JP5181382B2 - 繊維状カーボンナノ構造体の製造方法及びそれにより製造された繊維状カーボンナノ構造体 - Google Patents

繊維状カーボンナノ構造体の製造方法及びそれにより製造された繊維状カーボンナノ構造体 Download PDF

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Description

本発明は、繊維状カーボンナノ構造体の製造方法及びそれにより製造された繊維状カーボンナノ構造体に関し、更に詳しくは、イオウ含有化合物を用いることによって、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体が得られる製造方法及びそれを用いた繊維状カーボンナノ構造体に関する。
カーボンナノ構造体の製造法としては、蒸着された金属基板を触媒にしてその表面活性を利用したり、遷移金属超微粒子からなる触媒の存在下で有機炭素原料の蒸気を熱分解させる化学蒸着(CVD)法等が知られている(特許文献1)。そしてそこでは、カーボンナノ構造体の製造法として、金属含有触媒が必要不可欠であると考えられていた。
しかしながら、金属蒸着基板の作成、金属含有触媒の合成は複雑な場合があり、また、金属含有触媒の分散性が悪いために様々な問題点もあった。また、金属触媒又は金属含有触媒を用いてカーボンナノ構造体を製造すると、金属触媒由来の不純物が混入するため、その適用分野が制限されたり、必要に応じて精製が必要だったりした。
一方、金属含有触媒の助触媒(Promoter)としてイオウ化合物を用いると、カーボンナノ構造体が良好に合成できることも知られている(特許文献2)。しかし、そこでも、金属含有触媒は必須のものであり、上記問題点を解決するものではなかった。
また、上記方法では、カーボンナノ構造体の構造、純度、製造収率等が未だ十分ではなく、そのため、構造が制御され、高純度、高収率でカーボンナノ構造体が得られる製造方法の開発が求められていた。
特開平9−031757号公報 特開2003−221215号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、簡便な方法で、高純度、高収率で合成可能な繊維状カーボンナノ構造体の製造方法を提供することにあり、それを用いた繊維状カーボンナノ構造体を提供することにある。また、特定の構造を有する繊維状カーボンナノ構造体を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非金属であるイオウ含有化合物を触媒として用いることによって、簡便に、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体が合成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭素源としての有機物の気体と、イオウ含有化合物との混合気体を、実質的に金属含有触媒を利用せずに800℃以上で加熱することを特徴とする繊維状カーボンナノ構造体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、常温常圧で液体の炭素源としての有機物、及び/又は、常温常圧で液体のイオウ含有化合物を、同時に気体状態において800℃以上で加熱することを特徴とする繊維状カーボンナノ構造体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記製造方法を用いて製造された繊維状カーボンナノ構造体を提供するものである。
また、本発明は、両端が共に開いた構造を有する繊維状カーボンナノ構造体を提供するものである。
本発明によれば、触媒として金属や金属含有化合物を使用しなくても、簡便な方法で、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体を提供することができ、金属不純物を含まない繊維状カーボンナノ構造体の大量合成が可能になる。また、その製造方法によって、広い適用分野が考えられる「両端が共に開いた構造の繊維状カーボンナノ構造体」を確実に与えることができる。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
本発明の製造方法により繊維状カーボンナノ構造体を得るために用いる「炭素源としての有機物」とは、炭素原子をその分子内に含む有機物であり、容易に気体にできるものであれば特に限定はなく、常温・常圧で気体、液体、固体の何れでもよい。
例えば、好ましいものとして、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、フェノール類、エーテル類、アルデヒド類等が挙げられる。
このうち、脂肪族炭化水素類としては、好ましくは、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等が挙げられる。アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらは、1種で又は2種以上を混合して用いられる。
1分子中の炭素原子数が多く、生産効率が良い、毒性が小さい等の点で、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類がより好ましく、毒性、安全性、沸点が低く取り扱いが容易等の点でエタノールが特に好ましい。
「炭素源としての有機物」としては、常温・常圧で液体の有機物であることが、簡便であること、イオウ含有化合物との溶液を調製しやすくそれを製造に使用できること、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体が合成できる点で好ましい。また、下記の原理・理由に限定されるものではないが、溶液中で、イオウ原子の周りに多くの炭素原子が存在する状態をまず作っておくことが、金属含有触媒がなくても、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体が合成できる理由・原理である可能性があるので、「炭素源としての有機物」として、常温常圧で液体の有機物を用いることが好ましい。
また、本発明の製造方法により繊維状カーボンナノ構造体を得るために用いる「イオウ含有化合物」は、イオウ原子をその分子内に含む化合物であり、容易に気体にできるものであれば特に限定はなく、常温・常圧で気体、液体、固体の何れでもよく、有機化合物、無機化合物を問わない。また、イオウであってもよい。具体的には、例えば、イオウ、二硫化炭素、チオール、チオフェン、チオフェノール等が挙げられる。
「イオウ含有化合物」は、常温・常圧で液体の化合物であることが、簡便であること、炭素源としての有機物との溶液を調製しておき、それを製造に使用できること、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体が合成できる点で好ましい。下記の理由・原理に限定されるものではないが、イオウ原子の周りに多くの炭素原子が存在する状態をまず溶液中で作っておくことが、本発明の効果を奏する理由である可能性があるので、「イオウ含有化合物」としては、常温・常圧で液体の化合物を用いることが好ましい。
「炭素源としての有機物」又は「イオウ含有化合物」のうち、少なくとも一方が、常温常圧で液体であることが好ましいが、両方とも常温常圧で液体であることが、上記効果が得られる点で好ましい。更に、「炭素源としての有機物」と「イオウ含有化合物」の混合溶液を調製しておき、それを同時に気体状態にして加熱することが、気体状態での加熱に先立ち、溶液中でイオウ原子の周りに多くの炭素原子が存在する状態をまず作っておける点、加熱炉中へ導入されたときにイオウと炭素が反応し易い点、操作が簡便である点等で特に好ましい。
本発明で用いられる「炭素源としての有機物」と「イオウ含有化合物」との気体状態における混合比は特に限定されるものではないが、上記「炭素源としての有機物」と「イオウ含有化合物」との合計モル数に対して、「イオウ含有化合物」を、1モル%〜50モル%の範囲で用いることが好ましい。3モル%〜30モル%の範囲で用いることがより好ましく、5モル%〜20モル%の範囲で用いることが特に好ましい。また、それぞれが液体の場合には、それぞれの液体状態の体積比は特に限定されるものではないが、常温常圧で液体の「炭素源としての有機物」と常温常圧で液体の「イオウ含有化合物」の混合前の合計体積に対して、常温常圧で液体の「イオウ含有化合物」を1体積%〜50体積%含有する混合溶液を用いることが好ましい。また、「イオウ含有化合物」を3体積%〜30体積%の範囲で含有する混合溶液を用いることがより好ましく、5体積%〜20体積%が特に好ましい。
イオウ含有化合物が多すぎると、加熱炉内のイオウ含有化合物の蒸気圧が上昇し、繊維状カーボンナノ構造体の成長が妨げられる場合があり、その結果、直進性を失い、うねった構造の繊維状カーボンナノ構造体ができる場合がある。また、成長した繊維状カーボンナノ構造体の上にイオウの核が結合し、新たにそこから繊維状カーボンナノ構造体を成長させるために、多分岐の繊維状カーボンナノ構造体ができる場合がある。一方、イオウ含有化合物が少なすぎると、イオウと炭素源としての有機物の反応効率が低下し、炭素源としての有機物の分解のみが起こる場合がある。
本発明により繊維状カーボンナノ構造体を合成するには、前記「炭素源としての有機物」と「イオウ含有化合物」との混合気体を、加熱炉中で同時に800℃以上に加熱することが必須である。好ましくは850℃以上、特に好ましくは900℃以上である。一方、加熱温度の上限は特に限定はないが、1500℃以下が好ましく、1200℃以下が特に好ましい。上記温度は、加熱炉内の雰囲気温度をいう。かかる温度が800℃未満であると、反応が進行せず繊維状カーボンナノ構造体が得られない場合がある。一方、温度が高すぎる場合は、イオウが反応前に蒸発してしまったり、加熱のコストが問題になったりする場合がある。
本発明の製造方法により繊維状カーボンナノ構造体を合成するためには、前記炭素源としての有機物の気体と、イオウ含有化合物の気体との加熱時間は特に限定はないが、5分〜1時間が好ましく、10分〜30分が特に好ましい。
使用する加熱炉としては、従来公知の各種のもの、例えば、電気炉、マイクロ波加熱炉、レーザー加熱炉、プラズマ加熱炉、アーク加熱炉等が挙げられる。加熱炉内の雰囲気温度の制御とコストの点で、電気炉を用いることが好ましい。
加熱炉への炭素源としての有機物、及び、イオウ含有化合物の導入方法は、両者が加熱炉内で気体になれば特に限定はないが、ロータリーポンプ等を用いて加熱炉内を吸引し、そこに導入する方法が、大気圧からの作動が可能な点、簡便な点等から好ましい。
加熱炉内には、炭素源としての有機物の気体とイオウ含有化合物の気体だけが存在していてもよいが、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N)等の不活性気体が存在していてもよい。
繊維状カーボンナノ構造体を析出させる基板は、本発明に関しては特に必要ではなく、例えば加熱炉の内壁だけであってもよいが、得られた繊維状カーボンナノ構造体を効率良く回収できる点等から、基板は用いる方が好ましい。基板の種類としては特に限定はなく、例えば、シリコン、鉄、チタン、モリブデン等の金属;グラファイト、石英、モレキュラーシーブス、ゼオライト等が挙げられる。本発明の製造方法は基板表面の化学組成に依存しないことが特徴である。ただ、繊維状カーボンナノ構造体を効率良く合成できる点等から、フラットな面を有する基板が好ましい。具体的には、上記の中から、シリコン、石英等が特に好ましいものとして挙げられる。
また基板は、随時新品を用いてもよいが、同じ基板を用いて複数回再利用することも可能である。基板の触媒効果に実質的には依存していないからであると考えられる。
本発明の製造方法を用いれば、実質的に金属含有触媒を利用せずに、繊維状カーボンナノ構造体を製造することができる。従って、本発明の製造方法は、実質的に金属含有触媒を利用しないことが好ましい。本発明は、金属基板、金属含有基板、金属粒子、金属含有粒子等の反応系内における存在を排除(除外)するものではないが、本発明においては、金属含有物質は触媒としては必要ではないので、使用しないことが好ましい。
金属含有触媒を使用しないことによって、金属不純物の存在が問題となる利用分野にも好適に適用できる。特に、金属の存在が問題となる生体材料にも好適に使用できる。また、磁性不純物の存在が問題となる分野へも好適に利用可能である。
本発明においては、「イオウ含有化合物」は気体状態で反応に関与する。従来のように基板上に金属含有触媒を形成し、CVD法による繊維状カーボンナノ構造体の製造を、基板上のイオウ含有触媒で行うものとは発明の構成が全く異なるものである。
本発明の繊維状カーボンナノ構造体の製造方法は、得られた繊維状カーボンナノ構造体の構造によっては何ら限定されるものではない。ただ、本発明の繊維状カーボンナノ構造体の製造方法を使用すると、直径が10nm〜400nmの範囲の繊維状カーボンナノ構造体が好適に製造できる。また、単層から多層までの繊維状カーボンナノ構造体が製造でき、また、内側と外側で発達方向が異なった繊維状カーボンナノ構造体も製造できる。各繊維状カーボンナノ構造体のグラファイト性も高いものから低いものまで形成され得る。
直径が比較的小さいものでは、グラファイト層が繊維状カーボンナノ構造体の成長軸に対して斜めに発達した構造であるカップスタック(cup stack)構造(又は、魚の骨(herring bone)構造)になる場合が多い。
一方、直径が比較的大きいものでは、内側は上記したカップスタック構造であり、外側はグラファイト層が繊維状カーボンナノ構造体の成長軸に対して平行に発達した構造である多層(マルチウォール)となる場合が多い。すなわち、グラファイト層が、内側と外側で変化して成長しているものでは、内側のグラファイト層は繊維状カーボンナノ構造体の軸に対して対称に斜め約30度に形成(カップスタック)されており、外側にいくにつれてグラファイト層は、繊維状カーボンナノ構造体の軸(ファイバー軸)に平行に変化しているものが製造される(図1参照)。
その層間隔は、グラファイトの層間隔の0.335nmに近い値である。そして、繊維状カーボンナノ構造体の内部は、内側と同じカップスタック構造を有する中空部分が存在するものや(図2(a)、(b)参照)、直径200nm以上の太いものでは、内部が竹の節のように閉鎖された「竹型構造」が存在するものもある(図2(c)参照)。これは、触媒であるイオウ粒子が大きく、グラファイト層内部間の圧力がある一定以上になるための段階ができるためであると考えられる。
本発明の製造方法を用いて製造される繊維状カーボンナノ構造体の両端の構造は特に限定はないが、両端が共に開いた構造とすることができる。従来の金属含有触媒を用いた製造方法では、片端又は両端が(どちらかの端が)閉じていた。従って、本発明の別の態様は、両端が共に開いた構造を有することを特徴とする繊維状カーボンナノ構造体である。端が開いているとそこから物質を入れて繊維状カーボンナノ構造体内で反応をさせるナノ試験管にも好適に使用できる。そして、片端だけでなく両端が共に開いた構造を有することによって更に好適に使用できる。端が閉じている状態とは、そこに触媒粒子が存在するためである場合があり、本発明によると、端に触媒粒子が存在しないので両端が共に開いた構造の繊維状カーボンナノ構造体のみの集合体が初めて得られた。
より好適な繊維状カーボンナノ構造体は、更に前記効果をも奏する前記した本発明の製造方法で製造した「両端が共に開いた構造を有する繊維状カーボンナノ構造体」である。
更に、本発明の別の態様である「両端が共に開いた構造を有する繊維状カーボンナノ構造体」においては、一方の端がとがった構造(凸型構造)(図3(a)参照)であれば、もう一方の端は、くぼんだ構造(凹型構造)(図3(b)参照)のものである。そして、とがった部分の角度も、くぼんだ部分の角度も、共に約30度であるものが製造できる。
「炭素源としての有機物」と「イオウ含有化合物」の混合溶液を、同時に気体状態にして加熱することによって、特に好適に繊維状カーボンナノ構造体を製造できる作用・原理は明らかではないが、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下の作用・原理の範囲に限定されるものではない。すなわち、同時に気体状態で導入する際、溶液中にイオウ原子が存在し、その周りに多くの炭素原子が存在することによって、気体として導入されるときに、イオウと炭素が反応して核を形成して、良好に繊維状カーボンナノ構造体を成長させたと考えられる。
また、両端が共に開いた構造を有するものが製造されるメカニズム、及び、一方の端がとがった構造(凸型構造)であれば、もう一方の端はくぼんだ構造(凹型構造)となるメカニズムは明らかではないが、図4に示すような成長モデルによるメカニズムが考えられる。ただし、本発明は、以下のメカニズムの範囲に限定されるものではない。
図4中の(a)→(b)→(c)→(d)の各段階では以下の現象が起こっていると考えられる。すなわち、
(a)反応の最初にイオウが、イオウ含有化合物の分解によって生じ、炭素を溶解しながら、繊維状カーボンナノ構造体の核を作り、基板表面に形成される。
(b)核となるイオウに、炭素が更に溶解して拡散することで析出する。
(c)析出した炭素が斜めにグラファイト層を形成し、繊維状カーボンナノ構造体を成長させる。成長する繊維状カーボンナノ構造体は、反応中に加熱されているため、更に外側にグラファイト層を新たに形成する。
(d)反応を停止して炭素が供給されなくなると、触媒はイオウとして剥き出しの状態になり、その低い沸点(444.7℃)のため、冷却される前に蒸発して先端から消えてしまう。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
図5に示す装置の電気炉内の石英管内中央に、石英基板を設置した。石英管内を、ロータリーポンプを用いて107Pa(0.8Torr)まで真空排気した後、大気圧になるまでアルゴン(Ar)で満たした。その後、アルゴン(Ar)を100sccmで流しながら反応温度が1000℃になるまで電気炉内を加熱した。
反応温度に到達してから、石英管内を、ロータリーポンプを用いて、107Pa(0.8Torr)まで真空排気した後、約530Pa(約4Torr)に保ちながら、「炭素源としての有機物」であるエタノール(99.5%、和光純薬株式会社製)4.5mLと「イオウ含有化合物」である二硫化炭素(99%、ナカライテスク株式会社製)0.5mLの混合溶液(エタノール液体と二硫化炭素液体との混合前の合計体積に対して、二硫化炭素液体を10体積%含有)の蒸気を石英管中に導入し、30分間反応させた後、得られた生成物の分析を行った。
実施例2
反応温度を1000℃から900℃に変更した以外は実施例1と同様にした。
実施例3
反応温度を1000℃から800℃に変更した以外は実施例1と同様にした。
実施例4
「炭素源としての有機物」であるエタノール(99.5%、和光純薬株式会社製)2.5mLと「イオウ含有化合物」である二硫化炭素(99%、ナカライテスク株式会社製)2.5mLの混合溶液(エタノール液体と二硫化炭素液体との混合前の合計体積に対して、二硫化炭素液体を50体積%含有)を用いた以外は実施例1と同様にした。
実施例5
実施例1で用いた石英基板の代わりに、グラファイト棒、モレキュラーシーブス5A(MS5A、和光純薬株式会社製)及びゼオライトを基板として用いた以外は実施例1と同様にした。
比較例1
「炭素源としての有機物」であるエタノール(99.5%、和光純薬株式会社製)5mLの溶液のみを用いた以外は実施例1と同様にした。
図6に実施例1で得られた生成物の走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と略記する)像を示す。石英基板表面に、極めて高純度及び高収率で、繊維状カーボンナノ構造体が得られた。図6(c)の四角形内を見ても分かるように、繊維状カーボンナノ構造体の先端形状は、触媒がとれた開いた形状であった。また、繊維状カーボンナノ構造体の根元には触媒粒子が確認できなかった(図7)。すなわち、両端が共に開いた構造を有する繊維状カーボンナノ構造体が得られた。本発明の繊維状カーボンナノ構造体は、図4に示すように先端が成長して得られるものであり、成長後に触媒であるイオウ粒子がとれて、このような構造を有するものになったと考えられる。
図8に実施例1ないし実施例3で得られた生成物のSEM像を示す。これらの結果から明らかなように、何れの反応温度でも所望の繊維状カーボンナノ構造体が得られ、それらの直径は、80nm〜317nm(実施例1、1000℃で加熱、図8(e)(f))、37nm〜83nm(実施例2、900℃で加熱、図8(c)(d))、18nm〜48nm(実施例3、800℃で加熱、図8(a)(b))であり、平均直径は144nm(実施例1)、60nm(実施例2)、33nm(実施例3)であった。
繊維状カーボンナノ構造体の直径は、反応温度が上昇するにつれて太くなる傾向が見られ、収率は、反応温度が上昇するにつれて高くなった。これは、繊維状カーボンナノ構造体が成長する際の触媒となるイオウが、気相中で炭素を溶解しながら核を形成するときに、反応温度が高いとより多くの炭素を溶解できるために大きな核を形成するためであると考えられる。一方、反応温度が低いときには、イオウが多くの炭素を溶解できないために小さい核が形成し、細い繊維状カーボンナノ構造体が得られたと考えられる。
図9に実施例4で得られた生成物のSEM像を示す。実施例1(図6)と比較してうねった形状をしてはいるものの、本発明の繊維状カーボンナノ構造体が得られた。これは、多量の二硫化炭素の存在のために系内の蒸気圧が上昇し、繊維状カーボンナノ構造体の成長が妨げられ、直進性を失い、うねった形状になったと考えられる。
図10に実施例5で得られた各基板を用いた生成物のSEM像を示す。各基板は、(a)グラファイト棒、(b)モレキュラーシーブス(MS5A)、(c)及び(d)ゼオライトである。実施例1(石英基板使用)と比べて収率は若干低いものの、本発明の繊維状カーボンナノ構造体が得られ、基板表面の化学組成には依存しないことが分かった。また、表面がフラットな石英基板で収率が高いことも分かった。
一方、「イオウ含有化合物」を含有しない比較例1では、本発明の繊維状カーボンナノ構造体は全く得られなかった。
以上の結果より、本発明である炭素源としての有機物の気体と、イオウ含有化合物との混合気体を、金属含有触媒を使用せずに800℃以上で加熱することにより、簡便な方法で、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体を得ることができた(実施例1ないし実施例5)。
本発明によると、金属含有化合物を使用しなくても、簡便な方法で、高純度、高収率で繊維状カーボンナノ構造体を提供することができ、金属不純物を含まない繊維状カーボンナノ構造体の大量合成が可能になる。また、その製造方法によって得られた繊維状カーボンナノ構造体は、両端が共に開いた構造を有しているので、金属不純物を含まないという特長とも合わせて、生体が関与する分野、磁性が関与する分野、ナノ試験管としての使用分野等をはじめ、それらに限らず一般に繊維状カーボンナノ構造体が用いられる全ての分野で広く利用されるものである。
本発明で得られる繊維状カーボンナノ構造体の内部を観察した透過型電子顕微鏡(以下「TEM」と略記する)像である。 本発明で得られる繊維状カーボンナノ構造体を観察したTEM像である。 本発明で得られる繊維状カーボンナノ構造体の先端部を観察したTEM像である。(a)凸型構造(b)凹型構造 本発明で得られる繊維状カーボンナノ構造体の成長モデルを図示したものである。 本発明を実施する装置の一例を示す概略図である。 (a)実施例1で得られた繊維状カーボンナノ構造体表面のSEM像である。(b)(a)中の四角形で囲まれた部分の拡大図である。(c)(b)中の四角形で囲まれた部分の拡大図である。 実施例1で得られた繊維状カーボンナノ構造体の根元のSEM像である。 実施例1〜3で得られた各反応温度における繊維状カーボンナノ構造体のSEM像である。(a)及び(b)は実施例3、(c)及び(d)は実施例2、(e)及び(f)は実施例1 (a)実施例4で得られた繊維状カーボンナノ構造体のSEM像である。(b)(a)の断面の拡大図である。 実施例5で得られた繊維状カーボンナノ構造体のSEM像である。(a)グラファイト棒、(b)モレキュラーシーブス(MS5A)、(c)及び(d)ゼオライト

Claims (1)

  1. 実質的に金属を含まず、両端が共に開いた構造を有することを特徴とする繊維状カーボンナノ構造体。
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