JP5176034B1 - ウシ個体における枝肉重量及び体高を増加させる遺伝的能力を評価する遺伝子マーカー及びそれを用いた枝肉重量及び体高に関する遺伝的能力の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】配列番号1の塩基配列から成るウシPTPDC1遺伝子のcDNAの964番目の塩基に対応する塩基、配列番号2の塩基配列から成るFGD3遺伝子のcDNAの47番目、556番目、または、557番目の塩基に対応する塩基、あるいは、配列番号3の塩基配列から成るウシSUSD3遺伝子のcDNAの53番目の塩基に対応する塩基を決定し、順に、G、C、T、G、Aである時に、そのウシ個体の枝肉重量、または、体高を増加させる遺伝的能力が、各塩基が野生型であるウシ個体より高いと評価し、枝肉の重量が重く、体高が高いと予測する。
【選択図】なし
Description
ウシ野生型PTPDC1遺伝子(Gene ID:519311)のcDNAであって、配列番号1(NM_001206596)の塩基配列から成るウシ野生型PTPDC1cDNAの964番目の塩基はT(本明細書では、この塩基を野生型と称する)であるが、実施例に示すように、その塩基がG(本明細書では、この塩基を変異型と称する)である場合、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高が、その塩基がTであるウシ個体より増加すると判断できる。従って、ウシPTPDC1遺伝子において、配列番号1の塩基配列から成るPTPDC1cDNAの964番目の塩基に対応する塩基(本明細書では、その塩基をSNP1と称する)を決定すれば、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高を増加させる遺伝的能力を評価したり、枝肉の重量及び/または体高を予測したりすることができる。なお、SNP1は、UMD3.1(Center for Bioinformatics and Computational Biology at University of Marylandにより2009年12月に公開されたウシゲノムアッセンブリ)の86808360番目の塩基に対応する。
ウシ野生型FGD3遺伝子(Gene ID:512950)のcDNAであって、配列番号3(NM_001024527)の塩基配列から成るウシ野生型FGD3cDNAの47番目の塩基はT(本明細書では、この塩基を野生型と称する)であるが、あるウシ個体において、その塩基がC(本明細書では、この塩基を変異型と称する)である場合、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高が、その塩基がTであるウシ個体より増加すると判断できる。また、ウシ野生型FGD3遺伝子(Gene ID:512950)のcDNAであって、配列番号3の塩基配列から成るウシ野生型FGD3cDNAの556番目の塩基はC(本明細書では、この塩基を野生型と称する)であるが、あるウシ個体において、その塩基がT(本明細書では、この塩基を変異型と称する)の場合、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高が、その塩基がCであるウシ個体より増加すると判断できる。さらに、ウシ野生型FGD3遺伝子(Gene ID:512950)のcDNAであって、配列番号3の塩基配列から成るウシ野生型FGD3cDNAの557番目の塩基はA(本明細書では、この塩基を野生型と称する)であるが、あるウシ個体において、その塩基がG(本明細書では、この塩基を変異型と称する)の場合、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高が、その塩基がAであるウシ個体より増加すると判断できる。従って、ウシFGD3遺伝子において、配列番号3の塩基配列からなるFGD3cDNAの47番目の塩基に対応する塩基(本明細書では、その塩基をSNP2と称する)、556番目の塩基に対応する塩基(本明細書では、その塩基をSNP3と称する)、または、557番目の塩基に対応する塩基(本明細書では、その塩基をSNP4と称する)を決定すれば、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高を増加させる遺伝的能力を評価したり、枝肉重量及び/または体高を予測したりすることができる。なお、SNP2は、UMD3.1の85820133番目の塩基に対応し、SNP3は、UMD3.1の85826989番目の塩基に対応し、SNP4は、UMD3.1の85826990番目の塩基に対応する。
ウシ野生型SUSD3遺伝子(Gene ID:512524)のcDNAであって、配列番号5(XM_002689847)の塩基配列から成るウシ野生型SUSD3cDNAの53番目の塩基はC(本明細書では、この塩基を野生型と称する)であるが、その塩基がA(本明細書では、この塩基を変異型と称する)である場合、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高が、その塩基がCであるウシ個体より増加すると判断できる。従って、ウシSUSD3遺伝子において、配列番号5の塩基配列から成るSUSD3cDNAの53番目の塩基に対応する塩基(本明細書では、その塩基をSNP5と称する)を決定すれば、そのウシ個体の枝肉重量及び/または体高を増加させる遺伝的能力を評価したり、枝肉重量及び/または体高を予測したりすることができる。なお、SNP5は、UMD3.1の85867544番目の塩基に対応する。
本発明において、ウシ個体の枝肉重量及び/または体高を増加させる遺伝的能力の評価、または、ウシ個体の枝肉重量及び/または体高の予測のためのマーカーは、SNP1を検出するためのPTPDC1遺伝子関連物質、SNP2を検出するためのFGD3遺伝子関連物質、SNP3を検出するためのFGD3遺伝子関連物質、SNP4を検出するためのFGD3遺伝子関連物質、あるいは、SNP5を検出するためのSUSD3遺伝子関連物質である。遺伝子関連物質には、ゲノムDNA、転写産物であるhnRNA、mRNA、cDNA、翻訳物であるポリペプチド、様々な修飾を受けた最終産物であるタンパク質などが含まれる。
哺乳動物の枝肉重量に関する遺伝的能力は、SNP1〜SNP5やAA1〜AA4を決定し、その個体のジェノタイプを決めることによって評価できる。ここで、評価対象の哺乳動物は特に限定されず、ヒトでもヒト以外でもよく、マウス、ラット、ウサギ、サル等の実験動物、イヌ、ネコ等のペット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ等の家畜であってもよいが、ウシであることが好ましく、Bos taurus種のウシであることが最も好ましい。
本発明に係る枝肉重量及び/または体高を増加させる遺伝的能力の評価方法を用いて、哺乳動物の個体群の中から、枝肉重量、かつ/または体高を増加させる遺伝的能力の高い個体を選択することができる。
[1]DNAの抽出及びSNPのタイピング方法
ゲノムDNAは、精液、腎周囲脂肪もしくは血液より常法により抽出した。目的とするゲノム断片を特異的に増幅できるプライマーを用いて、PCR法により該当ゲノム領域を増幅した。
SNPについては、Big Dye Terminator v.3.1 Cycle Sequencing Kit (アプライドバイオシステムズ社)を用いてPCR増幅産物のダイレクトシークエンシングを行うことによって配列を決定し、SNPの検出及びタイピングを行った。
枝肉重量は、屠場に出荷された黒毛和種個体の枝肉の格付け成績を用いた。
==遺伝子マーカーと枝肉重量の相関==
2000年から2008年までに2つの市場で収集した約2万頭の黒毛和種の去勢牛サンプルの枝肉重量の値を、出荷月齢、出荷年度、市場について線形回帰により補正して、補正枝肉重量値を算出した。その補正枝肉重量値が上位15%である個体、下位15%である個体をそれぞれ抽出した。さらに、上位、下位の各群内に父方半きょうだい個体を複数含まないように個体を選択し、上位142個体を上位群、下位145個体を下位群として用いた。
約2万頭の黒毛和種の去勢ウシ集団から、1236頭をランダムに抽出し、PTPDC1遺伝子のcDNAの964番目の塩基(SNP1)による枝肉重量の評価を行った。なお、抽出に際し、半きょうだいは3頭以下とした。また、枝肉重量の値は、出荷月齢、出荷年度、市場について、抽出前の2万頭のウシ集団において線形回帰により補正した値を用いた。
黒毛和種の去勢ウシ236頭(種雄牛候補のウシ31頭について、各ウシの産子6〜8頭ずつ)について、成長を追って体重及び体高を測定した。なお、体重、体高の表現型値は、直近の前後の測定値を用いて線形補間による回帰分析で算出した。その後、PTPDC1遺伝子のcDNAの964番目の塩基(SNP1)を決定し、SNP1の塩基と、体重及び体高との相関を解析した。
GenBankに登録されているウシ、ヒト、マウス、及びラットの野生型PTPDC1cDNA、野生型PTPDC1タンパク質、野生型FGD3cDNA、及び野生型FGD3タンパク質(表4)について、Genetix-Mac(Genetix社)を使用して塩基配列またはアミノ酸配列のアライメントを作成した。
Claims (5)
- ウシ個体における枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力の評価方法であって、
配列番号1の塩基配列から成るウシPTPDC1(protein tyrosine phosphatase domain containing 1)cDNAの964番目の塩基に対応する塩基を決定し、
PTPDC1遺伝子の少なくとも一方のアレルにおいて前記塩基がGである場合、その個体の枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力が、PTPDC1遺伝子の両方のアレルにおいて前記塩基がTであるウシ個体よりも高いと評価することを特徴とする評価方法。 - ウシ個体における枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力の評価方法であって、
配列番号2のアミノ酸配列から成るウシPTPDC1(protein tyrosine phosphatase domain containing 1)タンパク質の315番目のアミノ酸に対応するアミノ酸を決定し、前記アミノ酸がバリンである場合、その個体の枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力が、前記アミノ酸がフェニルアラニンであるウシ個体よりも高いと評価することを特徴とする評価方法。 - ウシ個体における枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力を評価する遺伝子マーカーであって、
配列番号1の塩基配列から成るウシPTPDC1(protein tyrosine phosphatase domain containing 1)cDNAの964番目の塩基に対応する塩基を含む、PTPDC1遺伝子の一部または全部を有するDNAから成ることを特徴とするマーカー。 - ウシ個体における枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力を評価するマーカーであって、
配列番号2のアミノ酸配列から成るウシPTPDC1(protein tyrosine phosphatase domain containing 1)タンパク質の315番目のアミノ酸に対応するアミノ酸を含む、前記タンパク質の一部または全部を有するポリペプチドから成ることを特徴とするマーカー。 - 枝肉重量または体高を増加させる遺伝的能力の高いウシ個体の選択方法であって、
配列番号1の塩基配列から成るPTPDC1(protein tyrosine phosphatase domain containing 1)cDNAの964番目の塩基に対応する塩基を、各ウシ個体で決定する工程と、
PTPDC1遺伝子の少なくとも一方のアリルにおいて、前記塩基がGである個体を選択する工程とを含む選択方法。
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