JP5169875B2 - コンクリートのひび割れ指数推定方法及びコンクリートの設計方法 - Google Patents

コンクリートのひび割れ指数推定方法及びコンクリートの設計方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリートのひび割れ指数推定方法及びコンクリートの設計方法に関するものである。
コンクリートは、セメント、水、細骨材(砂)、および粗骨材(砂利)などの材料を練り合わせることにより製造される。セメントは、酸化カルシウム(CaO)が主成分であるため、コンクリート製造時に水と反応して反応熱(水和熱)を発生させる。そのため、コンクリートは若材齢時に自らの水和熱によって温度上昇する性質を有している。
また、コンクリートは力学的に引張力に対して非常に弱いため、一般的にはひび割れが発生することを前提として設計される。しかし、そのひび割れが過度である場合は、内在する鉄筋等が腐食して構造物の耐久性を著しく損なうおそれがある。
よって、コンクリートの強度レベルが低い若材齢時において、水和熱によるひび割れ(温度ひび割れ)を防止することは、実構造物の耐久性能上、非常に有効である。
具体的なひび割れ防止方法としては、ひび割れ指数Icrの値を制限する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。ひび割れ指数Icrは、ひび割れ易さを示す度合であり、下式(1)
cr=ft/σt …(1)
但し、ft:コンクリートの引張強度
σt:コンクリートの最大主引張応力度
で定義される。
このひび割れ指数Icrは、3次元有限要素法(FEM;Finite Element Method)により引張強度ftと最大主引張応力度σtを求めて算出される。
特開2005−344437号公報 特開2006−118996号公報
しかしながら、上述のひび割れ指数Icrの値を制限する方法では、ひび割れ指数Icrを実際の施工ごとに毎回3次元有限要素法により算出する必要があり、時間とコストがかかるという問題があった。
3次元有限要素法は、その煩雑さから実際の施工において検討を省略されることが多く、結果として、耐久性上有害な温度ひび割れが発生してしまうことが少なくない。
そこで、本発明の目的は、容易にひび割れ指数を推定することが可能なコンクリートのひび割れ指数推定方法及びコンクリートの設計方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、コンクリートの若材齢時におけるひび割れ指数を推定する方法であって、ひび割れ指数Icrを下式(1)
cr=ft/σt …(1)
但し、ft:コンクリートの引張強度
σt:コンクリートの最大主引張応力度
で定義し、式(1)中の引張強度ft、最大主引張応力度σtを3次元有限要素法により求めてひび割れ指数Icrを求めるに際して、引張強度ftと最大主引張応力度σtを決定する施工条件であるパラメータとしての単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の基準条件を設定し、設定した基準条件での基準パラメータを基にひび割れ指数Icr0を求めておき、次に、これら基準パラメータを実際の施工条件に合わせて、1つずつ施工パラメータに変化させて、各々3次元有限要素法によりひび割れ指数を求め、その変化させた施工パラメータにおいて求めたひび割れ指数と前記基準条件でのひび割れ指数Icr0との比をとって、その比から基準パラメータに対する施工パラメータの単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の補正係数k1〜k4を複数設定しておき、実際の施工条件のひび割れ指数Icrxを下式(2)
crx=Icr0×k1×k2×k3×k4 …(2)
但し、Icr0:基準条件でのひび割れ指数
1:単位セメント量による補正係数
2:外気温による補正係数
3:型枠条件による補正係数
4:セメント種類による補正係数
で仮定し、実際の施工条件における単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の各パラメータから各補正係数k1〜k4を決定し、これを基に、式(2)を用いて、実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxを推定するコンクリートのひび割れ指数推定方法である。
請求項2の発明は、前記基準条件の各基準パラメータを、単位セメント量400kg/m3、外気温15℃、型枠条件が木枠、セメント種類が普通セメントにそれぞれ設定し、設定した各基準パラメータを基に、3次元有限要素法により前記基準条件でのひび割れ指数Icr0を求める請求項1記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法である。
請求項3の発明は、前記各基準パラメータに対して、実際の施工でひび割れが増減する条件の各々の施工パラメータを設定しておき、前記基準パラメータのうち1つを前記施工パラメータに変化させて、各々3次元有限要素法によりひび割れ指数を求め、各施工パラメータにおいて求めたひび割れ指数と前記基準条件でのひび割れ指数Icr0との比をとることで、各基準パラメータにおける補正係数k1〜k4を1としたときの比率である各施工パラメータにおける補正係数k1〜k4を求める請求項1または2記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法である。
請求項4の発明は、単位セメント量の施工パラメータが450kg/m3以下、外気温の施工パラメータが5〜25℃の範囲で設定され、型枠条件の施工パラメータが鋼枠、全面マット、セメント種類の施工パラメータが早強セメント、高炉セメントに設定される請求項1〜3いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法である。
請求項5の発明は、実際の施工条件のパラメータが、基準パラメータ、施工パラメータと相違するときは、基準パラメータ、施工パラメータにおける補正係数k1〜k4の値を基に、線形補間により、実際の施工条件での補正係数k1〜k4を決定する請求項1〜4いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法である。
請求項6の発明は、3次元有限要素法によりひび割れ指数を求める際は、コンクリート打設後の材齢ごとにひび割れ指数を求め、その材齢ごとのひび割れ指数を基にひび割れ指数履歴を作成し、そのひび割れ指数履歴における最小値を、3次元有限要素法により求めるひび割れ指数とする請求項1〜5いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法である。
請求項7の発明は、実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の各パラメータを設定し、請求項1〜6いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法により、実際の施工条件での各補正係数k1〜k4を求めてひび割れ指数Icrxを推定した後、推定したひび割れ指数Icrxが要求される安全係数γcrよりも大きいか否かを照査し、ひび割れ指数Icrxが安全係数γcrより大きい場合は、設定した各パラメータを実際の施工条件として採用可能と判断し、ひび割れ指数Icrxが安全係数γcr以下である場合は、設定した単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類のうちいずれかのパラメータを変更して、ひび割れ指数Icrxが安全係数γcrより大きくなるようにするコンクリートの設計方法である。
本発明によれば、容易にひび割れ指数を推定することが可能となる。
本発明のコンクリートのひび割れ指数推定方法に用いた解析モデルを示す図である。 図1の解析モデルの拘束条件を示す図である。 基準条件(単位セメント量400kg/m3、外気温15℃、木枠、普通セメント)におけるひび割れ指数履歴を示す図である。 基準条件から単位セメント量のみを変化させたときのひび割れ指数履歴を示す図である。 基準条件から外気温のみを変化させたときのひび割れ指数履歴を示す図である。 基準条件から型枠条件のみを変化させたときのひび割れ指数履歴を示す図である。 基準条件からセメント種類のみを変化させたときのひび割れ指数履歴を示す図である。 検証用施工条件(単位セメント量450kg/m3、外気温25℃、鋼枠、早強セメント)におけるひび割れ指数履歴を示す図である。 本発明のコンクリートの設計方法のフローチャートである。 安全係数とひび割れ発生確率の関係を示す図である。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
本実施形態に係るコンクリートのひび割れ指数推定方法は、コンクリートの若材齢時におけるひび割れ指数Icrを推定する方法であり、PC桁と鋼桁の接合部など部材厚の大きいコンクリート(マスコンクリート)を対象とするものである。
ひび割れ指数Icrは、ひび割れ易さを示す度合であり、コンクリート標準示方書[施工編]にて下式(1)
cr=ft/σt …(1)
但し、ft:コンクリートの引張強度
σt:コンクリートの最大主引張応力度
で定義される。式(1)中の引張強度ft、最大主引張応力度σtを3次元有限要素法(3次元FEM解析)により求めることで、ひび割れ指数Icrを求めることができる。
本実施形態では、ひび割れ指数Icrに影響を与える要因、すなわち、引張強度ftと最大主引張応力度σtを決定する施工条件であるパラメータとして、単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類を採用し、これら各パラメータを変化させてパラメトリック解析を行うことにより、実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxを推定する。ここで、単位セメント量とは、コンクリート1m3当たりに含まれるセメントの質量であり、外気温としては平均気温を用いる。
より具体的には、本実施形態に係るコンクリートのひび割れ指数推定方法は、以下のステップS1〜S5からなる。
ステップS1:基準条件(基準パラメータ)の設定、施工パラメータの設定
ステップS2:基準条件でのひび割れ指数Icr0を求める
ステップS3:各施工パラメータにおける補正係数k1〜k4を求める
ステップS4:実際の施工条件における補正係数k1〜k4を求める
ステップS5:実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxを推定する
以下、各ステップS1〜S5を具体的に説明する。
まず、本実施形態で用いた解析条件を説明する。
図1は、本実施形態で用いた解析モデルを示す図である。図1に示す解析モデルは、対称条件を考慮した1/2モデルであり、想定するコンクリート部材は橋軸方向(X方向)2.5m、橋軸直角方向(Y方向)6.0m、鉛直方向(Z方向)1.5mのコンクリート部材とした。
本実施形態で用いた材料条件を表1に、拘束条件を図2に示す。
Figure 0005169875
本実施形態に係るコンクリートのひび割れ指数推定方法では、まず、パラメータである単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の基準条件(基準パラメータ)を予め設定すると共に、施工パラメータを設定する(ステップS1)。基準パラメータとは、基準条件とする単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の設定値であり、施工パラメータとは、実際の施工条件に合わせて決定される各パラメータの設定値であり、各基準パラメータに対して、実際の施工でひび割れが増減する条件で設定される。
本実施形態では、基準条件の各基準パラメータを、単位セメント量400kg/m3、外気温15℃、型枠条件が木枠、セメント種類が普通セメントに設定した。基準条件の各基準パラメータの設定値はこれに限定されないが、実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxを推定する際の誤差を抑制するためには、基準条件に標準的な設定値を用いるのが好ましく、基準条件は上記基準パラメータ(単位セメント量400kg/m3、外気温15℃、木枠、普通セメント)に設定することが好ましい。
単位セメント量の施工パラメータは、450kg/m3以下の範囲で設定するとよく、外気温の施工パラメータは、5〜25℃の範囲で設定するとよい。これは、450kg/m3を超える単位セメント量を用いるのはコストの観点から好ましくなく、本発明では想定外としており、さらに、外気温が5℃未満、あるいは25℃を超えると、推定する実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxの誤差が大きくなるため、本発明では想定外としているためである。本実施形態では、単位セメント量の施工パラメータを450kg/m3、350kg/m3、外気温の施工パラメータを25℃、5℃に設定した。
また、型枠条件の施工パラメータを鋼枠、全面マットに、セメント種類の施工パラメータを早強セメント、高炉セメントに設定する。ここで、型枠条件における全面マットとは、実際の型枠は木枠、鋼枠のどちらでもよく、その型枠全体を覆うように保温性の高いマットを設けるようにしたものである。施工パラメータの設定値はこれに限定されない。
本実施形態で設定した基準パラメータ、施工パラメータの一覧を表2に示す。
Figure 0005169875
基準条件の各基準パラメータ、および施工パラメータを設定した後、設定した各基準パラメータを基に、基準条件でのひび割れ指数Icr0を3次元有限要素法により求める(ステップS2)。
本実施形態で3次元有限要素法によりひび割れ指数を求める際は、コンクリート打設後の材齢ごとにひび割れ指数を求め、その材齢ごとのひび割れ指数を基にひび割れ指数履歴を作成し、そのひび割れ指数履歴における最小値を、3次元有限要素法により求めるひび割れ指数とする。
ひび割れ指数としてひび割れ指数履歴における最小値を採用するのは、ひび割れ指数が小さいほど、ひび割れが発生する確率が高くなるためであり、最も小さいひび割れ指数の値を採用することで安全側の評価が可能となるためである。
3次元有限要素法により求めた基準条件(単位セメント量400kg/m3、外気温15℃、木枠、普通セメント)におけるひび割れ指数履歴を図3に示す。図3において、実線は部材表面のひび割れ指数履歴を示し、破線は部材内部のひび割れ指数履歴を示す。
図3に示すひび割れ指数履歴の最小値より、基準条件でのひび割れ指数Icr0は、部材表面で1.106、部材内部で1.233となる。
次に、各施工パラメータにおける補正係数k1〜k4を求める(ステップS3)。
本実施形態では、各パラメータがひび割れ指数に与える影響を定量化するため、基準パラメータを実際の施工条件に合わせて、1つずつ施工パラメータに変化させて、各々3次元有限要素法によりひび割れ指数を求め、その変化させた施工パラメータにおいて求めたひび割れ指数と基準条件でのひび割れ指数Icr0との比をとって、その比から基準パラメータに対する各施工パラメータの補正係数k1〜k4を求める。各施工パラメータにおける補正係数k1〜k4は、基準パラメータにおける補正係数k1〜k4を1としたときの比率となる。
以下、各施工パラメータの補正係数k1〜k4を求める手順について詳細に説明する。
(1)単位セメント量による補正係数k1
まず、基準条件の基準パラメータのうち単位セメント量のみを450kg/m3、350kg/m3の施工パラメータにそれぞれ変化させて、3次元有限要素法により各施工パラメータに変化させたときのひび割れ指数Icrをそれぞれ求める。
基準条件から単位セメント量のみを450kg/m3、350kg/m3にそれぞれ変化させたときのひび割れ指数履歴を、基準条件のひび割れ指数履歴と併せて図4に示す。図4において、細線は基準条件(単位セメント量400kg/m3)のひび割れ指数履歴を示し、太線は単位セメント量を450kg/m3とした場合のひび割れ指数履歴、極太線は単位セメント量を350kg/m3とした場合のひび割れ指数履歴を示す。また、実線は部材表面のひび割れ指数履歴を示し、破線は部材内部のひび割れ指数履歴を示す。
図4に示す各ひび割れ指数履歴の最小値より、各解析パターンにおける部材表面、部材内部でのひび割れ指数Icrが得られる。得られたひび割れ指数Icrを表3に示す。
Figure 0005169875
このようにして求めたひび割れ指数Icrを基準条件でのひび割れ指数Icr0で除する(すなわち、求めたひび割れ指数Icrと基準条件でのひび割れ指数Icr0との比をとる)と、単位セメント量による補正係数k1が得られる。得られた補正係数k1を表3に併せて示す。
(2)外気温による補正係数k2
まず、基準条件の基準パラメータのうち外気温のみを25℃、5℃の施工パラメータにそれぞれ変化させて、3次元有限要素法により各施工パラメータに変化させたときのひび割れ指数Icrをそれぞれ求める。
基準条件から外気温のみを25℃、5℃にそれぞれ変化させたときのひび割れ指数履歴を、基準条件でのひび割れ指数履歴と併せて図5に示す。図5において、細線は基準条件(外気温15℃)のひび割れ指数履歴を示し、太線は外気温を25℃とした場合のひび割れ指数履歴、極太線は外気温を5℃とした場合のひび割れ指数履歴を示す。また、実線は部材表面のひび割れ指数履歴を示し、破線は部材内部のひび割れ指数履歴を示す。
図5に示す各ひび割れ指数履歴の最小値より、各解析パターンにおける部材表面、部材内部でのひび割れ指数Icrが得られる。得られたひび割れ指数Icrを表4に示す。
Figure 0005169875
このようにして求めたひび割れ指数Icrを基準条件でのひび割れ指数Icr0で除すると、外気温による補正係数k2が得られる。得られた補正係数k2を表4に併せて示す。
(3)型枠条件による補正係数k3
まず、基準条件の基準パラメータのうち型枠条件のみを鋼枠、全面マットの施工パラメータにそれぞれ変化させて、3次元有限要素法により各施工パラメータに変化させたときのひび割れ指数Icrをそれぞれ求める。
基準条件から型枠条件のみを鋼枠、全面マットにそれぞれ変化させたときのひび割れ指数履歴を、基準条件でのひび割れ指数履歴と併せて図6に示す。図6において、細線は基準条件(木枠)のひび割れ指数履歴を示し、太線は型枠条件を鋼枠とした場合のひび割れ指数履歴、極太線は型枠条件を全面マットとした場合のひび割れ指数履歴を示す。また、実線は部材表面のひび割れ指数履歴を示し、破線は部材内部のひび割れ指数履歴を示す。
図6に示す各ひび割れ指数履歴の最小値より、各解析パターンにおける部材表面、部材内部でのひび割れ指数Icrが得られる。得られたひび割れ指数Icrを表5に示す。
Figure 0005169875
このようにして求めたひび割れ指数Icrを基準条件でのひび割れ指数Icr0で除すると、型枠条件による補正係数k3が得られる。得られた補正係数k3を表5に併せて示す。
(4)セメント種類による補正係数k4
まず、基準条件の基準パラメータのうちセメント種類のみを早強セメント、高炉セメントの施工パラメータにそれぞれ変化させて、3次元有限要素法により各施工パラメータに変化させたときのひび割れ指数Icrをそれぞれ求める。
基準条件からセメント種類のみを早強セメント、高炉セメントにそれぞれ変化させたときのひび割れ指数履歴を、基準条件でのひび割れ指数履歴と併せて図7に示す。図7において、細線は基準条件(普通セメント)のひび割れ指数履歴を示し、太線はセメント種類を早強セメントとした場合のひび割れ指数履歴、極太線はセメント種類を高炉セメントとした場合のひび割れ指数履歴を示す。また、実線は部材表面のひび割れ指数履歴を示し、破線は部材内部のひび割れ指数履歴を示す。
図7に示す各ひび割れ指数履歴の最小値より、各解析パターンにおける部材表面、部材内部でのひび割れ指数Icrが得られる。得られたひび割れ指数Icrを表6に示す。
Figure 0005169875
このようにして求めたひび割れ指数Icrを基準条件でのひび割れ指数Icr0で除すると、セメント種類による補正係数k4が得られる。得られた補正係数k4を表6に併せて示す。
以上により得られた各補正係数k1〜k4をまとめて表7、8に示す。表7は部材表面における各補正係数k1〜k4の値を示し、表8は部材内部における各補正係数k1〜k4の値を示す。
Figure 0005169875
Figure 0005169875
次に、実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類を設定し、設定した各パラメータを基に、実際の施工条件における補正係数k1〜k4を求める(ステップS4)。
具体的には、実際の施工条件における単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類に対応する補正係数k1〜k4を表7、8からピックアップする。
実際の施工条件のパラメータが、基準パラメータ、施工パラメータと相違するときは、表7、8を参照して、基準パラメータ、施工パラメータにおける補正係数k1〜k4の値を基に、線形補間により、実際の施工条件での補正係数k1〜k4を決定するとよい。
実際の施工条件における各補正係数k1〜k4が得られたら、下式(2)
crx=Icr0×k1×k2×k3×k4 …(2)
但し、Icr0:基準条件でのひび割れ指数
1:単位セメント量による補正係数
2:外気温による補正係数
3:型枠条件による補正係数
4:セメント種類による補正係数
により実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxを推定する(ステップS5)。
すなわち、基準条件でのひび割れ指数Icr0にステップS4で決定した各補正係数k1〜k4を乗じることにより、実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxを推定する。
以上により、実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxが推定できる。
ここで、一例として、表9に示す施工条件(検証用施工条件)におけるひび割れ指数Icrxを推定する場合を説明する。
Figure 0005169875
表9の検証用施工条件では、単位セメント量が450kg/m3であるため、表7より、部材表面の単位セメント量による補正係数k1は0.892となる。
同様にして、外気温は25℃であるため、部材表面の外気温による補正係数k2は0.963、型枠条件は鋼枠であるため、部材表面の型枠条件による補正係数k3は0.873、セメント種類は早強セメントであるため、部材表面のセメント種類による補正係数k4は0.827となる。
表7より、基準条件でのひび割れ指数Icr0はIcr0=1.106であるため、検証用施工条件における部材表面のひび割れ指数Icrxは、式(2)より、
crx=1.106×0.892×0.963×0.873×0.827
=0.686
となる。
同様にして、表8より、部材内部における基準条件でのひび割れ指数Icr0は1.233、単位セメント量による補正係数k1は0.895、外気温による補正係数k2は0.975、型枠条件による補正係数k3は0.914、セメント種類による補正係数k4は0.885であるため、検証用施工条件における部材内部のひび割れ指数Icrxは、
crx=1.233×0.895×0.975×0.914×0.885
=0.870
となる。
一方、検証のため、表9の検証用施工条件で3次元有限要素法(FEM)によりひび割れ指数を求めた。検証用施工条件におけるひび割れ指数履歴を図8に示す。
図8に示すひび割れ指数履歴の最小値より、部材表面のひび割れ指数は0.709であり、部材内部のひび割れ指数は0.897であった。これらの結果をまとめて表10に示す。
Figure 0005169875
表10において、「FEM/本発明」欄は、3次元有限要素法(FEM)により求めたひび割れ指数を、本発明で求めたひび割れ指数Icrxで除したものである。
表10に示すように、両者の差は部材表面、部材内部共に3%程度であり、本発明のコンクリートのひび割れ指数推定方法は十分な精度を有しているといえる。
このように、本発明によれば、表7、8に示すような各施工パラメータに対応する補正係数k1〜k4の表を予め作成しておけば、3次元有限要素法による解析を行うことなく、容易にかつ精度よく実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxを推定することが可能となる。
次に、本実施形態に係るコンクリートの設計方法を説明する。
本実施形態に係るコンクリートの設計方法は、本発明のコンクリートのひび割れ指数推定方法により求めた実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxが、要求される安全係数γcrよりも大きくなるように、実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、およびセメント種類の各パラメータを設定する方法である。
具体的には、図9に示すように、まず、実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の各パラメータを設定する(ステップS91)。
実際の施工条件を設定したら、設定した各パラメータに対応する補正係数k1〜k4を表7、8を参照して決定する(ステップS92)。
その後、決定した補正係数k1〜k4を用いて、下式(2)
crx=Icr0×k1×k2×k3×k4 …(2)
但し、Icr0:基準条件でのひび割れ指数
1:単位セメント量による補正係数
2:外気温による補正係数
3:型枠条件による補正係数
4:セメント種類による補正係数
により、設定した施工条件でのひび割れ指数Icrxを推定する(ステップS93)。
ひび割れ指数Icrxを推定した後、推定したひび割れ指数Icrxが要求される安全係数γcrよりも大きいか否かを照査する(ステップS94)。
安全係数γcrの値は、コンクリート標準示方書[施工編]において標準的な参考値が表11のように定められている。
Figure 0005169875
また、安全係数γcrとひび割れ発生確率の関係を図10に示す。図10に示すように、γcr=1.75ではひび割れ発生確率が約5%となり、γcr=1.45ではひび割れ発生確率が約25%、γcr=1.00ではひび割れ発生確率が約85%となる。
表11を参照して安全係数γcrの値を決定し、ステップS92で推定したひび割れ指数Icrxが、決定した安全係数γcrよりも大きいかどうかを照査する。
ひび割れ指数Icrxが安全係数γcr以下である場合、要求される安全係数γcrを満足しないため、施工条件の変更を検討し(ステップS95)、ステップS91にもどって、単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類のうちいずれかのパラメータを変更し、施工条件を再設定する。その後、再設定した施工条件にてステップS92〜S94を繰り返す。
ひび割れ指数Icrxが安全係数γcrより大きい場合、ステップS91で設定した施工条件におけるひび割れ発生確率が十分に低く、要求される安全係数γcrを満足すると判断できる。よって、ステップS91で設定した施工条件を実際の施工条件として採用可能と判断する。
ステップS94において、部材表面におけるひび割れ指数Icrx、部材内部におけるひび割れ指数Icrx共に安全係数γcrより大きいことが好ましいが、部材表面でひび割れが発生しなければ、内在する鉄筋等が錆びることはないので、部材表面におけるひび割れ指数Icrxが安全係数γcrより大きければ、要求される安全係数γcrを満足すると判断するようにしてもよい。
このように、実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxを推定し、安全係数γcrを満足するように施工条件を設定することで、コンクリートのひび割れ(温度ひび割れ)を制御することが可能となる。
本実施形態では、解析モデル(図1参照)の厚さ(鉛直方向の厚さ)を1.5mとしているため、適用できるコンクリート部材の厚さ(施工するコンクリート部材の厚さ)は1.5m以下である。コンクリート部材の厚さが1.5mを超える場合は、改めて施工するコンクリート部材の厚さに応じて解析モデルを設定し、設定した解析モデルで3次元有限要素法による解析を行い、基準条件でのひび割れ指数Icr0や補正係数k1〜k4を求める必要がある。
また、本実施形態では図2に示すような拘束条件としたが、例えば、既設構造物などの外的拘束が存在する場合なども、改めて拘束条件を設定し、設定した拘束条件で3次元有限要素法による解析を行い、基準条件でのひび割れ指数Icr0や補正係数k1〜k4を求める必要がある。
以上説明したように、本実施形態では、予め基準条件でのひび割れ指数Icr0を求めると共に、単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の各パラメータの補正係数k1〜k4を複数設定しておき、実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類から各補正係数k1〜k4の値を決定して、下式(2)
crx=Icr0×k1×k2×k3×k4 …(2)
但し、Icr0:基準条件でのひび割れ指数
1:単位セメント量による補正係数
2:外気温による補正係数
3:型枠条件による補正係数
4:セメント種類による補正係数
により実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxを推定している。
これにより、表7、8に示すような各施工パラメータに対応する補正係数k1〜k4の表を予め作成しておけば、実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxを求める際に、煩雑な3次元有限要素法による検討を省略することができ、容易にひび割れ指数を推定することができ、省力化、作業時間・コストの抑制が可能となる。
また、本発明によれば、短時間で容易にひび割れ指数を推定することができるために、従来のように煩雑さ、時間のなさからひび割れの検討を省略することがなくなり、結果的に、ひび割れの発生を未然に防ぐことができ、施工するコンクリート構造物の耐久性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、求めた実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxが、要求される安全係数γcrよりも大きくなるように、実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、およびセメント種類を設定している。
これにより、適切な施工条件の検討を容易に行うことが可能となり、コンクリートのひび割れを制御することが可能となる。
さらに、本発明によれば、十分な精度で実際の施工条件でのひび割れ指数Icrxを推定できるため、ひび割れの発生を未然に防ぐことができ、施工するコンクリート構造物の耐久性を向上させることが可能となる。

Claims (7)

  1. コンクリートの若材齢時におけるひび割れ指数を推定する方法であって、
    ひび割れ指数Icrを下式(1)
    cr=ft/σt …(1)
    但し、ft:コンクリートの引張強度
    σt:コンクリートの最大主引張応力度
    で定義し、式(1)中の引張強度ft、最大主引張応力度σtを3次元有限要素法により求めてひび割れ指数Icrを求めるに際して、引張強度ftと最大主引張応力度σtを決定する施工条件であるパラメータとしての単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の基準条件を設定し、設定した基準条件での基準パラメータを基にひび割れ指数Icr0を求めておき、
    次に、これら基準パラメータを実際の施工条件に合わせて、1つずつ施工パラメータに変化させて、各々3次元有限要素法によりひび割れ指数を求め、その変化させた施工パラメータにおいて求めたひび割れ指数と前記基準条件でのひび割れ指数Icr0との比をとって、その比から基準パラメータに対する施工パラメータの単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の補正係数k1〜k4を複数設定しておき、
    実際の施工条件のひび割れ指数Icrxを下式(2)
    crx=Icr0×k1×k2×k3×k4 …(2)
    但し、Icr0:基準条件でのひび割れ指数
    1:単位セメント量による補正係数
    2:外気温による補正係数
    3:型枠条件による補正係数
    4:セメント種類による補正係数
    で仮定し、
    実際の施工条件における単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の各パラメータから各補正係数k1〜k4を決定し、これを基に、式(2)を用いて、実際の施工条件におけるひび割れ指数Icrxを推定することを特徴とするコンクリートのひび割れ指数推定方法。
  2. 前記基準条件の各基準パラメータを、単位セメント量400kg/m3、外気温15℃、型枠条件が木枠、セメント種類が普通セメントにそれぞれ設定し、設定した各基準パラメータを基に、3次元有限要素法により前記基準条件でのひび割れ指数Icr0を求める請求項1記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法。
  3. 前記各基準パラメータに対して、実際の施工でひび割れが増減する条件の各々の施工パラメータを設定しておき、前記基準パラメータのうち1つを前記施工パラメータに変化させて、各々3次元有限要素法によりひび割れ指数を求め、各施工パラメータにおいて求めたひび割れ指数と前記基準条件でのひび割れ指数Icr0との比をとることで、各基準パラメータにおける補正係数k1〜k4を1としたときの比率である各施工パラメータにおける補正係数k1〜k4を求める請求項1または2記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法。
  4. 単位セメント量の施工パラメータが450kg/m3以下、外気温の施工パラメータが5〜25℃の範囲で設定され、型枠条件の施工パラメータが鋼枠、全面マット、セメント種類の施工パラメータが早強セメント、高炉セメントに設定される請求項1〜3いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法。
  5. 実際の施工条件のパラメータが、基準パラメータ、施工パラメータと相違するときは、基準パラメータ、施工パラメータにおける補正係数k1〜k4の値を基に、線形補間により、実際の施工条件での補正係数k1〜k4を決定する請求項1〜4いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法。
  6. 3次元有限要素法によりひび割れ指数を求める際は、コンクリート打設後の材齢ごとにひび割れ指数を求め、その材齢ごとのひび割れ指数を基にひび割れ指数履歴を作成し、そのひび割れ指数履歴における最小値を、3次元有限要素法により求めるひび割れ指数とする請求項1〜5いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法。
  7. 実際の施工条件の単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類の各パラメータを設定し、請求項1〜6いずれかに記載のコンクリートのひび割れ指数推定方法により、実際の施工条件での各補正係数k1〜k4を求めてひび割れ指数Icrxを推定した後、推定したひび割れ指数Icrxが要求される安全係数γcrよりも大きいか否かを照査し、ひび割れ指数Icrxが安全係数γcrより大きい場合は、設定した各パラメータを実際の施工条件として採用可能と判断し、ひび割れ指数Icrxが安全係数γcr以下である場合は、設定した単位セメント量、外気温、型枠条件、セメント種類のうちいずれかのパラメータを変更して、ひび割れ指数Icrxが安全係数γcrより大きくなるようにすることを特徴とするコンクリートの設計方法。
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