以下に、本発明に係るダンパー装置及び流体伝達装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施形態では、ダンパー装置及び流体伝達装置に伝達される駆動力を発生する駆動源として、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどのエンジンを用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として、あるいはモータなどの電動機と併用して用いても良い。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータの要部断面図、図2は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータが備える遊星歯車機構の共線図である。以下の説明では、この流体伝達装置としてのトルクコンバータは、図1に示す出力軸の回転軸線Xを中心軸線としてほぼ対称になるように構成されることから、この図1には、回転軸線Xを中心軸線として一方側のみを図示し、特に断りのない限り、回転軸線Xを中心軸線として一方側のみを説明し、他方側の説明はできるだけ省略する。また、以下の説明では、特に断りのない限り、回転軸線Xに沿った方向を軸方向といい、回転軸線Xに直交する方向、すなわち、軸方向に直交する方向を径方向といい、回転軸線X周りの方向を周方向という。また、径方向において回転軸線X側を径方向内側といい、反対側を径方向外側という。また、軸方向において駆動源が設けられる側(駆動源から駆動力が入力される側)をエンジン側といい、反対側、つまり、トランスミッションが設けられる側(トランスミッションに駆動力を出力する側)を出力軸側という。
図1に示すように、実施形態1に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ1は、フロントカバー10と、流体伝達手段としての流体伝達機構20と、ロックアップ手段としてのロックアップクラッチ機構30と、本発明のダンパー手段及びダンパー装置としてのダンパー機構40と、出力軸50とを備える。このトルクコンバータ1は、軸方向に対してエンジン側から出力軸側に向かって、フロントカバー10、ロックアップクラッチ機構30、ダンパー機構40、流体伝達機構20の順番で配置されている。
フロントカバー10は、駆動源である図示しないエンジンの駆動力が伝達されるものである。フロントカバー10は、本体部11と、フランジ部12と、セットブロック13とを有する。
本体部11は、出力軸50の中心軸線である回転軸線Xと同軸の円板形状に形成される。フランジ部12は、本体部11の径方向外側端部から出力軸側に突出して形成されている。フランジ部12は、回転軸線Xと同軸の円筒形状に形成される。
セットブロック13は、エンジンからの駆動力の入力部材であるドライブプレート100と連結されるものである。セットブロック13は、本体部11のエンジン側の面の外周端部近傍に周方向に複数形成されている。各セットブロック13は、ドライブプレート100の貫通穴に挿入されたボルト14をそれぞれ螺合することで、ドライブプレート100と締結される。
ここで、ドライブプレート100は、回転軸線Xと同軸の円板形状に形成され、連結部材120(例えば、ボルト)によりエンジン(不図示)のエンジン出力軸110と締結されている。したがって、エンジンの駆動力は、ドライブプレート100に伝達され、ドライブプレート100に伝達された駆動力がフロントカバー10に伝達される。すなわち、エンジンの駆動力は、フロントカバー10のセットブロック13を介して本体部11に伝達される。
流体伝達機構20は、流体伝達手段であり、フロントカバー10に伝達された駆動力を作動流体(作動油)を介して出力軸50に伝達するものである。流体伝達機構20は、ポンプインペラ21と、タービンライナ22と、ステータ23と、ワンウェイクラッチ24と、ポンプインペラ21とタービンライナ22との間に介在する作動流体である作動油とにより構成されている。
ポンプインペラ21は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力が伝達されるものであり、伝達された駆動力を作動油を介してタービンライナ22に伝達するものである。ポンプインペラ21は、複数のポンプブレード21aが固定されたポンプシェル21bの径方向外側端部がフロントカバー10のフランジ部12における出力軸側端部に例えば溶接などにより固定されることで、フロントカバー10に固定されている。つまり、ポンプインペラ21は、フロントカバー10と一体回転し、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力がポンプシェル21bを介して各ポンプブレード21aに伝達される。また、ポンプインペラ21は、ポンプシェル21bの径方向内側端部がスリーブ51に例えば溶接などにより固定されている。なお、スリーブ51は、回転運動により作動する装置、例えばオイルポンプ(不図示)などに連結されている。
タービンライナ22は、ポンプインペラ21から作動油を介して伝達されたエンジンからの駆動力を出力軸50に伝達するものである。ここで、出力軸50は、例えば出力軸側に配置された図示しない変速機のインプットシャフトなどである。タービンライナ22は、ポンプブレード21aと軸方向において対向する複数のタービンブレード22aが固定されたタービンシェル22bの径方向内側端部が例えばリベット52aによりハブ52に固定されている。
ここで、ハブ52は、例えばハブ52の内周面と出力軸50の外周面に形成されたスプラインがスプライン嵌合することにより出力軸50に固定されている。つまり、タービンライナ22は、タービンシェル22bがハブ52を介して出力軸50と一体回転することとなり、タービンライナ22が出力軸50と一体回転することで、流体伝達機構20を構成するポンプインペラ21、作動油およびタービンライナ22を介して伝達されたエンジンからの駆動力が出力軸50に伝達される。
ステータ23は、周方向に形成された複数のステータブレード23aを有し、ポンプインペラ21とタービンライナ22との間に配置されるものである。ステータ23は、ポンプインペラ21とタービンライナ22との間を循環する作動油の流れを変化させ、エンジンから伝達される駆動力に基づいて所定の駆動力特性を得るためのものである。
ワンウェイクラッチ24は、トルクコンバータ1を収納するハウジング53に対してステータ23を一方向のみに回転可能に支持するものである。このワンウェイクラッチ24は、スリーブ51およびハブ52に対して、軸受25,26によりそれぞれ回転可能に支持されている。
ロックアップクラッチ機構30は、ロックアップ手段であり、フロントカバー10に伝達された駆動力を係合部材としてのロックアップピストン31を介して出力軸50に伝達するものである。すなわち、ロックアップクラッチ機構30は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力を流体伝達機構20の作動流体を介さずに直接出力軸50に伝達するものである。
ロックアップクラッチ機構30は、係合部材としてのロックアップピストン31と、摩擦係合面32と、作動流体流路33と、ピストン油圧室34とを有する。本実施形態では、ロックアップクラッチ機構30の摩擦係合面32は、ロックアップピストン31に設けられる摩擦材35とフロントカバー10のフロントカバー内壁面15とにより構成される。
ロックアップクラッチ機構30は、軸方向に対してエンジン側から出力軸側に向かって、摩擦係合面32の一方の面をなすフロントカバー10のフロントカバー内壁面15、摩擦係合面32の他方の面をなす摩擦材35、ロックアップピストン31の順番で配置されている。
ロックアップピストン31は、係合部材であり、フロントカバー10の流体伝達機構20側に設けられる。つまり、ロックアップピストン31は、フロントカバー10と流体伝達機構20のポンプシェル21bとによって区画され作動流体(作動油)で満たされる空間部に設けられる。さらに、このロックアップピストン31は、フロントカバー10の流体伝達機構20側にこのフロントカバー10に対して軸方向に相対移動可能に設けられる。
ロックアップピストン31は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、軸方向に対してフロントカバー10とタービンライナ22との間に、軸方向においてフロントカバー10と対向するようにして配置されている。さらに具体的に言えば、ロックアップピストン31は、軸方向に対してフロントカバー10の本体部11とタービンライナ22のタービンシェル22b、ハブ52との間に配置されている。ロックアップピストン31は、径方向外側突出部31aと、径方向内側突出部31bと、スプライン31cとを有する。
径方向外側突出部31aは、ロックアップピストン31の径方向外側端部がタービンライナ22側に折れ曲がるようにして形成される。つまり、径方向外側突出部31aは、タービンライナ22側に突出して回転軸線Xと同軸の円筒状に形成される部分である。
径方向内側突出部31bは、ロックアップピストン31の径方向内側端部がフロントカバー10側に折れ曲がるようにして形成される。つまり、径方向内側突出部31bは、フロントカバー10側に突出して回転軸線Xと同軸の円筒状に形成される部分である。
スプライン31cは、連結部60の一部を構成するものであり、径方向外側突出部31aの内周面において軸方向に沿って形成される。この連結部60は、ロックアップピストン31と後述するダンパー機構40のリングギヤ44とを一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結するものである。ロックアップピストン31は、このスプライン31cと、リングギヤ44における径方向外側端部44cの外周面において軸方向に形成されたスプライン44bとがスプライン嵌合することで、リングギヤ44に対して軸方向に相対移動可能で、かつ、このリングギヤ44と一体回転可能に支持される。つまり、ロックアップピストン31は、連結部60をなすスプライン31cとスプライン44bとにより、リングギヤ44に一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結される。したがって、ロックアップピストン31は、このロックアップピストン31に伝達された駆動力をリングギヤ44に伝達可能に連結されると共に、フロントカバー10に対しても軸方向に相対移動可能な構成となり、すなわち、フロントカバー10に対して軸方向に接近、離間可能な構成となる。
なお、ロックアップピストン31は、スプライン31c、スプライン44bを介してリングギヤ44に一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結された状態で、径方向外側突出部31aがフランジ部12と径方向に所定の間隔を有して対向する。また、ロックアップピストン31は、スプライン31c、スプライン44bを介してリングギヤ44に一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結された状態で、径方向内側突出部31bがハブ52の径方向内側端部の外周面(出力軸50と接触する面とは反対側の面)と対向し接触し軸方向に摺動自在に支持されている。
摩擦係合面32は、上述のようにロックアップピストン31に設けられる摩擦材35とフロントカバー10のフロントカバー内壁面15とにより構成される。フロントカバー内壁面15は、フロントカバー10の本体部11においてロックアップピストン31と軸方向に対向する壁面である。摩擦材35は、ロックアップピストン31において本体部11と軸方向に対向する壁面の径方向外側端部、すなわち、径方向外側突出部31a近傍に設けられる。摩擦材35は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成される。摩擦係合面32は、この摩擦係合面32の一方の面をなす本体部11と摩擦係合面32の他方の面をなすロックアップピストン31に設けられた摩擦材35とが対向して接触することで摩擦係合可能であり、すなわち、ロックアップピストン31の径方向外側端部とフロントカバー10とを摩擦係合可能である。
そして、ロックアップピストン31は、上述のようにリングギヤ44に対して軸方向に相対的に移動してフロントカバー10の本体部11に対して接近、離間することで、摩擦材35の本体部11に対する相対距離を変化させることができる。そして、このロックアップピストン31の軸方向の摺動により、摩擦材35を本体部11に接触させ摩擦係合することができ、また本体部11と非接触とし、摩擦係合を解除することができる。
なお、ロックアップピストン31の径方向内側突出部31bとハブ52の径方向内側端部の外周面との間には、ハブ52の径方向内側端部の外周面とこの外周面上を摺動する径方向内側突出部31bとの間からの作動流体(作動油)の漏れを抑制するシール部材Pが配置されている。したがって、フロントカバー10と流体伝達機構20のポンプシェル21bとによって区画されるトルクコンバータ1の内部は、ロックアップピストン31により、流体伝達機構20が位置する流体伝達機構空間部Aと、ロックアップクラッチ機構30の摩擦材35が位置するクラッチ空間部Bとに区画される。流体伝達機構空間部Aは、軸方向に対してロックアップピストン31より出力軸側の空間、すなわち、軸方向に対してロックアップピストン31とポンプシェル21bとによって区画される空間、クラッチ空間部Bは、軸方向に対してフロントカバー10とロックアップピストン31とによって区画される空間である。この流体伝達機構空間部Aとクラッチ空間部Bとは、摩擦係合面32側で径方向外側突出部31aとフランジ部12との間の連通部分を介して連通可能となっている。
作動流体流路33は、軸方向に対してロックアップピストン31とフロントカバー10との間に作動流体(作動油)が通過可能な空間部として形成される。ここでは、トルクコンバータ1の内部にて摩擦材35が位置するクラッチ空間部Bが作動流体流路33として機能する。摩擦係合面32は、この作動流体流路33として機能するクラッチ空間部B内の径方向外側の部分に設けられている。そして、この作動流体流路33は、上述のように摩擦係合面32側で径方向外側突出部31aとフランジ部12との間の連通部分を介して流体伝達機構20の内部の流体伝達機構空間部Aと連通可能に形成される。
ピストン油圧室34は、ロックアップピストン31を軸方向に移動させるための油圧押圧力を発生させるためのものである。ここでは、トルクコンバータ1の内部にて流体伝達機構20が位置する流体伝達機構空間部Aがピストン油圧室34として機能する。このピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aは、上述したように、ロックアップピストン31とポンプシェル21bとの間に作動流体(作動油)が通過可能な空間部として形成されている。そして、このピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aは、内部の作動油によってロックアップピストン31にフロントカバー10側への押圧力を作用させる。
上記のように構成されるロックアップクラッチ機構30は、ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aに供給される作動流体(作動油)の液圧(油圧)により、ロックアップピストン31が軸方向に沿ってフロントカバー10側に接近移動し、ロックアップクラッチ機構30の摩擦係合面32を構成する摩擦材35と本体部11のフロントカバー内壁面15とが接触し摩擦係合することで、ロックアップクラッチ機構30がONとなる。ロックアップクラッチ機構30がONとなると、フロントカバー10とロックアップピストン31とが一体回転することとなるので、このロックアップクラッチ機構30は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力をフロントカバー内壁面15、摩擦材35、ロックアップピストン31を順番に介して、後述するダンパー機構40のリングギヤ44に伝達することとなる。
ここで、このトルクコンバータ1は、ロックアップピストン31とポンプシェル21bとの間に形成されピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部A又はフロントカバー10とロックアップピストン31との間に形成され作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bの一方に図示しない油圧制御手段から作動流体としての作動油が供給される。
油圧制御手段は、ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aの油圧と、作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bの油圧との圧力差、すなわち、ロックアップクラッチ機構30のロックアップピストン31の出力軸側の面に軸方向に作用する押圧力を制御することができる。油圧制御手段は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、例えば、ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aに作動油を供給し、流体伝達機構20の内部側であるこの流体伝達機構空間部A側からクラッチ空間部Bに作動油を流し、作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bからトルクコンバータ1の外部に排出することで、作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bの油圧を低下させ、ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aの油圧をクラッチ空間部Bの油圧よりも大きくする。これにより、油圧制御手段は、ロックアップピストン31をフロントカバー10に接近する側(エンジン側)に移動させ、摩擦材35をフロントカバー内壁面15と接触させ、この摩擦係合面32を介してフロントカバー10とロックアップピストン31とを摩擦係合させて、フロントカバー10とロックアップピストン31とを一体回転させる。
また、油圧制御手段は、ロックアップクラッチ機構30のOFF制御時に、例えば、作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bに作動油を供給し、クラッチ空間部B側から流体伝達機構空間部Aに作動油を流し、ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aからトルクコンバータ1の外部に作動油を排出することで、作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bの油圧をピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aの油圧よりも大きく、あるいは同等とする。これにより、油圧制御手段は、ロックアップピストン31をフロントカバー10から離間する側(出力軸側)に移動させ、フロントカバー内壁面15と摩擦係合していた摩擦材35をフロントカバー内壁面15から離間させ、摩擦係合を解除し、ロックアップピストン31とフロントカバー10との一体回転を解除する。
ダンパー機構40は、本発明のダンパー手段及びダンパー装置であり、フロントカバー10と出力軸50とを相対回転可能に連結するものである。ここでは、フロントカバー10と出力軸50とは、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、ロックアップクラッチ機構30のロックアップピストン31、ダンパー機構40及びハブ52を介して相対回転可能に連結される。ダンパー機構40は、フロントカバー10、ポンプシェル21bの内部に収納されており、軸方向に対してタービンシェル22bとロックアップピストン31との間に設けられる。
ダンパー機構40は、遊星歯車機構41と、複数の弾性体としての複数のダンパースプリング42とを有する。そして、本実施形態のダンパー機構40は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、フロントカバー10、フロントカバー内壁面15、摩擦材35、ロックアップピストン31を順番に介して伝達されるエンジンからの駆動力が遊星歯車機構41の回転要素をなすリングギヤ44に入力され、このリングギヤ44に入力された駆動力を出力軸50に伝達可能である。さらに言えば、ダンパー機構40は、遊星歯車機構41のリングギヤ44に入力されたエンジンからの駆動力をサンギヤ43又はキャリア45の一方から出力し出力軸50に伝達すると共に、他方がダンパーマス(慣性質量体)として作用する。本実施形態のダンパー機構40は、遊星歯車機構41のリングギヤ44に入力された駆動力を複数のダンパースプリング42を介してキャリア45から出力し、ハブ52を介して出力軸50に伝達すると共に、このとき、サンギヤ43がダンパーマスとして作用する。
具体的には、遊星歯車機構41は、いわゆる、シングルピニオン式の遊星歯車機構であり、サンギヤ43と、リングギヤ44と、キャリア45と、ピニオンギヤ46とを有する。遊星歯車機構41は、サンギヤ43、リングギヤ44及びキャリア45が回転要素をなすものである。さらに言えば、遊星歯車機構41は、これら3つの回転要素としてのサンギヤ43と、リングギヤ44と、キャリア45とが相互に差動回転するように構成された差動歯車機構である。
サンギヤ43は、外歯歯車であり、ダンパー機構40においてダンパーマス(慣性質量体)として作用するものである。サンギヤ43は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、外周面に歯車が形成される。サンギヤ43は、軸方向に対してタービンシェル22bとロックアップピストン31との間に設けられる。このサンギヤ43は、内周面側にハブ52の径方向外側端部が挿入されるようにして設けられる。
ここで、本実施形態のダンパー機構40は、サンギヤ43に延長質量部43aを備えている。
延長質量部43aは、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、軸方向に対してサンギヤ43とロックアップピストン31との間に設けられる。延長質量部43aは、内周側の端部(径方向内側端部)がサンギヤ43のエンジン側の端面に固定される。つまり、延長質量部43aは、サンギヤ43から径方向に沿って径方向外側に向かって形成される。ここでは、延長質量部43aは、サンギヤ43と一体で形成される。これにより、この延長質量部43aは、サンギヤ43がダンパーマス(慣性質量体)として作用する際には、このサンギヤ43と共に一体回転することでサンギヤ43と共にダンパーマス(慣性質量体)として作用する。
リングギヤ44は、サンギヤ43と同軸上に配置された内歯歯車であり、上述したように、ロックアップクラッチ機構30のロックアップピストン31を一体回転可能かつ相対移動可能に支持すると共に複数のダンパースプリング42の一部分を駆動力伝達可能に保持するものである。このリングギヤ44は、遊星歯車機構41の入力回転要素である。
リングギヤ44は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、内周面に歯車が形成される。リングギヤ44は、サンギヤ43の径方向外側を所定の間隔をあけて覆うようにして配置される。したがって、リングギヤ44の内周面に形成される歯車とサンギヤ43の外周面に形成される歯車とは、径方向に対して所定の間隔をあけて対向する。そして、このリングギヤ44は、中心保持部44aと、スプライン44bとを有する。
中心保持部44aは、リングギヤ44において複数のダンパースプリング42の一部分を保持するものである。中心保持部44aは、リングギヤ44の周方向に沿って円弧状に形成されたスリットである。中心保持部44aは、内部にダンパースプリング42が挿入されこのダンパースプリング42を保持する。中心保持部44aは、リングギヤ44に対して周方向に等間隔に複数個形成されている。
各中心保持部44aは、その周方向の長さが各ダンパースプリング42を付勢した状態で保持できる長さに設定されている。したがって、中心保持部44aにダンパースプリング42が保持されると、中心保持部44aの周方向における両端部がダンパースプリング42の両端部にそれぞれ接触することとなる。つまり、ダンパースプリング42は、各中心保持部44aの周方向における両端部に接触し、両端部の間に付勢された状態で保持される。
したがって、このリングギヤ44は、各中心保持部44aと各ダンパースプリング42との周方向端部接触部分において、ダンパースプリング42との間で駆動力の伝達が可能となる。
スプライン44bは、上述したように、スプライン31cと共に連結部60を構成するものであり、リングギヤ44における径方向外側端部44cの外周面において軸方向に形成される。この連結部60は、上述したように、ロックアップピストン31とリングギヤ44とを一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結するものである。この連結部60をなすスプライン31cとスプライン44bとは、それぞれロックアップピストン31の径方向外側突出部31aの内周面、リングギヤ44の径方向外側端部44cの外周面の全周にわたって形成されている。
リングギヤ44は、ロックアップピストン31の径方向外側突出部31aの内側に挿入された状態でスプライン44bとスプライン31cとがスプライン嵌合することで、ロックアップピストン31に対して相対回転することが規制されると共に軸方向に沿ったロックアップピストン31の相対移動が許容される。つまり、リングギヤ44は、スプライン44bとスプライン31cとがスプライン嵌合することで、ロックアップピストン31を軸方向に相対移動可能で、かつ、このリングギヤ44と一体回転可能に支持する。したがって、リングギヤ44は、連結部60によってロックアップピストン31と駆動力を伝達可能に連結される。そして、リングギヤ44は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、エンジンからの駆動力がフロントカバー10、フロントカバー内壁面15、摩擦材35、ロックアップピストン31を順番に介して入力される。つまり、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時には、この連結部60にてロックアップピストン31からリングギヤ44に伝達される。
なお、この連結部60は、スプライン嵌合に限らず、例えば、ロックアップピストン31の径方向外側突出部31aの内周面に設けられる連結凹部と、リングギヤ44の径方向外側端部44cの外周面に設けられる連結凸部とが係合することで、ロックアップピストン31の径方向外側突出部31aとリングギヤ44の径方向外側端部44cとを一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結するようにしてもよい。この場合、径方向外側突出部31aの内周面に設けられる連結凹部と、径方向外側端部44cの外周面に設けられる連結凸部とは、それぞれ周方向に複数個設けられていればよい。
キャリア45は、ピニオンギヤ46を自転可能かつ公転可能に保持すると共に、リングギヤ44により軸方向の中心部分を保持される複数のダンパースプリング42の一部分を駆動力伝達可能に保持するものである。このキャリア45は、遊星歯車機構41の出力回転要素である。
ピニオンギヤ46は、外歯歯車であり、サンギヤ43の歯車とリングギヤ44の歯車とに噛合するものである。ピニオンギヤ46は、径方向に対してサンギヤ43とリングギヤ44との間に設けられる。ピニオンギヤ46は、サンギヤ43、リングギヤ44の周方向に等間隔に複数個設けられている。
そして、キャリア45は、フロントキャリア47とリアキャリア48とからなり、このフロントキャリア47とリアキャリア48とは、複数のピニオンギヤ46を軸方向に対して挟みこむようにして自転可能かつ公転可能に支持する。
フロントキャリア47とリアキャリア48とは、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、軸方向に対してタービンシェル22bとロックアップピストン31との間に設けられる。フロントキャリア47、リアキャリア48は、サンギヤ43とリングギヤ44とピニオンギヤ46とからなる遊星歯車列の軸方向に対する側方、ここでは、フロントキャリア47がロックアップピストン31側(エンジン側)、リアキャリア48がタービンシェル22b側(出力軸側)に設けられる。さらにここでは、フロントキャリア47は、軸方向に対して上述した延長質量部43aと、遊星歯車列(サンギヤ43、リングギヤ44及びピニオンギヤ46)との間に設けられる。したがって、このダンパー機構40は、軸方向に対してエンジン側から出力軸側に向かって、延長質量部43a、フロントキャリア47、サンギヤ43とリングギヤ44とピニオンギヤ46とからなる遊星歯車列、リアキャリア48の順番で配置されている。
フロントキャリア47とリアキャリア48とは、軸方向に対するフロントキャリア47とリアキャリア48との間の空間部分に複数のダンパースプリング42と共にサンギヤ43とリングギヤ44とピニオンギヤ46とからなる遊星歯車列が配置されこれらを挟み込んで保持する。
そして、フロントキャリア47は、フロント保持部47aを有し、リアキャリア48は、リヤ保持部48aを有する。フロント保持部47aは、フロントキャリア47のリングギヤ44と軸方向に対向する壁面、すなわち、出力軸側の壁面に設けられる。リヤ保持部48aは、リアキャリア48のリングギヤ44と対向する壁面、すなわち、エンジン側の壁面に設けられる。
フロント保持部47a、リヤ保持部48aは、リングギヤ44の中心保持部44aにより軸方向に対する中心部分が保持される各ダンパースプリング42の一部分を収容し保持するものである。
フロント保持部47aは、フロントキャリア47の出力軸側の壁面がエンジン側(リングギヤ44側とは反対側)に窪むことで形成される。フロント保持部47aは、フロントキャリア47の周方向に沿って円弧状に形成される。フロント保持部47aは、フロントキャリア47に対して周方向に等間隔に複数個形成されている。リヤ保持部48aは、リアキャリア48のエンジン側の壁面が出力軸側(リングギヤ44側とは反対側)に窪むことで形成される。リヤ保持部48aは、リアキャリア48の周方向に沿って円弧状に形成される。リヤ保持部48aは、リアキャリア48に対して周方向に等間隔に複数個形成されている。そして、各フロント保持部47aと各リヤ保持部48aとは、ともにリングギヤ44の中心保持部44aと軸方向に対向する位置に形成される。
したがって、ダンパー機構40は、リングギヤ44の中心保持部44aが各ダンパースプリング42の中心部分(軸方向の中心部分)を保持し、フロントキャリア47のフロント保持部47aがダンパースプリング42のうち中心保持部44aよりエンジン側の部分を収容し保持し、リアキャリア48のリヤ保持部48aが中心保持部44aより出力軸側の部分を収容し保持する。そして、各フロント保持部47a、各リヤ保持部48aの周方向における両端部は、各中心保持部44aに各ダンパースプリング42が保持された状態で、それぞれダンパースプリング42の両端部に周方向において対向し、接触可能となる。
つまり、各ダンパースプリング42は、リングギヤ44の中心保持部44a、フロントキャリア47のフロント保持部47a及びリアキャリア48のリヤ保持部48aにより保持され、リングギヤ44とフロントキャリア47、リアキャリア48との間で相互に駆動力の伝達が可能となる。
ここで、フロントキャリア47とリアキャリア48とは、例えばリベット61によりサンギヤ43とリングギヤ44とピニオンギヤ46とからなる遊星歯車列を挟んで一体化されている。リベット61は、リングギヤ44に対して周方向に等間隔に複数個形成されている。複数のピニオンギヤ46は、それぞれ各リベット61に挿入されるようにして回転可能に支持されている。したがって、複数のピニオンギヤ46は、各リベット61を介してフロントキャリア47とリアキャリア48との間にリベット61の中心軸線を回転中心として自転可能かつ回転軸線Xを公転中心として公転可能に支持される。フロントキャリア47とリアキャリア48とは、ピニオンギヤ46が軸方向におけるスペーサとして作用することで、フロントキャリア47とリアキャリア48との軸方向に対する相対的な位置関係が適正に固定される。
フロントキャリア47とリアキャリア48とは、リアキャリア48の内径がフロントキャリア47の内径より小さく設定されている。そして、リアキャリア48は、径方向内側端部48b(すなわち、内周面側の端部)がタービンシェル22bの径方向内側端部とともに例えばリベット52aによりハブ52に固定されている。したがって、フロントキャリア47、リアキャリア48は、ハブ52を介して出力軸50に固定され、ハブ52及び出力軸50と共に一体回転することができる。
複数のダンパースプリング42は、遊星歯車機構41の回転要素であるサンギヤ43、リングギヤ44、キャリア45のうちの2つを相対回転可能に連結するものであり、例えば、複数のコイルスプリングである。本実施形態のダンパースプリング42は、上述したように、リングギヤ44の中心保持部44a、フロントキャリア47のフロント保持部47a及びリアキャリア48のリヤ保持部48aにより保持されることで、リングギヤ44とキャリア45とを相対回転可能に連結する。ここでは、ダンパースプリング42は、リングギヤ44に伝達されたエンジンの駆動力をリアキャリア48、フロントキャリア47に伝達するものであり、つまり、ダンパー機構40における駆動力の伝達経路中に設けられている。
すなわち、本実施形態のダンパー機構40は、複数のダンパースプリング42を介してロックアップクラッチ機構30のロックアップピストン31と出力軸50とを連結する。ここでは、このダンパー機構40は、ロックアップピストン31と一体回転可能なリングギヤ44と、出力軸50と一体回転可能なフロントキャリア47、リアキャリア48とを複数のダンパースプリング42を介して相対回転可能に連結する。複数のダンパースプリング42は、リングギヤ44とフロントキャリア47、リアキャリア48とが所定の捩れ角となるまで相対回転を許容することができる。
上記のように構成されるダンパー機構40は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、フロントカバー10からロックアップピストン31に伝達されたエンジンからの駆動力を連結部60にてリングギヤ44に入力する。ダンパー機構40は、リングギヤ44に入力された駆動力を中心保持部44aの周方向端部からダンパースプリング42に伝達する。ダンパー機構40は、ダンパースプリング42に伝達された駆動力をフロント保持部47a、リヤ保持部48aの周方向端部を介してフロントキャリア47、リアキャリア48に伝達する。したがって、フロントキャリア47、リアキャリア48は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力がロックアップピストン31、リングギヤ44、ダンパースプリング42を介して伝達され所定の方向に回転する。そして、ダンパー機構40は、フロントキャリア47、リアキャリア48に伝達された駆動力をリアキャリア48からハブ52を介して出力軸50に伝達する。
この間、各ダンパースプリング42は、それぞれ、リングギヤ44の中心保持部44aの周方向端部とフロントキャリア47、リアキャリア48のフロント保持部47a、リヤ保持部48aの周方向端部との間に保持されつつ、伝達される駆動力の大きさに応じて弾性変形する。
そして、このダンパー機構40は、遊星歯車機構41の回転要素であるサンギヤ43、リングギヤ44及びキャリア45が図2に示す共線図に基づいた回転速度(回転数に相当)で作動する。この図2に示す共線図は、遊星歯車機構41の各回転要素の回転速度(回転数)の相対関係を直線で表したものである。図2に示す共線図は、縦軸を遊星歯車機構41の回転要素であるサンギヤ43、キャリア45及びリングギヤ44のそれぞれの回転の速度比(回転数比に相当)とし、横軸に沿った互いの間隔がリングギヤ44とサンギヤ43との歯数比に応じた間隔となるように各回転要素の速度比をそれぞれ配置した周知の速度線図である。ここでは、遊星歯車機構41の出力回転要素であるキャリア45を基準とし、キャリア45の回転の速度比を1としている。また、この図2に示すギヤ比λは、遊星歯車機構41のギヤ比であり、サンギヤ43の歯数Rsをリングギヤ44の歯数Rrで除算することで算出され、すなわち、λ=Rs/Rrとなる。
本実施形態のダンパー機構40は、図2に示すように、エンジンの回転変動などによる振動のエンジン側の振幅、すなわち、遊星歯車機構41の入力回転要素であるリングギヤ44への入力振幅aに対して、サンギヤ43及び延長質量部43aからなるダンパーマスのダンパーマス振幅bが遊星歯車機構41の差動作用により入力振幅aの1/λ倍の逆方向の振幅に増幅される。つまり、ダンパー機構40は、遊星歯車機構41の入力回転要素であるリングギヤ44への駆動力に応じたリングギヤ44の回転速度に対して、サンギヤ43及び延長質量部43aからなるダンパーマスの回転速度が遊星歯車機構41の差動作用によりリングギヤ44の回転速度の1/λ倍の逆方向の回転速度に増速される。
次に、本実施形態に係るトルクコンバータ1の動作について説明する。エンジンが駆動力を発生し、エンジン出力軸110が回転すると、エンジンからの駆動力がドライブプレート100を介してフロントカバー10に伝達される。フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力は、フロントカバー10に連結されているポンプインペラ21のポンプシェル21bに伝達され、ポンプインペラ21が回転する。流体伝達機構空間部Aの作動油は、ポンプインペラ21が回転すると、ポンプブレード21aとタービンブレード22aとステータ23のステータブレード23aの間を循環し、流体継手として作用する。これにより、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力が、ポンプインペラ21及び作動油を介してタービンライナ22に伝達され、タービンライナ22がフロントカバー10と同一方向に回転する。このとき、ステータ23は、ステータブレード23aを介してポンプブレード21aとタービンブレード22aとの間を循環する作動油の流れを変化させ、これにより、このトルクコンバータ1は、所定のトルク特性を得ることができる。
そして、ロックアップクラッチ機構30のOFF時は、フロントカバー10のフロントカバー内壁面15とロックアップピストン31に設けられた摩擦材35との摩擦係合が解除されている。したがって、上記のように作動油を介してタービンライナ22に伝達されたエンジンからの駆動力は、ハブ52を介して出力軸50に伝達される。つまり、ロックアップクラッチ機構30のOFF時は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力が流体伝達機構20を介して出力軸50に伝達される。
一方、ロックアップクラッチ機構30のON時は、フロントカバー10のフロントカバー内壁面15とロックアップピストン31に設けられた摩擦材35とが摩擦係合することで、フロントカバー10とロックアップピストン31とが一体回転する。したがって、フロントカバー10に伝達された駆動力は、摩擦係合面32を介してロックアップクラッチ機構30のロックアップピストン31に伝達される。ロックアップピストン31に伝達された駆動力は、連結部60を介してロックアップピストン31からダンパー機構40のリングギヤ44に入力されて、リングギヤ44に入力された駆動力は、ダンパースプリング42を介してキャリア45のリアキャリア48から出力され、ハブ52を介して出力軸50に伝達される。つまり、ロックアップクラッチ機構30のON時は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力がロックアップクラッチ機構30、ダンパー機構40及びハブ52を介して作動油を介さずに直接的に出力軸50に伝達される。
このとき、ロックアップクラッチ機構30がOFF時からON時、あるいはON時からOFF時に切り替わる場合や、エンジンからの駆動力が変動した場合、出力軸50に伝達される路面からの抵抗力が変動した場合などでは、フロントカバー10と出力軸50との間で伝達される力(エンジンからの駆動力と路面から伝達される被駆動力)が変動するので、ダンパー機構40を挟んで駆動側に位置するフロントカバー10と被駆動側に位置する出力軸50とが相対的に回転しようとする。つまり、フロントカバー10、ロックアップピストン31と一体回転するリングギヤ44と、ハブ52、出力軸50と一体回転するフロントキャリア47、リアキャリア48とが相対的に回転しようとする。そして、ダンパー機構40の各ダンパースプリング42は、駆動側のフロントカバー10、ロックアップピストン31、リングギヤ44と、被駆動側の出力軸50、ハブ52、フロントキャリア47、リアキャリア48との相対的な回転に伴って、フロントカバー10側と出力軸50側との間で伝達される力の変動に応じて、それぞれ、リングギヤ44とフロントキャリア47、リアキャリア48との間で弾性変形する。これにより、ロックアップクラッチ機構30のON時は、ダンパー機構40により複数のダンパースプリング42を介してフロントカバー10と出力軸50とが相対回転可能に連結されることから、例えば、エンジンの爆発に起因する振動を各ダンパースプリング42が吸収するので、ダンパー機構40を介した駆動力伝達時におけるこもり音などの振動を低減することができる。
そして、本実施形態のトルクコンバータ1のダンパー機構40は、ロックアップクラッチ機構30のON時にエンジンからの駆動力が径方向外側に配置された遊星歯車機構41のリングギヤ44に入力されることから、例えば、リングギヤ44より径方向内側に位置する遊星歯車機構41のサンギヤ43やキャリア45に駆動力が入力される場合と比較して、ダンパー機構40全体を大径化することなく、回転軸線Xからの距離(つまり半径)が相対的に長い径方向外側の部分にてロックアップピストン31からダンパー機構40に駆動力を伝達することができる。したがって、ダンパー機構40は、ロックアップピストン31とリングギヤ44とを駆動力伝達可能に連結する連結部60がダンパー機構40において相対的に径方向外側に位置することから、ロックアップピストン31からリングギヤ44に駆動力を伝達する際に連結部60に作用する荷重(あるいは応力)を相対的に小さくすることができるので、入力回転要素であるリングギヤ44において適正な強度を確保した上で、このリングギヤ44を軸方向に対して薄型化することができる。この結果、ダンパー機構40は、リングギヤ44を軸方向に対して薄型化することができることから、ダンパー機構40、トルクコンバータ1を小型化することができるので、このダンパー機構40、トルクコンバータ1の車両への搭載性を向上することができると共に、車両全体での慣性質量を低下させることができ、よって車両の動力性能を向上させることができる。
また、本実施形態のトルクコンバータ1のダンパー機構40は、ロックアップクラッチ機構30のON時にエンジンからの駆動力が径方向外側に配置された遊星歯車機構41のリングギヤ44に入力され、このリングギヤ44に入力された駆動力を径方向外側から径方向内側に向かって径方向に対して一方向に伝達し、キャリア45のリアキャリア48から出力して出力軸50に伝達することから、ダンパー機構40における駆動力の伝達経路を単純化することができる。したがって、ダンパー機構40は、ダンパー機構40における駆動力の伝達経路を単純化することができ、ダンパー機構40にて駆動力の伝達経路が径方向におりかえされるような部分が形成されることが防止されることから、ダンパー機構40の構成を単純化することができ、さらに軸方向に薄型化することができるので、ダンパー機構40、トルクコンバータ1をさらに小型化することができる。この結果、このトルクコンバータ1、ダンパー機構40は、車両への搭載性をさらに向上することができると共に車両の動力性能をさらに向上させることができる。
また、このトルクコンバータ1のダンパー機構40は、遊星歯車機構41のサンギヤ43がダンパーマス(慣性質量体)として作用することで、エンジンからの駆動力の伝達方向に対してダンパースプリング42より上流の駆動側(エンジン側)の慣性質量とダンパースプリング42より下流の被駆動側(出力軸(トランスミッション)側)の慣性質量とのバランスを最適化することができる。すなわち、従来のトルクコンバータにおいては駆動側の慣性質量が被駆動側の慣性質量より大きくなる傾向にあったが、このトルクコンバータ1は、ダンパー機構40を構成する遊星歯車機構41のサンギヤ43が被駆動側のダンパーマス(慣性質量体)として作用することで、被駆動側の慣性質量を増加させることができることから、被駆動側の共振周波数ω(ω=√(k/I)、k:バネ定数、I:慣性質量)を低下させることができ、よって、ダンパー機構40のこもり音の発生防止などのダンパー性能をさらに向上することができる。つまり、このトルクコンバータ1は、上記のようにダンパー機構40においてエンジンからの駆動力をリングギヤ44に入力することで小型化を図った上でダンパー性能を高性能化することができ、振動の低減性能をさらに向上することができ、こもり音などの発生をさらに抑制することができることから、ロックアップクラッチ機構30をONにすることができる回転数領域を拡大することができ、比較的に低回転数の領域でロックアップクラッチ機構30をONにすることができるので燃費を向上できる。
ここで、このトルクコンバータ1のダンパー機構40は、サンギヤ43に設けられた延長質量部43aがこのサンギヤ43と共に一体回転することで、この延長質量部43aもサンギヤ43と共に被駆動側のダンパーマス(慣性質量体)として作用する。したがって、このトルクコンバータ1は、ダンパー機構40の延長質量部43aがサンギヤ43と共に被駆動側のダンパーマス(慣性質量体)として作用することで、被駆動側の慣性質量をさらに増加させることができることから、被駆動側の共振周波数ωをさらに低下させることができる。よって、このトルクコンバータ1は、ダンパー機構40のこもり音の発生防止などのダンパー性能をさらに向上することができ、さらなる振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
さらに、このトルクコンバータ1のダンパー機構40は、遊星歯車機構41の差動作用により、被駆動側のダンパーマスであるサンギヤ43及び延長質量部43aの回転速度がリングギヤ44の回転速度に対して増速される。したがって、このダンパー機構40は、被駆動側のダンパーマスであるサンギヤ43及び延長質量部43aの回転速度が増速されることにより被駆動側の慣性質量を増加させた場合と同等の効果が得られることから、被駆動側の共振周波数ωをさらに低下させることができる。言い換えれば、このダンパー機構40は、被駆動側のダンパーマスであるサンギヤ43及び延長質量部43aの回転速度が増速されることで、サンギヤ43及び延長質量部43aを大型化することなく、装置の大型化を抑制しつつ被駆動側の共振周波数ωをさらに低下させることができる。
また、このトルクコンバータ1のダンパー機構40は、複数のダンパースプリング42がリングギヤ44とキャリア45とを相対回転可能に連結するようにリングギヤ44とキャリア45とによって保持されて設けられることから、例えば、複数のダンパースプリング42がサンギヤ43とキャリア45とを相対回転可能に連結するようにサンギヤ43とキャリア45とによって保持されて設けられる場合と比較して、この複数のダンパースプリング42が相対的に径方向外側に配置されることとなる。したがって、このダンパー機構40は、ダンパースプリング42を配置する領域の周方向長さを相対的に長くすることができることから、ダンパースプリング42を比較的多く設けることができるので、ダンパースプリング42を低バネ化しバネ定数を小さくすることができ、これにより、装置の大型化を抑制しつつ被駆動側の共振周波数ωをさらに低下させることができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構40によれば、外歯歯車であるサンギヤ43と、サンギヤ43と同軸上に配置された内歯歯車であるリングギヤ44と、サンギヤ43とリングギヤ44とに噛合するピニオンギヤ46を自転可能かつ公転可能に保持するキャリア45とが回転要素をなす遊星歯車機構41と、遊星歯車機構41の回転要素のうちの2つを相対回転可能に連結するダンパースプリング42とを備え、遊星歯車機構41は、エンジンからの駆動力がリングギヤ44に入力され、このリングギヤ44に入力された駆動力を出力軸50に伝達可能である。
以上で説明した本発明の実施形態に係るトルクコンバータ1によれば、エンジンからフロントカバー10に伝達された駆動力を作動油を介して出力軸50に伝達可能な流体伝達手段20と、フロントカバー10に伝達された駆動力をロックアップピストン31を介して出力軸50に伝達可能なロックアップクラッチ機構30と、外歯歯車であるサンギヤ43と、サンギヤ43と同軸上に配置された内歯歯車であるリングギヤ44と、サンギヤ43とリングギヤ44とに噛合するピニオンギヤ46を自転可能かつ公転可能に保持するキャリア45とが回転要素をなす遊星歯車機構41と、遊星歯車機構41の回転要素のうちの2つを相対回転可能に連結するダンパースプリング42とを有し、遊星歯車機構41は、ロックアップクラッチ機構30がロックアップピストン31を介して駆動力を伝達する際に、フロントカバー10に伝達された駆動力がリングギヤ44に入力され、このリングギヤ44に入力された駆動力を出力軸50に伝達可能であるダンパー機構40とを備える。
したがって、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、エンジンからの駆動力が径方向外側に配置された遊星歯車機構41のリングギヤ44に入力されることから、例えば、リングギヤ44より径方向内側に位置するサンギヤ43やキャリア45に駆動力が入力される場合と比較して、リングギヤ44に駆動力を伝達する際にこのリングギヤ44に作用する荷重(あるいは応力)を相対的に小さくすることができる。この結果、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、入力回転要素であるリングギヤ44の適正な強度を確保した上で、このリングギヤ44を軸方向に対して薄型化することができるので、ダンパー機構40、トルクコンバータ1を小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構40、トルクコンバータ1によれば、遊星歯車機構41は、リングギヤ44に入力された駆動力をキャリア45のリアキャリア48から出力する。したがって、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、ダンパー機構40における駆動力の伝達経路を単純化しダンパー機構40の構成を単純化することができるので、さらに小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構40、トルクコンバータ1によれば、ダンパースプリング42は、リングギヤ44とキャリア45とを相対回転可能に連結する。したがって、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、遊星歯車機構41のサンギヤ43が被駆動側のダンパーマス(慣性質量体)として作用すると共に、遊星歯車機構41の差動作用によりリングギヤ44の回転速度に対してサンギヤ43の回転速度が増速されることから、被駆動側の共振周波数を低下させることができ、よって、上記のようにダンパー機構40においてエンジンからの駆動力をリングギヤ44に入力することで小型化を図った上でダンパー機構40のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
また、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、複数のダンパースプリング42がリングギヤ44とキャリア45とによって保持され相対的に径方向外側に配置されることとなることから、ダンパースプリング42を配置する領域の周方向長さを相対的に長くすることができ、ダンパースプリング42を比較的多く設けることができる。この結果、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、ダンパースプリング42を低バネ化しバネ定数を小さくすることができ、装置の大型化を抑制しつつ被駆動側の共振周波数ωをさらに低下させることができるので、ダンパー機構40のこもり音の発生防止などのダンパー性能をさらに向上することができ、さらなる振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構40、トルクコンバータ1によれば、サンギヤ43に設けられ、軸方向と直交する径方向に沿って回転中心から離間する側に向かって形成される延長質量部43aを備える。したがって、トルクコンバータ1、ダンパー機構40は、サンギヤ43に設けられた延長質量部43aがこのサンギヤ43と共に一体回転することで、この延長質量部43aもサンギヤ43と共に被駆動側のダンパーマス(慣性質量体)として作用することから、被駆動側の共振周波数をさらに低下させることができる。よって、このトルクコンバータ1、ダンパー機構40は、ダンパー機構40のこもり音の発生防止などのダンパー性能をさらに向上することができ、さらなる振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係るトルクコンバータの要部断面図、図4は、本発明の実施形態2に係るトルクコンバータが備える遊星歯車機構の共線図である。実施形態2に係るダンパー装置及び流体伝達装置は、実施形態1に係るダンパー装置及び流体伝達装置と略同様の構成であるが、遊星歯車機構の出力回転要素がサンギヤである点で実施形態1に係るダンパー装置及び流体伝達装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
実施形態2に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ201は、図3に示すように、本発明のダンパー手段及びダンパー装置としてのダンパー機構240を備える。
ダンパー機構240は、遊星歯車機構241と、複数の弾性体としての複数のダンパースプリング42とを有する。そして、本実施形態のダンパー機構240は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、フロントカバー10、フロントカバー内壁面15、摩擦材35、ロックアップピストン31を順番に介して伝達されるエンジンからの駆動力が遊星歯車機構241の回転要素をなすリングギヤ44に入力され、このリングギヤ44に入力された駆動力を出力軸50に伝達可能である。さらに言えば、ダンパー機構240は、遊星歯車機構241のリングギヤ44に入力された駆動力をピニオンギヤ46を介してサンギヤ243から出力し、ハブ52を介して出力軸50に伝達すると共に、このとき、キャリア245がダンパーマスとして作用する。
ここで、本実施形態のダンパー機構240は、いわゆるダイナミックダンパー(動吸振動器)として機能し、ここでは、キャリア245がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する。すなわち、ダイナミックダンパーとして機能するこのダンパー機構240は、ダンパー機構240に作用する特定の周波数の振動に対して、このダンパーマスとしてのキャリア245が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制するものである。つまり、このダンパー機構240は、ダンパー機構240に作用する特定の周波数の振動に対して、ダンパーマスとしてのキャリア245が共振振動し振動エネルギーを代替吸収するものであり、キャリア245がダンパー機構240に作用する振動に共振してこの振動を吸収することで高い制振効果(ダイナミックダンパー効果)を奏することができる。本実施形態のダンパー機構240は、遊星歯車機構241において駆動力の伝達に寄与しないキャリア245が駆動力の伝達に寄与するリングギヤ44にダンパースプリング42を介して連結され弾性支持されることで、この駆動力の伝達に寄与しない部材であるキャリア245がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)、つまりダイナミックダンパーにおいて慣性モーメントを発生させるための部材として作用し、ダンパースプリング42がダイナミックダンパーの捩じり剛性を調節する部材として作用する。
具体的には、遊星歯車機構241は、サンギヤ243と、リングギヤ44と、キャリア245と、ピニオンギヤ46を有する。
サンギヤ243は、遊星歯車機構241の出力回転要素である。このサンギヤ243は、スプライン243bを有する。
スプライン243bは、ハブ52のスプライン52bと共に連結部262を構成するものであり、サンギヤ243における径方向内側端部の内周面において軸方向に形成される。スプライン52bは、ハブ52における径方向外側端部の外周面において軸方向に形成される。この連結部262は、ハブ52とサンギヤ243とを一体回転可能に連結するものである。この連結部262をなすスプライン243bとスプライン52bとは、それぞれサンギヤ243の径方向内側端部の内周面、ハブ52の径方向外側端部の外周面の全周にわたって形成されている。
サンギヤ243は、ハブ52がこのサンギヤ243の内側に挿入された状態でスプライン243bとスプライン52bとがスプライン嵌合することで、ハブ52に対して相対回転することが規制される。つまり、サンギヤ243は、スプライン243bとスプライン52bとがスプライン嵌合することで、このハブ52に一体回転可能に支持される。したがって、サンギヤ243は、連結部262によってハブ52と駆動力を伝達可能に連結される。なお、本実施形態のサンギヤ243は、実施形態1で説明した延長質量部43a(図1参照)を有していない。
リングギヤ44は、遊星歯車機構241の入力回転要素である。リングギヤ44は、中心保持部44aと、スプライン44bとを有する。中心保持部44aは、リングギヤ44において複数のダンパースプリング42の一部分を保持するものである。スプライン44bは、スプライン31cと共に連結部60を構成するものであり、この連結部60は、上述したように、ロックアップピストン31とリングギヤ44とを一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結するものである。
キャリア245は、ピニオンギヤ46を自転可能かつ公転可能に保持すると共に、リングギヤ44により軸方向の中心部分を保持される複数のダンパースプリング42の一部分を保持するものである。このキャリア245は、ダンパー機構240においてダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用するものである。
キャリア245は、フロントキャリア247とリアキャリア248とからなり、このフロントキャリア247とリアキャリア248とは、複数のピニオンギヤ46を軸方向に対して挟みこむようにして自転可能かつ公転可能に支持する。このダンパー機構240は、軸方向に対してエンジン側から出力軸側に向かって、フロントキャリア247、サンギヤ243とリングギヤ44とピニオンギヤ46とからなる遊星歯車列、リアキャリア248の順番で配置されている。フロントキャリア47とリアキャリア48とは、例えばリベット61によりサンギヤ243とリングギヤ44とピニオンギヤ46とからなる遊星歯車列を挟んで一体化されている。フロントキャリア247とリアキャリア248とは、内径がほぼ同等に設定されており、実施形態1のダンパー機構40(図1参照)とは異なり、ともにハブ52には連結されていない。
そして、フロントキャリア247は、フロント保持部47aを有し、リアキャリア248は、リヤ保持部48aを有する。フロント保持部47a、リヤ保持部48aは、リングギヤ44の中心保持部44aにより軸方向に対する中心部分が保持されるダンパースプリング42の一部分を収容し保持するものである。フロント保持部47aとリヤ保持部48aとは、ともにリングギヤ44の中心保持部44aと軸方向に対向する位置に形成される。
したがって、ダンパー機構240は、リングギヤ44の中心保持部44aがダンパースプリング42の中心部分(軸方向の中心部分)を保持し、フロントキャリア247のフロント保持部47aがダンパースプリング42のうち中心保持部44aよりエンジン側の部分を収容し保持し、リアキャリア248のリヤ保持部48aが中心保持部44aより出力軸側の部分を収容し保持する。そして、フロント保持部47a、リヤ保持部48aの周方向における両端部は、中心保持部44aにダンパースプリング42が保持された状態で、それぞれダンパースプリング42の両端部に周方向において対向し、接触可能となる。
つまり、ダンパースプリング42は、リングギヤ44の中心保持部44a、フロントキャリア247のフロント保持部47a及びリアキャリア248のリヤ保持部48aにより保持される。ただしここでは、このダンパースプリング42はリングギヤ44とフロントキャリア247、リアキャリア248との間の駆動力の伝達は行わない。
ここで、本実施形態のダンパー機構240は、キャリア245に肉厚質量部247aを備えている。
肉厚質量部247aは、キャリア245のフロントキャリア247に設けられる。肉厚質量部247aは、フロントキャリア247において軸方向に沿って形成される肉厚の部分である。このフロントキャリア247は、フロントキャリア247のダンパーマスとしての質量を増加させる部分として、ピニオンギヤ46を支持するために必要な強度に応じた肉厚に加えて余剰分の肉厚が付加されており、この余剰分の肉厚が肉厚質量部247aをなす。ここでは、フロントキャリア247は、その肉厚(軸方向に沿った長さ)がリアキャリア248の肉厚より厚く設定されており、この部分が肉厚質量部247aをなす。
上述した実施形態1のダンパー機構40(図1参照)は、軸方向におけるロックアップピストン31と遊星歯車列との間の領域に延長質量部43a(図1参照)が設けられていたが、本実施形態のダンパー機構240は、フロントキャリア247が軸方向に沿ってロックアップピストン31側(エンジン側)に膨出するようにして形成されることで、このロックアップピストン31と遊星歯車列との間の領域に肉厚質量部247aがフロントキャリア247と一体で形成される。つまりここでは、肉厚質量部247aは、フロントキャリア247の一部分をなす。これにより、この肉厚質量部247aは、キャリア245がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する際には、このキャリア245と共に一体回転することでキャリア245と共にダンパーマス(慣性質量体)として作用する。つまり、本実施形態のダンパー機構240は、キャリア245と肉厚質量部247aとがダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用し、すなわち、慣性モーメントを発生させるための部材として作用する。
ダンパースプリング42は、上述したように、リングギヤ44の中心保持部44a、フロントキャリア247のフロント保持部47a及びリアキャリア248のリヤ保持部48aにより保持されることで、リングギヤ44とキャリア245とを相対回転可能に連結する。本実施形態のダンパースプリング42は、上述したようにダンパー機構240における駆動力の伝達経路中には配置されておらず、つまり、駆動力の伝達には寄与しない。本実施形態のダンパースプリング42は、遊星歯車機構241において駆動力の伝達に寄与するリングギヤ44に駆動力の伝達に寄与しないキャリア245をダンパーマス(慣性質量体)として弾性支持するものである。
上記のように構成されるダンパー機構240は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、フロントカバー10からロックアップピストン31に伝達されたエンジンからの駆動力を連結部60にてリングギヤ44に入力する。ダンパー機構240は、リングギヤ44に入力された駆動力をピニオンギヤ46を介してサンギヤ243に伝達する。したがって、サンギヤ243は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力がロックアップピストン31、リングギヤ44、ピニオンギヤ46を介して伝達され所定の方向に回転する。そして、ダンパー機構240は、サンギヤ243に伝達された駆動力を連結部262からハブ52を介して出力軸50に伝達する。
そして、このダンパー機構240は、遊星歯車機構241の回転要素であるサンギヤ243、リングギヤ44及びキャリア245が図4に示す共線図に基づいた回転速度(回転数に相当)で作動する。このダンパー機構240は、図4に示すように、エンジンの回転変動などによる振動のエンジン側の振幅、すなわち、遊星歯車機構241の入力回転要素であるリングギヤ44への入力振幅aに対して、キャリア245、肉厚質量部247aからなるダンパーマスのダンパーマス振幅bが遊星歯車機構241の差動作用により入力振幅aの1/(1+λ)倍の振幅に減衰される。つまり、ダンパー機構240は、遊星歯車機構241の入力回転要素であるリングギヤ44への駆動力に応じたリングギヤ44の回転速度に対して、キャリア245、肉厚質量部247aからなるダンパーマスの回転速度が遊星歯車機構241の差動作用によりリングギヤ44の回転速度の1/(1+λ)倍の回転速度に減速される。
この間、ダンパー機構240は、ダンパースプリング42によりリングギヤ44に弾性支持されたキャリア245、肉厚質量部247aがダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する。すなわち、ダンパー機構240は、ダンパー機構240に作用する特定の周波数の振動に対して、ダンパーマス(慣性質量体)としてのキャリア245、肉厚質量部247aが逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制することができ、高い制振効果を奏することができる。これにより、ダンパー機構240は、例えば、エンジンの爆発に起因する振動をキャリア245、肉厚質量部247aが逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)するので、ダンパー機構240のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
そして、本実施形態のトルクコンバータ201のダンパー機構240は、実施形態1で説明したようなダンパーマスの増速効果はないものの、キャリア245に設けられた肉厚質量部247aがこのキャリア245と共に一体回転することで、この肉厚質量部247aもキャリア245と共にダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する。つまり、このダンパー機構240は、キャリア245を構成するフロントキャリア247の肉厚を厚くし軸方向の隙間に肉厚質量部247aを形成するという比較的簡易な構成の付加によってダイナミックダンパーの慣性質量Iをさらに増加させることができる。
そして、このトルクコンバータ201は、ダンパー機構240の肉厚質量部247aがキャリア245と共にダンパーマス(慣性質量体)として作用することでダイナミックダンパーの慣性質量Iをさらに増加させることができることから、その分ダイナミックダンパーにおいて特定の共振周波数ωを設定する際のバネ定数kを相対的に大きな値に設定することができる。言い換えれば、このダンパー機構240は、ダンパー機構240の肉厚質量部247aがキャリア245と共にダンパーマス(慣性質量体)として作用することでダイナミックダンパーの慣性質量Iをさらに増加させることができることから、バネ定数kを相対的に大きな値に設定しても、ダイナミックダンパーにおいて所望の共振周波数ωを実現することができる。この結果、ダンパー機構240は、バネ定数kを相対的に大きな値に設定することができることから、例えば、ダンパースプリング42を小径化することができるので、ダンパー機構240、トルクコンバータ201をさらに小型化することができる。よって、このダンパー機構240、トルクコンバータ201の車両への搭載性をさらに向上することができると共に、車両全体での慣性質量を低下させることができ、よって車両の動力性能をさらに向上させることができる。
また、このトルクコンバータ201のダンパー機構240は、複数のダンパースプリング42がリングギヤ44とキャリア245とを相対回転可能に連結するようにリングギヤ44とキャリア45とによって保持されて設けられることから、この複数のダンパースプリング42が相対的に径方向外側に配置されることとなる。したがって、このダンパー機構240は、ダンパースプリング42を配置する領域の周方向長さを相対的に長くすることができることから、ダンパースプリング42を比較的多く設けることができる。この結果、ダンパー機構240は、ダンパースプリング42を比較的多く設けることができることから、例えば、その分、各ダンパースプリング42自体はさらに小径化することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構240、トルクコンバータ201によれば、このトルクコンバータ201、ダンパー機構240は、エンジンからの駆動力が径方向外側に配置された遊星歯車機構241のリングギヤ44に入力されることから、リングギヤ44に駆動力を伝達する際にこのリングギヤ44に作用する荷重(あるいは応力)を相対的に小さくすることができる。この結果、トルクコンバータ201、ダンパー機構240は、入力回転要素であるリングギヤ44の適正な強度を確保した上で、リングギヤ44を軸方向に対して薄型化することができるので、ダンパー機構240、トルクコンバータ201を小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構240、トルクコンバータ201によれば、遊星歯車機構241は、リングギヤ44に入力された駆動力をサンギヤ243から出力する。したがって、ダンパー機構240は、リングギヤ44に入力された駆動力を径方向外側から径方向内側に向かって径方向に対して一方向に伝達し、サンギヤ243から出力して出力軸50に伝達することから、ダンパー機構240における駆動力の伝達経路を単純化することができ、ダンパー機構240の構成を単純化することができるので、さらに小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構240、トルクコンバータ201によれば、ダンパースプリング42は、リングギヤ44とキャリア245とを相対回転可能に連結する。したがって、トルクコンバータ201、ダンパー機構240は、遊星歯車機構241のキャリア245がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用することから、ダンパー機構240に作用する特定の周波数の振動に対して、ダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)としてのキャリア245が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制することができ、高い制振効果を奏することができる。この結果、トルクコンバータ201、ダンパー機構240は、上記のようにダンパー機構240においてエンジンからの駆動力をリングギヤ44に入力することで小型化を図った上でダンパー機構240のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構240、トルクコンバータ201によれば、キャリア245に設けられ軸方向に沿って形成される肉厚質量部247aを備える。したがって、トルクコンバータ201、ダンパー機構240は、キャリア245に設けられた肉厚質量部247aがこのキャリア245と共に一体回転することで、この肉厚質量部247aもキャリア245と共にダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用することから、例えば、ダンパースプリング42を小径化することができ、ダンパー機構240、トルクコンバータ201をさらに小型化することができる。
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3に係るトルクコンバータの要部断面図、図6は、本発明の実施形態3に係るトルクコンバータが備える遊星歯車機構の共線図である。実施形態3に係るダンパー装置及び流体伝達装置は、実施形態1に係るダンパー装置及び流体伝達装置と略同様の構成であるが、遊星歯車機構のリングギヤがロックアップ手段の係合部材を兼ねる点で実施形態1に係るダンパー装置及び流体伝達装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
実施形態3に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ301は、図5に示すように、ロックアップ手段としてのロックアップクラッチ機構330と、本発明のダンパー手段及びダンパー装置としてのダンパー機構340とを備える。そして、本実施形態のトルクコンバータ301は、ロックアップクラッチ機構330の係合部材としてのロックアップピストン331と、ダンパー機構340が備える遊星歯車機構341のリングギヤ344とが兼用されている。すなわち、遊星歯車機構341のリングギヤ344は、ダンパー機構340の一部を構成すると共に、ロックアップクラッチ機構330の一部を構成するロックアップピストン331でもある。
具体的には、遊星歯車機構341は、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344がフロントカバー10に対して軸方向に沿って相対移動可能に設けられる。
ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、軸方向に対してフロントカバー10と遊星歯車機構341のフロントキャリア347との間に、軸方向においてフロントカバー10と対向するようにして配置されている。
このリングギヤ344(ロックアップピストン331)は、径方向外側突出部331aと、径方向内側突出部331bとを有する。径方向外側突出部331aは、リングギヤ344の径方向外側端部がタービンライナ22側に折れ曲がるようにして形成される。径方向内側突出部331bは、リングギヤ344の径方向内側端部がフロントカバー10側に折れ曲がるようにして形成される。ロックアップクラッチ機構330の摩擦係合面32の一方の面をなす摩擦材35は、リングギヤ344においてフロントカバー10の本体部11と軸方向に対向する壁面の径方向外側端部、すなわち、径方向外側突出部331a近傍に設けられる。
そして、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、径方向外側突出部331aの内周面に歯車が形成されており、この歯車にキャリア345によって自転可能かつ公転可能に支持されているピニオンギヤ46の歯車が噛合する。したがって、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、径方向外側突出部331aの内周面に形成された歯車とピニオンギヤ46の歯車とが噛合することで、ピニオンギヤ46との間で駆動力を伝達可能であると共に、ピニオンギヤ46に対して軸方向に沿って相対移動することができる。この結果、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、フロントカバー10に対して軸方向に相対移動可能な構成となり、すなわち、フロントカバー10に対して軸方向に接近、離間可能な構成となる。
そして、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、ピニオンギヤ46に対して軸方向に相対的に移動してフロントカバー10の本体部11に対して接近、離間することで、摩擦材35の本体部11に対する相対距離を変化させることができる。そして、このロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344の軸方向の摺動により、摩擦材35を本体部11に接触させ摩擦係合することができ、また本体部11と非接触とし、摩擦係合を解除することができる。
なお、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、径方向外側突出部331aの内周面に形成された歯車とピニオンギヤ46の歯車とが噛合することでピニオンギヤ46に連結された状態で、径方向外側突出部331aがフランジ部12と径方向に所定の間隔を有して対向する。また、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344は、径方向外側突出部331aの内周面に形成された歯車とピニオンギヤ46の歯車とが噛合することでピニオンギヤ46に連結された状態で、径方向内側突出部331bがハブ52の径方向内側端部の外周面(出力軸50と接触する面とは反対側の面)と対向し接触し軸方向に摺動自在に支持されている。
また、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344の径方向内側突出部331bとハブ52の径方向内側端部の外周面との間には、ハブ52の径方向内側端部の外周面とこの外周面上を摺動する径方向内側突出部331bとの間からの作動流体(作動油)の漏れを抑制するシール部材Pが配置されている。そして、作動流体流路33として機能するクラッチ空間部Bは、軸方向に対してロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344とフロントカバー10との間に作動流体(作動油)が通過可能な空間部として形成される。ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aは、軸方向に対してロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344とポンプシェル21bとの間に作動流体(作動油)が通過可能な空間部として形成される。
上記のように構成されるロックアップクラッチ機構330は、ピストン油圧室34として機能する流体伝達機構空間部Aに供給される作動流体(作動油)の液圧(油圧)により、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344が軸方向に沿ってフロントカバー10側に接近移動し、ロックアップクラッチ機構330の摩擦係合面32を構成する摩擦材35と本体部11のフロントカバー内壁面15とが接触し摩擦係合することで、ロックアップクラッチ機構330がONとなる。ロックアップクラッチ機構330がONとなると、フロントカバー10とロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344とが一体回転することとなるので、このロックアップクラッチ機構330は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力をフロントカバー内壁面15、摩擦材35を順番に介して、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に伝達することとなる。言い換えれば、このトルクコンバータ301は、ロックアップクラッチ機構330がONとなると、ダンパー機構340の一部を構成すると共にロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344にエンジンからの駆動力が入力される。
ダンパー機構340は、遊星歯車機構341と、複数の弾性体としての複数のダンパースプリング42とを有する。遊星歯車機構341は、サンギヤ343と、上述のロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344と、キャリア345と、ピニオンギヤ46とを有する。
そして、本実施形態のダンパー機構340は、ロックアップクラッチ機構330のON制御時に、フロントカバー10、フロントカバー内壁面15、摩擦材35を順番に介して伝達されるエンジンからの駆動力がロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に入力され、このリングギヤ344に入力された駆動力を出力軸50に伝達可能である。さらに言えば、ダンパー機構340は、遊星歯車機構341のリングギヤ344(ロックアップピストン331)に入力された駆動力をピニオンギヤ46を介してキャリア345から出力し、ハブ52を介して出力軸50に伝達すると共に、このとき、サンギヤ343がダイナミックダンパーのダンパーマスとして作用する。
つまり、本実施形態のダンパー機構340は、遊星歯車機構341において駆動力の伝達に寄与しないサンギヤ343が駆動力の伝達に寄与するキャリア345にダンパースプリング42を介して連結され弾性支持されることで、この駆動力の伝達に寄与しない部材であるサンギヤ243がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)、つまりダイナミックダンパーにおいて慣性モーメントを発生させるための部材として作用し、ダンパースプリング42がダイナミックダンパーの捩じり剛性を調節する部材として作用する。なお、本実施形態のダンパースプリング42は、後述するようにサンギヤ343とキャリア345とによって保持され、サンギヤ343とキャリア345とを相対回転可能に連結する。
サンギヤ343は、ダンパー機構340においてダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する。このサンギヤ343は、中心保持部343aを有する。なお、本実施形態のサンギヤ343は、実施形態1で説明した延長質量部43a(図1参照)を有していない。
中心保持部343aは、サンギヤ343において複数のダンパースプリング42の一部分を保持するものである。中心保持部343aは、サンギヤ343の周方向に沿って円弧状に形成されたスリットである。中心保持部343aは、内部にダンパースプリング42が挿入されこのダンパースプリング42を保持する。中心保持部343aは、リングギヤ44に対して周方向に等間隔に複数個形成されている。
リングギヤ344は、遊星歯車機構341の入力回転要素であり、上述したように、ロックアップクラッチ機構330のロックアップピストン331としても兼用される。
キャリア345は、遊星歯車機構341の出力回転要素であり、ピニオンギヤ46を自転可能かつ公転可能に保持する。
キャリア345は、フロントキャリア347とリアキャリア348とからなり、このフロントキャリア347とリアキャリア348とは、複数のピニオンギヤ46を軸方向に対して挟みこむようにして自転可能かつ公転可能に支持する。フロントキャリア347とリアキャリア348とは、例えばリベット61によりサンギヤ343とピニオンギヤ46を挟んで一体化されている。フロントキャリア347とリアキャリア348とは、リアキャリア348の内径がフロントキャリア347の内径より小さく設定されている。そして、リアキャリア348は、径方向内側端部348b(すなわち、内周面側の端部)がタービンシェル22bの径方向内側端部とともに例えばリベット52aによりハブ52に固定されている。したがって、フロントキャリア347、リアキャリア348は、ハブ52を介して出力軸50に固定され、ハブ52及び出力軸50と共に一体回転することができる。
そして、フロントキャリア347は、フロント保持部347aを有し、リアキャリア348とは、リヤ保持部348aを有する。フロント保持部347a、リヤ保持部348aは、サンギヤ343の中心保持部343aにより軸方向に対する中心部分が保持されるダンパースプリング42の一部分を収容し保持するものである。フロント保持部347aとリヤ保持部348aとは、ともにサンギヤ343の中心保持部343aと軸方向に対向する位置に形成される。
したがって、ダンパー機構340は、サンギヤ343の中心保持部343aがダンパースプリング42の中心部分(軸方向の中心部分)を保持し、フロントキャリア347のフロント保持部347aがダンパースプリング42のうち中心保持部343aよりエンジン側の部分を収容し保持し、リアキャリア348のリヤ保持部348aが中心保持部343aより出力軸側の部分を収容し保持する。
つまり、ダンパースプリング42は、サンギヤ343の中心保持部343a、フロントキャリア347のフロント保持部347a及びリアキャリア348のリヤ保持部348aにより保持される。ただしここでは、このダンパースプリング42はサンギヤ343とフロントキャリア347、リアキャリア348との間の駆動力の伝達は行わない。
ダンパースプリング42は、サンギヤ343の中心保持部343a、フロントキャリア347のフロント保持部347a及びリアキャリア348のリヤ保持部348aにより保持されることで、サンギヤ343とキャリア345とを相対回転可能に連結する。本実施形態のダンパースプリング42は、ダンパー機構340における駆動力の伝達経路中には配置されておらず、つまり、駆動力の伝達には寄与しない。本実施形態のダンパースプリング42は、遊星歯車機構341において駆動力の伝達に寄与するキャリア345に駆動力の伝達に寄与しないサンギヤ343をダンパーマス(慣性質量体)として弾性支持するものである。
上記のように構成されるダンパー機構340は、ロックアップクラッチ機構330のON制御時に、エンジンからの駆動力をフロントカバー10からロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に入力する。ダンパー機構340は、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に入力された駆動力をピニオンギヤ46を介してフロントキャリア347、リアキャリア348に伝達する。したがって、フロントキャリア347、リアキャリア348は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力がロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344、ピニオンギヤ46を介して伝達され所定の方向に回転する。そして、ダンパー機構340は、フロントキャリア347、リアキャリア348に伝達された駆動力をリアキャリア348からハブ52を介して出力軸50に伝達する。
そして、このダンパー機構340は、遊星歯車機構341の回転要素であるサンギヤ343、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344及びキャリア345が図6に示す共線図に基づいた回転速度(回転数に相当)で作動する。このダンパー機構340は、図6に示すように、エンジンの回転変動などによる振動のエンジン側の振幅、すなわち、遊星歯車機構341の入力回転要素であるリングギヤ344(ロックアップピストン331)への入力振幅aに対して、サンギヤ343からなるダンパーマスのダンパーマス振幅bが遊星歯車機構341の差動作用により入力振幅aの1/λ倍の逆方向の振幅に増幅される。つまり、ダンパー機構340は、遊星歯車機構341の入力回転要素であるリングギヤ344(ロックアップピストン331)への駆動力に応じたリングギヤ344(ロックアップピストン331)の回転速度に対して、サンギヤ343からなるダンパーマスの回転速度が遊星歯車機構341の差動作用によりリングギヤ344の回転速度の1/λ倍の逆方向の回転速度に増速される。
この間、ダンパー機構340は、ダンパースプリング42によりキャリア345に弾性支持されたサンギヤ343がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する。すなわち、ダンパー機構340は、ダンパー機構340に作用する特定の周波数の振動に対して、ダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)としてのサンギヤ343が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制することができ、高い制振効果を奏することができる。これにより、ダンパー機構340は、例えば、エンジンの爆発に起因する振動をサンギヤ343が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)するので、ダンパー機構340のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
そして、本実施形態のトルクコンバータ301のダンパー機構340は、リングギヤ344がロックアップクラッチ機構330のロックアップピストン331として兼用されることから、トルクコンバータ301、ダンパー機構340を構成する部品点数を削減することができるので、製造コストを低減することができると共にトルクコンバータ301、ダンパー機構340のさらなる小型化、軽量化を実現することができる。
また、このトルクコンバータ301のダンパー機構340は、リングギヤ344がロックアップクラッチ機構330のロックアップピストン331として兼用されることから、その分、ダンパー機構340全体を大径化することなく、リングギヤ344の外径を相対的に大きくすることができるので、リングギヤ344からピニオンギヤ46に駆動力を伝達する際にリングギヤ344に作用する荷重(あるいは応力)を相対的に小さくすることができる。このため、ダンパー機構340は、リングギヤ344において適正な強度を確保した上で、このリングギヤ344を軸方向に対してさらに薄型化することができ、ダンパー機構340、トルクコンバータ301をさらに小型化することができる。
さらに、このトルクコンバータ301のダンパー機構340は、リングギヤ344がロックアップクラッチ機構330のロックアップピストン331として兼用されることでリングギヤ344の外径を相対的に大きくすることができることから、その分、例えば、実施形態1で説明したサンギヤ43の外径と比較して、サンギヤ343の外径も相対的に大きくすることができる。このため、ダンパー機構340は、サンギヤ343の外径を相対的に大きくすることができることから、例えば、実施形態1で説明した延長質量部43a(図1参照)を備えなくても、ダイナミックダンパーのダンパーマスとして作用するサンギヤ343の慣性質量Iを十分に確保することができる。この結果、トルクコンバータ301、ダンパー機構340は、例えば、実施形態1のトルクコンバータ1(図1参照)、ダンパー機構40(図1参照)と比較して延長質量部43a(図1参照)を備えない分、トルクコンバータ301、ダンパー機構340を構成する部品点数をさらに削減することができるので、製造コストを低減することができると共にトルクコンバータ301、ダンパー機構340のさらなる小型化、軽量化を実現することができる。
そして、このトルクコンバータ301のダンパー機構340は、サンギヤ343の外径を相対的に大きくすることができダイナミックダンパーのダンパーマスとして作用するサンギヤ343の慣性質量Iを十分に確保することができることから、その分ダイナミックダンパーにおいて特定の共振周波数ωを設定する際のバネ定数kを相対的に大きな値に設定することができる。この結果、ダンパー機構340は、バネ定数kを相対的に大きな値に設定することができることから、例えば、ダンパースプリング42を小径化することができるので、ダンパー機構340、トルクコンバータ301をさらに小型化することができる。
また、このトルクコンバータ301のダンパー機構340は、遊星歯車機構341の差動作用により、ダイナミックダンパーのダンパーマスであるサンギヤ343の回転速度がリングギヤ344(ロックアップピストン331)の回転速度に対して増速される。したがって、このダンパー機構340は、ダイナミックダンパーのダンパーマスであるサンギヤ343の回転速度が増速されることによりダイナミックダンパーの慣性質量を相対的に増加させた場合と同等の効果が得られることから、その分ダイナミックダンパーにおいて特定の共振周波数ωを設定する際のバネ定数kをさらに大きな値に設定することができる。この結果、ダンパー機構340は、例えば、ダンパースプリング42をさらに小径化することができるので、ダンパー機構340、トルクコンバータ301をさらに小型化することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構340、トルクコンバータ301によれば、このトルクコンバータ301、ダンパー機構340は、エンジンからの駆動力が径方向外側に配置された遊星歯車機構341のリングギヤ344に入力されることから、駆動力の伝達の際にこのリングギヤ344に作用する荷重(あるいは応力)を相対的に小さくすることができる。この結果、トルクコンバータ301、ダンパー機構340は、入力回転要素であるリングギヤ344の適正な強度を確保した上で、リングギヤ344を軸方向に対して薄型化することができるので、ダンパー機構340、トルクコンバータ301を小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構340、トルクコンバータ301によれば、遊星歯車機構341は、リングギヤ344に入力された駆動力をキャリア345のリアキャリア348から出力する。したがって、トルクコンバータ301、ダンパー機構340は、ダンパー機構340における駆動力の伝達経路を単純化しダンパー機構340の構成を単純化することができるので、さらに小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構340、トルクコンバータ301によれば、ダンパースプリング42は、サンギヤ343とキャリア345とを相対回転可能に連結する。したがって、トルクコンバータ301、ダンパー機構340は、遊星歯車機構341のサンギヤ343がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用することから、ダンパー機構340に作用する特定の周波数の振動に対して、ダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)としてのサンギヤ343が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制することができ、高い制振効果を奏することができる。この結果、トルクコンバータ301、ダンパー機構340は、上記のようにダンパー機構340においてエンジンからの駆動力をリングギヤ344に入力することで小型化を図った上でダンパー機構340のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。また、このトルクコンバータ301、ダンパー機構340は、遊星歯車機構341の差動作用によりダイナミックダンパーのダンパーマスであるサンギヤ343の回転速度が増速されることから、その分ダンパースプリング42を小径化することができるので、ダンパー機構340、トルクコンバータ301をさらに小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構340、トルクコンバータ301によれば、遊星歯車機構341は、リングギヤ344が作動流体(作動油)を介して出力軸50に駆動力を伝達可能な流体伝達機構20にエンジンからの駆動力を伝達するフロントカバー10に対して出力軸50の軸方向に沿って相対移動可能に設けられると共に、このリングギヤ344がフロントカバー10に接近して摩擦係合することで、フロントカバー10からリングギヤ344を介して出力軸50に駆動力を伝達可能である。
したがって、トルクコンバータ301、ダンパー機構340は、リングギヤ344がロックアップクラッチ機構330の係合部材として兼用されることから、トルクコンバータ301、ダンパー機構340を構成する部品点数を削減することができ、また、その分、ダンパー機構340全体を大径化することなく、ダンパーマスとして作用するサンギヤ343、入力回転要素であるリングギヤ344の外径を相対的に大きくすることができるので、製造コストを低減することができると共にトルクコンバータ301、ダンパー機構340のさらなる小型化、軽量化を実現することができる。
(実施形態4)
図7は、本発明の実施形態4に係るトルクコンバータの要部断面図、図8は、本発明の実施形態4に係るトルクコンバータが備える遊星歯車機構の共線図である。実施形態4に係るダンパー装置及び流体伝達装置は、実施形態3に係るダンパー装置及び流体伝達装置と略同様の構成であるが、遊星歯車機構の出力回転要素がサンギヤである点で実施形態3に係るダンパー装置及び流体伝達装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
実施形態4に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ401は、図7に示すように、ロックアップ手段としてのロックアップクラッチ機構330と、本発明のダンパー手段及びダンパー装置としてのダンパー機構440とを備える。そして、このトルクコンバータ401は、ロックアップクラッチ機構330の係合部材としてのロックアップピストン331と、ダンパー機構440が備える遊星歯車機構441のリングギヤ344とが兼用されている。
ダンパー機構440は、遊星歯車機構441と、複数の弾性体としての複数のダンパースプリング42とを有する。遊星歯車機構441は、サンギヤ443と、上述のロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344と、キャリア445と、ピニオンギヤ46とを有する。
そして、本実施形態のダンパー機構440は、ロックアップクラッチ機構330のON制御時に、フロントカバー10、フロントカバー内壁面15、摩擦材35を順番に介して伝達されるエンジンからの駆動力がロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に入力され、このリングギヤ344に入力された駆動力を出力軸50に伝達可能である。さらに言えば、ダンパー機構440は、遊星歯車機構441のリングギヤ344(ロックアップピストン331)に入力された駆動力をピニオンギヤ46を介してサンギヤ443から出力し、ハブ52を介して出力軸50に伝達すると共に、このとき、キャリア445がダイナミックダンパーのダンパーマスとして作用する。
サンギヤ443は、遊星歯車機構441の出力回転要素である。このサンギヤ443は、中心保持部343aと、スプライン443bを有する。中心保持部343aは、サンギヤ443において複数のダンパースプリング42の一部分を保持するものである。
スプライン443bは、ハブ52のスプライン52bと共に連結部462を構成するものであり、サンギヤ443における径方向内側端部の内周面において軸方向に形成される。この連結部462は、ハブ52とサンギヤ443とを一体回転可能に連結するものである。サンギヤ443は、スプライン443bとスプライン52bとがスプライン嵌合することで、このハブ52に一体回転可能に支持される。したがって、サンギヤ443は、連結部462によってハブ52と駆動力を伝達可能に連結される。
リングギヤ344は、遊星歯車機構441の入力回転要素であり、上述したように、ロックアップクラッチ機構330のロックアップピストン331としても兼用される。
キャリア445は、ピニオンギヤ46を自転可能かつ公転可能に保持すると共に、サンギヤ443により軸方向の中心部分を保持される複数のダンパースプリング42の一部分を保持するものである。このキャリア445は、ダンパー機構440においてダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用するものである。
キャリア445は、フロントキャリア447とリアキャリア448とからなり、このフロントキャリア447とリアキャリア448とは、複数のピニオンギヤ46を軸方向に対して挟みこむようにして自転可能かつ公転可能に支持する。フロントキャリア447とリアキャリア448とは、例えばリベット61によりサンギヤ443とピニオンギヤ46を挟んで一体化されている。フロントキャリア447とリアキャリア448とは、内径がほぼ同等に設定されており、実施形態3のダンパー機構340(図5参照)とは異なり、ともにハブ52には連結されていない。
そして、フロントキャリア447は、フロント保持部347aを有し、リアキャリア448とは、リヤ保持部348aを有する。フロント保持部347a、リヤ保持部348aは、サンギヤ443の中心保持部343aにより軸方向に対する中心部分が保持されるダンパースプリング42の一部分を収容し保持するものである。
ダンパースプリング42は、サンギヤ443の中心保持部343a、フロントキャリア447のフロント保持部347a及びリアキャリア448のリヤ保持部348aにより保持されることで、サンギヤ443とキャリア445とを相対回転可能に連結する。本実施形態のダンパースプリング42は、ダンパー機構440における駆動力の伝達経路中には配置されておらず、つまり、駆動力の伝達には寄与しない。本実施形態のダンパースプリング42は、遊星歯車機構441において駆動力の伝達に寄与するサンギヤ443に駆動力の伝達に寄与しないキャリア445をダンパーマス(慣性質量体)として弾性支持するものであり、ダンパー機構440におけるダイナミックダンパーの捩じり剛性を調節する部材として作用するものである。
上記のように構成されるダンパー機構440は、ロックアップクラッチ機構330のON制御時に、エンジンからの駆動力をフロントカバー10からロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に入力する。ダンパー機構440は、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344に入力された駆動力をピニオンギヤ46を介してサンギヤ443に伝達する。したがって、サンギヤ443は、フロントカバー10に伝達されたエンジンからの駆動力がロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344、ピニオンギヤ46を介して伝達され所定の方向に回転する。そして、ダンパー機構440は、サンギヤ443に伝達された駆動力を連結部462からハブ52を介して出力軸50に伝達する。
そして、このダンパー機構440は、遊星歯車機構441の回転要素であるサンギヤ443、ロックアップピストン331として兼用されるリングギヤ344及びキャリア445が図8に示す共線図に基づいた回転速度(回転数に相当)で作動する。このダンパー機構440は、図8に示すように、エンジンの回転変動などによる振動のエンジン側の振幅、すなわち、遊星歯車機構441の入力回転要素であるリングギヤ344(ロックアップピストン331)への入力振幅aに対して、キャリア445からなるダンパーマスのダンパーマス振幅bが遊星歯車機構441の差動作用により入力振幅aの1/(1+λ)倍の振幅に減衰される。つまり、ダンパー機構440は、遊星歯車機構441の入力回転要素であるリングギヤ344(ロックアップピストン331)への駆動力に応じたリングギヤ344(ロックアップピストン331)の回転速度に対して、キャリア445からなるダンパーマスの回転速度が遊星歯車機構441の差動作用によりリングギヤ344の回転速度の1/(1+λ)倍の回転速度に減速される。
この間、ダンパー機構440は、ダンパースプリング42によりサンギヤ443に弾性支持されたキャリア445がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用する。すなわち、ダンパー機構440は、ダンパー機構440に作用する特定の周波数の振動に対して、ダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)としてのキャリア445が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制することができ、高い制振効果を奏することができる。これにより、ダンパー機構440は、例えば、エンジンの爆発に起因する振動をキャリア445が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)するので、ダンパー機構440のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
そして、本実施形態のトルクコンバータ401のダンパー機構440は、実施形態3で説明したようなダンパーマスの増速効果はないものの、リングギヤ344がロックアップクラッチ機構330のロックアップピストン331として兼用されることでリングギヤ344の外径を相対的に大きくすることができることから、その分、例えば、実施形態2で説明したキャリア245の外径と比較して、キャリア445の外径も相対的に大きくすることができる。このため、ダンパー機構440は、キャリア445の外径を相対的に大きくすることができることから、例えば、実施形態2で説明した肉厚質量部247a(図3参照)を備えなくても、ダイナミックダンパーのダンパーマスとして作用するキャリア445の慣性質量Iを十分に確保することができる。この結果、トルクコンバータ401、ダンパー機構440は、例えば、実施形態2のトルクコンバータ201(図3参照)、ダンパー機構240(図3参照)と比較して肉厚質量部247a(図3参照)を備えない分、トルクコンバータ401、ダンパー機構440の製造コストを低減することができると共にトルクコンバータ401、ダンパー機構440のさらなる小型化、軽量化を実現することができる。
そして、このトルクコンバータ401のダンパー機構440は、キャリア445の外径を相対的に大きくすることができダイナミックダンパーのダンパーマスとして作用するキャリア445の慣性質量Iを十分に確保することができることから、その分ダイナミックダンパーにおいて特定の共振周波数ωを設定する際のバネ定数kを相対的に大きな値に設定することができる。この結果、ダンパー機構440は、バネ定数kを相対的に大きな値に設定することができることから、例えば、ダンパースプリング42を小径化することができるので、ダンパー機構440、トルクコンバータ401をさらに小型化することができる。よって、このダンパー機構440、トルクコンバータ401の車両への搭載性をさらに向上することができると共に、車両全体での慣性質量を低下させることができ、よって車両の動力性能をさらに向上させることができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構440、トルクコンバータ401によれば、このトルクコンバータ401、ダンパー機構440は、エンジンからの駆動力が径方向外側に配置された遊星歯車機構441のリングギヤ344に入力されることから、駆動力の伝達の際にこのリングギヤ344に作用する荷重(あるいは応力)を相対的に小さくすることができる。この結果、トルクコンバータ401、ダンパー機構440は、入力回転要素であるリングギヤ344の適正な強度を確保した上で、リングギヤ344を軸方向に対して薄型化することができるので、ダンパー機構440、トルクコンバータ401を小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構440、トルクコンバータ401によれば、遊星歯車機構441は、リングギヤ344に入力された駆動力をサンギヤ443から出力する。したがって、トルクコンバータ401、ダンパー機構440は、ダンパー機構440における駆動力の伝達経路を単純化しダンパー機構440の構成を単純化することができるので、さらに小型化することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構440、トルクコンバータ401によれば、ダンパースプリング42は、サンギヤ443とキャリア445とを相対回転可能に連結する。したがって、トルクコンバータ401、ダンパー機構440は、遊星歯車機構441のキャリア445がダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)として作用することから、ダンパー機構440に作用する特定の周波数の振動に対して、ダイナミックダンパーのダンパーマス(慣性質量体)としてのキャリア445が逆位相で振動することでこの振動を制振(吸振)し抑制することができ、高い制振効果を奏することができる。この結果、トルクコンバータ401、ダンパー機構440は、上記のようにダンパー機構440においてエンジンからの駆動力をリングギヤ344に入力することで小型化を図った上でダンパー機構440のこもり音の発生防止などのダンパー性能を向上することができ、振動の低減、燃費の向上を図ることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るダンパー機構440、トルクコンバータ401によれば、遊星歯車機構441は、リングギヤ344が作動流体(作動油)を介して出力軸50に駆動力を伝達可能な流体伝達機構20にエンジンからの駆動力を伝達するフロントカバー10に対して出力軸50の軸方向に沿って相対移動可能に設けられると共に、このリングギヤ344がフロントカバー10に接近して摩擦係合することで、フロントカバー10からリングギヤ344を介して出力軸50に駆動力を伝達可能である。
したがって、トルクコンバータ401、ダンパー機構440は、リングギヤ344がロックアップクラッチ機構330の係合部材として兼用されることから、トルクコンバータ401、ダンパー機構440を構成する部品点数を削減することができ、また、その分、ダンパー機構440全体を大径化することなく、ダンパーマスとして作用するキャリア445、入力回転要素であるリングギヤ344の外径を相対的に大きくすることができるので、製造コストを低減することができると共にトルクコンバータ401、ダンパー機構440のさらなる小型化、軽量化を実現することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係るダンパー装置及び流体伝達装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、実施形態1のダンパー機構40は、延長質量部43aを備え、実施形態2のダンパー機構240は、肉厚質量部247aを備えるものとして説明したが、これに限らす、本発明のダンパー手段、ダンパー装置は、延長質量部43a、肉厚質量部247aを備えない構成であってもよい。
以上の説明では、本発明のロックアップ手段(ロックアップクラッチ機構30、330)の係合部材(ロックアップピストン31、331)は、本発明のダンパー装置、ダンパー手段(ダンパー機構40、240、340、440)に対して軸方向に沿って相対移動可能に支持されることで、フロントカバーに対して接近、離間し摩擦係合面を介して摩擦係合可能であるものとして説明したがこれに限らない。例えば、本発明のロックアップ手段の係合部材は、ダンパー装置(ダンパー手段)全体がハブ52に対して軸方向に沿って相対移動可能に支持されることで、このダンパー装置(ダンパー手段)全体で一体となってフロントカバーに対して接近、離間し摩擦係合面を介して摩擦係合可能な構成であってもよい。
以上の説明では、本発明のロックアップ手段(ロックアップクラッチ機構30、330)は、軸方向に対してフロントカバーとダンパー装置、ダンパー手段(ダンパー機構40、240、340、440)との間に設けられるものとして説明したが、これに限らない。例えば、本発明のロックアップ手段は、軸方向に対してダンパー装置(ダンパー手段)と流体伝達手段(流体伝達機構20)のタービンシェルとの間に設けられてもよい。つまり、本発明の流体伝達装置は、軸方向に対してエンジン側から出力軸側に向かってフロントカバー、ダンパー装置(ダンパー手段)、ロックアップ手段、流体伝達手段の順番で配置されていてもよい。この場合、ロックアップ手段は、例えば、ハブ52に一体回転可能に固定された第1の係合部材と、ダンパー装置(ダンパー手段)の出力回転要素に連結された第2の係合部材とが軸方向に相対移動可能に構成され、この第1の係合部材と第2の係合部材とが摩擦係合面を介して摩擦係合する構成であればよい。