JP5169748B2 - 酸素還元触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子電解質型燃料電池やリン酸型燃料電池の酸素還元触媒に用いて好適な、活性炭化物からなる酸素還元触媒及びその製造方法、並びにこの触媒を用いた電気化学デバイスに関するものである。
燃料電池は、燃料が酸化される際に発生する燃焼熱を高い効率で電気エネルギーに変換することを可能にする装置である。
例えば、高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと略記する。)は、主として燃料極、酸素極、及び両電極間に挟持された水素イオン(プロトン)伝導膜で構成され、燃料と酸素との反応による起電力が燃料極と酸素極との間に発生する。また、リン酸型燃料電池(以下、PAFCと略記する。)では、電解質としてリン酸からなる電解液が用いられる。
燃料が水素である場合には、燃料極に供給された水素は、下記(式1)
2H2 → 4H+ + 4e- (式1)
の反応により燃料極上で酸化され、燃料極に電子を与える。生じた水素イオンHは、PEFCであれば水素イオン伝導膜を介して、また、PAFCであれば電解液を通じて酸素極へ移動する。
酸素極へ移動した水素イオンは、酸素極に供給される酸素と下記(式2)
2 + 4H+ + 4e- → 2H2O (式2)
のように反応し、水を生成する。このとき、酸素は、酸素極から電子を取り込み、還元される。
このようにして、燃料極では水素が酸化され、酸素極では酸素が還元され、燃料電池全体では下記(式3)
2H2 + O2 → 2H2O (式3)
の水素の燃焼反応が進行する。このとき、電流が酸素極から燃料極へ流れ、燃料電池から電気エネルギーを取り出すことができる。
(式1)及び(式2)の反応は、自発的に進む反応ではあるが、活性化エネルギーが大きい。このため、一般的なPEFCやPAFCの動作温度で十分な反応速度を実現するには、白金等の触媒の助けが必要になる。そこで、多くのPEFCやPAFCでは、触媒である白金又は白金合金等をアセチレンブラックや活性炭などに担持し、これをカーボンシートやカーボンクロスなどの炭素系の導電性多孔質支持体の表面に塗布したものを、燃料極及び酸素極として用いている。
現在、PEFCは、自動車、屋外発電システム及び携帯機器などの電源として、精力的に開発が進められている。しかしながら現在のPEFCの製造コストは非常に高く、同じ出力を生み出すのに要する製造コストは、内燃機関に比べて2桁以上高い。このコスト高の主な原因は、電極触媒、水素イオン伝導膜及びバーポーラプレート(いわゆるセパレータ)の3つのコストが高いことにある。
このうち、水素イオン伝導膜及びバーポーラプレートは、量産化やメーカー間の価格競争などの効果で、将来的には大幅にコストが低下する可能性が高いが、電極触媒に関しては量産化の効果によるコストダウンは見込めない。その理由は、ほとんどのPEFCで、高価な白金を電極触媒として用いているためである。
また、自然界における白金の産出量は、年間168t(1998年の数値)程度にすぎない。これに対し、仮に出力50kW程度のPEFCを積載する電気自動車を年間200万台製造したとすると、電極触媒として40〜80tの白金が必要になるとの試算もあり、将来的にはこのような燃料電池用の需要により、白金価格が高騰することも懸念されている。
よって、燃料電池の電極触媒として用いる白金量を低減すること、もしくは白金等の貴金属を用いない電極触媒を開発することは、PEFCを実用化するために極めて重要な課題である。
さて、炭素材料は、導電性を有するものは電極材料として広く用いられているばかりでなく、活性炭のように多孔質のものは、触媒又は触媒の担体としても用いられている。例えば、PEFCでは、上述したように、白金等をアセチレンブラックや活性炭などに担持した電極触媒が用いられている。活性炭は、水素の還元に対しては触媒作用をもたないが、酸素の還元に対しては中位程度の触媒作用を有することが知られている。しかも、活性炭等の炭化物そのものよりも、窒素を含有させた炭化物の方が良好な触媒活性を示す例も広く知られている。これらの事実に注目して、窒素を含有させて触媒活性を高めた活性炭を合成し、燃料電池の酸素極における酸素還元触媒として応用する提案がなされている(特許文献1参照。)。
特開昭47−21388号公報(第1−6頁、図1)
特許文献1の実施例では、炭化できる含窒素有機重合体としてポリアクリロニトリルを用い、これを塩化亜鉛の濃厚な溶液に加熱溶解し、得られた粘性の高い溶液を窒素気流中で一定の昇温速度2℃/minで徐々に加熱し、1000℃に達したところで一定温度に1時間保って焼成し、窒素を含む炭化物を合成した。そして、この炭化物を粉砕して得た炭化物粉末を用いて燃料電池の酸素極を作製したところ、良好な特性を示した例が記載されている。
一般に、活性炭の触媒作用に対する窒素の効果は、表面の化学的性質の改変によるとされるが、酸素還元に対する活性炭の触媒作用に関しては、表面のどのような構造が触媒作用に寄与しているのか、具体的なことは何もわかっていない。
特許文献1には、塩化亜鉛の濃度や量を変更すると特性が変化する例、及び、原料をポリアクリロニトリルとメラミンとの混合物に変えたり、合成後の粉末状炭化物をアンモニアで処理したりすると特性が向上する例等が示されていて、様々な要因が複雑に粉末状炭化物の触媒作用に関わっていることを示している。また、特許文献1の方法で合成される粉末状炭化物では、塩化亜鉛などの塩の残渣がどのように影響しているのかということも不明である。
本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、高分子電解質型燃料電池やリン酸型燃料電池の酸素還元触媒に用いて好適な、活性炭化物からなる酸素還元触媒及びその製造方法、並びに、この触媒を用いた電気化学デバイスを提供することにある。
本発明者は上述の目的を達成せんものと種々の検討を重ねてきた。その結果、ある種の炭素材料に酸素還元触媒として有効な触媒活性があることを発見した。
即ち、本発明は、炭素及び窒素を含有し、シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率が制御された材料からなる触媒に係わり、また、電子スピン共鳴測定においてg値が1.9980〜2.0000である第1の不対電子が、3.1×1019/g以下のスピン密度で含まれ、且つ、g値が2.0020〜2.0026である第2の不対電子が、6.0×1014/g以上のスピン密度で含まれるように制御された活性炭からなる酸素還元触媒に係わるものである。
また、炭素及び窒素を構成元素とする材料を焼成する工程と、これによって得られた焼成物を水蒸気賦活する工程とを有し、シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率、及び/又は、g値が1.9980〜2.0000である第1の不対電子のスピン密度と、g値が2.0020〜2.0026である第2の不対電子のスピン密度とを制御する、酸素還元触媒の製造方法に係わるものである。
また、複数の電極と、前記複数の電極に挟持されたイオン伝導体とからなり、前記複数の電極の少なくとも1つに前記酸素還元触媒を含む電気化学デバイスに係わるものである。
前記シェイクアップ過程に関与する炭素とは、炭素原子の1s電子のXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線励起光電子分光法)測定において、291.8±0.5eVにピークをもつスペクトルを与える炭素のことである。シェイクアップ過程とは、XPS測定などで内殻電子が放出される際に、それに伴って起こる有効核電荷の急激な変化によるポテンシャルエネルギーの変化を感じて、外殻電子が励起エネルギー準位に遷移する現象であり、見かけ上、この遷移に要するエネルギーの分だけ高エネルギー側にXPSスペクトルが観察される。
291.8eV付近の領域にスペクトルを与える炭素に関わるシェイクアップ過程は、いわゆるπ−πシェイクアップと呼ばれる過程で、π結合を形成する電子が励起π準位に遷移する現象であり、黒鉛のように価電子帯と非占有帯のギャップが狭い材料で観察される。従って、前記シェイクアップ過程に関与し、291.8eV付近のXPSスペクトルを与える炭素の割合が大きいほど、グラフェン構造がよく発達した炭素材料と言うことができる。
本発明は、窒素を含有する活性炭化物の触媒作用が、表面における窒素の存在率およびXPS測定において前記シェイクアップ過程に関与し、291.8±0.5eVにピークをもつスペクトルを与える炭素(以下、適宜シェイクアップ炭素と略称する。)の存在率が高いほど、また、g値が2.0020〜2.0026である前記第2の不対電子のスピン密度が高いほど、向上するという実験上の発見に基づいている。
前記シェイクアップ炭素の存在によって前記窒素含有活性炭化物の前記触媒作用が向上する理由は不明であるが、前記触媒作用が電子の授受を伴う反応に対するものであることを考慮すると、前記シェイクアップ炭素が炭素材料の電子伝導性に関与していることと何らかの関係があると考えられる。
また、後に実施例において詳述するように、g値が2.0020〜2.0026である前記第2の不対電子は、窒素を含まない炭素材料では観察されない特異的な電子であり、キュリー常磁性を示し、分子の一定箇所に局在化した不対電子である。分子軌道法計算によれば、キュリー常磁性を示す不対電子は、窒素を含む炭素材料の中でも、3個の炭素原子と結合した、sp2混成軌道の電子配置をもつ窒素を含有する材料のみが有し得る特殊な電子であることが判明した。この様な、窒素含有活性炭化物以外の炭素材料では見られない、局在化した不対電子が、触媒活性に大きな役割を果たしているものと考えられる。
本発明の触媒及びその製造方法によれば、炭素及び窒素を構成元素とする材料を焼成し、これによって得られた焼成物を水蒸気賦活し、シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率、また、g値が1.9980〜2.0000である前記第1の不対電子のスピン密度と、g値が2.0020〜2.0026である前記第2の不対電子のスピン密度とを制御するので、窒素の作用によって高められた前記窒素含有活性炭化物の前記触媒作用が、更に一層高められた触媒及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明の電気化学デバイスは、前記シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率、また、g値が1.9980〜2.0000である第1の不対電子のスピン密度と、g値が2.0020〜2.0026である第2の不対電子のスピン密度とが制御された前記触媒を含有するので、電極上等での電子の授受がすみやかにおこり、分極等が起こりにくい。
本発明の触媒において、酸素を還元する次式の反応:
2 + 4H+ + 4e- → 2H2
を促進する触媒であって、少なくとも炭素及び窒素を必須の構成元素とし、且つ表面における、シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率が制御された材料からなる酸素還元触媒であるのがよい。
また、電子スピン共鳴測定において、前記第1の不対電子がパウリ常磁性を示し、且つ前記第2の不対電子がキュリー常磁性を示すのがよい。後に実施例において詳述するように、パウリ常磁性を示す不対電子は、伝導帯を占めていて非局在化している不対電子であり、キュリー常磁性を示す不対電子は、分子の一定箇所に局在化した不対電子である。本発明の触媒では、パウリ常磁性を示す不対電子を含む炭素材料に、キュリー常磁性を示す不対電子を、そのスピン濃度を制御しながら添加したため、電子伝導性が良好で、かつ酸素還元触媒性が備わった機能性炭素材料が実現されたものと考えられる。
また、前記酸素還元触媒の表面における原子数百分率で、窒素原子が0.96mol%以上含まれるのがよい。その中に、N1s電子の結合エネルギーが398.5±0.5eVである第1の窒素原子が含まれ、その原子数百分率が0.22mol%以上であり、また、N1s電子の結合エネルギーが401±0.5eVである第2の窒素原子が含まれ、その原子数百分率が0.53mol%以上であり、また、N1s電子の結合エネルギーが403.5±0.5eVである第3の窒素原子が含まれ、その原子数百分率が0.21mol%以上であるのがよい。これらは、前記シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率を高め、また、g値が2.0020〜2.0026である前記第2の不対電子のスピン密度を高めるための条件である。
本発明において、前記触媒を、少なくとも炭素及び窒素を構成元素とする非金属系材料を材料として、その原料を粉末状にして焼成し、得られた窒素含有炭化物粉末を水蒸気賦活処理して、前記触媒を製造するのがよい。この方法によれば、粉末状の原料を用い、気相と固相との界面で前記焼成や前記水蒸気賦活処理を行うので、前記触媒も粉末状で得られる。粉末状の形状は、電極上に付着させて触媒層を形成させたり、或いは利用に適した形状を有する成形体を形成させたりするのに、好都合である。
より具体的には、前記原料として、炭素質固体原料と窒素含有有機化合物との混合物、又は窒素含有有機高分子化合物を粉末状にして焼成し、得られた前記窒素含有炭化物粉末を水蒸気賦活して、窒素含有活性炭化物からなる酸素還元触媒を製造するのがよい。ここで、前記炭素質固体原料として、石炭系バインダーピッチを用い、前記窒素含有有機化合物として、メラミン又はヒドラジンを用いるのがよい。また、前記窒素含有有機高分子化合物としては、ポリアクリロニトリル、メラミン樹脂、ナイロン、ゼラチン又はコラーゲンを用いるのがよい。このように、本方法は、大量に入手でき、安価で多様な物質を原料とすることができる。
この際、表面における、前記シェイクアップ過程に関与する炭素の存在比率、及び/又は、g値が1.9980〜2.0000である第1の不対電子のスピン密度と、g値が2.0020〜2.0026である第2の不対電子のスピン密度とを、前記焼成を行う温度、前記炭素質固体原料と前記窒素含有有機化合物との混合比率、又は用いられる前記窒素含有有機高分子化合物材料の選択によって制御するのがよい。例えば、前記焼成と前記水蒸気賦活とを、高純度窒素気流中、温度1000℃で行うのがよい。
本発明において、複数の電極と、前記複数の電極に挟持されたイオン伝導体とからなる電気化学デバイスを形成し、前記複数の電極の少なくとも1つに前記触媒を含有させるのがよい。この電気化学デバイスは、電池、とりわけ燃料電池として構成するのがよい。
この際、前記触媒は、イオン伝導性高分子と混合して、前記複数の電極の表面層を形成するようにするのがよい。また、前記複数の電極の間にイオン伝導性膜を挟持して膜−電極接合体(MEA)を作製し、これを電気化学反応部に用いて電気化学デバイスを作製するのがよい。これにより、3相界面における水素イオンや電子の移動がスムーズに行われ、分極が抑制される。
また、前記電気化学デバイスが、前記触媒を酸素極触媒として含む燃料電池であるのがよい。
以下、本発明に基づく好ましい実施の形態による、窒素含有活性炭化物触媒の合成とその触媒を用いた燃料電池について、図面参照下、詳細に説明する。
<窒素含有活性炭化物触媒の合成>
図1は、窒素含有活性炭化物触媒の合成装置の概略断面図である。試料は、試料管21に入れて試料支持台22の上に置き、これら全体を電気炉23の電気炉炉心管24の内部に設置して、試料が電気炉23の加熱温度域25によって取り囲まれるように、その位置を調節する。電気炉23は、電気炉ヒーター部26への通電によって電気炉炉心管24の内部のガスを加熱し、このガスを通じて試料を所望の温度に加熱できるように構成されている。電気炉炉心管24の上部にはガス導入口27が設けられ、また、炉心管24の下部にはガス排出口28が設けられている。
試料の焼成に際しては、ガス導入口27から高純度窒素ガス29を導入し、反応後の排出ガス30をガス排出口28から排出する。試料管21は試料の間を高温に加熱された窒素ガス29が流通するように構成されていて、試料は無酸素の高純度窒素ガス雰囲気下で加熱乾留され、炭化物に変化する。
試料管21の上部には水導入管31が設けられており、水蒸気賦活の際には、この管を通じて電気炉炉心管24の中に水が供給される。供給された水は、水導入管31の出口付近で蒸発し、試料管21に入れられた試料の所まで高純度窒素ガス気流によって運ばれ、ここで炭化物と水熱反応、例えば下記の反応
C + H2O → CO + H2
によって反応する。この結果、炭化物は多孔質に変化し、その表面積が著しく増大するので、ガス吸着性能や触媒作用が著しく活性化される。
<燃料電池及びMEAの作製>
図2は、燃料電池の構成を示す概略断面図である。図3(a)は、図1の装置を少し分解して、その構成を見やすくした概略断面図であり、図3(b)は、膜−電極接合体(MEA)4の拡大断面図である。膜−電極接合体(MEA)4は、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜2の両面に燃料極3と酸素極1とが接合されて形成されている。
図2の装置で、膜−電極接合体(MEA)4はセル上半部7及びおよびセル下半部8の間に挟持され、燃料電池に組み込まれる。セル上半部7及びセル下半部8には、それぞれガス供給管9及び10が設けられており、ガス供給管9からは水素、またガス供給管10からは空気もしくは酸素が送気される。各ガスは図示省略した通気孔を有するガス供給部5及び6を通過して燃料極3および酸素極1に供給される。ガス供給部5は燃料極3とセル上半部7を電気的に接続し、ガス供給部6は酸素極1とセル下半部8を電気的に接続する。また、セル上半部7には水素ガスの漏洩を防ぐためにOリング11が配置されている。
発電は、上記のガスを供給しながら、セル上半部7及びセル下半部8に接続されている外部回路12を閉じることで行うことができる。この時、燃料極3の表面上では下記(式1)
2H2 → 4H+ + 4e- (式1)
の反応により水素が酸化され、燃料極3に電子を与える。生じた水素イオンHは水素イオン伝導膜を介して酸素極1へ移動する。ここで、燃料極3には、いわゆるダイレクトメタノール方式の場合、燃料としてメタノールを供給することも可能である。
酸素極1へ移動した水素イオンは、酸素極1に供給される酸素と下記(式2)
2 + 4H+ + 4e- → 2H2O (式2)
のように反応し、水を生成する。このとき、酸素は、酸素極1から電子を取り込み、還元される。
上記高分子電解質膜2は、水素イオン伝導性を有するものであれば、任意のものを使用することができる。例えば、セパレータに水素イオン伝導性を有する高分子材料を塗布したもの等が使用可能である。具体的に、この高分子電解質膜2に使用可能な材料としては、先ず、パーフルオロスルホン酸系樹脂(例えばデュポン社製、商品名 Nafion(R) 等)のような水素イオン伝導性の高分子材料を挙げることができ、またその他の水素イオン伝導体として、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリビニルアルコールなどの高分子材料やフラーレン誘導体が使用可能である。
以下、本実施の形態の膜−電極接合体(MEA)について、図3(b)参照下に詳述する。
酸素極1では、カーボンシートやカーボンクロスなどの導電性多孔質支持体1bの表面に、本発明による窒素含有活性炭化物からなる酸素還元触媒とNafion(R)などの水素イオン伝導体との混合物からなる酸素還元触媒層1aが形成されている。
また、燃料極3では、従来と同様、カーボンシートやカーボンクロスなどの導電性多孔質支持体3bの表面に、触媒能を有する金属として白金、若しくは白金合金等とNafion(R)などの水素イオン伝導体との混合物からなる水素酸化触媒層3aが形成されている。
このように、電極反応に直接曝される膜の両表面層には、化学的安定性に優れた材料からなる層、例えばNafion(R)などのパーフルオロスルホン酸系樹脂等からなる層が配置され、しかも、電極側にも同種の材料からなる層が形成され、膜−電極接合体(MEA)が形成されているので、化学的に安定で、しかも水素イオンや電子の移動がスムーズに行われる、良好な接合面が形成される。
以下、本発明の好ましい実施例を詳しく具体的に説明する。
以下の例においては、炭素質固体原料として石炭系バインダーピッチを用い、窒素含有有機化合物としてメラミンを用いて、窒素含有活性炭化物触媒を合成し、この触媒を用いて燃料電池を作製した例を説明する。
<窒素含有活性炭化物触媒の合成と、酸素極及びMEAの作製>
例1
本例では、石炭系バインダーピッチとメラミンを質量比95:5ではかり取り、乳鉢を用いて粉砕して混合した粉末4gを試料管21に入れ、上記の合成装置内にセットした。焼成は高純度窒素ガス気流中で行い、温度を常温から始めて5℃/minの昇温速度で1000℃まで上昇させ、その後1時間1000℃のまま保持した。この1時間の間に水蒸気賦活も行った。水の滴下速度は0.5ml/hで、用いた水の量は0.5mlであった。この後、室温まで放冷した。粉末試料は焼成によって窒素含有炭化物粉末に変化し、水蒸気賦活により窒素含有活性炭化物に変化した。処理後、バインダーピッチの質量は約半分に減少し、メラミン分はほとんど残らなかった。本例では、約2g(1.975g)の窒素含有活性炭化物が得られた。
この窒素含有活性炭化物と、水素イオン伝導体であるNafion(R)溶液とを混ぜ合わせ、窒素含有活性炭化物とNafion(R)溶液の固形分との質量比が8:2の割合になっている、エタノールを溶媒とするスラリー状の混合物とした。このスラリー状の混合物をカーボンシートに塗布し、溶媒を蒸発させた後、カーボンシートを直径15mmの円盤状に打ち抜いて、酸素極を作製した。
一方、市販の白金担持カーボン触媒を塗布したカーボンシートを直径10mmの円盤状に打ち抜いて、燃料極を作製した。更に、これら2つの電極の間に直径15mmの円盤状に打ち抜いたNafion(R)112を挟み、150℃で熱融着して膜−電極接合体(MEA)を作製した。
例2
石炭系バインダーピッチとメラミンを質量比75:25ではかり取った以外は、例1と同様である。
例3
石炭系バインダーピッチとメラミンを質量比50:50ではかり取った以外は、例1と同様である。
例4
石炭系バインダーピッチとメラミンを質量比25:75ではかり取った以外は、例1と同様である。
例5
石炭系バインダーピッチとメラミンを質量比5:95ではかり取った以外は、例1と同様である。処理後、バインダーピッチの質量は約半分に減少し、メラミン分はほとんど残らないので、本例では、0.077gの窒素含有活性炭化物が得られたのみであった。
例6
メラミンを混合せずにバインダーピッチのみを焼成して窒素含有炭化物粉末を形成した以外は、例1と同様である。
例7
石炭系バインダーピッチとメラミンから焼成した窒素含有炭化物粉末の代わりに、黒鉛粉末を用いた以外は、例1と同様である。
例8
石炭系バインダーピッチとメラミンから焼成した窒素含有炭化物粉末の代わりに、アセチレンブラックを用いた以外は、例1と同様である。
<炭化物表面の元素組成>
表1は、例1〜5で得られた窒素含有活性炭化物及び例6〜8で生成した炭化物の表面の元素組成を、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線励起光電子分光法)測定によって定量した結果である。いずれの炭素材料においても、検出された元素は炭素、酸素及び窒素のみで、金属等の元素はいっさい含まれていなかった。なお、元素組成は、原子数百分率で表している。また、シェイクアップ炭素の比率は、炭素C1s電子のスペクトル全体に対する291.8±0.5eVにピークをもつスペクトルの割合として求めたもので、全炭素中でのシェイクアップ炭素の存在比率と見なせるものである(以下、同様。)。
Figure 0005169748
例1〜5を比較すると、窒素含有活性炭化物を合成する原料としてメラミンの比率を高めた例ほど、窒素の存在率が高く、シェイクアップ炭素の比率も高くなっている。
例6の、メラミンを加えず、石炭系バインダーピッチのみから合成した炭化物においても0.86mol%の窒素が含まれていた。これは、石炭系バインダーピッチ自身が含有していた窒素である。他方、例7及び例8で使用した炭素原料であるグラファイト及びアセチレンブラックには窒素が含まれておらず、その結果、水蒸気賦活処理後の炭素材料においても窒素は検出されなかった。
なお、グラファイト及びアセチレンブラックには酸素も含まれていないが、例7及び例8で得られた炭素材料には、2〜3mol%の酸素が含まれていた。これは水蒸気賦活処理によって導入されたものと考えられる。
<窒素の結合状態>
XPSスペクトルの解析から、表面近傍にある窒素原子にはN1s電子の結合エネルギーが異なる3種の窒素原子N1〜N3が含まれていることがわかった。表2は、XPSスペクトルの解析から得られた、表面近傍におけるN1〜N3の原子数百分率で表した存在率(mol%)である。
Figure 0005169748
N1s電子の結合エネルギーの違いは、窒素原子の結合状態の違いを反映している。窒素原子N1〜N3の帰属は、Energy & Fuels,第12号(1998年),p.672-681、或いはCarbon,第40号,p.597-608 に記載されているデータを参考にして行った。第1の窒素原子N1は、N1s電子の結合エネルギーが398.5±0.5eVの窒素原子で、ピリジン型窒素である。第2の窒素原子N2は、N1s電子の結合エネルギーが401±0.5eVの窒素原子である。これは、4級窒素であり、水素化したピリジン型窒素、若しくはグラフェン層内の窒素と言われている。第3の窒素原子N3は、N1s電子の結合エネルギーが403.5±0.5eVの窒素原子で、酸化したピリジン型窒素とされている。
例1〜5の窒素含有活性炭化物では、N1〜N3のどの窒素の存在率も、メラミンの混合比の増加に伴い増加する傾向がある。
<燃料電池特性>
図2に示した燃料電池に、例1〜5及び例6〜8等で作製された膜−電極接合体(MEA)を組み込み、燃料極に加湿した水素を流速30ml/minで供給し、酸素極には空気を流速20ml/minで供給し、例1〜5で得られた窒素含有活性炭化物触媒および例6〜8で生成した炭化物の、燃料電池の酸素極触媒としての特性を調べた。ここで、水素は酸素に比べて大過剰に加えられており、酸素の供給量も得られた出力電流に比して十分過剰である。
表3は、本実験において測定された開回路電圧と、0.4Vの出力電圧で発電している時の出力密度とである。また、図4は、この出力電圧と出力密度との関係を示すグラフである。
Figure 0005169748
各炭素材料の示す開回路電圧はどれも異なる値を示した。メラミンを混合して窒素の存在率を高めた例1〜5では、開回路電圧はいずれも0.8Vを越えており、更にメラミンの混合量の増加に伴い開回路電圧も上昇した。例1〜5において、出力密度もメラミンの混合量の増加に伴い増大した。これらの傾向は、表1に示した、例1〜5における窒素の存在率の増加及びシェイクアップ炭素の存在比率の増加と対応している。
一方、例6のように窒素の存在率が0.86%と小さい窒素含有活性炭化物を用いた燃料電池では開回路電圧が低く、また出力密度は極めて小さく、発電性能はほとんど得られなかった。例7及び8のように窒素を含まない炭化物を炭素材料として用いた燃料電池では、開回路電圧が低く、発電性能はほとんど得られず、これらの炭素材料には酸素還元触媒としての特性がほとんどないことがわかった。
以上のごとく、活性炭化物中の窒素の存在率及びシェイクアップ炭素の存在比率と、活性炭化物の酸素還元触媒としての特性との間には相関があることは明白であり、燃料電池の酸素極の電極触媒として必要な特性を持つためには、活性炭化物の表面における窒素の存在率が0.96%以上であることが重要といえる。
また、表2の結果を鑑みると、酸素極触媒として機能するには、各結合エネルギーの窒素の表面における存在率が例1を上回ることが必須であり、すなわち結合エネルギーが398.5±0.5eV付近である窒素の存在率が原子百分率で0.22%以上、あるいは結合エネルギーが401±0.5eV付近である窒素の存在率が0.53%以上、あるいは結合エネルギーが403.5±0.5eV付近である窒素の存在率が0.21%以上であることが重要である。
<電子スピン共鳴(ESR)測定>
黒鉛をはじめとする炭素材料中には様々な結合構造を有する炭素原子が含まれ、その中には全電子数が奇数個である炭素も存在する。奇数個の電子を持つ場合、対を作らず1つの軌道を単独で占有する電子、即ち不対電子が必然的に存在する。不対電子は1/2の電子スピンを有するため、磁場中におかれると、電子スピンの向きの異なる2つのエネルギー状態にゼーマン分裂し、次の関係式1を満たす振動数νをもつ電磁波に対して共鳴吸収を示すようになる。
hν=gβH
ここで、gはg因子または磁気回転比と言われ、不対電子をもつ物質固有の値である。また、hはプランク定数6.6255×10-34Jsであり、βはボーア磁子9.274×10-24JT-1であり、Hは単位Tで表した磁場の強さである。電子スピン共鳴(ESR)測定法は上記の原理に基づく測定法で、不対電子を有する物質の結合構造を調べるのに有効な測定方法である。
表4は、例1〜5で得られた窒素含有活性炭化物、および例6と7で生成した炭化物についてESRスペクトルの測定を行い、その吸収強度から不対電子の密度であるスピン密度を求めた結果である。例1〜例5の窒素含有活性炭化物、並びに例6の炭化物は、ESRスペクトルから求まるg値が1.9980〜2.0000である不対電子と、g値が2.0020〜2.0026である不対電子との2種類の不対電子を有していた。それに対し、窒素を含有していない例7の炭化物は、g値が2.0075である1種類の不対電子を有するのみであった。
Figure 0005169748
図5は、例1〜例5の窒素含有活性炭化物および例6の炭化物における2種類の不対電子のスピン密度と、表1に示した表面における窒素の存在率との関係を示すグラフである。図5によると、g値が1.9980〜2.0000である不対電子のスピン密度は、窒素の存在率の増加とともに減少するのに対し、g値が2.0020〜2.0026である不対電子のスピン密度は、窒素の存在率の増加とともに増加しており、不対電子のスピン密度と窒素の存在率との間には明らかに相関関係が認められる。
通常の炭素材料で観察される不対電子は、伝導帯を占めている不対電子であり、分子の電子構造に対し非局在化して、分子全体に均一に分布している。この電子はパウリ常磁性を示し、その磁化率は、比較的高い温度まで温度によらず一定である。常磁性を示す電子スピンには、この他に、磁化率が絶対温度に反比例するというキュリーの法則に従うものが存在し、キュリー常磁性スピンと呼ばれる。キュリー常磁性は、分子の電子構造の一定箇所に集中した存在確率分布を有する局在化した電子のスピンによるものである。不対電子がパウリ常磁性であるか、キュリー常磁性であるかは、ESR吸収スペクトル強度の温度依存性を調べれば容易に判定することができる。
表5および図6は、ESR吸収スペクトル強度を異なる温度で測定し、例5の窒素含有活性炭化物に含まれる2種の不対電子、および例7の炭化物に含まれる不対電子のスピン密度の温度依存性を調べた結果である。測定は、296K、200K、120K、および80Kの4つの温度で行った。
Figure 0005169748
例5の窒素含有活性炭化物に含まれるg値が2.0000である不対電子、および例7の炭化物に含まれるg値が2.0075である不対電子のスピン密度は、温度に対する依存性が見られず、このことからこれらの不対電子は、通常の炭素材料でも確認されるパウリ常磁性を示す伝導電子であることがわかる。
これに対し、例5の窒素含有活性炭化物に含まれるg値が2.0026である不対電子のスピン密度は、温度の低下につれて増加しており、キュリー常磁性を示す不対電子であることがわかる。先述したように、キュリー常磁性を示す不対電子は分子の電子構造に対し局在化しており、例7の炭化物がそうであるように、窒素を含まない通常の炭素材料では観察されない特異的な電子である。
図8は、窒素含有活性炭化物中に存在が予想される窒素種を示す化学式である(Carbon,第40号(2002年),p.597-608)。分子軌道法計算ソフト「Spartan’04 for Windows」を用い、様々な窒素含有黒鉛構造の半占有軌道(SOMO;Single Occupied Molecular Orbital )を計算したところ、図中、「三炭素結合型」と記した、3個の炭素原子と結合したsp2混成軌道の電子配置をもつ窒素(three-carbon bonding sp2 nitrogen;あるいは、quaternary nitrogenまたはcarbon substituted nitrogenとも呼ばれている。)を有する炭素材料のみが、不対電子が局在化した構造をとることがわかった。従って、キュリー常磁性を示す不対電子は、窒素を含む炭素材料のなかでも、特別な結合構造をもつ窒素含有炭素材料のみが有し得る特殊な電子であることが判明した。この様な、窒素含有活性炭化物以外の炭素材料では見られない、局在化した不対電子が、触媒活性に大きな役割を果たしているものと考えられる。
以上のように、本発明に基づく窒素含有活性炭化物触媒では、パウリ常磁性を示す不対電子を含む炭素材料に、キュリー常磁性を示す不対電子を、そのスピン濃度を制御しながら添加したため、電子伝導性が良好で、かつ酸素還元触媒性が備わった機能性炭素材料が実現されたものと考えられる。
例1〜5においては、炭素源として石炭系バインダーピッチを用い、窒素源としてメラミンを用い、両者の混合物の焼成を行ったが、本発明の効果を得る方法は、この材料に限定されるものではない。例えば、Energy & Fuels,第12号(1998年),p.672-681 に記載されているように、窒素源としてメラミンの代わりにヒドラジンを使用することでも、窒素の存在率を高めることができる。また、アンモニア雰囲気下で焼成を行ってもよい。また、ポリアクリロニトリル、ナイロンやメラミン樹脂などの窒素含有合成高分子化合物、或いはゼラチンやコラーゲンなどのたんぱく質等の窒素含有天然有機高分子化合物を原料として、例1〜5と同様の触媒活性をもつ窒素含有活性炭化物を得ることもできる。次に、ポリアクリロニトリル又はメラミン樹脂を原料とした例を示す。
例9
石炭系バインダーピッチとメラミンの混合物粉末の代わりに、ポリアクリロニトリルの粉末を焼成する以外は、例1と同様である。
例10
焼成温度を1000℃ではなく600℃にした以外は、例9と同様である。
例11
メラミン、市販ホルマリン液及び水を質量比1:2:2に混合し、pH 9 の弱塩基性下で加熱煮沸した。その後析出した白色固形物(メラミン樹脂)を回収した。この樹脂の粉末を、石炭系バインダーピッチとメラミンの混合物粉末の代わりに焼成した以外は、例1と同様である。
表6は、表2と同様、XPSで調べた、例9〜11で得られた窒素含有活性炭化物の表面における第1〜第3の窒素原子N1〜N3の在在率及びシェイクアップ炭素の存在比率である。いずれの窒素含有活性炭化物も、先述したN1s電子の結合エネルギーで特徴づけられる第1〜第3の窒素原子N1〜N3を含んでいることが判明した。
Figure 0005169748
燃料極に加湿した水素を流速30ml/minで供給し、酸素極には空気を流速20ml/minで供給した。例9と例11における出力電圧と出力密度との関係を図7に示す。例9と例11の発電性能は、例5につぎ、例4と同程度であった。例9〜例11の燃料電池を0.4Vの出力電圧で発電させている時の出力密度を測定した結果を表6に示す。
1000℃でポリアクリロニトリルの焼成を行った例9と、600℃でポリアクリロニトリルの焼成を行った例10とを比べると、焼成温度が低く活性化が不十分な例10ではシェイクアップ炭素の存在比率が小さく、その結果、触媒性能が不十分で、燃料電池を構成した場合の出力密度が低いことがわかる。
また、例9と例11とを比べると、材料の選択によっても窒素の存在率及びシェイクアップ炭素の存在比率を変化させることができること、また、ポリアクリロニトリルを焼成した場合は窒素の存在率は大きいがシェイクアップ炭素の存在比率が小さく、メラミン樹脂を焼成した場合にはシェイクアップ炭素の存在比率は大きいが窒素の存在率が小さく、結果として両者の燃料電池の出力密度は同程度であること、言い換えれば触媒性能を高くして、燃料電池を構成した場合の出力密度を大きくするには、窒素の存在率とシェイクアップ炭素の存在比率とを共に大きくする必要があることがわかる。
例12
以上は、電解質に高分子膜を使用した高分子電解質型燃料電池への応用例であったが、本発明の酸素還元触媒はこれに限定されるものでなく、リン酸型燃料電池へも応用できる。ここではリン酸型燃料電池へ応用した例を示す。
炭化ケイ素粉末にポリテトラフルオロエチレンを質量比8:2で混練後、圧延した膜状成形物をマトリックスとして、これにリン酸を真空含浸させたものを電解質とした。一方、例4で合成した窒素含有活性炭化物にポリテトラフルオロエチレンを質量比8:2で混練し、圧延した。これを乾燥した後、直径15mmの円盤状に打ち抜き、酸素極を作製した。
一方、市販の白金担持カーボン触媒を塗布したカーボンシートを直径10mmの円盤状に打ち抜き、燃料極とした。更に、これら2つの電極の間に電解質を挟み、これを例1などと同様、図2に示した燃料電池に組み込み、燃料極に加湿した水素を流速30ml/minで供給し、酸素極には空気を流速20ml/minで供給し、発電特性を評価した。
本例による開回路電圧、及び0.4Vの出力電圧で発電している時の出力密度を表7に示す。
Figure 0005169748
以上のように、本発明に基づく例1〜5、9及び11による窒素含有活性炭化物触媒は、リン酸型燃料電池でも酸素極用触媒としての使用が可能である。
上記のように、実験結果に基づき、炭素及び窒素を構成元素とする材料を焼成し、これによって得られた焼成物を水蒸気賦活することで、表面における窒素の存在率とシェイクアップ炭素の存在比率とが共に高くなるように制御し、また、キュリー常磁性を示す不対電子のスピン濃度が高くなるように制御した窒素含有活性炭化物を合成することができること、およびこの材料が酸素還元触媒として有効な特性を示すこととを発見し、燃料電池の酸素極に応用することに成功した。本実施例によれば、酸素極の原料コストを極めて低く低減することができ、従来白金を酸素極の電極触媒として使用してきた燃料電池の低コスト化に寄与することが可能である。
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて適宜変更可能であることは言うまでもない。
本発明は、次世代の発電装置として期待される、高分子電解質型燃料電池やリン酸型燃料電池の酸素極電極触媒などに好適に用いられ、白金使用量の少ない低コストの上記燃料電池を実現し、その普及に寄与することができる。
本発明の実施の形態に基づく、窒素含有活性炭化物の合成装置の概略断面図である。 同、MEAを組み込んだ燃料電池の概略断面図である。 同、燃料電池の構成を示す概略断面図(a)とMEA拡大断面図(b)である。 本発明による例1〜例5と例6による燃料電池における出力電圧と出力密度との関係を示すグラフである。 同、例1〜例5の窒素含有活性炭化物および例6の炭化物における2種類の不対電子のスピン密度と、表面における窒素の存在率との関係を示すグラフである。 同、例5の窒素含有活性炭化物に含まれる2種の不対電子、および例7の炭化物に含まれる不対電子のスピン密度の温度依存性を示すグラフである。 本発明による例9および11による燃料電池における出力電圧と出力密度との関係を示すグラフである。 窒素含有活性炭化物中に存在が予想される窒素種を示す化学式である。
符号の説明
1…酸素極、1a…酸素還元触媒層、1b…導電性多孔質支持体、
2…水素イオン伝導性高分子電解質膜、3…燃料極、3a…水素酸化触媒層、
3b…導電性多孔質支持体、4…膜−電極接合体(MEA)、5、6…ガス供給部、
5a、6a…ガス供給溝、7…セル上半部、8…セル下半部、9、10…ガス供給管、
11…Oリング、12…外部回路、21…試料管、22…試料支持台、23…電気炉、
24…電気炉炉心管、25…電気炉の加熱領域、26…電気炉ヒーター部、
27…ガス導入口、28…ガス排出口、29…高純度窒素ガス、30…排出ガス、
31…水導入管

Claims (5)

  1. 炭素及び窒素を構成元素とする材料を焼成する工程と、これによって得られた焼成物を水蒸気賦活する工程とを有し、電子スピン共鳴測定において、g値が1.9930〜2.0000である第1の不対電子が3.1×10 19 /g以下のスピン密度で含まれ、且つ、g値が2.0020〜2.0026である第2の不対電子が6.0×10 14 /g以上のスピン密度で含まれるように制御された酸素還元触媒を製造するに際し、
    炭素質固体原料と窒素含有有機化合物とを質量比(50:50)〜(5:95)の割 合で混合してなる混合物粉末を焼成し、得られた窒素含有炭化物粉末を水蒸気賦活する ことによって、窒素含有活性炭化物からなる前記酸素還元触媒を製造する、
    酸素還元触媒の製造方法。
  2. 炭素及び窒素を構成元素とする材料を焼成する工程と、これによって得られた焼成物を水蒸気賦活する工程とを有し、電子スピン共鳴測定において、g値が1.9930〜2.0000である第1の不対電子が3.1×10 19 /g以下のスピン密度で含まれ、且つ、g値が2.0020〜2.0026である第2の不対電子が6.0×10 14 /g以上のスピン密度で含まれるように制御された酸素還元触媒を製造するに際し、
    ポリアクリロニトリル、メラミン樹脂、ナイロン、ゼラチン又はコラーゲンからなる 窒素含有有機高分子化合物粉末を1000℃で焼成し、得られた窒素含有炭化物粉末を 1000℃で水蒸気賦活することによって、窒素含有活性炭化物からなる前記酸素還元 触媒を製造する、
    酸素還元触媒の製造方法。
  3. 前記炭素質固体原料として石炭系バインダーピッチを用いる、請求項1に記載した酸素還元触媒の製造方法。
  4. 前記窒素含有有機化合物としてメラミン又はヒドラジンを用いる、請求項1に記載した酸素還元触媒の製造方法。
  5. 前記焼成と前記水蒸気賦活とを、高純度窒素気流中、温度1000℃で行う、請求項1又は2に記載した酸素還元触媒の製造方法。
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