JP5173236B2 - スタフィングボックス - Google Patents
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Description
本発明は、クロスヘッド型ディーゼル機関等に用いられるピストンロッド用スタフィングボックスにおいて、内部に装着するリングを小型軽量、柔構造とすることで、オイル消費量の低減と長寿命化を達成しメンテナンス性に優れたスタフィングボックスを提供することを課題とする。
当該オイル掻きリング本体は、周方向に少なくとも2つ以上に分割され、断面形状において軸方向の幅が5mm以上15mm以下であって、且つ径方向の厚さが別体のレール部を含み17mm以上23mm以下であることを特徴とする。
特に舶用内燃機関の場合、ピストンロッドの径は従来より普及している規格寸法がある。この規格の最小の径に合わせたオイル掻きリングでは、リングを保持するために要求されるコイルの張力からコイルの外径が5mm以上必要となる。このコイルをリング本体で受けるためリング本体の幅も5mm以上の幅が必要である。また、同様にピストンロッドの規格で大径のものに対しては同様にコイルの巻き径がほぼ15mmあればその要求に足りる。また、スタフィングボックスに装着するオイル掻きリングは上下側面にリング溝への当接面を有する。オイル掻きリングのレール部がピストンロッドの摺動に抗し、十分な可撓性を持ってオイル掻きを機能させる際にリング本体に捩れの力を与えるが、この当接面が適切にスタフィングボックスのリング溝側面への面圧を維持することでねじれを抑えることができる。ここで、オイル掻きリングが安定的にリング溝内に保持され且つ機能するために、オイル掻きリング本体の径方向の厚さは17mm以上23mm以下、望ましくは20mm必要であることを、本発明の発明者は研究の結果知見した。
なお、上記のようにピストンロッドの径は従来より普及している規格寸法があるが、本発明のスタフィングボックスならびに、これに装着するオイル掻きリングは、いずれの規格のいずれの径のピストンロッドに対しても当該ロッドが挿通するための内周径を変更するのみで、同一の断面形状を使用することで同様の作用効果を発揮することができる。
より安定的にオイル掻き性能を発揮するには、本発明のオイル掻きリングを3段から6段望ましくは4段が必要である。
上記構成によれば、装着するオイル掻きリングの本体の外周とリング溝底の空隙を、一時的な貯油空間として従来に比しより大きく確保できる。
リング溝の下側面は、水平に加工されたリング挟持部の外周端部を基点に径方向外側に向けて傾斜し縦壁面と適切な角Rにて接合されて貯油空間を形成している。この傾斜面の角度は、機能上要求される貯油容積とケーシングに許容される寸法の範囲とで自由に決定されるが、リングで掻き集めたオイルを滞ることなくより確実に排出することができる角度が5度から40度の範囲で望ましくは10度であることが発明者の実証確認から判明している。
スタフィングボックス内にはオイル掻きリングが数段装着されている。オイル掻きリングを装着する最上段のリング溝底にはシステム油以外の物質が混ざる可能性が高いので、この溝底はクランク室に連通させない。従って、これ以外のリング溝底をスタフィングボックス中心軸と平行に開孔したドレン孔により連通させ、オイル掻きリングがピストンロッドより掻き取ったシステム油を確実にクランクケースへ導く。なおドレン孔は、リング溝底の同一円周上に等間隔で複数配置が望ましい。
リング本体中央部にもオイル通し穴を開孔しているが、リング本体上側面のスリットは当該リングより上位のリングが掻き落としたオイルを、また下側面のスリットは当該リングの上下に存在するレール部の下側のレールが掻き落としたオイルをそれぞれリング本体を貫通してリング溝底に導くことができる。スリットの円周上の配置は、リング本体の強度を配慮して上下が重ならないこととし、その数は通過するオイル量に合わせ適宜設ければよい。
また、本発明が対象とする内燃機関の運転中には、燃焼爆発時の衝撃によりクロスヘッドを介して上下動するピストンロッドに横方向の振れが加わる。この振れによって、ピストンロッド外側面が本発明のオイル掻きリングに与える負荷は従来のオイル掻きリングと同じである。しかし、慣性重量が軽減されたことによる追従性の向上は、横方向(ピストン往復運動に対して直交する方向)に対する振れにも有利になる。すなわち、従来の慣性重量の大きいオイル掻きリングはピストンロッドの振れに対して追従できずに、瞬間的にピストンロッドとオイル掻きリングのレール部との間の面圧が低下してオイル掻き性能を低下させていたが、本発明のオイル掻きリングは、その振れに対する追従性が向上するので、より安定してオイル掻きリングの性能を維持することができる。
更に、適正なピストンロッドとオイル掻きリングの位置関係を安定的に維持することは、掻き取りの機能をより確実にすることができ、その結果オイルの混濁による汚損や無用な消費を低減し各オイルと共にリング自体の寿命の向上につなげる事ができる。
また、複数段収納される当該リングを小型することで、スタフィングボックス自体を小型、軽量化することもできる。
なお本発明では、オイル掻きリングに限定した適用としているが、シールリングに対しても多少の知識があれば容易に応用でき、本発明と合わせれば一層の効果が期待できることは言うまでも無いことである。
上側リング3段に形成されたのはシールリング210であり、その第一段目のシールリング211は異物除去のスクレーパ機能を有するので特別な断面形状をしているが、基本的には共通の機能を有し、ガスシール及びシリンダライナに供給されるシリンダ油の漏洩を密封する。そして、リングを保持するリング溝の径方向最外周にある溝底はリングの外周に所定の貯油空間280を確保するように設定されている。
下側リング4段に形成されたのはオイル掻きリング110であり、4段のうち最上段のオイル掻きリング111は上部から侵入した燃焼残油によって汚濁したシリンダ油、及びオイル掻きリングにより掻き切れず侵入したシステム油の混合油をドレン孔170から外部に排出する。図2は最上段を除く下3段のオイル掻きリング110の細部を詳しく示しており、その機能は図示しないピストンロッド90より掻き取ったシステム油を、オイル通し穴112及び上側スリット113、下側スリット114を通じてリング溝底の貯油空間180に集め、リング溝の外周に設けられたドレン孔120により図示しないクランクケースに戻す。なお、上側スリット113、下側スリット114はリング本体110の円周上で同じ位置には配置されないが、説明を簡易にするために同一断面に示している。
上記各リングはピストンロッド90に側部から装着できるように、円周上で複数に分割されており、リング本体の最外周に配置する伸展可能なコイル300によって適正な張力を持って保持される。
さらに本実施例1では、スタフィングボックスのリング溝底180の底面を角度10度で外周下側に向けて傾斜させており、通過するオイルを滞ることなくドレン孔120へ導くことができる。
本試験に用いた内燃機関の異常シリンダは2つ(N1、N2)あり、実際にそれぞれ1日に数10リットルの単位でシステム油を消費していた。これは通常の4倍以上の異常な消費量であり、新品の従来リングに交換しても全く改善されない状況であった。このような場合、従来であればピストンロッドの偏摩耗も疑われるので、ピストンロッド共々大掛かりな交換作業をして対応していた。しかし、表3と図3にあるとおり本発明のスタフィングボックスに交換しただけで、異常が確認されていた2つのシリンダ双方でオイル消費量は飛躍的に改善され、従来異常としていなかった他のシリンダより更にオイル消費量が改善された。
また、レール部の摩耗状況から、本実施例1ではリングの寿命も3倍に伸ばせることが確認出来、オイル消費量を飛躍的に減らすことと相まって、いずれにおいても優れた効果を示すことが判明した。
さらに、図3のグラフより経過時間の当初より従来技術に比してオイル消費が少ないことが確認できる。これは、本発明のスタフィングボックスに装着した、可撓性を増したオイル掻きリングの初期なじみが当初より有効的に作用し、時間経過と共にさらになじみを増したことが実証された。
100ランド部
110オイル掻きリング
120ドレン孔(側面に排出)
170ドレン孔(クランクケースに排出)
180リング溝底
210シールリング
Claims (2)
- ケーシング内部に形成された複数のリング溝の上段にそれぞれシールリングが組み込まれ、下段のリング溝にはそれぞれオイル掻きリングが組み込まれるクロスヘッド型ディーゼルエンジンのピストンロッド用スタフィングボックスにおいて、前記オイル掻きリング本体は、周方向に少なくとも2つ以上に分割され、断面形状において軸方向の幅が5mm以上15mm以下で、径方向の厚さが別体のレール部を含み17mm以上23mm以下であり、前記オイル掻きリングを装着する下段のリング溝底の外径が、シールリングを装着する上段のリング溝底の外径以上に設定され、かつ前記オイル掻きリングを装着するリング溝の溝底下側面が、径方向外側に向けて、5度から40度下方に傾斜し、前記オイル掻きリングを装着するリング溝の最下段を含む2段以上の溝底がスタフィングボックス中心軸と平行に開孔したドレン孔に連通することを特徴とするスタフィングボックス。
- 前記オイル掻きリング本体上側面及び下側面の双方またはいずれか一方に、半径方向に内周面から外周面に向けて連通するスリットを複数有することを特徴とする請求項1に記載のスタフィングボックス。
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