JP5183635B2 - Pvl産生黄色ブドウ球菌のインビトロにおける診断方法 - Google Patents

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Description

本発明はブドウ球菌属及びStaphylococcus aureus種(黄色ブドウ球菌)に属するバクテリアであって、Panton-Valentineロイコシジン(PVL)を産生するものの存在に関連する感染症の分野に関する。より詳しくは、本発明の目的は、黄色ブドウ球菌を含みうる生物試料中において、ルーチンの免疫学的検査を使用して、PVLを産生する黄色ブドウ球菌を決定する方法である。
PVLを産生する黄色ブドウ球菌による感染症は、基本的にコミュニティ感染症の原因となる。黄色ブドウ球菌は多様な病原性因子を発現し、その中でPanton-Valentineロイコシジン(PVL)は組織損傷を促進する細胞毒素である(文献1)。PVLは、世界中に広がっているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA MRSA)株に獲得された、コミュニティに一般に存在する毒素である(文献2)。
PVL、及び他のロイコシジンも、synergohymenotropic毒素の一系統に属するタンパク質である。この系統の全ての毒素は、S及びFと表示される相乗作用を有する2つのポリペプチド構成要素で構成される。PVLは、2つの共に転写される隣接する遺伝子、lukF−PVとlukS−PVにコードされる。バクテリアの溶菌があろうとなかろうと細胞外の媒体に排出されるので、PVLはエキソトキシンである。エンドトキシンまたはリポ多糖体は、それらを分泌するグラム陰性(Gram−)菌が破壊された時のみ放出されるので、それらとは違う。
PVL産生黄色ブドウ球菌はグラム陽性(Gram+)菌であり、吹出物、膿瘍、蜂巣炎と筋炎タイプの皮膚の感染症または皮下の感染症、骨関節の感染症、更には約70%の死亡率である主に小児及び若年成人を襲う重症の壊死性肺炎のような特異的なヒト感染症に関連する。
病因論は完全にはわかっていないが、証拠のいくつかの傾向はPVLがPVL産生黄色ブドウ球菌による感染症の生理病理学において重要な役割を果たすことを示唆する:
i)PVLを合成する黄色ブドウ球菌の分離株と感染症の臨床症状の強い疫学的な関連、
ii)高頻度の白血球減少症(PVLの知られている影響)、
iii)ウサギのPVLの皮内注射によって誘発される壊死に似ている、気道の壊死病斑、
iv)多形核細胞を標的とする肺におけるPVLの存在、
v)PVL産生株だけ、または精製されたPVLだけが、実験モデルで壊死性肺炎を誘発する(文献7)。
PVL産生黄色ブドウ球菌は、現在、核酸を検出する検査を使用して、特にPCRによってlukF−PVとlukS−PV遺伝子を検出することによって、検出されている。
このような検査は、それにより遺伝子が機能的であること及び/又は発現したことを確認することができないので間接的であり、特別な機器の必要性のために高価であり、あまり迅速でなく、実施が難しいという欠点がある。加えて、PCRの使用において、コンタミネーション問題が起こる可能性がある(文献3)。
また、PVLの検出は、時々、ポリクローナル抗体を使用する免疫拡散法によって実施されているが(文献4)、実施があまり容易でなく、標準化することが難しく、それはルーチンの使用のための良好なツールを構成しないので、遺伝子の検出が支持され、この技術は急速に見捨てられた。
PVL産生黄色ブドウ球菌によるいくつかの感染症の重症度のために、実施が簡単で、PVL産生黄色ブドウ球菌を検出するために、現在使用されている検査の欠点を解決する迅速な検査を利用可能にすることは、急務になっている。
特許出願EP597110Aには MRSAの検出が抗PVLモノクローナル抗体を使用するルーチンの免疫学的検査によって実施できるという事実が記載されている。しかしながら、これらの検査は上記の欠点を解決するけれども、検出の特異性は充分でない。
全ての予想に対して、出願人は今回、ルーチンの免疫学的検査を使用するPVL産生黄色ブドウ球菌の検出の特異性が、PVLを変性するために生物試料の前処理を実施することによって向上しうることを証明したが、何れかのエキソトキシンのように、PVLが温度のような物理化学的因子に影響されることは、当業者に知られていることである。
したがって、本発明の患者は、黄色ブドウ球菌に冒されやすい又は感染しやすい個体に由来する生物試料を使用する、Panton-Valentineロイコシジン(PVL)を産生する黄色ブドウ球菌のインビトロ診断の方法であり、ここで診断は、PVLを変性させるために前記生物試料を前処理するという点を特徴とするルーチンの免疫学的検査を使用するPVLの検出によって実施される。
「PVLを産生する黄色ブドウ球菌」なる表現は、PVLを産生することができる全ての黄色ブドウ球菌株、すなわち、メチシリン感受性株(別名MSSA)とメチシリン耐性株(別名MRSA)の両方を意味することを目的とする。
「黄色ブドウ球菌に冒されやすい個体」なる表現は、危険にさらされている個体を意味することを目的とし、病院スタッフのようなこの菌の健康保菌者であってもよい。「黄色ブドウ球菌に感染しやすい個体」なる表現は、黄色ブドウ球菌による感染の症状を示している患者を意味することを目的とする。
「黄色ブドウ球菌による感染」なる表現は、これらの感染症がPVL産生黄色ブドウ球菌によるものであるか又はそのような性質を有しない黄色ブドウ球菌によるものであるかを問わず、生物体でこのバクテリアの存在によって引き起こされる何らかの感染症を意味することを目的とする。このような感染症の例として、皮膚及び軟組織の化膿性の感染症、気道感染症、中枢神経系感染症、尿路感染症、噴門弁及び血管内感染症、及び筋肉及び骨の感染症を記載することができる。このような感染症及びその関連する症状は、当業者に広く知られていて、特に臨床細菌学のハンドブック(文献5)に記載されている。
「黄色ブドウ球菌に冒されやすい又は感染しやすい個体に由来する生物試料」なる表現は、これらの菌、あるいは排出されたPVLを含む何らかのサンプル、例えば膿、呼吸器からの試料、鼻の試料、尿または血液培養を意味することを目的とする。
本発明の方法で使用する生物試料は変更されていない試料であってもよく、あるいはこの試料に由来するバクテリアの培養物であってもよい。培養は、シャーレのような固体の培地上で、または培養液で実施されてもよく、培養液は前記試料と共に、あるいは、当業者に知られている方法、例えばシャーレ上のシーディングによって、前もって前記生物試料から分離される黄色ブドウ球菌のコロニーと共に、インキュベートされてもよい。それから、免疫学的検査は、直接、固形培地上において、または培養液中で実施される。一般に、関心のまたは前記試料の菌の培養は、ほぼ24時間、続けられる。培養がどうであれ、培地が、阻害濃度以下のオキサシリンとバシトラシン(bactracin)のようなPVLの多量の産生を可能にする分子の使用の有無にかかわらず、CCY媒体(カゼイン加水分解物と酵母エキス培地)のようなPVL産生の促進剤を含む点に注意される。
「免疫学的検査」なる表現は、PVLのLukF部分であろうと、PVLのLukS部分であろうと、あるいは両方部分が同時であろうと、PVLに特異的に結合することができる結合パートナーを使用する任意の免疫学的検査を意味することを目的とする。
「ルーチンの免疫学的検査」なる表現は、研究所のルーチンの仕事において広く使用される任意の免疫学的検査を意味することを目的とする。ルーチンの免疫学的検査の例として、ELISAまたは免疫クロマトグラフィー(別名、側方流動)タイプのサンドイッチ試験、及び、ポリスチレン粒子のような粒子の凝集検査を挙げることができる。これらの試験の全ては、当業者に広く知られている。サンドイッチ試験は、一つ以上の工程で、すなわち洗浄工程なしで、又は1以上の洗浄工程を有して、実施されてもよい。
PVL特異的な結合パートナーの例として、PVLに結合が可能な抗体、抗体の一部、レセプター、ミモトープ及び任意の他の分子を挙げることができる。
結合パートナー抗体は、例えば、ポリクローナル抗体かモノクローナル抗体のどちらかである。
ポリクローナル抗体はPVL、PVLの部分またはPVLペプチドによる動物の免疫化と、それに続く前記動物の血清の回収によって得ることができる。本発明の方法では、抗体は、精製されて又は未精製で用いられてもよい。ポリクローナル抗体の精製は、例えば前記動物の血清を採取し、他の血清構成成分から抗体を分離することによって、特に抗体によって認識される抗原、特定のPVL、が付けられたカラムにおける親和性クロマトグラフィーによって、実施されてもよい。
モノクローナル抗体はハイブリドーマ技術によって得ることができる。その一般の原理について以下に要約する。
第一工程において、動物、一般にはマウス(またはインビトロ免疫化における培養の細胞)は、PVL、PVLの部分またはPVLペプチドによって免疫化され、従ってこのマウスのBリンパ球は前記抗原に対して抗体を産生することができる。これらの抗体を産生するリンパ球は、その後、ハイブリドーマを産生するために、「不滅の」骨髄腫細胞(例えばマウス)と融合される。従って、得られた細胞の異種混合物を、特定の抗体を産生すること及び無制限に増殖することが可能な細胞の選抜を形成するために用いる。各ハイブリドーマはクローンの形で増殖し、それぞれがPVLを特に認識するモノクローナル抗体の産生に結果としてなる。本発明の方法では、抗体は、精製されて又は未精製で用いられてもよい。モノクローナル抗体は、上に記載されている親和性クロマトグラフィー技術に従って、特に精製することができる。
また、モノクローナル抗体は、当業者によく知られている技術を用いて、遺伝子工学によって得られる組換え抗体であってもよい。
「本発明の方法に有用な抗体断片」は、天然抗体のF(ab’)2、Fab、Fab’又はscFvタイプの断片であってPVLに特異的な結合能力を保ったものを意味する。
本発明の方法は、以下の特徴を単独で又は組合せて、実施することが好ましい:
−ルーチンの免疫学的検査はサンドイッチ法である、
−LukS−PV−またはLukF−PV−特異的結合パートナーを使用する、
−抗体断片、特にF(ab’)2断片を使用する。
2つのPVL特異的結合パートナーを使用するサンドイッチ試験において、使用は、2つのモノクローナル抗体、2つのポリクローナル抗体またはそれらの断片、あるいは、1つのモノクローナル抗体と1つのポリクローナル抗体またはそれらの断片からなってもよい。粒子凝集検査において、単一のPVL特異的結合パートナーが使用され、例えばモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のどちらかであり、断片の形であってもなくてもよい。
ある特定の実施態様によれば、免疫学的検査は、少なくとも一つの抗PVLモノクローナル抗体を使用する。
粒子凝集検査において、PVL特異的結合パートナーが、捕獲方法で使われる。サンドイッチ試験において、それらは捕獲方法と検出方法で使われる。
結合パートナーは検出試薬として使われるときに、PVL/結合パートナーの結合を明らかにするために標識化される。
「結合パートナーの標識」なる表現は、直接的にまたは間接的に検出可能なシグナルを生成することが可能な標識の付加を意味することを目的とする。これらの標識の非限定的リストは、
・西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、α‐ガラクトシダーゼまたはグルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼのような比色法、蛍光または発光によって検出可能なシグナルを生じる酵素、
・蛍光、発光又は染料化合物のような発色団、
32P、35Sまたは125Iのような放射性分子、及び
・アレクサまたはフィコシアニンのような蛍光分子
を含む。
また、間接的な検出システムを使用してもよく、例えば抗リガンドと反応可能なリガンドである。リガンド/抗リガンドの組は当業者にとって周知であり、こういう場合では、例えば、以下の組である:ビオチン/ストレプトアビジン、ハプテン/抗体、抗原/抗体、ペプチド/抗体、糖/レクチン、ポリヌクレオチド/ポリヌクレオチドに相補的な配列。この場合、結合パートナーを担持するのは、リガンドである。抗リガンドは、前の段落に記載されている標識を、直接に介して検出されてもよく、またはリガンド/抗リガンドを介してそれ自身が検出されてもよい。
特定の条件下では、これらの間接的な検出システムは、シグナルの増幅を生じることがある。このシグナル増幅技術は当業者によく知られており、J.Histochem.Cytochem. 45:481-491, 1997(文献6)の論文を参照してもよい。
使用する標識のタイプに従い、当業者は、標識を視覚化するための試薬を添加する。
「競合」法の場合、PVLは、結合パートナーのために上に記載したとおり標識される。
そして、それが捕獲方法で使われる場合、PVL特異的結合パートナーは当業者に知られている方法を使用して固相に直接的または間接的に固定される。
本発明の方法で使用する試料の前処理は、当業者に広く知られている任意のタンパク質変性処理であってもよい。この処理は、例えばpHの変更によって、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはグアニジウムイオンのような化学変性剤を用いて、あるいは、変性するタンパク質を含む試料を加熱することによって、実施することができる。
ある実施態様によれば、前記試料の前処理は60と100℃の間の温度で加熱することを含む。好ましくは、加熱は80と100℃の間、より好ましくは90と100℃の間の温度で実施される。
当然ながら、ルーチンの免疫学的検査が前記試料に実施される場合には、試料の前処理は試料自体に適用され、あるいは免疫学的検査が培養物に実施される場合には、それは前記培養物に適用される。
また、本発明の方法は、前記生物試料中で黄色ブドウ球菌の存在を確認する追加の工程を含んでもよく、この工程は前もってまたは付随して実施することが可能である。これらのバクテリアを検出する方法は当業者に知られており、例として出願人のうちの1人により出願された特許出願WO02/079486の、このバクテリアに特異的な発色剤を含む培地の使用をあげることができる。
同様に、本発明の方法は、前記生物試料に存在する黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性(MRSA)菌であるかメチシリン感受性(MSSA)菌であるかを決定することを含む追加の工程を含んでもよく、このことにより本発明の特定の実施態様を構成する。
メチシリン感受性(MRSAまたはMSSA)を決定するこの工程は、例えば、MRSAだけによって発現されるタンパク質であるPBP2のタンパク質に特異的な結合パートナーを使用する免疫学的検査、核酸検出検査、あるいはオキサシリンまたはセファロスポリン(例えばセホキシチン)のような抗生物質を含む培地を使用する微生物学的試験法のような当業者に広く知られている方法によって、実施することができる。
本発明は、非限定的例として示される以下の実施例によって、更に、添付の図1から3によって、より明らかに理解される:
PVLを産生する(PVL+)か、またはPVLを産生しない(PVL−)黄色ブドウ球菌株を含む生物試料における、PVLの検出用のELISA試験の結果(株ごとのOD)を示すグラフ。 PVLを産生する(PVL+)か、またはPVLを産生しない(PVL−)黄色ブドウ球菌株を含む生物試料であって、PVLを変性させるために加熱によって前処理された前記試料における、PVL検出用のELISA試験の結果(株ごとのOD)を示すグラフ。 PVLを産生する(LY990084、A92007、LUG855)か、またはPVLを産生しない(LY990333、LY991321、RN6911)黄色ブドウ球菌株を含む生物試料における、PVL検出用のELISA試験の結果(株ごとのOD)を示すグラフであって、前記試料はPVLを変性させるために加熱によって前処理されたもの(処理1)、化学変性剤を使用して前処理されたもの(処理2)、または変性剤の使用と加熱によって前処理されたもの(処理3)であり、状態0は前処理なしの試料に対応する。
実施例1:抗PVL抗体の調製
1.組換え体PVLの作出
それぞれ配列番号1及び配列番号2のLukS His-TagとLukF His-Tagタンパク質は、大腸菌株BL21star(DE3)pLys(インビトロゲン)の形質転換に用いられるベクターpIVEX2.4d(ロシュ)を使用して、37℃2リットルでの振盪培養の間に作成し、1mMのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド、Eurobio)と共に37℃で3時間インキュベートし、そして更に5時間培養した。培養は、6つの異なるチューブに分配する。
各細胞ペレットは、20分間、4000gの遠心分離及び上清の除去によって回収する。組換えタンパク質は、供給元(キアゲン)の推奨に従ってQIAexpressionistキットを使用して精製する。ペレットは4℃の20mlの非変性細胞溶解溶液(キアゲン)で溶解し、それから−80℃で一晩保存した。解凍後、Vibracell (Bioblock)を使用する100ワット、6秒サイクルの2分間の音波破砕の前に、細胞溶解を4℃で1時間、1mg/mlのリゾチーム(Eurobio)による処理を使用して続ける。
溶液は、4℃で30分間、10000gで遠心する。上清は4℃で3時間の穏やかな循環振動で、5mlのアガロース-NiNTA(キアゲン)と接触させられる。それから、アガロースを20mlのカラム(Biorad)に入れる。カラムを200mlの洗浄バッファー(キアゲン)で洗浄し、それから250mMのイミダゾールを溶出バッファーとして溶出させる。この精製は、monoSPイオン交換カラム(アマシャム)による精製によって完了する。
組換えタンパク質を、Centricon(Vivaspin)で濃縮し、50mMのMES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)バッファーに対して透析し、それからNaClの勾配(0から1M)によって溶出する。それから、タンパク質は非火成(apyrogenic)滅菌水に対して透析される。
2.モノクローナル抗体の産生
以下のモノクローナル抗体:
−抗LukF:10D1A10、16A10A3、6H10E5および
−抗LukS:2H2H12、3D9D12、7C1F9、7F8D7、18A4E10を、以下のようにして得た。
(抗LukFモノクローナル抗体:10D1A10、16A10A3、6H10E5)
マウスを以下のプロトコルに従って免疫化した:日数D0に、完全フロイントアジュバントの存在下で10μgの組換えLukFタンパク質を腹腔内に注射した。日数D14、D28に、不完全フロインドアジュバントの存在下で同一量の組換えLukFタンパク質を更に腹腔内に注射した。融合の4日前に、生食水中に希釈した50μgのLukF抗原を静脈内に注射した。
1600の上清を間接ELISA技術でスクリーニングした。プレートを、1μg/mlの抗原(組換えLukFタンパク質)のPBSバッファー(pH7.2)溶液100μlで「被覆」した。「被覆した」プレートは18−22℃の温度でオーバーナイトでインキュベートした。プレートを、200μlのPBS-1%ミルクで飽和させ、37°±2℃で1時間のインキュベートに供した。100μlの上清またはPBSバッファー-0.05%tween20で希釈した腹水を加え、プレートを37°±2℃で1時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ(Jackson Immunoresearch ref:115-055-062)にコンジュゲートしたヤギ抗マウスIg(H+L)ポリクローナル抗体であって、PBSバッファー-1%BSAに1/2000に希釈したもの100μlを加え、続いてプレートを37°±2℃で1時間インキュベートした。濃度2mg/mlのPNPP(ビオメリュー参照番号60002990)のDEA−HCl(ビオメリュー参照番号60002989)溶液(pH=9.8)を100μl加えた。プレートは、37°±2℃で30分間のインキュベートに供した。反応は100μlの1N NaOHの添加によって止めた。3回の洗浄を各工程の間に300μlのPBS-0.05%tween20で実施する。蒸留水中での更なる洗浄は、PNPPを加える前に行われる。
72の上清が、間接ELISAでOD>0.6を有する陽性であるとわかった。特異性試験の後、上述した3つの抗体を産生する。
(抗LukSモノクローナル抗体:2H2H12、3D9D12、7C1F9、7F8D7、18A4E10)
マウスを以下のプロトコルに従って免疫化した:日数D0に、完全フロイントアジュバントの存在下で10μgの組換えLukSタンパク質を腹腔内に注射した。日数D14、D28に、不完全フロインドアジュバントの存在下で同一量の組換えLukSタンパク質を更に腹腔内に注射した。融合の4日前に、生食水中に希釈した50μgの組換えLukSタンパク質を静脈内に注射した。
1800の上清を間接ELISA技術でスクリーニングした。プレートを、1μg/mlの組換えLukSタンパク質のPBSバッファー(pH7.2)溶液100μlで「被覆」した。「被覆した」プレートは18−22℃の温度でオーバーナイトでインキュベートした。プレートを、200μlのPBS-1%ミルクで飽和させ、37°±2℃で1時間のインキュベートに供した。100μlの上清またはPBSバッファー-0.05%tween20で希釈した腹水を加え、プレートを37°±2℃で1時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ(Jackson Immunoresearch ref:115-055-062)にコンジュゲートしたヤギ抗マウスIg(H+L)ポリクローナル抗体であって、PBSバッファー-1%BSAに1/2000に希釈したもの100μlを加え、そしてプレートを37°±2℃で1時間インキュベートした。濃度2mg/mlのPNPP(ビオメリュー参照番号60002990)のDEA-HCl(ビオメリュー参照番号60002989)溶液(pH=9.8)を100μl加えた。プレートは、37°±2℃で30分間のインキュベートに供した。反応は100μlの1N NaOHの添加によって止めた。3回の洗浄を各工程の間に300μlのPBS-0.05%tween20で実施する。蒸留水中での更なる洗浄は、PNPPを加える前に行われる。
51の上清が、間接ELISAでOD>0.6を有する陽性であるとわかった。特異性試験の後、上述した3つの抗体を産生する。
3.ポリクローナル抗体の産生
3.1.抗LukSポリクローナル抗体の産生
抗LukSポリクローナル抗体の番号173/89及び176/89を以下のとおりに得た:
日数D0に、ウサギ(ニュージランドホワイト種)は、200μgの、N末端がKLH(キーホール リンペットヘモシニアン)(Agro-Bio)に結合された、配列CSGHDPNLFVGYKPYSQN(配列番号3)のLukS−PV合成ペプチドの皮内注射を接種された。日数D14、D28、D42及びD81に、ウサギは、KLHに結合された合成ペプチドの同一量の更なる皮下注射を受けた。動物の血清は、D0、D49及びD89に採取される。D89でとられたウサギ血清は、前記合成ペプチド上の親和性クロマトグラフィーによって精製される。このために、前記ペプチドは、製造者(アマシャム−ファルマシア)の推奨に従って、1mlのHi−Trapセファロースカラム上へ連結される。血清はPBSバッファー(pH 7.4)で50/50に希釈され、そして1ml/分の速度でカラム上に注入される。PBS(pH 7.4)による洗浄、そして50mMのグリシン/HCl混合物(pH3)による溶出後に、溶出した分画は直ちに中和されて、そして0.15MのPBS(pH7.4)に対して透析された。
3.2.抗LukFポリクローナル抗体の産生
抗LukFポリクローナル抗体を以下のとおりに得た:
日数D0に、ウサギ(ニュージランドホワイト種)は、200μgの、N末端がKLH(キーホール リンペットヘモシニアン)(Agro-Bio)に結合された、配列CNFNWIGNNYKDENRATHTS(配列番号4)のLukF−PV合成ペプチドの皮内注射を受けた。日数D14、D28、D42及びD81に、ウサギは、KLHに結合された合成ペプチドの同一量の更なる皮下注射を受けた。動物の血清は、D0、D49及びD89に採取される。D89でとられたウサギ血清は、前記合成ペプチド上の親和性クロマトグラフィーによって精製される。このために、前記ペプチドは、製造者(アマシャム−ファルマシア)の推奨に従って、1mlのHi−Trapセファロースカラム上へ連結される。血清はPBSバッファー(pH7.4)で50/50に希釈され、そして1ml/分の速度でカラム上に注入される。PBS(pH7.4)による洗浄、そして50mMのグリシン/HCl混合物(pH3)による溶出後に、溶出した分画は直ちに中和されて、そして0.15MのPBS(pH7.4)に対して透析された。
4. 抗体断片の産生と結合
抗LukSポリクローナル抗体173/89及び176/89は、それらのFc断片を除去して、F(ab’)断片を得るために、37℃、pH 3.5で1時間30分間、アガロースに結合させたペプシンで消化した。
これらの断片は、以下の通りにペルオキシダーゼで標識化した:F(ab’)2断片は、炭酸バッファー(pH9)に対して透析され、2モルのペルオキシダーゼにつき1モルのF(ab’)2の割合で、18−25℃で2時間、NaIOによって前もって酸化したペルオキシダーゼ(ロシュ)に結合される。それから、結合は2−8℃で1時間のNaBHによって止められ、次に産生物は防腐剤を含むPBSバッファに対して透析される。
続いて、それらは、以下の通りにビオチンで標識化された:F(ab’)2断片は、炭酸バッファー(pH9)に対して透析され、10モルのビオチンにつき1モルのF(ab’)2の割合で、18−25℃で1時間、ビオチン−NHS(ロシュ)に結合される結合は2−8℃で20分間のリシンによって止められ、次に産生物はPBS+アジドに対して透析される。
実施例2:PVL産生黄色ブドウ球菌の診断
1.生物試料の調製
黄色ブドウ球菌の臨床株は、GPアガー(ディフコ:10g/lのペプトン、5g/lのイースト抽出物、17g/lのアガー;シグマ:5g/lのNaCl、1g/lのグルコース)上で前培養される。37℃で18時間後、いくつかのコロニー(おおよそ10CFU/ml)を、25mlのガラスのエルレンマイヤーフラスコ中の、5mlのCCY培地(ディフコ:30g/lのイースト抽出物、20g/lのカザミノ酸;シグマ:3.11g/lのNaHPO 2HO、0.41g/lのKHPO、23g/lのピルビン酸)に接種する前に、純度を確認した。37℃、18時間の振盪培養の後、培養上清を遠心分離(8000g、4℃、10分)の後で回収し、それから使用前に4℃又は−20℃で短期間保存する。
各株には、識別子(A又はLYに6つの数字を加えたもの)が与えられており、PVLを産生するならば「+」、又はPVLを産生しないならば「−」と表示する。
2.ELISA試験
ELISAプレートのウェル(グライナー、100μl/ウェル)は、抗LukS抗体18A4E10で被覆され、それはPBS(シグマPBS、pH7.4;0.1%のアジ化ナトリウム)中に10μg/mlで希釈したこの抗体の溶液により、周囲温度(ほぼ22℃)で18時間でのインキュベーションによって行われる。PBS Tween20で5回洗浄(装置:Biorad ImmunoWash 1575)の後、プレートはPBS Tween(0.05%)/10%ミルク/0.5%BSA(シグマ)の溶液で周囲温度で2時間する(150μl/ウェル)。
PBS Tween(0.05%)による5回の洗浄後、培養液上清を37℃で75分間インキュベートする。
PBS Tween(0.05%)による5回の洗浄後、PBS−T5%ミルク中に1/100に溶解した、ウサギ抗体176−89のペルオキシダーゼで標識したF(ab’2)断片の溶液を37℃で75分間インキュベートした。PBS−Tweenによる5回の洗浄後、75μlのTMB溶液(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジン基質、シグマ)を加えて、暗所で30分間インキュベートした。反応は、75μlの1N HSOの添加により、止めた。プレートは、マイクロプレートMPリーダー680(Biorad)を使用して450nmで読んだ(OD)。
3.結果
結果は、各株のODを示すグラフである図1に示す。
結果は、15のPVL+株の中で12株が明らかに検出され、14のPVL−株の中で3つの偽陽性結果が観察されたことを示す。
これらの結果は、ルーチンの免疫学的検査を使用してPVL+株とPVL−株を区別することが可能であるが、後者が特異性を欠いていることを明らかに示す。
実施例3:加熱による生物試料の前処理後のPVL産生黄色ブドウ球菌株の診断
1.試料の処理
生物試料は、実施例2で調製されたように、10から30分にわたる時間で、95℃で加熱によって処理され、それらのODは実施例2に記載されているプロトコルに従って決定された。
OD結果は下の表1に示す。それはPVLの変性が10分の処理の先から得られることを示す。
表1
Figure 0005183635
2.ELISA試験
95℃で1時間変性した29株(15のPVL+と14のPVL−)の培養液上清を使用したことを除いては、上記実施例2のポイント2に記載の手順を繰り返した。
3.結果
結果は、各株のODを示すグラフである図2に示す。
結果は、PVL−株を識別をするために十分に高いODレベルで、全てのPVL+株が本発明の方法によって識別されることを示す。
従って、前処理により、本発明の方法の特異性を高めることができる。
実施例4:数種類の変性処理を使用する生物試料の前処理後のPVL産生黄色ブドウ球菌株の診断
1.試料の処理
3つの臨床PVL+株(LY990084、A92007、LUG855)と3つの臨床PVL−株(LY990333、LY991321、RN6911)を使用し、以下の処理にかけられた:
−処置なし(0)、
−95℃で1時間の加熱による変性(1)、
−最終濃度0.1MのKHPOの酸で変性し、30分間ボルテックスにかけ、そしてNaOHの添加による中和(2)、
−最終濃度0.1MのKHPOの酸で変性し、10分間ボルテックスにかけ、そして95℃で10分間沸騰し、続いてNaOHの添加による中和(3)。
2.ELISA試験
上記ポイント1に従って調製した株及びペルオキシダーゼで標識化したウサギ抗体176−89、F(ab’2)断片の溶液であってPBS−Tween5%ミルクで1/1000で希釈したものを使用したことを除いては、実施例2に記載の手順を繰り返した。
3.結果
結果は、各株のODを示すグラフである図3に示す。
試料の処理が何であれ、結果は、全てのPVL−株が0.09と0.181との間のOD値を有することを示す。
PVL+株では、処置後にOD値はPVL−株のそれらより高い。熱処理がこれらの条件下で最も効果的に見えるけれども、化学処理によって、熱処理によって及び2つの組合せによって得られたODの増加は統計学的に有意である(それぞれ、p=0.024、p<0.001、p=0.018)。
従って、前処理によりルーチンの免疫学的検査の特異性を高めることができる。
実施例5:本発明の方法を使用するPVL産生黄色ブドウ球菌の早期検出の実証
1.生物試料の調製
黄色ブドウ球菌の4つの臨床株(2つのPVL+株と2つのPVL−株)を、実施例2に記載されている手順に従って、前培養した。コロニーは、25mlのガラスのエーレンマイヤーフラスコで、5mlのCCY培地に豊富に接種を行うために用いられる。培地から、接種の直後に、そして連続して1時間、2時間、3時間及び18時間、37℃の振盪培養後に試料をとった。培養液上清を遠心分離(8000g、4℃、10分)の後で回収し、それ後、使用前に4℃または−20℃で短期間、保存した。試料は、実施例3に記載されるように、加熱によって処理される。
2.ELISA試験
上のポイント1に記載したとおりに調製した株の培養液上清を使用したことを除いては、上の実施例2のポイント2に記載されている手順を繰り返した。
3.結果
OD結果を表2に示す。それはPVLが本発明の方法によって非常に迅速に検出できることを示す(時間の培養組織の先から明確な検出)。
表2
Figure 0005183635
実施例6:本発明の方法を使用する生体試料のPVLの早期検出の実証
1.生物試料の調製
臨床標本は、PVL+株またはPVL−株のどちらかの黄色ブドウ球菌感染を有する患者の気管支肺吸引物、気管支肺胞洗浄液及び皮膚膿瘍の膿、又は深い化膿の膿である。これらの標本は、本発明の方法を使用して解析される前に−20℃で保存した。標本は、周囲温度での解凍後に、15分間のボルテックスによって均質化される。遠心分離(10分、15°Cで4000rpm)の後、上清をエッペンドルフチューブに移し、そして95℃で1時間変性した。
非常に粘りけのある試料のために、試料は、はじめにPBS(pH7.4)で50/50に希釈し、そして15分間ボルテックスした。遠心分離(10分、15°Cで4000rpm)の後、上清をエッペンドルフチューブに移し、そして95℃で1時間変性した。
粘りけのある試料の場合、後者をn−ヘプタン(メルク)で50/50に希釈し、再び10分間ボルテックスした。遠心分離(10分、15°Cで4000rpm)の後、n−ヘプタンに対応する上相を完全に取り除き、下相を95℃で1時間変性するために他のエッペンドルフチューブに移した。
2.ELISA試験
上のポイント1に記載したとおりに処理した生物試料を使用することを除いては、上の実施例2のポイント2に記載されている手順を繰り返した。
3.結果
PVL分析の結果を表3と4に示す。それは、メチシリン感受性株であろうと、PVLが、標本で直接検出できること、及び偽陽性がないこと(PVL−株を有する試料は、PVLを含むものとして検出されないこと)を示す。さらに、n−ヘプタンによる標本の前処理は、PVLの検出をそこなわない。
表3
Figure 0005183635
* 株がPVL−またはPVL+であったか否かの決定は、Vandenesch等(文献2)によって記載された方法に従って、黄色ブドウ球菌分離株のなかで、PCRによる、PVLをコードするLukS−PV及びLukF−PV遺伝子の存在の検出によって実施された。
表4
Figure 0005183635
表4のつづき
Figure 0005183635
*株がPVL−またはPVL+であったか否かの決定は、Vandenesch等(文献2)によって記載された方法に従って、黄色ブドウ球菌分離株のなかで、PCRによる、PVLをコードするLukS−PV及びLukF−PV遺伝子の存在の検出によって実施された。
**メチシリン耐性をコードするmecA遺伝子の検出は、Vandenesch等(文献2)によって記載された方法に従って、黄色ぶどう球菌分離株で実施された。
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6:J. Histochem. Cytochem. 45: 481-491, 1997
7:Labandeira-Rey M等, Science 2007, 印刷中

Claims (5)

  1. 黄色ブドウ球菌に冒されやすいか又は感染しやすい個体に由来する生物試料を使用する、Panton-Valentineロイコシジン(PVL)を産生する黄色ブドウ球菌のインビトロ診断の方法であって、診断はルーチンの免疫学的検査としてELISA、側方流動免疫クロマトグラフィー又は凝集検査を使用してPVLを検出することによって実施されるものであり、前記生物試料はPVLを変性させるために前処理されることを特徴とする方法。
  2. ルーチンの免疫学的検査がサンドイッチ法を用いたELISA又は側方流動免疫クロマトグラフィーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 免疫学的検査が少なくとも一つの抗PVLモノクローナル抗体を使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前処理が60と100℃の間の温度における少なくとも10分間の加熱を含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
  5. 前記生物試料に存在する黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性(MRSA)菌であるか又はメチシリン感受性(MSSA)菌であるかを決定することを含む追加の工程を含むことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
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