルの外側に電磁コイルを取り囲むように配置し、前記電磁コイルへの通電により前記被成形体を拡管することができる。
本発明に係る他の電磁成形コイルは、筒状の芯材と、この芯材に接してその内側に設けられ隣接する導線間が樹脂で被覆されて絶縁された電磁コイルと、を有する電磁成形コイルにおいて、前記芯材と前記電磁コイルとの境界領域にセンサが設けられ、このセンサによって前記芯材と前記電磁コイルの樹脂との間に発生する剪断歪みを測定することを特徴とする。
この場合においては、筒状の被成形体を前記電磁コイルの内側に配置し、前記電磁成形コイルへの通電により前記被成形体を縮管することができる。
上述のセンサは、例えば歪みゲージ又はピエゾ素子である。
上述の電磁コイルの導線間を絶縁する樹脂は、例えば導線の周囲に巻回されたガラスクロステープに絶縁性樹脂を含浸させて硬化させたものである
また、前記芯材は、例えば導電体である。
本発明に係る電磁成形コイルの成形可能寿命診断方法は、上述の電磁成形コイルを使用し、前記センサが検出した前記剪断歪みを予め計測された成形回数と剪断歪みとの関係に適用し、前記電磁成形コイルによる成形可能寿命を予測することを特徴とする。
本発明の電磁成形コイルは、芯材と電磁コイルとの境界領域にセンサが設けられ、このセンサによって芯材と電磁コイルの樹脂との間に発生する剪断歪みを検出するように構成されている。従って、本発明の電磁成形コイルは、導線周囲の剪断歪みを直接的に計測して、絶縁性樹脂の損傷度合いを定量的に把握することができる。
本発明の電磁成形コイルの成形可能寿命診断方法によれば、センサが検出した剪断歪みを予め計測された成形回数と剪断歪みとの関係に適用すれば、電磁成形コイルによる成形可能寿命を高い精度で診断することができる。従って、本発明によれば、電磁成形コイルを必要な量だけ製造すればよく、電磁成形コイルの無駄な製造が防止されるため、成形管の加工コストを低減することができる。
次に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電磁成形コイルによる電磁拡管成形を模式的に示す縦断面図、図2は本発明の実施形態に係る電磁成形コイルの成形可能寿命診断に使用する成形回数と剪断歪みとの関係を示す図、図3は電磁成形コイルの芯材及び電磁コイルの構成を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の電磁成形コイル1は、芯材10の周囲に接して電磁コイル11が設けられている。電磁コイル11は、例えば断面矩形の導線11aが巻回され、更に隣接する導線11a間が樹脂11bで被覆されて絶縁されて形成されている。また、芯材10と電磁コイルを被覆している絶縁性樹脂11bとの境界領域に歪み検出センサ12が設けられている。本実施形態においては、電磁成形コイル1を取り囲むようにして導電性の材料からなる筒状の成形管2が配置され、電磁成形コイル1への通電によって成形管2を拡管する。
芯材10の材料としては、例えばアルミニウム、銅、非磁性のステンレス鋼、チタン又は鋼等の良導電性材料が好適である。詳細は後述するが、芯材10を導電性材料によって構成することにより、電磁コイル11に作用する電磁力を低減することができる。なお、芯材10の材料は導電性材料に限らず、樹脂等であってもよい。本第1実施形態においては、芯材10は例えば円筒状又は円柱状であり、電磁力で変形しない程度に高強度及び高剛性を有するものを使用することが好ましい。例えば、芯材10が成形管と同一の材質からなり、形状が円筒状である場合には、電磁成形コイル1の強度確保の点から、芯材10の肉厚は例えば成形管2の肉厚よりも大きいことが好ましい。
電磁コイル11の隣接する導線11a間を被覆している樹脂11bは、例えばガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維に絶縁性の樹脂が含浸されたものである。樹脂含浸性繊維としてガラスクロステープを使用する場合には、ガラスクロステープの厚さは例えば0.25mmの市販サイズである。
芯材10と絶縁性樹脂11bとの間の境界領域に設けられた歪み検出センサ12は、例えば歪みゲージ又はピエゾ素子であり、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを検出する。図1に示すように、歪み検出センサ12は、例えばリード線13を介して制御部14に接続されており、歪み検出センサ12による検出信号は、リード線13を介して制御部14に送信され、制御部14は受信した検出信号を解析して測定結果として表示記録装置15に表示する。歪み検出センサ12は、例えば芯材10と絶縁性樹脂11bとの間において、電磁成形コイルが繰り返し使用された場合に絶縁性樹脂の損傷が顕著に発生する1箇所以上に設けられている。
次に、本実施形態の電磁成形コイル1の製造方法を説明する。本実施形態の電磁成形コイルを製造する場合には、まず、図3に示すように芯材10の周囲に例えばガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維を例えばハーフラップ巻きにより巻回して、内側樹脂含浸層110aを形成する。本実施形態においては、この内側樹脂含浸層110aを形成する前に、芯材10に歪み検出センサ12を固定しておく。固定の方法としては、例えば歪みゲージ若しくはピエゾ素子等の歪み検出センサ12に接着剤を塗布して芯材10に接着する(図1)か、又は予め芯材10の外周面に歪み検出センサ12を埋設するための溝を設け(図4)、この溝に歪み検出センサ12を嵌め込むか、若しくは溝の底部に歪み検出センサ12を接着すればよく、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間の剪断歪みを計測できる範囲において固定方法は限定されない。このとき、歪み検出センサ12によって検出する剪断歪みの計測方向を、後述する予め計測された剪断歪みの計測方向と一致させて、歪み計測センサ12を芯材10に固定する。歪み検出センサ12として歪みゲージを使用する場合には、例えば短軸計測方式の歪みゲージ(例えば、東京測器研究所製、型名:GFLA−3−50)を使用すればよい。剪断歪みの計測方向は、例えば芯材10の軸方向(図1の矢印Fzで示す向き)である。
次に、内側樹脂含浸層110aの周囲に導線11aを巻回していくが、予め導線11aの周囲にガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維110b等を例えばハーフラップ巻きにより巻回して被覆しておく。これにより、内側樹脂含浸層110aの周囲に導線11aを巻回すると、隣接する導線11a間には、樹脂含浸性繊維110bが介在する。導線11aの巻回が終了したら、更に外側にガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維を巻回し、外側樹脂含浸層110cを形成する。最後に、外側樹脂含浸層110cの外側から樹脂含浸性繊維の全体に絶縁性樹脂を含浸させる。これにより、芯材10と電磁コイル11との間、及び隣接する電磁コイル11の導線11a間が絶縁性樹脂11bによって絶縁された状態で、本実施形態の電磁成形コイル1が製造される。歪み検出センサ12が、芯材10に固定され、その上から内側樹脂含浸層110aが形成され、更に内側樹脂含浸層110aに絶縁性樹脂が含浸されることにより、歪みセンサ12は芯材10と絶縁性樹脂11bとの両方に、夫々対向するように固定され、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを検出することができる。
次に、本実施形態の電磁成形コイルの動作を説明する。コイル状に巻回された導線11aにパルス電圧を印加することによって導線11aに瞬発的な電流を流すと、この電流によって発生する電磁場の変化により、導電体である成形管2に誘導電流が発生し、図1に示すように、この誘導電流と電磁場との相互作用によって成形管2に対し、成形管2を外側に押し広げる向き(図1の矢印33で示す向き)に瞬発的な電磁力が作用する。この瞬発的な電磁力によって成形管2が拡管成形される。
このとき、コイル11の導線11aには、導線11a内に流れる電流とコイル11自身が形成する磁束密度との相互作用(フレミングの左手の法則)により、成形管2に作用する電磁力と逆向き(図1の矢印31で示す向き)に電磁力(向心力)が作用する。更に、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間の境界領域には剪断力(図1の矢印32で示す向き)が作用する。本実施形態においては、電磁コイル11の内側に配置された芯材10が導電体から構成されていることにより、導線11aにはコイル11の外周に向かう向き(図1の矢印34で示す向き)にも電磁力(遠心力)が作用する。これらの電磁力(向心力及び遠心力)及び剪断力が作用した結果、導線11aを被覆している絶縁性樹脂11bは、芯材10の軸方向(図1の矢印Fzで示す向き)に剪断歪みを生じる。なお、芯材10が導電体によって構成されている場合には、導線11aには互いに打ち消し合う方向に向心力と遠心力とが同時に作用し、結果として絶縁性樹脂11bに発生する剪断歪みを低減することができる。他方、芯材10が、例えば絶縁性樹脂等の導電性を有しない材質からなる場合には、導線11aには電磁力として遠心力は作用しないが、向心力及び剪断力が作用する結果として、導線11aを被覆している絶縁性樹脂11bは、芯材10の軸方向(図1の矢印Fzで示す向き)に剪断歪みを生じる。
電磁成形コイル1による成形回数が増えた場合、コイル11に作用する電磁力(向心力)により、絶縁性樹脂11bは芯材10と導線11bとの間に挟まれた状態で押圧されて変形が進行し、発生する剪断歪みは次第に増大していく。そして、剪断歪みが図2に示す所定の限界値γbを超えた場合、絶縁性樹脂11bは圧壊又は剥離する。その結果、導線11a同士が接触し、コイル11は、導通が起こると同時にスパークし、弾くように大きく変形し、破損する。
本実施形態の電磁成形コイル1においては、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間の境界領域に設けられた歪み検出センサ12により、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に生じる剪断歪みを検出する。歪み検出センサ12が歪みゲージである場合は、絶縁性樹脂11bが芯材10に対して剪断方向に歪むと、歪みゲージは絶縁性樹脂11bの剪断方向の歪みに追従して剪断歪みを生じ、歪みゲージの電気抵抗値は線形的に変化する。この電気抵抗値の変化を例えばリード線13を介して制御部14で受信するように構成すれば、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを定量的に測定することができる。
歪み検出センサ12が例えばピエゾ(圧電)素子である場合には、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを以下の如く測定する。即ち、図5(a)に示すように、ピエゾ素子12aの下面に電極12bを設け、ピエゾ素子12aの上下両面にわたる直列接続の電極12cを設ける。2個の電極12b及び12cを夫々端子A及びBを介してリード線13に接続する。ピエゾ素子12は図5(a)の左右方向に分極させておく。そして、電極12bをピエゾ素子の下面側で芯材10側に固定し、電極12cをピエゾ素子12aの上面側で絶縁性樹脂11bに固定する。この状態で芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に図5(a)の矢印Sの方向に剪断歪みが発生すると、電極12cは電極12bに対して図5の右方向に移動する。従って、電極12bの左側に位置するピエゾ素子12aは縮み、電極12の右側に位置するピエゾ素子12aは伸びる(図5(b))。従って、ピエゾ素子12aは圧電効果により分極し、電極12bと電極12cとの間に極性が異なる電圧を発生する。これにより、端子A、Bを介して歪み検出センサ12による検出信号が、リード線13を介して制御部14に送信される。このように、歪み検出12をピエゾ素子で構成した場合においても、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを定量的に測定することができる。制御部14は、受信した検出信号を解析して計測結果として例えば表示記録装置15に表示する。
次に、本発明の第1実施形態に係る電磁成形コイルによる電磁成形コイルの成型可能寿命診断方法について説明する。本発明においては、上述の歪み検出センサ12による剪断歪みの計測結果を、図2に示す予め計測された成形回数と剪断歪みとの関係に適用する。図2に示すように、電磁成形コイル1の剪断歪みγは、成形回数nの増加に伴って増大する。そして、剪断歪みγが閾値γbを超えると、絶縁性樹脂11bは容易に圧壊されるようになり、コイル11のスパークによって大きく変形し、破損する。本実施形態においては、絶縁性樹脂11bの安全率を考慮し、図2に示すように剪断歪みの安全値の上限値γaを設け、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みγがγa乃至γbである範囲を限界ゾーンとする。そして、剪断歪みγが安全値の上限値γaに達するときの成形回数naを、成形可能寿命と定める。即ち、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みγが例えば図2のγ1である場合、成形回数がn1からnaに達するまでの回数Δn1を電磁成形コイル1に残された成形可能回数とし、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みγが例えば図2のγ2である場合、成形回数がn2からnaに達するまでの回数Δn2を電磁成形コイル1に残された成形可能回数とする。
このように、本実施形態の電磁成形コイルによれば、芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に設けた歪み検出センサ12を使用して芯材10と絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを直接的に測定することにより、絶縁性樹脂11bの損傷度合いを剪断歪みγとして定量的に計測することができる。そして、剪断歪みγを1回測定するだけで、剪断歪みγの計測値を予め計測された成形回数と剪断歪みとの関係に適用すれば、電磁成形コイルによる成形可能寿命を高い精度で診断することができる。従って、わざわざ簡易X線計測又は磁場計測等を使用して絶縁性樹脂の損傷度合いを計測しなくても、絶縁性樹脂の微小な歪みを高い精度で検出することができ、実用性が高い。
また、従来の簡易X線計測及び磁場計測による損傷度の計測に比して高精度な測定が実現され、電磁成形コイルの成形可能寿命を正確に予測することが可能であるため、成形管の加工にあたり、電磁成形コイルを不必要に多く準備しなくてもよく、成形管の加工コストの低減に寄与する。
なお、本実施形態において、導線11aは断面矩形であるが、導線11aは断面が円形等の他の形状であってもよく、管状であってもよい。また、絶縁性樹脂11bは、芯材10の周囲及び導線11aの周囲の夫々に対して、別々に巻回したガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維に樹脂を含浸させることによって一体化されているが、隣接する導線11a間を絶縁し、一体化された状態で軸芯10との間に発生する剪断歪みを歪み検出センサ12で検出することができれば、絶縁性樹脂10bは最初から一体的に形成されてもよい。更に、歪み検出センサ12としては、歪みゲージ及びピエゾ素子に限らず、芯材10と導線11a周囲の絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを検出することが可能なものであればよく、短軸計測方式のものに限らず、2軸以上の方向において剪断歪みを計測する方式のものを使用してもよい。更にまた、剪断歪みを計測する形態のセンサでなく、例えば剪断応力を計測することができるセンサを使用しても、絶縁性樹脂の横弾性率Gとτ=G×γ(τ:剪断応力)の式により、剪断歪みを求めて、求めた剪断歪みの値から電磁成形コイルの成形可能寿命を正確に診断することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る電磁成形コイルについて説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る電磁成形コイルによる電磁縮管成形を模式的に示す縦断面図である。第1実施形態においては、円筒状又は円柱状の芯材の外側に導線を巻回して電磁成形コイルを形成したが、本第2実施形態においては、円筒状の芯材10aの内側に接するように、隣接する導線11a間が樹脂11bで被覆されて絶縁された電磁コイル11が配置されている。本実施形態においては、電磁成形コイル1の内側には、導電性材料からなる成形管2が配置され、電磁成形コイル1への通電によって成形管6を縮管する。
芯材10aの材料としては、例えばアルミニウム、銅、非磁性のステンレス鋼、チタン又は鋼等の良導電性材料が好適であり、電磁力で変形しない程度に高強度及び高剛性を有するものを使用することが好ましい。本実施形態において、芯材10aは例えば円筒状であり、芯材10aが成形管と同一の材質からなる場合、電磁成形コイル1の強度確保の点から、芯材10aの肉厚は成形管2の肉厚よりも大きいことが好ましい。なお、芯材10aの材料は導電性材料に限らず、樹脂等であってもよい。
電磁コイル11の隣接する導線11a間を被覆している樹脂11bは、例えばガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維に絶縁性の樹脂が含浸されたものである。樹脂含浸性繊維としてガラスクロステープを使用する場合には、ガラスクロステープの厚さは例えば0.25mmの市販サイズである。
芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間の境界領域に設けられた歪み検出センサ12は、例えば歪みゲージ又はピエゾ素子であり、第1実施形態と同様に、芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを検出する。図6に示すように、歪み検出センサ12は、例えばリード線13を介して制御部14に接続されており、歪み検出センサ12による検出信号は、リード線13を介して制御部14に送信され、制御部14は受信した検出信号を解析して測定結果として表示記録装置15に表示する。第1実施形態と同様に、歪み検出センサ12は、例えば芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間において、電磁成形コイルが繰り返し使用された場合に絶縁性樹脂の損傷が顕著に発生する1箇所以上に設けられている。
次に、本実施形態の電磁成形コイル1の製造方法を説明する。本実施形態においては、まず、芯材10aの内周面に沿って歪み測定センサ12を固定しておく。固定の方法としては、第1実施形態と同様に、例えば歪みゲージ若しくはピエゾ素子等の歪み検出センサ12に接着剤を塗布して芯材10aに接着するか、又は予め芯材10aの外周面に歪み検出センサ12を埋設するための溝を設け、この溝に歪み検出センサ12を埋設する。但し、固定方法はこれらに限定されない。このとき、歪み検出センサ12によって検出する剪断歪みの計測方向を、後述する予め計測された剪断歪みの計測方向と一致させて、歪み計測センサ12を芯材10aに固定する。歪み検出センサ12として歪みゲージを使用する場合には、例えば短軸計測方式の歪みゲージ(例えば、東京測器研究所製、型名:GFLA−3−50)を使用すればよい。剪断歪みの計測方向は、例えば芯材10aの軸方向(図6の矢印Fzで示す向き)である。
次に、円筒状の芯材10aの内部にコイル状に巻回した導線11aを挿入するが、予め導線11aの周囲にガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維等を例えばハーフラップ巻きにより巻回して被覆しておく。これにより、導線11aをコイル状に巻回すると、隣接する導線11a間には、樹脂含浸性繊維が介在する。このとき、導線11aの周囲への樹脂含浸性繊維の巻き数により、電磁コイル11を挿入したときの導線11aと芯材10a内面との間隔を調整する。電磁コイル11を芯材10aの内部に挿入したら、最後に、コイルの内側から樹脂含浸性繊維に絶縁性樹脂を含浸させる。これにより、芯材10aと電磁コイル11との間、及び隣接する電磁コイル11の導線11a間が絶縁性樹脂11bによって絶縁された状態で、本実施形態の電磁成形コイル1が製造される。歪み検出センサ12が、芯材10aに固定され、その上から周囲を樹脂含浸性繊維で被覆した導線11aに押圧された状態で樹脂含浸性繊維に絶縁性樹脂を含浸させることにより、歪みセンサ12は芯材10aと絶縁性樹脂11bとの両方に、夫々対向するように固定され、芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを検出することができる。
次に、本実施形態の電磁成形コイルの動作を説明する。コイル状に巻回された導線11aにパルス電圧を印加することによって導線11aに瞬発的な電流を流すと、この電流によって発生する電磁場の変化により、導電体である成形管2に誘導電流が発生し、図6に示すように、この誘導電流と電磁場との相互作用によって成形管2に対し、成形管2を内側に押し縮める向き(図6の矢印33で示す向き)に瞬発的な電磁力が作用する。この瞬発的な電磁力によって成形管2が縮管成形される。
このとき、コイル11の導線11aには、導線11a内に流れる電流とコイル11自身が形成する磁束密度との相互作用(フレミングの左手の法則)により、成形管2に作用する電磁力と逆向き(図6の矢印31で示す向き)に電磁力(遠心力)が作用する。更に、芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間の境界領域には剪断力(図6の矢印32で示す向き)が作用する。また、本実施形態においては、コイル11の外側に導電性を有する芯材10aが配置されていることにより、導線11aにはコイル11の内周に向かう向き(図6の矢印34で示す向き)にも電磁力(向心力)が作用する。これらの電磁力(向心力及び遠心力)及び剪断力が作用した結果、導線11aを被覆している絶縁性樹脂11bは、コイル11の軸方向(図6の矢印Fzで示す向き)に剪断歪みを生じる。なお、芯材10aが導電体である場合には、導線11aには互いに打ち消し合う方向に向心力と遠心力とが同時に作用し、結果として絶縁性樹脂11bに発生する剪断歪みを低減することができる。他方、芯材10aが、例えば絶縁性樹脂等の導電性を有しない材質からなる場合には、導線11aには電磁力として向心力は作用せず、遠心力及び剪断力が作用する結果として、導線11aを被覆している絶縁性樹脂11bは、コイル軸方向(図6の矢印Fzで示す向き)に剪断歪みを生じる。
この剪断歪みは、電磁成形コイル1による成形回数の増加により増大し、剪断歪みが所定の限界値を超えた場合、絶縁性樹脂11bは圧壊又は剥離する。その結果、導線11a同士が接触し、コイル11は、導通が起こると同時にスパークし、弾くように大きく変形し、破損する。
本実施形態の電磁成形コイル1においては、第1実施形態と同様に、芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間の境界領域に設けられた歪み検出センサ12により、芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを定量的に測定することができる。
次に、本第2実施形態に係る電磁成形コイルによる電磁成形コイルの成型可能寿命診断方法について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みを、図2に示す予め計測された成形回数nと剪断歪みγとの関係に適用する。本実施形態においては、成形管2を縮径加工するため、電磁成形コイルによる縮径加工時の成形回数nと剪断歪みγとの関係を予め準備する。歪み計測センサ12が検出した剪断歪みγを図2の成形回数nと剪断歪みγとの関係に適用し、電磁成形コイル1に残された成形可能回数を診断する方法については、第1実施形態と同様である。即ち、絶縁性樹脂11bの安全率を考慮し、剪断歪みの安全値の上限値γaを設け、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みγがγaから剪断歪みの限界値γbまでの範囲を限界ゾーンとする。そして、剪断歪みγが安全値の上限値γaに達するときの成形回数naを、成形可能寿命と定めた上で、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みγが例えば図2のγ1である場合、成形回数がn1からnaに達するまでの回数Δn1を電磁成形コイル1に残された成形可能回数とし、歪み検出センサ12が検出した剪断歪みγが例えば図2のγ2である場合、成形回数がn2からnaに達するまでの回数Δn2を電磁成形コイル1に残された成形可能回数とする。
このように、本実施形態の電磁成形コイルにおいても、芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間に設けた歪み検出センサ12を使用して芯材10aと絶縁性樹脂11bとの間に発生する剪断歪みを直接的に測定することにより、絶縁性樹脂11bの損傷度合いを剪断歪みγとして定量的に計測することができ、縮径加工する形態の電磁成形コイルにおいても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態においても、導線11aは断面矩形に限らず、断面円形又は管状であってもよい。また、絶縁性樹脂11bは、導線11aの周囲に巻回したガラスクロステープ等の樹脂含浸性繊維に樹脂を含浸させることによって一体化されているが、本発明においては、隣接する導線11a間を絶縁し、一体化された状態で軸芯10aとの間に発生する剪断歪みを歪み検出センサ12で検出することができればよい。更に、歪み検出センサ12としては、歪みゲージ及びピエゾ素子に限らず、芯材10aと導線11a周囲の絶縁性樹脂11bとの間に作用する剪断歪みを計測することが可能なものであればよく、短軸計測方式のものに限らず、2軸以上の方向において剪断歪みを計測する方式のものを使用してもよい。更にまた、剪断歪みを計測する形態のセンサでなく、例えば剪断応力を計測することができるセンサを使用しても、絶縁性樹脂の横弾性率Gとτ=G×γ(τ:剪断応力)の式により、剪断歪みを求めて、求めた剪断歪みの値から電磁成形コイルの成形可能寿命を正確に診断することができる。
以上説明してきた本発明の実施形態において、芯材10、10aは、断面円形であり、円管状の成形管2を拡管又は縮管するものであるが、本発明は円管状の成形管2を加工する場合に限らず、成形管2の断面形状が円形以外の、例えば矩形である場合にも適用することができる。