JP5177747B2 - オーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法 - Google Patents
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Description
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法に関する。詳しくは、本発明は、水素脆性を低減した、高疲労特性を有するオーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法に関する。特に、オーステナイト系ステンレス鋼の表面又は全体に水素を30質量ppm以上に吸蔵させることで、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂の発生及びその疲労き裂進展を抑制したオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
地球環境問題の面から次世代エネルギーとしての水素の利用が注目されており、そのための研究開発が活発に行われている。特に、水素を燃料とした燃料電池車輌、定置用燃料電池の開発等その実用化が重要課題として注目されている。この燃料電池システムにおける高圧水素タンクや各種部品、配管等の材料としてステンレス鋼の使用が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
表1に代表的なオーステナイト系ステンレス鋼の成分を例示している。この表1の第1列は、日本工業規格(以下、略してJIS(Japan Industrial Standard)規格という。)によって定められたステンレス鋼及び耐熱鋼の名称である。表1の最後の一欄は、ステンレス鋼のビッカース硬さ(以下、HV(Vickers hardness)という。)を示している。その他の欄は、ステンレス鋼に含有される化学成分であり、成分の単位は、質量%で表されている。表1の最後の一欄に記載された、ステンレス鋼に含有される水素(H)の量は、質量ppmで表されている。
水素は、金属材料中に侵入し、材料の静的強度や疲労強度を低下させることが知られている(例えば、非特許文献1、2)。この水素を除去する方法、水素の影響を予測する方法は、いろいろ提案されている。例えば、特許文献2には、オーステナイト系ステンレス鋼をめっき処理後270〜400℃の温度で、10分間以上保持して加熱処理し、水素脆性の防止のための水素除去を行っている。特許文献3には、オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化の程度を、化学成分で予測し判定する方法を開示している。
非特許文献1には、SUS304、SUS316、SUS316L準拠のオーステナイト系ステンレス鋼の疲労試験結果を発表している。この疲労試験は、これらのオーステナイト系ステンレス鋼に水素をチャージしたオーステナイト系ステンレス鋼と、水素をチャージしていないオーステナイト系ステンレス鋼とを比較して行われたものである。水素チャージしたSUS304及びSUS316の疲労き裂進展速度は、未チャージの場合と比べて速くなっている。SUS316Lの場合は、明確な差がない。
更に、試験片に予ひずみを与えた後に、100μm程度の微小な穴を形成したJIS規格のSUS304、SUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼の疲労試験結果を発表している。水素チャージしたSUS304は、未チャージの場合と比べ、疲労き裂進展速度が10倍加速している。SUS316Lの場合は、疲労き裂進展速度が2倍加速している。
しかしながら、準安定なオーステナイト系ステンレス鋼でも、冷間加工や繰返し応力により加工誘起マルテンサイト変態する可能性がある。JIS規格のSUS316L等のようなオーステナイト系ステンレス鋼に関して、疲労き裂進展速度に水素の影響が殆ど無いという認識が研究者の団体である学会内部をはじめ、産業界の間の当業者では一般的な常識であった。この常識を覆す結果を示したことで、5Hz以下の低周波数による繰返し荷重を加えて上記の結果を得ており、非常に意義がある。
言い換えれば、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼は、低周波数の繰返し荷重によって疲労き裂の進展速度が加速されることが確認された。一方、非特許文献2には、「(3)オーステナイト系ステンレス鋼において変態により生じたマルテンサイト相は、材料中を拡散する水素の通り道となり、水素の拡散係数を上昇させる。(130頁を参照)」と指摘している。非特許文献3には通常の製鋼工程で含まれる非拡散性水素を除去することによって、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304、及びSUS316Lの疲労き裂進展を抑制できることが示されている。
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼において、外部からチャージされた拡散性水素、及び結晶内に内在する非拡散性水素がどのように上記の疲労き裂の進展速度に関係しているかが十分に解析されていないのが現状である。更に、材料中のマルテンサイト変態量の変化、水素拡散速度の加速の効果、及び疲労き裂進展速度に拡散性水素と非拡散性水素がどのように影響を与えるのかその関係が十分に解明されていない。
更に、ステンレス鋼を水素燃料利用関連の機器、装置に使用すると、その使用環境によって様々な環境の影響を受ける。例えば、燃料電池車輌用の高圧水素容器や配管等にステンレス鋼を使用した場合、その高圧水素容器への水素ガスの充填、その消費等により、荷重と解放が繰り返される。それに伴う温度変化が生じ、室温での平衡水準以上の水素が材料中へ侵入、ならびに拡散することが考えられる。
また外気温による温度変化等による低周波数の繰返し荷重が発生する。例えば、外気温変化による繰返し荷重は、昼夜の温度差によるステンレス鋼自身の圧縮と伸張、ステンレス鋼部品と連結された部品の圧縮と伸張による熱応力が考えられる。その周波数は、例えば、昼と夜の温度差は数度から10℃以上になり、24時間1周期になる。燃料電池車輌関連の設備で、高圧水素タンク、燃料電池用の燃料供給用の設備等が上記のような1日単位の周期を持つこと、及び水素充填時間が長いことになる。その他に、燃料電池車輌が走行する環境に依存して数℃から数十℃の温度差と、サブ秒〜数時間単位の周期がある。
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂の発生、及び進展を抑制するためのオーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法を提供する。
本発明の目的は、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂の発生、及び進展を抑制するためのオーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法を提供する。
本発明の他の目的は、オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆性の原因となる拡散性水素及び非拡散性水素の量に着目して、水素を30質量ppm以上まで添加することで、疲労き裂の発生、及び/又は進展を遅らせたオーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法を提供することにある。
技術用語の定義
本件発明は、次の技術用語を次に定義された意味で使用する。水素チャージとは、材料中に水素を侵入させることを意味する。水素チャージの方法としては、材料を高圧水素チャンバー内で曝露する方法、陰極水素チャージを施す方法、及び化学溶液等に浸漬させる方法を用いる。疲労き裂進展とは、材料中のき裂が繰返し荷重を受けて大きくなっていくことを意味する。このき裂は、材料中に製造過程又は加工過程で発生した欠陥やき裂である。繰返し荷重は、材料に人工的に導入した穴等から付加するものである。
本件発明は、次の技術用語を次に定義された意味で使用する。水素チャージとは、材料中に水素を侵入させることを意味する。水素チャージの方法としては、材料を高圧水素チャンバー内で曝露する方法、陰極水素チャージを施す方法、及び化学溶液等に浸漬させる方法を用いる。疲労き裂進展とは、材料中のき裂が繰返し荷重を受けて大きくなっていくことを意味する。このき裂は、材料中に製造過程又は加工過程で発生した欠陥やき裂である。繰返し荷重は、材料に人工的に導入した穴等から付加するものである。
疲労き裂進展速度は、疲労き裂進展の速さを意味する。具体的には、き裂の長さが単位時間で大きくなった長さを言う。オーステナイト系ステンレス鋼とは、Cr−Ni系の鉄鋼材料をいい、FeにCrとNiを加え、腐食性環境等に対する耐食性を増大させたオーステナイト相を有するステンレス鋼である。このステンレス鋼の例示を表1に示している。オーステナイト相とは、純度100%の鉄(Fe)において911〜1392℃の温度領域にある鉄の相であり、面心立方格子構造(以下、FCC(Face Centered Cubic Lattice)構造という。)を有する。
図9(a)には面心立方格子を図示している。FeにCrやNi等の合金元素を添加することにより室温でもオーステナイト相が存在できる。マルテンサイト相は、高温の安定なオーステナイト相から鋼を急冷する事によって得られる組織であり、体心立方格子構造(以下、BCC(Body Centered Cubic Lattice)構造という。)を有する。図9(b)には体心立方格子を図示している。また、常温において、オーステナイト相の状態のステンレス鋼に応力等の冷間加工を加えることによりマルテンサイト相を生じることがある。
このように冷間加工により、FCC構造のオーステナイト相からBCC構造のマルテンサイト相への変態を加工誘起マルテンサイト変態という。拡散性水素とは、材料中に存在する水素で、室温で時間と共に材料から外に出る水素を言う。非拡散性水素とは、材料中に存在する水素で、室温から200℃程度までの温度でも時間と共に材料から外に出ていけない水素を言う。
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼中の拡散性水素及び非拡散性水素が、30質量ppm以上存在する場合、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労強度特性を著しく改善できることを突き止めた。本発明は、結晶構造が面心立方格子構造であるオーステナイト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法に関するものである。
本発明の発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼中の拡散性水素及び非拡散性水素が、30質量ppm以上存在する場合、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労強度特性を著しく改善できることを突き止めた。本発明は、結晶構造が面心立方格子構造であるオーステナイト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼、及びその水素添加方法に関するものである。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、結晶構造が面心立方格子構造であるオーステナイト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼であって、前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される拡散性水素及び非拡散性水素からなる水素(H)の濃度は、局所的に0.0030質量%(30質量ppm)以上の領域が、前記オーステナイト系ステンレス鋼の表面から、前記オーステナイト系ステンレス鋼の内側へ100μm以上の厚さになるような製造過程を経たものであり、前記オーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂の発生を遅くし、及び/又は、前記疲労き裂の進展を遅くしたことを特徴とする。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法は、結晶構造が面心立方格子構造であるオーステナイト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼内に存在する水素の濃度を高めるために水素を前記オーステナイト系ステンレス鋼に添加するためのオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法であって、前記オーステナイト系ステンレス鋼を、水素環境の中で、80℃以上の加熱温度で加熱して、前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される前記水素の局所濃度が0.0030質量%(30質量ppm)以上となる領域が、前記オーステナイト系ステンレス鋼の表面から、前記オーステナイト系ステンレス鋼の内側へ100μm以上の厚さで形成することを特徴とする。
オーステナイト系ステンレス鋼に含有される水素(H)の濃度は、オーステナイト系ステンレス鋼の全体で0.0030質量%(30質量ppm)以上の値であると良い。オーステナイト系ステンレス鋼に含有される水素(H)の濃度は、オーステナイト系ステンレス鋼の全体にわたって0.0030質量%(30質量ppm)以上であるとき、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労強度特性が著しく向上する。以下は、オーステナイト系ステンレス鋼の全体にわたっての水素のこの濃度を全体濃度と言う。
また、断面の最小寸法が200μm以上のオーステナイト系ステンレス鋼の表面から少なくとも100μm以上の厚さの領域にわたってそれに含有される水素(H)の濃度が0.0030質量%(30質量ppm)以上であるとき、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労強度特性が著しく向上する。以下は、オーステナイト系ステンレス鋼の表面から所定厚さの領域にわたっての水素の濃度を局所濃度と言う。ここで、断面の最小寸法とは、オーステナイト系ステンレス鋼材料の高さ、長さ、厚さの内の最小の長さを言う。
例えば、オーステナイト系ステンレス鋼の丸棒材であれば、断面の最小寸法は直径を指す。オーステナイト系ステンレス鋼の板材であれば、断面の最小寸法は板厚を指す。更に、オーステナイト系ステンレス鋼に含有される水素(H)の局所濃度、又は全体濃度が0.0050質量%(50質量ppm)以上であることが好ましい。
水素を0.0005質量%(5質量ppm)以下含有したオーステナイト系ステンレス鋼のビッカース硬さを1と定義する。従来の工程で製造されたオーステナイト系ステンレス鋼には、表1に示すように5質量ppm以下の水素が含まれる。言い換えると、このビッカース硬さは、従来の製造工程で不可避的に混入する水素を含有した状態であり、水素が未チャージの状態である。30質量ppm以上の水素を含有した領域のオーステナイト系ステンレス鋼のビッカース硬さは、1.05以上である。
拡散性水素及び非拡散性水素の添加は、オーステナイト系ステンレス鋼を水素環境中で、80℃以上の加熱温度で加熱処理すると良い。また、加熱温度の範囲は、温度200℃から500℃の範囲で行われると効率的である。加熱温度は、オーステナイト系ステンレス鋼のクロム(Cr)炭化物が、加熱により析出する温度である鋭敏化温度より低い温度であると良い。更に、加熱処理は、水素環境中で上述の加熱温度で460時間以下の時間保持すると良い。
拡散性水素及び非拡散性水素のオーステナイト系ステンレス鋼への添加は、高圧水素チャンバー内で曝露する方法、陰極水素チャージを施す方法、及び化学溶液等に浸漬させる方法を用いると良い。水素環境は、1MPa以上の水素ガスで充填したチャンバーが好ましい。
本発明によると、次の効果が奏される。本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼を水素環境中で80℃以上の温度で加熱処理して、オーステナイト系ステンレス鋼中の非拡散性水素と拡散性水素を30質量ppm以上の濃度にすることで、疲労き裂の発生及びき裂進展の遅いオーステナイト系ステンレス鋼を実現できた。
以下、本発明の実施の形態を実験例に変えて説明する。まず、オーステナイト系ステンレス鋼に発生した疲労き裂の進展速度に、水素がどのように影響しているかを説明する。表1に示したSUS304、SUS316、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼は、溶体化処理等の通常の加熱処理を施した後でも、1〜4.7質量ppmの非拡散性水素を含む。この加熱処理を施したオーステナイト系ステンレス鋼を水素環境中に置くと、水素は、オーステナイト系ステンレス鋼の表面から侵入し、材料の内部へ拡散して行く。
そして、材料中には、表面から内部に向かって水素濃度の分布が生じる。材料の水素濃度の分布を測定した測定例を図1に示す。表1に示したSUS304、SUS316、及び、SUS316L(A)の直径7mm、長さ約30mmの丸棒に、陰極水素チャージを施した。その後、これらの丸棒の水素濃度分布を測定し、図1のグラフに示した。図1のグラフの縦軸は、水素濃度を示す。水素濃度の単位は、質量ppmである。図1のグラフの横軸は、測定試料の表面からの距離である。陰極水素チャージは、次の通り行なわれた。
硫酸水溶液中に、陽極と陰極を配置して、陽極と陰極を電源に接続した。このとき、硫酸水溶液は、液温が50℃に保たれ、硫酸水溶液のpHは3.5であった。電流密度は、27A/m2であった。陽極には、白金電極を用いた。陰極には、オーステナイト系ステンレス鋼の丸棒を用いた。陰極水素チャージは、672時間行なわれた。丸棒に水素がチャージされた後、この丸棒の水素濃度分布は、次の手順で測定した。図中の点線は、水素チャージされていない、丸棒の水素濃度を示している。
図2(a)には、陰極水素チャージを施したオーステナイト系ステンレス鋼の丸棒を図示している。図2(a)に示す如く、陰極水素チャージを施したオーステナイト系ステンレス鋼の丸棒から、厚さ約0.8mmの円板形状の試料を切出した。この試料に含有される水素量は、昇温脱離分析により測定した。その後、丸棒にエメリー研磨紙による研磨を施した。この研磨された丸棒は、図2(b)に、実線で図示している。図2(b)の点線は、図2(a)の丸棒である。図2(b)に示すように、丸棒から、再び円板形状の試料を切出し、この試料の水素量を測定した。
図2(b)の丸棒を再度、エメリー研磨紙により研磨をした。このエメリー研磨した丸棒は、図2(c)に、実線で図示している。図2(c)の点線は、図2(b)の丸棒である。図2(c)に示すように、丸棒から、再び円板形状の試料を切出し、この試料の水素量を測定した。このように、エメリー研磨紙による研磨、試料の切り出し、水素量の測定を繰り返し行なった。図2(b)と図2(c)には、エメリー研磨紙による研磨により取り除かれた環状部分を図示している。環状部分は、実線で描かれた丸棒と、点線で描かれた部分との間の分である。
エメリー研磨する前の試料の水素量と、エメリー研磨した後の試料の水素量の差を、環状部分の質量で除することにより、環状部分の水素濃度を求めた。この環状部分は、図2(d)に示すように、研磨前の試料の体積から、研磨後の試料の体積を引いて、研磨された試料体積の算出ができる。従って、この研磨された試料体積から環状部分の質量を求め、環状部分の水素濃度を求めることができる。この操作を繰り返すことで、丸棒の試験片の表面からの深さと水素の局所濃度の関係を得ることができた。
図1に示した結果では、水素の局所濃度が0.0030%(30質量ppm)以上の領域が表面から5μmから60μmの範囲にある。このように水素環境下に置かれたオーステナイト系ステンレス鋼には、水素がその表面から侵入し、拡散して、水素濃度が勾配をもった状態になる。オーステナイト系ステンレス鋼を実際の高圧水素ガスの環境中で使用することを考えると、表面から内部に向かって局所水素濃度が徐々に減少している水素濃度の勾配を呈することが予想される。
例として図10にSUS316Lの水素固溶度KS=4.64質量ppm/MPa1/2と拡散係数D=8.42x10−17mm2/sから予測した水素濃度分布を示す。例えばSUS316Lの場合は、水素圧力35MPa、25℃で5年間使用すると、表面の局所水素濃度が0.0031質量%(31質量ppm)程度である。そして、この表面の局所水素濃度は、表面から400μm程度の範囲で、内部に向かって徐々に減少している水素濃度の勾配を呈することが予想される。なお、局所水素濃度が30質量ppm以上の領域は、表面から5μm程度の範囲であることが予想される。
また、例えばSUS316Lの場合は、水素圧力70MPa、25℃で5年間の使用を想定すると、表面の局所水素濃度が0.0049質量%(49質量ppm)程度で、表面から400μm程度の範囲で、内部に向かって局所水素濃度が徐々に減少している水素濃度の勾配を呈することが予想される。なお、局所水素濃度が30質量ppm以上の領域は、表面から80μm程度であることが予想される。
水素がオーステナイト系ステンレス鋼に侵入すると水素脆化を起こし、疲労強度特性を低下させることは一般的な常識であった。しかしながら、次に記述する疲労試験によって、オーステナイト系ステンレス鋼に侵入した水素の量が30質量ppm以上の場合は、疲労強度特性が著しく向上されることが判明された。オーステナイト系ステンレス鋼に侵入した水素の量が30質量ppm以上の場合、この水素による水素脆性が、確認されなくなった。特に、本発明の発明者等は、次の実験を行い、水素がその含有量によってどのように疲労き裂の進展速度に影響しているかを観察した。実験の一例を示す。
試験片
使用した材料は、表1に示したオーステナイト系ステンレス鋼SUS304、及び、SUS316L(A)(以下、単にSUS316Lという。)である。SUS304、SUS316Lは、溶体化処理を行ったものを用いた。図3(a)及び(b)には、この材料からできた試験片の形状を図示している。試験片の表面は、エメリー研磨紙で#2000まで研磨した後、バフ研磨により仕上げた。
使用した材料は、表1に示したオーステナイト系ステンレス鋼SUS304、及び、SUS316L(A)(以下、単にSUS316Lという。)である。SUS304、SUS316Lは、溶体化処理を行ったものを用いた。図3(a)及び(b)には、この材料からできた試験片の形状を図示している。試験片の表面は、エメリー研磨紙で#2000まで研磨した後、バフ研磨により仕上げた。
疲労き裂進展を容易に観察するために、図3(c)に示したような直径100μm、深さ100μmの人工の微小穴を試験片の長さ方向の中央部で、かつ試験片の半径方向にドリルで開けた。ドリルは、その先端の角度120度のものであった。この微小穴の底は、ドリルの先端の形状に合致するものであった。微小穴は、試験片の試験部の中央に導入された。試験部は、試験片の中央の円柱部分である。
試験部の円柱部分の長さは、要するに外径が均一部分の長さは、図3(a)の試験片では約20mm、図3(b)の試験片では約14mmである。図4には、試験部の概要及び導入された微小穴の形状を図示している。水素チャージされた試験片の場合は、水素チャージ終了直後に、再びバフ研磨を施して微小穴を開けた。
X線回折
試験片の試験部のマルテンサイト量は、X線回折により測定された。X線回折は、株式会社リガク(東京都昭島市)製の微小部X線応力測定装置PSPC-RSF/KMによって行われた。定量分析はCrKα線を使用し、オーステナイト相{220}面及びマルテンサイト相{211}面の回折ピークの積分強度比より求めた。試験部に含有される疲労試験前のマルテンサイト量は、材料がSUS304、SUS316Lの場合、ともに3%程度であった。
試験片の試験部のマルテンサイト量は、X線回折により測定された。X線回折は、株式会社リガク(東京都昭島市)製の微小部X線応力測定装置PSPC-RSF/KMによって行われた。定量分析はCrKα線を使用し、オーステナイト相{220}面及びマルテンサイト相{211}面の回折ピークの積分強度比より求めた。試験部に含有される疲労試験前のマルテンサイト量は、材料がSUS304、SUS316Lの場合、ともに3%程度であった。
水素チャージされた試験部に含有される疲労試験前のマルテンサイト量は、材料がSUS304、SUS316Lの場合、同じ3%程度であった。マルテンサイト量の測定は、人工の微小穴を導入する前に2箇所で行った。この測定の領域の1つ目は、人工の微小穴を導入する予定の位置を中心とする直径1mmの円の領域である。この測定の領域の2つ目は、人工微小穴を導入する予定の位置から試験片の長さ方向の軸を180度回転させた位置を中心とする直径1mmの円の領域である。つまり、2つ目の測定領域は、円柱部分上の1つ目の測定領域より、その円柱部分の反対側に位置する。
水素チャージ方法
水素チャージは、陰極水素チャージ法、又は高圧水素曝露法によって行った。陰極水素チャージ法の場合、陰極水素チャージの条件は、pH=3.5の硫酸水溶液、白金の陽極、電流密度i=27A/m2であった。硫酸水溶液の温度が50℃(323K)で、672時間(4週間)の陰極水素チャージを行った。硫酸水溶液は、蒸発による硫酸濃度の変化を小さくするために、1週間ごとに交換した。
水素チャージは、陰極水素チャージ法、又は高圧水素曝露法によって行った。陰極水素チャージ法の場合、陰極水素チャージの条件は、pH=3.5の硫酸水溶液、白金の陽極、電流密度i=27A/m2であった。硫酸水溶液の温度が50℃(323K)で、672時間(4週間)の陰極水素チャージを行った。硫酸水溶液は、蒸発による硫酸濃度の変化を小さくするために、1週間ごとに交換した。
高圧水素曝露法の場合は、10MPa、25MPa、48MPa、74MPa、94MPaのいずれかの圧力、235℃、242℃、250℃、280℃のいずれかの温度の高圧水素ガス環境中に、試験片を配置して、試験片に水素をチャージした。高圧水素ガス環境中に、図3(a)の試験片は400時間、414時間、416時間、419時間のいずれかの時間、図3(b)の試験片は200時間保持して、水素をチャージした。
疲労試験方法
疲労試験は、株式会社島津製作所(日本国京都府京都市)製の油圧サーボ引張圧縮疲労試験機サーボパルサーEHF−ED30KN及びインストロン製の油圧サーボ引張圧縮疲労試験機8500型を用いて行なわれた。疲労試験は、繰返し速度0.05〜1.5Hz、応力比R=−1で行った。繰返し速度は、疲労試験中に試験部の表面温度が60℃を超えないように調節した。レプリカ法又は日立製作所製の走査電子顕微鏡S−2500CXにより、疲労き裂を観察するとともに疲労き裂の長さの測定を行った。
疲労試験は、株式会社島津製作所(日本国京都府京都市)製の油圧サーボ引張圧縮疲労試験機サーボパルサーEHF−ED30KN及びインストロン製の油圧サーボ引張圧縮疲労試験機8500型を用いて行なわれた。疲労試験は、繰返し速度0.05〜1.5Hz、応力比R=−1で行った。繰返し速度は、疲労試験中に試験部の表面温度が60℃を超えないように調節した。レプリカ法又は日立製作所製の走査電子顕微鏡S−2500CXにより、疲労き裂を観察するとともに疲労き裂の長さの測定を行った。
レプリカ法による疲労き裂の観察は、次の通りである。厚さ0.034mm程度のアセチルセルロースフィルム(以下、レプリカフィルムという。)を、酢酸メチル液にしばらく浸漬させた後、試験片の観察する場所に貼った。レプリカフィルムを貼ってから2〜3分間待ち、レプリカフィルムが乾燥したらレプリカフィルムを試験片から剥がして、採取した。採取したレプリカフィルムに金を蒸着させて、金属顕微鏡で観察することで、試験部の疲労き裂を観察した。
よって、試験片を直接観察しなくても目的の疲労き裂の場所を観察することができた。水素チャージ材の場合は、疲労試験の終了直後直ちに試験部から直径7mm、厚さ0.8mmの試料を切り出し、真空チャンバー内にこの試料を入れ、昇温速度一定で加熱した。真空チャンバー内の圧力は、試料を加熱する前で1×10−7〜3×10−7Paであった。真空チャンバーの昇温速度は、0.33℃/s又は0.5℃/sであった。
真空チャンバー内の試料が加熱されることで、試料から水素が脱離し、脱離した水素量を四重極質量分析方式の昇温脱離分析装置(以下、TDSと言う。)により測定した。測定に用いたTDSは、電子科学株式会社(日本国東京都武蔵野市)製の昇温脱離分析装置(以下、TDSと言う。)EMD−WA1000S/Hである。TDSによる測定の精度は、0.01質量ppmであった。
測定された各種特性
図5は、疲労試験後に、水素未チャージのSUS304に導入した人工微小穴から発生した疲労き裂の写真である。写真からは、人工微小穴から発生した疲労き裂を確認できる。この疲労き裂は、人工微小穴の両側から発生し、ほぼ対称に進展していることがわかる。図6(a)と(b)は、疲労試験による試験片のき裂の長さと、疲労試験の繰返し数との関係を示すグラフである。図6(a)と(b)に図示したグラフの縦軸は、き裂の長さを示している。
図5は、疲労試験後に、水素未チャージのSUS304に導入した人工微小穴から発生した疲労き裂の写真である。写真からは、人工微小穴から発生した疲労き裂を確認できる。この疲労き裂は、人工微小穴の両側から発生し、ほぼ対称に進展していることがわかる。図6(a)と(b)は、疲労試験による試験片のき裂の長さと、疲労試験の繰返し数との関係を示すグラフである。図6(a)と(b)に図示したグラフの縦軸は、き裂の長さを示している。
図6(a)と(b)に図示したグラフの横軸は、疲労試験の繰り返し回数を示している。図6(a)と(b)は、図3(a)に示した試験部の直径が7mmの試験片を用いた場合である。図6(a)は、材料がSUS304の場合である。図6(b)は、材料がSUS316Lの場合である。図6(a)と(b)に示すグラフは、各材料SUS304、SUS316Lの試験片それぞれが、水素チャージされたものと、水素チャージされていないものの測定結果を示している。繰返し速度は、SUS304の場合は1Hz又は1.2Hzで、SUS316Lの場合は1Hzで行った。1Hzと1.2Hzの違いによる繰返し速度の影響はほとんどない。
図6(a)このグラフからは、図1と同じ水素濃度の勾配をもつ陰極水素チャージされた試験片は、大気中で試験を行ったものでは、水素チャージされていない場合と比べて、き裂の進展の速度が速くなっている。例えば、き裂の長さ2aが400μmに達するまでの繰り返し回数Nは、陰極水素チャージされた場合が水素チャージされていない場合と比べて少なくなっている。この場合、疲労き裂進展速度は、陰極水素チャージされた場合で約2倍速くなっていることになる。ここで、この結果は、陰極水素チャージ方法という水素チャージ方法に依存するものではない。
また、き裂の長さ2aが200μmに達した段階で、0.68MPaの水素ガス雰囲気に切り替えて試験を行ったSUS304は、水素チャージされていない場合でも、大気中で試験を行った場合に比べて、疲労き裂進展速度が速くなっている。一方、本発明例である水素ガス中に曝露して全体水素濃度を70.4質量ppm、及び89.2質量ppmにしたSUS304は、前記の水素未チャージ材ならびに陰極水素チャージ材に比べて著しく疲労き裂進展速度が遅くなっている。
また、全体水素濃度を89.2質量ppmにせしめたSUS304のビッカース硬さは192で、水素チャージされていない場合のビッカース硬さ176に比べて1.09倍であった。ここで言うビッカース硬さは、室温、大気中で試験荷重9.8Nで測定されたものである。また、水素ガス中に曝露して全体水素濃度を70.4質量ppmとしたSUS304では、大気中と0.68MPaの水素ガス中で試験を行った場合で疲労き裂進展速度に顕著な違いがないことを確認しており、水素環境中での使用に際しても十分な疲労強度特性向上の効果が得られる。
図6(b)の場合、大気中で疲労試験したSUS316Lの測定結果を図示している。全体水素濃度を47質量ppm含有させた試験片の場合は、水素チャージされていないものに比べて、疲労き裂進展速度が遅くなっている。き裂の長さ2aが400μmに達するまでの繰り返し回数Nは、30質量ppm以上に水素チャージされた場合が水素チャージされていない場合と比べて多くなっている。この場合、疲労き裂進展速度は、30質量ppm以上に水素チャージされた場合で、約8倍遅くなっていることになる。
図7は、試験片のき裂の長さと、疲労試験の繰り返し回数との関係を示すグラフである。この試験片は、図3(b)に示す試験部直径が4mmの試験片である。この試験片の疲労試験は、大気中で行なった。図7(a)のグラフは、材料がSUS304の場合の試験片が水素チャージされた場合と、水素チャージされていない場合の疲労試験の測定結果を示している。このとき、疲労試験の繰返し速度は、0.3Hzで行った。図7(b)は材料がSUS316Lの場合の試験片が水素チャージされた場合と、水素チャージされていない場合の疲労試験の測定結果を示している。
このとき、疲労試験の繰返し速度は、き裂長さ2aが約400μmに到達するまでは0.3Hzで、それ以降は0.05Hzで行っている。図7(a)の場合、試験片の全体水素濃度が23.8質量ppmで、局所水素濃度が30質量ppm以上含有した領域がない場合(SUS304)では、き裂長さ2aが1000μmに達するまでの繰り返し回数Nは、水素チャージされてない場合(SUS304)に比べて約4/5に短くなっており、疲労き裂進展速度が速くなっている。
一方、本発明の全体水素濃度98.6質量ppmの場合(SUS304)は、水素チャージされていない場合のき裂長さ2aが1000μmに到達する繰り返し回数N=11000の段階では、微小穴よりき裂は発生していない。ここからは、き裂の発生が抑制されていることがわかる。また、図7(b)に示した、全体水素濃度で78.9質量ppmの試験片(SUS316L)では、き裂長さ2aが1000μmになるまでの繰り返し回数Nが、水素チャージされていない場合(SUS316L)の8倍程度まで多くなっている。ここからは、試験片のき裂進展抵抗が著しく高まっていることがわかる。
図8は、SUS304の微小穴材における試験応力振幅σと試験片が破断する疲労寿命Nfとの関係を示すグラフである。このグラフの縦軸は、応力振幅を示し、横軸は、疲労寿命を示している。応力振幅280MPaでの疲労寿命を比較すると、全体水素濃度で89.2質量ppm含有させた試験片の方が、水素チャージされていない試験片に比べて、8倍程度長くなっている。全体水素濃度で109質量ppm含有させた試験片に関しては、水素チャージをしていない試験片の疲労寿命の約27倍の繰り返し回数でも、き裂が発生していない。
全体水素濃度が109質量ppmの試験片ではビッカース硬さが193で、水素チャージされていない試験片のビッカース硬さ176の1.10倍である。本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、水素がチャージされて30質量ppm以上含有させることを特徴としている。オーステナイト系ステンレス鋼に水素を30質量ppm以上含有させることにより、オーステナイト系ステンレス鋼に発生するき裂を飛躍的に減少させた。また、オーステナイト系ステンレス鋼に水素を30質量ppm以上含有させることにより、オーステナイト系ステンレス鋼に発生したき裂進展を飛躍的に遅くできた。
このき裂の発生減少、及び/又はき裂の進展の抵抗により、オーステナイト系ステンレス鋼の疲労寿命を長くすることができることは容易に推定できる。ただし、図1のグラフに示した如く、局所水素濃度が30質量ppm以上の領域が表面から数十μm程度の場合、さらにその内部に広がる局所水素濃度が30質量ppm未満の場合、疲労き裂の進展が加速する結果となる。
しかしながら、図6に示す如く、き裂長さ2aが300μmに達するまでの繰り返し回数が疲労寿命の大半を占めている。したがって、少なくともき裂長さ2a=300μmに対応するき裂深さ100μm以上の領域に局所水素濃度が30質量ppm以上であれば、疲労強度特性の向上に効果的に作用せしめることができる。さらに、好ましくは局所水素濃度が50質量ppm以上であるオーステナイト系ステンレス鋼である。
以下、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼に含まれる合金成分、その含有量、及び本発明の製造方法に規定される製造方法等を説明する。
オーステナイト系ステンレス鋼
オーステナイト系ステンレス鋼は、別名Cr−Ni系ステンレス鋼と呼ばれ、FeにCrとNiを添加したものである。オーステナイト系ステンレス鋼の主成分は、Fe、Cr,Niからなり、その他には次の表2に示す各種の添加物がある。
オーステナイト系ステンレス鋼
オーステナイト系ステンレス鋼は、別名Cr−Ni系ステンレス鋼と呼ばれ、FeにCrとNiを添加したものである。オーステナイト系ステンレス鋼の主成分は、Fe、Cr,Niからなり、その他には次の表2に示す各種の添加物がある。
オーステナイト系ステンレス鋼の組成について
Crは、耐食性を改善するためにFeに添加されたものである。Niは、耐食性を増すためにCrと組み合わせてFeに添加したものである。NiとMnは、冷間圧延後に非磁性を確保するための元素である。冷間圧延後に非磁性を保つためには10.0質量%以上のNiを含有させておく必要がある。さらに、加工誘起マルテンサイト相が1体積%以上生成しないように、Si,Mnの含有量に応じてNi量を調整する必要がある。Mnは、Nの固溶度を高める作用も有する。
Crは、耐食性を改善するためにFeに添加されたものである。Niは、耐食性を増すためにCrと組み合わせてFeに添加したものである。NiとMnは、冷間圧延後に非磁性を確保するための元素である。冷間圧延後に非磁性を保つためには10.0質量%以上のNiを含有させておく必要がある。さらに、加工誘起マルテンサイト相が1体積%以上生成しないように、Si,Mnの含有量に応じてNi量を調整する必要がある。Mnは、Nの固溶度を高める作用も有する。
Cは、強力なオーステナイト形成用の元素である。更に、Cはステンレス鋼の強度の向上に有効な元素である。Cを過剰に添加すると、再結晶処理時に粗大なCr系炭化物が析出し、耐粒界腐食や疲労特性低下の原因になる。Siは、脱酸と固溶強化の目的で添加される。Siの含有量が高くなると冷間加工時にマルテンサイト相の生成を促進させるため、微量の添加が望ましい。Nは、固溶硬化をもたらす。
Moは、耐食性向上の目的で添加されるものである。更に、時効処理で炭窒化物を微細に分散させる作用も呈する。Tiは、析出硬化に有効な元素であり、時効処理による強度を上昇させるために添加される。Bは、熱間加工温度域でのδフェライト相とオーステナイト相の変形抵抗の差異により生じる熱延鋼帯でのエッジクラックの発生防止に有効な合金成分である。Alは、製鋼時に脱酸を目的として添加される元素であり、Tiと同様に析出硬化にも有効に作用する。
本発明の実施の形態は上記の表2に記述された元素の他に必用に応じてNb、Cu等の元素を添加して使用することができる。NbはTiの代替元素となりえる。
オーステナイト相について
オーステナイト系ステンレス鋼は、オーステナイト相が全体積のほぼ100%であることが望ましい。オーステナイト系ステンレス鋼中のマルテンサイト相は、無いことが望ましい。例えば、非特許文献2に示すように、オーステナイト相に対してマルテンサイト相が多い場合は、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の範囲に入らない。
オーステナイト相について
オーステナイト系ステンレス鋼は、オーステナイト相が全体積のほぼ100%であることが望ましい。オーステナイト系ステンレス鋼中のマルテンサイト相は、無いことが望ましい。例えば、非特許文献2に示すように、オーステナイト相に対してマルテンサイト相が多い場合は、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の範囲に入らない。
その他の性質について
平均結晶粒径は、50μm程度以下であることがこのましい。現状の材料で平均結晶粒径が50μm程度であり、それ以下の平均結晶粒径が望ましい。
平均結晶粒径は、50μm程度以下であることがこのましい。現状の材料で平均結晶粒径が50μm程度であり、それ以下の平均結晶粒径が望ましい。
加熱による水素添加処理について
オーステナイト系ステンレス鋼の加熱による水素添加処理について述べる。疲労き裂の発生及び進展、又はそのいずれかの抵抗向上に、オーステナイト系ステンレス鋼に30質量ppm以上の水素を含有せしめることが効果的である。この水素の効果を本発明の発明者等が始めて突き止めたものである。この効果を得るためには、オーステナイト系ステンレス鋼内に30質量ppm以上の水素を、次のように加熱処理を施して添加させる。
オーステナイト系ステンレス鋼の加熱による水素添加処理について述べる。疲労き裂の発生及び進展、又はそのいずれかの抵抗向上に、オーステナイト系ステンレス鋼に30質量ppm以上の水素を含有せしめることが効果的である。この水素の効果を本発明の発明者等が始めて突き止めたものである。この効果を得るためには、オーステナイト系ステンレス鋼内に30質量ppm以上の水素を、次のように加熱処理を施して添加させる。
拡散性水素及び非拡散性水素の添加は、オーステナイト系ステンレス鋼を80℃以上の加熱温度で加熱処理する。加熱処理は、水素環境下で行われる。水素環境には、高圧、及び低圧の水素ガス環境、陰極水素チャージ環境、及び浸漬水素チャージ環境、その他に水素分圧の高い気相または液相環境等が含まれる。また、加熱処理においては、オーステナイト系ステンレス鋼を水素環境下で加熱温度に保持する時間は460時間以下である。加熱温度は、オーステナイト系ステンレス鋼のクロム(Cr)炭化物が加熱により析出する温度である鋭敏化温度より低い温度であることが好ましい。
例えば、表1及び表2に示すオーステナイト系ステンレス鋼の場合は、加熱温度の上限温度は500℃である。一方、水素を表面から100μm以上の厚さの表面層に効率的に添加せしめるためには200℃以上の加熱温度で加熱処理することが好ましい。このような加熱処理によって、オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆性の原因となる拡散性水素及び非拡散性水素を、30質量ppm以上にオーステナイト系ステンレス鋼に添加し、オーステナイト系ステンレス鋼に含有される水素(H)を0.0030質量%(30質量ppm)以上にする。
この加熱処理後にオーステナイト系ステンレス鋼に含有される水素(H)の量は0.0050質量%(50質量ppm)以上であることが望ましい。このように、オーステナイト系ステンレス鋼に含有される水素の量を従来の量より多くして、疲労き裂の発生及び進展又はそのいずれかを抑制し、疲労強度特性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供できる。
その他の実験例1
SUS316(A)、SUS316L(B)、SUS310S(A)ならびにSUH660(A)でできている試験片を用いて水素添加処理の実験を行った。試験片は、直径7mmの丸棒である。実験は、圧力94MPaの水素ガス中で、温度280℃の中で、試験片をいれて200時間加熱処理した。熱処理後、試験片の全体水素濃度とビッカース硬さを測定した。TDS測定には直径7mmで厚さ0.8mmの円板形状に切断して供した。
SUS316(A)、SUS316L(B)、SUS310S(A)ならびにSUH660(A)でできている試験片を用いて水素添加処理の実験を行った。試験片は、直径7mmの丸棒である。実験は、圧力94MPaの水素ガス中で、温度280℃の中で、試験片をいれて200時間加熱処理した。熱処理後、試験片の全体水素濃度とビッカース硬さを測定した。TDS測定には直径7mmで厚さ0.8mmの円板形状に切断して供した。
測定は、電子科学株式会社(所在地:東京都武蔵野市)製の昇温脱離分析装置EMD-WA1000S/Hで行われた。この測定結果を表3に示している。水素添加処理していない試験片の水素濃度は、1.5〜3.4質量ppmであった。これを水素ガス環境中で加熱処理したとき、試験片の水素濃度は、69.9〜129.1質量ppmになった。また水素添加処理する前のビッカース硬さと、水素添加処理した後のビッカース硬さの変化は、1.08〜1.11倍であった。
その他の実験例2
SUS316(A)およびSUS316L(B)でできている試験片を用いて水素添加処理の実験を行った。試験片は、直径7mm、厚さ0.2mmの円板である。実験は、圧力102MPaの水素ガス環境中で、温度120℃の中に、試験片を入れて120時間水素添加処理を行った。水素添加処理前のSUS316(A)の試験片の全体水素濃度は、3.4であった。水素添加処理後、この試験片の全体水素濃度は79.4質量ppmになった。水素添加処理前のSUS316L(B)の試験片の全体水素濃度は、1.5であった。
SUS316(A)およびSUS316L(B)でできている試験片を用いて水素添加処理の実験を行った。試験片は、直径7mm、厚さ0.2mmの円板である。実験は、圧力102MPaの水素ガス環境中で、温度120℃の中に、試験片を入れて120時間水素添加処理を行った。水素添加処理前のSUS316(A)の試験片の全体水素濃度は、3.4であった。水素添加処理後、この試験片の全体水素濃度は79.4質量ppmになった。水素添加処理前のSUS316L(B)の試験片の全体水素濃度は、1.5であった。
水素添加処理後、この試験片の全体水素濃度は73.6質量ppmになった。図11に試験片全体の水素濃度とビッカース硬さ比の関係を示す。ビッカース硬さ比とは、従来の製造工程で混入する不可避的水素のみ含有したオーステナイト系ステンレス鋼のビッカース硬さを1とするときに、本発明の水素添加処理を施したオーステナイト系ステンレス鋼のビッカース硬さの比を指している。従来の製造方法で作られたオーステナイト系ステンレス鋼は表1に示すように通常1〜5質量ppmの水素が含まれている。
このように、ステンレス鋼をその水素環境中で加熱処理を行い、その中に含有される水素濃度を30質量ppm以上とすることができた。ただし、本発明の水素環境は、高圧水素ガス環境に限定されるものではない。また水素添加処理は溶体化処理などの製造工程における環境をコントロールして、水素チャージに適した環境とし、実施してもよい。
本発明は、耐食性とともに高圧の水素を利用する分野に使用されると良い。特に水素侵入で水素脆性・遅れ破壊が懸念されるメタルガスケット、自動車用各種バルブ、ばね、配管、フレキシブルホース、カップリング、圧力計、ダイヤフラム、ベローズ、圧力容器、ボルト、スチールベルト、刃物材、燃料電池、燃料電池システム周辺で用いられるバルブ、ばね材等に利用されると良い。
Claims (12)
- 結晶構造が面心立方格子構造であるオーステナイト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼であって、
前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される拡散性水素及び非拡散性水素からなる水素(H)の濃度は、局所的に0.0030質量%(30質量ppm)以上の領域が、前記オーステナイト系ステンレス鋼の表面から、前記オーステナイト系ステンレス鋼の内側へ100μm以上の厚さになるような製造過程を経たものであり、前記オーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂の発生を遅くし、及び/又は、前記疲労き裂の進展を遅くした
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、
前記水素(H)の濃度は、前記オーステナイト系ステンレス鋼の全体で0.0030質量%(30質量ppm)以上の値である
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、
前記水素(H)の前記濃度は、0.0050質量%(50質量ppm)以上である
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、
前記水素(H)の前記濃度は、前記オーステナイト系ステンレス鋼の全体で0.0050質量%(50質量ppm)以上である
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1ないし4の中から選択される1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、
前記水素(H)の濃度が、前記オーステナイト系ステンレス鋼の全体で0.0005質量%(5質量ppm)以下であるオーステナイト系ステンレス鋼のビッカース硬さ(HV)を1とするとき、ビッカース硬さ(HV)が1.05以上である
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1ないし5の中から選択される1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、
前記オーステナイト系ステンレス鋼は、水素環境の中で80℃以上の加熱温度で加熱処理されて、前記水素を吸蔵させたものである
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項6に記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、
前記加熱温度は、200℃以上500℃以下の温度である
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 結晶構造が面心立方格子構造であるオーステナイト相を有するオーステナイト系ステンレス鋼内に存在する水素の濃度を高めるために、水素を前記オーステナイト系ステンレス鋼に添加するためのオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法であって、
前記オーステナイト系ステンレス鋼を、水素環境の中で、80℃以上の加熱温度で加熱して、前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される前記水素の局所濃度が0.0030質量%(30質量ppm)以上となる領域が、前記オーステナイト系ステンレス鋼の表面から、前記オーステナイト系ステンレス鋼の内側へ100μm以上の厚さに形成する
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法。 - 請求項8に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法において、
前記オーステナイト系ステンレス鋼のクロム(Cr)炭化物が加熱により析出する温度である鋭敏化温度より低い温度である200℃以上500℃以下の温度で、前記オーステナイト系ステンレス鋼を460時間以下の時間保持し、
前記オーステナイト系ステンレス鋼に前記水素を吸蔵させる
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法。 - 請求項8又は9に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法において、
前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される前記水素(H)の全体的な濃度を0.0030質量%(30質量ppm)以上にする
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法。 - 請求項8又は9に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法において、
前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される前記水素(H)の前記局所濃度を0.0050質量%(50質量ppm)以上にする
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法。 - 請求項10に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法において、
前記オーステナイト系ステンレス鋼に含有される前記水素(H)の前記全体的な濃度を0.0050質量%(50質量ppm)以上にする
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の水素添加方法。
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