以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子鍵盤楽器の全体構成を示すブロック図である。
本電子鍵盤楽器は、図1に示すように、タイマ12、記憶部50、各種インターフェイス14、ソレノイド駆動部15、演奏操作部16、設定操作部17、表示部18、楽音発生部19及び位置センサ42が、バス10を介してCPU11にそれぞれ接続されて構成される。
演奏操作部16には、音高情報を入力するための複数の鍵操作子13、各種演奏操作子、及び、足で演奏操作するためのペダル22(図2参照)が含まれる。ペダル22は、ダンパペダルである。設定操作部17には、各種情報を入力するための複数の各種スイッチ(図示せず)が含まれる。表示部18は、楽譜や文字等の各種情報を表示する。楽音発生部19は、それぞれ図示しない音源回路、効果回路、サウンドシステムを含み、演奏操作部16で入力された演奏データや予め設定された演奏データ等を楽音信号(演奏信号)に変換し、各種効果を付与して音響に変換する。
なお、本電子鍵盤楽器において、楽音発生部19は、必ずしも内蔵する必要はなく、例えば、楽器本体に対してネットワークで接続されるものとして構成してもよい。すなわち、楽器本体の外に別体の楽音発生部19を有するネットワーク楽器システムとして本電子鍵盤楽器を構成してもよく、必要に応じてアンプ、スピーカを、演奏時に組み合わせて操作するようにすることもできる。このようなシステムに対しても、本発明を適用可能である。
CPU11は、本電子鍵盤楽器全体の制御を司る。タイマ12は、タイマ割り込み処理における割り込み時間等の各種時間を計時する。各種インターフェイス14には、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)I/F、有線または無線の通信I/F等が含まれる。
記憶部50には、CPU11が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶するROMのほか、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶するRAM等が含まれる。記憶部50の例えばROMには、波形データ51、エンベロープデータ52のほか、荷重テーブルとして通常荷重テーブル53と拡張荷重テーブル54と反力差拡大テーブル55とが記憶されている。これらのデータやテーブルについては後述する。反力差拡大テーブル55については、後述する第2の実施の形態で用いられ、第1の実施の形態では必要ないので廃止してもよい。
図2は、上記電子鍵盤楽器の要部の断面図である。図2に示すように、本電子鍵盤楽器には、ペダル22に対して踏み込みに抗する力(反力)を付与するための反力発生機構FMが備えられる。反力発生機構FMは、鍵盤楽器本体20とペダル22との間に介在して配設される。ペダル22は下方に踏み込み操作される。同図において、初期状態である非踏み込み状態を実線で示し、踏み込み状態を2点鎖線で示している。
反力発生機構FMのメカ機構は、主に、鍵盤楽器本体20の下部(例えば、不図示の棚板の下面)に設けられるペダルボックス40内に構成されるが、配設箇所は問わず、ペダル22に対して反力を付与できるような部位に配置されればよい。
ペダル22は、支点23にて先端(図2の左端)が上下に揺動自在にされている。ペダル22の後端部に設けられた回動軸25を介して、鉛直方向に延びたロッド26が連結され、ペダル22の踏み込み操作に連動して、ロッド26が上下移動するようになっている。ペダル22の後端部の下方には、ペダル22の後端部と当接してペダル22の非踏み込み位置を規制するストッパ24が設けられている。
また、ペダル22の前端部の下方には、弾性を有するストッパ21が設けられる。ペダル22の踏み込み往行程において、ペダル22の前端部のストッパ当接部22aがストッパ21に当接することで、ペダル22の踏み込み終了位置が規制される。
ペダルボックス40内において、固定部41の上に、ソレノイド本体30が配設固定される。ソレノイド本体30において、ボビン31の内側に、プランジャ35が上下方向に移動自在に配設され、ボビン31の周りにソレノイドコイル32が巻回され、上下にヨーク33、34が配設される。プランジャ35は、ロッド26の上端に連結固定されており、ペダル22に連動して上下動するようになっている。なお、プランジャ35は、ペダル22に対して連動して動作するように構成されればよく、ロッド26に対して直接または間接に固定状態にされるかを問わない。
固定部41の下方には、ペダルボックス40に対して固定的にバネ受け部37が設けられ、バネ受け部37と固定部41の下部とに復帰用のコイルバネ36が接続されている。コイルバネ36は圧縮状態で介装されており、ペダル22の後端部を常に下方に付勢している。そのため、ペダル22の非踏み込み状態においては、ペダル22の後端部が下方に付勢されて、ストッパ24に当接している。
ペダルボックス40内において、ロッド26の上下方向の位置を検出する位置センサ42が設けられている。位置センサ42は、例えば、ロッド26の位置を光学的に検出するものであるが、その検出信号は、ペダル22の踏み込み方向における位置(深さ)を示すものでもあるし、プランジャ35の上下方向の位置を示すものでもある。なお、ペダル22の踏み込み深さを検出できるものであれば、位置センサ42の構成(フォトリフレクタ型やフォトインタラプタ型等の光学式、接触式、磁気式等)や配設位置は問わない。ただし、プランジャ35に近接して設ける場合は、ソレノイドコイル32の影響を考慮し、磁気式は避けるのがよい。
ソレノイド駆動部15(図1参照)は、CPU11による制御に従って、駆動信号をソレノイド本体30に供給する。それによって、プランジャ35が下方に付勢され、ロッド26を介してペダル22に踏み込みに抗する方向に力を与える。上記駆動信号は、ソレノイド本体30のソレノイドコイル32に流すべき電流の目標値に応じたduty(デューティ)比(%)となるようにパルス幅変調を施したPWM信号である。
本楽器では、反力発生機構FMによって、アコースティックグランドピアノにおけるダンパペダル(乃至ラウドペダル)を操作したときと同じような反力が、踏み込みの往行程及び復行程(復帰行程)においてペダル22にかかるようになっている。また、本実施の形態では、ペダル22にかかる反力のパターンとして2種類が設けられている。各パターンは、アコースティックグランドピアノを模した「通常モード」と、アコースティックグランドピアノに比しハーフペダル領域を拡張した「拡張モード」とに対応する。これらのモードは、ユーザ操作により、設定操作部17(図1参照)で設定できる。
図3は、通常モードでのペダル22の踏み込み往行程における反力の推移を示す図である。同図において、横軸がペダル22のストローク位置(踏み込み深さ)stであり、縦軸が、ペダル22にかかる踏み込み反力(荷重)Fを示す。
同図において、右上がりの直線spLは、ソレノイド本体30によらないで、コイルバネ36の付勢力(領域spF)のみによって生じる踏み込み反力の大きさを示す。曲線L0aは、コイルバネ36による反力にソレノイド本体30による駆動力(領域acF)が加算されて生じる総合的な踏み込み反力Fを示す。非踏み込み位置であるストローク位置stSから、ペダル22の踏み込み終了位置であるストローク位置stE2までの踏み込み反力Fは、通常荷重テーブル53(図1参照)を用いて制御される。ペダル22のストッパ当接部22aがストッパ21(図2参照)に当接開始するストローク位置stE1からストローク位置stE2までは、ストッパ当接部22aに押圧されてストッパ21が縮みきるまでの行程であり、ストッパ21の弾性力によって反力が急増していく段階である。
ところで、アコースティックグランドピアノのダンパペダルの踏み込み往行程においては、一般に、踏み込みの影響がダンパに伝達されない「遊び領域(乃至レスト領域)」と、弦に対するダンパの押接力の減少が開始される状態からダンパが弦に対して非接触状態となるまでの「ハーフペダル領域」と、その後ダンパが弦から完全に離間状態となる「弦開放領域」という3つの踏み込み領域が存在する。
図3において、ストローク位置stSからハーフ域開始位置Hs0までの浅い踏み込み領域が、「遊び領域」に相当する第1踏み込み領域Rs0である。ハーフ域開始位置Hs0からハーフ域終了位置He0までの踏み込み領域がハーフペダル領域Rhp0である。ハーフ域終了位置He0からストローク位置stE2までの深い踏み込み領域が、「弦開放領域」に相当する第2踏み込み領域Re0である。
図4は、通常モード及び拡張モードそれぞれにおけるペダル22に対する踏み込み反力Fの推移を示す図である。
同図において、曲線L0bが、通常モードでの復行程における踏み込み反力Fを示す。通常モードにおいては、踏み込み反力Fには、往行程(曲線L0a)と復行程(曲線L0b)との間にヒステリシスが設けられている。通常モードにおいては、踏み込み反力Fの、ストローク位置stに対する変化率は、ハーフペダル領域Rhp0では、第1踏み込み領域Rs0、第2踏み込み領域Re0とは異なっている。特に、境目であるハーフ域開始位置Hs0、ハーフ域終了位置He0の近傍では、ハーフペダル領域Rhp0内での踏み込み反力Fの変化率(曲線L0a、L0bの傾き)が、ハーフペダル領域Rhp0の外での変化率よりも大きい。
拡張モードでの踏み込み反力Fは、往行程が曲線L1a、復行程が曲線L1bで示される。拡張モードでは、通常モードに比し、ハーフペダル領域が広がって、ハーフペダル領域Rhp1となる。従って、ハーフ域開始位置は、ハーフ域開始位置Hs0より非踏み込み位置の方向にずれ、ハーフ域開始位置Hs1となる。ハーフ域終了位置は、ハーフ域終了位置He0より踏み込み終了位置の方向にずれ、ハーフ域終了位置He1となる。
拡張モードでは、ハーフ域開始位置Hs1、ハーフ域終了位置He1を境目として、第1踏み込み領域Rs1、ハーフペダル領域Rhp1、第2踏み込み領域Re1に領域が区分される。ヒステリシスが設けられる点、及び、ハーフ域開始位置Hs1、ハーフ域終了位置He1の近傍においてハーフペダル領域Rhp1の内は外に比し踏み込み反力Fの変化率が大きい点は、通常モードと同様である。
以降、特にモードを区別しないときは、「0」、「1」の付加を省略して、ハーフ域開始位置Hs、ハーフ域終了位置He、第1踏み込み領域Rs、ハーフペダル領域Rhp、第2踏み込み領域Reと記す。
本実施の形態では、後述する図5の処理により、第1踏み込み領域Rs、ハーフペダル領域Rhp、第2踏み込み領域Reの各領域で、発生する楽音の楽音パラメータを異ならせ、楽音特性を変化させる。
具体的には、例えば、各モードにおいて、アコースティックピアノにおけるペダル奏法を模擬するために、第2踏み込み領域Reでは、共鳴音(生ピアノにおいてダンパペダルを踏み込んで全弦が共鳴して発生する音に相当するもの)を付加すると共に、離鍵しても音を強制消音させない。ハーフペダル領域Rhpでは、共鳴音の付加や離鍵時の音の減衰速度をアコースティックピアノにおけるハーフペダル領域の状態に対応させる。例えば、離鍵時においては、低音鍵ほど減衰速度を遅くする(音を伸ばす)。
しかも、各モードにおいて、このような楽音制御と同時に、踏み込み反力Fについても、図4に示すような曲線となるように制御する。楽音及び反力の制御の手法は各種考えられるが、本実施の形態では、一例として、上記した波形データ51、エンベロープデータ52、荷重テーブル(図1参照)を用いた制御を採用する。
ハーフ域開始位置Hs0、Hs1、ハーフ域終了位置He0、He1の情報は、各荷重テーブルに対応して、予め、記憶部50の例えばROMに記憶されている。図5の処理の際には、制御に用いるハーフ域開始位置Hs0及びハーフ域終了位置He0の情報、またはハーフ域開始位置Hs1及びハーフ域終了位置He1の情報のいずれかを、モードに応じて選択し、ROMから読み出して記憶部50の例えばRAMに記憶させる。
本実施の形態では、発音音色を設定操作部17(図1参照)で指定できる。波形データ51、エンベロープデータ52はいずれも、指定され得る音色に対応して、モード毎且つ音高毎に設けられる。なお、これらは、各モードで同一の所定音域毎に設けられるとしてもよい。エンベロープデータ52は、第1踏み込み領域Rs用、ハーフペダル領域Rhp用、第2踏み込み領域Re用に別々に設けられる。
波形データ51は、第1踏み込み領域Rs用、第2踏み込み領域Re用に別々に設けられ、ハーフペダル領域Rhpにおいてはクロスフェードで対処する。すなわち、ハーフペダル領域Rhpにおいては、第1踏み込み領域Rs用の波形データ51に基づく楽音と、第2踏み込み領域Re用の波形データ51に基づく楽音とを、ペダル22のストローク位置stに応じた比で混合して発音させる。これにより、音色の自然なつながりを実現する。
第1踏み込み領域Rs用の波形データ51は、ペダル22が踏まれていない状態で押鍵されたときに発音される通常の楽音を生成するためのものである。一方、第2踏み込み領域Re用の波形データ51は、ペダル22が踏まれている状態で押鍵されたときに発音される楽音を生成するためのものであって、上記通常の楽音に共鳴音が加わった楽音(例えば、生ピアノにおいてダンパペダルを踏み込んで全弦が共鳴可能となった状態で録音した波形)が再現される。なお、第2踏み込み領域Re用の波形データ51に代えて、共鳴音のみを再現するための波形データを設け、ペダル22が踏まれている状態では、第1踏み込み領域Rs用の波形データ51と併せて用いて、共鳴音を含んだ楽音を生成するようにしてもよい。
荷重テーブルについては、通常モード用に通常荷重テーブル53、拡張モード用に拡張荷重テーブル54が設けられる。これらの荷重テーブルは、通常モード及び拡張モードのそれぞれにおいて、踏み込み反力Fが図4に示すような荷重プロファイルに設定されるように、ソレノイド本体30による駆動力(例えば、領域acF;図3参照)を生成するための情報である。
ハーフペダル領域Rhpの幅(広さ)が、モードによって変化することになるが、それは、モードに対応して選択される波形データ51、エンベロープデータ52及び荷重テーブルが異なることによって実現される。
図5は、本実施の形態におけるメインの処理のフローチャートである。本処理は、本楽器の電源オン時に開始され、CPU11によって実行される。
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、RAM等の各種レジスタに初期値を設定して初期設定を行う(ステップS101)。次いで、設定操作部17の操作を受け付け、設定入力処理を実行する(ステップS102)。この処理では、発音音色の指定や、モードの設定等もなされる。この処理は、設定操作部17の操作があればそれに応じて設定を更新等するものであるので、操作がなければ、前記ステップS101等で設定されるプリセットの値にて、ステップS103以降の処理がなされる。
次に、現在のモードが通常モードであるか否かを判別する(ステップS103)。その判別の結果、通常モードであれば、通常モード用の荷重テーブルとして通常荷重テーブル53を選択する一方(ステップS104)、通常モードでない場合は、拡張モード用の荷重テーブルとして拡張荷重テーブル54を選択する(ステップS105)。
次に、現在のモードに応じて、制御に用いるハーフ域開始位置Hs及びハーフ域終了位置Heを選択し、それらを記憶部50の例えばRAMに記憶させる(ステップS106)。次に、現在のペダル22のストローク位置stを位置センサ42の出力から把握し、現在、上記RAMに記憶されているハーフ域開始位置Hs及びハーフ域終了位置Heとの比較から、ペダル22がどの踏み込み領域に属するのかを判定する(ステップS107)。そして、反力制御処理を行う(ステップS108)。
この反力制御処理においては、上記ステップS104またはS105で選択されている荷重テーブルを参照し、ペダル22のストローク位置stに応じた踏み込み反力Fとなるように、duty比を決定し、該duty比の駆動信号(PWM信号)を生成する。そして、ソレノイド駆動部15(図1参照)から、上記決定したduty比の駆動信号をソレノイド本体30に対して出力する。これにより、反力発生機構FMからペダル22に適切な反力が付与される。
次に、鍵操作子13の操作を検出し、押鍵があった否かを判別して(ステップS109)、押鍵があった場合は、押鍵された鍵に対応する音高、押鍵ベロシティ、指定された音色(指定音色)、ペダル22のストローク位置st等に基づく楽音を楽音発生部19から発生させる発音処理を実行する(ステップS110)。
すなわち、この発音処理では、まず、押鍵された鍵(音高)、指定音色、及び、ペダル22のストローク位置stで定まる踏み込み領域に対応した波形データ51とエンベロープデータ52とを選択する。そして、選択した波形データ51とエンベロープデータ52を読み出し、波形データ51に応じた楽音波形にエンベロープデータ52に応じたエンベロープを付加した楽音信号を生成する。そして、この楽音信号を楽音発生部19に送って発音させる。
例えば、拡張モードで、ストローク位置stがハーフ域終了位置He1より深い位置であった場合は、指定音色及び押鍵された鍵に対応し且つ第2踏み込み領域Re1(図4参照)に対応する波形データ51とエンベロープデータ52とを用いて、共鳴音が付加された楽音が発生する。
ここで、ペダル22のストローク位置stがハーフペダル領域Rhpに属する場合は、上記したように、第1踏み込み領域Rsに対応した波形データ51と第2踏み込み領域Reに対応した波形データ51の双方が読み出され、両者に基づく楽音信号が、ストローク位置stに応じた比で混合して生成される。
なお、波形データ51は、ハーフペダル領域Rhp用にも設けてもよい。また、波形データ51は、音高毎でなく複数音高間で共通に設け、読み出し速度で音高を変えるようにしてもよい。
次に、鍵操作子13の操作を検出し、離鍵があった否かを判別して(ステップS111)、離鍵があった場合は、離鍵された鍵に対応する楽音に対して、ペダル22のストローク位置st等に基づく減衰処理等の消音処理を実行する(ステップS112)。
すなわち、離鍵された鍵(音高)、指定音色、及び、ペダル22のストローク位置stで定まる踏み込み領域に対応した波形データ51とエンベロープデータ52とを選択する。そして、選択した波形データ51に応じた楽音波形に選択したエンベロープデータ52に応じたエンベロープを付加した楽音信号を生成する。この処理は、例えば、上記特許文献3(特開平7−84574号公報)等に開示された手法で行うことができる。踏み込み領域によって、目標レベルやディケイタイムが相違することになる。なお、エンベロープデータ52については、ハーフペダル領域Rhp用を廃止して、ハーフペダル領域Rhpにおいては補間処理により対処するようにしてもよい。
また、楽音制御については、上記したのは例示であり、踏む込み領域のそれぞれにおいて、公知の手法を適用することができ、手法は問わない。例えば、指定音色に対応するフィルタデータ等も設けて楽音制御に反映させてもよい。
このように、モードによってハーフペダル領域Rhpの幅(ストローク方向の長さ)が変化するという条件の下、踏み込み領域のどこにペダル22が属するかによって、異なる楽音パラメータである波形データ51とエンベロープデータ52とに基づいて、発生する楽音が制御される。
次に、ステップS113で、自動演奏処理等の「その他処理」を実行して、前記ステップS102に戻る。自動演奏処理では、設定されている自動演奏データを読み出し、生成された演奏信号に設定された効果処理を付加し、増幅して出力する。
本実施の形態によれば、モード切り替えにより、選択される荷重テーブルが切り替わると共に、記憶部50のRAMに記憶される、楽音制御に用いるハーフ域開始位置Hs及びハーフ域終了位置Heの情報が変更される。これにより、ハーフペダル領域Rhpの幅が切り替わる。また、切り替わったハーフペダル領域Rhpの内外で、楽音制御に用いられる楽音パラメータである波形データ51及びエンベロープデータ52が切り替わる。従って、発生する楽音が切り替わるハーフペダル領域Rhpの範囲を可変にすることができる。特に、初心者にとっては、ハーフペダル領域Rhpを把握するのが容易でないが、拡張モードを設定すれば、ハーフペダル領域Rhpが広がるので、把握が容易となる。従って、各ユーザの技量に合わせてハーフペダル奏法を行いやすくすることができる。
また、記憶部50のRAMに記憶されているハーフ域開始位置Hs及びハーフ域終了位置Heを境に、ペダル22に与えられる反力の変化率が異なるように制御されるので、ハーフペダル領域Rhpにおいて楽音が切り替わるのにリンクして反力変化率も切り替わるようにして、ハーフペダル領域Rhpを、足を通じて感じさせることができる。
なお、本実施の形態では、2つのモードに対応させて、荷重テーブルを2種類設けたが、3つ以上のモードと、それらに対応してハーフペダル領域Rhpを異にする荷重テーブルを3種類以上設け、上記と同様に、ユーザ操作により選択させるようにしてもよい。従って、荷重テーブルは、通常荷重テーブル53に比し、ハーフペダル領域Rhpが拡張されるものに限られず、縮小するものも含め、各種の構成が考えられる。従って、荷重テーブルの種類を多数とすることで、ハーフペダル領域Rhpの幅をユーザにとって、より所望なものに近づけることが可能となる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、データやテーブルを切り替えてハーフペダル領域Rhpの幅を可変にしたが、本発明の第2の実施の形態では、ハーフペダル領域Rhpの幅は変えず、ペダル22の踏み込みの復行程におけるハーフペダル領域Rhpでの反力差を変える。本実施の形態では、通常モードと、反力差拡大モードとを選択でき、通常荷重テーブル53に加えて、反力差拡大モードに対応する「反力差拡大テーブル55」(図1参照)が用いられる。
図6は、通常モード及び反力差拡大モードそれぞれにおけるペダル22に対する踏み込み反力Fの推移を示す図である。
通常モードでの踏み込み反力Fは、曲線L0a、曲線L0bで示されるように、往復全行程において第1の実施の形態のもの(図4)と同様である。反力差拡大モードでの踏み込み反力Fは、往行程では通常モードと同一である。しかし、復行程では、曲線L2bで示されるように、曲線L0bとの間のヒステリシスが小さくなっており、特に、ハーフ域終了位置Heにおける踏み込み反力Fが通常モードに比し大幅に大きくなっている。すなわち、曲線L2bで示されるように、ハーフペダル領域Rhpにおける踏み込み反力Fの変化率が、曲線L0bに比し大きくなっている。
具体的には、復行程におけるハーフ域終了位置Heとハーフ域開始位置Hsとの間の反力の差異(以降、「反力差dF」と呼称する)は、通常モードでは反力差dF0であり、反力差拡大モードでは反力差dF2であって、dF2>dF0である。
本実施の形態における楽音及び反力の制御は、第1の実施の形態に対して、選択可能なテーブルが拡張荷重テーブル54から反力差拡大テーブル55に変わっただけであり、波形データ51、エンベロープデータ52、荷重テーブルを用いた制御である点は同様である。従って、図5の処理を一部変更することで実現される。また、本実施の形態では、ハーフ域開始位置Hs、ハーフ域終了位置Heの情報は、予め、記憶部50の例えばROMに記憶されており、この情報が更新されることはない。
図7は、本実施の形態におけるメインの処理のフローチャートである。まず、図5のステップS101、S102と同様の処理を実行し、次に、ステップS201では、図5のステップS102と同様の処理を実行する。そして、ステップS201の判別の結果、通常モードであれば、通常モード用の荷重テーブルとして通常荷重テーブル53を選択する一方(ステップS202)、通常モードでない場合は、反力差拡大モード用の荷重テーブルとして反力差拡大テーブル55を選択する(ステップS203)。
次に、ステップS204では、現在のペダル22のストローク位置stを位置センサ42の出力から把握し、記憶部50に記憶されている上記ハーフ域開始位置Hs及びハーフ域終了位置Heとの比較から、ペダル22がどの踏み込み領域に属するのかを判定する。以降は、図5のステップS108〜S113と同様の処理を実行する。
本実施の形態によれば、モード切り替えにより、選択される荷重テーブルが切り替わり、その結果、ペダル22の復帰行程において、ハーフ域終了位置Heで発生する反力とハーフ域開始位置Hsで発生する反力との反力差dFが切り替わる。従って、ペダル22の復帰行程において、ハーフペダル領域Rhpにおける反力差dFを可変にすることができる。特に、初心者にとっては、ハーフペダル領域Rhpを把握するのが容易でないが、反力差拡大モードを設定すれば、足での感覚によりハーフペダル領域Rhpの把握が容易となる。従って、各ユーザの技量に合わせてハーフペダル奏法を行いやすくすることができる。
なお、本実施の形態において、ペダル踏み込みの復行程だけでなく、往行程においても、ハーフペダル領域Rhpにおける反力差dFが可変となるように、荷重テーブルを設定してもよい。
なお、本実施の形態では、3つ以上のモードとそれらに対応して、反力差dFを異にする荷重テーブルを3種類以上設け、上記と同様に、ユーザ操作により選択させるようにしてもよい。
なお、第1、第2の実施の形態の双方を同時に実現するように構成してもよい。すなわち、モードとして通常モード、拡張モード、反力差拡大モードを設定可能にし、これらに対応して、通常荷重テーブル53、拡張荷重テーブル54、反力差拡大テーブル55が選択されるようにする。また、通常モードに比し、ハーフペダル領域Rhpが異なると共に反力差dFも異なるようなモード及び荷重テーブルを設けてもよい。
なお、上記第1、第2の実施の形態において、踏み込み反力Fを制御する上で、荷重テーブルを用いることは例示であり、これに限られない。例えば、モードに応じた荷重データを記憶しておき、演算により、ストローク位置stに応じた荷重プロファイルを設定してもよい。
なお、楽音制御に用いる、踏み込み領域毎に異なる楽音パラメータは、波形データ51とエンベロープデータ52に限られない。例えば、ビブラート、パン、トレモロ等の効果を付与するものや、音色や音高を徐々に変化させるもの等、各種楽音パラメータが採用可能である。踏み込み領域毎に、効果の内容(種類)または効果付与の有無が切り替わるようにするための楽音パラメータを広く含む。
なお、コイルバネ36の付勢力によるベースとなる反力(図3に示す領域spF)は、必ずしも必須でなく、理論的には、すべての反力を、ソレノイド本体30から発生させるようにしてもよい。
また、図3に示す領域spFに相当する反力は、コイルバネ36に限られず、摩擦、慣性力等によって発生するものであってもよい。
また、制御された反力(図3に示す領域acF)をペダル22に付与する機構としては、ソレノイド本体30に限られず、モータ等、反力の大きさを制御可能な機構であればよい。
11 CPU(判定手段、楽音制御手段、反力制御手段)、 13 鍵操作子、 22 ペダル(ダンパペダル)、 42 位置センサ(位置検出手段)、 50 記憶部(位置記憶手段)、 51 波形データ(楽音パラメータ)、 52 エンベロープデータ(楽音パラメータ)、 FM 反力発生機構(反力制御手段)、 Hs ハーフ域開始位置(第1位置)、 He ハーフ域終了位置(第2位置)、 Rs 第1踏み込み領域、 Rhp ハーフペダル領域、 Re 第2踏み込み領域、 dF 反力差